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特許7383486イオン原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用する場合の水素共ガス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】イオン原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用する場合の水素共ガス
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20231113BHJP
   C23C 14/48 20060101ALI20231113BHJP
   G21K 5/04 20060101ALI20231113BHJP
   H01J 27/08 20060101ALI20231113BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20231113BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231113BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
C23C14/48 Z
G21K5/04 A
H01J27/08
H01J37/08
H01L21/265 603A
H05H1/46 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019564137
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018035833
(87)【国際公開番号】W WO2018226574
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】62/515,324
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ツェ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】バソム,ニール
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】松川 直樹
【審判官】山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-205951(JP,A)
【文献】特開2015-95414(JP,A)
【文献】特開昭60-195853(JP,A)
【文献】特表2011-523764(JP,A)
【文献】特開昭60-54150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J37/317
H01J27/08
H01J37/08
H05H1/46
G21K5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ化アルミニウム原料物質と、
前記ヨウ化アルミニウム原料物質をイオン化してイオンビームを形成するように構成されたイオン源と、
水素を含む還元剤を前記イオン源に導入するように構成された水素導入装置と、
前記イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、
イオンをワークピースに注入するために前記イオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションと、
を備え、
前記水素導入装置は、水素共ガス源を含み、
前記ヨウ化アルミニウム原料物質は、固体形態であり、
前記イオン源に動作可能に結合された原料物質気化器をさらに含み、
前記原料物質気化器は、90~100℃の範囲の処理温度で前記ヨウ化アルミニウム原料物質を気化するように構成されている
イオン注入システム。
【請求項2】
前記還元剤からの前記水素が、非伝導性の前記物質の化学的性質を変化させ、揮発性ガス副生成物を生成する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記水素導入装置は、加圧ガス源を備える、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記加圧ガス源が、水素ガスおよびホスフィンのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記イオン注入システムに水蒸気を導入するように構成された水導入装置をさらに備える、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記イオン注入システムの1つ以上の囲い込まれた部分を実質的に排気するように構成された真空システムをさらに含む、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記イオン注入システムの前記1つ以上の囲い込まれた部分には、前記イオン源が設けられている、請求項6に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
固体形態のヨウ化アルミニウム原料物質を90~100℃の範囲の処理温度で気化させるステップと、
気化した前記ヨウ化アルミニウム原料物質をイオン注入システムのイオン源に供給するステップと、
前記イオン源に水素共ガスを供給するステップと、
前記イオン源内において前記ヨウ化アルミニウム原料物質をイオン化するステップであって、前記水素共ガスと気化した前記ヨウ化アルミニウムとを前記イオン源内において反応させて揮発性ヨウ化水素ガスを生成するステップと、
真空システムを介して前記揮発性ヨウ化水素ガスを除去するステップと、
