(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】フォトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/29 20120101AFI20231113BHJP
G03F 1/32 20120101ALI20231113BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20231113BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G03F1/29
G03F1/32
G03F1/58
C23C14/06
(21)【出願番号】P 2020000749
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】田中 千恵
(72)【発明者】
【氏名】山田 歩実
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆史
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024264(JP,A)
【文献】特開2018-180507(JP,A)
【文献】特開2018-109672(JP,A)
【文献】特開2018-163335(JP,A)
【文献】特開2006-091917(JP,A)
【文献】特開平09-325469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0154816(US,A1)
【文献】米国特許第06255023(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過部と第1の位相シフト部と第2の位相シフト部とを備え、
前記第1の位相シフト部及び前記第2の位相シフト部は、前記透過部を囲み、
前記第2の位相シフト部は、前記第1の位相シフト部と前記透過部との間に介在し、
前記第2の位相シフト部及び前記第1の位相シフト部は、露光光の位相を反転し、
前記第2の位相シフト部は前記第1の位相シフト部より透過率が低
く、
前記第2の位相シフト部は前記透過部に隣接した外縁部にのみ設けられている
ことを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
前記第1の位相シフト部の透過率は、8~15%であり、
前記第2の位相シフト部の透過率は、3~7%であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記第1の位相シフト部及び前記第2の位相シフト部の位相シフト量は、160[°]以上、210[°]以下の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記第1の位相シフト部の位相シフト量は、160[°]以上、190[°]以下の範囲、
前記第2の位相シフト部の位相シフト量は、180[°]以上、210[°]以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスク。
【請求項5】
前記第2の位相シフト部は、前記第1の位相シフト部を構成する位相シフト膜と半透過膜との積層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィー工程で使用されるフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の電子デバイスを製造するためのリソグラフィー工程でフォトマスクが使用されている。従来より、ホールパターンをフォトレジストに転写するためのフォトマスクは、遮光部と透過部とを備え、ホールパターンに対応する箇所が透過部となるバイナリーマスクが用いられている。
近年では、例えば2[μm]以下の微細なホールパターンの形成を可能とするために、ホールのパターニング用のフォトマスクとして、位相シフトマスクが提案されている。位相シフトマスクは、従来のバイナリーマスクに比べ、解像度の向上だけでなく焦点深度(DOF)の改善効果があることが知られている。(例えば特許文献1の第4段落参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、位相シフトマスクを用いて、微細なホールパターンをフォトレジストに転写する場合、焦点深度の向上効果が得られる反面、高い露光量(Dose)を必要とする。そのため、露光時間が増大し、露光装置のタクトタイムが増大するという問題がある。
そのため、従来のフォトマスクは、電子デバイスを製造するためのリソグラフィー工程での実使用条件のさらなる厳しい要求に対して、十分に満足できるものではない。
