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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】給紙装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/12 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B65H1/12 310A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020001392
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021109723
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 進
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-259823(JP,A)
【文献】特開2004-043189(JP,A)
【文献】特開2018-083685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙装置本体への挿抜動作によって装着状態と引出状態とを切り換えることが可能な給紙カセットを備えた給紙装置であって、
前記給紙カセットは、
前記給紙カセットの挿抜方向に沿って延びる回転可能な回転軸と、
用紙給紙方向の上流側端部が前記回転軸に回転自在に軸支され、前記回転軸周りの回動によって下流側端部を昇降させる昇降動作が可能な可動トレイと、
前記可動トレイの上面側に配置され、用紙給紙方向の上流側端部が前記回転軸に軸支され、前記回転軸と一体的に回転する回動アームと、
前記回転軸に対し前記給紙カセットの挿抜方向の奥側端部に取り付けられ、前記回転軸と一体的に回転する第1係合部材と、
前記可動トレイを上昇方向へ付勢する第1付勢部材と、
前記回動アームを前記可動トレイ側に付勢する第2付勢部材とを備えており、
前記給紙装置本体は、
前記給紙装置本体内での位置が固定であり、前記給紙カセットの装着状態時に、前記可動トレイに載置された用紙の給紙を行う給紙ローラと、
前記第1係合部材と係合することで、前記第1係合部材および前記回転軸を介して前記回動アームを前記可動トレイから離れる方向に回動させる第2係合部材とを備え
前記給紙カセットの装着状態時には、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合状態となり、前記回動アームを前記可動トレイから離れる方向に回動することで、前記第1付勢部材の付勢力を受けて前記可動トレイが給紙位置まで上昇し、
前記給紙カセットの引出状態時には、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合解除状態となり、前記回動アームが前記第2付勢部材の付勢力を受けて前記可動トレイ側に回動することで前記可動トレイを押し下げ、前記可動トレイが最下位置まで下降することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置であって、
前記第1係合部材は第1傾斜部を有し、
前記第2係合部材は第2傾斜部を有しており、
前記第1係合部材および前記第2係合部材は、前記係合状態時に前記第1傾斜部および前記第2傾斜部を互いに係合させることを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給紙装置であって、
前記給紙カセットの装着状態時に、前記回動アームは前記可動トレイから離間した状態となることを特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項1からの何れか1項に記載の給紙装置であって、
前記給紙カセットの引出状態時に、前記回動アームは、前記給紙ローラ側の先端部を可動トレイと接触させて可動トレイを押し下げることを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項1からの何れか1項に記載の給紙装置であって、
前記給紙カセットのカセット基台に設けられる位置決め突起と、前記第2係合部材に設けられ、前記給紙カセットの装着状態時に前記位置決め突起を嵌入させる位置決め穴とによって構成され、前記給紙カセットの装着状態時に、前記第1係合部材と前記第2係合部材との位置ずれを低減する位置決め機構を有していることを特徴とする給紙装置。