イオン化された前記ヨウ化アルミニウム原料物質に由来するアルミニウムイオンをワークピースに注入するステップと、
を含む、ワークピースにアルミニウムイオンを注入する方法。
【請求項9】
前記イオン源に前記水素共ガスを供給するステップは、前記イオン源に水素ガスおよびホスフィンのうちの1つ以上を供給するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水蒸気を前記イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネントに導入することによって、前記イオン注入システムの前記1つ以上の内部コンポーネントから、残留ヨウ化アルミニウムおよび残留ヨウ化物のうちの1つ以上を洗浄するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン注入システムの前記内部コンポーネントに水蒸気を導入するステップは、前記イオン注入システムの前記1つ以上の内部コンポーネントに空気を導入するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン注入システムの前記1つ以上の内部コンポーネントに水蒸気を導入するステップは、真空下で供給ラインを通る前記1つ以上の内部コンポーネントへの水の流れを制御することにより、前記水を蒸発させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン注入システムを排気することにより、前記水蒸気と、残留ヨウ化水素と、を実質的に除去するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
残留ヨウ化アルミニウムを生成するヨウ化アルミニウム原料物質を用いてイオン注入システムを洗浄する方法であって、
水素共ガスを前記イオン注入システムに導入するステップであって、残留ヨウ化アルミニウムおよび残留ヨウ化物を前記水素共ガスと反応させてヨウ化水素を形成するステップと、
前記イオン注入システムを排気することにより、前記ヨウ化水素を除去するステップと、
を含み、
固体形態のヨウ化アルミニウム原料物質を90~100℃の範囲の処理温度で気化させるステップと、
気化した前記ヨウ化アルミニウム原料物質を前記イオン注入システムのイオン源に供給することにより、残留ヨウ化アルミニウムを形成するステップと、
をさらに含む、
方法。
【請求項15】
前記水素共ガスが、水素ガスおよびホスフィンのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水素共ガスを前記イオン注入システムに導入するステップは、加圧ガス源から前記水素ガスおよびホスフィンを導入するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本出願は2017年6月5日に出願された米国仮出願第62/515,324号、名称「イオン原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用する場合の水素共ガス」の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は概してイオン注入システムに関するものであり、より詳細には、水素共ガスを使用する、ヨウ化アルミニウムイオン原料物質(ソース材料)(source material)を含むイオン注入システムと、該イオン注入システムのインサイチュ(その場)(in-situ)洗浄のための機構を有するビームラインコンポーネントに関する。
【0003】
〔背景技術〕
イオン注入は、半導体および/またはウェハ材料にドーパントを選択的に注入するために半導体デバイス製造において使用される物理的プロセスである。したがって、注入の動作は、ドーパントと半導体材料との間の化学的相互作用に依存しない。イオン注入のために、イオン注入装置のイオン源からのドーパント原子/分子はイオン化され、加速され、イオンビームに形成され、分析され、ウェハを横切って掃引され、またはウェハはイオンビームを通って平行移動される。ドーパントイオンは物理的にウェハに衝突し、表面に入り、そのエネルギーに関連する深さで表面の下に静止する。
【0004】
イオン注入装置内のイオン源は典型的にはアークチャンバ内で原料物質をイオン化することによってイオンビームを生成し、原料物質の構成要素は、所望のドーパント元素である。次いで、イオン化された原料物質から所望のドーパント元素がイオンビームの形成で抽出される。
【0005】
従来、アルミニウムイオンを所望のドーパント元素とする場合、イオン注入のためのアルミニウムイオンの原料として、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナ(Al)などが用いられている。窒化アルミニウム又はアルミナは、プラズマが形成されるアークチャンバ内(イオン源内)に典型的に配置される固体の絶縁材料である。
【0006】
ガス(例えば、フッ素)は、従来、アルミニウム含有材料を化学的にエッチングするために導入され、それによって、原料物質がイオン化され、アルミニウムが抽出され、ビームラインに沿って、エンドステーションに配置された炭化ケイ素ワークピースに移送され、そこに注入される。アルミニウム含有材料は例えば、アルミニウムイオンの原料として、アークチャンバ内の何らかの形態のエッチングガス(例えば、BF、PF、NFなど)と共に一般的に使用される。しかしながら、これらの材料はアークチャンバから意図されたアルミニウムイオンと共に放出される絶縁材料(例えば、AlN、Al等)を生成するという好ましくない副作用を有する。
【0007】
