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  • 特許-高周波電源装置及びその出力制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】高周波電源装置及びその出力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20231113BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020045557
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150031
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】安田 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】片渕 竜平
(72)【発明者】
【氏名】児島 寛之
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-103102(JP,A)
【文献】特表2017-512355(JP,A)
【文献】特開2020-004710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期パルス及びクロックパルスに基づいて対象装置に高周波パルスを出力する高周波電源装置であって、
前記高周波パルスの出力レベル情報及び出力タイミング情報を含む同期パルスを生成する同期パルス生成機構と、前記出力レベル情報に基づいて前記高周波パルスの出力レベルを設定するレベル設定信号を生成する出力レベル設定機構と、前記同期パルスの周期基準信号及び前記レベル設定信号を受信して前記高周波パルスを発振する発振機構と、を備え、
前記同期パルス生成機構は、前記同期パルスを形成する同期パルス形成回路と、前記同期パルスにおける周期基準時刻において周期基準信号を生成する周期基準信号生成器と、前記周期基準信号に基づいて出力停止時間を計時しつつ出力停止信号を前記出力レベル設定機構に発する計時機構と、を含み、
前記出力レベル設定機構は、前記出力レベル情報に応じて前記高周波パルスで設定される出力レベルを判別するレベル判別部と、前記レベル判別部の判別結果を受けて前記レベル設定信号を生成するレベル設定信号生成部と、を含み、
前記発振機構は、前記クロックパルスを生成するクロックパルス生成器と、前記周期基準信号、前記レベル設定信号及び前記クロックパルスを受信して、これらの信号に基づいて前記高周波パルスを形成する発振増幅器と、を含み、
前記出力レベル設定機構は、前記出力停止信号を受信している間は、前記レベル設定信号の発信を停止し、
前記クロックパルス生成器は、前記出力停止信号の発信中のリセット時刻において、前記クロックパルスの発生タイミングを任意の位相に設定する機能を有する
ことを特徴とする高周波電源装置。
【請求項2】
前記レベル設定信号は、前記高周波パルスの第1の出力レベルを規定する第1レベル設定信号と、第2の出力レベルを規定する第2レベル設定信号と、を含み、
前記レベル設定信号生成部は、前記第1レベル設定信号を生成する第1レベル設定信号生成器と、前記第2レベル設定信号を生成する第2レベル設定信号生成器と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記出力レベル設定機構は、前記高周波パルスの振幅値を0とするレベル0信号を生成するレベル0信号生成器をさらに含み、
前記レベル0信号生成器は、前記出力停止信号を受信中に前記レベル0信号を発信し、
前記発振機構は、前記レベル0信号を受信中に前記高周波パルスの出力を0とする
ことを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項4】
同期パルス及びクロックパルスに基づいて対象装置に高周波パルスを出力する高周波電源装置の出力制御方法であって、
前記同期パルスの波形に含まれる出力レベル情報から前記高周波パルスの出力レベルを設定するレベル設定信号を生成するとともに、出力タイミング情報から周期基準信号を生成し、
前記周期基準信号に基づいて出力停止時間を計時するとともに出力停止信号を生成し、
前記周期基準信号、前記レベル設定信号及び前記クロックパルスを受信して、これらの信号に基づいて前記高周波パルスを形成する際に、
前記出力停止信号を受信している間は、前記レベル設定信号の発信を停止するとともに、前記出力停止信号を発信中のリセット時刻において、前記クロックパルスの発生タイミングを任意の位相に設定する
ことを特徴とする高周波電源装置の出力制御方法。
【請求項5】
