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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】物体検出装置、及び、物体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231113BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G06T7/00 650B
G06T1/00 330B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020000902
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111018
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】益子 泰一郎
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-185555(JP,A)
【文献】特開2010-020808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の移動中において前記車両の周辺領域の移動物体を検出するための物体検出装置であって、
第1時刻に取得された前記周辺領域の画像のエッジを抽出するエッジ抽出部と、
前記画像の各領域に対応する複数のセルに対して、前記エッジの抽出結果に基づいてエッジ量を設定するエッジ量設定部と、
前記エッジ量が一定以上の前記セルを、前記第1時刻において前記移動物体が存在する前記セルの候補点として設定する候補点設定部と、
前記第1時刻の前記候補点と、前記第1時刻よりも前の第2時刻における前記移動物体の推定結果とに基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の推定結果を算出する推定部と、
前記第1時刻における前記推定結果に基づいて、前記第1時刻において前記周辺領域に存在する前記移動物体を検出する検出部と、
を備える物体検出装置。
【請求項2】
前記第1時刻の前記候補点である前記セルと当該セルの周囲の前記セルに対して、当該候補点である前記セルが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、度数分布を生成する分布生成部を備え、
前記推定部は、前記度数分布と前記第2時刻における前記移動物体の推定結果との乗算結果に基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の推定結果を算出する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記候補点設定部は、前記度数分布において前記度数が一定以上である前記セルを、前記第1時刻において前記移動物体が存在する前記セルの新たな候補点として設定し、
前記分布生成部は、前記第1時刻の前記新たな候補点である前記セルと当該セルの周囲の前記セルに対して、当該新たな候補点である前記セルが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、新たな度数分布を生成し、
前記推定部は、前記新たな度数分布と前記第2時刻における前記移動物体の推定結果との乗算結果に基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の推定結果を算出する、
請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
車両の移動中において前記車両の周辺領域の移動物体を検出するための物体検出方法であって、
第1時刻に取得された前記周辺領域の画像のエッジを抽出するエッジ抽出工程と、
前記画像の各領域に対応する複数のセルに対して、前記エッジの抽出結果に基づいて前記セルのそれぞれにエッジ量を設定するエッジ量設定工程と、
前記エッジ量が一定以上の前記セルを、前記第1時刻において前記移動物体が存在する前記セルの候補点として設定する候補点設定工程と、
前記第1時刻の前記候補点と、前記第1時刻よりも前の第2時刻における前記移動物体の推定結果とに基づいて、前記第1時刻における前記移動物体の推定結果を生成する推定工程と、
前記第1時刻における前記推定結果に基づいて、前記第1時刻において前記周辺領域に存在する前記移動物体を検出する検出工程と、
を備える物体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置、及び、物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、立体物検出装置が記載されている。この装置は、カメラによる撮像で得られた所定領域の撮像画像データを入力し、入力した撮像画像データの鳥瞰視画像データを生成する。また、この装置は、現時刻における鳥瞰視画像と一時刻前の鳥瞰視画像との差分画像を生成する。そして、この装置は、生成した差分画像に基づいて、立体物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/129357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した立体物検出装置では、現時刻の画像と一時刻前の画像との差分画像を利用することにより、隣接車両の適切な検出を図っている。一方で、隣接車両といった移動物体の検出に際して、このような画像認識を用いる場合には、高性能な処理装置が必要となり、コストが増大する。