絶縁材料は引出電極のようなイオン源の様々なコンポーネントをその後被覆し、引出電極は、電荷を形成し始め、引出し電極の静電特性を不利に変化させる。電荷蓄積の結果、蓄積された電荷アークが他のコンポーネントおよび/またはグランドにアークを発生させるので、一般に引出電極のアーキング、または「グリッチング」と呼ばれる挙動が生じる。極端な場合には、引出電極のための電源の挙動が変更され、歪められる可能性がある。これは、典型的には予測不可能なビーム挙動をもたらし、ビーム電流の減少、およびイオン源に関連する様々なコンポーネントを洗浄するための頻繁な予防保守につながる。さらに、これらの材料からのフレークおよび他の残留物がアークチャンバ内に形成され、その結果、その動作特性が変化し、さらなる頻繁な洗浄につながる可能性がある。
【0008】
〔概要〕
本開示はアルミニウム注入のためのイオン注入システムにおいて、性能を改善し、イオン源の寿命を延ばすためのシステム、装置、および方法を提供することによって、従来技術の制限を克服する。したがって、以下は本開示のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を提示する。この概要は、本開示の広範な概要ではない。これは、本発明の重要な要素を識別しかつ正確に概説するものでもない。その目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本開示のいくつかの概念を簡略化された形式で提示することである。
【0009】
本開示の態様は、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するためのイオン注入プロセスを促進する。1つの例示的な態様によれば、イオンビームを形成するように構成されたイオン源と、イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリと、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するためにイオンビームを受け入れるように構成されたエンドステーションとを有するイオン注入システムが提供される。
【0010】
例示的な一態様によれば、ヨウ化アルミニウム原料物質が供給され、イオン源はヨウ化アルミニウム原料物質をイオン化し、そこからイオンビームを形成するように構成される。例えば水素導入装置が、水素を含む還元剤をイオン源に導入するように構成されている。一例では、水素導入装置が水素共ガス源を含み、還元剤からの水素が、非伝導性の前記物質の化学的性質を変化させ、揮発性ガス副生成物を生成する。水素導入装置は例えば、加圧型ガス源を含むことができ、加圧ガス源は、水素ガスおよびホスフィンガスのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0011】
別の例のイオン注入システムは、イオン注入システムに水蒸気を導入するように構成された水導入装置をさらに備える。イオン注入システムの1つまたは複数の囲い込まれた部分を実質的に排気するように、真空システムをさらに提供し、構成することができる。イオン注入システムの1つ以上の囲い込まれた部分は例えば、イオン源を含んでもよい。
【0012】
さらに別の例では、ヨウ化アルミニウム原料物質が固体形態および粉末形態のうちの1つ。したがって、イオン注入システムはイオン源に動作可能に結合された原料物質気化器をさらに備えることができ、原料物質気化器は、ヨウ化アルミニウム原料物質を気化するように構成される。
【0013】
本開示の別の例示的な態様によれば、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための方法が提供される。一例では、この方法がヨウ化アルミニウム原料物質を気化させるステップと、気化したヨウ化アルミニウム原料物質をイオン注入システムのイオン源に供給するステップとを含む。ヨウ化アルミニウム原料物質は、初期状態では、固体形態および粉末形態のうちの一方であってもよい。水素共ガスがさらにイオン源に供給され、ヨウ化アルミニウム原料物質がイオン源内でイオン化され、水素共ガスはイオン源内で気化されたヨウ化アルミニウムと反応して揮発性ヨウ化水素ガスを生成する。真空システムを介して揮発性ヨウ化水素ガスと、イオン化されたヨウ化アルミニウム原料物質に由来するアルミニウムイオンとが、ワークピースに注入される。
【0014】
一例では、水素共ガスをイオン源に供給するステップに、水素ガスおよびホスフィンのうちの1つまたは複数をイオン源に供給するステップを含む。別の例では、残留ヨウ化アルミニウムおよび残留ヨウ化水素酸のうちの1つ以上が、イオン注入システムの1つまたは複数の内部コンポーネントに水蒸気を導入することによって、イオン注入システムの1つまたは複数の内部コンポーネントから洗浄される。イオン注入システムの内部コンポーネントに水蒸気を導入するステップには、例えば、イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネントに空気を導入するステップを含む。別の例では、イオン注入システムの1つまたは複数の内部コンポーネントに水蒸気を導入するステップには、真空下で供給ラインを通る1つまたは複数の内部コンポーネントへの水の流れを制御するステップを含み、それによって水を気化させる。この方法は別の例ではイオン注入システムを排気し、その中で水蒸気および残留ヨウ化アルミニウムおよび残留ヨウ化水素酸を実質的に除去するステップをさらに含む。
【0015】
別の例によれば、残留ヨウ化アルミニウムを生成するヨウ化アルミニウム原料物質を使用してイオン注入システムを洗浄するための方法が提供される。この方法は、イオン注入システムに水素共ガスを導入するステップを含み、その中で残留ヨウ化アルミニウムを水素共ガスと反応させてヨウ化水素を形成するステップを含む。さらに、イオン注入システムを排気することにより、イオン注入システムからヨウ化水素を除去するステップを含む。水素共ガスは例えば、水素ガスおよびホスフィンのうちの1つ以上を含んでもよい。イオン注入システムに水素共ガスを導入するステップは、加圧ガス源から水素ガスおよびホスフィンを導入するステップを含むことができる。別の例では、ヨウ化アルミニウム原料物質が気化され、イオン注入システムのイオン源に供給され、それによって残留ヨウ化アルミニウムが形成される。
