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特許7383506近接検出装置、ディスプレイユニット及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】近接検出装置、ディスプレイユニット及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/20 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
G01V8/20 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020012603
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117189
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】伊知川 禎一
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102009036369(DE,A1)
【文献】特開2013-195326(JP,A)
【文献】特開2019-074465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0173087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置であって、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と
前記光検出器が検出した、各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を対象強度として、当該対象強度に応じて、前記第1辺に沿った方向である第1方向についての反射が発生した位置である第1方向位置を推定し、推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置と感度との関係に応じて定まる感度に、当該対象強度の大きさに対する感度を設定する感度設定部と、
前記対象強度の大きさから、前記感度設定部により当該対象強度の大きさに対する感度として設定された感度で前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の近接検出装置であって、
前記感度設定部は、前記対象強度の分布の重心を前記第1方向位置を示す値として算定することを特徴とする近接検出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の近接検出装置であって、
前記ディスプレイは、自動車の左右方向について運転席と助手席の間の位置に配置されており、
前記第1方向は、当該自動車の左右方向と一致し、
前記予め設定されている第1方向位置と感度との関係は、前記第1方向位置が表示面の運転席側の領域内の位置であるときに、前記第1方向位置が表示面の助手席側の領域内の位置であるときに比べ、感度が低くなる関係であることを特徴とする近接検出装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の近接検出装置であって、
前記第1方向位置と感度との関係は、前記第1方向位置と前記しきい値との関係として定義されており、
前記感度設定部は、前記対象強度に応じて推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置としきい値との関係に応じて定まるしきい値に、当該対象強度に対するしきい値を設定し、
前記近接検出部は、前記対象強度の最大値が、前記感度設定部により当該対象強度に対するしきい値として設定されたしきい値を超える場合に前記表示面へのユーザの接近を検出することを特徴とする近接検出装置。
【請求項5】
ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置であって、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に配置された複数の光検出器と、
前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、
前記光検出器が検出した、各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度に応じて、前記第1辺に沿った方向である第1方向についての反射が発生した位置である第1方向位置を推定し、推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置と感度との関係に応じて定まる感度に、前記近接検出部の感度を設定する感度設定部とを有し、
前記ディスプレイは、自動車の左右方向について運転席と助手席の間の位置に配置されており、
前記第1方向は、当該自動車の左右方向と一致し、
前記予め設定されている第1方向位置と感度との関係は、前記第1方向位置が表示面の運転席側の領域内の位置であるときに、前記第1方向位置が表示面の助手席側の領域内の位置であるときに比べ、感度が低くなる関係であり、かつ、
前記複数の光検出器として、前記第1辺に沿って並べて配置した複数の光検出器を有し、
前記近接検出部は、前記複数の赤外光源の各々について、当該赤外光を出射した前記赤外光源に比較的近い位置にある前記光検出器で検出した、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該赤外光源の出射光の第1の検出反射強度として、各赤外光源の出射光の第1の検出反射強度が表す、前記赤外光の反射光の強度が、設定されたしきい値を超える場合に前記表示面へのユーザの接近を検出し、
前記第1方向位置と感度との関係は、前記第1方向位置と前記しきい値との関係として定義されており、
前記感度設定部は、
推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置としきい値との関係に応じて定まるしきい値に、前記近接検出部のしきい値を設定すると共に、
