(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】鉄道車両の荷物棚、及び、鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B61D37/00 F
(21)【出願番号】P 2020027964
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 盛人
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156020(JP,A)
【文献】特開2018-1881(JP,A)
【文献】特開2007-176427(JP,A)
【文献】特開平8-85457(JP,A)
【文献】特開2019-6231(JP,A)
【文献】岡部憲明,“小田急ロマンスカー50000形のデザインプロセス”,IATSS Review(国際交通安全学会誌),日本,公益財団法人国際交通安全学会,2007年05月,Vol.32, No.1,pp.6-13,ISSN 2433-4537(online), 0386-1104(print)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の長手方向に沿って伸びるように配設される鉄道車両の荷物棚において、
前記鉄道車両の長手方向に沿って並設される複数の荷棚ユニットを有し、
前記複数の荷棚ユニットは、それぞれ、
前記鉄道車両の長手方向に間隔を隔てて配設される複数の荷棚受であって、先端部を前記鉄道車両の内部に突き出すように基端部が前記鉄道車両に取り付けられる前記複数の荷棚受と、
前記荷棚ユニットの全長に対応する長さを有し、前記複数の荷棚受の全先端部にまとめて取り付けられる先端部材と、
前記複数の荷棚受と前記先端部材の上に配設される荷棚板と、
を有し、
前記先端部材は、長さ方向に対して直交する方向で切った断面の形状が同じ金属製の形材であること、
を特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両の荷物棚において、
前記先端部材は、前記鉄道車両の長手方向に沿って配置される側パネルが取り付けられる取付部を有すること、
を特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項3】
請求項2に記載する鉄道車両の荷物棚において、
前記鉄道車両は、前記鉄道車両の長手方向に沿って座席が複数列配設され、座席一列分の前後スペースに対応して窓が設けられており、
前記側パネルは、
前記座席一列分の前後スペースに対応して配置され、前記窓に対応して形成された窓開口部を有する窓部パネルと、
隣り合う前記窓部パネルの間に配置される目地パネルと、
を有し、
前記取付部は、
前記目地パネルが引っ掛けられて取り付けられるスリットと、
前記窓部パネルを前記先端部材に取り付ける取付ボルトが挿通される挿通穴と、
を有すること、
を特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する鉄道車両の荷物棚において、
前記鉄道車両は、前記鉄道車両の長手方向に沿って座席が複数列配設されており、
前記先端部材は、座席一列分の前後スペースに対応して特殊形状に形成されていること、
を特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つに記載する鉄道車両の荷物棚において、
前記荷棚受と前記先端部材は、金属製の形材であり、
前記荷棚受の先端側に位置する端部と、前記先端部材の後端側に位置する端部は、互いに嵌め合わせて前記荷棚受と前記先端部材とを位置決め可能な形状に成形されていること、
を特徴とする鉄道車両の荷物棚。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1つに記載する鉄道車両の荷物棚を有することを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される発明は、鉄道車両の荷物棚、及び、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1~特許文献4には、鉄道車両の客室に配設される荷物棚が開示されている。特許文献1には、座席一列分の前後方向スペースの境界に応じて荷棚受を配設し、この複数の荷棚受によって複数の荷棚板を支持する荷物棚が開示されている。
【0003】