【0016】
上記の概要は単に、本開示のいくつかの実施形態のいくつかの特徴の簡単な概要を与えることを意図したものであり、他の実施形態は、上記のものとは追加のおよび/または異なる特徴を含んでもよい。特に、この概要は、本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。したがって、前述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に記載され、特に特許請求の範囲で指摘される特徴を備える。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用され得る様々な方法のうちのいくつかを示す。本開示の他の物体、利点、および新規な特徴は、以下の本開示の詳細な説明を図面と併せて考慮することによって明らかになるであろう。
【0017】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示のいくつかの態様によるヨウ化アルミニウムイオン原料物質を利用する例示的な真空システムのブロック図である。
【0018】
図2は、原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用して、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための例示的な方法を示す。
【0019】
図3は、原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用するイオン注入システムを洗浄するための例示的な方法を示す。
【0020】
〔発明を実施するための形態〕
本開示は、概して、イオン注入システムおよびそれに関連するイオン原料物質を対象とする。より詳細には、本発明が1000℃までの範囲の様々な温度で、ケイ素、炭化ケイ素、または他の半導体基板を電気的にドープするために、アルミニウム原子イオンを生成するためのヨウ化アルミニウム(AlI)固体材料を使用する前記イオン注入装置用のコンポーネントに関する。さらに、本開示は、イオン原料ベポライザー物質としてヨウ化アルミニウムを使用する場合の引出電極およびソースチャンバコンポーネントへのヨウ化物の堆積を最小限に抑える。したがって、本開示は関連するアーキングおよびグリッチングを低減し、イオン原料および関連する電極層の全体的な寿命をさらに延ばす。
【0021】
したがって、本発明は図面を参照して説明され、ここで、同様の参照番号は全体を通して同様の要素を指すために使用されてもよい。これらの態様の説明は単に例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の説明では、説明目的のために、本発明の完全な理解を提供すべく、様々な特定の詳細が記載されている。当業者であれば、本発明は、これらの特定物でなくても実施できることが明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に記載される実施形態または例によって限定されることを意図されず、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることを意図される。
【0022】
また、図面は、本開示の実施形態のいくつかの態様の例示を与えるために提供され、したがって、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることにも留意されたい。特に、図面に示される要素は必ずしも互いに縮尺通りではなく、図面における様々なエレメント配置はそれぞれの実施形態の明確な理解を提供するように選択され、本発明の実施形態による実装形態における様々なコンポーネントの実際の相対位置の表現であると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書で説明される様々な実施形態および例の特徴は特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。
【0023】
また、以下の説明では、図面に示された、または本明細書で説明された、機能ブロック、装置、コンポーネント、回路要素、または他の物理的または機能的ユニット間の任意の直接接続または結合も、間接接続または結合によって実施され得ることを理解されたい。さらに、図面に示される機能ブロックまたはユニットは一実施形態では別個の特徴または回路として実装されてもよく、また、または代替として、別の実施形態では共通の特徴または回路で完全にまたは部分的に実装されてもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの機能ブロックは、信号プロセッサのような共通のプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。さらに、以下の明細書において有線ベースとして説明される任意の接続は逆に言及されない限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0024】
本開示の一態様によれば、図1は、例示的な真空システム100を示す。本例の真空システム100はイオン注入システム101を含むが、プラズマ処理システム、または他の半導体処理システムなど、様々な他のタイプの真空システムも企図される。イオン注入システム101は、一例として、ターミナル102と、ビームラインアセンブリ104と、エンドステーション106とを備えている。
【0025】
