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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20231113BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020036453
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021138240
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024664(JP,A)
【文献】特開2016-101805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
G09G 5/00- 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画像を車両の被投影部材に投影し、前記被投影部材に投影された前記表示画像に対応する虚像を、当該虚像を表示する虚像表示領域内に表示し、前記車両の運転者に視認させる画像表示部と、
前記車両前方の実風景における重畳対象を検出する検出部と、
前記運転者の視点位置を取得する視点位置取得部と、
前記重畳対象に重畳させる重畳虚像を、前記画像表示部により前記車両前方の実風景に重畳して表示させる制御部と、を備え、
前記虚像表示領域は、
前記重畳虚像が表示される第1表示領域と、
前記第1表示領域の上下方向の少なくとも一方の端部に隣り合うように配置され、前記重畳虚像と異なる非重畳虚像が表示される第2表示領域と、で構成され、
前記第1表示領域は、
前記運転者の視点から見て前記車両前方の路面に設定された重畳範囲に対応するものであって、当該第1表示領域の上端が、前記運転者の視点位置のうち基準視点位置に対して上側に位置する最上端視点位置と、前記重畳範囲の前後方向の前端とを結ぶ直線上に位置し、かつ、当該第1表示領域の下端が、前記基準視点位置に対して下側に位置する最下端視点位置と、前記重畳範囲の前後方向の後端とを結ぶ直線上に位置し、
前記第2表示領域は、
前記運転者が識別可能な前記非重畳虚像を表示できる有効表示幅を有し、
前記画像表示部は、
前記表示画像を表示光として出射する表示器と、
前記表示器から前記被投影部材までの前記表示光の光路上に配置され、前記表示光を前記被投影部材に向けて反射する反射ミラーと、
前記反射ミラーの角度を変更する駆動部と、を有し、
前記制御部は、
前記視点位置の上下方向の移動に応じて、前記駆動部により前記反射ミラーの角度を変更し、前記虚像表示領域における第1表示領域の位置を移動させ、
前記視点位置が前記基準視点位置より上方向に移動するに伴って、前記最上端視点位置のときに前記第1表示領域の上端が前記虚像表示領域の上端に位置するように前記第1表示領域を前記虚像表示領域における上側に移動させ、
前記視点位置が前記基準視点位置より下方向に移動するに伴って、前記最下端視点位置のときに前記第1表示領域の下端が前記虚像表示領域の下端に位置するように前記第1表示領域を前記虚像表示領域における下側に移動させる、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両には、例えば、表示デバイスに表示される表示画像を反射ミラー等を介してウインドシールド等に投影することで、運転者に虚像として視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)を搭載するものがある。ヘッドアップディスプレイには、運転者の安全運転を支援する目的で、車両前方の実風景における周辺車両や歩行者、信号、標識、車線等に視覚情報を重畳して表示するAR-HUDがある。例えば、特許文献1では、車両内に設定された基準視点から見て、前方風景における基準視点から適正距離範囲が虚像の表示領域に入り、所定距離範囲に存在する対象物(例えば路面)に対する輻輳角と、表示領域内に表示される虚像に対する輻輳角との差が1°以下となるHUD装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-122619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実風景における路面に虚像を重畳して表示するAR-HUDでは、路面上の任意の重畳範囲に虚像を重畳表示させるために虚像表示領域を設定している。この虚像表示領域は、運転者の基準視点の上下方向の変化に対応させるために一定の大きさが必要となる。一方、虚像表示領域に虚像を重畳表示するだけでなく、重畳表示する必要がない一般的な虚像(例えば車速等)を表示させたいとの要望があることから、重畳表示領域を十分に確保しつつ非重畳領域を追加するために、虚像表示領域をさらに拡大する必要がある。
