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  • 特許-モータ制御装置及びモータ制御方法 図1
  • 特許-モータ制御装置及びモータ制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
H02P7/06 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020001887
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021112021
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】内田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】柳田 雄一
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-323488(JP,A)
【文献】特開2000-166274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを検出し、前記電流リップルをパルス信号として出力するリップルパルス変換部と、
前記直流モータの前記電機子電流から電流リップルを検出する感度を調整するリップル検出感度調整部と、を有するモータ制御装置であって、
前記リップル検出感度調整部は、前記直流モータが通電されておらず、かつ、該直流モータが作動していないとき、前記電流リップルの検出感度を低下させることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のモータ制御装置において、
前記リップル検出感度調整部は、
前記直流モータの端子電圧に基づいて、前記直流モータの通電状態を判定するモータ電圧入力判断部と、
前記リップルパルス変換部から出力される前記パルス信号に基づいて、前記直流モータの作動状態を判定するリップルパルス入力判断部と、
前記モータ電圧入力判断部と前記リップルパルス入力判断部の判断結果に基づき、前記直流モータが非通電状態でかつ停止状態と判断される場合は、前記リップルパルス変換部における増幅度を低下させ、前記電流リップルの検出感度を低下させる増幅度調整部と、を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のモータ制御装置において、
前記モータ電圧入力判断部は、前記直流モータ前後の電圧をそれぞれ検出し、両者の電圧値に基づいて、前記直流モータに対する通電の有無を判定することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
請求項2記載のモータ制御装置において、
前記リップルパルス入力判断部は、
前記パルス信号をDC成分とパルス信号に分別するリップルパルス検出部と、
前記リップルパルス検出部にて分別されたパルス信号をDC成分に変換するリップルパルス平滑部と、
前記リップルパルス平滑部にてDC成分に変換されたパルス信号の電圧値が、所定の基準電圧を超えている場合に信号を出力する差動増幅部と、を有することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを検出し、前記電流リップルから生成したパルス信号に基づいて前記直流モータの動作制御を行うモータ制御方法であって、
前記直流モータが通電されておらず、かつ、該直流モータが作動していないとき、前記電流リップルの検出感度を低下させることを特徴とするモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流(DC)モータの制御技術に関し、特に、電機子電流に含まれる電流リップルからパルス(矩形波)信号を生成してモータの駆動制御を行うモータ制御装置における誤パルス発生防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブラシ付きDCモータの動作制御に際し、その回転数や回転角度を検出する手法として、ブラシと整流子片の接触が切り替わる際に生じる電流リップルを利用した所謂センサレスポジショニングが知られている。例えば、特許文献1には、ブラシが隣接する次の整流子片に切り替わる際に、モータ電流中に生じるスパイク状のパルス出力を検出してモータ回転数を検出する構成が記載されている。
【0003】
一方、ブラシ付きDCモータにおける電流リップル波形のレベルは、モータ電流と比例関係で増減する。ところが、モータ電流は、モータの負荷状態により大きく変化するため、負荷変化と共にリップル波形も大きく変動する。また、モータ電流には、モータから発生するブラシノイズも重畳されている。このため、これらの不安定要素を含むモータ電流から電流リップルのみを抽出するのは容易ではない。
【0004】
