(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】超音波診断装置、プログラム、およびキャスタユニット
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020002820
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】穐山 茂
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 欣孝
(72)【発明者】
【氏名】中内 信行
(72)【発明者】
【氏名】永井 岳年
(72)【発明者】
【氏名】崔 載鎬
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-213028(JP,A)
【文献】米国特許第06236927(US,B1)
【文献】特開2018-164608(JP,A)
【文献】特開2017-213188(JP,A)
【文献】特開2011-229900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323870(US,A1)
【文献】特開2008-126015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0094130(US,A1)
【文献】特開2010-005239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0296632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15、6/00-6/14
B62B 1/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体を移動させる
第1のキャスタ
および第2のキャスタと、
前記装置本体と当該装置本体の付属物とを含む装置の走行状態に応じて、
前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう前記
第1のキャスタ
と前記第2のキャスタとを
制御する
制御部
と
を具備する、超音波診断装置。
【請求項2】
前記装置の走行状態は、前記装置全体の重量、前記装置における重心の位置、前記装置の走行方向、および前記装置の姿勢の少なくとも一つを示す、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記装置全体の重量を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記装置全体の重量に応じて、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう、前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記装置における重心の位置を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記重心の位置に応じて、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう、前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記装置の走行方向を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記装置の走行方向に応じて、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう、前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記装置の姿勢を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部により検出された前記装置の姿勢に応じて、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう、前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記第1のキャスタおよび前記第2のキャスタの一方のキャスタは、前記装置の前方に設けられるキャスタであり、前記第1のキャスタおよび前記第2のキャスタの他方のキャスタは、前記装置の後方に設けられるキャスタである、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記装置の走行方向が前向きの場合、前記一方のキャスタに対する制動力よりも前記他方のキャスタに対する制動力が大きくなるように前記一方のキャスタおよび前記他方のキャスタを制御し、
前記装置の走行方向が後向きの場合、前記他方のキャスタに対する制動力よりも前記一方のキャスタに対する制動力が大きくなるように前記一方のキャスタおよび前記他方のキャスタを制御する、
請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記第1のキャスタおよび前記第2のキャスタの一方のキャスタは、前記装置の左側に設けられるキャスタであり、前記第1のキャスタおよび前記第2のキャスタの他方のキャスタは、前記装置の右側に設けられるキャスタである、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記装置本体の重心方向が左側の場合、前記他方のキャスタに対する制動力よりも前記一方のキャスタに対する制動力が大きくなるように前記一方のキャスタおよび前記他方のキャスタを制御し、
前記装置本体の重心方向が右側の場合、前記一方のキャスタに対する制動力よりも前記他方のキャスタに対する制動力が大きくなるように前記一方のキャスタおよび前記他方のキャスタを制御する、
請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記付属物は、外付けバッテリ、ジェルウォーマ、磁気トランスミッタ、白黒プリンタ、カラープリンタ、DVDレコーダ、およびフュージョンユニットのうちの少なくとも一つである、
請求項1
から10のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記装置の走行状態に応じて、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とを決定する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記装置の走行状態と前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが対応付けられたテーブルが記憶された記憶部を備え、