【請求項6】
請求項1からの何れか1項に記載の給紙装置であって、
前記給紙カセットがはがきサイズの用紙を収納するものであり、
前記給紙カセットのカセット基台における前記可動トレイの奥側に平面視で凹部状となる切欠き部が設けられており、前記給紙カセットの装着状態時には、前記第2係合部材が前記切欠き部内に位置する構成であることを特徴とする給紙装置。
【請求項7】
請求項1からの何れか1項に記載の給紙装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙カセットを備えた給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に設けられる給紙装置として、給紙カセットを備えた給紙装置が知られている。給紙カセットは、給紙装置本体のカセット装着部に対して装着される装着状態と、カセット装着部から引き出された引出状態とを切り換えることが可能である。装着状態は給紙カセットから画像形成装置本体への給紙が可能な状態であり、引出状態では用紙の補充や交換が可能である。
【0003】
また、給紙装置には、昇降可能な可動トレイを給紙カセットに備え、装着状態の給紙カセットでは可動トレイを上昇させ、引出状態の給紙カセットでは可動トレイを下降させるようにしたものがある。この構成では、給紙装置本体における給紙ローラの位置を固定としたままで、可動トレイが上昇することで、可動トレイ上に載置された用紙束を給紙ローラに接触させることができる。
【0004】
可動トレイの昇降動作に関しては、モータを用いて行うものと、給紙カセットの挿抜動作(装着動作および引出動作)に連動させて機構的に行う(例えば、特許文献1)ものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-176812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可動トレイの昇降動作をモータによって行う場合、部品点数の増加によるコストアップの問題がある。また、可動トレイの昇降動作を機構的に行う場合、給紙カセットの挿抜動作時に、用紙が給紙ローラに圧接された状態での挿抜が発生するため、給紙ローラによる用紙上面の擦れが発生する。
【0007】
尚、特許文献1に開示された給紙装置では、給紙ローラによる用紙上面の擦れを回避するために、給紙ローラが給紙カセット側に設けられている。しかしながら、このような構成では、給紙カセットを装着状態としたときに、給紙ローラに駆動力を伝達するための伝達機構が必要となり、給紙装置本体および給紙カセットの構造が複雑化する。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、昇降可能な可動トレイを備えた給紙カセットにおいて、給紙ローラによる用紙上面の擦れを最小限にする給紙装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様である給紙装置は、給紙装置本体への挿抜動作によって装着状態と引出状態とを切り換えることが可能な給紙カセットを備えた給紙装置であって、前記給紙カセットは、前記給紙カセットの挿抜方向に沿って延びる回転可能な回転軸と、用紙給紙方向の上流側端部が前記回転軸に回転自在に軸支され、前記回転軸周りの回動によって下流側端部を昇降させる昇降動作が可能な可動トレイと、前記可動トレイの上面側に配置され、用紙給紙方向の上流側端部が前記回転軸に軸支され、前記回転軸と一体的に回転する回動アームと、前記回転軸に対し前記給紙カセットの挿抜方向の奥側端部に取り付けられ、前記回転軸と一体的に回転する第1係合部材と、前記可動トレイを上昇方向へ付勢する第1付勢部材と、前記回動アームを前記可動トレイ側に付勢する第2付勢部材とを備えており、前記給紙装置本体は、前記給紙装置本体内での位置が固定であり、前記給紙カセットの装着状態時に、前記可動トレイに載置された用紙の給紙を行う給紙ローラと、前記第1係合部材と係合することで、前記第1係合部材および前記回転軸を介して前記回動アームを前記可動トレイから離れる方向に回動させる第2係合部材とを備えていることを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、回転軸、可動トレイ、回動アーム、第1係合部材、第2係合部材、第1付勢部材、および第2付勢部材によって、可動トレイの昇降動作を給紙カセットの挿抜動作に連動させて行う昇降機構が構成される。この昇降機構により、給紙カセットの挿抜動作時に給紙ローラと用紙上面との擦れを最小限にすることができる。