前記レベル設定信号は、前記高周波パルスの第1の出力レベルを規定する第1レベル設定信号と、第2の出力レベルを規定する第2レベル設定信号と、を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置の出力制御方法。
【請求項6】
前記出力停止信号を受信中に前記高周波パルスの振幅値が0となるレベル0信号を生成し、
前記レベル0信号を受信中に前記高周波パルスの出力を0とする
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の高周波電源装置の出力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生装置等に適用される高周波電源装置に関し、特に、同期パルス及びクロックパルスに基づいて対象装置に高周波パルスを出力する高周波電源装置及びその出力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電源装置は、超音波発振や誘導電力の発生あるいはプラズマの発生等の電源として適用されており、高周波パルスの出力周期を決定する同期パルスと、発振される高周波成分のパルス周期を決定するクロックパルスと、を組み合わせることにより、所定の周期及び振幅値で高周波成分を含む高周波パルスを出力可能とされた電源装置である。特に、プラズマ発生装置に適用される高周波電源としては、1つの発振周期の中にハイレベル(第1レベル)とローレベル(第2レベル)の振幅値を含むスイッチ方式高周波電源装置が知られている。
【0003】
このようなスイッチ方式高周波電源装置が適用されるプラズマ処理装置として、例えば特許文献1には、エッチングガスが充填されて被処理体である半導体ウェハが収容される処理室内に、被処理体を挟んで上部電極と下部電極とを対向させ、これら上部電極及び下部電極に高周波電源からの高周波電圧を印加して、上部電極及び下部電極間の放電によりエッチングガスをプラズマ化して被処理体をエッチング処理するプラズマエッチング装置が開示されている。こうした装置では、被処理体の全面で均一な処理を行うために、高周波電源からの印加電圧が安定していることが求められる。
【0004】
プラズマエッチング装置において、プラズマを安定して発生されることを意図して、例えば特許文献2には、高周波発生器とプラズマ処理チャンバとの間に、伝送路終端から見たプラズマの複素インピーダンスを高周波発生器の公称インピーダンスに変換するマッチングネットワークが接続され、プラズマ処理チャンバに高周波電力を供給する誘導コイルの電圧をフィードバック制御する技術が開示されている。この制御技術によれば、マッチングネットワークにより、誘導コイルに印加される電力波形の位相をフィードバック制御により揃えることが可能となるため、基板処理を安定化できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-214363号公報
【文献】特開2007-514300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したとおり、従来から知られている高周波電源装置では、同期パルスを生成する同期パルス用生成器とクロックパルスを生成するクロックパルス用生成器とが通常別体として構成されており、両者はそれぞれ独立して動作するため、同期パルスに基づくタイミングで出力される高周波パルスにおけるクロックパルスに基づいて生成される出力波形の位相は、当該高周波パルスの出力レベルの切り替え時において不揃いとなることが避けられない。その結果として、連続して発振される複数の高周波パルス間において、第1レベルの振幅によるパルス数と第2レベルの振幅によるパルス数とがバラバラとなってしまい、ジッタ発生の原因となっていた。
【0007】
このような高周波電源装置の発振構造に起因する不安定な出力波形による問題を解決するべく、例えば上記した特許文献2のような技術が適用されているが、プラズマ処理装置と高周波電源装置との間に追加的な構成(マッチングネットワーク等)を付加することが必須であり、電源制御も複雑にならざるを得ない。また、マッチングネットワークの応答速度よりも高速で高周波パルスの出力波形に変動が生じてしまうと対応できないという事象が発生するため、スイッチ方式の高周波電源装置を適用する際に生じる問題の根本的な解決となっていない。