前記制御部は、前記装置の走行状態に対応付けられた、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とを前記記憶部から読み出し、読み出した前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とによって前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
コンピュータを、
装置本体
と当該装置本体の付属物とを含む超音波診断装置の走行状態に応じて、前記装置本体を移動させる第1のキャスタに対する制動力と、前記装置本体を移動させる第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する制御部
として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
装置本体を移動させる
第1のキャスタ
および第2のキャスタと、
前記装置本体
と当該装置本体の付属物とを含む装置の走行状態に応じて、前記第1のキャスタに対する制動力と前記第2のキャスタに対する制動力とが異なるよう前記第1のキャスタと前記第2のキャスタとを制御する制御部と
を具備する、キャスタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置、プログラム、およびキャスタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャスタへ負荷をかけることができるブレーキ機構を備えた超音波診断装置が知られている。このブレーキ機構は、ワイヤに接続されたブレーキレバーに与える力に応じてキャスタへの負荷を変化させる。
【0003】
しかし、上記の超音波診断装置では、例えば付属物が追加されて装置全体の重量が増加した場合、ユーザは、付属物が追加されていない状態に比べてブレーキレバーに与える力を大きくする必要がある。また同じように、傾斜を移動中に減速させる場合、ユーザは、平地を移動中に減速させる状態に比べてブレーキレバーに与える力を大きくする必要がある。
【0004】
このように、状況によってブレーキレバーに与える力を変化させる必要があるため、従来の超音波診断装置の移動は、ユーザにとって負担となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ユーザの負担を低減しつつ超音波診断装置を安全に移動させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波診断装置は、装置本体と、キャスタと、制動部と、決定部とを備える。キャスタは、装置本体を移動させる。制動部は、キャスタに制動力を与え、キャスタを制動する。決定部は、装置本体へ取り付けられる超音波診断に関する付属物の有無に応じて制動力を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の超音波診断装置における、装置本体と、ハンドル部、センサ部、外付けバッテリ、周辺機器、およびキャスタユニットとの接続例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における超音波診断装置の装置本体の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における超音波診断装置の装置本体の別の外観を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る制動力決定処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態における超音波診断装置の状態と制動力とを対応付けたテーブルである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るブレーキ動作処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の応用例に係る重量重心算出処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の応用例における付属物と、重量と、取付箇所とを対応付けたテーブルである。
【
図10】
図10は、第2の実施形態におけるセンサの構成例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る制動力決定処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置およびキャスタユニットの実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示す図である。
図1の超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101とを有している。装置本体100は、入力装置102および表示装置103と接続されている。また、装置本体100は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。外部装置104は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)を搭載したサーバなどである。
【0011】
さらに、装置本体100は、ハンドル部105と、センサ部106と、外付けバッテリ107と、周辺機器108と、キャスタユニット109とを有している。尚、外付けバッテリ107および周辺機器108は、着脱可能である。
【0012】
超音波プローブ101は、例えば、装置本体100からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ101は、例えば、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、および圧電振動子から後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ101は、例えば、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された一次元アレイリニアプローブである。超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。超音波プローブ101には、オフセット処理、および超音波画像をフリーズさせるフリーズ操作等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0013】
複数の圧電振動子は、装置本体100が有する後述の超音波送信回路110から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流または心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ101は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0014】
