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<図1>
  • 特許-トラバーサの集塵換気装置 図1
  • 特許-トラバーサの集塵換気装置 図2
  • 特許-トラバーサの集塵換気装置 図3
  • 特許-トラバーサの集塵換気装置 図4
  • 特許-トラバーサの集塵換気装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】トラバーサの集塵換気装置
(51)【国際特許分類】
   B61J 1/10 20060101AFI20231113BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20231113BHJP
   B60S 3/04 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B61J1/10 B
B61K13/00 Z
B60S3/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020005924
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112957
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 佑一
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-206222(JP,A)
【文献】特許第5395445(JP,B2)
【文献】特開2010-006292(JP,A)
【文献】特開2001-347239(JP,A)
【文献】実開昭57-171792(JP,U)
【文献】特開平09-132124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086576(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107933604(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0717268(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00- 3/06
B61J 1/10
B61K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両を搭載し横行用レール上を走行可能に形成された基台と、該基台に前記鉄道車
両の引き込み用のレールを備える鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記基台から立ち上げられた柱に支持された屋根部と、
前記屋根部の下部に配置された開閉可能な遮蔽体と、
前記基台の上部に設けられた集塵用フィルターを有する換気ファンと、を備え、前記基台と前記屋根部と前記遮蔽体とで囲まれた空間を作業空間とし、
前記基台に前記鉄道車両を搭載した状態で、前記作業空間内にて気吹作業をおこなうことができること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記換気ファンを稼働することによって、前記基台に乗せられた状態の前記鉄道車両の進行方向に設けられた開口部から外部の空気を吸い込み、前記換気ファンを通して空気を排出することで内部を負圧にすること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
記換気ファンを稼働することによって、舞い上がった塵埃が前記鉄道車両に付着するよりも速い空気の流れを前記作業空間に作ること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて
記鉄道車両の側面部に前記換気ファンが配置されていること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項5】
請求項1に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記遮蔽体を開けた状態とすることで移動時の空気抵抗を低減させること、
を特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両を搬送する際に用いるトラバーサに関し、具体的にはトラバーサの四方を覆った構造体に給排気が可能な設備を追加することで、トラバーサ上で気吹作業など塵埃が発生する作業を行うことができるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の整備をするにあたって、気吹作業という鉄道車両の表面についた塵埃を吹き飛ばして清掃する作業が行われる。気吹作業には集塵機を用いて塵埃が拡散しないようにすることが望ましく、様々な方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、車両用乾式集塵機に関する技術が開示されている。集塵機は、整備されるべき車両の下方のピット内に走行するように構成され、集塵機の機体の上端には上昇可能な集塵フードが取り付けられ、集塵作業時には集塵フードを上昇させて空気の吸い込みを塵埃の発生源近くで行うことができる。集塵フードの下部にはプレフィルターを介して電気集塵部を有し、さらに浄化された空気を機外に排出する送風機が設けられている。
【0004】
特許文献2には、気吹装置に関する技術が開示されている。鉄道レールを敷設した床面上に開閉自在な天井とシャッターを備える気吹室を形成し、この気吹室の一方に吸引口を設け他方に出入り口を設ける。また、鉄道レールには複数の回転テーブルを備える気吹用台車を備え、回転テーブル上には鉄道車両から取り外した主電動機を載置して鉄道レール上を移動させて気吹室内に収納して気吹作業を行うことができる。
【0005】
特許文献3には、鉄道車両用の気吹清掃集塵システム及び気吹清掃方法に関する技術が開示されている。鉄道車両の床下の機器類に付着した塵埃を気吹いて落とす気吹清掃作業時に使用する気吹清掃集塵システムにおいて、鉄道車両の左右両側に配置される集塵装置と、集塵装置に挟まれた清掃領域から外に塵埃が出ないように空気を供給する給気装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-6292号公報