運転席寄りにある赤外光源に対して比較的離れている光検出器で検出した、当該運転席寄りにある赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度と、運転席寄りにある赤外光源の前記第1の検出反射強度との双方が所定のレベルよりも大きい場合には、前記関係に応じて定まるしきい値に代えて、当該しきい値を、より小さなしきい値となるように調整したしきい値に、前記近接検出部のしきい値を設定することを特徴とする近接検出装置。
【請求項6】
ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置であって、
ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に、前記第1辺と対向する辺である前記表示面の第2辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、
前記光検出器が検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、
前記光検出器が検出した、前記第1辺に沿った方向である第1方向についての位置が異なる複数の赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度に応じて、前記第1方向についての反射が発生した位置である第1方向位置を推定し、前記光検出器が検出した、前記第1辺と垂直な辺に沿った方向である第2方向についての位置が異なる複数の赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度に応じて、前記第2方向についての反射が発生した位置である第2方向位置を推定し、推定した第1方向位置と第2方向位置と、予め設定されている第1方向位置と第2方向位置と感度との関係に応じて定まる感度に、前記近接検出部の感度を設定する感度設定部とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の近接検出装置であって、
前記感度設定部は、前記光検出器が検出した赤外光の反射光の強度の座標を、当該赤外光を出射した前記赤外光源の前記第1方向に沿った並び中の順番として求めた、強度分布の重心を前記第1方向位置を示す値として算定し、前記光検出器が検出した赤外光の反射光の強度の座標を、当該赤外光を出射した前記赤外光源の前記第2方向に沿った並び中の順番として求めた、強度分布の重心を前記第2方向位置を示す値として算定することを特徴とする近接検出装置。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の近接検出装置と、当該近接検出装置と一体化された前記ディスプレイを備えたことを特徴とするディスプレイユニット。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の近接検出装置と、前記ディスプレイと、前記ディスプレイを表示出力に用いるデータ処理装置を備え、前記近接検出装置は、前記表示面へのユーザの接近を検出したときに、当該接近の旨を前記データ処理装置に通知することを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術としては、ディスプレイの表示面の下辺の下方に左右に並べて配置した数個の赤外線LEDからディスプレイの前方上方に向けて赤外光を照射し、フォトダイオードで、ユーザの手による赤外光の反射光を検出することにより、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検知し、ディスプレイに対する操作として受け付ける検知システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、この検知システムは、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に配置されており、運転者のワイパーレバーなどの他の機器に対する操作を、ディスプレイに対する操作として受け付けてしまわないように、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDを設け、この専用の赤外線LEDが出射した赤外光の強い強度の反射光がフォトダイオードによって検出されるときには、ユーザの手の接近の検知を抑止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-74465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した検知システムによれば、運転者の他の機器に対する操作を、ディスプレイに対する操作として受け付けないようにするために、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDが必要となる。
【0006】
また、ユーザが実際にディスプレイに対する操作を行うために、手をディスプレイの表示面に近づけたときに、手を近づけた態様によっては、専用の赤外線LEDが出射した赤外光の強い強度の反射光がフォトダイオードによって検出されてしまい、ディスプレイに対する操作が受け付けられないことがある。
【0007】
そこで、本発明は、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDを用いることなく、他の機器に対する操作を、ディスプレイの表示面へのユーザの手の接近として誤検出することを抑止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題達成のために、本発明は、ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置に、ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と前記光検出器で検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、前記光検出器が検出した、各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度に応じて、前記第1辺に沿った方向である第1方向についての反射が発生した位置である第1方向位置を推定し、推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置と感度との関係に応じて定まる感度に、前記近接検出部の感度を設定する感度設定部とを備えたものである。