【0011】
また、上記給紙装置は、前記給紙カセットの装着状態時には、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合状態となり、前記回動アームを前記可動トレイから離れる方向に回動することで、前記第1付勢部材の付勢力を受けて前記可動トレイが給紙位置まで上昇する構成とすることができる。
【0012】
また、上記給紙装置は、前記給紙カセットの引出状態時には、前記第1係合部材と前記第2係合部材とが係合解除状態となり、前記回動アームが前記第2付勢部材の付勢力を受けて前記可動トレイ側に回動することで前記可動トレイを押し下げ、前記可動トレイが最下位置まで下降する構成とすることができる。
【0013】
また、上記給紙装置では、前記第1係合部材は第1傾斜部を有し、前記第2係合部材は第2傾斜部を有しており、前記第1係合部材および前記第2係合部材は、前記係合状態時に前記第1傾斜部および前記第2傾斜部を互いに係合させる構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、第1係合部材および第2係合部材が係合解除状態から係合状態になるときに、第1傾斜部および第2傾斜部を摺接させながらスムーズに状態移行することができる。
【0015】
また、上記給紙装置は、前記給紙カセットの装着状態時に、前記回動アームは前記可動トレイから離間した状態となる構成とすることができる。
【0016】
上記の構成によれば、給紙カセットの装着状態時に可動トレイが回動アームから一切の力を受けることがなく、用紙と給紙ローラとの間で第1付勢部材による適切な圧接力が作用するため、給紙ローラによる良好な給紙動作が行える。
【0017】
また、上記給紙装置では、前記給紙カセットの引出状態時に、前記回動アームは、前記給紙ローラ側の先端部を可動トレイと接触させて可動トレイを押し下げる構成とすることができる。
【0018】
上記の構成によれば、回動アームは、可動トレイを押し下げる際に効率的にトルクを伝達することができる。
【0019】
また、上記給紙装置は、前記給紙カセットのカセット基台に設けられる位置決め突起と、前記第2係合部材に設けられ、前記給紙カセットの装着状態時に前記位置決め突起を嵌入させる位置決め穴とによって構成され、前記給紙カセットの装着状態時に、前記第1係合部材と前記第2係合部材との位置ずれを低減する位置決め機構を有している構成とすることができる。
【0020】
上記の構成によれば、位置決め機構によって第1係合部材と第2係合部材との位置ずれを低減することで、回動アームに所望量の回動を発生させることができる。
【0021】
また、上記給紙装置は、前記給紙カセットがはがきサイズの用紙を収納するものであり、前記給紙カセットのカセット基台における前記可動トレイの奥側に平面視で凹部状となる切欠き部が設けられており、前記給紙カセットの装着状態時には、前記第2係合部材が前記切欠き部内に位置する構成とすることができる。
【0022】
上記の構成によれば、第1係合部材を可動トレイに近づけて配置することができるため、回転軸が必要以上に長くなることを回避し、第1係合部材から回動アームまで回転トルクを効率良く伝達することができる。
【0023】
また、上記の課題を解決するために、本発明の第2の態様である画像形成装置は、上記記載の給紙装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の給紙装置および画像形成装置は、給紙カセットの装着動作時には、装着完了の直前に可動トレイを給紙位置まで上昇させ、給紙カセットの引出動作時には、引出動作の開始直後に可動トレイを最下位置まで下降させる昇降機構を有するものであり、給紙カセットの挿抜動作時に給紙ローラと用紙上面との擦れを最小限にすることができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態1に係る給紙装置を適用した画像形成装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】実施の形態1に係る給紙装置から可動トレイの昇降機構に係る構成と給紙ローラとを抽出して記載した斜視図であり、給紙カセットが装着状態の場合を示している。