そこで、特許文献2のように、電機子電流の変化を電圧変化信号として出力し、この電圧変化信号から電流リップル成分とノイズ成分を抽出し、そこからノイズ成分を除去して電流リップル成分のみを抽出し、それをデジタル信号に変換することにより、電流リップルからパルス信号を生成して出力するシステムも提案されている。このシステムでは、従来のモータ構成そのままで電流リップルを取り出してパルス化でき、モータの性能や特性を損なうことなくリップルセンシングが実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-159674号公報
【文献】特開2018-74662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2のような方式においても、モータが作動しておらず、電流リップルも発生していない状態のとき、静電気やラジオ、サージ、通信機器、他の制御機器からのノイズの回り込みなどにより、リップル波形と同様な周波数、電圧の外乱がシステムに入力されるとパルスが誤出力されてしまう懸念があった。図3は、モータ作動状態とパルス出力(リップルパルス)の状態を示すタイムチャートであり、図3に示すように、モータが停止している状態(X部)では、本来、リップルパルスも出力されないはずであるが、ノイズ等が入力されると、破線のような誤パルスが発生してしまう可能性がある。
【0007】
このような誤パルスが生じると、パルスカウント値にズレが生じ、モータの回転角度情報等に誤差が発生し、モータの動作制御に支障を来すおそれがある。例えば、特許文献2のようなシステムをパワーウインド用モータに用いた場合、パルスカウントのズレは窓位置の誤検知につながり、窓の動作速度が想定から外れたり、挟み込み検知のマスク領域の認識にズレが生じたりするなどのおそれがあった。
【0008】
本発明の目的は、電流リップルからパルス信号を生成してモータの駆動制御を行うモータ制御装置において、非通電・停止時にノイズ等によって生じる誤パルスの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモータ制御装置は、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを検出し、前記電流リップルをパルス信号として出力するリップルパルス変換部と、前記直流モータの電機子電流から電流リップルを検出する感度を調整する検出感度調整部と、を有するモータ制御装置であって、前記リップル検出感度調整部は、前記直流モータが通電されておらず、かつ、該直流モータが作動していないとき、前記電流リップルの検出感度を低下させることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、リップル検出感度調整部により、モータが非通電・停止状態のとき、電流リップルの検出感度を低下させる。これにより、パルス信号が発生しないはずの非通電・停止期間にノイズ等による外乱が生じても、誤パルスの発生を抑えることができる。このため、例えば、パルスカウントに基づいてモータの制御を行う場合においても、カウント値のズレを防止でき、モータの回転角度情報等の誤差を抑え、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。
【0011】
前記モータ制御装置において、前記リップル検出感度調整部に、前記直流モータの端子電圧に基づいて、前記直流モータの通電状態を判定するモータ電圧入力判断部と、前記リップルパルス変換部から出力される前記パルス信号に基づいて、前記直流モータの作動状態を判定するリップルパルス入力判断部と、前記モータ電圧入力判断部と前記リップルパルス入力判断部の判断結果に基づき、前記直流モータが非通電状態でかつ停止状態と判断される場合は、前記リップルパルス変換部における増幅度を低下させ、前記電流リップルの検出感度を低下させる増幅度調整部と、を設けても良い。
【0012】
この場合、前記モータ電圧入力判断部は、前記直流モータ前後の電圧をそれぞれ検出し、両者の電圧値に基づいて、前記直流モータに対する通電の有無を判定するようにしても良い。また、前記リップルパルス入力判断部に、前記パルス信号をDC成分とパルス信号に分別するリップルパルス検出部と、前記リップルパルス検出部にて分別されたパルス信号をDC成分に変換するリップルパルス平滑部と、前記リップルパルス平滑部にてDC成分に変換されたパルス信号の電圧値が、所定の基準電圧を超えている場合に信号を出力する差動増幅部と、を設けても良い。
【0013】
