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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/22 20060101AFI20231113BHJP
   B67D 7/40 20100101ALI20231113BHJP
【FI】
B60P3/22 Z
B67D7/40 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020002144
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109516
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】笠 直亮
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-055234(JP,A)
【文献】実開昭61-094445(JP,U)
【文献】特開2004-058803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/22
B67D 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に開口部が開口形成される箱状の収納部とその収納部の前記開口部を開閉する蓋とを有する箱体を備え、前記箱体に収納物が収納可能とされた車両において、
前記収納部の内部に配設され、前記収納物の出し入れを規制可能な規制位置と前記収納物の出し入れを許容可能な許容位置との間で変位可能とされる規制部材を備え
前記規制部材は、軸方向が前記収納部の奥行方向と略平行となる向きで前記収納部の内部の天面に回転可能に軸支される軸部と、その軸部から前記軸部の軸直角方向へ延出される延出部とを備えることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記規制部材を前記許容位置に保持する保持部材を備えることを特徴とする請求項記載の車両。
【請求項3】
前記保持部材は、前記規制位置に配置された前記規制部材が前記許容位置へ向かう回転方向とは反対の方向へ回転することを規制する回転規制部を備えることを特徴とする請求項記載の車両。
【請求項4】
前記規制部材は、前記延出部が前記保持部材に保持された状態において、少なくとも閉じた状態における前記蓋と当接可能とされる突出部を備え、
前記延出部が前記保持部材に保持された状態で前記蓋が閉じられると、前記突出部が前記蓋に押されて前記規制部材が前記軸部の軸方向に変位されることで、前記延出部が前記保持部材から外れることを特徴とする請求項又はに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に、走行中に蓋が開いても、収納部から収納物が脱落することを抑制できる車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収納物を収納可能に形成される収納箱を備えた車両が知られている。このような車両として、例えば、タンクローリ車が知られている(特許文献1)。
【0003】
タンクローリ車は、タンク内の運搬物(液化ガス等)を配送先の外部タンクへ充填するために用いるホース(収納物)と、そのホースを収納するホース箱(箱体)とを備える。ホース箱は、一面側に開口部が開口形成される収納部と、その収納部の開口部を開閉する蓋とを備え、ホースを出し入れする際の作業性を考慮して、一面側(開口部)を車両の側方へ向けて設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-71614号公報(例えば、段落0020,0024、図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の車両では、走行中に蓋が開くと、収納部から収納物が脱落する虞があるという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、走行中に蓋が開いても、収納部から収納物が脱落することを抑制できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の車両は、一面側に開口部が開口形成される箱状の収納部とその収納部の前記開口部を開閉する蓋とを有する箱体を備え、前記箱体に収納物が収納可能とされたものであり、前記収納部の内部に配設され、前記収納物の出し入れを規制可能な規制位置と前記収納物の出し入れを許容可能な許容位置との間で変位可能とされる規制部材を備え、前記規制部材は、軸方向が前記収納部の奥行方向と略平行となる向きで前記収納部の内部の天面に回転可能に軸支される軸部と、その軸部から前記軸部の軸直角方向へ延出される延出部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の車両によれば、収納部の内部に配設され、収納物の出し入れを規制可能な規制位置と収納物の出し入れを許容可能な許容位置との間で変位可能とされる規制部材を備えるので、規制部材を規制位置に配置しておくことで、走行中に蓋が開いた場合でも、収納物の移動を規制部材により規制して、収納部から収納物が脱落することを抑制できる。