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたものであって、同期パルスとクロックパルスとを別々に生成する構造であっても、出力される高周波パルスの位相を常に揃えることが可能となる高周波電源装置及びその出力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の代表的な態様の1つは、同期パルス及びクロックパルスに基づいて対象装置に高周波パルスを出力する高周波電源装置であって、前記高周波パルスの出力レベル情報及び出力タイミング情報を含む同期パルスを生成する同期パルス生成機構と、前記出力レベル情報に基づいて前記高周波パルスの出力レベルを設定する出力レベル信号を生成する出力レベル設定機構と、前記同期パルスの周期基準信号及び前記出力レベル信号を受信して前記高周波パルスを発振する発振機構と、を備え、前記同期パルス生成機構は、前記同期パルスを形成する同期パルス形成回路と、前記同期パルスにおける周期基準時刻において周期基準信号を生成する周期基準信号生成器と、前記周期基準信号に基づいて出力停止時間を計時しつつ出力停止信号を前記出力レベル設定機構に発する計時機構と、を含み、前記出力レベル設定機構は、前記出力レベル信号に応じて前記高周波パルスで設定される出力レベルを判別するレベル判別部と、前記レベル判別部の判別結果を受けてレベル設定信号を生成するレベル設定信号生成部と、を含み、前記発振機構は、前記クロックパルスを生成するクロックパルス生成器と、前記周期基準信号、前記レベル設定信号及び前記クロックパルスを受信して、これらの信号に基づいて前記高周波パルスを形成する発振増幅器と、を含み、前記出力レベル設定機構は、前記出力停止信号を受信している間は、前記レベル設定信号の発信を停止することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の別の態様の1つは、同期パルス及びクロックパルスに基づいて対象装置に高周波パルスを出力する高周波電源装置の出力制御方法であって、前記同期パルスの波形に含まれる出力レベル情報から前記高周波パルスの出力レベルを設定する出力レベル信号を生成するとともに、出力タイミング情報から周期基準信号を生成し、前記出力レベル信号に基づいてレベル設定信号を生成するとともに、前記周期基準信号に基づいて出力停止時間を計時するとともに出力停止信号を生成し、前記周期基準信号、前記レベル設定信号及び前記クロックパルスを受信して、これらの信号に基づいて前記高周波パルスを形成する際に、前記出力停止信号を受信している間は、前記レベル設定信号の発信を停止することを特徴とする。
【0011】
このような構成を備えた本発明によれば、同期パルスに基づく周期基準信号、レベル設定信号及びクロックパルスを受信して、これらの信号に基づいて高周波パルスを形成する際に、周期基準信号に基づいて出力停止時間を計時するとともに出力停止信号を生成し、当該出力停止信号を受信している間はレベル設定信号の発信を停止するように構成したため、同期パルスとクロックパルスとを別々に生成する構造であっても、出力される高周波パルスの位相を常に揃えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の代表的な一例である実施例1による高周波電源装置の概要を示すブロック図である。
図2】実施例1による同期パルス生成機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施例1による出力レベル設定機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施例1による発振機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図5】実施例1による高周波電源装置の出力制御方法で得られる出力波形の一例を示すグラフである。
図6】実施例1による高周波電源装置の出力制御方法で得られる出力波形の変形例を示すグラフである。
図7】実施例2による高周波電源装置の概要を示すブロック図である。
図8】実施例2による出力レベル設定機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図9】実施例2による発振機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図10】実施例2による高周波電源装置の出力制御方法で得られる出力波形の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による高周波電源装置及びその出力制御方法の代表的な具体例を図1図10を用いて説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は、本発明の代表的な一例である実施例1による高周波電源装置の概要を示すブロック図である。図1に示すように、実施例1による高周波電源装置100は、その一例として、出力する高周波パルスPOの出力レベル情報及び出力タイミング情報を含む同期パルスP1を生成する同期パルス生成機構110と、同期パルスP1の出力レベル情報に基づいて高周波パルスPOの出力レベルを設定する出力レベル信号SL1、SL2を生成する出力レベル設定機構120と、同期パルスP1の出力タイミング情報に基づく周期基準信号S及び上記した出力レベル信号SL1、SL2を受信して高周波パルスPOを発振する発振機構130と、を備える。高周波電源装置100から出力された高周波パルスPOは、プラズマやレーザ発生装置、誘導加熱装置、あるいは超音波発振装置等の対象装置10に供給される。