一方、本発明のモータ制御方法は、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルを検出し、前記電流リップルから生成したパルス信号に基づいて前記直流モータの動作制御を行うモータ制御方法であって、前記直流モータが通電されておらず、かつ、該直流モータが作動していないとき、前記電流リップルの検出感度を低下させることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、モータが非通電・停止状態のとき、電流リップルの検出感度を低下させる。これにより、パルス信号が発生しないはずの非通電・停止期間にノイズ等による外乱が生じても、誤パルスの発生を抑えることができる。このため、例えば、パルスカウントに基づいてモータの制御を行う場合においても、カウント値のズレを防止でき、モータの回転角度情報等の誤差を抑え、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のモータ制御装置によれば、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルからパルス信号を生成するリップルパルス変換部を有するモータ制御装置にて、直流モータが通電されておらず、かつ、作動していないとき、電流リップルの検出感度を低下させるリップル検出感度調整部を設けたので、非通電・停止時にノイズ等による外乱が生じても、誤パルスの発生を抑えることができる。このため、例えば、パルスカウントに基づいてモータの制御を行う場合においても、カウント値のズレを防止でき、モータの回転角度情報等の誤差を抑え、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。
【0016】
本発明のモータ制御方法によれば、直流モータの電機子電流に含まれる電流リップルから生成したパルス信号に基づいて直流モータの動作制御を行うモータ制御方法にて、直流モータが通電されておらず、かつ、作動していないとき、電流リップルの検出感度を低下させるので、非通電・停止時にノイズ等による外乱が生じても、誤パルスの発生を抑えることができる。このため、例えば、パルスカウントに基づいてモータの制御を行う場合においても、カウント値のズレを防止でき、モータの回転角度情報等の誤差を抑え、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態であるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図1のモータ制御装置に配設されるリップル検出感度調整部における真理値表である。
図3】モータ動作とリップルパルスとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるモータ制御装置1の構成を示すブロック図であり、モータ制御装置1は、例えば、車両のパワーウインド用モータの動作制御に適用される。モータ制御装置1には、モータ電流(電機子電流)に含まれる電流リップルを、ホールIC等を用いることなく抽出し、パルス信号の形で出力するリップルパルス変換部10が設けられている。
【0019】
リップルパルス変換部10は、モータドライバ(電源)2からブラシ付きDCモータ3(以下、モータ3と略記する)に電力を供給する電源ライン4上に配置される。電源ライン4にはシャント抵抗5が設けられており、リップルパルス変換部10は、シャント抵抗5の前後(モータドライバ2側とモータ3側)に接続される。モータ制御装置1は、リップルパルス変換部10からのパルス出力(リップルパルス)に基づいて、モータ3の回転数や回転方向等を算出し、モータ3の動作制御を行う。
【0020】
リップルパルス変換部10には、電流検出部11や、第1平滑回路12、利得調整部13、第2平滑回路14、リップル検出部15、デジタル信号変換部16が設けられている。電流検出部11は、シャント抵抗5の前後の電圧差(電圧降下)を検出してモータ駆動電流を検知する一方、その変化を電圧変化信号として出力する。この電圧変化信号は、第1平滑回路12から利得調整部13→第2平滑回路14→リップル検出部15と送られ、電圧変化信号からノイズ成分が除去され電流リップル成分のみが抽出される。抽出された電流リップル成分は、デジタル信号変換部16によってエンコーダ出力相当のパルス信号に変換され、リップルパルスが生成、出力される。
【0021】
リップルパルス変換部10によって形成されたパルス信号は、各パルスが、ブラシと整流子片との接触の切り替わりに対応している。ブラシと整流子片の数はモータごとに予め定まっているため、このパルスをカウントすることにより、モータ3の回転数を算出することができる。すなわち、モータ電流中の電流リップルから、ホールIC等の回転検出部材を用いることなくモータ3の回転数が検出される。その際、リップルパルス変換部10は、従来のモータ構成そのままでモータ電流からリップル抽出が可能である。
【0022】
一方、本発明によるモータ制御装置1にはさらに、モータ電流から電流リップルを検出する感度を調整するリップル検出感度調整部21が設けられている。リップル検出感度調整部21は、モータ電圧入力判断部22と、リップルパルス入力判断部23、増幅度調整部24を備えており、モータ3が通電されておらず、かつ、作動していないとき、リップルパルス変換部10における増幅度を低下させて電流リップルの検出感度を低下させる。
【0023】
