(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】オイル調整装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20231113BHJP
【FI】
F16H57/04 E
F16H57/04 P
(21)【出願番号】P 2020035726
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】岸本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬樹
(72)【発明者】
【氏名】小杉 寛明
(72)【発明者】
【氏名】滑川 秀一
(72)【発明者】
【氏名】神宮 秀平
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-138993(JP,A)
【文献】特開2009-133342(JP,A)
【文献】特開2007-64168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルが貯留されるオイルパンと該オイルパン内のオイルを吸い上げるオイルポンプとを接続するサクション油路と、
オイルポンプから吐き出されたオイルが流れる供給油路と、
該供給油路に供給されたオイルを貯留可能であって、前記供給油路に接続されたオイル流入口と、貯留されたオイルを前記オイルパンへ戻すオイル排出口とを有するオイル貯留室と、を備えたオイル調整装置において、
オイル温度に応じて前記オイル流入口を開閉するサーモ弁と、
前記サクション油路の圧力に応じて前記オイル排出口を開閉する圧力弁と、を備え、
前記サーモ弁は、オイルが高温になると前記オイル流入口を開放する一方、オイルが低温になると前記オイル流入口を閉塞し、
前記圧力弁は、前記サクション油路が負圧になると前記オイル排出口を閉塞し、前記サクション油路の負圧が解消されると前記オイル排出口を開放することを特徴とするオイル調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル調整装置に関し、特に、オイルパンに貯留されたオイルをオイルポンプで吸い上げて油路に吐出するオイル調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、エンジンの出力を駆動輪へ伝達するトランスミッションに、内部部品を潤滑するためのオイルが供給される。
【0003】
オイルをトランスミッションの各部品へ供給するオイル供給装置は、オイルを貯留するオイルパンと、オイルパン内のオイルを吸い上げて、オイルを各部品へ供給するための供給油路に吐出するオイルポンプとを備えている。オイルは供給油路を通って各部品へ供給された後、再びオイルパンに戻される。オイルパンと、オイルポンプのオイル吸入口とは、サクション油路で接続されており、
図5に示すように、サクション油路20の上流端に設けられたオイルの吸込口21は、オイルパン12に貯留されたオイル11に浸漬されている。
【0004】
このようなオイル供給装置では、車両が急加速や急減速、急旋回などをすると、オイルパン12に貯留されたオイル11が、車両の加速度や慣性力によって、オイルパン12内で揺れ動き、
図5において破線で示すように、オイルパン12内でオイル11の偏りが生じる。
【0005】
オイル11の偏りによってサクション油路20の吸込口21が空気にさらされると、サクション油路20内にオイルとともに空気が吸入されてしまう、所謂、エア吸いが発生してしまう。エア吸いが生じると、供給油路の油圧を正常に保つことができなくなり、トランスミッションに油圧異常や異音が発生するおそれがある。それ故、エア吸いの発生を防止するためには、オイルパン12内のオイル11の油面の高さをある程度高く保つ必要がある。
【0006】
しかしながら、オイルの体積は温度によって変化し、高温時には低温時に比べてオイル供給装置内のオイルの体積が増加することから、オイル体積が小さくなる低温時において、必要なオイルパンの油面の高さを確保しようとすると、高温時には、多量のオイルによって、フリクションが増加して燃費が悪化してしまうという問題がある。
【0007】