図3】実施の形態1に係る給紙装置から可動トレイの昇降機構に係る構成と給紙ローラとを抽出して記載した斜視図であり、給紙カセットが引出状態の場合を示している。
図4】給紙カセットが引出状態の場合における可動トレイの昇降機構の平面図である。
図5A図4のA-A断面図である。
図5B図4のB-B断面図である。
図5C図4のC-C断面図である。
図6】給紙カセットが装着状態の場合における可動トレイの昇降機構の平面図である。
図7A図6のA’-A’断面図である。
図7B図6のB’-B’断面図である。
図7C図6のC’-C’断面図である。
図8】係合部材と係合ブロックとが係合解除状態から係合状態に移行するときの動作を示す図であり、係合部材および係合ブロックを上から見た拡大模式図である。
図9】係合部材と係合ブロックとが係合解除状態から係合状態に移行するときの動作を示す図であり、係合部材および係合ブロックを回転軸の軸方向に沿って見た拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1に係る給紙装置20を適用した画像形成装置10の全体構成を示す斜視図である。画像形成装置10は、画像形成装置本体11、原稿台12、スキャナ部13、排紙トレイ14、および給紙装置20を備えている。
【0027】
画像形成装置本体11は、画像形成装置10の本体部分である。原稿台12は、画像形成装置本体11の上面に設置されたガラス体である。スキャナ部13は、原稿台12の下方に設けられており、原稿台12上に置かれた原稿の画像を読み取る。画像形成装置本体11の内部には、画像形成部が設けられている。スキャナ部13で読み取られた画像データは画像形成部に入力され、画像データに基づく画像が電子写真画像形成法によって用紙の表面に形成される。排紙トレイ14には、画像形成装置本体11の上部中央(スキャナ部13の下方位置)に設置されており、画像が形成された用紙が排出される。
【0028】
給紙装置20は排紙トレイ14の下方に設けられており、給紙装置20の上に画像形成装置本体11を載せて画像形成装置10が構成されている。給紙装置20は、給紙装置本体200に形成されるカセット装着部21と、カセット装着部21に対して挿抜可能な給紙カセット22を備えている。通常、給紙装置20には複数段(図1では4段)のカセット装着部21が設けられており、各カセット装着部21に給紙カセット22が装着されている。
【0029】
給紙カセット22は、給紙装置本体200への挿抜動作によって装着状態と引出状態とを切り換え可能である。装着状態は、給紙カセット22がカセット装着部21に対して装着された状態である。引出状態は、給紙カセット22がカセット装着部21から引き出された状態である。図1に示した給紙カセット22は引出状態であり、カセット装着部21に対して図示手前側から奥側に向けて押し込むことによって装着状態に切り換えることができる。給紙カセット22を装着状態から引出状態に移動させる方向を引出方向D1とし、給紙カセット22を引出状態から装着状態に移動させる方向を装着方向D2とする。
【0030】
図1に示す給紙装置20は4段の給紙カセット22を備えており、給紙カセット22毎にサイズの異なる用紙を収納可能となっている。また、本発明の特徴的構成は、全ての給紙カセット22に適用されているとは限らず、基本的には小サイズの用紙を収納する給紙カセット22において好適に適用される。ここでは、一段目(最上段)の給紙カセット22に、はがきサイズの用紙が収納されるものとし、この給紙カセット22に本発明が適用される場合を例示して説明を行う。
【0031】
本実施の形態1に係る給紙装置20は、給紙カセット22において用紙束が載置される可動トレイ221(図2および図3参照)を有している。可動トレイ221は、給紙カセット22内で、用紙給紙方向の下流側端部を昇降させる昇降動作が可能である。可動トレイ221は、給紙カセット22が引出状態にあるときは最下位置まで下降している。一方、給紙カセット22が装着状態にあるときは、可動トレイ221は上方に付勢され、可動トレイ221に載置された用紙束の上面が給紙ローラ211(図2および図3参照)に接触する給紙位置まで上昇する。これにより、装着状態にある給紙カセット22では、給紙ローラ211による給紙動作が可能となる。尚、給紙ローラ211は、カセット装着部21内で給紙装置20の本体に取り付けられている。また、給紙ローラ211の位置はカセット装着部21内で固定であり、給紙ローラ211は定位置での回転動作のみ可能となっている。
【0032】