図1には、一つの超音波プローブ101と装置本体100との接続関係を例示している。しかしながら、装置本体100には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、切り替え操作によって任意に選択することができる。
【0015】
装置本体100は、超音波プローブ101により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100は、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180とを有している。
【0016】
超音波送信回路110は、超音波プローブ101に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路110は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、およびパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返して発生する。遅延回路は、超音波プローブから発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子の表面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0017】
また、超音波送信回路110は、駆動信号によって、超音波の出力強度を任意に変更することができる。超音波診断装置では、出力強度を大きくすることにより、生体P内での超音波の減衰の影響を小さくすることができる。超音波診断装置は、超音波の減衰の影響を小さくすることによって、受信時において、S/N比の大きい反射波信号を取得することができる。
【0018】
一般的に、超音波が生体P内を伝播すると、出力強度に相当する超音波の振動の強さ(これは、音響パワーとも称する)が減衰する。音響パワーの減衰は、吸収、散乱および反射などによって起こる。また、音響パワーの減少の度合いは、超音波の周波数および超音波の放射方向の距離に依存する。例えば、超音波の周波数を大きくすることにより、減衰の度合いは大きくなる。また、超音波の放射方向の距離が長くなるほど、減衰の度合いは大きくなる。
【0019】
超音波受信回路120は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路120は、超音波プローブ101によって取得された超音波の反射波信号に対する受信信号を生成する。具体的には、超音波受信回路120は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、およびビームフォーマ等により実現される。プリアンプは、超音波プローブ101が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調する。ビームフォーマは、例えば、復調されたディジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて、遅延時間が与えられた複数のディジタル信号を加算する。ビームフォーマの加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
【0020】
内部記憶回路130は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路130は、超音波送受信を実現するためのプログラム、後述する制動力決定処理に関するプログラム、後述するブレーキ動作処理に関するプログラム、および各種データ等を記憶している。各種データは、後述する超音波診断装置の状態と制動力とを対応付けたテーブルを含む。プログラム、および各種データは、例えば、内部記憶回路130に予め記憶されていてもよい。また、プログラムおよび各種データは、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路130にインストールされてもよい。また、内部記憶回路130は、入力インタフェース150を介して入力される操作に従い、処理回路180で生成されるBモード画像データおよび造影画像データ等を記憶する。内部記憶回路130は、記憶している画像データを、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送することも可能である。
【0021】
なお、内部記憶回路130は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路130は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置104に記憶させることも可能である。
【0022】
画像メモリ140は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ140は、入力インタフェース150を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ140に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0023】
内部記憶回路130、および画像メモリ140は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路130、および画像メモリ140が単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路130、および画像メモリ140のそれぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0024】
入力インタフェース150は、入力装置102を介し、ユーザからの各種指示を受け付ける。入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース150は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、ユーザから入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路180へ出力する。なお、入力インタフェース150は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路180へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0025】