【0015】
図2は、実施例1による同期パルス生成機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、実施例1による同期パルス生成機構110は、上記した同期パルスP1を形成する同期パルス形成回路112と、同期パルスP1における周期基準時刻において周期基準信号Sを生成する周期基準信号生成器114と、周期基準信号Sに基づいて出力停止時間を計時しつつ出力停止信号Sを出力レベル設定機構120に発する計時機構116と、を含む。また、同期パルス形成回路112から発せられた同期パルスP1は、後述する出力レベル設定機構120にも供給される。
【0016】
同期パルス形成回路112は、その一例として、出力レベル情報(振幅値)と出力タイミング情報(振幅の切り替えタイミング)とを含み、横軸の時間経過に対して縦軸の2つの出力レベルL1、L2を規定する略矩形の周期的なパルス波形を出力する。なお、図2においては、出力レベルをハイレベルL1とローレベルL2とした場合を例示したが、周期的な略矩形波であれば3つ以上の出力レベルによるパルス波形としてもよい。
【0017】
また、同期パルスP1は、矩形波に限定されるものでなく、出力レベル情報と出力タイミング情報とを含むものであれば正弦波や極短パルス等の任意の波形を含んでもよい。さらに、同期パルスP1は複数の信号波形から構成されてもよい。このような例として、複数の信号波形についてAND処理を行うことで、出力レベルと出力タイミングを得る手法等が例示できる。
【0018】
周期基準信号生成器114は、同期パルス形成回路112から受信した同期パルスP1に基づいて、その同期パルスP1の特徴の1つとしての周期の時刻基準である出力タイミング情報を特定し、その特定したタイミングで周期基準信号Sを出力する。このとき、周期の時刻基準の一例としては、例えばローレベルL2からハイレベルL1に切り替わる(立ち上がる)時刻等が挙げられる。また、周期基準信号Sは1周期中に1つだけに限定されるものではなく、例えば上記したローレベルL2からハイレベルL1への立ち上がり時刻に加えて、ハイレベルL1からローレベルL2への切り替え(立ち下がり)時刻を採用してもよい。
【0019】
計時機構116は、その一例として、周期基準信号生成器114からの周期基準信号Sを受けて、その受信時から所定の出力停止時間が経過するまでの間、後述する出力レベル設定機構120に出力停止信号Sを発信し続けるような構成を備えている。このとき、計時機構116は、所定の出力停止時間が後述するクロックパルス生成器132(図4参照)のクロック周期に対して任意のタイミングを選択できるように構成されている。これにより、出力停止信号Sの発信が停止するタイミングを任意に選択することが可能となる。
【0020】
図3は、実施例1による出力レベル設定機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、実施例1による出力レベル設定機構120は、同期パルスP1の振幅値(出力レベル情報)に応じて第1レベル設定指令S又は第2レベル設定指令Sを発するレベル判別部122と、出力停止信号S並びに第1レベル設定指令S及び第2レベル設定指令Sを受けてレベル設定信号(第1レベル設定信号SL1及び第2レベル設定信号SL2)を生成するレベル設定信号生成部124と、を含む。そして、レベル設定信号生成部124は、第1レベル設定指令Sを受信中に第1レベル設定信号SL1を生成する第1レベル設定信号生成器126と、第2レベル設定指令Sを受信中に第2レベル設定信号SL2を生成する第2レベル設定信号生成器128と、をさらに含む。
【0021】
レベル判別部122は、同期パルス形成回路112からの同期パルスP1を受信し、当該同期パルスP1の出力レベルがどのレベルにあるかに応じて所定の設定指令をリアルタイムで発信するように構成されている。その一例として、実施例1では、レベル判別部122は、同期パルスP1がハイレベルL1の間は第1レベル設定指令Sを発信し、同期パルスP1がローレベルL2に切り替わると第2レベル設定指令Sを発信する。
【0022】
第1レベル設定信号生成器126は、レベル判別部122から第1レベル設定指令Sを受信すると第1レベル設定信号SL1を生成する。同様に、第2レベル設定信号生成器128は、レベル判別部122から第2レベル設定指令Sを受信すると第2レベル設定信号SL2を生成する。このとき、レベル設定信号生成部124は、同期パルス生成機構110から出力停止信号Sを受信している間は、第1レベル設定信号生成器126で生成された第1レベル設定信号SL1あるいは第2レベル設定信号生成器128で生成された第2レベル設定信号SL2を発振機構130に出力しないように構成される。