一般的に言えば、ターミナル102内のイオン源108は電源110に結合されて、ドーパントガスをイオン源から複数のイオンにイオン化し、イオンビーム112を形成する。引出電極に近接した個々の電極は、イオン源に近い中和電子の逆流または引出電極に戻る中和電子の逆流を阻止するようにバイアスされてもよい。本発明のイオン原料物質113は、イオン源108内に供給され、イオン原料物質は以下でさらに詳細に論じられるように、ヨウ化アルミニウム(AlI)を含む。
【0026】
本実施例におけるイオンビーム112は、ビームステアリング装置114を通って、開口116からエンドステーション106に向かって導かれる。エンドステーション106では、イオンビーム112がチャック120(例えば、静電チャックまたはESC)に選択的にクランプまたは取り付けられたワークピース118(例えば、シリコンウェハ、ディスプレイパネルなどの半導体)に衝突する。ワークピース118の格子に埋め込まれると、注入されたイオンは、ワークピースの物理的および/または化学的特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造および金属仕上げ、ならびに材料科学研究における様々な用途において使用される。
【0027】
本開示のイオンビーム112はペンシルまたはスポットビーム、リボンビーム、走査ビーム、またはイオンがエンドステーション106に向けられる他の形態など、任意の形態をとることができ、そのような形態はすべて、本開示の範囲内に入ると考えられる。
【0028】
1つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は真空チャンバ124などの処理チャンバ122を含み、処理環境126が処理チャンバに関連付けられる。処理環境126は一般に、処理チャンバ122内に存在し、一例では、処理チャンバに結合され、処理チャンバを実質的に排気するように構成された真空源128(例えば、真空ポンプ)によって生成された真空を備える。さらに、制御装置130は、真空システム100の全体的な制御のために提供される。
【0029】
本開示は、その上に形成された炭化ケイ素ベースのデバイスを有するワークピース118が特に、電気自動車などの高電圧および高温デバイスにおいて使用される用途において、シリコンベースのデバイスよりも良好な熱特性および電気特性を有することが見出されていることを理解する。しかしながら、炭化ケイ素へのイオン注入は、シリコンワークピースに使用されるものとは異なる分類の注入ドーパントを利用する。炭化ケイ素注入では、アルミニウムおよび窒素注入がしばしば行われる。例えば、窒素注入は窒素をガスとして導入することができるので比較的簡単であり、比較的容易な調整、浄化などを提供する。しかしながら、アルミニウムの良好な気溶液は現在ほとんど知られていないので、アルミニウムはより困難である。
【0030】
従来、イオン注入のためのアルミニウムイオン源として、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)等の材料が用いられている。窒化アルミニウム又はアルミナは、プラズマが形成されるアークチャンバ内(イオン源内)に典型的に配置される固体の絶縁材料である。ガス(例えば、フッ素)は従来、アルミニウム含有材料を化学的にエッチングするために導入され、それによって、材料はイオン化され、アルミニウムはビームラインに沿って抽出され、エンドステーションに配置された炭化ケイ素ワークピースに移送される。例えば、アルミニウム含有材料はアルミニウムイオン源としてアークチャンバ内の何らかの形態のエッチングガス(例えば、BF、PF、NF等)と共に一般的に使用される。これらの材料はアークチャンバから意図されたイオンと共に放出される絶縁材料(例えば、AlN、Alなど)を生成するという好ましくない副作用を有する。
【0031】
この絶縁材料は引出電極のようなイオン源の様々なコンポーネントを後で被覆し、次いで、引出電極は、帯電し始め、これらの電極の静電特性を不都合に変化させ、それらの電極上に電荷を蓄積する。これは、他のコンポーネントおよび/またはグランドへの蓄積電荷アークとして、これらの電極層のグリッチまたはアークと一般に呼ばれる挙動をもたらす。極端な場合には、電源の挙動が変更され、歪められることがある。これは、予測不可能なビーム挙動をもたらし、これらのコンポーネントを清浄にするための頻繁な予防保守およびビーム電流の低減につながる。さらに、これらの材料からのフレークおよび他の残基がアークチャンバ内に形成され、したがって、その動作特性が変化し、頻繁な洗浄につながる。
【0032】
本発明はヨウ化アルミニウム(AlI)を使用して原子状アルミニウムイオンを生成することを企図し、それによって、前述の絶縁材料、フレークなどが生成されず、蓄積せず、したがって、イオン源および電極層の寿命を延ばし、より安定したイオンビーム動作を生成し、実質的により高いビーム電流を可能にする。
【0033】
したがって、本発明はヨウ化アルミニウム(AlI)固形原料物質から単一原子アルミニウムイオンを生成し、室温から約1000℃の温度で、現在の技術よりも改善されたソース寿命、ビーム電流、および動作特性で、炭化ケイ素、ケイ素、または他の基材を電気的にドープする。
【0034】
本発明によれば、ヨウ化アルミニウム(AlI、一般に粉末または他の固形物の形態で見出される)はイオン注入システム101の固形原料気化器140(例えば、マサチューセッツ州ベバレーのアクセリス・テクノロジーズ(Axcelis Technologies)によって製造された適切なイオン注入器)に挿入される。ヨウ化アルミニウムは、吸湿性の温度感受性粉末材料であり、イオン源108の気化器140内で加熱されて、イオン注入のためにアークチャンバ内に導入される分子のほぼ一定の流れを生成することができる。
【0035】