モータ電圧入力判断部22は、図1に示すように、モータ3前後の電圧VA,VB(モータ端子電圧)をそれぞれ検出し、両者の電圧値に基づいて、モータ3に対する通電状態(通電の有無)を判定する。リップルパルス入力判断部23は、リップルパルスの存否からモータ3の作動状態(回転しているか、停止しているか)を判定する。増幅度調整部24は、モータ電圧入力判断部22とリップルパルス入力判断部23からの出力に基づき、利得調整部13における増幅度を調整し(ゲインコントロール)、電流リップルの検出感度を調整する。
【0024】
この場合、リップルパルス入力判断部23は、リップルパルス変換部10から出力されるリップルパルスをDC成分(直流成分)とパルス信号に分別するリップルパルス検出部25と、リップルパルス検出部25にて分別されたパルス信号をDC成分に変換するリップルパルス平滑部26と、リップルパルス平滑部にてDC成分に変換されたパルス信号の電圧値が、所定の基準電圧(Bias電圧:Voff)を超えている場合に信号を出力する差動増幅部27とを備えている。
【0025】
また、増幅度調整部24は、モータ3が非通電状態にあり、リップルパルスが連続して発生しないときは、モータ3が停止状態にあるとみなし、リップルパルス変換部10の増幅度を下げるよう機能し、リップル検出感度を低下させる。これにより、リップルパルス変換部10では、外乱入力があっても、それに応じたパルスが発生せず、外乱による誤パルス発生が抑制される。図2は、リップル検出感度調整部21における真理値表であり、リップル検出感度調整部21は次のような処理により、リップルパルス変換部10の利得を調整する。
【0026】
(1)モータ通電・定常回転の場合
モータ3が通電状態で定常回転しているときは、モータ3の端子電圧VA,VBの何れかは「H(Hi)」となる。ここでは、CW回転のとき「VA:H,VB:L(Low)」、CCW回転のとき「VA:L,VB:H」に設定されている。したがって、通電・定常回転の場合、NOT31,32を経た後の出力D(NAND33の出力)は、CW回転・CCW回転何れの場合も「H」となる。すなわち、モータ3に通電されている場合、モータ電圧入力判断部22からの出力は「H」となる。
【0027】
一方、リップルパルス入力判断部23には、リップルパルス変換部10からリップルパルス(以下、RPと略記する)が入力されている。リップルパルス入力判断部23では、RP未発生時にRP出力が「H」固定となる場合もあるため、まず、微分回路を用いたリップルパルス検出部25にて、リップルパルスをDC成分とパルス信号に分別する。次に、リップルパルス検出部25で得たパルス信号をリップルパルス平滑部26にてDC成分に変換する。リップルパルス平滑部26の出力Aは、差動増幅部27に入力され、所定のBias電圧(Voff)との関係に基づいて出力Bが生じる。
【0028】
この場合、Bias電圧は、外乱と通常作動時を分別するため、連続して数十パルス以上(例えば、20パルス以上)発生している場合は出力A>Voffとなるように設定されている。したがって、通電・定常回転では、RPが数十パルス以上連続して出力されているため、リップルパルス平滑部26の出力AはBias電圧よりも大きくなり、差動増幅部27の出力Bは「H」となる。
【0029】
増幅度調整部24には、モータ電圧入力判断部22から出力D:「H」、差動増幅部27から出力B:「H」が入力され、NAND34の入力E,Cは、NOT35,36によりそれぞれ「L」,「L」となる。したがって、NAND34の出力Fは「H」となり、NOT37の出力Gは「L」となる。これにより、トランジスタ(スイッチング素子)38のゲートは「L」となり、トランジスタ38のコレクタ側Pはオープンとなる。その結果、利得調整部13に対するゲインコントロールは行われず、通常の増幅度にてリップルパルス検出が行われ、モータ3の駆動制御が実施される。
【0030】
(2)モータ非通電・惰走回転の場合
モータ3が通電されていない状態であるが惰走回転しているときも、厳密にはモータ3に誘起電圧が生じており、モニタされている端子電圧VA,VBの何れかは「H」となる。しかし、その際の誘起電圧は通電・定常回転時と比べると非常に小さい。このため、リップル検出感度調整部21では、VA,VBが所定電圧未満の場合には「L」とする。その結果、NAND33には、NOT31,32を介して「H」,「H」が入力され、非通電・惰走回転の場合は、出力DはCW回転・CCW回転何れの場合も「L」となる。
【0031】
一方、惰走回転時には、リップルパルス入力判断部23に対し、停止時とは異なり、ある程度連続した数十パルス以上のRPが入力される。したがって、非通電・惰走回転の場合、出力AはBias電圧よりも大きくなり、差動増幅部27の出力Bは「H」となる。増幅度調整部24には、モータ電圧入力判断部22から出力D:「L」、差動増幅部27から出力B:「H」が入力され、NAND34の入力E,Cは、NOT35,36によりそれぞれ「H」,「L」となる。したがって、NAND34の出力Fは「H」、NOT37の出力Gは「L」となり、トランジスタ38のコレクタ側Pはオープンとなる。その結果、利得調整部13に対するゲインコントロールは行われず、通常の増幅度にてモータ3の駆動制御(リップルパルス検出)が実施される。