【0005】
しかしながら、虚像表示領域全体を広げると、各視点に対応する通常領域を確保しければならないことから、ヘッドアップディスプレイを構成する反射ミラーを大きくせざるをえず、当該反射ミラーが収容された画像表示部が大型化するおそれがある。
【0006】
本発明は、虚像表示領域の拡大を図りつつ画像表示部の小型化を図ることができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、表示画像を車両の被投影部材に投影し、前記被投影部材に投影された前記表示画像に対応する虚像を、当該虚像を表示する虚像表示領域内に表示し、前記車両の運転者に視認させる画像表示部と、前記車両前方の実風景における重畳対象を検出する検出部と、前記運転者の視点位置を取得する視点位置取得部と、前記重畳対象に重畳させる重畳虚像を、前記画像表示部により前記車両前方の実風景に重畳して表示させる制御部と、を備え、前記虚像表示領域は、前記重畳虚像が表示される第1表示領域と、前記第1表示領域の上下方向の少なくとも一方の端部に隣り合うように配置され、前記重畳虚像と異なる非重畳虚像が表示される第2表示領域と、で構成され、前記第1表示領域は、前記運転者の視点から見て前記車両前方の路面に設定された重畳範囲に対応するものであって、当該第1表示領域の上端が、前記運転者の視点位置のうち基準視点位置に対して上側に位置する最上端視点位置と、前記重畳範囲の前後方向の前端とを結ぶ直線上に位置し、かつ、当該第1表示領域の下端が、前記基準視点位置に対して下側に位置する最下端視点位置と、前記重畳範囲の前後方向の後端とを結ぶ直線上に位置し、前記第2表示領域は、前記運転者が識別可能な前記非重畳虚像を表示できる有効表示幅を有し、前記画像表示部は、前記表示画像を表示光として出射する表示器と、前記表示器から前記被投影部材までの前記表示光の光路上に配置され、前記表示光を前記被投影部材に向けて反射する反射ミラーと、前記反射ミラーの角度を変更する駆動部と、を有し、前記制御部は、前記視点位置の上下方向の移動に応じて、前記駆動部により前記反射ミラーの角度を変更し、前記虚像表示領域における第1表示領域の位置を移動させ、前記視点位置が前記基準視点位置より上方向に移動するに伴って、前記最上端視点位置のときに前記第1表示領域の上端が前記虚像表示領域の上端に位置するように前記第1表示領域を前記虚像表示領域における上側に移動させ、前記視点位置が前記基準視点位置より下方向に移動するに伴って、前記最下端視点位置のときに前記第1表示領域の下端が前記虚像表示領域の下端に位置するように前記第1表示領域を前記虚像表示領域における下側に移動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用表示装置は、虚像表示領域の拡大を図りつつ画像表示部の小型化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る車両用表示装置を搭載した車両の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る車両用表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る車両用表示装置における運転者の視点位置と、虚像表示領域と、路面の重畳範囲との関係を示す第1模式図である。
図4図4は、実施形態に係る車両用表示装置における運転者の視点位置と、虚像表示領域と、路面の重畳範囲との関係を示す第2模式図である。
図5図5は、実施形態に係る車両用表示装置における運転者の視点位置と、虚像表示領域と、路面の重畳範囲との関係を示す第3模式図である。
図6図6は、実施形態に係る車両用表示装置における運転者の各視点位置に対応する虚像表示領域を示す模式図である。
図7図7は、実施形態に係る車両用表示装置における運転者の各視点位置に対応する虚像表示領域と、光路幅と、反射ミラーのサイズとの関係を示す模式図である。
図8図8は、実施形態に係る車両用表示装置により車両のウインドシールドに投影される虚像と虚像表示領域の一例を示す模式図である。
図9図9は、実施形態に係る車両用表示装置における運転者の各視点位置に対応する虚像表示領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。以下の実施形態における構成要素には、いわゆる当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、以下の実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0011】
[実施形態]
