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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/12 20060101AFI20231113BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20231113BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231113BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231113BHJP
【FI】
F24F6/12 101Z
F24F6/00 B
F24F6/00 F
F24F6/00 A
F24F6/00 G
H02J50/12
H02J50/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020027773
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131204
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000115773
【氏名又は名称】リズム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀紀
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522383(JP,A)
【文献】特開2014-057952(JP,A)
【文献】実開昭52-037850(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00-6/18
H02J 50/12
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を収容する容器に浮かべられて霧化された水分を排出する本体部と、前記本体部に無線で給電する給電部と、を備え、
前記本体部は、
本体筐体と、
前記本体筐体の上に載置され、煙突部と空気吸引口を有する蓋部材と、を含み、
前記本体筐体は、
前記空気吸引口から空気を吸引すると共に、前記本体部の下方向へと風の流れを作るファンと、
前記容器に収容された水を霧化する霧化部と、
前記ファンが作り出した風の経路を規定し、前記霧化された水分を前記煙突部まで導く風導部材と、を収容し、
前記空気吸引口は、前記蓋部材の周に沿った一方向に向けて設けられており、
前記ファンによって空気が前記空気吸引口から吸い込まれたときに、前記空気吸引口が向く方向とは反対方向に推進力が発生し、
前記本体部は、前記ファンによる空気の吸引力によって回転する、加湿器。
【請求項2】
請求項1において、
前記風導部材は、前記霧化部が水を霧化するときに生じる水しぶきが前記煙突部に侵入するのを防止する、加湿器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記本体筐体は、前記本体部を前記容器に浮かべるときの安定性を担保するおもりとなる部材を含む、加湿器。
【請求項4】
請求項3において、
前記本体筐体は、前記霧化部を冷却する冷却部材をさらに収容し、
前記冷却部材は、前記おもりとなる部材を兼ねる、加湿器。
【請求項5】
請求項1からの何れか1項において、
前記煙突部は、その先端内部の少なくとも一部分に、前記霧化された水分を攪拌する攪拌部材を含む、加湿器。
【請求項6】
請求項1からの何れか1項において、
前記本体筐体は、前記加湿器が動作中に、周囲を照らす照明部を備える、加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加湿器について開示する。
【背景技術】
【0002】
加湿器には大きく分けて、スチーム方式、気化式、および超音波式と呼ばれる方式がある。タンクの水を加熱することで蒸気を作るスチーム式は、加湿量が多く、加熱消毒されるため清潔であるというメリットがあるものの、吹出口が高温になるため、火傷の懸念がある。また、水を浸透させたフィルターに風を当てる気化式は、火傷の懸念はないものの、強風を作り出す必要があり、音が大きくなるというデメリットがある。さらに、超音波振動素子によって霧化する超音波式は、火傷の懸念がなく音も小さいが、超音波振動素子によって作り出した霧は粒子が大きいため、雑菌を含んだ霧となってしまう懸念がある。
