(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】複数パルスガス発生装置
(51)【国際特許分類】
F02K 9/95 20060101AFI20231113BHJP
F02K 9/28 20060101ALI20231113BHJP
B64G 1/00 20060101ALN20231113BHJP
F42B 15/00 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
F02K9/95
F02K9/28
B64G1/00 F
F42B15/00
(21)【出願番号】P 2020046128
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】西川 世起
(72)【発明者】
【氏名】三原 千矢子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑
(72)【発明者】
【氏名】家城 克典
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084744(JP,A)
【文献】特開2013-117291(JP,A)
【文献】特開2010-228722(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2503135(EP,A2)
【文献】特開2013-024034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00
F02K 9/12
F02K 9/28
F02K 9/95
F42B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器と、
前記圧力容器内に配置された第1推進薬と、
前記圧力容器内に配置された第2推進薬と、
前記第1推進薬と前記第2推進薬とを分離する隔膜と、
前記第2推進薬を着火する着火ガスを生成する点火装置と、
生成された前記着火ガスを前記第2推進薬に噴射する少なくとも1つの噴射孔を有する着火ガス噴射装置と、
を備え、
前記隔膜は、
前記第2推進薬の燃焼ガスまたは前記着火ガスの圧力により凹形状に変形されるべき複数の凹変形部と、
前記第2推進薬の燃焼ガスまたは前記着火ガスの圧力により凸形状に変形されるべき複数の凸変形部と、
を有し、
1つの前記凹変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に噴射される前記着火ガスの流量は、1つの前記凸変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に噴射される前記着火ガスの流量よりも多い
複数パルスガス発生装置。
【請求項2】
前記噴射孔は、前記隔膜の外側を囲むように環状に複数配置されている請求項1に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項3】
1つの前記凹変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に前記着火ガスを噴射する噴射孔の断面積の合計は、1つの前記凸変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に前記着火ガスを噴射する噴射孔の断面積の合計より大きい
請求項2に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項4】
1つの前記凹変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に前記着火ガスを噴射する噴射孔の数は、1つの前記凸変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に前記着火ガスを噴射する噴射孔の数より多い
請求項2または3に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項5】
前記着火ガス噴射装置は、前記噴射孔を複数備え、
前記複数の噴射孔は、
前記凹変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に前記着火ガスを噴射する第1噴射孔と、
前記凸変形部の外側に設けられた前記第2推進薬に前記着火ガスを噴射する第2噴射孔と、
を含み、
前記第1噴射孔が前記着火ガスを噴射する噴射方向と前記隔膜の筒状部分の側面との成す角度は、前記第2噴射孔が前記着火ガスを噴射する噴射方向と前記隔膜の前記筒状部分の側面との成す角度より大きい