【0009】
また、規制部材は許容位置に変位可能とされるので、収納物を出し入れする際には、規制部材を許容位置に配置することで、収納物を出し入れする作業の作業性を確保することができる。
【0010】
制部材は、収納部の内部の天面に回転可能に軸支される軸部と、その軸部から軸部の軸直角方向へ延出される延出部とを備える。この場合、軸部を中心として規制部材が回転され、延出部が下方に垂下されることで、規制部材が規制位置に配置され、軸部を中心として規制部材が回転され、延出部が上方へ持ち上げられることで、規制部材が許容位置に配置される。よって、請求項1記載の車両の奏する効果に加え、規制部材の規制位置への配置を容易とできると共に、規制部材を規制位置に維持し易くできる。
【0011】
即ち、延出部の重さ(軸部に対する重心の偏心)を利用して、延出部が下方へ垂下する方向へ規制部材を回転させることができるので、規制部材(延出部)の規制位置への配置を容易にできる。また、規制位置が最も安定する位置であり、規制部材が回転されても、その回転位置が規制位置に収束されるので、規制部材(延出部)を規制位置に維持し易くできる。
【0012】
請求項記載の車両によれば、請求項記載の車両の奏する効果に加え、規制部材を許容位置に保持する保持部材を備えるので、収納物を出し入れする作業の作業性を確保することができる。
【0013】
請求項記載の車両によれば、請求項記載の車両の奏する効果に加え、保持部材は、規制位置に配置された規制部材が許容位置へ向かう回転方向とは反対の方向へ回転することを規制する回転規制部を備えるので、規制部材の回転可能範囲を小さくして、走行中に規制部材が振り子のように回転することを抑制できる。
【0014】
また、保持部材に、規制部材を保持する部位としての役割と、規制部材の回転を規制する部位としての役割とを兼用させることができ、後者の役割を担う部品を別途設けることを不要とできる。よって、部品点数を低減して、その分、製品コストを低減できる。
【0015】
請求項記載の車両によれば、請求項又はに記載の車両の奏する効果に加え、規制部材は、延出部が前記保持部材に保持された状態において、少なくとも閉じた状態における蓋と当接可能とされる突出部を備え、延出部が保持部材に保持された状態で蓋が閉じられると、突出部が蓋に押されて規制部材が軸部の軸方向に変位されることで、延出部が保持部材から外れるので、規制部材を規制位置に配置し忘れることを回避できる。
【0016】
また、蓋を閉じた状態では、突出部が蓋に干渉して、延出部が保持部材に保持された状態を形成することができない。よって、走行中に規制部材が回転して、延出部が保持部材に保持される(即ち、規制部材が許容位置に配置される)ことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態におけるタンクローリ車の側面図である。
図2】(a)は、図1のIIa-IIa線におけるホース箱の断面図であり、(b)は、図1のIIb-IIb線におけるホース箱の断面図である。
図3】(a)は、図2(a)の矢印IIIa方向視におけるホース箱の内部を部分的に拡大した部分拡大図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIIb方向視におけるホース箱の内部を部分的に拡大した部分拡大図である。
図4】(a)及び(b)は、図1のIIb-IIb線における蓋を開いた状態のホース箱の断面図であり、(a)は、規制部材を規制位置に配置した状態に、(b)は、規制部材を許容位置に配置した状態に、それぞれ対応する。
図5】(a)は、図4(b)の矢印Va方向視におけるホース箱の内部を部分的に拡大した部分拡大図であり、(b)は、図4(b)の矢印Vb方向視におけるホース箱の内部を部分的に拡大した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、タンクローリ車1の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるタンクローリ車1の側面図である。