本実施形態に係る車両用表示装置について説明する。図1は、車両用表示装置を搭載した車両の概略構成を示す模式図である。図2は、車両用表示装置の概略構成を示すブロック図である。図3図5は、車両用表示装置における運転者の視点位置と、虚像表示領域と、路面の重畳範囲との関係を示す模式図である。図6は、車両用表示装置における運転者の各視点位置に対応する虚像表示領域を示す模式図である。図7は、車両用表示装置における運転者の各視点位置に対応する虚像表示領域と、光路幅と、反射ミラーのサイズとの関係を示す模式図である。図8は、車両用表示装置により車両のウインドシールドに投影される虚像と虚像表示領域の一例を示す模式図である。図9は、車両用表示装置における運転者の各視点位置に対応する虚像表示領域を示す模式図である。なお、図4における光軸O(オー)は、後述する反射ミラー31の光軸である。
【0012】
なお、以下の説明において、特に記載しない限り、図1図3図6図8に示すX方向は、本実施形態における車両の幅方向であり、左右方向である。Y方向は、本実施形態における車両の前後方向であり、幅方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態における車両の上下方向であり、幅方向及び前後方向と直交する方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は、相互に直交するものとする。なお、便宜的に、X方向のうち、X1方向を左方向、X2方向を右方向とし、Y方向のうち、Y1方向を前方または車両の進行方向、Y2方向を後方とする。Z方向は、例えば、車両の鉛直方向に従う。
【0013】
本実施形態に係る車両用表示装置1は、例えば、自動車等の車両100に搭載される。図1に示す車両用表示装置1は、表示器30に表示される表示画像を車両100の運転者Dの前方にあるウインドシールド104に投影し、ウインドシールド104に投影された表示画像に対応する虚像Sを、運転者Dに視認させるものである。車両100の内部(の車室)には、ウインドシールド104の上側にルーフ103が連結され、下側にインストルメントパネル102が設けられている。インストルメントパネル102の後方には、ステアリングコラム105に回転自在に支持されたステアリングホイール101が設けられている。運転者Dは、ステアリングホイール101の後方に設けられた運転席106に着座した乗員であり、ウインドシールド104を介して車両100の前方を視認することができる。ウインドシールド104は、被投影部材の一例である。ウインドシールド104は、半透過性を有し、車両用表示装置1から入射する表示光Lを運転者Dに向けて反射する。運転者Dは、運転席106に着座した状態で、ウインドシールド104に投影される表示画像を車両100の進行方向における前方に存在する虚像Sとして視認することができる。本実施形態における車両用表示装置1は、車両前方カメラ2と、運転者カメラ3と、装置本体4とを含んで構成され、ナビゲーション装置5に接続されている(図1図2)。
【0014】
ナビゲーション装置5は、検出部の一例である。ナビゲーション装置5は、いわゆるカーナビであり、地図情報や自車両100の位置情報、車両100の周辺の道路状況を示す情報等の各種情報を運転者Dに提供するものである。ナビゲーション装置5は、例えば、外部のGPS(Global Positioning System)衛星(不図示)から無線通信を介して自車両100の位置情報を取得して運転者Dに提供することができる。また、ナビゲーション装置5は、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)(不図示)から無線通信を介して各種情報を取得して運転者Dに提供することができる。また、ナビゲーション装置5は、外部の先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System)から無線通信を介して各種情報を取得して運転者Dに提供する構成であってもよい。また、ナビゲーション装置5は、例えば、各種情報を装置内部のメモリ(不図示)から読み出して運転者Dに提供する構成であってもよい。ナビゲーション装置5は、車両用表示装置1からの取得要求に応じて、上記各種情報を当該車両用表示装置1に出力する。
【0015】
車両前方カメラ2は、検出部の一例である。車両前方カメラ2は、ウインドシールド104を通して車両前方の実風景を連続して撮像し、撮像した画像を前方画像として取得するものである。車両前方カメラ2は、車両100の車室内のルーフ103またはバックミラー(不図示)等に配置される(図1)。本実施形態の車両前方カメラ2は、アイボックスEBの外側から車両前方の実風景を撮影する(図4)。アイボックスEBは、視点位置(アイポイント)EPを含み、車両前方の実風景に重ねて表示される虚像Sを視認可能な空間領域である。運転者Dは、運転席106に着座した状態でアイボックスEBの内側から車両前方の実風景を見ることで、車両前方の実風景に重ねて表示される虚像Sを視認することができる。車両前方カメラ2は、例えば、車両前方の実風景を動画として撮像し、撮影した動画から得られる静止画を前方画像として取得することができる。車両前方カメラ2は、装置本体4に接続され、前方画像を装置本体4に逐次出力する。なお、車両前方カメラ2は、撮影した動画をそのまま装置本体4に出力してもよい。