出力インタフェース160は、例えば処理回路180からの電気信号を表示装置103へ出力するためのインタフェースである。表示装置103は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。表示装置103は、入力装置102を兼ねたタッチパネル式のディスプレイでもよい。出力インタフェース160は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、処理回路180からの電気信号を表示装置に出力する。
【0026】
通信インタフェース170は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0027】
処理回路180は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路180は、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180は、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183(画像生成部)と、表示制御機能184(表示制御部)と、取得機能185(取得部)と、算出機能186(算出部)と、制動力決定機能187(決定部)と、制動制御機能188(制動制御部)と、システム制御機能189とを有している。
【0028】
Bモード処理機能181は、超音波受信回路120から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。Bモード処理機能181により処理回路180は、例えば、超音波受信回路120から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0029】
また、処理回路180は、Bモード処理機能181により、造影エコー法、例えば、コントラストハーモニックイメージング(Contrast Harmonic Imaging:CHI)を実行することができる。即ち、処理回路180は、造影剤が注入された生体Pの反射波データ(高調波成分または分周波成分)と、生体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波成分)とを分離することができる。これにより、処理回路180は、生体Pの反射波データから高調波成分または分周波成分を抽出して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0030】
造影画像データを生成するためのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表したデータとなる。また、処理回路180は、生体Pの反射波データから基本波成分を抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0031】
なお、CHIを行う際、処理回路180は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分(高調波成分)を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。
【0032】
AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回(複数レート)行う。これにより、超音波受信回路120は、各走査線で複数の反射波データを生成し出力する。そして、処理回路180は、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、高調波成分を抽出する。そして、処理回路180は、高調波成分の反射波データに対して包絡線検波処理等を行なって、Bモードデータを生成する。
【0033】
例えば、PM法が行われる場合、超音波送信回路110は、処理回路180が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(-1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、超音波受信回路120は、「-1」の送信による反射波データと、「1」の送信による反射波データとを生成し、処理回路180は、これら2つの反射波データを加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、処理回路180は、この信号に対して包絡線検波処理等を行って、CHIのBモードデータ(造影画像データを生成するためのBモードデータ)を生成する。
【0034】
CHIのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表わしたデータとなる。また、CHIでPM法が行われる場合、処理回路180は、例えば、「1」の送信による反射波データをフィルタ処理することで、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0035】
ドプラ処理機能182は、超音波受信回路120から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region Of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラ情報)を生成する機能である。生成されたドプラ情報は、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0036】
画像生成機能183は、Bモード処理機能181により生成されたデータに基づいて、Bモード画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能183により処理回路180は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像データ(表示画像データ)を生成する。具体的には、処理回路180は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元Bモード画像データ(超音波画像データとも称する)を生成する。換言すると、処理回路180は、画像生成機能183により、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)を生成する。
【0037】
また、処理回路180は、2次元Bモード画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、およびγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行することで、画像データをビデオ信号に変換する。処理回路180は、ビデオ信号を表示装置103に表示させる。なお、処理回路180は、ユーザが入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、生成したGUIを表示装置103に表示させてもよい。
【0038】