【0019】
なお、図1中の矢印F-B,矢印U-D及び矢印L-Rは、タンクローリ車1の前後方向、上下方向および左右方向をそれぞれ表している。図2以降においても同様であるので、その説明は省略する。
【0020】
図1に示すように、タンクローリ車1は、液化ガス等の運搬物を運搬するための車両であり、複数の車輪2と、それら複数の車輪2に支持される車体3と、その車体3に載置されるタンク4と、そのタンク4の左方(図1紙面手前側)で車体3に支持されるホース箱100と、そのホース箱100に収納されるホースh(図2参照)とを主に備えて構成されている。
【0021】
車体3は、複数の車輪2のうちの前輪2Fの上方(矢印U方向側)に位置する運転室3aと、その運転室3aの後方に配設されるフレーム3bとを備えている。運転室3aは、運転手が乗車してタンクローリ車1の走行操作をするための部位であり、フレーム3bは、タンク4が載置されると共にタンクローリ車1の走行や荷役作業に使用する様々な車載機材が架装される部位である。タンク4は、運搬物を貯留するための容器であり、断面円形状に形成されている。
【0022】
なお、タンクローリ車1に架装される車載機材としては、例えば、タンクローリ車1の走行用の燃料タンク、荷役作業に使用されるバルブ、配管、メータ(図示せず)やそれらバルブ等を収納する弁箱などが例示される。
【0023】
ホース箱100は、ホースhを収納するための収納箱であり、タンク4と後輪2Rのタイヤカバー5との間の空間に配設される。ホース箱100の蓋120は、タンクローリ車1の左方(図1紙面手前側)に配設され、下辺(矢印D側の辺)が複数のヒンジ130(開閉軸)により軸支された下開きの扉として形成される。
【0024】
なお、蓋120は、長手方向(矢印F-B方向)の略中央で前後に分割され、前後のそれぞれが独立して開閉可能とされる。また、ホース箱100には、複数のパッチン錠(キャッチクリップ)140が蓋120の上辺に係合可能に設けられる。パッチン錠140の施錠により、蓋120が閉めた状態に維持される。
【0025】
ここで、上辺(矢印U側の辺)が開閉軸により軸支された上開きの蓋では、ホースhの出し入れの際などに蓋が不用意に閉じることがないように、蓋を開いた状態に保持する機構が必要となり、その分、部品点数の増加および構造の複雑化を招く。これに対し、下開きであれば、蓋120を開いた状態に保持する機構を不要とできるので、部品点数の低減および構造の簡素化を図り、製品コストを低減できる。
【0026】
一方で、下開きの蓋120では、その自重が蓋120を開く方向へ作用する。そのため、後述する理由により、走行中に蓋120が開き、ホース箱100からホースhが脱落する虞がある。その対策として、ホース箱100では、ホースhの移動を規制して、ホースhが脱落することを抑制する構造を設けている。この構造について、以下に説明する。
【0027】
図2(a)は、図1のIIa-IIa線におけるホース箱100の断面図であり、図2(b)は、図1のIIb-IIb線におけるホース箱100の断面図である。図3(a)は、図2(a)の矢印IIIa方向視におけるホース箱100の内部を部分的に拡大した部分拡大図であり、図3(b)は、図2(a)の矢印IIIb方向視におけるホース箱100の内部を部分的に拡大した部分拡大図である。
【0028】
なお、図2及び図3では、規制部材200が規制位置に配置された状態(延出部220が自重で下方へ垂下した状態)が図示される。また、図2及び図3(b)では、ホースhが二点鎖線を用いて模式的に図示されると共に、図3(b)では、受け部112aの一部の図示が省略される。
【0029】
図2及び図3に示すように、ホース箱100は、一面側(矢印L方向側)に開口部OPが開口形成される箱状の収納部110と、その収納部110の開口部OPを開閉する蓋120とを備え、それら収納部110及び蓋120で区画される空間にホースh(収納物)が収納される。
【0030】
収納部110は、底板111と、天板112と、背板113と、端板114,115とから一面側が開口された箱状に形成される。
【0031】
天板112には、蓋120を受け止める受け部112aが形成される。受け部112aは、天板112の背板113と反対側の縁部を底板111側へ折り曲げて形成される。受け部112aの外面(正面)に蓋120の内面(背面)が当接される(受け止められる)ことで、蓋120が開口部OPを閉じた状態となり、パッチン錠140による施錠が可能とされる。
【0032】