イオン注入装置の真空システム100にイオン源108を挿入した後、この材料を適切な温度に加熱して、イオン源に十分な材料を発生させてプラズマを形成する(このとき、イオン源内でプラズマ形成の開始を助けるためのアルゴンなどの共ガス(補助ガス)(co-gas)を用いて、または用いずに)。ヨウ化アルミニウムが適切な温度に達すると、ヨウ化アルミニ単独または共ガスとの組み合わせによってイオン源108内に安定なプラズマを生成することができるように、十分な材料が放出される。次いで、単一原子アルミニウムイオンが静電的に抽出され、操作されてイオンビーム112を形成し、ワークピース120(例えば、炭化ケイ素、ケイ素など)に輸送されて、アルミニウムが注入される。
【0036】
分子は弱く結合し、下記のように;
AlI → AL(s) + 3I(s) (1)
プラズマ中で解離することができる。
【0037】
ヨウ素の副産物は、例えば、イオン源108の電極板のような様々な成分を被覆する概して固体の形態の絶縁体であり、被覆によって、高電界における帯電およびその後のアーク放電をもたらすことができる。引出電極および抑制電極に関連するこのようなアーク放電または「グリッチ」は、イオンビーム112の利用およびその安定性に悪影響を及ぼす。例えば、このような高電圧ストレス領域における電気グラウンドの戻りはこの非導電性材料でさらに被覆することができ、それによって、イオンビーム112によって生成された二次電子の存在による充電および放電を発生させることを可能にする。
【0038】
したがって、本開示は水素のような還元剤を水素共ガス源145からイオン源108に導入し、それによって、還元剤が非導電性材料の化学的性質を変え、それを揮発性ガス副生成物(例えば、ヨウ化水素、HI)に変換する。還元剤は例えば、共ガスと呼ぶことができる。例えば、以下の式は一例である:
AlI + H + H
→ AL(s) + 3HI(g) + OH (2)
上の式(2)における水(HO)は、イオン源108の表面(例えば、ソースチャンバ壁または他の内部表面)が大気に曝露されていたことから該表面上に存在し得たものであり、これはイオン源からの熱に曝露されることによって該表面から放出される。したがって、揮発性材料は式(2)の処理チャンバ122に関連付けられた1つまたは複数の真空ポンプ128(例えば、高真空ポンプ)を使用して、さらに排気することができる。本発明は、ホスフィン(PH)または水素ガス(H)などの他の水素含有共ガスを提供する水素共ガス源145をさらに企図することに留意されたい。したがって、水素共ガス源145は水素共ガスのインサイチュでの、図1のシステム100への導入を提供する。高圧(例えば、瓶詰めされた)水素ガスは非常に揮発性を有し、その危険性および爆発性の性質のために製造設備においてしばしば許容されないので、例えばホスフィンを共ガスとして使用することは水素を有する(H)の使用よりも好ましい場合がある。
【0039】
例えばヨウ化物および水素からの式(2)に示す反応の反応速度は概して好ましい。例えば、上の式(2)に示される反応は揮発性ガス副生成物(例えば、HI)を形成した後、全体的なエネルギーを減少させる。揮発性ガス副生成物は例えば、真空源128の1つ以上の真空ポンプによって形成されるときに、連続的に排気される。
【0040】
本発明は、水素の導入によって、イオン源108の内部表面上に粉末を形成する反応の兆候を提供し、同じく、式(2)の化学反応が起こることを示すI++(原子質量単位amu-63.5)でのビーム強度の減少を示す。さらに、Iイオン位置であるamu-127でのビーム強度の減少も示された。
【0041】
本発明は更に、シリコン、シリコンカーバイド、又は他の半導体基板に原子状アルミニウムイオンを注入するためのアルミニウム原料物質としてヨウ化アルミニウム(AlI等)を使用することから得られる、イオン源108及びその領域からのヨウ化アルミニウム及びその副産物のいずれかをインサイチュにおいて洗浄する技術を提供する。
【0042】
例えばヨウ化アルミニウムは、イオン注入システム101内のイオン源気化器140内に配置される固体材料である。この固体材料はイオン源気化器140内で適切な温度に加熱されることによって気化される。そして、得られた気化したヨウ化アルミニウムは、イオン化チャンバ内で解離され、次いでイオン化されて、イオン注入プロセスのために抽出される原子アルミニウムイオンを生成する。任意の非イオン化(分子または非解離)材料は、内部表面上に蓄積するか、またはいくつかの成分に分解し得、その主要成分はヨウ化物、ヨウ化アルミニウムおよびアルミニウムである。例えば、アルミニウムがプロセスのターゲット材料であり、ヨウ素は比較的不活性であるが、絶縁体である。残留ヨウ化アルミニウムは水および/または空気に暴露されると反応性が高く、空気に暴露されるとヨウ化水素酸(非常に強い腐食性酸)を形成し、次いでさらに分解してヨウ化水素を形成する。
【0043】
イオン源の内の気化器には、不活性環境(例えば、アルゴン、窒素など)中でヨウ化アルミニウム材料が装填され、材料が空気中の水分と反応し始めないようにする。次に、イオン源をイオン注入機(Ion Implanter)に設置し、バキュームでイオン注入機の動作圧力まで排気する。ヨウ化アルミニウムは、イオン化チャンバに移動する気体を形成するまで気化器内で加熱され、イオン化チャンバでアルミニウムがイオン化され、ビームラインに沿って抽出される。イオン源筐体(および他のビームラインコンポーネント)の内部では、未反応のヨウ化アルミニウム気体がより冷たい表面上で再凝固する。反応の副産物であるヨウ化物はまたイオン源(および他のビームラインコンポーネント)の壁を被覆する。最初のヨウ化アルミニウム材料が使い尽くされるか、使い尽くされると、イオン源は除去され、清浄化され、プロセスを継続するために新たなヨウ化アルミニウムが再装填される。この時点で、未反応のヨウ化アルミニウムおよびヨウ化物を空気に曝露することができ、Iが昇華して気体になるか、または水および/または酸素と反応してヨウ化水素および不活性で完全に反応したヨウ化物酸化物を形成する。