【0016】
運転者カメラ3は、視点位置取得部の一例である。運転者カメラ3は、車両100の車室内に配置され、運転者Dの顔部を連続して撮像し、撮像した画像を運転者画像として取得するものである。運転者カメラ3は、例えば、車室内のステアリングコラム105の上部で、かつ運転者Dから見てステアリングホイール101の背後に配置される。運転者カメラ3は、例えば、運転者Dの顔部を動画として撮像し、撮像した動画から得られる静止画を運転者画像として取得することができる。運転者カメラ3は、装置本体4に接続され、運転者画像を装置本体4に逐次出力する。なお、運転者カメラ3は、撮影した動画をそのまま装置本体4に出力してもよい。
【0017】
装置本体4は、表示画像をウインドシールド104に投影するものである。装置本体4は、例えば車両100のインストルメントパネル102の内側に配置されている(図1)。インストルメントパネル102の上面には、開口102aが設けられている。装置本体4は、開口102aを介してウインドシールド104に向けて表示光Lを照射することで表示画像を投影する。本実施形態における装置本体4は、画像解析部10と、画像投影部11と、制御部12とを含んで構成される(図2)。画像解析部10及び制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、及び各種インタフェース等を有するマイクロコントローラ上で機能する部分である。
【0018】
画像解析部10は、検出部の一例であり、視点位置取得部の一例である。画像解析部10は、車両前方カメラ2、運転者カメラ3、及び制御部12に接続され、車両前方カメラ2及び運転者カメラ3から入力された画像信号を解析し、解析した結果を制御部12に出力するものである。画像解析部10は、車両前方カメラ2から画像信号として前方画像が入力された場合、当該前方画像に基づいて、公知の画像解析手法により、車両前方の実風景における重畳対象を検出する。この重畳対象は、例えば、車両前方の実風景における周辺車両(対向車、先行車を含む)、歩行者、信号機、標識、車線等が含まれる。周辺車両には、自車両の先行車両、駐車車両、並走車両(自転車等の軽車両を含む)等が含まれる。歩行者には、車道を横断する者、車道や歩道を歩く者等が含まれる。信号機は、交通信号機、踏切信号等が含まれる。標識は、道路標識が含まれる。車線111,112は、法令上の車線である。画像解析部10は、検出した重畳対象を重畳対象情報として制御部12に逐次出力する。この重畳対象情報には、例えば、重畳対象の有無や画面上の位置(座標)等が含まれる。
【0019】
画像解析部10は、運転者カメラ3から画像信号として運転者画像が入力された場合、当該運転者画像に基づいて、公知の画像解析手法により、運転者Dの視点位置EPを取得する。画像解析部10は、取得した運転者Dの視点位置EPを視点位置情報として制御部12に逐次出力する。この視点位置情報には、例えば、運転者Dの視点位置(座標)等が含まれる。
【0020】
画像投影部11は、画像表示部の一例である。画像投影部11は、制御部12に接続され、制御部12から入力された表示画像を、ウインドシールド104に投影するものである。画像投影部11は、表示画像を車両100のウインドシールド104に投影し、ウインドシールド104に投影された表示画像に対応する虚像Sを、虚像表示領域20内に表示し、車両100の運転者Dに視認させるものである。画像投影部11は、表示器30と、反射ミラー31と、駆動部32とを含んで構成される。表示器30は、ウインドシールド104に投影される表示画像を表示光Lとして出射するものである。反射ミラー31は、例えば、凹面鏡であり、表示器30から出射された表示光Lをウインドシールド104に向けて反射するものである。反射ミラー31は、例えば駆動部32に取り付けられている。駆動部32は、反射ミラー31の角度を変更するものである。駆動部32は、例えば、制御部12からの制御信号に応じて、公知の技術(例えば、特開2005-297619号公報、特開2013-160841号公報等)により反射ミラー31の角度を変更する。
【0021】