また、LSI等の半導体装置製造工程で要求されるDOFより1桁高いDOFが要求されるため、半導体装置製造用の微細化技術(半導体プロセス技術)によりこのような厳しい要求を満足させることもできない。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は、微細なホールパターンの安定的な解像が可能なフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフォトマスクは、
透過部と第1の位相シフト部と第2の位相シフト部とを備え、
前記第1の位相シフト部及び前記第2の位相シフト部は、前記透過部を囲み、
前記第2の位相シフト部は、前記第1の位相シフト部と前記透過部との間に介在し、
前記第2の位相シフト部及び前記第1の位相シフト部は、露光光の位相を反転し、
前記第2の位相シフト部は前記第1の位相シフト部より透過率が低い
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るフォトマスクは、
前記第1の位相シフト部の透過率は8~15%であり、
前記第2の位相シフト部の透過率は3~7%であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るフォトマスクは、
前記第1の位相シフト部及び前記第2の位相シフト部の位相シフト量は、160[°]以上、210[°]以下の範囲であることを特徴とする。
【0009】
このような構成とすることで、リソグラフィー工程でのDOF及び必要露光量の改善が可能なフォトマスクを提供することができる。
【0010】
また、本発明に係るフォトマスクは、
前記第1の位相シフト部の位相シフト量は、160[°]以上、190[°]以下の範囲、
前記第2の位相シフト部の位相シフト量は、180[°]以上、210[°]以下の範囲であることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることで、第1の位相シフト部及び第2の位相シフト部の位相シフト量を調整することが容易になる。
【0012】
また、本発明に係るフォトマスクは、
前記第2の位相シフト部は、前記第1の位相シフト部を構成する位相シフト膜と半透過膜との積層であることを特徴とする。
【0013】
このような構成とすることで、フォトマスクの製造が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微細なホールパターンの安定的な解像が可能なフォトマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1によるフォトマスクの平面図(a)及びリソグラフィー特性(DOF及び必要露光量)の改善効果を説明するグラフ(b)、(c)である。
【
図2】実施形態1によるフォトマスクの主要工程を示す断面図(a)、(b)、及び平面図(c)である。
【
図3】実施形態1によるフォトマスクの主要工程を示す断面図(a)~(c)、及び平面図(d)である。
【
図4】実施形態2によるフォトマスクの主要工程を示す断面図である。
【
図5】実施形態2によるフォトマスクの主要工程を示す断面図(a)及び平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0017】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明に係るフォトマスク100を示す平面図であり、
図1(b)、(c)はフォトレジストを露光する場合のDOF及び必要露光量について、本フォトマスク100の改善効果を説明するグラフである。フォトマスク100をリソグラフィー工程に用いることにより、露光対象であるフォトレジストに微細ホール(特に1.5[μm]~2.0[μm]のサイズ)を安定的に解像することが可能となる。
【0018】
フォトマスク100は、レジストにホールパターンを形成するための透過部101を囲むように、第1の位相シフト部102が形成されており、透過部101(開口部)と第1の位相シフト部102との間に第2の位相シフト部(リム(外縁)部)103が介在している。したがって、透過部101は、第2の位相シフト部103に接し、第2の位相シフト部103は、第1の位相シフト部102に接している。
第1の位相シフト部102及び第2の位相シフト部103は、電子デバイス製造のためのリソグラフィー工程で使用される露光光を反転することができる位相シフト量を有している。
【0019】
透過部101(開口部)と第1の位相シフト部102との相対距離に相当する第2の位相シフト部の幅R(