【0005】
本発明は、移動物体の検出に際してコストの増大を抑制可能な物体検出装置、及び、物体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物体検出装置は、車両の移動中において車両の周辺領域の移動物体を検出するための物体検出装置であって、第1時刻に取得された周辺領域の画像のエッジを抽出するエッジ抽出部と、画像の各領域に対応する複数のセルに対して、エッジの抽出結果に基づいてエッジ量を設定するエッジ量設定部と、エッジ量が一定以上のセルを、第1時刻において移動物体が存在するセルの候補点として設定する候補点設定部と、第1時刻の候補点と、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の推定結果とに基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果を算出する推定部と、第1時刻における推定結果に基づいて、第1時刻において周辺領域に存在する移動物体を検出する検出部と、を備える。
【0007】
本発明に係る物体検出方法は、車両の移動中において車両の周辺領域の移動物体を検出するための物体検出方法であって、第1時刻に取得された周辺領域の画像のエッジを抽出するエッジ抽出工程と、画像の各領域に対応する複数のセルに対して、エッジの抽出結果に基づいてセルのそれぞれにエッジ量を設定するエッジ量設定工程と、エッジ量が一定以上のセルを、第1時刻において移動物体が存在するセルの候補点として設定する候補点設定工程と、第1時刻の候補点と、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の推定結果とに基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果を算出する推定工程と、第1時刻における推定結果に基づいて、第1時刻において周辺領域に存在する移動物体を検出する検出工程と、を備える。
【0008】
これらの装置及び方法では、車両の周辺領域の画像のエッジが抽出されると共に、画像の各領域に対応する複数のセルのそれぞれに対してエッジ量が設定される。また、エッジ量が一定以上のセルが、第1時刻において移動物体が存在する候補点として設定される。さらに、第1時刻の候補点と、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体の推定結果とに基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果が生成される。そして、この推定結果に基づいて移動物体が検出される。このように、これらの装置及び方法では、移動物体の検出に際して、より計算負荷の低い画像のエッジ量が利用されるため、高性能な処理装置が不要となる。よって、移動物体の検出に際してコストの増大が抑制され得る。
【0009】
本発明に係る物体検出装置では、第1時刻の候補点であるセルと当該セルの周囲のセルに対して、当該候補点であるセルが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、度数分布を生成する分布生成部を備え、推定部は、度数分布と第2時刻における移動物体の推定結果との乗算結果に基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果を算出してもよい。この場合、ノイズの影響が低減され、検出精度が向上される。
【0010】
本発明に係る物体検出装置では、候補点設定部は、度数分布において度数が一定以上であるセルを、第1時刻において移動物体が存在するセルの新たな候補点として設定し、分布生成部は、第1時刻の新たな候補点であるセルと当該セルの周囲のセルに対して、当該新たな候補点であるセルが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、新たな度数分布を生成し、推定部は、新たな度数分布と第2時刻における移動物体の推定結果との乗算結果に基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果を算出してもよい。この場合、ノイズ影響がより低減され、より検出精度が向上される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動物体の検出に際してコストの増大を抑制可能な物体検出装置、及び、物体検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る物体検出システムが搭載された車両を示す模式図である。
図2図2は、図1に示された物体検出システムの構成を示す模式図である。
図3図3は、図1,2に示された物体検出装置の機能的な構成を示す図である。
図4図4は、物体検出装置の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、物体検出の対象となる領域の画像、及び、エッジの抽出結果を示す画像の一例である。
図6図6は、第1時刻の度数分布の一例を示す図である。