特許文献2には、鉄道車両の長手方向に間隔を隔てて複数の荷棚受が配設され、複数の荷棚受の上に荷物棚の上面を形成する上板部材を架設するとともに、複数の荷棚受の下に荷物棚の下面を形成する下板部材を架設した荷物棚が開示されている。荷棚受の先端における鉄道車両の長手方向への張出部分には、カバー部材が固定されている。
【0004】
特許文献3には、発光ユニットを収容する先端部材を荷棚受の先端部に取り付けた荷物棚が開示されている。特許文献4には、閉断面を有する押出型材により成形された荷物棚が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-156020号公報
【文献】特開2018-001881号公報
【文献】特開2007-176427号公報
【文献】特開平08-085457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には以下の問題があった。すなわち、特許文献1~特許文献3に記載される荷物棚は、先端部材を荷棚受に対して取り付ける構造を簡易化することについて何ら考慮されていなかった。そのため、従来の荷物棚では、先端部材が荷棚受毎に分割されていた。そして、例えば、荷棚受はアルミ製、先端部材はFRP製とされており、先端部材に製作誤差が生じやすかった。このような構造の荷物棚では、位置決めライナーや前骨などを用いて先端部材を各荷棚受に対して位置調整する必要があった。また、仮に、プラスチック製の先端部材を複数の荷棚受に渡って配置するとしても、鉄道車両の長手方向に沿って先端部材を配置した場合に、先端部材の長手方向の寸法差によって、隣り合う先端部材の間に形成されるすき間がばらつき、そのばらつきを解消するためのアダプタを取り付けることができるように端部の構造を中央部の構造と変える必要があった。また、特許文献4に記載される荷物棚は、そもそも、先端部材を備えないため、先端部材を荷棚受に取り付ける構造について何ら記載及び示唆されていない。よって、従来の鉄道車両の荷物棚には、荷物棚の設置作業を簡素化する上で、改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、鉄道車両の長手方向に沿って伸びるように配設される鉄道車両の荷物棚において、荷物棚の設置作業を簡素化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(1)鉄道車両の長手方向に沿って伸びるように配設される鉄道車両の荷物棚において、前記鉄道車両の長手方向に沿って並設される複数の荷棚ユニットを有し、前記複数の荷棚ユニットは、それぞれ、前記鉄道車両の長手方向に間隔を隔てて配設される複数の荷棚受であって、先端部を前記鉄道車両の内部に突き出すように基端部が前記鉄道車両に取り付けられる前記複数の荷棚受と、前記荷棚ユニットの全長に対応する長さを有し、前記複数の荷棚受の全先端部にまとめて取り付けられる先端部材と、前記複数の荷棚受と前記先端部材の上に配設される荷棚板と、を有し、前記先端部材は、長さ方向に対して直交する方向で切った断面の形状が同じ金属製の形材であること、を特徴とする。
【0009】
上記構成を有する鉄道車両の荷物棚では、先端部材が金属製の形材であるので、先端部材に製作誤差が生じにくい。そのため、位置調整ライナや前骨などを用いなくても、先端部材を複数の荷棚受の全先端部に対して直接位置決めして取り付けることができる。また、先端部材は、長さ方向に対して直交する断面の形状が同じで、中央部でも長さ方向の両端に位置する端部でも荷棚受に対する取付構造が同じである。そのため、複数の荷棚ユニットの配置に応じて先端部材を切断し、先端部材の長さを調整することが可能になり、隣り合う先端部材の間に形成されるすき間を調整するためのアダプタを先端部材の端部に設ける必要がない。よって、上記構成の鉄道車両の荷物棚は先端部材を荷棚受に取り付けるための部品が少なくてすみ、荷物棚を鉄道車両に設置する設置作業を簡素化することができる。
【0010】
(2)(1)に記載する鉄道車両の荷物棚において、前記先端部材は、前記鉄道車両の長手方向に沿って配置される側パネルが取り付けられる取付部を有すること、が好ましい。
【0011】
上記構成を有する鉄道車両の荷物棚は、側パネルを荷物棚に取り付ける場合に、複数の荷棚受に渡って取り付けられる先端部材に、側パネルの配置に応じて取付部を各々設け、側パネルを先端部材に取り付けるので、側パネルを取り付ける場合の取付誤差を低減できる。
【0012】