【0032】
(3)モータ非通電・逆転の場合
モータ3は、定常回転時に回転が拘束され、その後、通電がオフされると、モータ機構の反作用によりモータ3が逆転する場合がある。この場合、端子電圧VA,VBの何れかは「H」となるが、非通電・惰走のときと同様、その際の誘起電圧は定常回転時と比べると微小であるため、リップル検出感度調整部21では、VA,VBを「L」として取り扱う。その結果、NAND33には、NOT31,32を介して「H」,「H」が入力され、非通電・逆転の場合も、出力DはCW回転・CCW回転何れの場合も「L」となる。
【0033】
また、逆転時も、リップルパルス入力判断部23には、ある程度連続した数十パルス以上のRPが入力されるため、非通電・惰走のときと同様に、差動増幅部27の出力Bは「H」となる。そして、増幅度調整部24には、非通電・惰走の場合と同様に、モータ電圧入力判断部22から出力D:「L」、差動増幅部27から出力B:「H」が入力され、NAND34の入力E,Cは、NOT35,36によりそれぞれ「H」,「L」となる。したがって、NAND34の出力Fは「H」、NOT37の出力Gは「L」、トランジスタ38のコレクタ側Pがオープンとなり、利得調整部13に対するゲインコントロールも行われない。
【0034】
(4)モータ非通電・停止の場合
モータ3が通電されていない状態で停止しているときは、VA,VBは「L」となる。その結果、NAND33には、NOT31,32を介して「H」,「H」が入力され、非通電・停止の場合は、出力Dは「L」となる。また、停止時には、リップルパルス入力判断部23に連続したRPは入力されない。したがって、停止の場合、出力AはBias電圧よりも小さくなり、差動増幅部27の出力Bは「L」となる。
【0035】
このとき、増幅度調整部24には、モータ電圧入力判断部22から出力D:「L」、差動増幅部27から出力B:「L」が入力され、NAND34の入力E,Cは、NOT35,36によりそれぞれ「H」,「H」となる。したがって、NAND34の出力Fは「L」、NOT37の出力Gは「H」となる。すると、このときトランジスタ38のゲートは「H」となり、トランジスタ38のコレクタ側Pはエミッタ側と導通して接地し「L」となる。その結果、利得調整部13のゲインコントロール電圧が「L」となり、増幅度が下げられる。これにより、リップルパルス変換部10の感度が低くなり、図3X部(モータ停止時)にノイズ等が入力されても、破線のような誤パルスの発生を抑制することができる。
【0036】
このように、本発明のモータ制御装置1では、モータ電流に含まれる電流リップルを抽出してリップルパルスを出力するリップルパルス変換部10に、モータ3が非通電・停止状態のとき、電流リップルの検出感度を低下させるリップル検出感度調整部21を設けることにより、リップルパルス未発生期間にノイズ等による外乱が生じても、誤パルスの発生を抑えることができる。このため、例えば、パルスカウントに基づいてモータの制御を行う場合においても、カウント値のズレを防止でき、モータの回転角度情報等の誤差を抑え、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。したがって、本実施の形態のように、パワーウインド用モータに当該制御装置を用いることにより、パルスカウントのズレによる窓位置の誤検知を防止できる。その結果、パワーウインドの制御精度の向上が図られ、窓の動作速度や挟み込み検知などの制御精度も向上する。
【0037】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述のモータ制御装置の機能は、リップルパルス変換部10やリップル検出感度調整部21などのハードウエア的な構成ではなく、ソフトウエア上にてこれらの機能を代替・実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によるモータ制御装置は、パワーウインド用モータの動作制御のみならず、ワイパやパワーシート等の他の車載電動装置や、ブラシ付きモータを用いた家庭用電気製品等、モータ駆動電流からパルスを検出する技術を用いた機器に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 モータ制御装置
2 モータドライバ
3 ブラシ付きDCモータ
4 電源ライン
5 シャント抵抗
10 リップルパルス変換部
11 電流検出部
12 第1平滑回路
13 利得調整部
14 第2平滑回路
15 リップル検出部
16 デジタル信号変換部
21 リップル検出感度調整部
22 モータ電圧入力判断部
23 リップルパルス入力判断部
24 増幅度調整部
25 リップルパルス検出部
26 リップルパルス平滑部
27 差動増幅部
31 NOT
32 NOT
33 NAND
34 NAND
35 NOT
36 NOT
37 NOT
38 トランジスタ
図1
図2
図3