【文献】特開昭53-120851号公報
【文献】特開平11-222104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1乃至引用文献3に開示される技術では、何れもが気吹作業を行うための比較的大きな専用スペースを工場内に確保する必要がある。そして、そのスペースに集塵装置などを備え付けて運用できるような設備を必要とする。ところが、スペース的な制約がある場合や、作業効率を考えた場合にはそうしたスペース以外でも気吹作業が行えることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、気吹作業が内部で可能なトラバーサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両用トラバーサは、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)鉄道車両を搭載し横行用レール上を走行可能に形成された基台と、該基台に前記鉄道車両の引き込み用のレールを備える鉄道車両用トラバーサにおいて、前記基台から立ち上げられた柱に支持された屋根部と、前記屋根部の下部に配置された開閉可能な遮蔽体と、前記基台の上部に設けられた集塵用フィルターを有する換気ファンと、を備えること、を特徴とする。
【0011】
上記(1)に記載の態様により、鉄道車両を鉄道車両用トラバーサの内部の空間に空気の流れができ、内部で気吹作業をすることが可能となる。気吹作業など塵埃が発生する作業は、周囲を囲まれた空間で行う必要があるが、作業空間を確保することが難しいケースもある。そこで、鉄道車両用トラバーサに遮蔽体である例えばスライドカーテン等を備えて、スライドカーテンを閉めた状態で、換気ファンを回すことで、鉄道車両用トラバーサの内部を作業空間として、気吹作業などを行うことができる。この結果、気吹作業を専用の場所以外でも行うことが可能となるので、作業場のスペース効率を上げることができる。また、作業場所を移動できる点も利点としてあげられる。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記基台と前記屋根部と前記遮蔽体とに囲まれた、前記鉄道車両を搬入する空間を作業空間とし、前記換気ファンを稼働することによって、舞い上がった塵埃が前記鉄道車両に付着するよりも速い空気の流れを前記作業空間に作ること、が好ましい。
【0013】
上記(2)に記載の態様により、作業空間の内部に空気の流れを作ることで、トラバーサ上で気吹作業などを行う際に、発生する塵埃を外部に出さずに集めることが可能となる。スライドカーテンを閉めた上で、排気ファンを用いて作業空間に空気の流れを作ることで、気吹作業の際に発生する塵埃が作業空間内に浮遊することも防ぐことができるため、吹き飛ばした塵埃が再度車両に付着することを防ぐことができる。もちろん、トラバーサの外部に塵埃を出すこともないので、工場の環境にも配慮した運用ができる。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載の鉄道車両用トラバーサにおいて、前記基台に載せられた前記鉄道車両の進行方向に開口部を設け、前記鉄道車両の側面部に前記換気ファンが配置されていること、が好ましい。
【0015】
上記(3)に記載の態様により、開口部から鉄道車両の側面側に配置されている換気ファンの方向に空気が流れるため、気吹作業の際に発生する塵埃が作業空間に浮遊することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の、トラバーサの開口部方向から見た模式図である。
図2】本実施形態の、トラバーサの上面視図である。
図3】本実施形態の、トラバーサの側面図(集塵換気装置側)である。
図4】本実施形態の、トラバーサの側面図(操作盤側)である。
図5】本実施形態の、トラバーサ内の空気の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。図1に、本実施形態の、トラバーサの開口方向から見た模式図を示す。図2に、トラバーサの上面視図を示す。図3に、トラバーサの側面図(集塵換気装置側)を示す。図4に、トラバーサの側面図(操作盤側)を示す。トラバーサ100は、鉄道車両10を搬送できるように基台110の上に基台レール111が配置されている。外部よりトラバーサ100内に、鉄道車両10を基台レール111上に引き込むことで、トラバーサ100に鉄道車両10を搭載する。
【0018】
基台110の下面には複数の横行車輪115が設けられている。この横行車輪115にはモータ116が接続されている。モータ116を駆動することで、工場内の敷地内に設置された複数の平行に配置される横行用レール30上を、トラバーサ100は敷地内を移動(横行)することができる。移動速度は30m/min程度となっている。トラバーサ100の移動は、後述する運転室117に設けられた図示しない操作盤によって行われる。
【0019】
トラバーサ100の基台110の端部には、側面部140が立設され、屋根部120を支える様に配置されている。側面部140は、その構成が異なるために換気側面140Aと制御盤側面140Bと呼び分けることにする。特に指示がなく、単に側面部140とした場合は、換気側面140Aまたは制御盤側面140Bのいずれか、或いはその両方を示すものとする。
【0020】
基台110に鉄道車両10が載せられた際に、鉄道車両10の長手方向側面との距離は作業者が作業可能な程度に離されて配置されている。その換気側面140Aには、複数の柱145が屋根部120まで延設されている。そして、図3に示す様に屋根部120側と集塵換気装置130側の端面にはレール142が設けられており、このレール142を用いて第1スライドカーテン141Aが開閉可能に支持される構造となっている。
【0021】
また、反対側の制御盤側面140Bも同様に、レール142を用いて第2スライドカーテン141Bが開閉可能に支持される構造となっている。第1スライドカーテン141Aと第2スライドカーテン141Bは丈が異なるだけで同じ機能を有するものである。特に区別せずにスライドカーテン141と称する場合は、いずれか或いは両方を指しているものとする。第1スライドカーテン141A及び第2スライドカーテン141Bの開閉は手動で行うが、自動開閉装置を備えても良い。