表示制御機能184は、生成された表示画像データを表示装置103に表示させる機能である。具体的には、表示制御機能184により処理回路180は、表示画像データを表示装置103にそのまま表示させてもよいし、表示画像データを所定の医用画像データと並べて、或いは医用画像データ上に重畳させて表示装置103に表示させてもよい。
【0039】
システム制御機能189は、超音波診断装置1全体の動作を統括して制御する機能である。尚、取得機能185、算出機能186、制動力決定機能187、および制動制御機能188については、後述される。
【0040】
図2は、
図1の超音波診断装置における、装置本体と、ハンドル部、センサ部、外付けバッテリ、周辺機器、およびキャスタユニットとの接続例を示すブロック図である。装置本体100は、各種指示およびセンサ情報を受け取ることができ、制動力に関する情報を出力することができる。また、装置本体100は、着脱可能な部材、例えば、外付けバッテリ107および周辺機器108の着脱を検出してもよい。尚、センサ情報については後述される。
【0041】
ハンドル部105は、装置本体100に取り付けられている。ハンドル部105は、例えば、把持部1051と、ブレーキボタン1052とを有する。把持部1051は、装置本体100を移動させるために、ユーザによって把持される棒である。把持部1051の一部には、ブレーキボタン1052が設けられている。ブレーキボタン1052は、例えば、装置本体100の移動中に減速が必要になった際に、ユーザによって押下される。ブレーキボタン1052が押下されると、ブレーキの指示を示すブレーキ情報が装置本体100へと出力される。
【0042】
なお、ブレーキボタン1052の動作は上記に限らない。例えば、ブレーキボタン1052が押下されている間はブレーキ情報を出力せず、ブレーキボタン1052の押下が解除された場合に、ブレーキ情報が出力されるように動作させてもよい。
【0043】
センサ部106は、例えば、傾斜センサ1061を有する。傾斜センサ1061は、例えば、装置本体100の内部に設けられる。傾斜センサ1061は、装置本体100の姿勢を検出し、検出された姿勢の情報(姿勢情報)を装置本体100へと出力する。
【0044】
外付けバッテリ107は、例えば、装置本体100に着脱可能に取り付けられる。外付けバッテリ107は、例えば、外部電源を用いずに装置本体100を使用する際に用いられる。具体的には、停電などによりコンセントからの電源供給が遮断された場合、装置本体100は、外付けバッテリ107を用いて駆動させることができる。
【0045】
周辺機器108は、例えば、ジェルウォーマ1081と、磁気トランスミッタ1082とを有する。ジェルウォーマ1081は、例えば、装置本体100に着脱可能に取り付けられる。ジェルウォーマ1081は、超音波プローブを生体に押し当てる際に、生体に対して塗布されるジェルの容器を温めるために用いられる。磁気トランスミッタ1082は、例えば、超音波プローブの位置検出をするために用いられる。具体的には、磁気トランスミッタ1082は、X,Y,Z方向の磁場が時系列で切り替えられて放射され、この磁場を磁気センサが検出・動機することによって、X,Y,Z方向の位置と、それぞれの軸に対する回転を検知することができる。尚、周辺機器108として、例えば、白黒プリンタ、カラープリンタ、DVDレコーダ、およびフュージョンユニットなどを有してもよい。また、「周辺機器」は、「付属物」と呼ばれてもよい。
【0046】
キャスタユニット109は、装置本体100の底部に設けられる。キャスタユニット109は、重量センサ1091と、回転センサ1092と、方向センサ1093と、支持機構1094と、車輪1095と、制動機構1096とを有する。
【0047】
本実施形態では、装置本体100は、例えば、四つのキャスタユニットを有する。装置本体100は、フロント側およびリア側にそれぞれ四つのキャスタユニットを設けている。以降では、四つのキャスタユニットの内の一つのキャスタユニット109について説明し、特に記載がない限りはこの一つのキャスタユニット109の構成などが他の三つのキャスタユニットに適用される。
【0048】
重量センサ1091は、例えば、装置本体100と支持機構1094とを接続する部分に配置される。重量センサ1091は、装置本体100の重量を計測し、計測した重量の情報(重量情報)を処理回路180へと出力する。
【0049】
回転センサ1092は、例えば、支持機構1094に配置される。回転センサ1092は、例えば、非接触変位センサが用いられる。回転センサ1092は、車輪1095の単位時間当たりの回転数を計測し、計測した回転数の情報(回転数情報)を処理回路180へと出力する。
【0050】
方向センサ1093は、例えば、支持機構1094に配置される。方向センサ1093は、車輪1095の旋回方向の角度を計測し、計測した角度の情報(角度情報)を処理回路180へと出力する。
【0051】
支持機構1094は、装置本体100に取り付けられる取付部と、車軸を介して車輪1095を支持する本体部とを有する。取付部は、例えば、車輪1095を地面と水平方向に旋回可能な旋回機構を有する。本体部は、車輪1095を支持する車軸を有する。支持機構1094には、重量センサ1091と、方向センサ1093とが任意の位置に配置される。
【0052】
車輪1095は、例えば、支持機構1094の有する車軸に支持される。車輪1095は、回転することによって装置本体100を移動させる。尚、「車輪」は、「キャスタ」と呼ばれてもよい。また、車輪1095は、ボール状のキャスタが用いられてもよい。
【0053】
制動機構1096は、回転している車輪1095に制動力を与え、車輪1095の駆動力を低減させる。制動機構1096は、例えば、車輪1095のホイール内に内蔵される。制動機構1096として、例えば、ディスクブレーキまたはドラムブレーキなどが用いられる。具体的には、制動機構1096は、処理回路180から制動情報を受け取り、受け取った制動情報に応じた制動力を車輪1095に与える。
【0054】
なお、キャスタユニット109は、車輪1095の回転を止めるストッパーを有してもよい。このストッパーは、車輪1095の旋回を止める機能を有してもよい。尚、ストッパーは、装置本体100が静止した状態で用いられるものとする。
【0055】
図3は、第1の実施形態における超音波診断装置の装置本体の外観を示す斜視図である。
図3の装置本体100は、リア側に把持部1051が取り付けられている。ここで、フロント側からリア側への方向をY方向とし、Y方向に直交且つ接地面に水平な方向をX方向、Y方向およびにX方向に直交する方向をZ方向とする。また、後述する走行方向は、「前向き」を-Y方向と定義し、「後ろ向き」を+Y方向と定義する。
【0056】
図4は、第1の実施形態における超音波診断装置の装置本体の別の外観を示す斜視図である。
図4の装置本体100は、