(3)(2)に記載する鉄道車両の荷物棚において、前記鉄道車両は、前記鉄道車両の長手方向に沿って座席が複数列配設され、前記座席一列分の前後スペースに対応して窓が設けられており、前記側パネルは、前記座席一列分の前後スペースに対応して配置され、前記窓に対応して形成された窓開口部を有する窓部パネルと、隣り合う前記窓部パネルの間に配置される目地パネルと、を有し、前記取付部は、前記目地パネルが引っ掛けられて取り付けられるスリットと、前記窓部パネルを前記先端部材に取り付ける取付ボルトが挿通される挿通穴と、を有すること、が好ましい。
【0013】
上記構成を有する鉄道車両の荷物棚は、先端部材が金属製の形材であるので、窓部パネルと目地パネルの配置に応じてスリットや挿通穴をレーザ加工などにより簡単に形成でき、窓部パネルと目地パネルの取付誤差を低減できる。
【0014】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載する鉄道車両の荷物棚において、前記鉄道車両は、前記鉄道車両の長手方向に沿って座席が複数列配設されており、前記先端部材は、前記座席一列分の前後スペースに対応して特殊形状に形成されていること、が好ましい。
【0015】
上記構成を有する鉄道車両の荷物棚は、座席一列分の前後スペースに対応して先端部材に特殊形状を簡単に形成し、座席毎に個室感を創出することができる。
【0016】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載する鉄道車両の荷物棚において、前記荷棚受と前記先端部材は、金属製の形材であり、前記荷棚受の先端側に位置する端部と、前記先端部材の後端側に位置する端部は、互いに嵌め合わせて前記荷棚受と前記先端部材とを位置決め可能な形状に成形されていること、が好ましい。
【0017】
上記構成を有する鉄道車両の荷物棚は、金属製の形材からなる荷棚受と先端部材を嵌め合わせて位置決めするので、位置調整ライナや前骨を用いなくても、先端部材と荷棚受とを直接精度よく位置決めできる。
【0018】
(6)本発明の別態様は、(1)から(5)の何れか1つに記載する鉄道車両の荷物棚を有することを特徴とする鉄道車両である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鉄道車両の長手方向に沿って伸びるように配設される鉄道車両の荷物棚において、荷物棚の設置作業を簡素化する技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係り、鉄道車両の横断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係り、側パネルの境目部分を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係り、鉄道車両の内部の一部を示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係り、荷棚ユニットの一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係り、
図3のA-A断面における一部拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係り、
図5のB部拡大図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係り、
図3のC部拡大図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係り、
図3のD部拡大図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係り、先端部材の加工例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、鉄道車両の荷物棚、及び、鉄道車両を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、この実施形態に係る鉄道車両1の横断面図である。鉄道車両1は、台枠13と、一対の側構体12,12と、屋根構体11と、図示しない一対の妻構体とが互いに接合され、それらに囲まれた内部空間に客室Rが形成されている。鉄道車両1は、客室Rの車両幅方向F2の両側に座席16が配設されている。座席16の上方には、荷物棚2が配設されている。荷物棚2は、それぞれ、側構体12から客室R内に突き出して設けられている。
【0023】
図3は、鉄道車両1の内部の一部を示す平面図である。鉄道車両1は、鉄道車両1の長手方向F1(
図3参照)に沿って