【0003】
近年では、超音波振動素子(霧化部)をタンクの水に浮かべた構成、つまりタンクの洗浄・交換が容易となる構造とすることでタンク内の雑菌の繁殖を抑え、またタンクのデザインの自由度を増した超音波式加湿器が考えられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-522383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による加湿器では、霧化部を充電池で可動させている(加湿器を水面に浮かべながら充電可能であることが示唆されている)。つまり、霧化部に充電池を搭載しなければならず、霧化部が大型化・重量化してしまうという課題が存在する。
また、特許文献1による加湿器は、単に水に浮いているだけであり、その他の特徴点がなく、美観や遊び心という観点に乏しい。
本開示は、このような状況に鑑み、機能性およびデザイン性(美観および遊び心)を備える加湿器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本実施形態は、水を収容する容器に浮かべられて霧化された水分を排出する本体部と、本体部に無線で給電する給電部と、を備え、
本体部は、本体筐体と、当該本体筐体の上に載置され、煙突部と空気吸引口を有する蓋部材と、を含み、
本体筐体は、空気吸引口から空気を吸引すると共に、本体部の下方向へと風の流れを作るファンと、容器に収容された水を霧化する霧化部と、ファンによって作り出された風に霧化された水分を煙突部まで導く風導部材と、を収容する、加湿器を提供する。
【0007】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、機能性とデザイン性(美観および遊び心)を両立した加湿器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による加湿器1の外観構成例を示す図である。
図2】加湿器1の本体部10を斜め上方から見た図である。
図3】円筒内部に板状の煙攪拌部材1012を有する煙突部の構成例を示す図である。
図4】本実施形態による加湿器1の本体部10および給電部20の断面構成例を示す図である。
図5】本実施形態による加湿器1の本体部10および給電部20の、図4とは別方向からの断面構成例を示す図である。
図6】本体部10の断面構成例であって、図4とは異なる位置の断面構成例を示す図である。
図7】本実施形態による加湿器1の本体部10からカバー部103を外した状態である、本体部10の上部構成例を示す図である。
図8】ファン105による空気の流れについて説明するための図である。図8Aは、吸気口部102の吸引口から吸引された空気の流れを示している。図8Bは、空気の吸引方向と、吸気口部102の吸引口から空気が吸引されることによって生じる本体部10の回転方向を示している。
図9】本実施形態による加湿器1において用いられる無線給電方式について説明するための図である。
図10】本実施形態による加湿器1において実行される給電動作の詳細を説明するためのフローチャートである。
図11】給電部20による送電時処理を説明するための図である。図11Aは、受電側電流と送電側電流との位相のずれを示す図である。図11Bは、電流位相が同位相の場合の伝達ゲイン(点線)と電流位相が同位相ではない場合の伝達ゲイン(実線)を示す図である。図11Cは、共振周波数のスキャン動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0011】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0012】
<加湿器の外観構成例>
図1は、本実施形態による加湿器1の外観構成例を示す図である。加湿器1は、水を霧化させ、霧状の煙を排出する本体部10と、本体部10に給電する給電部20と、所定量の水を収容するタンク30と、を備えている。
【0013】