受け部112aには、正面視円形の挿通孔112a1が貫通形成され、この挿通孔112a1から後述する規制部材200の突出部230が突出可能とされる(図4(a)及び図4(b)参照)。挿通孔112a1の内径は、突出部230の外径と略同等または若干大きな寸法(例えば、突出部230の外径の1.05倍の寸法)に設定される。
【0033】
ホース箱100は、規制部材200と、その規制部材200を変位(回転およびスライド)可能に支持する軸支部材300と、規制部材200の変位を規制すると共に規制部材200を所定位置に保持する保持部材400とを備える。
【0034】
後述するように、規制部材200は、ホースhの出し入れを規制可能な規制位置(図4(a)参照)とホースhの出し入れを許容可能な許容位置(図4(b)参照)との間で変位可能とされる。規制部材200が規制位置に配置された状態では、走行中に蓋120が開いた場合でも、規制部材200によりホースhの移動を規制して、ホースhのホース箱100からの脱落を抑制できる。
【0035】
なお、走行中に蓋120が開く状況としては、例えば、作業者によるパッチン錠140の施錠忘れや操作(施錠)不良、或いは、パッチン錠140の故障に起因して、走行中にパッチン錠140が解錠され、蓋120が自重により下降して開いた状態となる状況が想定される。
【0036】
規制部材200は、ホースhに当接してその移動(ホース箱100からの脱落)を規制するための部材であり、円柱状の軸部210と、その軸部210の一端に同軸に形成される突出部230と、軸部210及び突出部230の接続部分の外面から軸直角方向へ延出される円柱状の延出部220とを備える。なお、軸部210と突出部230との外径は略同一に設定される。
【0037】
軸支部材300は、天板112の内面(天面)に締結固定される板状の基部310と、その基部310に固定され、規制部材200の軸部210が挿通される筒状の筒部320とを備える。筒部320の内径は、規制部材200の軸部210の外径と略同等の寸法または若干大きな寸法(例えば、軸部210の外径の1.05倍)に設定される。よって、規制部材200(軸部210)は、軸支部材300(筒部320)によって、回転可能かつスライド(軸方向へ直線移動)可能に軸支される。
【0038】
なお、規制部材200は、延出部220が受け部112aの内面(背面)に当接することで、軸方向一方(矢印L方向)へのスライドが規制され(図4(b)参照)、延出部220が筒部320の軸方向端面(矢印L方向側の面)に当接することで、軸方向他方(矢印R方向)へのスライドが規制される。
【0039】
また、筒部320は、タンクローリ車1の左右方向(矢印L-R方向)に軸線を沿わせた姿勢で配設される。よって、規制部材200は、軸部210を回転中心として回転されると、延出部220がタンクローリ車1の前後方向(矢印F-B方向)へ揺動する。
【0040】
保持部材400は、天板112の内面(天面)に締結固定される基部410と、天板112に所定間隔を隔てて対向配置され、延出部220が載置される水平部420と(図4(b)及び図5参照)、それら基部410及び水平部420を接続する嵩上げ部430とを備え、これら各部410,420,430が一枚の板材を折り曲げて一体に形成される。
【0041】
水平部420は、平面視略L字状に形成され(図3(a)参照)、その2箇所の縁部(スライド規制部420a及び回転規制部420b)を、規制位置に配置された規制部材200の延出部220の外周面に対向させる。具体的には、スライド規制部420aは延出部220の開口部OP側(矢印L側)を向く外周面に対向し、回転規制部420bは延出部220のタンクローリ車1の後側(矢印B側)を向く外周面に対向する。
【0042】
回転規制部420bは、規制部材200が規制位置に配置された状態において、延出部220の外周面に当接する位置または延出部220の外周面と若干(例えば、5mm)の隙間を有する位置に形成される。
【0043】
よって、規制部材200は、規制位置に配置された状態では、延出部220がスライド規制部420aに当接することで、軸方向一方(矢印L方向)へのスライドが規制される。また、延出部220が回転規制部420bに当接することで、図3(b)における反時計回りの回転(延出部220をタンクローリ車1の後側へ揺動させる回転、即ち、規制部材200が許容位置(図5(b)参照)とは反対の方向へ回転すること)が規制される。
【0044】
なお、保持部材400は、規制部材200(延出部220)を載置(保持)する部位としての役割と、規制部材200のスライドを規制する部位としての役割と、規制部材200の回転を規制する部位としての役割とを兼用する。よって、これらの役割を担う部品をそれぞれ別々に設けることを不要とできる。よって、部品点数を低減して、その分、製品コストを低減できる。
【0045】