【0009】
ここで、このような近接検出装置は、前記感度設定部において、前記光検出器が検出した赤外光の反射光の強度分布の重心を前記第1方向位置を示す値として算定するように構成してもよい。
【0010】
また、以上の近接検出装置は、前記ディスプレイが、自動車の左右方向について運転席と助手席の間の位置に配置され、前記第1方向が、当該自動車の左右方向と一致するものであってよい。また、この場合、前記予め設定されている第1方向位置と感度との関係は、前記第1方向位置が表示面の運転席側の領域内の位置であるときに、前記第1方向位置が表示面の助手席側の領域内の位置であるときに比べ、感度が低くなる関係としてよい。
【0011】
また、以上の近接検出装置は、前記近接検出部において、前記複数の赤外光源の各々について前記光検出器で検出した、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度の最大値が、設定されたしきい値を超える場合に前記表示面へのユーザの接近を検出し、前記第1方向位置と感度との関係を、前記第1方向位置と前記しきい値との関係として定義し、前記感度設定部において、推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置としきい値との関係に応じて定まるしきい値に、前記近接検出部のしきい値を設定するように構成してもよい。
【0012】
以上のような近接検出装置によれば、ユーザの手の表示面への接近の検出に用いる、表示面の第1辺に沿って並べた複数の赤外光源と光検出器のみを用いて、ユーザの手の接近を検出する感度を、表示面の第1辺に沿った方向の位置毎に任意に設定することができる。
【0013】
そして、表示面の運転席側の領域の感度を低く設定することにより、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDを用いることなく、他の機器に対する操作を、ディスプレイの表示面へのユーザの手の接近として誤検出することを抑止できる。
【0014】
ここで、上述のディスプレイが、自動車の左右方向について運転席と助手席の間の位置に配置された近接検出装置は、前記光検出器として、前記第1辺に沿って並べて配置した複数の光検出器を備え、前記近接検出部において、前記複数の赤外光源の各々について、当該赤外光を出射した前記赤外光源に比較的近い位置にある前記光検出器で検出した、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該赤外光源の出射光の第1の検出反射強度として、各赤外光源の出射光の第1の検出反射強度が表す、前記赤外光の反射光の強度が、設定されたしきい値を超える場合に前記表示面へのユーザの接近を検出し、前記第1方向位置と感度との関係は、前記第1方向位置と前記しきい値との関係として定義されたものとし、前記感度設定部において、推定した第1方向位置と、予め設定されている第1方向位置としきい値との関係に応じて定まるしきい値に、前記近接検出部のしきい値を設定すると共に、運転席寄りにある赤外光源に対して比較的離れている光検出器で検出した、当該運転席寄りにある赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度と、運転席寄りにある赤外光源の前記第1の検出反射強度との双方が所定のレベルよりも大きい場合には、前記関係に応じて定まるしきい値に代えて、当該しきい値を、より小さなしきい値となるように調整したしきい値に、前記近接検出部のしきい値を設定するようにしてもよい。
【0015】
このようにすることにより、表示面の運転席側の領域の感度を低く設定したために、運転席側の領域のうちの、第1辺から遠い部分、すなわち、赤外光源から離れた部分において、ユーザの手の接近を検出できなくなってしまうことを防ぐことができる。
【0016】
なお、以上の近接検出装置に、前記複数の赤外光源として、ディスプレイの下辺の下側に、前記下辺に沿って並べて配置した4つの赤外線LEDを備え、前記検出器として、最も左に配置された赤外線LEDと左から2番目に配置された赤外線LEDとの間の位置に配置されたフォトダイオードと、最も右に配置された赤外線LEDと右から2番目に配置された赤外線LEDとの間の位置に配置されたフォトダイオードとの2つのフォトダイオードを備えるようにしてもよい。
【0017】
また、前記課題達成のために、本発明は、ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置に、ディスプレイの表示面の外側に、当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に、前記第1の辺と対向する辺である前記表示面の第2の辺に沿って並べて配置した、前記表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に配置された1または複数の光検出器と、前記光検出器が検出した前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を用いて、設定された感度で前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、前記光検出器が検出した、前記第1の辺に沿った方向である第1方向についての位置が異なる複数の赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度に応じて、前記第1方向についての反射が発生した位置である第1方向位置を推定し、前記光検出器が検出した、前記第1の辺と垂直な辺に沿った方向である第2方向についての位置が異なる複数の赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度に応じて、前記第2方向についての反射が発生した位置である第2方向位置を推定し、推定した第1方向位置と第2方向位置と、予め設定されている第1方向位置と第2方向位置と感度との関係に応じて定まる感度に、前記近接検出部の感度を設定する感度設定部とを設けたものである。