この問題を解消するために、特許文献1には、供給油路を流れるオイルの量を調整するために、オイルパンとは別に、供給油路を流れるオイルを一時的に貯留するためのオイル貯留室を設けたオイル調整装置が記載されている。このオイル調整装置は、オイルパンと、オイルパンに貯留されたオイルをオイルクーラが設けられた供給油路に吐出するオイルポンプと、を備えている。また、このオイル調整装置は、供給油路から分岐する分配油路に接続されたオイル貯留室と、分配油路を開閉可能な分配弁と、オイルパンに貯留されたオイルの温度又は油面レベルを検出するセンサと、該センサの検出結果に基づいて分配弁を電気的に開閉制御する制御装置と、オイル貯留室のオイル排出口を開閉するサーモ弁と、を備えている。サーモ弁は、オイル貯留室に貯留されたオイルの温度に感応して開閉動作し、オイル温度が高い場合にオイル排出口を閉塞し、オイル温度が低い場合にオイル排出口を開放してオイルをオイルパンに戻すように設定されている。
【0008】
特許文献1に記載のオイル調整装置では、センサによって、オイルパンに貯留されたオイルの温度が高い又は油面レベルが高いことが検出されると、センサ信号を受けた制御装置によって、分配弁が開状態に制御され、供給油路を流れるオイルが分配油路を介してオイル貯留室内に流入する。この時、オイル貯留室のオイル排出口を開閉するサーモ弁は、高温のオイルによって閉状態にあるので、オイル貯留室内にオイルが貯留される。また、オイル貯留室内のオイル温度が低くなると、サーモ弁が開状態となり、オイル貯留室内のオイルはオイルパンに戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このオイル調整装置では、オイルパン内の油温又は油面レベルを検出して、油温又は油面レベルが高くなった場合に、オイル貯留室内にオイルを溜めて、油圧供給路を流れるオイル量を低減させることで、高温時のフリクション増加を抑制することができる。また、オイル貯留室内のオイル温度が低くなった場合に、オイル貯留室内のオイルを排出して、オイルパンの油面レベルを高く保つことができる。
【0011】
しかしながら、オイルをオイル貯留室へ貯留させるためには、油温又は油面レベルを検出するセンサや、センサ検出結果に基づいて分配弁を開閉制御するための電気的な制御装置が必要なことから、オイル調整装置の構造が複雑化してしまう。それ故、より簡易な構造でオイル量を調整できるオイル調整装置の開発が求められていた。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、簡易な構造でオイル低温時のエア吸いの発生を防止でき、かつ、オイル高温時のフリクション増加を抑制することができるオイル調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るオイル調整装置は、オイルが貯留されるオイルパンと該オイルパン内のオイルを吸い上げるオイルポンプとを接続するサクション油路と、オイルポンプから吐き出されたオイルが流れる供給油路と、該供給油路に供給されたオイルを貯留可能であって、前記供給油路に接続されたオイル流入口と、貯留されたオイルを前記オイルパンへ戻すオイル排出口とを有するオイル貯留室と、を備えたオイル調整装置において、オイル温度に応じて前記オイル流入口を開閉するサーモ弁と、前記サクション油路の圧力に応じて前記オイル排出口を開閉する圧力弁と、を備え、前記サーモ弁は、オイルが高温になると前記オイル流入口を開放する一方、オイルが低温になると前記オイル流入口を閉塞し、前記圧力弁は、前記サクション油路が負圧になると前記オイル排出口を閉塞し、前記サクション油路の負圧が解消されると前記オイル排出口を開放することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、オイルポンプが駆動すると、オイルが供給油路に吐出されるとともに、サクション油路が負圧になることにより圧力弁によってオイル排出口が閉塞される。この際、オイルの温度が高い場合には、オイル流入口を開閉するサーモ弁が開状態となり、供給油路を流れるオイルがオイル貯留室内に流入して、貯留される。これにより、供給油路を流れるオイル量が低減され、高温時のフリクションの増加を抑制することができる。オイル貯留室内のオイルは、オイルポンプが停止してサクション油路の負圧が解消されると、オイル排出口を閉塞していた圧力弁が開状態になるので、オイル排出口からオイルパンへ戻される。
【0015】