請求項2から4のいずれか1項に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項6】
前記隔膜の筒状部分の側面に沿った環状方向において、前記凸変形部が隣接する2つの噴射孔の間に設けられている
請求項2から4のいずれか1項に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項7】
前記噴射孔は、
前記隔膜を囲むように環状に形成され、
前記隔膜の筒状部分の側面に沿った環状方向において、前記凸変形部の位置のうち少なくとも一部に、前記噴射孔の壁面から突出した噴射抵抗部を備える
請求項1に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項8】
前記噴射抵抗部は、前記隔膜の前記筒状部分の基軸に直行する第1方向において、前記噴射孔を覆う
請求項7に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項9】
前記着火ガス噴射装置は、前記点火装置から前記着火ガスが流入する流入口を有する流路を備え、
前記流路は、前記流入口と前記噴射孔とを接続し、
前記流入口は、前記隔膜の筒状部分の側面に沿った環状方向において、前記凹変形部の位置に設けられている
請求項1から6のいずれか1項に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項10】
前記流路は、前記環状方向における前記凸変形部の位置と前記流入口との間に、通過する前記着火ガスの流量を減少させる流路抵抗部を備える
請求項9に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項11】
前記凸変形部の剛性は、前記凹変形部の剛性より高い
請求項1から10のいずれか1項に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項12】
前記凸変形部は、前記隔膜の筒状部分の基軸方向に延びる補強部を備える
請求項11に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項13】
前記隔膜は、強化繊維を含むエラストマーで形成され、
前記補強部における前記基軸方向に延びる前記強化繊維の割合は、前記隔膜のうち前記補強部を除く部分よりも多い
請求項12に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項14】
前記凹変形部には、他の位置よりも厚さが薄い脆弱部が設けられている
請求項11に記載の複数パルスガス発生装置。
【請求項15】
圧力容器と、
前記圧力容器内に配置された第1推進薬と、
前記圧力容器内に配置された第2推進薬と、
前記第1推進薬と前記第2推進薬とを分離する隔膜と、
前記第2推進薬を着火する着火ガスを生成する点火装置と、
生成された前記着火ガスを前記第2推進薬に噴射する着火ガス噴射装置と、
を備え、
前記隔膜は、
前記第2推進薬の燃焼ガスまたは前記着火ガスの圧力により凹形状に変形されるべき複数の凹変形部と、
前記第2推進薬の燃焼ガスまたは前記着火ガスの圧力により凸形状に変形されるべき複数の凸変形部と、
を有し、
前記凸変形部の剛性は、前記凹変形部の剛性より高い
複数パルスガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数パルスガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼して推進力を発生させる複数パルスガス発生装置は、ロケットモータに使用され得る。
【0003】
特許文献1には、ロケットモータの固体燃料に点火する点火器が開示されている。この点火器は、トロイダル形状の点火薬と、円周上に配置された点火薬の燃焼ガスを噴射する複数の噴射口とを備える。複数の噴射口は、噴射口が奇数個の場合に等間隔に配置され、偶数個の場合に不等間隔に配置される。
【0004】
特許文献2には、2パルスロケットモータが開示されている。この2パルスロケットモータは、圧力容器の内周面に装填された第2推進薬と、第2推進薬の端面に配置された第2点火装置と、第2推進薬の初期燃焼面全体と第2点火装置を覆う隔膜と、初期燃焼面全体と第2点火装置を覆う隔膜の全体を覆うように装填された第1推進薬とを備える。第1推進薬及び第2推進薬は、共に内面燃焼型または内端面燃焼型(ここで、内端面燃焼型とは、内面燃焼と端面燃焼とが併用される燃焼型を意味する。)の推進薬形状である。隔膜は、前記第2推進薬の内周面を覆う内側隔膜と第2推進薬の後面を覆う後側隔膜とにより構成される。後側隔膜と内側隔膜が会合する端部は、全周囲に亘って接合されている。