制御部12は、画像解析部10、画像投影部11、及びナビゲーション装置5に接続され、これらから各種情報を取得する。制御部12は、ナビゲーション装置5及び画像解析部10から取得した各種情報に基づいて画像投影部11を制御し、虚像表示領域20に虚像Sを表示させる表示画像制御を行う。制御部12は、例えば、ナビゲーション装置5から取得した地図情報や自車両100の位置情報、車両100の周辺の道路状況を示す情報等を虚像Sとして表示させる表示画像制御を行う。また、制御部12は、画像解析部10から取得した重畳対象情報に基づいて画像投影部11を制御し、重畳対象に重畳させる重畳虚像Soを虚像表示領域20に表示することで実風景における重畳対象に当該虚像Sを重畳させる表示画像制御を行う。重畳虚像Soは、虚像Sのうち、実風景における重畳対象に重畳されるものである。
【0022】
虚像表示領域20は、画像投影部11により虚像Sを表示することができ、かつ運転者Dに当該虚像Sを視認させることができる表示領域である。虚像表示領域20は、運転者Dの視点位置EPと、運転者Dの視点から見て車両100の前方の路面110に設定された重畳範囲ORとに基づいて設定される。重畳範囲ORは、車両前方の実風景において虚像Sを重畳させる目標範囲である。重畳範囲ORは、例えば基準点Gから前方に20m離れた後端G1から基準点Gから前方に100m離れた前端G2までの間を占める範囲である。この場合、重畳範囲ORは、前後方向の幅が80mである。以下、虚像表示領域20は、後述する虚像表示領域20A,20Bの総称である。
【0023】
虚像表示領域20A(20)は、運転者Dの視点位置EPのうち、最上端視点位置EP2および最下端視点位置EP3と、重畳範囲ORとに基づいて設定される。最上端視点位置EP2は、運転者Dの視点位置EPのうち、基準視点位置EP1に対して上側に位置する。最下端視点位置EP3は、運転者Dの視点位置EPのうち、基準視点位置EP1に対して下側に位置する。基準視点位置EP1、最上端視点位置EP2、及び最下端視点位置EP3は、アイボックスEBに含まれる。虚像表示領域20Aは、最上端視点位置EP2と重畳範囲ORの前後方向の前端G2とを結ぶ直線L2上に、当該虚像表示領域20Aの上端が位置し、かつ最下端視点位置EP3と重畳範囲ORの前後方向の後端G1とを結ぶ直線L1上に、当該虚像表示領域20Aの下端が位置するように形成されている。虚像表示領域20Aは、路面110上の任意の重畳範囲ORに虚像Sを重畳表示させるための表示領域であることから、重畳表示をしない非重畳虚像Snを表示させるには、より大きな表示領域が必要である。非重畳虚像Snは、実風景における重畳対象に対して重畳させる虚像Sではなく、例えば、車両100の車速や車両100が通行している道路の制限速度、車両100の状態を示す各種インジケータ等に対応するものである。車両100の車速や状態を示す情報は、例えば、車両100において各部を制御するECU(電子制御ユニット;Electronic Control Unit)等(不図示)から取得される。車両100が通行している道路の制限速度等は、ナビゲーション装置5から取得される。
【0024】
本実施形態の虚像表示領域20Bは、運転者Dが識別可能な非重畳虚像Snを表示させることを考慮し、虚像表示領域20Aより大きな領域を有する。虚像表示領域20Bにおける反射ミラー31とウインドシールド104との間の光路幅45Bは、虚像表示領域20Aにおける反射ミラー31とウインドシールド104との間の光路幅45Aより大きい。虚像表示領域20Bは、第1表示領域41と、第2表示領域42と、で構成される。本実施形態の制御部12は、画像解析部10から取得した視点位置情報に基づいて画像投影部11を制御し、視点位置EPの上下方向の移動に応じて、駆動部32により反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の位置を移動させる。
【0025】
第1表示領域41は、虚像表示領域20Bにおいて、重畳虚像Soが表示される領域である。第1表示領域41は、運転者Dの視点(EP)から見て車両前方の路面110に設定された重畳範囲ORに対応するものである。第1表示領域41は、上述した虚像表示領域20Aに相当する。第1表示領域41は、当該第1表示領域41の上端が、運転者Dの視点位置EPのうち基準視点位置EP1に対して上側に位置する最上端視点位置EP2と、重畳範囲ORの前後方向の前端G2とを結ぶ直線L2上に位置し、かつ、当該第1表示領域41の下端が、基準視点位置EP1に対して下側に位置する最下端視点位置EP3と、重畳範囲ORの前後方向の後端G1とを結ぶ直線L1上に位置する。第1表示領域41、すなわち虚像表示領域20Aは、運転者Dの視点位置がどの位置にあっても、設定された重畳範囲ORに重畳虚像Soを表示させることができる。
【0026】