図1に示す座席16が複数列(本形態では17列)配設されている。鉄道車両1の側構体12には、座席一列分の前後スペースSP1毎に窓14が設けられている。
【0024】
上述した荷物棚2は、鉄道車両1の長手方向F1(レール方向)に伸びるように配設されている。荷物棚2は、鉄道車両1の長手方向F1に沿って並設される4個の荷棚ユニットU1,U2,U2,U3を有する。荷棚ユニットU1~U3については後述する。
【0025】
図2は、側パネル10の境目部分を示す図である。鉄道車両1では、複数の側パネル10が、鉄道車両1の長手方向F1に沿って配置されている。すなわち、側パネル10は、窓部パネル8と目地パネル9を有し、鉄道車両1は、窓部パネル8と目地パネル9が鉄道車両1の長手方向F1に交互に配置されている。
【0026】
窓部パネル8は、座席一列分の前後スペースSP1とほぼ同じ幅であって、鉄道車両1の下方部18から荷物棚2の先端までの高さを有するパネルであり、座席一列分の前後スペースSP1に対応して配置される。窓部パネル8は、窓14に対応して窓開口部83が形成されている。窓部パネル8は、上端部が図示しない取付部材を介して荷物棚2に取り付けられ、下端部が鉄道車両1の下方取り付け部に取り付けられている。
【0027】
目地パネル9は、鉄道車両1の下方部18から荷物棚2の先端までの高さを有し、隣り合う窓部パネル8の間に配置される図中上下方向に細長いパネルである。目地パネル9は、上端部が荷物棚2に係止され、下端部が鉄道車両1の下方取り付け部に取り付けられている。隣り合う窓部パネル8は、目地パネル9を介して連続性をもって配置される。
【0028】
このような側パネル10(窓部パネル8と目地パネル9)は、鉄道車両1の下方部18から窓開口部83と荷物棚2との中間位置くらいまで、側構体12に沿って立ち上がるように形成されている。そして、側パネル10(窓部パネル8と目地パネル9)は、窓開口部83と荷物棚2との中間位置くらいから荷物棚2の先端まで緩やかな弧を描くように形成されている(後述する
図5参照)。さらに、側パネル10(窓部パネル8と目地パネル9)は、荷物棚2に取り付けることができるように、上端縁が屈曲している(後述する
図5、
図6参照)。よって、側パネル10(窓部パネル8)は、座席16に座った乗客の足元から頭上まで覆うように配置され、個室感を創出する。
【0029】
荷棚ユニットU1~U3について説明する。
図3に示すように、荷棚ユニットU1~U3が複数の前後スペースSP1単位で設けられている。荷棚ユニットU1~U3は、それぞれ、座席一列分の前後スペースSP1に対応して先端が円弧形状にされている。よって、荷棚ユニットU1~U3は、側パネル10(窓部パネル8)と共に個室感を創出する。
【0030】
荷棚ユニットU2は、鉄道車両1の長手方向F1の全長L2が、荷棚ユニットU1,U3の全長L1,L3より短い。荷棚ユニットU3の全長L3は、荷棚ユニットU1の全長L1より短い。なお、荷棚ユニットU1~U3の数や組み合わせや配置は、これに限定されず、例えば、荷棚ユニットU2より全長が短い荷棚ユニットを用いたり、荷棚ユニットU1,U3の配置を逆にしてもよい。また、例えば、荷物棚2を3個あるいは5個の荷棚ユニットUで構成してもよい。
【0031】
荷棚ユニットU1~U3は、それぞれ、複数の荷棚受4と、先端部材5と、荷棚板7とを有する。荷棚ユニットU1~U3は、荷棚受4の数や、先端部材5及び荷棚板7の長さが異なるだけで同様に構成されている。以下では荷棚ユニットU2を例にして説明する。
【0032】
図4は、荷棚ユニットU2の一例を示す図である。
図4に示すように、荷棚ユニットU2は、5個の荷棚受4と、1個の先端部材5と、2枚の荷棚板7と、を備える。荷棚受4と荷棚板7の数は一例であり、荷棚受4と荷棚板7の数を変えてもよい。
【0033】
荷棚受4は、鉄道車両1の長手方向F1に間隔を隔てて配設される。先端部材5は、荷棚ユニットU2の全長L2に対応する長さを有し、5個の荷棚受4の全先端部43(後述する
図5参照)にまとめて取り付けられている。荷棚受4は、全て同じ形状であり、先端部材5を各荷棚受4に取り付ける構造が同じである。荷棚板7は、先端部材5の約半分の長さを有し、荷棚受4と先端部材5の上に並んで配設されている。荷棚板7は、荷棚受4と先端部材5にリベットVを用いて固定されている。また、荷棚板7は、荷棚受4を相互に結合する梁3にも、リベットVを介して固定されている。
【0034】
図5は、