【0005】
特許文献3には、2パルスロケットモータとして使用され得るガスジェネレータが開示されている。このガスジェネレータは、圧力容器と、筒状形状を有する外側推進薬と、外側推進薬の内側に配置された内側推進薬と、外側推進薬と内側推進薬とを隔離する隔膜と、内側推進薬に点火する第1点火装置と、外側推進薬に点火する第2点火装置とを備える。内側推進薬は圧力容器内の燃焼空間に面する前方端面と側面とを有し、内側推進薬の側面は燃焼空間から隔離されている。隔膜は、外側推進薬の前方端面を覆う第1隔膜と、第1隔膜と脆弱部を介して接続され、外側推進薬の内周面と前方端面とを覆う第2隔膜とを備える。第1隔膜の端部と第2隔膜の端部とは全周囲にわたって互いに接合されている。脆弱部は燃焼空間と、外側推進薬の前方端面に面する。
【0006】
特許文献4には、複数のパルスユニットが接続されたマルチパルスロケットモータが開示されている。初段パルスユニット以外の複数のパルスユニットは、点火装置と推進薬を覆う隔膜を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-218952号公報
【文献】特許第4719182号公報
【文献】特許第6360418号公報
【文献】特許第5602094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の状況に鑑み、推進薬の燃焼ガスを安定して供給できる複数パルスガス発生装置を提供することを目的の1つとする。他の目的については、以下の記載及び実施の形態の説明から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0010】
上記目的を達成するための一実施の形態による複数パルスガス発生装置(1)は、圧力容器(2)と、隔膜(5)と、第1推進薬(3)と、第2推進薬(4)と、点火装置(9)と、着火ガス噴射装置(8)とを備える。第1推進薬(3)と第2推進薬(4)とは圧力容器内に配置されている。隔膜(5)は、第1推進薬と第2推進薬とを分離する。点火装置(8)は第2推進薬を着火する着火ガスを生成する。着火ガス噴射装置(8)は生成された着火ガスを第2推進薬に噴射する少なくとも1つの噴射孔(81)を有する。隔膜(5)は、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凹形状に変形されるべき複数の凹変形部(55)と、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凸形状に変形されるべき複数の凸変形部(56)とを有する。1つの凹変形部の外側に設けられた第2推進薬に噴射される着火ガスの流量は、1つの凸変形部の外側に設けられた第2推進薬に噴射される着火ガスの流量よりも多い。
【0011】
上記目的を達成するための一実施の形態による複数パルスガス発生装置(1)は、圧力容器(2)と、隔膜(5)と、第1推進薬(3)と、第2推進薬(4)と、点火装置(9)と、着火ガス噴射装置(8)とを備える。第1推進薬(3)と第2推進薬(4)とは圧力容器内に配置されている。隔膜(5)は、第1推進薬と第2推進薬とを分離する。点火装置(9)は第2推進薬を着火する着火ガスを生成する。着火ガス噴射装置(8)は、生成された着火ガスを第2推進薬に噴射する少なくとも1つの噴射孔(81)を有する。隔膜(5)は、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凹形状に変形されるべき複数の凹変形部(55)と、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凸形状に変形されるべき複数の凸変形部(56)とを有する。凸変形部の剛性は凹変形部の剛性より高い。
【発明の効果】
【0012】
上記の形態によれば、推進薬の燃焼ガスが安定して供給され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施の形態における複数パルスガス発生装置の構成図である。
【
図2】一実施の形態における隔膜の部分断面図である。
【
図3】一実施の形態における複数パルスガス発生装置の動作を説明するである。
【
図4】一実施の形態における
図3のC-C端部断面図である。
【
図5】一実施の形態における凹変形部と凸変形部とを説明する図である。
【
図6】一実施の形態における
図1のA-A端部断面図である。
【
図7】一実施の形態における
図1のB-B断面図である。
【
図8】一実施の形態における複数パルスガス発生装置の左側面図である。