図1参照)は、0[μm]<R≦1[μm]、さらに好適には0.5[μm]≦R≦1[μm]である。第2の位相シフト部(リム部)103は第1の位相シフト部102と比較して露光光に対する透過率が低い。すなわち、ホール開口用パターンの透過部101の周囲を低透過率の位相シフト部(第2の位相シフト部103)及び高透過率の位相シフト部(第1の位相シフト部102)が順に取り囲むように形成されている。
【0020】
透過部101のリソグラフィー工程における露光光(i線)に対する透過率は90~100%(90%≦透過率≦100%)であり、フォトマスクの透過性基板により決まる。
第1の位相シフト部102の、露光光(i線)に対する位相シフト量(位相差)は略180[°]であり、透過率は8~15%(8%≦透過率≦15%)である。
第2の位相シフト部103の、露光光(i線)に対する位相シフト量は略180[°]であり、透過率は3~7%(3%≦透過率≦7%)である。
上記のとおり第1の位相シフト部102及び第2の位相シフト部103は、ともに略180[°](具体的には160[°]≦位相シフト量≦210[°])であり、露光光の位相を反転する。また、第2の位相シフト部103は第1の位相シフト部102に対して透過率が低い。
なお、後述するように、例えば第1の位相シフト部102を単層構造、第2の位相シフト部103を積層構造により構成する場合、第1の位相シフト部102及び第2の位相シフト部103の位相シフト量は、それぞれ、例えば160[°]≦位相シフト量≦190[°]及び180[°]≦位相シフト量≦210[°]としてもよい。これらの位相シフト量の仕様にすることで、第1の位相シフト部102及び第2の位相シフト部103の位相シフト量を調整することが容易になり、またフォトマスクの製造も容易になる。
【0021】
微細パターンを有するLSIを製造する半導体プロセスのDOF要求値がせいぜい1[μm]程度であるのに対し、フラットパネルディスプレイ等の電子デバイスでのリソグラフィー工程においては、例えばサイズ2.0[μm]以下のホールのパターンを安定的に転写する場合、半導体プロセスのDOF要求値に対して10倍以上もの高いDOFが要求される。
本発明によれば、このような厳しい条件を満足することができることを確認し、さらに、特許文献1に開示された最小の必要露光量(EOP)より、さらなる低減効果を得ることが確認された。
また第2の位相シフト部103の幅Rについて調査した結果、特に好適な幅Rは、0.5~1.0[μm]であることが確認され。
【0022】
DOF及びEOPの改善効果を
図1(b)、(c)に示す。
図1(b)、(c)は、フォトレジスト膜に2[μm]サイズのホールパターンをマスク上のS(辺の長さ)とほぼ同等サイズに形成する場合のDOFと必要露光量(EOP)の条件依存性を示すグラフである。
図1(b)、(c)のグラフの縦軸の「DOF」及び「EOP」は、それぞれ、透過部と遮光部とからなる従来のバイナリマスクのDOF及びEOPに対する比を示す。
図1(b)、(c)において「PS」は、露光光(i線)に対する透過率が5%の単体の(第2の位相シフト部103を有しない)位相シフト膜を用いたフォトマスクを意味する。「PS+PS-Rim」は、高透過率の第1の位相シフト部102と低透過率の第2の位相シフト部103とを備えるフォトマスクを意味し、第1の位相シフト部102の透過率は12%であり、第2の位相シフト部103の透過率は5%である。
なお、位相シフト量はいずれも180[°]である。
【0023】
「PS」の場合、従来のバイナリマスクと比較してDOFが約1.5倍に増大し改善効果が確認されるが、EOPは1.3倍に増加するという問題がある。
「PS+PS-Rim」の場合、DOFは従来のバイナリマスクと比較して約1.9倍に増加し、「PS」と比較しても、更なる改善効果を有することが確認された。その一方、EOPは約1.1倍であり、従来のバイナリマスクと同程度である。
すなわち、第1の位相シフト部102と第2の位相シフト部103を備えるフォトマスクにより、必要露光量の増大を抑え(軽減し)ながら、DOFの大幅な改善効果を得ることが確認された。
【0024】
また、第2の位相シフト部103の透過率を5%とし、第1の位相シフト部102の透過率を8~15%の範囲で増加させることにより、DOFは増加する傾向があるが、EOPについては殆ど変化がない(むしろ僅かながら減少する)ことが確認された。そのため、透過率に対するマージン(例えばフォトマスクの面内透過率の均一性に対するマージン)があり、安定した露光条件を実現できる
なお、上記の傾向は、第2の位相シフト部103の透過率が3~7%の範囲でも同様である。
一方、低透過率の第2の位相シフト部103を備えない単体の位相シフト膜のみを用いた位相シフトマスクの場合、EOPの位相シフト膜の透過率に対する依存性が高く、位相シフト膜の透過率が変動することによる影響を受けやすいことが確認された。