【0023】
図4は、実施例1による発振機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、実施例1による発振機構130は、所定の高周波範囲のクロックパルスP2を生成するクロックパルス生成器132と、同期パルス生成機構110からの周期基準信号S、出力レベル設定機構120からの第1レベル設定信号SL1及び第2レベル設定信号SL2、並びに上記クロックパルスP2を受信して、これらの信号に基づいて高周波パルスPOを形成する発振増幅器134と、を含む。
【0024】
クロックパルス生成器132は、高周波パルスPOの出力に応じた高周波(数百kHz~数十MHz)のクロックパルスP2を発生する手段であって、例えば13.56MHzのクロックパルスP2を発生する。また、クロックパルス生成器132は、上記した所定の高周波での等間隔のクロックパルスP2を発生するとともに、任意の時刻trst図5又は図6参照)でクロックパルスP2の発生タイミングをリセット(任意の位相に設定)する機能を有する。そして、発振増幅器134は、周期基準信号Sに基づいて高周波パルスPOの発振タイミングを決定するとともに、第1レベル設定信号SL1及び第2レベル設定信号SL2に基づいてクロックパルスP2の振幅値を増幅することにより、高周波パルスPOを生成する。
【0025】
図5は、実施例1による高周波電源装置の出力制御方法で得られる出力波形の一例を示すグラフである。実施例1による高周波電源装置の出力制御方法では、その一例として、まず図5(a)に示すように、同期パルス生成機構110の同期パルス形成回路112で形成された同期パルスP1は、時間TL1の区間中はハイレベルL1となり、時間TL2の区間中はローレベルL2となる周期的なパルス信号として形成される。そして、当該同期パルスP1から、上述のとおり、例えばパルス1周期の時刻基準であるハイレベルL1への立ち上がり時刻が抽出され、周期基準信号生成器114が当該立ち上がり時刻ごとに周期基準信号Sを発信する。
【0026】
一方、同期パルスP1は出力レベル設定機構120にも供給されて、当該出力レベル設定機構120のレベル判別部122で時刻ごとの出力レベルが設定され、第1レベル設定信号生成器126あるいは第2レベル設定信号生成器128から第1レベル設定信号SL1又は第2レベル設定信号SL2が発振機構130に発信される。すなわち、図5(a)を参照すれば、時間TL1の区間では第1レベル設定信号SL1が発信され、時間TL2の区間では第2レベル設定信号SL2が発信されることになる。
【0027】
続いて、発振機構130の発振増幅器134において、受信した第1レベル設定信号SL1あるいは第2レベル設定信号SL2に応じて、クロックパルスP2の振幅値が増幅される。すなわち、第1レベル設定信号SL1を連続的に受信した場合、図5(b)に示すように、クロックパルスP2の平均高さがハイレベルL1となる連続パルスが出力される。一方、第2レベル設定信号SL2を連続的に受信した場合、図5(c)に示すように、クロックパルスP2の平均高さがローレベルL2となる連続パルスが出力される。
【0028】
ここで、図5(d)に示すように、計時機構116から出力停止時間Tstとなる出力停止信号Sが発信された場合、当該出力停止時間Tstの期間中の任意の時刻trst(この時刻を「リセット時刻trst」と定義する)において、クロックパルス生成器132から生成されるクロックパルスP2がリセットされる。そして、これらの動作を、同期パルスP1の生成から時間変化に伴い連続的に実行されると、図5(e)に示すように、発振機構130が周期基準信号Sを受信した時刻から高周波パルスPOの出力が開始され、時間TL1の区間ではハイレベルL1の連続パルスが出力される。同様に、時間TL2の区間ではローレベルL2の連続パルスが出力される。
【0029】
このとき、上述のように、出力レベル設定機構120において、出力停止信号Sを受信している間は第1レベル設定信号SL1を発信しないように構成されているため、時間TL1の区間の開始から出力停止時間Tstが経過するまでは、ハイレベルL1による連続パルスが出力されないこととなる。ここで、このとき、リセット時刻trstのタイミングは、出力停止時間Tstの終了後に最初に出力される高周波パルスPOの位相θstに応じて決定される。すなわち、クロックパルスP2の位相をリセット時刻trstにおいてリセットすることにより、出力停止時間Tst経過後の高周波パルスPOの位相が常に同位相となる。
【0030】