図3のA-A断面における一部拡大断面図である。荷棚受4は、アルミ製の形材である。荷棚受4は、アルミ以外の金属の形材でもよい。荷棚受4は、基側上板部47と基側下板部49との間に補強部45が設けられている。荷棚受4は、図中右側に位置する先端部43を鉄道車両1の内部、すなわち、客室Rに突き出すように、図中左側に位置する基端部41が鉄道車両1の側構体12に取り付けられる。例えば、荷棚受4は、吊りボルトV1を介して側構体12に位置調整可能に取り付けられる。
【0035】
先端部材5は、長さ(
図5において手前奥方向)に対して直交する方向で切った断面の形状が同じアルミ製の押出形材である。先端部材5は、製造誤差が生じにくい金属であれば、アルミ以外の金属の形材であってもよい。また、先端部材5の材質は、荷棚受4と同じでも、荷棚受4と異なってもよい。
【0036】
図6は、
図5のB部拡大図である。先端部材5は、先端側上板部5aと先端側下板部5bとが結合部5d,5eを介して結合され、結合部5d,5eの間に設けられた補強部5cによって補強されている。
【0037】
荷棚受4の先端側(
図6において右端側)に位置する端部47x、49xと、先端部材5の前記後端側(
図6において左端側)に位置する端部5ax、5bxは、互いに嵌め合わせて荷棚受4と先端部材5とを位置決め可能な形状に成形されている。
【0038】
すなわち、先端部材5は、先端側上板部5aの後端側(
図6における左端側)に位置する端部5axと先端側下板部5bの後端側(
図6における左端側)に位置する端部5bxは、結合部5eより荷棚受4側(
図6における左側)に延設されている。荷棚受4は、基側上板部47の先端側(
図6において右側)に位置する端部47xと、基側下板部49の先端側(
図6において右側)に位置する端部49xとの間隔が、端部47xの図中上面が端部5axの図中下面に当接し、端部49xの図中下面が端部5bxの図中上面に当接するように、端部5axと端部5bxの間隔より狭く形成されている。先端部材5と荷棚受4は、端部47xと端部49xが結合部5eに突き当たるまで、端部5axと端部5bxとの間に端部47xと端部49xが嵌め込んだ状態で、端部5axと端部47xが固定部材6を用いて連結されると共に、端部5bxと端部49xが固定部材6を用いて連結されている。
【0039】
先端部材5は、金属製の形材である。よって、先端部材5は、どの荷棚受4に対しても上記と同様に位置決めされ、取り付けられる。
【0040】
なお、先端部材5と荷棚受4の位置決め構造は、別態様でもよい。例えば、先端部材5の端部5ax,5bxの間隔を、荷棚受4の端部47x、49xの間隔より狭くして、補強部45に突き当たるまで先端部材5の端部5ax,5bxを荷棚受4の端部47x、49xの間に嵌め込むことにより、荷棚受4と先端部材5とを位置決めする構造にしてもよい。
【0041】
図4に示すように、先端部材5の先端縁50は、座席一列分の前後スペースSP1に対応して円弧形状に形成されている。円弧形状は「特殊形状」の一例である。先端部材5は、先端縁50に沿って、窓部パネル8を取り付けるための図示しない取付部材が挿通される挿通穴51が設けられている。挿通穴51の横には、鉄道車両1の長手方向F1に窓部パネル8を荷棚ユニットU2に対して位置決めするための位置決め溝53が設けられている。
【0042】
また、
図6に示すように、先端部材5は、目地パネル9が引っ掛けて取り付けられるスリットSが形成されている。すなわち、先端部材5は、先端側上板部5aの先端側(
図6において右端側)に位置する端部5ayが結合部5dより先端側(
図6において右側)に張り出している。その張り出している端部5ayにスリットSが設けられている。目地パネル9の図中上端部には、鉄道車両1の長手方向F1(
図6において手前奥方向)に所定幅を有するように、係止爪91が設けられている。スリットSは、その係止爪91が引っ掛けられるように、端部5ayに図中上下方向に貫通して形成されている。
【0043】
図7は、
図3のC部拡大図である。
図8は、
図3のD部拡大図である。
図7に示すように先端部材5の中央部に形成されるスリットSと、
図8に示すように先端部材5の長手方向F1に位置する端部に形成されるスリットSxでは、鉄道車両1の長手方向F1の幅が異なる。すなわち、スリットSxは、隣の先端部材5に設けられたスリットSxとともに目地パネル9が引っ掛けられるように、スリットSの大凡半分の長さ(図中左右方向の長さ)で形成されている。なお、挿通穴51とスリットS、Sxは、「鉄道車両の長手方向に沿って配置される側パネルが取り付けられる取付部」の一例である。なお、荷棚板7は、スリットS,Sxや挿通穴51を露出させるように切り欠き部71が設けられている。
【0044】