【
図9】一実施の形態における
図1のA-A端部断面図である。
【
図10】一実施の形態における
図1のA-A端部断面図である。
【
図11】一実施の形態における
図1のA-A端部断面図である。
【
図12】一実施の形態における
図1のB-B断面図である。
【
図13】一実施の形態における
図1のB-B断面図である。
【
図14A】一実施の形態における着火ガス噴射装置の構成図である。
【
図14B】一実施の形態における着火ガス噴射装置の構成図である。
【
図15】一実施の形態における
図1のA-A端部断面図である。
【
図16】一実施の形態における隔膜の断面図である。
【
図17】一実施の形態における隔膜の断面図である。
【
図18】一実施の形態における隔膜の筒状部分の製造方法を表すフローチャートである。
【
図19】一実施の形態における隔膜の断面図である。
【
図20】一実施の形態における
図1のA-A端部断面図である。
【
図21】一実施の形態における隔膜の断面図である。
【
図22】一実施の形態における複数パルスガス発生装置の構成図である。
【
図23】一実施の形態における3パルスガス発生装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1に示すように、複数パルスガス発生装置1は、圧力容器2と、第1推進薬3と、第2推進薬4と、第1推進薬3と第2推進薬4とを分離する隔膜5と、燃焼室6と、第1点火装置7と、着火ガス噴射装置8と、第2点火装置9と、燃焼ガス排出部10とを備えてもよい。複数パルスガス発生装置1は、第1推進薬3と、第2推進薬4とを燃焼させることで、2段階に燃焼ガスを供給することができる2パルスガス発生装置を含む。複数パルスガス発生装置1は、複数パルスロケットモータに使用されてもよい。
【0015】
隔膜5は、
図2に示すように、筒状部分52と、環状部分53とを備える。筒状部分52は、筒形状、例えば円筒形状に形成され、一端で環状部分53に接続され、他端で圧力容器2に接続されている。環状部分53は、環形状、例えばドーナツ状に形成され、内側の端部で筒状部分52に接続され、外側の端部で圧力容器2に接続されている。筒状部分52と、環状部分53との接続部分は、破断されやすい破断部51として形成されている。隔膜5は、例えば弾性体で形成され、EPDMゴム、シリコーンゴムなどが用いられる。理解を容易にするため、
図1に示すように、円筒座標系を用いて複数パルスガス発生装置1を説明する。筒状部分52の基軸15に沿って、第1点火装置7から燃焼室6に向かう方向を+z方向とし、基軸15に直行し、基軸15から離れる方向を+r方向とし、基軸15の周りを回転する方向をθ方向とする。また、+z方向を後方、-z方向を前方とも呼ぶ。
【0016】
複数パルスガス発生装置1は、第1推進薬3を燃焼して燃焼ガスを生成し、生成した燃焼ガスを出力する。第1推進薬3は、
図1に示すように、圧力容器2の内部、例えば圧力容器2の内壁に接合するように配置されている。複数パルスガス発生装置1は、第1点火装置7が第1推進薬3に点火し、燃焼室6において第1推進薬3を燃焼して燃焼ガスを生成する。生成された第1推進薬3の燃焼ガスは、燃焼ガス排出部10から排出される。第1推進薬3は、隔膜5の内側に設けられ、例えば側面が隔膜5に接合していてもよい。第2推進薬4は、圧力容器2の内部、例えば圧力容器2の内壁に接合し、かつ、隔膜5の外側に設けられている。第2推進薬4は、隔膜5により第1推進薬3と分離されているため、燃焼されない。隔膜5は、第2推進薬4の初期燃焼面全体を覆うように構成されてもよい。
【0017】
図3に示すように、第1推進薬3の点火後、第2点火装置9は任意のタイミングで着火ガスを生成する。第2点火装置9が生成した着火ガスは、着火ガス噴射装置8の流路82を介して第2推進薬4に噴射され、第2推進薬4を点火する。着火ガスまたは第2推進薬4の燃焼ガスが隔膜5を押圧することで、隔膜5は座屈変形されて破断部51で破断される。隔膜5は、破断部51で破断されると、隔膜5を貫通する貫通孔54が形成される。これにより、第2推進薬4の燃焼ガスは、隔膜5の貫通孔54を通過して、燃焼ガス排出部10から排出される。第2点火装置9は、第1点火装置7が第1推進薬3に点火してから所望の時間が経過したときに着火ガスを生成してもよい。
【0018】
破断部51で破断された隔膜5の筒状部分52は、
図4に示すように、座屈変形され得る。座屈変形された筒状部分52は、例えば、複数の凹変形部55と、複数の凸変形部56とを備える。凹変形部55は、凸変形部56よりも基軸15に直行する方向(-r方向)に大きく変形している。基軸15に直行し、筒状部分52の側面に沿った環状方向(θ方向)において、凹変形部55は凹形状に変形されている。凸変形部56は、基軸15に直行し、筒状部分52の側面に沿った環状方向(θ方向)において、凸形状に変形されている。