図1に示すように、給電部20の上に水を収容したタンク30を載せ、タンク30の水上に本体部10を浮かべる。本体部10の径は、タンク30の径よりも小さく、後述のように、本体部10は、タンク30に収容された水面で浮かびながら回転するように動作する。また、本体部10は、煙突部101を有しており、そこから霧を煙のように排出することにより、周囲環境を加湿するように構成される。タンク30は、加湿器1専用の容器であってもよいし、本体部10が浮かべられる大きさの開口部を有していればどのような容器であってもよい。給電部20は、詳細は後述するが、電源を備え、無線で本体部10に電力を供給(給電)する。よって、本体部10は、電池も充電池も備えておらず、軽量化が図られている。
【0014】
<本体部10のカバーの構成例>
図2は、加湿器1の本体部10を斜め上方から見た図である。本体部10は、カバー部103に、霧状の水分を排出する煙突部101と、空気の吸引口を構成する開口端部1021と閉口端部1022を有する吸気口部102と、を備えている。
【0015】
煙突部101は、図3に示すように、円筒内部に板状の煙攪拌部材1012を有している。本体部10がタンク30に収容された加湿用水の水面上で回転する(後述)が、煙攪拌部材1012は、煙突部101の先端から排出される煙を、本体部10の回転に合せて攪拌する機能を有している。つまり、煙突部101が上方向に垂直に延設される構成だと、本体部10をいくら回転させても霧状の水分は上方に一直線で伸びていくだけであり、動きに変化を持たせることができない。そこで、煙(霧状の水分)に動きの変化を付けるために煙攪拌部材1012を設けている。例えば、本体部10が回転すれば、煙攪拌部材1012も同様に回転する。水分が霧化されて発生された煙(水分)は、回転する煙攪拌部材1012に衝突しながら、煙突部101の先端から排出されるため、煙突部101の先端から排出された後は、回転しながら(竜巻のように)空中を漂うようになる。このように煙攪拌部材1012によって排出される霧状の水分(煙)に螺旋状の力を作用させることができる。なお、煙攪拌部材1012の横方向の寸法は、例えば、煙突部101の内径に等しくすることができ、縦方向の寸法は、例えば、20~30mm、あるいは煙突部101の全体の長さの1/3程度とすることができる。また、煙攪拌部材1012を一枚の平板で構成してもよいし、ある方向に捻じれた形状をなす平面部材で構成してもよい。要は、煙突部101の先端からの煙が、排出口の真上に排出されるのではなく、本体部10の回転に伴って回転しながら排出されるようにする部材であればどのような形状でもどのような材料の部材でもよい。
【0016】
吸気口部102の開口端部1021からは、本体部10の内部に設けられたファン(後述)の回転によって大気中の空気が吸引される。この吸引された空気は、後述の超音波素子によって霧化された水分を捉え、これを煙突部101の先端から外部に排出するまで押し出す推進力となるものである。
なお、煙突部101は、本体部10の中心に設置されているが、これに限定されず、本体部10の中心からずらした位置や周縁部付近に設置してもよい。
【0017】
<本体部10および給電部20の断面構造例>
図4および5は、本実施形態による加湿器1の本体部10および給電部20の断面構成例を示す図である。図6は、本体部10の断面構成例であって、図4とは異なる位置の断面構成例を示す図である。
【0018】
(i)本体部10は、煙突部101および吸気口部102を含むカバー部103と、ケース(本体構造物収容筐体)104と、ファン105と、ケース104の内部に収容されるウェイト板(ウェイトゴム)106と、風流を規定する壁部1071を含む風導板107と、タンク30に収容された水を霧化する超音波素子(霧化部)108と、超音波素子108を冷却する冷却板(兼おもり)109と、受電コイル110と、光通信部(例:光通信用赤外線LED)111と、受電コイル110の下や近傍に複数個(例えば、3から6個)設けられたLED照明(図示せず)と、を有する。
【0019】
ケース104は、例えば、円筒形状の筐体で構成され、その内部には、ウェイト板106が取り付けられ、また、ファン105、風導板107、超音波素子108、および冷却板109の各種部材を収容する収容部が形成されている。ケース104は、例えば、樹脂で構成することができ、上記各種部材を収容する収容部は例えば一体射出成形で作出することができる。
【0020】