次いで、図2から図5を参照して、ホース箱100の使用方法および規制部材200の機能について説明する。
【0046】
図4(a)及び図4(b)は、図1のIIb-IIb線における蓋120を開いた状態のホース箱100の断面図であり、図4(a)は、規制部材200を規制位置に配置した状態に、図4(b)は、規制部材200を許容位置に配置した状態に、それぞれ対応する。図5(a)は、図4(b)の矢印Va方向視におけるホース箱100の内部を部分的に拡大した部分拡大図であり、図5(b)は、図4(b)の矢印Vb方向視におけるホース箱100の内部を部分的に拡大した部分拡大図である。
【0047】
なお、図4及び図5(b)では、ホースhが二点鎖線を用いて模式的に図示されると共に、図5(b)では、受け部112aの一部の図示が省略される。
【0048】
図2及び図3に示すように、タンクローリ車1が走行する際には、ホース箱100は、蓋120により開口部OPが閉じた状態とされ、パッチン錠140(図1参照)が施錠される。
【0049】
この場合、規制部材200は、規制位置に配置される。上述したように、規制部材200が規制位置に配置された状態では、延出部220がスライド規制部420aに当接することで、規制部材200(延出部220)の軸方向一方(矢印L方向)へのスライドが規制される。
【0050】
即ち、走行中の振動や車両の旋回に伴う遠心力の作用によってホースhが蓋120側(矢印L方向)へ移動しても規制部材200(延出部220)が干渉し、蓋120がホースhに押されることを抑制できるので、ヒンジ130やパッチン錠140の負荷(破損)を抑制できる。また、ホースhに押されて、蓋120が不用意に開くことを抑制できる。
【0051】
また、走行中にパッチン錠140が何らかの理由により解錠され、蓋120が自重により下降して開いた場合でも、規制部材200(延出部220)が干渉するので、ホース箱100(収納部110)からホースhが脱落することを抑制できる。
【0052】
ホースhの移動は、車両の旋回に伴う遠心力の作用が大きいことから、主にタンクローリ車1の左右方向(矢印L-R方向)とされる。一方で、上述したように、軸部210(筒部320)は、タンクローリ車1の左右方向(矢印L-R方向)に軸線を沿わせた姿勢で配設され、延出部220は、タンクローリ車1の前後方向(矢印F-B方向)への揺動のみが許容される。よって、遠心力の作用を受けて移動するホースhが延出部220を持ち上げて、その延出部220の下方をすり抜けることを抑制できる。その結果、ホース箱100(収納部110)からホースhが脱落することを抑制できる。
【0053】
規制部材200は、規制位置に配置された状態では、延出部220が回転規制部420bに当接することで、図3(b)における反時計回りの回転(延出部220をタンクローリ車1の後側へ揺動させる回転)が規制される。よって、走行中の振動や車両の加減速に伴う作用によって、規制部材200(軸部210)が回転し、延出部220がタンクローリ車1の前後方向(矢印F-B方向)へ揺動しようとしても、延出部220が回転規制部420bに干渉するため、規制部材200の揺動回転可能な範囲を短くできる。その結果、走行中に延出部220がタンクローリ車1の前後方向へ振り子のように揺動することを抑制できる。
【0054】
ここで、規制部材200(軸部210)を底板111に配設(軸支)し、延出部220を上方へ起立させた状態を、規制部材200が規制位置に配置された状態とする構造も考えられる。しかしながら、この構造では、延出部220を起立した状態に維持するための部材を別途設ける必要があり、製品コストが嵩む。また、延出部220の重さ(軸部210に対する規制部材200の重心の偏心)が延出部220を傾倒させる方向へ作用するため、走行中に延出部220が傾倒して、規制位置に配置された状態が解除される虞がある。
【0055】
これに対し、規制部材200(軸部210)が天板112に配設(軸支)される構造であれば、延出部220の重さ(軸部210に対する規制部材200の重心の偏心)を利用して、延出部220が下方へ垂下した状態(即ち、規制位置に配置された状態)を維持できる。よって、延出部220を垂下した状態に維持するための部材を別途設ける必要がないため、製品コストを低減できる。また、規制位置が最も安定する位置とされ、走行中の振動等で規制部材200が揺動しても振動等が収まれば規制位置に戻る。即ち、規制部材200を規制位置に維持し易くできる。
【0056】