本発明の特徴的構成は、可動トレイ221の昇降動作を給紙カセット22の挿抜動作に連動させて行う昇降機構にある。以下、可動トレイ221の昇降機構(以下、本機構と称する)について詳細に説明する。図2および図3は、給紙装置20から本機構に係る構成と給紙ローラ211とを抽出して記載した斜視図である。図2は給紙カセット22が装着状態の場合を示しており、図3は給紙カセット22が引出状態の場合を示している。
【0033】
本機構は、可動トレイ221、カセット基台222、回転軸223、回動アーム224、係合部材225、第1スプリング226(図5C図7C参照)、第2スプリング227、および係合ブロック212によって構成されている。
【0034】
本機構では、可動トレイ221、カセット基台222、回転軸223、回動アーム224、係合部材225、第1スプリング226、および第2スプリング227が、給紙カセット22側に備えられている。すなわち、これらの部材は、給紙カセット22の挿抜動作に伴って移動する。
【0035】
カセット基台222は、給紙カセット22の底板を構成するベース部材である。カセット基台222の上には、本機構における給紙カセット22側の各部材が取り付けられるようになっている。
【0036】
回転軸223は、カセット基台222の上面で回転自在に軸支されており、可動トレイ221、回動アーム224および係合部材225の回転軸として機能する。可動トレイ221は、用紙給紙方向の上流側端部が回転軸223に軸支されており、回転軸223回りに回動することで用紙給紙方向の下流側端部を昇降させることができる。回動アーム224は、可動トレイ221の上面側に配置され、用紙給紙方向の上流側端部が回転軸223に軸支されている。回動アーム224は、可動トレイ221の用紙幅方向の両端付近(可動トレイ221における用紙の載置領域外)に2本設けられている。係合部材225は、回転軸223に対し、給紙カセット22の挿抜方向の奥側端部に取り付けられている。尚、可動トレイ221は回転軸223に対して回転自在に取り付けられるが、回動アーム224および係合部材225は回転軸223に対して一体的に回転するように取り付けられる。
【0037】
第1スプリング226は、可動トレイ221を上昇方向へ付勢するためのバネ部材である。本実施の形態1では、第1スプリング226は、カセット基台222と可動トレイ221との間に圧縮バネとして配置されている。第2スプリング227は、係合部材225および回転軸223を介して、回動アーム224を下降方向(回動アーム224が可動トレイ221を押し下げる方向)に付勢するためのバネ部材である。本実施の形態1では、第2スプリング227は、カセット基台222と係合部材225との間に引張りバネとして配置されている。
【0038】
第2スプリング227および第1スプリング226の付勢力は、第2スプリング227によって回動アーム224に生じるトルクが、第1スプリング226によって可動トレイ221に生じるトルクよりも大きくなるように設定されている。また、第1スプリング226および第2スプリング227は、バネの種類が圧縮バネや引張りバネに限定されるものではなく、他の種類のバネ(例えば、板バネや捩りバネ)を使用することも可能である。
【0039】
係合ブロック212は、カセット装着部21内で給紙装置20の本体に固定的に取り付けられている。係合ブロック212は、給紙カセット22が装着状態とされたときに給紙カセット22側の係合部材225と係合し、係合部材225および回転軸223を介して回動アーム224を回動させることができる。
【0040】
まずは、給紙カセット22の装着動作(引出状態→装着状態)時における本機構の動作を以下に詳細に説明する。図4は、給紙カセット22が引出状態の場合における本機構の平面図である。図5A図4のA-A断面図であり、図5B図4のB-B断面図であり、図5C図4のC-C断面図である。図6は、給紙カセット22が装着状態の場合における本機構の平面図である。図7A図6のA’-A’断面図であり、図7B図6のB’-B’断面図であり、図7C図6のC’-C’断面図である。但し、図4および図6では、図面の簡略化のため、カセット基台222の図示を省略している。
【0041】
給紙カセット22が引出状態にあるとき、図4に示すように、係合部材225と係合ブロック212とは互いに離間している。すなわち、係合ブロック212と係合部材225とは係合解除状態にあり、係合ブロック212が係合部材225を介して回転軸223に対して力を作用させることはない。この引出状態では、第2スプリング227の付勢力が係合部材225および回転軸223を介して回動アーム224に作用し、回動アーム224を下降方向(回動アーム224が可動トレイ221を押し下げる方向)に付勢する。