一方、オイルポンプを駆動した際に、オイル温度が低い場合には、サーモ弁によってオイル流入口が閉塞されるので、オイルはオイル貯留室に貯留されることなく、供給油路を通ってオイルパンに戻されことになる。これにより、低温時にオイルパンに貯留されるオイル量を多く保つことができ、エア吸いの発生を防止することができる。
【0016】
また、オイル貯留室のオイル流入口及びオイル排出口の開閉状態は、サーモ弁及び圧力弁のそれぞれによりオイル温度及びサクション油路の圧力のそれぞれに応じて自動的に行われるので、オイル調整装置を簡易化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るオイル調整装置によれば、簡易な構造でオイル低温時のエア吸いの発生を防止でき、かつ、オイル高温時のフリクション増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態であるオイル調整装置の油圧回路を説明する図。
【
図2】
図1に示すオイル調整装置の低温運転時の油圧回路を説明する図。
【
図3】
図1に示すオイル調整装置の高温運転時の油圧回路を説明する図。
【
図4】
図1に示すオイル調整装置のオイルポンプ停止時の油圧回路を説明する図。
【
図5】オイルパンに貯留されたオイルの動きを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態であるオイル調整装置の油圧回路を説明する図である。このオイル調整装置10は、エンジンを搭載した車両(ハイブリッド車両も含む)に用いられ、車両のトランスミッション等の駆動機構に、潤滑用のオイルを供給する。
【0020】
オイル調整装置10は、オイルパン12と、オイルパン12内のオイル11を吸い上げるオイルポンプ14と、オイルパン12とオイルポンプ14とを接続するサクション油路20と、オイルポンプ14から吐出されたオイルが流れる供給油路30と、供給油路30に接続され、供給油路30に供給されたオイルを貯留可能なオイル貯留室40とを備える。
【0021】
オイルパン12は、
図1及び
図5に示すように、鉛直方向上方が開口した容器であり、トランスミッションの下方に設けられる。オイルパン12の内部には、トランスミッションを構成するギヤ機構等の部品を潤滑するためのオイル11が貯留される。
【0022】
サクション油路20の上流部には、オイルパン12に貯留されたオイル11を吸い込む吸込口21を有するストレーナ22が設けられている。ストレーナ22は、オイル11に含まれる異物を除去する濾過機能を有する。ストレーナ22の吸込口21は、オイルパン12内に位置し、貯留されたオイル11に浸漬される。サクション油路20の下流端は、オイルポンプ14のオイル吸入口に接続されている。
【0023】
オイルポンプ14は、車両の動力源である図示していないエンジンに連結され、エンジンの動力によって駆動する機械式のポンプである。オイルポンプ14のオイル吐出口は、供給油路30の上流端に接続されており、オイルポンプ14が駆動すると、オイルパン12に貯留されたオイル11が、サクション油路20を介して吸い上げられ、オイルポンプ14のオイル吐出口から供給油路30内にオイル11が圧送される。
【0024】
なお、オイルポンプ14は、エンジンの動力で駆動するものに限られず、例えば、電力によって駆動する電気式のオイルポンプ等、オイルパン12に貯留されたオイル11を吸い上げて供給油路30内に吐出可能なポンプであればよい。
【0025】
供給油路30は、オイルポンプ14に上流端が接続された主油路32と、主油路32から分岐する複数の分岐油路とを備えている。分岐油路は、トランスミッションを構成する各部品へ繋がっており、主油路32や分岐油路を通過して各部品に供給されたオイルは、これらの下流側に配置された油路を介して又は油路を介することなく、オイルパン12へ戻される(
図1の破線矢印参照)。
【0026】
オイル貯留室40は、内部にオイルを貯留可能な空間を有するとともに、供給油路30に接続されたオイル流入口42と、内部に貯留されたオイルをオイルパン12へ戻すためのオイル排出口44とを有する。オイル貯留室40は、オイルパン12の鉛直方向上方に位置している。オイル流入口42は、オイル温度に応じて開閉動作するサーモ弁50によって開閉可能に構成されている。オイル排出口44は、サクション油路20内の圧力に応じて開閉動作する圧力弁60により開閉可能に構成されている。
【0027】