【0018】
ここで、このような近接検出装置は、前記感度設定部において、前記光検出器が検出した赤外光の反射光の強度の座標を、当該赤外光を出射した前記赤外光源の前記第1方向に沿った並び中の順番として求めた、強度分布の重心を前記第1方向位置を示す値として算定し、前記光検出器が検出した赤外光の反射光の強度の座標を、当該赤外光を出射した前記赤外光源の前記第2方向に沿った並び中の順番として求めた、強度分布の重心を前記第2方向位置を示す値として算定するように構成してもよい。
【0019】
また、このような近接検出装置には、前記第1辺に沿って並べて配置した複数の赤外光源として、ディスプレイの前記表示面の左方に上下方向に並べられた2つの赤外線LEDを備え、前記第2辺に沿って並べて配置した複数の赤外光源として、ディスプレイの前記表示面の右方に上下方向に並べられた2つの赤外線LEDを備え、前記光検出器として、前記表示面の左方に上下方向に並べられた2つの赤外線LEDの間の位置に配置されたフォトダイオードと、前記表示面の右方に上下方向に並べられた2つの赤外線LEDの間の位置に配置されたフォトダイオードとを備えてもよい。
【0020】
これらのような近接検出装置によれば、ユーザの手の表示面への接近の検出に用いる、表示面の第1辺に沿って並べた複数の赤外光源と表示面の第2辺に沿って並べた複数の赤外光源と光検出器のみを用いて、ユーザの手の接近を検出する感度を、表示面上の左右上下方向の位置毎に任意に設定することができる。
【0021】
したがって、表示面の運転席側の領域の感度を低く設定することにより、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDを用いることなく、他の機器に対する操作を、ディスプレイの表示面へのユーザの手の接近として誤検出することを抑止できる。
【0022】
また、本発明は、併せて、以上の近接検出装置と、当該近接検出装置と一体化された前記ディスプレイを備えたディスプレイユニットを提供する。
また、本発明は、以上の近接検出装置と、前記ディスプレイと、前記ディスプレイを表示出力に用いるデータ処理装置を備えた情報処理システムも提供する。この情報処理システムにおいて、前記近接検出装置は、前記表示面へのユーザの接近を検出したときに、当該接近の旨を前記データ処理装置に通知する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDを用いることなく、他の機器に対する操作を、ディスプレイの表示面へのユーザの手の接近として誤検出することを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るディスプレイの配置を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る近接検出センサの配置と検出領域を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る近接検出センサの動作シーケンスを示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る近接検出処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態に係るしきい値を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る近接検出センサの配置を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る近接検出センサの動作シーケンスを示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る近接検出センサの領域検出の原理を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る近接検出処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第3実施形態に係る近接検出センサの配置を示す図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る近接検出処理を示すフローチャートである。
図13】本発明の第3実施形態に係るしきい値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1に、本第1実施形態に係る情報処理システムの構成を示す。
情報処理システムは自動車に搭載されるシステムであり、カーナビゲーションアプリケーションやメディアプレイヤアプリケーション等を実行するデータ処理装置1、データ処理装置1が映像表示に用いるディスプレイ2、近接検出装置3、データ処理装置1が利用する、その他の周辺装置4を備えている。
【0026】
ここで、図2に示すように、ディスプレイ2と近接検出装置3は一体化されたディスプレイユニット10の形態で、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に表示面を後方に向けて配置される。なお、図示した例は、自動車が左ハンドルの自動車である場合について示している。
【0027】
図1に戻り、近接検出装置3は、近接検出センサ31と近接検出コントローラ32を備えている。
近接検出センサ31は、LED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1とPD2の、赤外光を検出する2つのフォトダイードを備えている。
また、近接検出コントローラ32は、LED1、LED2、LED3、LED4を駆動して発光させる駆動部321、PD1とPD2が出力する電流信号をPD1とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号に変換し出力する検出部322、駆動部321と検出部322の動作を制御すると共に検出部322が出力する強度信号が表す赤外光の強度より、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出し、データ処理装置1に通知する検出制御部323とを備えている。