ファン105は、本体部10の下方向に風を起こして空気の流れを作る機能を有している。ファン105が回転すると、吸気口部102の開口端部1021から空気が吸い込まれ、この吸い込まれた空気が本体部10の下方向に流されてタンク30に収容された水に衝突するとともに、風導板107の壁部1071の脇に形成されている空間を通って上方に押し出され、煙突部101の先端から排出されることになる。また、ファン105は、給電部20から無線給電された電力によって駆動される。
【0021】
超音波素子108は、本体部10の下方に構成された超音波素子収容部(超音波素子108が図示される位置)に、水に濡れないように密閉して収容されている。本体部10をタンク30に浮かべているときには、超音波素子108の収容部の少なくとも一部あるいは全体は、水面よりも下にある状態となっている。この超音波素子108は、ファン105と同様に、給電部20から無線給電された電力によって駆動され、超音波振動することにより、タンク30に収容された水を霧化(霧状に)する。霧化された水は、ファンから送り出された空気の流れに乗って、本体部10の上方に押し上げられ、煙突部101の先端から排出される。これにより、煙突部101の先端からは煙のような霧が出力されて周囲環境を加湿する。
【0022】
風導板107は、超音波素子108によって引き起こされた水しぶきが煙突部101の近位部(先端を遠位部とする)1011に入り込むのを防止する機能を有する。つまり、風導板107は、煙突部101の近位部1011における煙突径よりも大きい径(大きさ)を有し、かつ煙突口を塞がないように、一定の距離を持って配置される。つまり、超音波素子108によって霧化された水分のうち、煙が加湿器1から排出されるように見せるのに十分細かい霧状の水分のみが煙突部101に導入されるようにしている。また、風導板107が備える壁部1071は、ファン105によって引き起こされた空気の流れを直線的ではなく、壁部1071の両脇を通過して煙突部101に導出されるようにするためのものである。そのため、壁部1071の幅は、ケース(筐体)104の径よりも小さく、その両脇を十分な量の空気が通過できるような寸法となっている。また、壁部1071は、加湿器1の使用時には、タンク30に収容された水に一部が浸かっている。このため、ファン105による空気(風)は、超音波素子108によって霧化された水分を巻き上げ、壁部1071の両脇を通過する。このとき、壁部1071によっても大きな粒の水分がファン105による風によって巻き上げられるのが防止される。そして、さらに風導板107によって、より細かい霧状の水分のみが煙突部101に導出されることになる。
【0023】
前述のように、超音波素子108は、超音波素子収容部に収容されているが、この収容部の外側底面には、光通信部(例えば、赤外線LED)111が設けられている。この光通信部111は、給電部20に設けられた受光部202に対して、後述する受電開始信号(受電確認信号とも言う)を送信する。
【0024】
コイル110は、ケース104の周縁底面部に設けられている。このコイル110の径は、ケース104の径よりも多少小さくなっており、コイル110は、ケース104とウェイト板(部材)106との間に構成された空間に収められている。図4および5に示されるように、コイル110が収められる空間の底面は閉じた状態となっており、コイル110がタンク30の水に触れないようになっている。また、ウェイト板(部材)106は、本体部10をタンク30の水上に浮かべたときに、コイル110を収容する空間に水が浸入しないように十分な高さを持って構成されている。あるいは、このコイル110を収容する空間を閉じた空間として構成してもよい。
【0025】
受電コイル110の下や近傍に設けられた複数個(例えば、3から6個)のLED照明は、本体部10に電力が本格供給されると、発光し、タンク30に収容された水および周囲を照らすように構成されている。これにより、良好な雰囲気を創出し、ユーザに対して視覚的効果(リラックス効果やラグジュアリな感覚)を与えることが可能となる。
【0026】
なお、本体部10は、図示してはいないが、各種信号処理を実行する制御部(CPUなどのプロセッサ)、プログラムやデータを格納するメモリなどを備えることができる。例えば、上記受電開始信号(受電確認信号)などは、本体部10の制御部による制御の下、給電部20側に送信することができる。
【0027】
(ii)給電部20は、例えば、円盤形状に構成され、電源(図示せず)と、内部にコイル(送電コイル)201と、受光部202と、を備えている。本体部10の中心部を給電部20の中心部に合せて、本体部10を給電部20に載置すると、コイル201が本体部10のコイル110と対向するようになっている。これにより、コイル201に電流を流すと、本体部10側のコイル110に誘導電流を発生させることができる。