続いて、上述した鉄道車両1の荷物棚2について、設置手順の一例を説明する。先端部材5に荷受棚4を取り付けて荷棚ユニットU1~U3にする。そして、各荷棚ユニットU1~U3の荷棚受4を側構体12に吊りボルトV1を介して取り付ける。なお、荷棚受4は、基本的に、隣り合う座席一列分の前後スペースSP1の間に取り付けるが、他の艤装品などの配置に応じて取付位置が変更されてもよい。
【0045】
先端部材5を荷棚受4に取り付ける手順を説明する。先端部材5は、荷棚受4の配置等に応じて加工されてから、荷棚受4に取り付けられる。そこで、まず、荷棚部材5の加工手順を説明する。先端部材5は、アルミ製の形材であるため、荷物棚2の設置現場でレーザ加工によって自由に加工される。
図9は、先端部材5の加工例を説明する図である。
【0046】
図9(a)に示す成形素材500は、所定長を有する押出成形品である。成形素材500の長手方向に対して直交する方向で切った断面の形状は、
図6に示す先端部材5と同じである。
図9(a)に示す成形素材500は、図中CT1に示すように、先端部材5の長さに応じてレーザ加工により切断され、
図5(b)に示す基材502が形成される。なお、鉄道車両1の外で成形素材500を、先端部材5の設計時の長さより長めに切断して、基材502を形成しておき、鉄道車両1に荷棚ユニットU1~U3を並設した場合に隣の先端部材5と近接するように基材502を設置現場でレーザ加工により切断し、基材502の長さを調整してもよい。
【0047】
成形素材500は、アルミ製の形材なので、どこで切断されても、断面形状が同じになる。また、先端部材5の配置に応じて成形素材500あるいは基材502の長さをレーザ加工で簡単に調整できるので、隣り合う先端部材5の間のすき間を調整するためのアダプタを、先端部材5の端部に設ける必要がない。
【0048】
図9(b)に示す基材502は、図中CT2に示すように、座席一列分の前後スペースSP1に応じて、基材502に円弧形状がレーザ加工により形成される。これにより、
図9(c)に示す基材504が形成される。
【0049】
図9(c)に示す基材504は、
図9(d)に示すように、荷棚受4の配置に合わせて、固定部材6を取り付ける取付穴59がレーザ加工により形成される。また、窓部パネル8と目地パネル9の配置に応じて、挿通穴51と位置決め溝53とスリットSがレーザ加工により形成される。さらに、荷棚板7を固定するためのリベットVを挿通するための挿通穴55がレーザ加工により形成される。
【0050】
このように、先端部材5は、レーザ加工によって、実際の荷棚受4の位置や、側パネル10(窓部パネル8、目地パネル9)の位置に応じて、取付穴59や挿通穴51や位置決め溝53やスリットSを簡単かつ自由に後加工することができる。また、先端部材5は、レーザ加工で後加工されるので、加工屑が生じ難い。
【0051】
次に、
図4に示す荷棚ユニットU2を例にして、先端部材5を荷棚受4に取り付ける手順を説明する。
図6に示すように、先端部材5の端部5axと端部5bxとの間に、荷棚受4の端部47xと端部49xを嵌め込む。このとき、先端部材5は、端部47xと端部49xが結合部5eに突き当たるまで、端部5axと端部5bxとの間に端部47xと端部49xを嵌め込む。端部5axが端部47xに当接し、端部5bxが端部49xに当接することにより、先端部材5と荷棚受4は、位置調整ライナを使用しなくても、車両高さ方向(
図6において上下方向)に位置決めされる。さらに、結合部5eに端部47x、49xが当接することにより、先端部材5と荷棚受4は、前骨を使用しなくても、車両幅方向F2(
図6において左右方向)に位置決めされる。
【0052】
このようにして位置決めされた先端部材5と荷棚受4は、端部5axと端部47xが固定部材6を用いて連結され、端部5bxと端部49xが固定部材6を用いて連結されることにより、結合される。このとき、先端部材5は、荷棚受4の位置に合わせて取付穴59が形成されているので、荷棚受4に対する製作誤差が小さい。よって、先端部材5を荷棚受4に対して取り付ける際の位置調整等の手間が低減される。なお、先端部材5は、他の荷棚受4にもこれと同様にして取り付けられる。
【0053】
このようにして、荷棚ユニットU1~U3毎に先端部材5を荷棚受4に取り付けたら、荷棚板7を先端部材5と荷棚受4の上に載置し、リベットVを用いて固定する。この場合も、先端部材5と荷棚受4は、荷棚板7の取付位置に応じて、レーザ加工により挿通穴55を形成することができる。よって、先端部材5と荷棚受4は、荷棚板7に対する製作誤差を小さくでき、荷棚板7を先端部材5と荷棚受4に対して取り付ける際の位置調整等の手間が低減される。