【0028】
次に、図3a、bに示すように、ディスプレイ2に対して、左右方向、上下方向、前後方向を定めるものとして、LED1、LED2、LED3、LED4は、当該順序で左から右に向かって、ディスプレイ2の下辺の少し下の位置におおよそ等間隔で配置されている。ただし、前方向はディスプレイ2の表示方向である。
【0029】
また、PD1は、LED1とLED2の中間の位置に配置され、入射する赤外光の反射光を電流信号に変換し、PD2は、LED3とLED4の中間の位置に配置され、入射する赤外光の反射光を電流信号に変換し出力する。
【0030】
図3a、b中の矢印は、LED1、LED2、LED3、LED4の指向角の中心軸を表しており、LED1、LED2、LED3、LED4は、ディスプレイ2の前方上方に向けて斜めに赤外光を出射する。
【0031】
図3cは、本第1実施形態においてユーザの手を検出する領域である検出領域の、上下方向に見た範囲を示す。なお、図中でハッチングを施した範囲が、検出領域の上下方向に見た範囲である。
【0032】
図示するように、左右方向について表示面の右側のおおよそ1/3の範囲である第1の範囲では、検出領域の前方向境界までの表示面からの距離が一定となり、第1の範囲より左側の範囲では、検出領域の前方向境界までの表示面からの距離が運転席側である左側に向かって漸減するように検出領域は設定されている。
【0033】
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、図4に示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御する。
ここで、各サイクルは、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A1とを出力するピリオドと、駆動部321がLED2のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A2を出力するピリオドと、駆動部321がLED3のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A3を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A4を出力するピリオドとを含む。
【0034】
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323が行う近接検出処理について説明する。
図5に、この近接検出処理の手順を示す。
図示するように、検出制御部323は、図4に示す各回のサイクルにおいて、強度信号A1、A2、A3、A4を検出部322から取得したならば(ステップ502)、強度信号A1、A2、A3、A4の評価指数Vを所定の評価関数f()を用いてV=f(A1、A2、A3、A4)により算出する(ステップ504)。評価関数f()は、強度信号A1、A2、A3、A4から、表示面の前方の表示面の近傍の物体による反射の大きさを算出する関数とする。一例としては、評価関数f()としては、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値を算出する関数や、A1、A2、A3、A4の一次結合関数(a×A1+b×A2+c×A3+d×A4)などを用いることができる。
【0035】
また、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値をMAとして算出し(ステップ506)、MAが所定のしきい値Thminを超えているかどうかを調べる(ステップ508)。しきい値Thminとしては、たとえば、ディスプレイ2の表示面の前方の表示面の近くでユーザの手による反射が生じているときに、MAが取り得る最小の値を用いる。
【0036】
そして、MAがしきい値Thminを超えていなければ(ステップ508)、そのままステップ502に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4の検出部322からの取得を待つ。
【0037】
一方、MAがしきい値Thminを超えていれば、重心Gを下式によって求める(ステップ510)。
G=(1×A1+2×A2+3×A3+4×A4)/(A1+A2+A3+A4)
ここで、重心Gは、赤外光LEDの強度分布の重心の座標を表しており、A1のみ検出されて他の値がゼロの場合の重心の座標値を1、A4のみ検出されて他の値がゼロの場合び重心の座標値を4、その中間の位置を1と4の間の座標値として表している。
【0038】
また、重心Gは、表示面の前方のユーザの手による反射が発生している左右方向の位置の推定値を1から4までの値で表し、当該推定される位置が右側であるほど大きい値をとり、当該位置が左側であるほど小さい値をとる。
【0039】
さて、次に、重心Gに応じた値に、しきい値Thを設定する(ステップ512)。
次に、ステップ504で算出したVとしきい値Thを比較し(ステップ514)、評価指数Vがしきい値Thより大きくなければ、そのままステップ502に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4の検出部322からの取得を待つ。
【0040】
一方、評価指数Vがしきい値Thより大きい場合には、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出し、データ処理装置1にユーザの手の接近を通知する(ステップ516)。
【0041】
そして、ステップ502に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4の検出部322からの取得を待つ。
ここで、ステップ512では、ステップ514、516によってユーザの手の接近が検出されることとなる領域である検出領域の上下方向に見た範囲が図3cに示した範囲となるように、ユーザの手による反射が発生している左右方向の位置を表す重心Gの値に応じた値にしきい値Thを設定する。
【0042】