【0028】
受光部202は、本体部10の光通信部111出力される、受電開始信号(受電確認信号)を担持する光信号を受信し、それに応答して、図示しない制御部(CPU)が所定の信号処理を実行する。
【0029】
なお、給電部20は、図示してはいないが、各種信号処理を実行する制御部(CPUなどのプロセッサ)、プログラムやデータを格納するメモリなどを備えることができる。例えば、給電部20の制御部は、上記受電開始信号(受電確認信号)を本体部10から受信したときに、後述するように、送電側周波数を変化させるなどの処理を実行する。
【0030】
<本体部10の上部構成例>
図7は、本実施形態による加湿器1の本体部10からカバー部103を外した状態である、本体部10の上部構成例を示す図である。
【0031】
図7に示すように、加湿器1のカバー部103を本体部10から取り外すと、風導板107の作用面(壁部1071を備え、水しぶきの煙突部101への侵入を防止し、霧化された水をファンからの風に乗せて煙突部101に風を送り出すために機能する面)とは反対側の頂面1072と、吸気口部102が取り付けられる吸気用開口部1023と、が露出される。なお、吸気用開口部1023からは、その奥に設けられたファン105をのぞむことができるようになっている。
【0032】
また、風導板107および吸気用開口部1023を構成する部材は、本体部10の内周縁部に設けられた支持部材112および113に固定されている。そして、ファン105は、風導板107の壁部1071と吸気用開口部1023とに固定されている。
【0033】
<ファン105による空気の流れ>
図8は、ファン105による空気の流れについて説明するための図である。図8Aは、吸気口部102の吸引口から吸引された空気の流れを示している。図8Bは、空気の吸引方向と、吸気口部102の吸引口から空気が吸引されることによって生じる本体部10の回転方向を示している。
【0034】
ファン105が作動し、紙面下向きに風を起こすと、ファン105の風出力側の反対側には空気の吸引作用が生じる。ファン105の近傍には吸気口部102の開口端部(吸引口)1021があるので、図8Aに示されるように、外部の空気が吸引口に吸い込まれる。ファン105は、空気が風導板107の壁部1071の両脇を通過し(壁部1071の最下部から一部は)、超音波素子(霧化部:霧化装置)108によって霧化された水分を含ませながら煙突部101の方(上方)へ押し出されるように空気の流れを作る(図8A参照)
【0035】
一方、吸気口部102の開口端部(吸引口)1021から空気が吸引される(空気の吸引方向1024)ため、回転力が空気の吸引方向1024とは反対回り(回転力方向1025)に生じる(図8B参照)。これにより、加湿器1は、動作している間、本体部10および煙突部101を回転力方向1025に回転させながら、煙(霧状の水分)を煙突部101から排出することができるようになる。
【0036】
<無線給電(送電)方式>
図9は、本実施形態による加湿器1において用いられる無線給電方式について説明するための図である。
【0037】
本体部10は受電コイル110を含む共振回路を有しており、給電部20も送電コイル201を含む共振回路を有している。本体部10をタンク30が収容する水に浮かべると、本体部(受電部)10側の受電コイル110(共振回路)と給電部20側の送電コイル201(共振回路)が向かい合った状態に配置される。この給電方式は、磁気共鳴方式(受電コイル110と送電コイル201が同じ共鳴周波数を持つコイルで構成される)による送電方式である。磁気共鳴方式では、給電部20側の送電コイル201に電流を流すことにより発生した磁場の振動が同じ周波数で共振する本体部10の受電コイル110の共振回路に伝わる。利用する周波数の波長に比べて十分に小さな距離に受電コイル110があるときに磁場の振動が伝わり電流が受電コイル110に流れる。磁気共鳴方式は、送電距離が1mの場合、90%の伝送効率で給電でき、伝送距離が数mmから10cm程度の電磁誘導方式に比べて、長距離でも伝送できる。
【0038】