【0044】
しかしながら、ヨウ化アルミニウムがインサイチュで水蒸気に暴露され、液体状の不活性残基を形成する場合、残基のいくらかの部分は気相にあり、ポンプで排出され、注入装置の真空システム排気を通して除去され得る。このインサイチュにおける水蒸気への露出は、毎日のシャットダウンサイクル中のように周期的であってもよいし、イオン源の寿命の最後におこなう一度の露出(パージおよびポンプサイクル)工程であってもよい(または、その目的のための別個準備される専用容器の内部でおこなわれてもよい)。
【0045】
適切な時間にイオン源筐体内の適切な領域に導入された水蒸気を使用すると、ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化アルミニウムを反応させて、それが注入装置の真空システムによって除去されることを可能にし、残りの材料を中和するのを助け、イソプロピルアルコールなどの塩基性溶液で洗浄されることを可能にする。水蒸気は、化学反応および腐食性の態様を最小限に抑える安全な方法でヨウ化アルミニウム副生成物を反応させるように適切に制御されなければならない。
【0046】
このインサイチュでの洗浄なしでは、未反応ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化物の量が特別な汚染除去プロトコルおよび廃棄につながるのであろう。従って、本開示は真空システム(または代替の外部容器)への水蒸気導入を扱い、真空源128の1つ以上の真空ポンプによって、これらのガス放出プロダクトを除去することを可能にするAlIプロダクトの形成を可能にする。
【0047】
これは、待機ビーム動作(例えば、一晩)を活用することなどによって、通常の機械停止期間の間にインサイチュにおいて達成することができる。あるいは、それは一連の個々のパージ/ポンプサイクル(例えば、大気圧くらいの高い圧力で)、または単一のパージ(例えば、大気圧くらいの高い圧力)、続いてポンプダウンサイクルを用いて、気化器が寿命を迎える際にインサイチュにおいて達成され得る。上記のパージおよびポンピングのために、専用の外部容器をさらに設けることができる。
【0048】
したがって、本発明はコイルを加熱することによって加熱される気化器(例えば、円筒形炉)内に配置される固体または粉末状のヨウ化アルミニウム(AlI)を利用する。ヨウ化アルミニウムは気化され、気化された材料は管を通ってアークチャンバ(例えば、イオン源108)に出て行き、そこでイオン化され、ビームラインに沿って移送されてワークピース112に注入される。
【0049】
図2は、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための例示的な方法200を示す。例示的な方法は一連の行為または事象として本明細書に示し説明するが、いくつかのステップは本発明に従って、本明細書に示し説明するものとは別の他のステップと異なる順序で、および/または同時に起こり得るので、本発明はそのような行為または事象の図示される順序によって限定されないことを理解されたい。さらに、全く説明していないステップも、本発明に係る方法に包含し得るように要求することが可能である。さらに、これらの方法は、ここで図示しかつ記載されたシステムに関連して、また、説明しない他のシステムとも関連して包含させることができる。
【0050】
例示的な一態様によれば、図2の工程202において、ヨウ化アルミニウムが供給される。ヨウ化アルミニウム原料物質は例えば、固体または粉末形態であってもよい。工程204では、例えば、ヨウ化アルミニウム原料物質が気化され、イオン源に供給される。工程206では、水素共ガスがイオン源に供給されるか、さもなければイオン源に導入される。水素共ガスは例えば、水素ガスおよびホスフィンガスのうちの1つ以上を含む。工程208では、ヨウ化アルミニウム原料物質がイオン源内でイオン化され、水素共ガスがイオン源内の気化されたヨウ化アルミニウムと反応して揮発性ヨウ化水素ガスを生成する。工程210において、揮発性ヨウ化水素ガスは、真空システムを介して排気されるか、さもなければ除去される。さらに、工程212において、イオン化されたヨウ化アルミニウム原料物質からのアルミニウムイオンがワークピースに注入される。
【0051】
本開示の別の例示的な態様によれば、図3は、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための別の方法300を示す。例えば、方法300は、工程302においてヨウ化アルミニウム原料物質を供給するステップを含む。工程302で供給されるヨウ化アルミニウム原料物質は例えば、固体または粉末形態であってもよい。工程304では、例えば、ヨウ化アルミニウム原料物質が気化され、イオン源に供給される。工程306ではヨウ化アルミニウム原料物質がイオン源でイオン化され、工程308ではイオン化ヨウ化アルミニウム原料物質からのアルミニウムイオンがワークピースに注入される。
【0052】
工程310では、水素共ガスがイオン源に供給されるか、さもなければイオン源に導入される。水素共ガスは例えば、水素ガスおよびホスフィンガスのうちの1つ以上を含む。別の例では、水蒸気もまた、イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネントに導入される。工程310において、イオン注入システムの内部コンポーネントに水蒸気を導入する工程は、例えば、イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネントに空気を導入する工程を含んでもよい。一代替形態では、イオン注入システムの1つまたは複数の内部コンポーネントに水蒸気を導入することは真空下で供給ラインを通る1つまたは複数の内部コンポーネントへの水の流れを制御する工程を含み、それによって水を気化させる。