図7図7は、推定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面の説明においては、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る物体検出システムが搭載された車両を示す模式図である。図2は、図1に示された物体検出システムの構成を示す模式図である。図1の(a)は平面図であり、図1の(b)は側面図である。車両Cは、例えば、バス等の商用車両やトラック等の産業車両であり得る(図示の例ではトラックである)。また、車両Cは、普通乗用車に比べて車高の高い大型車両や中型車両等であり得る。車両Cは、車体Cbと、車幅方向(ここではY軸方向)の両側において車体Cbに取り付けられた一対のミラーステーCsとを含む。
【0015】
物体検出システム100は、車両Cに搭載されている。物体検出システム100は、物体検出装置1、撮像装置50、及び、出力装置60を備えている。物体検出装置1については後述する。撮像装置50は、所定の領域を撮像して画像を取得可能な装置であり、例えば、電子ミラーや監視カメラ等である。撮像装置50は、一対のミラーステーCsのそれぞれに設けられている。したがって、撮像装置50は、車両Cの車幅方向の両側に設けられることとなる。
【0016】
また、撮像装置50は、(ミラーステーCsの位置に応じて)車両Cの前後方向(ここではX軸方向)における車両Cの前方に設けられている。さらに、撮像装置50は、車両Cの高さ方向(ここではZ軸方向)の中心よりも上方に設けられ得る。これにより、撮像装置50の撮像領域50rは、車体Cbの側面近傍であり路面Rsを含む車両Cの側方の領域(周辺領域)R(車両Cの運転者から死角となる領域)を含むようにされている。撮像装置50は、取得した画像を物体検出装置1等に出力する。
【0017】
出力装置60は、物体検出装置1から検出結果を示す情報を取得して出力する。出力装置60は、例えば、ディスプレイ、スピーカー、及び、バイブレータ等であって、車両Cの運転者に対して視覚や音声や振動等によって物体検出装置1の検出結果を出力可能とされている。なお、車両Cには、車両Cの後部において車両Cの車幅方向の両側部分のそれぞれに対して、後側方監視装置51が設けられている。後側方監視装置51は、一例として、所定の検知範囲51rを有するバックカメラ又はレーザレーダ等である。
【0018】
引き続いて、物体検出装置1について説明する。図3は、図1,2に示された物体検出装置の機能的な構成を示す図である。図3に示される物体検出装置1は、車両Cの移動中において、車両Cの周辺領域である領域Rの移動物体を検出するためのものである。物体検出装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニットにおいて構成され得る。物体検出装置1の後述する各機能部は、ROMに記録されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより実現され得る。
【0019】
まず、物体検出装置1の各部の動作の概要について説明する。物体検出装置1は、画像生成部11、エッジ抽出部12、エッジ量設定部13、候補点設定部14、分布生成部15、推定部16、及び、検出部17を有している。画像生成部11は、撮像装置50から領域Rの撮像画像の入力を受けると共に、撮像画像から後の処理に適した画像(以下、「対象画像」という場合がある)を生成する。エッジ抽出部12は、対象画像のエッジを抽出する。エッジ量設定部13は、対象画像を構成する各領域に対応する複数のセルのそれぞれに対して、エッジの抽出結果に基づいてエッジ量を設定する。
【0020】
候補点設定部14は、エッジ量が一定以上のセルを、移動物体が存在するセルの候補点として設定する。分布生成部15は、候補点であるセルと当該セルの周囲のセルに対して、当該候補点であるセルが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、度数分布を生成する。推定部16は、現在(第1時刻)の候補点と、当該第1時刻よりも前の過去(第2時刻)における移動物体の推定結果とに基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果を生成する。検出部17は、第1時刻における移動物体の推定結果に基づいて、第1時刻において領域Rに存在する移動物体を検出する。検出部17は、検出結果を示す情報を出力装置60に出力する。
【0021】
引き続いて、物体検出装置1の各部の動作の詳細について説明する。図4は、物体検出装置の動作を示すフローチャートである。図4に示されるフローチャートは、本実施形態に係る物体検出方法を示す。
【0022】
この方法では、まず、画像生成部11が、撮像装置50から撮像画像(第1時刻に取得された領域Rの画像)の入力を受ける。図5の(a)は、入力画像の一例である。入力画像には、移動物体Qと路面Rsとが含まれる。続いて、画像生成部11が、入力画像を縮小する(工程S1)。ここでは、画像生成部11は、例えば、入力画像を構成する複数の領域(画素)を間引きすることにより、入力画像のサイズを縮小する。続いて、画像生成部11が、縮小された入力画像の射影変換を行う(工程S2)。これにより、入力画像から正射投影画像が生成される。また、この工程S2では、画像生成部11は、車両Cの走行車線に隣接する車線P1のみを正射投影画像から切り出す(図5の(a)参照)。
【0023】
続いて、画像生成部11が、正射投影画像における近距離部分の平滑化を行う(S3)。これは、工程S2において入力画像から正射投影画像を生成する際に、撮像装置50に近い近距離部分に対して撮像装置50から遠い遠距離部分が引き伸ばされることに起因して、後のエッジ抽出の際に近距離部分で路面Rsの荒れに起因して、移動物体Qと異なるエッジが多く抽出されることを避けるためである。これにより、続くエッジ抽出等の処理の対象となる対象画像が生成される。