本実施形態において、オイル貯留室40は、連通油路34を介して供給油路30の主油路32と連通されており、オイル流入口42は、オイル貯留室40を区画する容器に形成された開口であって、連通油路34の下流端に接続されている。なお、連通油路34は、供給油路30の分岐油路と、オイル貯留室40とを連通する構成であってもよい。
【0028】
また、本実施形態において、オイル排出口44は、オイル貯留室40を区画する容器の底部に形成された開口であって、このオイル排出口44の下方にオイルパン12が配置されている。なお、これに代えて、オイル貯留室40から下方へ延びるオイル排出用の油路を設け、このオイル排出用油路を介してオイル貯留室40内のオイルをオイルパン12へ戻す構成としてもよい。かかる場合、圧力弁60によって開閉されるオイル排出口44は、オイル排出用油路に設けることができる。
【0029】
サーモ弁50は、油圧回路を流れるオイル温度に感応して開閉動作し、オイルが高温になるとオイル流入口42を開放する開状態となり、オイルが低温になるとオイル流入口42を閉塞する閉状態となる。
【0030】
サーモ弁50は、サーモ弁50をオイル貯留室40の所定の位置に固定する固定部52と、固定部52に取り付けられた感温部54と、感温部54に連結された弁体56とを備える。感温部54は、オイル温度を感知して、その先端がオイル流入口42に対して接近・離間する方向に変位する。本実施形態では、感温部54の先端に弁体56が取り付けられており、オイル温度が所定温度未満の場合に、感温部54がオイル流入口42に接近して、弁体56がオイル流入口42を閉塞し、オイル温度が所定温度以上の場合に、感温部54がオイル流入口42から離間して、弁体56がオイル流入口42を開放するように設定されている。
【0031】
圧力弁60は、サクション油路20の圧力を受けて開閉動作し、サクション油路20が負圧になるとオイル排出口44を閉塞する閉状態となり、サクション油路20の負圧が解消されるとオイル排出口44を開放する開状態となる。本実施形態において、圧力弁60はサクション油路20の負圧を受けて作動する負圧弁であって、サクション油路20の負圧(すなわち、オイルを吸い上げる吸入負圧)を受ける圧力室62と、圧力室62内の圧力を受けて伸縮するスプリング64と、スプリング64に連結された弁体66とを備える。
【0032】
圧力弁60の圧力室62は、サクション油路20と連通している。本実施形態では、
図1に示すように、サクション油路20から分岐してオイル排出口44まで伸びる直線状の通路26を設けている。この通路26には、通路26内の空間を仕切るとともに、通路26内を移動可能な移動部材67が配置されている。通路26と移動部材67の間には、水密性が有り、移動部材67からサクション油路20側の通路26内の空間が、圧力室62を形成している。スプリング64は、基端が圧力室62の吸入負圧導入部の近傍に固定されており、スプリング64先端に移動部材67が取り付けられている。弁体66は、圧力弁60においてオイル排出口44を閉塞する部分であり、移動部材67に棒状の連結部材68を介して取り付けられている。
【0033】
この圧力弁60は、
図2に示すように、オイルポンプ14が駆動してサクション油路20が負圧になり、圧力室62に吸入負圧が導入されると、スプリング64が吸入負圧によって、
図1に示す通常状態よりも収縮する。すると、スプリング64の先端に取り付けられた移動部材67、連動部材68及び弁体66が、通路26の油圧室62側に移動し、オイル排出口44が弁体66により閉塞される。
【0034】
また、この圧力弁60は、
図1に示すように、オイルポンプ14が停止してサクション油路20の負圧が解消されると、圧力室62への吸入負圧導入が解除され、スプリング64が通常状態に戻り、スプリング64に連結された移動部材67、連結部材68及び弁体66が通路26の先端側(
図1の右側)に移動して、オイル排出口44が開放状態になる。
【0035】
次に、上述したオイル調整装置10の動作を説明する。
【0036】
まず、オイル温度が低い場合のオイル調整装置10の動作を説明する。
図1及び
図2は、オイル温度が低温の場合、具体的には、供給油路30に吐出されたオイル温度が所定温度未満の場合のオイル調整装置10の動作を説明する図である。
【0037】