本体部(受電部)10には光通信部(例えば、赤外線LED)111、超音波素子(霧化部)108、および視覚的効果を与える複数のLED照明などの負荷が含まれているので、加湿器1を動作させるためには給電部20は給電し続ける必要がある。ただし、本体部10をタンク30収容の水に浮かべた時点では、給電部20は、光通信部(赤外線LED)111が発光する程度の微弱な電気しか供給しないように構成される。光通信部111は、給電部20から微弱な電気が供給されると発光して、送電がなされたことを給電部20に通知する。給電部20は、受光部202を備えており、本体部10の光通信部111からの光を受光し、送電可能となったことを確認し、本格的な給電動作を実行する。給電部20から大きな電力を常に供給すると、周囲に漏れ電波が生じてしまうため、上述のような初期動作(微弱給電→本格給電)を実行することにより、漏れ電波を周囲に生じさせないようにすることが可能となる。
【0039】
<給電動作:詳細>
図10は、本実施形態による加湿器1において実行される給電動作の詳細を説明するためのフローチャートである。なお、当該フローチャートの各ステップの処理主体は、主に給電部20が備えるプロセッサ(図示せず)とすることができる。ただし、以下の各ステップでは、主に給電部20を処理主体(ステップ1002のみ本体部10)として説明することとする。
【0040】
(i)ステップ1001
給電部20は、送電コイル201を用いて、所定の周波数(例えば、23kHz)で受電側(本体部10)に低出力で送電する。
【0041】
(ii)ステップ1002
本体部10は、光通信部(赤外線LED)111を用いて、受電開始信号(受電確認信号)を給電部20に送信する。この受電開始信号は、受電が正常に実行できたことを送信側に知らせると共に、受電側の電流位相特性に関する情報を送信側(給電部20)にフィードバックするための信号である。加湿器1の使用開始時は受電開始信号に受電側の電流位相特性に関する情報が含まれるが、加湿器1を使用している間は、例えば、受電確認信号(受電が正常かを示す信号)に受電側の電流位相特性に関する情報を含めて本体部(受電側)10から給電部(送電側)20に位相の状態をフィードバックするようにしてもよい。
【0042】
(iii)ステップ1003
給電部20は、受光部202を用いて、上述の受電開始信号を受信し、当該受電開始信号に含まれる受電側電流位相特性の情報を取得する。
【0043】
(iv)ステップ1004
給電部20は、受電側電流位相特性の情報に基づいて、送電側電流の位相と受電側の位相とが同位相となるように、送電側電流の位相を調整する。
【0044】
図11は、給電部20による送電時処理を説明するための図である。図11Aは、受電側電流と送電側電流との位相のずれを示す図である。図11Bは、電流位相が同位相の場合の伝達ゲイン(点線)と電流位相が同位相ではない場合の伝達ゲイン(実線)を示す図である。図11Cは、共振周波数のスキャン動作を示す図である。
【0045】
例えば、図11Aに示されるように、受電開始信号に含まれる受電電流の位相特性(図11A上)と送電側電流の位相特性(図11A下)とに位相ずれがあれば、給電部20はそれを検出し、送電側電流の位相を受電電流の位相と合せる。図11Bに示すように、送電側電流の位相と受電側電流の位相とが同位相である場合(図11B点線)、受電側に効率よく電力供給されている一方で、送電側電流の位相と受電側電流の位相とがずれている場合(図11B実線:位相が90度ずれている場合には、2つのピークができる)、受電側に効率よく電力が送られていないことが分かる。よって、この位相ずれが無くなるように、送電側電流の位相をずらして調整が実行される。
【0046】
(v)ステップ1005
給電部20は、送電側周波数を上げ(例えば、23kHzから50kHzに変更する)、高出力送電を開始する。この場合の送電側電流の位相は、ステップ1004で調整された値となっている。なお、送電側出力の周波数を変化させる場合、受電側電圧のピークから共振周波数をスキャンして複数のピークがあれば、高い周波数に合せて送電側出力の周波数を変化させるようにしてもよい(図11C参照)。また、スキャンした共振周波数が所定の範囲外である場合には送電を停止する構成としてもよい。
【0047】
(vi)ステップ1006およびステップ1007