すなわち、ステップ512では、たとえば、図6に示した重心Gとしきい値Thの関係に従ってしきい値Thを設定する。図6に示した関係では、重心Gが1から約3まで増加するにつれて、ThがminThからmaxThまで漸増し、重心Gが約3から4である範囲でThが一定の値maxThとなる。なお、このような重心Gとしきい値Thの関係は、数式によって検出制御部323に設定されていても、テーブルとして検出制御部323に設定されていてもよい。
【0043】
以上、検出制御部323が行う近接検出処理について説明した。
以上のように本第1実施形態によれば、ユーザの手の表示面への接近の検出に用いる4つの赤外線LEDと2つのフォトダイオードのみを用いて、ユーザの手の接近を検出する領域である検出領域の前方向境界までの表示面からを距離、すなわち、ユーザの手の接近を検出する感度を、表示面上の左右方向の位置毎に任意に設定することができる。
【0044】
そして、検出領域として、図3cに示したような、運転席側である左側において検出領域の前方向境界までの表示面からの距離が小さい検出領域を設定して、運転席側である左側の感度を低く設定することにより、ディスプレイから運転席方向に赤外光を出射する専用の赤外線LEDを用いることなく、他の機器に対する操作を、ディスプレイの表示面へのユーザの手の接近として誤検出することを抑止することができる。
【0045】
また、本第1実施形態によれば、図3cに示したような表示面から前方境界までの距離がなだらかに変化する検出領域を設定できる。したがって、強度信号A1、A2、A3、A4毎に異なるしきい値Thを設定することにより図3dに示すような検出領域を設けた場合のように、図中の矢印で示すユーザの手が動きに対して、接近の検出と非検出を繰り返してしまうことも抑止できる。
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0046】
上述した第1実施形態では、LED1、LED2、LED3、LED4は、表示面の下方に設けられているので、LED1、LED2、LED3、LED4までの距離が大きくなる表示面の上方の領域では、表示面の下方の領域に比べ、赤外光の照明強度は小さくなる。したがって、第1実施形態のように重心Gのみに応じて、表示面の下方の領域の前方の検出領域が、図3cに示した検出領域に整合する領域となるようにしきい値Thを設定すると、比較的大きなしきい値Thが設定される表示面の左側にあって、かつ、赤外光の照明強度が小さい上方にある領域である図7a、bの領域A_E1では、ユーザの手を正常に検出できなくなってしまう場合がある。
【0047】
本第2実施形態は、このような問題を解決するものであり、上述の第1実施形態と、近接検出コントローラ32の検出制御部323が駆動部321と検出部322に行わせるサイクルと、検出制御部323が行う近接検出処理のみが異なる。
本第2実施形態において、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、図8aに示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御する。
【0048】
ここで、各サイクルは、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A1とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号E1とを出力するピリオドと、駆動部321がLED2のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A2を出力するピリオドと、駆動部321がLED3のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A3を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A4とを出力するピリオドとを含む。
【0049】
ただし、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、図8aに示すサイクルに代えて、図8bに示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御してもよい。
【0050】
図8bに示すサイクルは、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A1を出力するピリオドと、駆動部321がLED2のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A2を出力するピリオドと、駆動部321がLED3のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A3を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A4を出力するピリオドと、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号E1を出力するピリオドとを含む。
【0051】
図8a、bのサイクルにおいて、LED1のみを発光したときのPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号E1は、図7a、bに示したディスプレイ2のおおよそ左方の上方の領域A_E1においてユーザの手による反射が発生したときに、他の領域で反射が発生した場合に比べて大きな値を示す。
【0052】
これは、ディスプレイ2のおおよそ左方の上方の領域A_E1は、LED1の出射する赤外光によって照射されており、かつ、LED1とPD2と領域A_E1との位置関係が、図9aに示すように領域A_E1で生じた反射によるLED1の出射する赤外光の反射光がPD2にで到達する位置関係にあるのに対して、他の領域は、LED1の出射する赤外光でほとんど照射されないか、LED1とPD2との位置関係が、図9bに示すように、その領域内で生じた反射によるLED1の出射する赤外光の反射光がPD2にほとんど到達しない位置関係となる領域となるからである。
【0053】