【0025】
このように、フォトマスク100は、十分に高いDOFを有しており、レジストの膜厚に対して十分なリソグラフィープロセスのマージンを確保できる。さらにホール開口に必要な露光量の増大を抑えることも可能となる。そのため、電子デバイスの製造時のリソグラフィー工程に対する要望を満足し、安定してレジスト膜にホールパターンを形成することができる。
【0026】
なお、露光光がi線の場合について説明したが、露光光はi線に限定されず、i線、h線、及びg線又はこれらの混合光であってもよい。位相シフト量、透過率は露光光の代表波長に対して設定することができる。なお、他の実施形態でも同様である。
【0027】
以下、本実施形態のフォトマスク100の製造工程を詳細に説明する。
図2(a)に示すように、合成石英ガラス等の透過性基板1を準備し、透過性基板1上に、例えばCr系金属化合物等からなる半透過膜2(ハーフトーン膜)をスパッタ法、蒸着法等により(例えば膜厚5[nm]~20[nm])成膜する。
このとき、半透過膜2の露光光(i線)に対する透過率は、例えば、組成及び膜厚を調整することにより、40~70%になるよう設定する。
【0028】
次に、
図2(b)に示すように、半透過膜2上に(フォト)レジスト膜を形成し、露光及び現像プロセスによりレジスト膜をパターニングする。その後、パターニングされたレジスト膜をマスクに、半透過膜2をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングし、半透過膜2からなるパターン3を形成する。その後、レジスト膜をアッシング法やレジスト剥離液に浸漬することにより除去する。
パターン3の断面の幅は、
図1(a)の第2の位相シフト部の幅Rに設定する。
なお、後続するリソグラフィのため、半透過膜2をパターニングしてアライメントマークを適宜形成してもよい。
【0029】
図2(c)は、
図2(b)に示す工程におけるフォトマスク100の平面図であり、パターン3のレイアウトを示す。パターン3は、ホールパターンを形成するための開口部4の周囲を囲むリム部(外縁部)として形成されている。
例えば2.0[μm]のホールパターンをフォトレジスト膜に転写する場合、フォトマスク100の開口部4の好適なサイズS(辺の長さ)は2.2~2.4[μm]である。
【0030】
次に
図3(a)に示すように、例えばCr系金属化合物等からなる位相シフト膜5(位相反転膜)をスパッタ法、蒸着法等により(例えば膜厚50[nm]~100[nm])成膜する。位相シフト膜5の露光光(i線)に対する透過率は8~15%、位相シフト量は160~190[°]となるよう、組成及び膜厚を調整する。
例えば、パターン3(半透過膜2)と位相シフト膜5とは、好適には同じ膜種(同じ組成)を使用することができるが、異なる膜種であってもよい。例えば、Ti系金属化合物であってもよい。
【0031】
次に
図3(b)に示すように、レジスト膜6を形成し、露光及び現像プロセスにより、レジスト膜6をパターニングする。この工程において、開口部4に相当する箇所のレジスト膜6が除去される。すなわち、パターニングされたレジスト膜6は、パターン3に囲まれた領域において、位相シフト膜5を露出する。
【0032】
次に
図3(c)に示すように、パターニングされたレジスト膜6をマスクに、位相シフト膜5をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングしてパターニングする。その後レジスト膜6をアッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより除去する。
図3(c)に示すように、位相シフト膜5からなる第1の位相シフト領域7、及びパターン3を構成する半透過膜2と位相シフト膜5との積層からなる第2の位相シフト領域8が形成される。また、開口部4において、透過性基板1が露出する。
【0033】
図3(d)は、
図3(c)に示す工程におけるフォトマスクの平面図である。開口部4を囲むように第2の位相シフト領域8が形成されており、さらに第2の位相シフト領域8を囲むように第1の位相シフト領域7が形成されている。したがって、第2の位相シフト領域8の内周と開口部4の外周とが接し、第1の位相シフト領域7の内周が第2の位相シフト領域8の外周と接している。
第1の位相シフト領域7は、
図1の第1の位相シフト部102に相当し、第2の位相シフト領域8は、第2の位相シフト部103に相当し、開口部4は透過部101に相当する。
【0034】
第1の位相シフト領域7は、位相シフト膜5からなり、露光光に対する透過率は8~15%、位相シフト量は160~190[°]である。