図3の装置本体100に対して、着脱可能な超音波診断に関する付属物である外付けバッテリ107、ジェルウォーマ1081、および磁気トランスミッタ1082が取り付けられている。装置本体100の重量および重心は、着脱可能な付属物の有無に応じて変化する。具体的には、例えば、
図4の装置本体100は、外付けバッテリ107がリア側に取り付けられているため、
図3の装置本体100よりも重心がリア側に寄っている。
【0057】
次に、以上のような構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下に説明する処理回路180の各機能により、移動中の超音波診断装置を減速、或いは停止させることができる。
【0058】
取得機能185は、各種センサから出力されたセンサ情報を取得する機能である。センサ情報には、例えば、姿勢情報、重量情報、回転数情報、および角度情報などがある。
【0059】
具体的には、取得機能185により処理回路180は、傾斜センサ1061から姿勢情報を取得し、重量センサ1091から重量情報を取得し、回転センサ1092から回転数情報を取得し、方向センサ1093から角度情報を取得する。また、処理回路180は、ブレーキ情報を取得する。
【0060】
算出機能186は、センサ情報に基づいて、超音波診断装置1の制動制御に関する各種数値を算出する機能である。具体的には、算出機能186により処理回路180は、姿勢情報に基づいて超音波診断装置1の傾斜角度を算出する。処理回路180は、重量情報に基づいて超音波診断装置1の重量を算出する。処理回路180は、重量情報に基づいて超音波診断装置1の重心を算出する。処理回路180は、回転数情報に基づいて車輪1095の回転数を算出する。処理回路180は、角度情報に基づいて車輪1095の方位角を算出する。
【0061】
制動力決定機能187は、制動制御に関する各種数値に基づいて制動力を決定する機能である。制動制御に関する各種数値には、例えば、重量、重心、傾斜角度、方位角、および回転数などがある。
【0062】
制動力決定機能187により処理回路180は、装置本体へ取り付けられる超音波診断に関する付属物の有無に応じて制動力を決定する。具体的には、処理回路180は、制動制御に関する各種数値から超音波診断装置1の状態を推定する。そして、処理回路180は、超音波診断装置1の状態と制動力とを対応付けたテーブルを用いて制動力を決定する。
【0063】
制動制御機能188は、制動機構1096を制御する機能である。具体的には、制動制御機能188により処理回路180は、決定された制動力を制動情報としてキャスタユニット109へ出力する。そして、処理回路180は、ブレーキ情報の取得を契機として、制動情報に基づいて制動機構1096を制御する。
【0064】
図5は、第1の実施形態に係る制動力決定処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図5に示す制動力決定処理は、例えば、超音波診断装置の移動を検知することにより開始される。また、
図5に示す制動力決定処理は、ある時点における制動力を決定する処理であり、超音波診断装置の移動中において、繰り返し実行されてもよい。尚、
図5に示す制動力決定処理は、後述するブレーキ動作処理と並行して実行されてもよい。
【0065】
(ステップST110)
制動力決定処理を開始すると、処理回路180は、取得機能185を実行する。取得機能185を実行すると、処理回路180は、各種センサから出力されたセンサ情報を取得する。具体的には、処理回路180は、傾斜センサ1061から姿勢情報を取得し、重量センサ1091から重量情報を取得し、回転センサ1092から回転数情報を取得し、方向センサ1093から角度情報を取得する。
【0066】
(ステップST120)
センサ情報を取得した後、処理回路180は、算出機能186を実行する。算出機能186を実行すると、処理回路180は、センサ情報に基づいて、超音波診断装置1の制動制御に関する各種数値を算出する。この各種数値を算出する処理を算出処理と呼ぶ。算出処理として、例えば、以下のステップST121からステップST125までの処理が実行される。尚、ステップST121からステップST125までの処理は、処理の順番が異なってもよく、それぞれの処理が同時に行われてもよい。また、一部の処理が省略されてもよい。
【0067】
(ステップST121)
処理回路180は、重量情報に基づいて超音波診断装置1の重量を算出する。具体的には、処理回路180は、4つのキャスタユニットからそれぞれ重量情報を取得し、それぞれの値を合計することによって超音波診断装置1の重量を算出する。
【0068】
(ステップST122)
処理回路180は、重量情報に基づいて超音波診断装置1の重心を算出する。具体的には、処理回路180は、4つのキャスタユニットからそれぞれ重量情報を取得し、それぞれの値とキャスタユニット間との距離を用いて超音波診断装置1の重心を算出する。
【0069】
(ステップST123)
処理回路180は、姿勢情報に基づいて超音波診断装置1の傾斜角度を算出する。具体的には、処理回路180は、平地での超音波診断装置1の姿勢に対する、計測時の超音波診断装置1の姿勢との傾きを算出する。
【0070】
(ステップST124)
処理回路180は、角度情報に基づいて車輪1095の方位角を算出する。具体的には、処理回路180は、走行方向が「前向き」の状態の車輪1095の方向に対する、計測時の超音波診断装置1の車輪1095の方向との角度を算出する。
【0071】
(ステップST125)
処理回路180は、回転数情報に基づいて車輪1095の回転数を算出する。
【0072】
(ステップST130)
算出処理を実行した後、処理回路180は、制動力決定機能187を実行する。制動力決定機能187を実行すると、処理回路180は、制動制御に関する各種数値に基づいて制動力を決定する。具体的には、処理回路180は、制動制御に関する各種数値から超音波診断装置1の状態を推定する。そして、処理回路180は、超音波診断装置1の状態と制動力とを対応付けたテーブルを用いて制動力を決定する。ステップST130の後、制動力決定処理は終了する。
【0073】
図6は、第1の実施形態における超音波診断装置の状態と制動力とを対応付けたテーブルである。
図6のテーブルでは、次の実施例(1)から実施例(3)までの場合における制動力の決定に関する条件が含まれている。尚、実施例は、
図6の記載に限らない。例えば、重量、重心、傾斜角度、方位角、および回転数のいずれか一つと制動力との組み合わせでもよい。また、実施例は、
図6に記載されているそれぞれの状態を任意に組み合わせてもよい。
【0074】
[実施例(1)]
実施例(1)では、装置の重量および周辺の傾斜の条件の組み合わせによって制動力が決定される。処理回路180は、算出された超音波診断装置1の重量を所定の重量と比較することによって、装置の重量の程度を判定する。所定の重量は、例えば、