図6は、実施例1による高周波電源装置の出力制御方法で得られる出力波形の変形例を示すグラフである。図6に示す変形例による高周波電源装置の出力制御方法では、まず図6(a)に示すように、同期パルス生成機構110の同期パルス形成回路112で形成された同期パルスP1から、図5に示した場合と同様に、例えばパルス1周期の時刻基準であるハイレベルL1への立ち上がり時刻が抽出され、周期基準信号生成器114が当該立ち上がり時刻ごとに周期基準信号Sを発信する。そして、出力レベル設定機構120では、時間TL1の区間では第1レベル設定信号SL1が発信され、時間TL2の区間では第2レベル設定信号SL2が発振機構130に発信される。
【0031】
続いて、図5に示した場合と同様に、発振機構130の発振増幅器134において、受信した第1レベル設定信号SL1あるいは第2レベル設定信号SL2に応じて、クロックパルスP2の振幅値が増幅される。そして、図6(b)に示すようなクロックパルスP2の平均高さがハイレベルL1となる連続パルスと、図6(c)に示すようなクロックパルスP2の平均高さがローレベルL2となる連続パルスが出力される。
【0032】
ここで、図6(d)に示すように、計時機構116から出力停止時間Tstとなる出力停止信号Sが発信されると、図5に示した場合と同様に、出力停止時間Tstの期間中の任意の時刻trst(この時刻を「リセット時刻trst」と定義する)において、クロックパルス生成器132から生成されるクロックパルスP2がリセットされる。そして、出力レベル設定機構120において、出力停止信号Sを受信している間は第1レベル設定信号SL1を発信しないように構成されているため、同期パルスP1の生成から時間変化に伴い連続的に実行されると、図6(e)に示すように、発振機構130が周期基準信号Sを受信した時刻から高周波パルスPOの出力が開始され、時間TL1の区間ではハイレベルL1の連続パルスが出力される。同様に、時間TL2の区間ではローレベルL2の連続パルスが出力される。
【0033】
このとき、図6に示す変形例では、リセット時刻trstのタイミングが、出力停止時間Tstの終了後に最初に出力される高周波パルスPOの位相θstが常に位相0となるように設定される。これにより、クロックパルスP2の位相をリセット時刻trstにおいてリセットすることにより、出力停止時間Tst経過後の高周波パルスPOの位相が常に位相0となるように安定して出力可能となるが、一方で、図6(e)に示すように、出力位相を位相0に揃えるための待機時間αだけ出力が遅れることになる。
【0034】
上記のような構成を備えることにより、実施例1による高周波電源装置及びその出力制御方法は、同期パルスP1に基づく周期基準信号S、第1レベル設定信号SL1、第2レベル設定信号SL2及びクロックパルスP2を受信して、これらの信号に基づいて高周波パルスPOを形成する際に、周期基準信号Sに基づいて計時される出力停止時間TstをクロックパルスP2のクロック周期の整数倍となるように設定し、出力停止信号Sを受信している間は、出力レベル設定機構が第1レベル設定信号SL1又は第2レベル設定信号SL2の発信を停止するように構成したため、同期パルスとクロックパルスとを別々に生成する構造であっても、出力される高周波パルスの位相を常に揃えることが可能となる。
【0035】
<実施例2>
図7は、実施例2による高周波電源装置の概要を示すブロック図である。ここで、実施例2による高周波電源装置200において、実施例1と同一あるいは同様の構成を備えるものについては、実施例1と同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0036】
図7に示すように、実施例2による高周波電源装置200は、同期パルス生成機構110と、出力レベル設定機構120と、発振機構130と、を備える。実施例2による高周波電源装置200においては、出力レベル設定機構120から発振機構130にレベル0信号SL0を発信する点で、実施例1による高周波電源装置100と異なる。
【0037】
図8は、実施例2による出力レベル設定機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、実施例2による出力レベル設定機構120は、出力停止信号S及び同期パルスP1を受信し、同期パルスP1の振幅値(出力レベル)に応じて第1レベル設定指令S又は第2レベル設定指令Sを発するレベル判別部122と、出力停止信号S並びに第1レベル設定指令S及び第2レベル設定指令Sを受けてレベル設定信号(レベル0信号SL0、第1レベル設定信号SL1及び第2レベル設定信号SL2)を生成するレベル設定信号生成部124と、を含む。そして、レベル設定信号生成部124は、出力停止信号STに基づいてレベル0信号SL0を生成するレベル0信号生成器223と、実施例1と同様の第1レベル設定信号生成器126及び第2レベル設定信号生成器128と、をさらに含む。
【0038】
レベル判別部122は、実施例1の場合と同様に、同期パルス形成回路112からの同期パルスP1を受信して、当該同期パルスP1の出力レベルがどのレベルにあるかに応じて、同期パルスP1がハイレベルL1の間は第1レベル設定指令Sを発信し、同期パルスP1がローレベルL2に切り替わると第2レベル設定指令Sを発信する。