図1に示すように、車両に搭載されたエンジンが駆動停止状態にある場合、オイル調整装置10のオイルポンプ14は駆動停止状態になり、サクション油路20内は、負圧が解消された状態になる。この時、サクション油路20の油圧を受けて、圧力弁60は開状態になり、オイル排出口44が開放される。この状態では、オイル貯留室40内にオイルが貯留されず、オイルパン12内の油面高さ(油面レベル)が高く保たれる。
【0038】
次に、エンジンの駆動により、オイルポンプ14が駆動すると、
図2において矢印で示すように、サクション油路20内が負圧になり、オイルパン12に貯留されたオイル11がサクション油路20を介して汲み上げられ、オイルポンプ14のオイル吐出口から供給油路30内に圧送される。この時、圧力弁60は、サクション油路20の負圧を受けて閉状態となり、オイル排出口44を閉塞する。
【0039】
また、サーモ弁50は、低温のオイルにより閉状態となり、オイル流入口42を閉塞する。これにより、供給油路30を流れるオイルは、オイル貯留室40内に入流することなく、トランスミッションを構成する部品に供給され、その後、オイルパン12に戻される。これにより、オイルパン12に貯留されるオイル11の量を多くして、油面高さを高く保つことができる。オイルの温度が低くなると、高温時に比べて油圧回路を流れるオイルの容積が小さくなる。
図5において破線で示すように、オイルパン12内のオイル11の油面高さが低くなると、車両の加速度や慣性力によって、オイル11がオイルパン12内で揺れ動いた際に、サクション油路20の吸込口21から空気が入り込む、所謂エア吸いが発生するが、本実施形態のオイル調整装置10では、油面高さを高く保ってエア吸いの発生を防止することができる。
【0040】
次に、オイル温度が高い場合のオイル調整装置10の動作を説明する。
図3及び
図4は、オイル温度が高温の場合、具体的には、供給油路30に吐出されたオイル温度が所定温度以上の場合のオイル調整装置10の動作を説明する図である。
【0041】
図3に示すように、車両のエンジンが駆動停止状態にある場合、オイルポンプ14は駆動停止状態になり、サクション油路20内は、負圧が解消された状態になる。この時、サクション油路20の油圧を受けて、圧力弁60は開状態になり、オイル排出口44が開放される。この状態では、オイル貯留室40内にオイルが貯留されず、オイルパン12内の油面高さが高く保たれる。
【0042】
次に、エンジンが駆動し、これに連動してオイルポンプ14が駆動すると、
図4において矢印で示すように、サクション油路20内が負圧になり、オイルパン12に貯留されたオイル11がサクション油路20を介して汲み上げられ、オイルポンプ14のオイル吐出口から供給油路30内に圧送される。この時、圧力弁60は、サクション油路20の負圧を受けて閉状態となり、オイル排出口44を閉塞する。
【0043】
また、サーモ弁50は、高温のオイルにより開状態となって、オイル流入口42が開放される。供給油路30を流れるオイルは、オイル流入口42からオイル貯留室40に入流して、オイル貯留室40内に貯留される。これにより、供給油路30を流れるオイルの量が低減され、トランスミッションにおけるフリクションの増加を抑制することができる。
【0044】
その後、オイルポンプ14の駆動が停止すると、
図3に示すように、圧力弁60が開状態となって、オイル排出口44が開放され、オイル貯留室40内のオイルは、オイルパン12へ戻される。
【0045】
上述のように、本実施形態のオイル調整装置10では、オイル温度が低い場合に、オイルパン12内のオイルの油面高さを高く保って、エア吸いの発生を防止することができるとともに、オイル温度が高い場合に、オイル貯留室40内にオイルを貯留させて、供給油路30を流れるオイル量を低減することで、フリクションの増加を抑制することができる。
【0046】
また、オイル流入口42の開閉制御は、サーモ弁50によりオイル温度に応じて自動的に行われ、オイル排出口44の開閉状態は、圧力弁60によりサクション油路20の圧力に応じて自動的に行われるので、弁体を開閉制御するための電気的な制御装置を用いる必要がなく、オイル調整装置10を簡易化することができる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 オイル調整装置
12 オイルパン
14 オイルポンプ
20 サクション油路
21 吸込口
22 ストレーナ
26 通路
30 供給油路
40 オイル貯留室
42 オイル流入口
44 オイル排出口
50 サーモ弁
54 感温部
56 弁体
60 圧力弁
62 圧力室
64 スプリング
66 弁体