図3に示される付属物が装着されていない場合の装置本体100の重量である。処理回路180は、算出された超音波診断装置1の重量が所定の重量を下回れば「軽い」と判定し、算出された超音波診断装置1の重量が所定の重量を上回れば「重い」と判定する。
【0075】
また、処理回路180は、算出された超音波診断装置1の傾斜角度を所定の傾斜角度と比較することによって、周辺の傾斜の程度を判定する。所定の傾斜角度は、例えば、4.8度である。処理回路180は、算出された超音波診断装置1の傾斜角度が所定の傾斜角度を下回れば、周辺の傾斜を「緩い」と判定し、算出された超音波診断装置1の傾斜角度が所定の傾斜角度を上回れば、周辺の傾斜を「急」と判定する。
【0076】
処理回路180は、
図6のテーブルを参照し、装置の重量「軽い」および周辺の傾斜「緩い」と判定された場合、制動力「緩める」を決定し、装置の重量「重い」および周辺の傾斜「急」と判定された場合、制動力「強くする」を決定する。
【0077】
[実施例(2)]
実施例(2)では、走行方向によって制動力が決定される。処理回路180は、算出された車輪1095の方位角を所定の方位角の範囲と比較することによって、超音波診断装置1の走行方向を判定する。所定の方位角の範囲は、例えば、90度から270度の範囲である。処理回路180は、算出された車輪1095の方位角が所定の方位角の範囲に含まれていない場合に、走行方向を「前向き」と判定し、算出された車輪1095の方位角が所定の方位角の範囲に含まれている場合に、走行方向を「後ろ向き」と判定する。
【0078】
処理回路180は、
図6のテーブルを参照し、走行方向「前向き」と判定された場合、制動力「リア側2輪を強くする」を決定し、走行方向「後ろ向き」と判定された場合、制動力「フロント側2輪を強くする」を決定する。
【0079】
[実施例(3)]
実施例(3)では、装置の重心によって制動力が決定される。処理回路180は、算出された超音波診断装置1の重心を所定の重心と比較することによって、超音波診断装置1の重心方向を判定する。所定の重心は、例えば、
図3に示される付属物が装着されていない場合の装置本体100の重心である。処理回路180は、算出された超音波診断装置1の重心が所定の重心よりも左寄りの場合、装置の重心方向を「左側」と判定し、算出された超音波診断装置1の重心が所定の重心よりも右寄りの場合、装置の重心方向を「右側」と判定する。
【0080】
処理回路180は、
図6のテーブルを参照し、装置の重心方向「左側」と判定された場合、制動力「左側2輪を強くする」と判定し、装置の重心方向「右側」と判定された場合、制動力「
右側2輪を強くする」と判定する。
【0081】
図7は、第1の実施形態に係るブレーキ動作処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図7に示すブレーキ動作処理は、例えば、超音波診断装置の移動を検知することにより開始される。尚、
図7に示すブレーキ動作処理は、前述の制動力決定処理と並行して実行されてもよい。
【0082】
(ステップST210)
ブレーキ動作処理を開始すると、処理回路180は、取得機能185を実行する。取得機能185を実行すると、処理回路180は、ブレーキ情報を取得したか否かを判定する。ブレーキ情報は、例えば、ユーザがブレーキボタン1052を押下することにより処理回路180へと出力される。
【0083】
ブレーキ情報を取得していない場合、処理回路180は、ブレーキ情報を取得するまで処理を待機する。ブレーキ情報を取得した場合、処理回路180は、ステップST220の処理を実行する。
【0084】
(ステップST220)
ブレーキ情報を取得した後、処理回路180は、制動制御機能188を実行する。制動制御機能188を実行すると、処理回路180は、ブレーキ情報の取得を契機として、ステップST130において決定された制動力に基づいて制動機構1096を制御する。ステップST220の後、ブレーキ動作処理は終了する。
【0085】
以上説明したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、装置本体と、装置本体を移動させるキャスタと、キャスタに制動力を与え、キャスタを制動する制動部と、装置本体へ取り付けられる超音波診断に関する付属物の有無に応じて制動力を決定する決定部とを備える。これにより、ユーザは、装置の状態や周囲の状態に左右されず、適切な量のブレーキをかけることができる。よって、本超音波診断装置は、ユーザの負担を軽減しつつ安全に移動することができる。
【0086】
また、第1の実施形態に係るキャスタユニットは、超音波診断装置の装置本体を移動させるキャスタと、装置本体へ取り付けられる超音波診断に関する付属物の有無に応じた制動力をキャスタに与え、キャスタを制動する制動部とを備える。これにより、ユーザは、本キャスタユニットを搭載した装置の状態や周囲の状態に左右されず、適切な量のブレーキをかけることができる。よって、本キャスタユニットは、ユーザの負担を軽減しつつ安全に装置を移動することができる。
【0087】
(第1の実施形態の応用例)
第1の実施形態に係る超音波診断装置は、キャスタユニットに配置された重量センサを用いて、装置の重量および装置の重心方向などを決定していた。他方、第1の実施形態の応用例に係る超音波診断装置は、重量センサを用いることなく、装置の重量および装置の重心などを決定することができる。
【0088】
本応用例における内部記憶回路130は、装置本体に取り付けられる付属物と、当該付属物の重量と、当該付属物の装置本体への取付箇所とを対応付けたテーブルを記憶する。
【0089】
本応用例における処理回路180は、取得機能185により、さらに、付属物の着脱に関する着脱情報を取得する。着脱情報は、例えば、付属物の着脱の有無を示す情報である。具体的には、装置本体へ外付けバッテリ107が取り付けられた場合、処理回路180は、例えば、外付けバッテリ107が取り付けられた情報を含む着脱情報を取得する。
【0090】
本応用例における処理回路180は、算出機能186により、さらに、着脱情報に基づいて装置本体の重量および装置本体の重心を算出する。具体的には、処理回路180は、付属物と、付属物の重量と、取付箇所とを対応付けたテーブルを参照し、取得した着脱情報に基づいて装置および重心を算出する。上記テーブルの詳細は後述される。
【0091】
図8は、第1の実施形態の応用例における重量重心算出処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図8に示す重量重心算出処理は、例えば、超音波診断装置の静置時に実行される。尚、
図8に示す重量重心算出処理は、付属物の着脱の度に実行されてもよい。
【0092】
(ステップST310)
重量重心算出処理を開始すると、処理回路180は、取得機能185を実行する。取得機能185を実行すると、処理回路180は、着脱情報を取得したか否かを判定する。着脱情報は、例えば、付属物が取り付けられる、または取り外される度に処理回路180へと出力される。