【0022】
屋根部120は、骨組みに雨避けのために防水加工などが施された布地が貼られた構造になっている。また屋根部120の下面、つまりトラバーサ100の内部側には照明121が複数取り付けられている。照明121は、トラバーサ100の内部で作業を行うために用いられる。換気側面140Aの下方には不織布などによるフィルター135を有する集塵換気装置130が複数並べて備えられている。集塵換気装置130はトラバーサ100内の空気を排出する目的で備えている。集塵換気装置130の能力は、フィルター135を介してトラバーサ100内の空気を排出する場合に、トラバーサ100の内部が舞い上がった塵埃が鉄道車両10に付着するよりも速い空気の流れになる程度の性能であることが好ましい。
【0023】
また、集塵換気装置130の向かい側には手摺り146が備えられている。この手摺り146は基台110の端部を利用して、立設されている。また、集塵換気装置130と運転室117は、基台110から張り出したブラケットの上に配置されている。運転室117には、その内部に制御盤118を備え、制御盤118には図示しない操作パネルを有している。この操作パネルを使ってトラバーサ100の運転を行うことができる。運転室117の隣にはドラム119が備えられ、工場エアに接続するためのホースなどが備えられている。なお、ドラム119を介して電力供給をしても良い。また、モータ116や集塵換気装置130、照明121などは、トラバーサ100の内側に面しているため、必要に応じて防爆仕様とすることが望ましい。
【0024】
基台110の上に搭載された鉄道車両10の周囲を側面部140と屋根部120で覆われる状態となる。一方で、その鉄道車両10の進行方向、すなわちトラバーサ100の車両出入口150は、開口部となる。車両出入口150より鉄道車両10の搬入、搬出をすることができる構造になっている。なお、必要に応じて開口部にスライドカーテンや開閉扉を設けても良い。
【0025】
本実施形態のトラバーサ100は上記構成であるため、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0026】
トラバーサ100に、スライドカーテン141を備え、集塵換気装置130を用いて換気することが可能なので、トラバーサ100に鉄道車両10を搭載した状態で気吹作業を行うことができる。これは、基台110にレールを有し、鉄道車両10を横行搬送することのできる鉄道車両用のトラバーサ100において、基台110から立ち上げられた柱145に支持された屋根部120と、屋根部120の下部に吊された開閉可能なスライドカーテン141と、基台110の上部に設けられた集塵用のフィルター135を有する換気ファンと、を備えているためである。ここでいう換気ファンは集塵換気装置130のことを指している。
【0027】
図5に、トラバーサの内部の空気の流れを示す模式図を示す。鉄道車両10の気吹作業は、気吹ノズルを備えたコンプレッサ等を使って、塵や埃を吹き飛ばして清掃する作業だが、屋外で行った場合には塵埃が飛散することになり好ましくない。したがって、閉鎖空間で集塵装置を用いて作業されることが多い。一方で、トラバーサ100の基台110と屋根部120とスライドカーテン141とに囲まれた、鉄道車両10を搬入する空間を作業空間200とする。そして、作業空間200を、集塵換気装置130を稼働することよって作業空間200に図5に示す様な空気の流れを作ることが可能となる。
【0028】
すなわち、図5に示す様に開口状態にある車両出入口150から外部の空気が流れ込んで、集塵換気装置130から空気が排出される。つまり、トラバーサ100上の作業空間200は負圧状態となる。そして、集塵換気装置130にはフィルター135が備えられているので、トラバーサ100に設けられた作業空間200で鉄道車両10の気吹作業を行うことができ、外部に塵埃を飛散させることがない。また、このトラバーサ100は横行用レール30を用いて移動可能であるため、トラバーサ100を適切な場所に移動して気吹作業を行うこともできる。
【0029】
作業空間200の内部の空気の流れを作ってやることで、塵埃を外部に飛散させないようにする効果以外にも、集塵換気装置130が換気側面140Aの下部に設けられていることで、上から下への空気の流れを作ることができるので、ダウンフローとなり効率的な気吹作業を行うことに貢献することができる。この空気の流れや風速に関しては適宜変更できるようにすることが好ましく、集塵換気装置130の風量を調整可能な構成としても良い。
【0030】
また、トラバーサ100で鉄道車両10を移動する際には、スライドカーテン141を開けることで、空気抵抗を低減させたり、風の影響を低減させたり、作業スペースを確保することなどができるため、必要に応じてスライドカーテン141を適宜開閉できる構成にしてあることで、トラバーサ100の運用の幅を広げることが可能である。
【0031】
以上、本発明に係る鉄道車両用トラバーサに関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、トラバーサ100の構造を設計の範囲内で変更することを妨げない。スライドカーテン141の構成や集塵換気装置130の数など、必要に応じて適宜変更することで、より強い空気の流れに耐えられるような構成にしても良い。また、本実施形態ではトラバーサ100上に設けた作業空間200にて気吹作業を行うと説明したが、それ以外にも塵埃や粉塵が発生するような作業を行うこともできる。また、スライドカーテン141以外でも、開閉可能なブラインドやルーバー、取り外しできる戸板を設置することで、遮蔽体とすることを妨げない。
【符号の説明】
【0032】
10 鉄道車両
30 横行用レール
100 トラバーサ
110 基台
111 基台レール
115 横行車輪
117 運転室
118 制御盤
119 ドラム
120 屋根部
121 照明
130 集塵換気装置
135 フィルター
140(140A、140B) 側面部(換気側面、制御盤側面)
141(141A、141B) スライドカーテン(第1、第2)
142 カーテンレール
145 柱
150 車両出入口
図1
図2
図3
図4
図5