【0024】
続いて、エッジ抽出部12が、対象画像(第1時刻に取得された領域Rの画像)のエッジを抽出する(工程S4:エッジ抽出工程)。図5の(b)は、抽出されたエッジが示されたエッジ画像P2の一例である。
【0025】
続いて、対象画像のエッジ量の評価が行われる(工程S5)。より具体的には、工程S5では、まず、エッジ量設定部13が、エッジ画像P2(エッジの抽出結果)に基づいて、対象画像の各領域に対応する複数のセルに対してエッジ量を設定する(エッジ量設定工程)。
【0026】
エッジの抽出に供された対象画像とエッジ画像P2とは、互いに対応している。したがって、対象画像を、例えば2次元行列状に分割した場合の各領域に対応するセル(2次元行列状に配列されたセル)を構成したうえで、エッジ画像P2の対応する各領域に存在するエッジの量(エッジを構成するドットの数)をカウントすれば、各セルに対してエッジ量を設定できる。つまり、この工程S5では、2次元行列状(例えば15×4の行列状)に配列されると共に、エッジ量が設定された複数のセルを含むセル群が構成されることとなる。
【0027】
工程S5では、続いて、候補点設定部14が、各セルのエッジ量を評価することにより、エッジ量が一定以上のセルを、第1時刻において移動物体が存在するセル(対象画像における移動物体が存在する領域に対応するセル)の候補点として設定する(候補点設定工程)。なお、工程S5で構成されたセル群に対して、複数の候補点が設定され得る。
【0028】
続いて、観測結果の算出が行われる(工程S6)。より具体的には、この工程S6では、分布生成部15が、第1時刻の候補点であるセルと当該セルの周囲のセルに対して、当該候補点であるセルが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、度数分布(ヒストグラム)を生成する。
【0029】
図6の(a)は、投票に用いられる正規分布状の度数(デジタル化された正規分布)の一例である。図6の(b)は、投票の結果生成された度数分布の一例である。図6の例では、度数分布P3の座標(3,3)のセルSが候補点Saとして設定されており、当該候補点SaのセルSを中心として、3×3の正規分布状の分布Vに応じた投票が行われている。このようにして生成された度数分布P3を、第1時刻における移動物体の観測結果とすることができる。
【0030】
一方、候補点Saが複数存在する場合には、上記のように投票を行うと、重複して投票を受けるセルSが発生する場合がある。この場合、重複して投票を受けたセルSが、当初の候補点Saとして設定されたセルSでない場合であっても、当初の候補点Saとして設定されたセルSよりも大きな度数となる場合がある。
【0031】
このため、この工程S6では、候補点設定部14が、度数分布において度数が一定以上であるセルSを、第1時刻において移動物体が存在するセルSの新たな候補点Saとして設定することができる。すなわち、この工程S6では、閾値を用いた候補点Saの再設定を行うことができる。この場合、分布生成部15は、第1時刻の新たな候補点SaであるセルSと当該セルSの周囲のセルSに対して、当該新たな候補点SaであるセルSが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、新たな度数分布を生成することができる。そして、この新たな度数分布を、第1時刻における移動物体の観測結果(観測マップ)とすることができる。
【0032】
続いて、推定部16が、第1時刻における移動物体の推定結果を算出する(工程S7:推定工程)。この工程S7について、より具体的に説明する。この工程S7では、工程S6で生成された第1時刻の観測結果(度数分布P3、又は新たな度数分布)と第2時刻における移動物体の推定結果(事前推定マップ)との乗算結果に基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果を算出する。
【0033】
図7の(a)は、第2時刻における移動物体の推定結果の一例を示す。図7の(a)に示されるように、第2時刻における移動物体の推定結果P4は、上記と同様の工程を経て既に生成されたものであり、セルSのそれぞれに対して移動物体が存在する確率(推定)が設定されている。推定結果P4では、全てのセルSの値を合計すると1になるように正規化されることにより、それぞれのセルSの値が移動物体の存在確率とされている。
【0034】
この工程S7では、図6の(b)に示されるような度数分布P3の各セルSと、図7の(a)に示されるような過去の推定結果P4の各セルSと、を掛け合わせることにより、図7の(b)に示されるような推定結果P5を算出する。ここでの乗算は、互に対応するセルS間のみで行われる。すなわち、例えば、度数分布P3の座標(3,3)のセルSの値と、推定結果P4の座標(3,3)のセルSの値と、が掛け合わされて推定結果P5の座標(3,3)のセルSの値とされる。
【0035】
以上のように、この工程S7では、工程S6で生成された第1時刻の度数分布P3と第2時刻における移動物体の推定結果P4との乗算結果に基づいて、第1時刻における移動物体の推定結果が算出される。度数分布P3は、候補点Saの情報を基に生成される。したがって、この工程S7では、推定部16が、第1時刻の候補点Saと第2時刻の推定結果P4とに基づいて、第1時刻の推定結果P5を算出することとなる。
【0036】