第2表示領域42は、第1表示領域41の上下方向の少なくとも一方の端部に隣り合うように配置され、重畳虚像Soと異なる非重畳虚像Snが表示される領域である。虚像表示領域20Aに対して第2表示領域42を加えたものが虚像表示領域20Bに相当する。第2表示領域42は、虚像表示領域20Bの上下方向において、運転者Dが識別可能な非重畳虚像Snを表示できる有効表示幅Wを有する。第2表示領域42は、運転者Dの視点位置EPが基準視点位置EP1である場合、虚像表示領域20Bの上下方向において、第1表示領域41を挟んで第2表示領域42a,第2表示領域42bに分割される。第2表示領域42aは、視点位置EPが基準視点位置EP1から最上端視点位置EP2に移動するに伴って、有効表示幅Waが小さくなっていく。一方、第2表示領域42aは、視点位置EPが基準視点位置EP1から最下端視点位置EP3に移動するに伴って、有効表示幅Waが大きくなっていく。第2表示領域42bは、視点位置EPが基準視点位置EP1から最上端視点位置EP2に移動するに伴って、有効表示幅Wbが大きくなっていく。一方、第2表示領域42bは、視点位置EPが基準視点位置EP1から最下端視点位置EP3に移動するに伴って、有効表示幅Wbが小さくなっていく。
【0027】
制御部12は、運転者Dの視点位置EPが基準視点位置EP1より上方向に移動するに伴って、最上端視点位置EP2のときに第1表示領域41の上端が虚像表示領域20Bの上端に位置するように第1表示領域41を虚像表示領域20Bにおける上側に移動させる。制御部12は、視点位置EPの上方向に移動に応じて、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41を上側に移動させると、第1表示領域41の移動方向と反対側にある第2表示領域42bの有効表示幅Wbが大きくなる。
【0028】
また、制御部12は、運転者Dの視点位置EPが基準視点位置EP1より下方向に移動するに伴って、最下端視点位置EP2のときに第1表示領域41の下端が虚像表示領域20Bの下端に位置するように第1表示領域41を虚像表示領域20Bにおける下側に移動させる。制御部12は、視点位置EPの下方向の移動に応じて、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41を下側に移動させると、第1表示領域41の移動方向と反対側にある第2表示領域42aの有効表示幅Waが大きくなる。制御部12は、視点位置EPの移動に応じて、駆動部32により反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の位置を動かすことなく、移動前の虚像表示領域20Bと移動後の虚像表示領域20Bとの相対位置を変更する。
【0029】
次に、車両用表示装置1における表示画像制御の流れについて説明する。制御部12は、視点位置情報を取得した場合、前回取得した視点位置EPと今回取得した視点位置EPとを比較し、視点位置EPが上下方向に移動したかを判定する。制御部12は、視点位置EPが移動したと判定した場合、視点位置EPの移動方向と移動量に基づいて反射ミラー31の駆動方向と駆動量を算出する。制御部12は、算出した反射ミラー31の駆動方向と駆動量に基づいて、駆動部32を駆動し反射ミラー31の角度を変更する。反射ミラー31の角度が変更されると、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の位置が移動する。例えば、制御部12は、視点位置EPが基準視点位置EP1から最上端視点位置EP2に移動したと判定した場合、駆動部32を駆動し反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の上端が当該虚像表示領域20Bの上端に位置するように、第1表示領域41を上側に移動させる。この場合、虚像表示領域21(20B)は、図9に示す虚像表示領域22(20B)となり、第2表示領域42bの有効表示幅Wbが第2表示領域42の有効表示幅Wとなる。虚像表示領域22(20B)において、第2表示領域42aの有効表示幅Waは、最も狭くなる。一方、制御部12は、視点位置EPが基準視点位置EP1から最下端視点位置EP3に移動したと判定した場合、駆動部32を駆動し反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の下端が当該虚像表示領域20Bの下端に位置するように、第1表示領域41を下側に移動させる。この場合、虚像表示領域21(20B)は、図9に示す虚像表示領域23(20B)となり、第2表示領域42aの有効表示幅Waが第2表示領域42の有効表示幅Wとなる。虚像表示領域23(20B)において、第2表示領域42bの有効表示幅Wbは、最も狭くなる。
【0030】
以上説明した車両用表示装置1は、制御部12が、視点位置EPの上下方向の移動に応じて、駆動部32により反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の位置を移動させる。制御部12は、視点位置EPが基準視点位置EP1より上方向に移動するに伴って、最上端視点位置EP2のときに第1表示領域41の上端が虚像表示領域20Bの上端に位置するように第1表示領域41を虚像表示領域20Bにおける上側に移動させる。さらに、制御部12は、視点位置EPが基準視点位置EP1より下方向に移動するに伴って、最下端視点位置EP2のときに第1表示領域41の下端が虚像表示領域20Bの下端に位置するように第1表示領域41を虚像表示領域20Bにおける下側に移動させる。