【0019】
隔膜5の変形を制御することで、第2推進薬4の燃焼ガスを安定して供給することを発明者らは見出した。隔膜5は、第2推進薬4の燃焼ガスが燃焼室6に供給されるとき、座屈により変形する。変形後の隔膜5の形状に応じて形成された貫通孔54を介して、第2推進薬4の燃焼ガスが燃焼室6に供給される。このため、変形後の隔膜5の形状を制御することで、第2推進薬4の燃焼ガスの供給を制御し得る。
【0020】
例えば、座屈変形した隔膜5の形状に応じて、着火ガスと第2推進薬4の燃焼ガスとの流れが変更し得る。隔膜5の変形を制御することで、着火ガスと第2推進薬4の燃焼ガスとの流れを制御することができる。例えば、複数パルスガス発生装置1は、凹変形部55が環状方向(θ方向)において等間隔に設けられるように構成されてもよく、凸変形部56は環状方向において等間隔に設けられるように構成されてもよい。複数パルスガス発生装置1は、凹変形部55と凸変形部56とは、環状方向(θ方向)において、等間隔に交互に設けられるように構成されてもよい。凹変形部55が形成される数は、
図4に示すように、4でもよい。
【0021】
θ方向における凹変形部55の位置は、
図5に示すように、凹変形部55の凹頂点55a近辺を含んでもよい。凹頂点55aは凹変形部55のうち、最も基軸15に近い位置を表す。凸頂点56aは凸変形部56のうち、最も基軸15から遠い位置を表す。中間点500(例えば中間点500a、500b、500c)は、θ方向において、凹頂点55aと凸頂点56aとの中間位置を表し、凹頂点55aから中間点500までの長さは凸頂点56aから中間点500までの長さと等しい。θ方向における凹変形部55の位置は、凹頂点55aに隣接する一方の凸頂点56aと凹頂点55aとの中間点500aから、他方の凸頂点56aと凹頂点55aとの中間点500bまでの範囲を含んでもよい。θ方向における凸変形部56の位置は、凸頂点56aに隣接する一方の凹頂点55aと凸頂点56aとの中間点500bから、他方の凹頂点55aと凸頂点56aとの中間点500cまでの範囲を含んでもよい。
【0022】
(着火ガスの流量による制御)
着火ガス噴射装置8は、凹変形部55の外側に設けられた第2推進薬4に噴射する着火ガスの流量が、凸変形部56の外側に設けられた第2推進薬4に噴射する着火ガスの流量より多くなるように構成されてもよい。着火ガス噴射装置8は、
図1に示すように、隔膜5の-z方向の端部に設けられ、着火ガスを第2点火装置9から第2推進薬4に送る流路82を備える。流路82は、第2点火装置9が生成した着火ガスを、第2推進薬4に噴射するように構成されている。着火ガス噴射装置8は、例えば凹変形部55の外側に設けられた第2推進薬4と、凸変形部56の外側に設けられた第2推進薬4とに異なる流量の着火ガスを噴射する。なお、流量は単位時間あたりに通過する流体の体積または質量を含んでもよい。例えば、着火ガスの流量は、所望の位置に着火ガスを噴射する1以上の噴射孔81を単位時間に通過する着火ガスの体積または質量でもよい。
【0023】
着火ガス噴射装置8は、
図6に示すように、少なくとも1つの噴射孔81を備える。着火ガス噴射装置8は、+z方向の端面に、隔膜5の外側を囲むように着火ガスを噴射する複数の噴射孔81を備えてよい。噴射孔81は、例えば第1噴射孔81aと第2噴射孔81bとを含んでもよい。第1噴射孔81aは、θ方向において凹変形部55の位置に設けられ、凹変形部55の外側に設けられた第2推進薬4と凹変形部55とのうち少なくとも一部に着火ガスを噴射するように構成されている。第2噴射孔81bは、θ方向において凸変形部56の位置に設けられ、凸変形部56の外側に設けられた第2推進薬4と凸変形部56とのうち少なくとも一部に着火ガスを噴射するように構成されている。θ方向において1つの凹変形部55の位置に設けられた第1噴射孔81aの数は、1つの凸変形部56の位置に設けられた第2噴射孔81bの数より多い。例えば、θ方向において、1つの凹変形部55の位置に設けられた第1噴射孔81aの断面積の合計は、1つの凸変形部56の位置に設けられた第2噴射孔81bの断面積の合計より大きい。これにより、着火ガス噴射装置8は、凹変形部55の近辺に、凸変形部56の近辺よりも多くの流量を有する着火ガスを噴射することができる。
【0024】
着火ガス噴射装置8は、