さらに、この工程S7では、推定部16は、算出された推定結果P5のそれぞれのセルSの値の合計値が1となるように正規化する。後のオブジェクト判定は、この正規化後の推定結果P5に基づいて行うことができる。
【0037】
一方、以上のように算出された第1時刻における推定結果P5は、第1時刻よりも後の第3時刻の推定結果を算出する際に、第3時刻の度数分布との乗算に用いられる。図7の(b)に示されるように、推定結果P5には、値がゼロのセルSが含まれる。このため、第3時刻の推定結果のセルのうち、第1時刻の推定結果P5の値が0のセルSとの乗算により算出されるセルの値は、元の度数分布の値に依らずにゼロとなる(移動物体の存在が推定されない)。このような状況を避けるため、この工程S7では、推定結果P5は、そのセルSの最小の値がゼロよりも大きな値(例えば0.001)となるように処理(例えば全てのセルSに一定の値を足し合わせる処理)がされると共に、それぞれのセルSの値の合計値が1になるように正規化された後、第3時刻の推定結果の算出の際の事前推定マップとして利用される。
【0038】
続く工程では、検出部17が、オブジェクト判定を行う(工程S8:検出工程)。より具体的には、検出部17は、第1時刻における推定結果P5に基づいて、第1時刻において領域Rに存在する移動物体Qを検出する。この工程S8では、検出部17は、推定結果P5のセルSのうち、一定の値以上であり、且つ、最大の値を有するセルSを移動物体Qの存在するセルとして検出する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る物体検出装置1及び物体検出方法では、車両Cの周辺の領域Rの画像のエッジが抽出されると共に、画像の各領域に対応する複数のセルSのそれぞれに対してエッジ量が設定される。また、エッジ量が一定以上のセルSが、第1時刻において移動物体Qが存在する候補点Saとして設定される。さらに、第1時刻の候補点Saと、第1時刻よりも前の第2時刻における移動物体Qの推定結果P4とに基づいて、第1時刻における移動物体Qの推定結果P5が生成される。そして、この推定結果P5に基づいて移動物体Qが検出される。このように、これらの装置及び方法では、移動物体Qの検出に際して、より計算負荷の低い画像のエッジ量が利用されるため、高性能な処理装置が不要となる。よって、移動物体Qの検出に際してコストの増大が抑制され得る。
【0040】
また、本実施形態に係る物体検出装置1では、第1時刻の候補点SaであるセルSと当該セルSの周囲のセルSに対して、当該候補点SaであるセルSが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、度数分布P3を生成する分布生成部15を備えている。そして、推定部16は、度数分布P3と第2時刻における移動物体Qの推定結果P4との乗算結果に基づいて、第1時刻における移動物体Qの推定結果P5を算出する。この場合、ノイズの影響が低減され、検出精度が向上される。
【0041】
特に、この場合には、第1時刻と第2時刻との間に、車両Cとの相対移動量の少ない(相対速度の小さい)物体の存在確率が大きく推定される。すなわち、例えば、移動中の車両Cとの相対速度が比較的大きい(静止した)路面Rsの付帯物等については、第2時刻において推定結果P4に存在するものの、第2時刻から第1時刻の間に車両Cの周囲の領域Rから離間することにより、第1時刻の度数分布P3に存在しない場合があり、この場合には推定結果P5において検出されない。よって、この場合には、車両Cと同方向に移動する移動物体Qがより顕著に検出されることなり、検出精度が向上される。
【0042】
なお、物体検出装置1では、例えば、度数の投票に用いられる分布Vの広がりを調整したり、推定結果P5のセルSの最小の値をゼロよりも大きな値とする処理において推定結果P5のセルSに足し合わせる値を調整したりすることにより、第1時刻と第2時刻との間の相関の強弱を調整することができる。
【0043】
一方、本実施形態に係る物体検出装置1では、候補点設定部14は、度数分布P3において度数が一定以上であるセルSを、第1時刻において移動物体Qが存在するセルSの新たな候補点Saとして設定することができる。また、分布生成部15は、第1時刻の新たな候補点SaであるセルSと当該セルSの周囲のセルSに対して、当該新たな候補点SaであるセルSが中心となるように正規分布状の度数を投票することにより、新たな度数分布P3を生成することができる。そして、推定部16は、新たな度数分布P3と第2時刻における移動物体Qの推定結果P4との乗算結果に基づいて、第1時刻における移動物体Qの推定結果P5を算出してもよい。この場合、ノイズ影響がより低減され、より検出精度が向上される。
【0044】
さらに、本実施形態に係る物体検出装置1では、大型車両等の比較的車高の高い車両CのミラーステーCsに取り付けられた撮像装置50によって撮像された画像を用いる。このため、投影変換の際の画像の歪みが低減され、より検出精度が向上される。
【0045】
以上の実施形態は、本発明の一側面を説明したものである。したがって、本発明は、上述した一形態に限定されることなく、任意に変形され得る。
【符号の説明】
【0046】
1…物体検出装置、12…エッジ抽出部、13…エッジ量設定部、14…候補点設定部、15…分布生成部、16…推定部、17…検出部、C…車両、Q…移動物体、R…領域(周辺領域)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7