次に、図10に、本第2実施形態において、近接検出コントローラ32の検出制御部323が行う近接検出処理の手順を示す。
図示するように、本第2実施形態は、検出制御部323は、図4に示す各回のサイクルにおいて、強度信号A1、A2、A3、A4、E1を検出部322から取得したならば(ステップ1002)、強度信号A1、A2、A3、A4の評価指数Vを所定の評価関数f()を用いてV=f(A1、A2、A3、A4)により算出する(ステップ1004)。評価関数f()は、強度信号A1、A2、A3、A4から、表示面の前方の表示面の近傍の物体による反射の大きさを算出する関数とする。一例としては、評価関数f()としては、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値を算出する関数や、A1、A2、A3、A4の一次結合関数(a×A1+b×A2+c×A3+d×A4)などを用いることができる。
【0054】
また、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値をMAとして算出し(ステップ1006)、MAが所定のしきい値Thminを超えているかどうかを調べ(ステップ1008)、超えていなければそのままステップ1002に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4、E1の検出部322からの取得を待つ。
【0055】
一方、MAがしきい値Thminを超えていれば、重心Gを第1実施形態と同様に下式によって求める(ステップ1010)。
G=(1×A1+2×A2+3×A3+4×A4)/(A1+A2+A3+A4)
また、第1実施形態と同様に、重心Gに応じた値に、しきい値Thを設定する(ステップ1012)。
【0056】
次に、Ezを、Ez=A1×E1によって算出し(ステップ1014)、Ezの値に応じて、しきい値Thを調整する(ステップ1016)。
ステップ1016では、Ezが大きいときに、Ezが小さいときよりも、しきい値Thが小さくなるように、しきい値Thの調整を行う。より具体的には、nを予め定めた正の整数として、Ezが予め定めた所定値より大きいときにしきい値Thをn%減少し、Ezが所定値より大きくないときにしきい値Thを変更しない。または、Ezが大きくなるほど小さくなるようにしきい値Thを増減して、しきい値Thを調整する。
【0057】
さて、次に、ステップ1004で算出したVと調整後のしきい値Thを比較し(ステップ1018)、評価指数Vがしきい値Thより大きくなければ、そのままステップ1002に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4、E1の検出部322からの取得を待つ。
【0058】
一方、評価指数Vがしきい値Thより大きい場合には、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出し、データ処理装置1にユーザの手の接近を通知する(ステップ1020)。
【0059】
そして、ステップ1002に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4、E1の検出部322からの取得を待つ。
さて、ここで、A1は、ディスプレイ2の左方の領域でユーザの手による反射が生じているときには比較的大きな値となる。また、上述のようにE1は、ディスプレイ2のおおよそ左方の上方の領域でユーザの手による反射が生じているときには比較的大きな値となり、ディスプレイ2の左方の上方の領域でのユーザの手による反射が生じていないときには比較的小さな値となる。
【0060】
したがって、A1とE1の双方が所定レベル以上大きくA1とE1の積が大きくなる場合、すなわち、ステップ104で算出するEzが大きいときには、ディスプレイ2の左方上方の領域内の位置でユーザの手による反射が発生していると判別することができる。
【0061】
そして、ステップ1016で、Ezが大きいときに、しきい値Thが小さくなるように、しきい値Thの調整を行うことにより、ステップ1018、1029において、図7a、bに示した左方上方の領域A_E1内のユーザ手を、左方下方の領域よりも小さなしきい値Thを用いて検出できる。
【0062】
よって、第1実施形態のように重心Gのみに応じて、表示面の下方の領域の前方の検出領域が、図3cに示した検出領域に整合するようにしきい値Thを設定した場合に、比較的大きなしきい値Thが設定される表示面の左側にあって、かつ、赤外光の照明強度が小さい上方にある左方上方の領域A_E1についても、本第2実施形態によれば、ユーザの手を正常に検出することができる。
【0063】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
なお、以上に示した第2実施形態の近接検出処理では、EzとしてA1×E1を用いたが、Ezとしては、第1の実施形態において、運転席側の上部の検出が弱くなってしまうことを補償する必要のある領域をおよそ判別できる信号であればほかの値を用いてもよい。
【0064】
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。
本第3実施形態が上述の第1実施形態と、LED1、LED2、LED3、LED4、PD1、PD2の配置と、検出制御部323が行う近接検出処理のみが異なる。
すなわち、本第3実施形態では、図11に示すように、ディスプレイ2の表示面の左辺の少し左側に、LED1、PD1、LED2を上から下に向けて当該記載の順序で配置し、ディスプレイ2の表示面の右辺の少し右側に、LED3、PD2、LED4を上から下に向けて当該記載の順序で配置する。
【0065】
また、検出制御部323は、図12に示す近接検出処理を行う。
図示するように、この近接検出処理では、図4に示す各回のサイクルにおいて、強度信号A1、A2、A3、A4を検出部322から取得したならば(ステップ1202)、強度信号A1、A2、A3、A4の評価指数Vを所定の評価関数f()を用いてV=f(A1、A2、A3、A4)により算出し(ステップ1204)、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値をMAとして算出する(ステップ1206)。