【0042】
また、上述したように、第2スプリング227によって回動アーム224に生じるトルクは、第1スプリング226によって可動トレイ221に生じるトルクよりも大きくなるように設定されている。このため、引出状態の給紙カセット22において、回動アーム224は、第1スプリング226の付勢力に抗して可動トレイ221を押し下げることができ、可動トレイ221を最下位置(可動トレイ221の下面の少なくとも一部がカセット基台222に当接する位置)まで下降させることができる(図5B参照)。尚、回動アーム224は、給紙ローラ211側の先端部が可動トレイ221との接触部とされており、引出状態の給紙カセット22においては、回動アーム224の先端部を可動トレイ221と接触させて可動トレイ221を押し下げている。この構成により、回動アーム224は、可動トレイを押し下げる際に効率的にトルクを伝達することができる。
【0043】
可動トレイ221が最下位置まで下降しているときには、図5Cに示すように、可動トレイ221における用紙載置面は、水平面(もしくは下流側端部が僅かに高くなるような傾斜面)となることが好ましい。これは、可動トレイ221の用紙載置面が、下流側端部が低くなるような傾斜面になっていると、載置された用紙束において用紙の滑りが生ずる恐れがあるためである。また、可動トレイ221が最下位置まで下降しているときには、可動トレイ221に収容可能な最大枚数の用紙が載置されていたとしても、その用紙束の上面と給紙ローラ211との間には高さ方向のギャップが生じる。
【0044】
一方、給紙カセット22が装着状態にあるとき、図6に示すように、係合部材225と係合ブロック212とは、互いに係合した係合状態となる。この係合によって係合部材225は係合ブロック212から力を受け、第2スプリング227の付勢力に抗して、引出状態の位置から回動する(図5Aに示す位置から図7Aに示す位置まで回動する)。
【0045】
係合部材225が図7Aに示す位置まで回動すると、これに伴って回動アーム224が上昇方向に回動し、回動アーム224は可動トレイ221から離間する(図7B参照)。これにより、可動トレイ221は回動アーム224から一切の力を受けなくなり、第1スプリング226の付勢力によって給紙位置まで上昇する(図7C参照)。この状態では、用紙と給紙ローラ211との間で第1スプリング226による適切な圧接力が作用するため、給紙ローラ211による良好な給紙動作が可能となる。尚、可動トレイ221に用紙が載置されていなければ、上昇した可動トレイ221の上面が給紙ローラ211に接触する。
【0046】
続いて、係合部材225と係合ブロック212とが係合解除状態から係合状態に移行するときの動作について図8および図9を参照して説明する。図8は、係合部材225および係合ブロック212を上から見た拡大模式図である。図9は、係合部材225および係合ブロック212を回転軸223の軸方向に沿って見た拡大模式図である。
【0047】
係合部材225において、奥側の端部には第1傾斜部225aが設けられている。一方、係合ブロック212において、手前側の端部には第2傾斜部212aが設けられている。第1傾斜部225aおよび第2傾斜部212aは、係合解除状態において互いにほぼ平行であり、かつ給紙カセット22の挿抜方向に対して傾斜した傾斜面として形成されている。また、第1傾斜部225aおよび第2傾斜部212aは、回転軸223の軸方向に沿って見たときに少なくとも一部の領域が重畳する。
【0048】
係合部材225および係合ブロック212の係合解除状態から、給紙カセット22の装着動作に伴って係合部材225が係合ブロック212側に押し込まれると、第1傾斜部225aおよび第2傾斜部212aが当接して係合開始状態となる。この係合開始状態からさらに係合部材225が係合ブロック212側に押し込まれると、第1傾斜部225aを第2傾斜部212aに摺擦させながら係合部材225が回動し、給紙カセット22が装着状態となったとき、係合部材225および係合ブロック212は係合状態となる。係合部材225と係合ブロック212とが係合状態から係合解除状態に移行するときの動作は、上記動作の逆となる。
【0049】