第2の位相シフト領域8は、半透過膜2と位相シフト膜5との積層からなり、露光光に対する透過率は3~7%となり、位相シフト量は180~210[°]となる。半透過膜2と位相シフト膜5との積層の位相シフト量が180~210[°]となるように設定できればよく、半透過膜2自体の位相シフト量は特に限定されない。例えば、半透過膜2自体の位相シフト量は小さく(略0[°]、例えば0~20[°])設定することができる。半透過膜2が位相シフト膜5と同じ膜種の場合でも、半透過膜2での位相シフト量を少なく(膜厚を薄く)設定し、積層構造の第2の位相シフト領域8における位相シフト量を略180[°]とし、透過率を低くなるよう調整することができる。
【0035】
以下に、代表的な成膜条件例を示す。なお、下層膜は、積層構造の第2の位相シフト領域8において、下層側(透過性基板1側)に形成される膜(この場合半透過膜2)を意味し、上層膜は、上層側(下層膜上)に形成される膜(この場合位相シフト膜5)を意味する。
<条件1>
:材質 :膜種 :膜厚 :透過率 :位相差
下層膜:Cr系化合物:ハーフトーン膜 :7nm :60% : -
上層膜:Cr系化合物:位相シフト膜 :75nm:10% :185°
積層 : :積層構造 : :5% :194°
<条件2>
:材質 :膜種 :膜厚 :透過率 :位相差
下層膜:Cr系化合物:ハーフトーン膜 :15nm:47% : -
上層膜:Cr系化合物:位相シフト膜 :67nm:12% :174°
積層 : :積層構造 : :5% :185°
<条件3>
:材質 :膜種 :膜厚 :透過率 :位相差
下層膜:Cr系化合物:ハーフトーン膜 :17nm:44% : -
上層膜:Cr系化合物:位相シフト膜 :62nm:12% :180°
積層 : :積層構造 : :5% :200°
【0036】
上記例では透過率の低い第2の位相シフト領域8は、半透過膜2と位相シフト膜5との積層で形成されており、位相シフト膜5によって、位相シフト量の値の大部分が確定する。
位相シフト膜5は、位相シフト量の波長依存性の低い、例えば位相シフトの変動が20[°]以内の非波長依存型ハーフトーン膜(所謂「フラット膜」)が好適に使用できる。ただし、上記条件を満足すればよいため、非波長依存型ハーフトーン膜に限定するものではない。また、半透過膜2については、例えば位相シフト量が小さい条件(膜厚等)を採用することも可能であり、特に非波長依存型ハーフトーン膜を採用する必要性はなく、通常の半透過膜(波長依存型ハーフトーン膜)又は非波長依存型ハーフトーン膜のいずれの膜を採用してもよい。
【0037】
なお、半透過膜2及び位相シフト膜5のパターニング方法は、上記
図2、
図3に示される方法に限定されない。例えば、
図2(b)の工程において、第1の位相シフト部102に相当する領域の半透過膜2をエッチングし(すなわち透過部101と第2の位相シフト部103に相当する領域の半透過膜2を残置し)、その後位相シフト膜5を形成し、
図3(b)の工程で、開口部4(透過部101)に相当する領域の半透過膜2及び位相シフト膜5の積層をエッチングしてもよい。
【0038】
なお、半透過膜2及び位相シフト膜5の材質は、Cr金属化合物に限定するものではない。既知の他の金属系化合物を使用してもよい。
【0039】
(実施形態2)
上記実施形態1では、半透過膜2を透過性基板1上に形成し、パターニングした後に、位相シフト膜5を形成し、フォトマスク100を製造する方法を説明した。
しかし、位相シフト膜5を透過性基板1上に形成した後に半透過膜2を形成してもよい。即ち、第2の位相シフト部103において、半透過膜2と位相シフト膜5との上下関係を、実施形態1と反対に構成してもよい。
以下、実施形態2のフォトマスク100の製造工程について説明する。
【0040】
図4(a)に示すように、透過性基板1上に位相シフト膜5(位相反転膜)をスパッタ法、蒸着法等により成膜する。位相シフト膜5の透過率及び位相シフト量は上記のとおりである。
【0041】
次に、
図4(b)に示すように、半透過膜2をスパッタ法、蒸着法等により成膜する。半透過膜2の透過率は上記のとおりである。その後、レジスト膜9(第1のレジスト膜)を形成し、露光及び現像プロセスにより、レジスト膜9をパターニングする。この工程において、開口部4に相当する箇所のレジスト膜9が除去される。
【0042】
次に、
図4(c)に示すように、レジスト膜9をマスクに半透過膜2及び位相シフト膜5を、例えばウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングする。半透過膜2及び位相シフト膜5に開口部4が形成され、透過性基板1が露出する。その後、アッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより、レジスト膜9を除去する。