給電部20は、所定時間間隔で受電側電流位相情報を取得し(例えば、本体部(受電側)10が所定時間間隔で当該情報を給電部20に送るように予め設定されている)、位相ずれが所定閾値未満か判断する。位相ずれが所定閾値未満であれば(ステップ1007でYESの場合)、処理はステップ1008に移行する。位相ずれが所定閾値以上であれば(ステップ1007でNOの場合)、処理はステップ1004に移行する。
【0048】
(vii)ステップ1008
給電部20は、現行の位相で、高出力送電を継続する。
【0049】
(viii)ステップ1009
給電部20(制御部)は、加湿終了の指示が入力されたか判断する(例えば、ユーザによってスイッチが切られた場合やタイマーによってスイッチが切られた場合、ステップ1005でスキャンした共振周波数が所定の範囲外であった場合など)。加湿終了の指示があった場合(ステップ1009でYESの場合)、加湿器動作は終了する。加湿終了の指示がない場合(ステップ1009でNOの場合)、処理はステップ1010に移行する。
【0050】
(ix)ステップ1010
給電部20は、現行の位相で高出力送電を継続する。その後、処理はステップ1006に移行する。
【0051】
(x)なお、本実施形態による加湿器1は、本体部10をタンク30に収容された水に浮かべて使用される。当該タンク30の水の量は、本体部10によって霧化され続けると、徐々に減っていくことになる。送電コイル201と受電コイル110との距離(タンクの水深)によって共振周波数は決まるため、送電側電流の周波数が共振周波数と一致するように調整しなければ、送電側電流の位相は、受電側電流の位相と徐々にずれていき、給電効率が低下してしまう。
【0052】
しかしながら、本実施形態では、本体部(受電側)10は、常時あるいは定期的に受電側電流位相特性の情報を給電部(送電側)20に通知することができるように構成されるので、送電側から受電側には常に効率的に電力を供給することが可能となる。
【0053】
<まとめ>
本実施形態による加湿器は、本体部の筐体(本体筐体)内に、蓋部に設けられた空気吸引口から空気を吸引すると共に、本体部の下方向へと風の流れを作るファンと、容器に収容された水を霧化する霧化部(例えば、超音波素子)と、ファンが作り出した風の経路を規定し、霧化された水分を煙突部まで導く風導部材を収容している。そして、この風導部材は、霧化部が水を霧化するときに生じる水しぶきが煙突部に侵入するのを防止する機能を有している。また、本体筐体は、本体部を容器(例えば、専用タンク:ただし、当該容器は専用タンクでなくてもよい)に浮かべるときの安定性を担保するおもりとなる部材(霧化部を冷却する冷却部材がおもりを兼ねる)を含む。このようにすることにより、加湿器としての機能を十分に担保することができるようになる。
【0054】
さらに、空気吸引口は、蓋部材の一方向に向いて設けられている。そして、ファンによって空気が空気吸引口から吸い込まれたときには、空気吸引口が向く方向とは反対方向に推進力が発生するように加湿器は構成されている。例えば、空気吸引口を蓋部材の周に沿った一方向に向けて設けると、本体部を、ファンによる空気の吸引力によって回転させることができるようになる。このようにすることにより、遊び心のある加湿器を提供することが可能となる。
【0055】
また、煙突部は、その先端内部の少なくとも一部分に、霧化された水分を攪拌する攪拌部材(例えば、煙突部の内部を仕切る仕切り板のような部材)を含んでいる。これにより、煙突部から排出される霧化された水分(煙状の水分)を竜巻状に排出することができ、よって、ユーザの遊び心に訴える加湿器を実現することが可能となる。
【0056】
また、本体筐体は、加湿器が動作中に、周囲を照らす照明部(複数のLED照明部)を備えている。これにより、暗い部屋に加湿器を設置したときには、ユーザから見ると加湿器のみがその空間で浮き上がったような感覚にすることができ、さらに、照明部の色を経時的に可変とすることにより、ユーザの美観に訴えることも可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 加湿器
10 本体部
20 給電部
30 タンク
101 煙突部
102 吸気口部
103 カバー部
104 ケース
105 ファン
106 ウェイト板
107 風導板
108 超音波素子(霧化部)
109 冷却板(兼おもり)
110 受電コイル
111 光通信部
図1
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図10
図11