ここで、係合部材225の回動動作が生じるのは、係合開始状態から係合状態までの間である。すなわち、係合部材225の回動動作は、係合部材225および係合ブロック212の係合開始状態から係合状態までの移動距離(係合距離)の間でのみ発生する。この係合距離は、給紙カセット22を引出状態と装着状態との間で移動させる距離(例えば数十cm)に比べ、極めて短い距離(例えば2~3mm程度)とすることができる。このため、給紙カセット22の挿抜動作においては、その動作の殆どの期間で係合部材225および係合ブロック212は係合解除状態にあり、給紙カセット22を最下位置に保持したままで給紙カセット22の挿抜動作を行うことができる。
【0050】
言い換えれば、給紙カセット22の装着動作時には、装着完了の直前に、可動トレイ221が係合部材225と係合ブロック212との係合によって上昇する。そして、給紙カセット22の引出動作時には、引出動作の開始直後に、係合部材225および係合ブロック212の係合が外れ、第2スプリングの付勢力によって可動トレイ221が直ちに最下位置まで下降する。これにより、本機構は、給紙カセット22の挿抜動作時に、給紙ローラ211と用紙上面との擦れを最小限にすることができる。
【0051】
〔実施の形態2〕
実施の形態1で説明した本機構は、装着状態の給紙カセット22において、係合部材225および係合ブロック212を係合状態とすることで、回動アーム224を上方へ回動させている。このとき、係合部材225と係合ブロック212との間に位置ずれが発生すると、回動アーム224に所望量の回動が発生せず、可動トレイ221が所定の位置まで上昇できなくなる恐れがある。このため、係合部材225と係合ブロック212との位置ずれを、できる限り少なくすることが望ましい。
【0052】
装着状態の給紙カセット22において、係合部材225と係合ブロック212との位置ずれを低減するため、本機構は位置決め機構を有している。この位置決め機構は、カセット基台222に設けられる位置決め突起222aと、係合ブロック212に設けられる位置決め穴212bとによって構成される(図3参照)。
【0053】
位置決め突起222aは、カセット基台222の奥側において、給紙カセット22の挿抜方向に延びるように突出して設けられている。給紙カセット22の装着状態時には、位置決め突起222aが係合ブロック212の位置決め穴212bに嵌入することで、係合部材225と係合ブロック212との位置ずれを低減することができ、その結果、回動アーム224に所望量の回動を発生させることができる。また、上記位置決め機構は、給紙カセット22の手前側端部が、給紙カセット22の自重によって下がることも防止できる。
【0054】
〔実施の形態3〕
本発明が適用される給紙カセット22がはがきサイズの用紙を収納するものであるとき、カセット基台222における可動トレイ221の奥側は、用紙収納に必要のないスペースとなる。このため、カセット基台222における可動トレイ221の奥側に、平面視で凹部状となる切欠き部を設けてブロック収容スペースSP1(図3参照)とし、給紙カセット22の装着状態時には、係合ブロック212がブロック収容スペースSP1内に位置する構成とすることが好ましい。
【0055】
この構成により、係合部材225を可動トレイ221に近づけて配置することができる。その結果、回転軸223が必要以上に長くなることを回避し、係合部材225から回動アーム224まで、回転トルクを効率良く伝達することができる。
【0056】
また、給紙カセット22がはがきサイズの用紙を収納するものであるとき、カセット基台222における可動トレイ221の手前側も用紙収納に必要のないスペースとなる。この手前側のスペースは、例えば、予備の用紙を収納しておく予備収納スペースSP2(図3参照)として利用することもできる。
【0057】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 画像形成装置
20 給紙装置
200 給紙装置本体
21 カセット装着部
211 給紙ローラ
212 係合ブロック(第2係合部材)
212a 第2傾斜部
212b 位置決め穴(位置決め機構)
22 給紙カセット
221 可動トレイ
222 カセット基台
222a 位置決め突起(位置決め機構)
223 回転軸
224 回動アーム
225 係合部材(第1係合部材)
225a 第1傾斜部
226 第1スプリング(第1付勢部材)
227 第2スプリング(第2付勢部材)
SP1 ブロック収容スペース(切欠き部)
SP2 予備収納スペース
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9