なお、後続するリソグラフィのため、半透過膜2及び位相シフト膜5の積層をパターニングし、アライメントマークを適宜形成してもよい。
【0043】
次に、
図4(d)に示すように、レジスト膜10(第2のレジスト膜)を形成し、露光及び現像プロセスにより、レジスト膜10をパターニングする。レジスト膜10のパターンは、開口部4を囲み、半透過膜2及び位相シフト膜5の積層膜とオーバーラップするように構成されている。オーバーラップ幅はRに設定する。開口部4と、それを囲む第2の位相シフト領域8とから構成されるパターン領域のレジスト膜10が残置される。
なお、オーバーラップ幅は、後続する半透過膜2のエッチング工程でのサイドエッチング量を考慮して、Rにサイドエッチング量を加えた値に設定してもよい。
【0044】
次に、
図5(a)に示すように、レジスト膜10をマスクに、位相シフト膜5上の半透過膜2を、例えばウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングする。
その後、アッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することによりレジスト膜10を除去する。
なお、位相シフト膜5を残置し、位相シフト膜5上の半透過膜2をエッチングするため、好適には、位相シフト膜5と半透過膜2とを異なる材料で構成することができる。例えば、位相シフト膜5と半透過膜2の一方をCr系金属化合物、他方をTi系金属化合物で構成する組み合わせを使用できる。その結果、位相シフト膜5上の半透過膜2を選択的にエッチングすることが可能になる。
また、位相シフト膜5と半透過膜2とを同じ材料で構成し、エッチング時間を半透過膜2のエッチング時間と同じに設定することで、位相シフト膜5上の半透過膜2を除去してもよい。
【0045】
図5(b)は、
図5(a)におけるフォトマスクの平面図である。
開口部4を囲むように幅Rの第2の位相シフト領域8が形成され、さらに第2の位相シフト領域8を囲むように第1の位相シフト領域7が形成されている。
図3(d)に示す第2の位相シフト領域8は半透過膜2上に位相シフト膜5が形成されているのと異なり、
図5(b)に示す第2の位相シフト領域8は、位相シフト膜5上に半透過膜2が形成されている。
本実施形態2においても、DOFと露光量の改善効果が得られることは言うまでもない。
【0046】
実施形態2のフォトマスクの製造方法は、実施形態1のフォトマスクの製造方法に比べ、平坦な位相シフト膜5上に半透過膜2を形成するため、半透過膜2の成膜が容易になる。その一方、実施形態2のフォトマスクの製造方法は、実施形態1のフォトマスクの製造方法に比べ、第2の位相シフト領域8の上層に形成される膜を下層に形成された膜上でエッチングする必要があるため、エッチングの制御を正確に行う必要がある。
【0047】
なお、上記実施形態2において、位相シフト膜5上に半透過膜2を形成したが、位相シフト膜5と半透過膜2とを同じ材質で構成する場合、積層構造を採用せず位相シフト膜5の膜厚と半透過膜2との膜厚との和に等しい位相シフト膜51を形成してもよい。
図4(b)の工程において、位相シフト膜5と半透過膜2との積層を単層の位相シフト膜51に置き換え、以降レジスト膜9を用いてエッチングし、
図4(c)~
図5(a)の工程により、第1の位相シフト領域7及び第2の位相シフト領域8を形成してもよい。
この場合、
図5(a)の工程において、位相シフト膜51のエッチング量(エッチング時間)を調整し、第2の位相シフト領域8は、第1の位相シフト領域7よりも所望の厚さだけ厚く構成することができる。その結果、第2の位相シフト領域8の透過率を第1の位相シフト領域7よりも低く設定できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、微細なホールパターンの安定的な解像が可能なフォトマスクを提供することが可能となり、例えばフラットパネルディスプレイ等の表示装置用電子デバイスの製造工程で好適に利用でき産業上の利用可能性は大きい。
特に表示装置用電子デバイスの製造のような、DOFについての要求値が厳しい、リソグラフィー工程で、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 透過性基板
2 半透過膜
3 パターン
4 開口部
5 位相シフト膜
6 レジスト膜
7 第1の位相シフト領域
8 第2の位相シフト領域
9 レジスト膜
10 レジスト膜
51 位相シフト膜
100 フォトマスク
101 透過部
102 第1の位相シフト部
103 第2の位相シフト部