【0093】
着脱情報を取得していない場合、処理回路180は、着脱情報を取得するまで処理を待機する。着脱情報を取得した場合、処理回路180は、ステップST320の処理を実行する。
【0094】
(ステップST320)
着脱情報を取得した後、処理回路180は、算出機能186を実行する。算出機能186を実行すると、処理回路180は、付属物と、付属物の重量と、取付箇所とを対応付けたテーブルを参照し、着脱情報に基づいて装置の重量および重心を算出する。ステップST320の後、重量重心算出処理は終了する。
【0095】
図9は、第1の実施形態の応用例における付属物と、付属物の重量と、取付箇所とを対応付けたテーブルである。
図9のテーブルには、例えば、付属物「外付けバッテリ」、重量「W1」、および取付箇所「リア」が対応付けられている。また、
図9のテーブルには、付属物「ジェルウォーマ」、重量「W2」、および取付箇所「右」、並びに付属物「磁気トランスミッタ」、重量「W3」、および取付箇所「右」がそれぞれ対応付けられている。
【0096】
例えば、着脱情報に外付けバッテリ107が取り付けられた情報が含まれている場合、処理回路180は、
図9のテーブルを参照し、現在の重量(例えば、所定の重量)に対して重量「W1」を加算することによって、装置本体の重量を算出する。また、処理回路180は、取り付け箇所「リア」に基づいて、現在の重心(例えば、所定の重心)をリア側に所定値ずらすことによって、装置本体の重心を算出する。尚、テーブルは、付属物の有無と、装置本体の重心および重量とがそれぞれ対応付けられていてもよい。
【0097】
以上説明したように、第1の実施形態の応用例に係る超音波診断装置は、重量センサを用いることなく、装置の重量および装置の重心などを決定することができる。よって、本応用例に係る超音波診断装置は、第1の実施形態に係る効果と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る超音波診断装置は、第1の実施形態に係る超音波診断装置に、さらに人感センサを備える。
【0099】
図10は、第2の実施形態におけるセンサの構成例を示すブロック図である。
図10のセンサ部106Aは、傾斜センサ1061と、人感センサ1062とを有する。人感センサ1062は、例えば、装置本体100の外部のフロント側に設けられる。人感センサ1062は、装置本体100に接近する人および物などの障害物を検出し、検出された障害物の情報(人感センサ情報)を装置本体100へと出力する。人感センサ情報は、例えば、障害物までの距離の情報を含む。尚、「人感センサ」は、「障害物センサ」と呼ばれてもよい。
【0100】
第2の実施形態における処理回路180は、取得機能185により、さらに人感センサ1062から人感センサ情報を取得する。また、処理回路180は、制動力決定機能187により、人感センサ情報に基づいて制動力を決定する。
【0101】
図11は、第2の実施形態に係る制動力決定処理を実行する処理回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図11に示す制動力決定処理は、例えば、超音波診断装置の移動を検知することにより開始される。尚、
図11に示す制動力決定処理は、前述の
図5の制動力決定処理と並行して実行されてもよい。また、
図11に示す制動力決定処理は、後述するブレーキ動作処理と並行して実行されてもよい。
【0102】
(ステップST410)
制動力決定処理を開始すると、処理回路180は、取得機能185を実行する。取得機能185を実行すると、処理回路180は、人感センサ情報を取得したか否かを判定する。人感センサ情報を取得していない場合、処理回路180は、人感センサ情報を取得するまで処理を待機する。人感センサ情報を取得した場合、処理回路180は、ステップST420の処理を実行する。
【0103】
(ステップST420)
人感センサ情報を取得した後、処理回路180は、制動力決定機能187を実行する。制動力決定機能187を実行すると、処理回路180は、人感センサ情報に基づいて制動力を決定する。具体的には、処理回路180は、例えば、人感センサ情報に含まれる障害物までの距離に応じて制動力の強弱を決定する。ステップST420の後、制動力決定処理は終了する。
【0104】
以上説明したように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、装置本体と、装置本体を移動させるキャスタと、キャスタに制動力を与え、キャスタを制動する制動部と、装置本体へ取り付けられる超音波診断に関する付属物の有無に応じて制動力を決定する決定部と、装置本体に接近する障害物を検出する障害物センサを備え、決定部は、障害物までの距離に基づいて制動力を決定する。これにより、ユーザは、障害物の接近時においても、適切な量のブレーキをかけることができる。よって、本超音波診断装置は、ユーザの負担を軽減しつつより安全に移動することができる。
【0105】
(他の実施形態)
他の実施形態に係る超音波診断装置は、上記各実施形態に係る超音波診断装置に、さらに電動アシスト機能を追加する。電動アシスト機能とは、例えば、ユーザによる超音波診断装置の移動を補助する機能である。電動アシスト機能を実現するために、本実施形態におけるキャスタユニットは、さらに駆動機構を有する。駆動機構は、例えば、モータなどにより構成され、車輪1095の駆動力を増加させる。
【0106】
本実施形態における処理回路180は、センサ情報に基づいて、超音波診断装置1の駆動制御に関する各種数値を算出する。処理回路180は、算出された駆動制御に関する各種数値に基づいて駆動力を決定する。処理回路180は、決定された駆動力に基づいて駆動機構を制御する。これにより、例えば、本実施形態に係る超音波診断装置1で上りのスロープを移動させる場合、駆動機構によって車輪1095に駆動力が加わるため、ユーザは、平地と同様の力で超音波診断装置1を移動させることができる。
【0107】
また、本実施形態の駆動機構は、車輪1095の駆動力を減少させてもよい。例えば、制動機構1096が発生させる制動力に加えて、駆動機構によるマイナスの駆動力を用いることによって、車輪1095への制動力を増加させることができる。これにより、例えば、急停止を行った場合に、制動距離を短くすることができる。
【0108】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、ユーザの負担を軽減しつつ超音波診断装置を安全に移動させることすることができる。
【0109】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
1 超音波診断装置
100 装置本体
109 キャスタユニット
1095 車輪
1096 制動機構
185 取得機能
186 算出機能
187 制動力決定機能
188 制動制御機能