【0039】
レベル0信号生成器223は、レベル設定信号生成部124が出力停止信号Sを受信している間に起動し、当該出力停止信号Sを受信している間に高周波パルスPOの振幅値を0とするレベル0信号SL0を発信するように構成されている。一方、第1レベル設定信号生成器126及び第2レベル設定信号生成器128は、実施例1の場合と同様に、レベル判別部122からの第1レベル設定指令S又は第2レベル設定指令Sを受信すると、発振機構130に第1レベル設定信号SL1又は第2レベル設定信号SL2を発信するように構成されている。これにより、レベル設定信号生成部124は、同期パルス生成機構110から出力停止信号Sを受信している間は、レベル0信号SL0のみを発振機構130に出力し、第1レベル設定信号SL1あるいは第2レベル設定信号SL2は出力しない。
【0040】
図9は、実施例2による発振機構の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図9に示すように、実施例2による発振機構130は、クロックパルス生成器132と、同期パルス生成機構110からの周期基準信号S、出力レベル設定機構120からのレベル0信号SL0、第1レベル設定信号SL1及び第2レベル設定信号SL2、並びに上記クロックパルスP2を受信して、これらの信号に基づいて高周波パルスPOを形成する発振増幅器234と、を含む。
【0041】
実施例2における発振増幅器234は、周期基準信号Sに基づいて高周波パルスPOの発振タイミングを決定するとともに、レベル0信号SL0を受信中は、高周波パルスPOの振幅値を0とする。一方、第1レベル設定信号SL1及び第2レベル設定信号SL2を受信中には、これらの信号に基づいてクロックパルスP2の振幅値をハイレベルL1又はローレベルL2に増幅することにより、高周波パルスPOを生成する。
【0042】
図10は、実施例2による高周波電源装置の出力制御方法で得られる出力波形の一例を示すグラフである。実施例2による高周波電源装置の出力制御方法では、図10(a)~図10(d)に示す同期パルスP1及び出力停止信号Sと、高周波パルスPOのハイレベルL1及びローレベルL2に関する振幅値の増幅との関係については、実施例1の場合と同様であるため、再度の説明は省略する。
【0043】
一方、実施例2による高周波電源装置の出力制御方法においては、出力停止信号STが出力されている間には、出力レベル設定機構が出力レベルを0とするレベル0信号SL0を発振機構に出力するよう制御するため、図9(e)に示すように、直前の高周波パルスPOの出力区間(時間TL2)の終端において、出力レベルの切り替え(スイッチング)による見かけ上のはね返りパルス(ダンピングパルスP)が発生したとしても、実際の出力においては振幅値0として誤ったパルス出力を抑制した制御を行うことができる。
【0044】
なお、上記した実施の形態及びこれらの変形例における記述は、本発明に係る高周波電源装置及びその出力制御方法の一例であって、本発明は各実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形を行うことが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0045】
例えば、上記した実施例1及び2では、ハイレベルL1の出力当初に出力停止時間Tstを設ける場合を例示したが、当該出力停止時間TstをローレベルL2の出力当初、あるいはハイレベルL1及びローレベルL2の両者の出力当初にそれぞれ設けるようにしてもよい。これにより、高周波パルスPOの出力時における1周期ごとの波数を一定値に維持する制御が可能となる。
【0046】
また、実施例1及び2で例示した構成は、それぞれ独立した発明の構成ではなく、互いの特徴を組み合わせて1つの高周波電源装置として適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 対象装置
100、200、300 高周波電源装置
110 同期パルス生成機構
112 同期パルス形成回路
114 周期基準信号生成器
116 計時機構
120 出力レベル設定機構
122 レベル判別部
124 レベル設定信号生成部
126 第1レベル設定信号生成器
128 第2レベル設定信号生成器
130 発振機構
132 クロックパルス生成器
134、234 発振増幅器
223 レベル0信号生成器
PO 高周波パルス
P1 同期パルス
P2 クロックパルス
周期基準信号
出力停止信号
L0 レベル0信号
L1 第1レベル設定信号
L2 第2レベル設定信号
st 出力停止時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10