【0053】
工程312において、イオン源内で水素共ガスおよび/または水蒸気が気化したヨウ化アルミニウムと反応して、イオン源内で揮発性ヨウ化水素ガスを生成し、揮発性ヨウ化水素ガスを生成する。工程312では例えば、水素共ガスおよび水と気化ヨウ化アルミニウムとの反応を介して、イオン注入システムの1つまたは複数の内部コンポーネントから残留ヨウ化アルミニウムおよび残留ヨウ化物のうちの1つ以上を洗浄する工程をさらに含む。
【0054】
工程314では、揮発性ヨウ化水素ガスが真空システムを介して排気されるか、さもなければ除去される。例えば、イオン注入システムを排気し、その中で水蒸気および残留ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素酸を実質的に除去する。
【0055】
ヨウ化アルミニウムは空気から水を吸収してHIおよび酸(例えば、ヨウ化水素酸)ならびに気体のIを形成する吸湿性材料であるため、イオン注入において利用するのが従前より困難な材料である。したがって、ヨウ化アルミニウムおよびその副産物は取り扱いが困難であり(例えば、不活性ガスを有するグローブボックスが材料を取り扱うために典型的に使用される)、コンポーネントはしばしば、使用後などに慎重に洗浄される。しかしながら、ヨウ化アルミニウムは気化器内にあって所望の処理温度(例えば、90~100℃の範囲の温度)である間は、典型的にはアルミナ等に見られる副生成物を生成することなく良好に機能する。
【0056】
任意の原料物質と同様に、残留物質は、典型的には残される。気体原料物質を注入する場合、残留物質は、典型的には真空装置を介して装置からポンプで排出され得る。しかしながら、固体原料物質を利用して注入する場合、残留物は通常、イオン化されていないイオン源から現れる固体であり、それによって、イオン化されていない材料は、ビームラインに沿って遭遇する次の冷たい表面を被覆する。ヨウ化アルミニウムとともに、イオン化されていないAlIはビームライン内の冷たいコンポーネントを被覆する。そして、当該材料は吸湿性であるために、コンポーネントの取り出しおよび空気中の水蒸気への曝露が洗浄の妨げになる可能性がある。しかしながら、本開示は固体材料の電荷が寿命を迎えた際、またはイオン源の動作と同時に、水素共ガス(例えば、水素またはホスフィンなどの水素含有ガスのインサイチュ導入)を導入し、その後、真空システムを通して結果として生じる揮発性ヨウ化水素を排気する。
【0057】
本発明はいくらかの手動洗浄が依然として実行される必要があるが、AlIの大部分が水蒸気を介して除去されることを理解する。イソプロピルアルコールを用いて手動洗浄をさらに行うことができる。
【0058】
1つのアプローチは、イオン源が冷却されている間に水蒸気を導入することである。少量の水蒸気が定期的に導入される場合、装置は動作中に継続してきれいな状態を保つことができ、最終的な大規模洗浄は必要ない。
【0059】
あるいは装置が供給原料物質の使用の最終段階において大量の水蒸気に曝露され得、装置はポンプで排気され、曝露は複数回繰り返される。低温特性のために、温かいコンポーネントは材料の蓄積と同じ程度に影響せず、蓄積は非ビーム衝突領域でよく起こることが理解される。
【0060】
一例では、固体原料物質を使用する作業サイクルの端部(例えば、生産日の端部)に、「シャットダウンビーム」を実行して(例えば、アルゴンビーム)、気化器の温度が下がり材料が冷却される場合でもアークチャンバ内の活性プラズマが維持され、冷却中に非イオン化環境になることを実質的に防止する。従って、アルゴンビームはコンポーネントを暖かく保ち、冷却期間中、制御された量の水蒸気が、その日の動作の最後の数時間の間にシステムに注入される。
【0061】
水蒸気をインサイチュで導入する代わりに、水蒸気をより大きな系で導入し、装置はその後、空気に通気され、それによって、AlIは液化または気化され、次いで、真空装置を介して排気される。
【0062】
本発明は1つまたは複数の特定の実施形態に関して示し説明したが、上述の実施形態は本発明のいくつかの実施形態の実装のための例としてのみ役立ち、本発明の適用はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に上述のコンポーネント(アセンブリ、装置、回路、システム等)によって実行される種々の機能に関して、そのようなコンポーネントを説明するために使用される用語(「手段」に対する参照を含めて)は他に表示されていなければ、たとえ開示された構成に構造的に同等でなくても本発明のここで図示された例示的実施形態においてその機能を果たすものであれば、説明されたコンポーネントの特定された機能を実行する(即ち、機能的に同等である)いずれかのコンポーネントに相当するものと意図されている。更に、本発明の特定の特徴が幾つかの実施形態のただ一つに対して開示したが、そのような特徴はいずれかの或る又は特定の用途にとって望ましくかつ有利な他の実施形態における一つ以上の特徴と組み合わされ得るものである。したがって、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲およびその同等によってのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本開示のいくつかの態様によるヨウ化アルミニウムイオン原料物質を利用する例示的な真空システムのブロック図である。
図2】原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用して、ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための例示的な方法を示す。
図3】原料物質としてヨウ化アルミニウムを使用するイオン注入システムを洗浄するための例示的な方法を示す。
図1
図2
図3