ホースhを使用する際には、図4(a)に示すように、蓋120を開き、次いで、延出部220を水平部420よりも上方となる位置まで持ち上げた後、規制部材200(軸部210)を軸方向一方(矢印L方向)へスライドさせ、延出部220を水平部420上に載置し保持させる。これにより、図4(b)及び図5に示すように、規制部材200が許容位置に配置される。この状態では、延出部220がホースhの上端よりも上方に配置され、ホースhの出し入れが可能となる。
【0057】
このように、ホース箱100には、保持部材400(水平部420)が設けられ、ホースhを出し入れする際には、その出し入れの邪魔にならない位置(許容位置)に延出部220を保持しておくことができる。よって、例えば、作業者が一方の手で延出部220を持ち上げつつ、他方の手でホースhを出し入れするなどの煩雑な作業を行う必要がない。従って、ホースhを出し入れする作業の作業性を確保することができる。
【0058】
ここで、例えば、磁石により規制部材200を許容位置に保持する構成では、磁石を別途設ける分、部品点数が嵩み、製品コストが増加する。また、磁力が適切でないと、規制部材200を保持することが困難になることや、逆に規制部材200を規制位置に戻す動作が困難になることが懸念される。これに対し、規制部材200は、延出部220が水平部420に載置されることで、許容位置に保持される。よって、磁石により保持する構成と比較して、部品点数を削減でき、その分、製品コストを低減できる。また、許容位置での保持の確実化と、規制位置へ戻す動作の容易化とを両立できる。
【0059】
水平部420の形成位置は、規制部材200(軸部210)が軸方向一方(矢印L方向)へスライドされ、受け部112aの内面(背面)に延出部220が当接された状態において、その延出部220の下方となる位置(矢印U-D方向視で重なる位置)に設定される。
【0060】
即ち、規制部材200(軸部210)を軸方向一方(矢印L方向)へスライドさせ、そのスライドが規制された状態(延出部220が受け部112aの内面に当接された状態)で手を離せば、延出部220を水平部420に確実に載置できる。よって、受け部112aに遮蔽されて、水平部420と延出部220との位置関係が作業者からは視認し難い構造であっても、水平部420への延出部220の載置を簡易とできる。
【0061】
なお、規制部材200の矢印R方向へのスライドは、筒部320の軸方向端面に延出部220が当接することで規制される。また、規制部材200の矢印L方向へのスライドは、規制位置に配置された状態ではスライド規制部420aに延出部220が当接することで、許容位置に配置された状態では受け部112aに延出部220が当接することで、それぞれ規制される。よって、規制部材200は、ホース箱100に取り外し不能に装着されるので、その紛失を抑制できる。
【0062】
ホースhの使用が終了した後は、図4(b)及び図5に示すように、規制部材200が許容位置に配置された状態において、ホースhを収納部110に収納し、蓋120を閉じ、パッチン錠140(図1)を施錠する。これにより、図2及び図3に示すように、ホース箱100にホースhが収納される。
【0063】
ここで、規制部材200は、図4(b)及び図5(a)に示すように、延出部220が水平部420に載置された状態(許容位置に配置された状態)では、突出部230が挿通孔112a1を介して受け部112aの外面に突出される。この突出された部分は、蓋120が閉じられると、蓋120の内面によって矢印R方向へ押し込まれる位置に配置される。即ち、蓋120を閉じると突出部230と共に規制部材200(軸部210)が軸方向(矢印R方向)へ変位される。これにより、延出部220が水平部420から外れ、その自重(軸部210に対する規制部材200の重心の偏心)により、図2及び図3に示すように、規制部材200が規制位置に配置される。
【0064】
このように、規制部材200が許容位置に配置された状態のままであっても、蓋120が閉じられると、延出部220を水平部420から外すと共に、延出部220の重さ(軸部210に対する規制部材200の重心の偏心)を利用して、規制部材200を規制位置に配置することができる。よって、規制部材200を規制位置に配置し忘れることを回避できる。また、蓋120を閉じる前に作業者が規制部材200を規制位置へ配置する作業を省略できるので、その分、作業性を向上できる。
【0065】
また、蓋120を閉じた状態では、図2及び図3に示すように、突出部230が蓋120の内面(背面)に干渉する。よって、例えば、走行中の振動や急制動などに起因して延出部220が水平部420よりも上方へ持ち上げられたとしても、規制部材200が軸方向一方(矢印L方向)へスライドすることを規制できる。よって、走行中に延出部220が水平部420に載置される(ホースhの移動が許容される)ことを回避できる。
【0066】