【0031】
上記構成により、虚像表示領域全体を拡大した場合であっても、反射ミラー31のサイズを拡大することなく、運転者Dの視点位置変更に対応する表示機能を向上させることができ、あわせて画像投影部11の小型化を図ることができる。例えば、虚像表示領域20Aを虚像表示領域20Bに拡大する場合、虚像表示領域20Aにおける反射ミラー31とウインドシールド104との間の光路幅45lは、虚像表示領域20Aにおける光路幅45sよりも大きい(図7)。そこで、制御部12は、上述したように、視点位置EPの移動に伴って、反射ミラー31の角度を変更し、第1表示領域41を虚像表示領域20Bにおいて移動させることで、虚像表示領域20Bにおける光路幅45lが小さくなる。この結果、反射ミラー31の角度を変更することで対応することが可能となり、反射ミラー31のサイズをWs→Wl(Wl>Ws)に変更し、反射ミラー31を収容する画像投影部11を小型化することができる。
【0032】
本実施形態における車両用表示装置1は、第1表示領域41が、当該第1表示領域41の上端が、運転者Dの視点位置EPのうち基準視点位置EP1に対して上側に位置する最上端視点位置EP2と、重畳範囲ORの前後方向の前端G2とを結ぶ直線L2上に位置し、かつ、当該第1表示領域41の下端が、基準視点位置EP1に対して下側に位置する最下端視点位置EP3と、重畳範囲ORの前後方向の後端G1とを結ぶ直線L1上に位置する。これにより、制御部12は、第1表示領域41に重畳虚像Soを表示させることで、車両前方の実風景における路面110上の任意の重畳範囲ORに重畳虚像Soを表示させることができる。
【0033】
制御部12は、視点位置EPの移動に応じて、駆動部32により反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の位置を動かすことなく、移動前の虚像表示領域20Bと移動後の虚像表示領域20Bとの相対位置を変更する。これにより、視点位置EPの移動前後で、重畳表示に必要な第1表示領域41の表示幅を確保しつつ、非重畳虚像Snの表示に必要な第2表示領域42の有効表示幅Wを確保することが可能なる。
【0034】
なお、上記実施形態では、制御部12は、視点位置EPの上下方向の移動に応じて、虚像表示領域20Bにおける第1表示領域41の位置を移動させているが、これに限定されるものではない。例えば、制御部12は、視点位置EPの上下方向の移動に応じて、駆動部32により反射ミラー31の角度を変更し、虚像表示領域20Bの位置を移動させる構成であってもよい。制御部12は、視点位置EPが基準視点位置EP1より上方向に移動するに伴って、虚像表示領域22(20B)の上端が、最上端視点位置EP2と、重畳範囲ORの前後方向の前端G2とを結ぶ直線L2上に位置するように、当該虚像表示領域20Bの位置を移動させる。また、制御部12は、視点位置EPが基準視点位置EP1より下方向に移動するに伴って、虚像表示領域23(20B)の下端が、最下端視点位置EP3と、重畳範囲ORの前後方向の後端G1とを結ぶ直線L1上に位置するように、当該虚像表示領域20Bの位置を移動させる。上記構成により、上述した車両用表示装置1と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、車両用表示装置1は、表示画像を車両100のウインドシールド104に投影しているが、これに限定されず、例えばコンバイナ等に投影してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、車両用表示装置1は、自動車等の車両100に適用されているが、これに限定されず、例えば車両100以外の船舶や航空機等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用表示装置
2 車両前方カメラ
3 運転者カメラ
4 装置本体
5 ナビゲーション装置
10 画像解析部
11 画像投影部
12 制御部
20 虚像表示領域
20A,20B 虚像表示領域
30 表示器
31 反射ミラー
32 駆動部
41 第1表示領域
42 第2表示領域
45A,45B 光路幅
100 車両
104 ウインドシールド
110 路面
111,112 車線
D 運転者
EP 視点位置
EP1 基準視点位置
EP2 最上端視点位置
EP3 最下端視点位置
OR 重畳範囲
S 虚像
So 重畳虚像
Sn 非重畳虚像
W 有効表示幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9