評価関数f()は、強度信号A1、A2、A3、A4から、表示面の前方の表示面の近傍の物体による反射の大きさを算出する関数とする。一例としては、評価関数f()としては、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値を算出する関数や、A1,A2,A3,A4の一次結合関数((a×A1+b×A2+c×A3+d×A4)なども用いることができる。
の最大値を評価指数Vとして算出し(ステップ1204)、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値をMAとして算出する(ステップ1206)
そして、MAがしきい値Thminを超えているかどうかを調べ(ステップ1208)、超えていなければ、そのままステップ1202に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4の検出部322からの取得を待つ。
【0066】
一方、MAがしきい値Thminを超えていれば、重心GxとGyを下式によって求める(ステップ1210)。
Gx={1×(A1+A2)+2×(A3+A4)}/(A1+A2+A3+A4),
Gy={1×(A1+A3)+2×(A2+A4)}/(A1+A2+A3+A4)
ここで、強度信号A1、A2、A3、A4には、予め、その強度信号が強度を表す反射光として反射された赤外光を出射した赤外LEDの左右方向の並びに従った順番が強度信号のx座標として割り当てられ、その強度信号が強度を表す反射光として反射された赤外光を出射した赤外LEDの上下方向の並びに従った順番が強度信号のy座標として割り当てられている。
【0067】
ここでは、左から1番目のLED1とLED2の赤外光の反射光の強度信号A1、A2にx座標1が、左から2番目のLED3とLED4の赤外光の反射光の強度信号A3、A4にx座標2が割り当てられており、上から1番目のLED1とLED3の赤外光の反射光の強度信号A1、A3にy座標1が、上から2番目のLED2とLED4の赤外光の反射光の強度信号A2、A4にy座標2が割り当てられている。
【0068】
そして、重心Gxは強度分布の重心のx座標を表し、重心Gyは強度分布の重心のy座標を表している。
また、重心Gxは、表示面の前方のユーザの手による反射が発生している左右方向の位置の推定値を1から2までの値で表し、当該推定される位置が右側であるほど大きい値をとり、当該位置が左側であるほど小さい値をとる。また、重心Gyは、表示面の前方のユーザの手による反射が発生している上下方向の位置の推定値を1から2までの値で表し、当該推定される位置が下側であるほど大きい値をとり、当該位置が上側であるほど小さい値をとる。
【0069】
さて、次に、左右方向重心Gxと上下方向重心Gyに応じた値にしきい値Thを設定する(ステップ1212)。
そして、ステップ1204で算出したVとしきい値Thを比較し(ステップ1214)、評価指数Vがしきい値Thより大きくなければ、そのままステップ1202に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A42の検出部322からの取得を待つ。
【0070】
一方、評価指数Vがしきい値Thより大きい場合には、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出し、データ処理装置1にユーザの手の接近を通知する(ステップ1216)。
【0071】
そして、ステップ1202に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4の検出部322からの取得を待つ。
ここで、ステップ1212では、ステップ1214、1216によってユーザの手の接近が検出されることとなる表示面前方の領域である検出領域の前方向境界が所要の形状となるように、すなわち、表示面上の各位置から検出領域の前方向境界までの距離が、検出領域の前方向境界の所要の形状に整合する距離となるように、ユーザの手による反射が発生している左右方向の位置を表す左右方向重心Gxと、ユーザの手による反射が発生している上下方向の位置を表す上下方向重心Gyに応じてしきい値Thを設定する。
【0072】
たとえば、ステップ1212において、図13に示した左右方向重心Gxと上下方向重心Gyとしきい値Thの関係に従ってしきい値Thを設定すれば、左下から右上に向かって、表示面から前方向境界までの距離が大きくなっていく検出領域を形成することができる。
【0073】
以上のように本第3実施形態によれば、ユーザの手の表示面への接近の検出に用いる4つの赤外線LEDと2つのフォトダイオードのみを用いて、ユーザの手の接近を検出する領域である検出領域の前方向境界までの表示面からの距離すなわち、ユーザの手の接近を検出する感度を、表示面上の左右上下方向の位置毎に任意に設定することができる。
【0074】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。
なお、以上の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の近接検出処理では、評価指数MAとして強度信号A1、A2、A3、A4の最大値を用いたが、評価指数VとしてはPD1、PD2において検出した反射光の大きさの程度を表すものであれば、他の値を用いるようにしてよい。
【0075】
また、以以上の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態では、LED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1、PD2の2つのフォトダイオードを用いたが、赤外線LEDの数は4以外の数であって良く、フォトダイオードの数は2以外の数であって良い。
【符号の説明】
【0076】
1…データ処理装置、2…ディスプレイ、3…近接検出装置、4…周辺装置、10…ディスプレイユニット、31…近接検出センサ、32…近接検出コントローラ、321…駆動部、322…検出部、323…検出制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13