なお、水平部420(スライド規制部420aが形成される部分)の幅寸法(矢印L-R方向寸法)は、蓋120を閉じ切る前に、延出部220が水平部420から外れる寸法に設定される。これにより、蓋120を閉じる際に延出部220を水平部420から確実に外すことができると共に、蓋120を閉じた状態において延出部220が水平部420に載置されることを確実に回避できる。
【0067】
また、水平部420の先端側(矢印F方向側)の縁部は、図3(a)に示すように、スライド規制部420aと接続される側(矢印R方向側)が平面視略円弧状に湾曲して形成される。よって、蓋120の内面に突出部230が押し込まれ、規制部材200(軸部210)が軸方向(矢印R方向)へ変位されることで、延出部220が水平部420から外れる場合に、上記湾曲形状が形成されている分、延出部220が自由落下する距離を短くできる。これにより、自由落下した延出部220が回転規制部420bへ衝突する際の速度を抑制して、延出部220又は回転規制部420bが破損することを抑制できる。
【0068】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0069】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。同様に、各構成の配設数は任意である。例えば、規制部材200の配設数は、1個でも良く、複数(2個以上)でも良い。複数の規制部材200を設ける場合には、一部の規制部材200とその一部を除く他の規制部材200とで回転方向(規制位置から許容位置へ向かう方向)を逆としても良い。
【0070】
上記実施形態では、蓋120が下開きの扉とされる場合を説明したが、蓋120を上開きや横開きの扉として構成しても良い。
【0071】
上記実施形態では、収納物の一例としてホースhを採用したが、他のものを収納物とすることは当然可能である。他の収納物としては、例えば、消火器、手押し台車、タイヤチェーン、輪留め、工具などが例示される。即ち、車両に積載される任意の車載機材が採用可能である。
【0072】
上記実施形態では、延出部220の長手方向における途中の部分が水平部420に載置される場合を説明したが(図5(b)参照)、延出部220の先端部分(軸部210と反対側の部分)が水平部420に載置される構成でも良い。
【0073】
上記実施形態では、許容位置に配置された規制部材200の延出部220の先端側の一部が受け部112aの下縁(矢印D方向側の縁)よりも下方に位置される場合を説明したが(図4(b)及び図5(b)参照)、受け部112aの下縁が延出部220の先端よりも下方に位置する構成としても良い。即ち、許容位置に配置された規制部材200の延出部220の全体が、正面視(矢印L-R方向視)において、受け部112aに遮蔽される構成としても良い。これにより、ホースhを収納する際に、延出部220にホースhが干渉して(押されて)、延出部220が水平部420から外れることを抑制できる。
【0074】
上記実施形態では、規制部材200が規制位置に配置された状態において、延出部220のタンクローリ車1の後側(矢印B側)を向く外周面に回転規制部420bが対向される場合を説明したが(図3(a)参照)、延出部220のタンクローリ車1の前側(矢印F側)を向く外周面に回転規制部420bが対向する構成(即ち、規制部材200の図3(b)における時計回りの回転を規制する構成)でも良い。
【0075】
上記実施形態では、挿通孔112a1が閉じた孔として形成される場合を説明したが、受け部112aの下縁に連続する開口(切り欠き)であっても良い。即ち、突出部230を受け部112aの外面(正面)へ突出させられるものであれば、任意の形状を採用可能である。
【0076】
上記実施形態では、水平部420の上面が水平な面として形成される場合を説明したが、水平部420の上面(少なくとも延出部220が載置される部分)を、受け部112aから離間する方向(矢印L方向)へ向けて上昇傾斜させても良い。或いは、水平部420の一部(少なくとも延出部220が載置される部分)におけるスライド規制部420a側の縁部を上方へ折り返しても良い。これらの場合には、例えば、ホースhを収納する際に、受け部112aの外面(正面)や延出部220にホースhが衝突した場合でも、上昇傾斜や折り返し部分を利用して、水平部420から延出部220を外れ難くできる。
【符号の説明】
【0077】
1 タンクローリ車(車両)
100 ホース箱(箱体)
110 収納部
OP 開口部
120 蓋
130 ヒンジ(開閉軸)
200 規制部材
210 軸部
220 延出部
230 突出部
400 保持部材
420b 回転規制部
h ホース(収納物)
図1
図2
図3
図4
図5