【0054】
上記のようにして組み立てた荷棚ユニットU1~U3が荷棚受4を介して側構体12に取り付けられ、荷物棚2の設置が完了したら、側パネル10を取り付ける。すなわち、例えば
図2に示すように、目地パネル9を取り付けた後、隣り合う窓部パネル8を取り付ける。具体的には、目地パネル9は、係止爪91を先端部材5のスリットSに引っ掛けた状態で、下端部が鉄道車両1の下方取り付け部に取り付けられる。窓部パネル8は、先端部材5の位置決め溝53に係合させて位置決めされた状態で、図示しない取付部材が窓部パネル8と先端部材5の挿通穴51に挿通され、先端部材5に取り付けられる。そして、窓部パネル8は、下端部が鉄道車両1の下方取り付け部に取り付けられる。このようにして、鉄道車両1の長手方向F1に全ての窓部パネル8と目地パネル9を取り付ける。
【0055】
以上説明した本形態の鉄道車両1の荷物棚2では、先端部材5が金属製の形材であるので、先端部材5に製作誤差が生じにくい。そのため、位置調整ライナや前骨などを用いなくても、先端部材5を複数の荷棚受4の全先端部43に対して直接位置決めして取り付けることができる。また、先端部材5は、長さ方向に対して直交する断面の形状が同じで、中央部でも長さ方向の両端に位置する端部でも荷棚受4に対する取付構造が同じである。そのため、複数の荷棚ユニットU1~U3の配置に応じて先端部材5を切断し、先端部材5の長さを調整することが可能になり、隣り合う先端部材5の間に形成されるすき間を調整するためのアダプタを先端部材5の端部に設ける必要がない。よって、上記構成の鉄道車両の荷物棚は、先端部材を荷棚受に取り付けるための部品が少なくてすみ、荷物棚を鉄道車両に設置する設置作業を簡素化することができる。
【0056】
また、本形態の鉄道車両1の荷物棚2は、側パネル10を荷物棚2に取り付ける場合に、複数の荷棚受4に渡って取り付けられる先端部材5に、側パネル10の配置に応じて取付部(位置決め溝53、挿通穴55、スリットS)を各々設け、側パネル10を先端部材5に取り付けるので、側パネル10を取り付ける場合の取付誤差を低減できる。
【0057】
また、本形態の鉄道車両1の荷物棚2は、先端部材5が金属製の形材であるので、窓部パネル8と目地パネル9の配置に応じてスリットSや挿通穴51をレーザ加工などにより簡単に形成でき、窓部パネル8と目地パネル9の取付誤差を低減できる。
【0058】
また、上記形態の鉄道車両1の荷物棚2は、座席一列分の前後スペースSP1に対応して先端部材5に特殊形状を簡単に形成し、座席16毎に個室感を創出することができる。
【0059】
また、本形態の鉄道車両1の荷物棚2は、金属製の形材からなる荷棚受4と先端部材5を嵌め合わせて位置決めするので、位置調整ライナや前骨を用いなくても、先端部材5と荷棚受4とを直接精度よく位置決めできる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更することもできる。
【0061】
(1)先端部材5の位置決め溝53、挿通穴51、スリットSを省略し、窓部パネル8と目地パネル9を先端部材5に取り付けないようにしてもよい。この場合、荷棚ユニットU1~U3は、荷棚受4の下側に下面板を取り付ける構造を備えるとよい。
【0062】
(2)側パネル10は、座席一列分の前後スペースSP1に対応して設けられていなくてもよい。例えば、側パネルは、複数の前後スペースSP1単位で設けられてもよい。
【0063】
(3)先端部材5は、座席一列分の前後スペースSP1に対応して特殊形状を設けられていなくてもよい。例えば、先端部材5の先端縁50は、特殊形状が形成されず、鉄道車両1の長手方向F1に真っ直ぐ伸びる直線状に形成されてもよい。あるいは、先端部材5の先端縁50は、座席一列分の前後スペースSP1に関係なく、波形に形成されてもよい。
【0064】
(4)先端部材5にスリットSを形成せず、目地パネル9の上端部を先端部材5にネジなどで取り付けてもよい。また、窓部パネル8に係止爪を設け、その係止爪が引っ掛けられるスリットを先端部材5に設けてもよい。
【0065】
(5)先端部材5は、スリットSを補強する補強部材が取り付けられてもよい。
【0066】
(6)荷物棚2の設置手順は、矛盾のない範囲で、上記実施形態と変えてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 鉄道車両
2 荷物棚
4 荷棚受
5 先端部材
7 荷棚板
41 基端部
43 先端部
F1 鉄道車両の長手方向
U1~U3 荷棚ユニット