図7に示すように、第2点火装置9が生成する着火ガスを各噴射孔81に供給する流路82を備える。流路82は、例えば環状に形成された環状流路83を備える。環状流路83は第2点火装置9から着火ガスが流入する流入口84を備える。流入口84は、θ方向において少なくとも一部の凹変形部55の位置に設けられてもよい。例えば、流入口84がθ方向において1つの凹変形部55の位置に設けられている。流入口84が凹変形部55の近辺に設けられることで、凹変形部55の近辺に設けられた第1噴射孔81aから噴射される着火ガスの流量が、凸変形部56の近辺に設けられた第2噴射孔81bから噴射される着火ガスの流量より多くなり得る。第2点火装置9は、
図8に示すように、θ方向において凹変形部55の位置に設けられてもよい。
【0025】
(噴射孔の形態による制御)
着火ガス噴射装置8は、着火ガスを噴射する噴射孔81の形態(例えば形状、数など)をその位置に応じて変化させることで、凹変形部55の近辺と凸変形部56の近辺とに異なる流量の着火ガスを噴射してもよい。
【0026】
着火ガス噴射装置8は、
図9に示すように、θ方向において凹変形部55の位置に噴射孔81を備えてもよい。例えば、すべての噴射孔81は、凹変形部55の外側に設けられた第2推進薬4または凹変形部55に着火ガスを噴射するように構成されてもよい。凸変形部56は隣接する2つの噴射孔81の間に設けられてもよい。これにより、凹変形部55の近辺に、凸変形部56の近辺より多くの流量を有する着火ガスが噴射され得る。θ方向において、1つの凹変形部55の位置に複数の噴射孔81が設けられてもよい。
【0027】
着火ガス噴射装置8は、
図10に示すように、断面積の異なる噴射孔81を備えてもよい。例えば、θ方向において凹変形部55の位置に設けられた第1噴射孔81aの断面積は、θ方向において凸変形部56の位置に設けられた第2噴射孔81bの断面積より大きい。これにより、凹変形部55の近辺に、凸変形部56の近辺より多くの流量を有する着火ガスが噴射され得る。
【0028】
着火ガス噴射装置8は、
図11に示すように、隔膜5の外側を囲むように環状に形成された噴射孔81を備えてもよい。噴射孔81は、例えばθ方向において凸変形部56の位置のうち少なくとも一部に噴射抵抗部85が設けられている。噴射抵抗部85は、θ方向における凸変形部56の位置の全体に設けられてもよい。噴射抵抗部85は、噴射孔81の壁面、例えばr方向の一方の壁面から突出するように設けられ、r方向において噴射孔81の少なくとも一部を覆うように設けられている。噴射抵抗部85は、r方向において噴射孔81の一端から他端まで突出し、r方向において噴射孔81を覆ってもよい。噴射抵抗部85により、凸変形部56の近辺の噴射孔81のr方向の幅は、凹変形部55の近辺の噴射孔81のr方向の幅より小さい。このため、凹変形部55の近辺に、凸変形部56の近辺より多くの流量を有する着火ガスが噴射され得る。
【0029】
このように、着火ガス噴射装置8の噴射孔81は、θ方向において、凹変形部55の位置に設けられた第1噴射孔81aが凸変形部56の位置に設けられた第2噴射孔81bと異なる形態に形成してもよい。凹変形部55の近辺に、凸変形部56の近辺より多くの流量を有する着火ガスが噴射されることで、凹変形部55は、凸変形部56よりも‐r方向への変形量が大きくなる。さらに、第2推進薬4の燃焼ガスが凹変形部55を‐r方向に押圧することで、隔膜5は座屈により変形する。このように、複数パルスガス発生装置1は、隔膜5における凹変形部55の位置と、凸変形部56との位置とを制御することができ、隔膜5の変形後の形状を制御し得る。
【0030】
(流路の形状による制御)
着火ガス噴射装置8は、環状流路83の形状により、凹変形部55の近辺と凸変形部56の近辺とに異なる流量の着火ガスを噴射してもよい。
【0031】
着火ガス噴射装置8の環状流路83は、
図12に示すように、第2点火装置9から着火ガスが流入する流入口84を複数備えてもよい。流入口84は、例えばθ方向において少なくとも一部の凹変形部55の位置に設けられている。流入口84はθ方向においてすべての凹変形部55の位置に設けられてもよい。流入口84がθ方向における凹変形部55の位置に設けられることで、凹変形部55の近辺の第1噴射孔81aから流入口84までの距離が凸変形部56の近辺の第2噴射孔81bから流入口84までの距離より短い。このため、第1噴射孔81aから噴射される着火ガスの流量が、第2噴射孔81bから噴射される着火ガスの流量より多くなり得る。なお、第2点火装置9は、1つの流入口84に対して1つ設けられてもよく、複数の流入口84に対して1つ設けられてもよい。
【0032】
着火ガス噴射装置8の環状流路83は、
図13に示すように、θ方向における凸変形部56の位置と流入口84との間に流路抵抗部86を備えてもよい。流路抵抗部86は、流路抵抗部86を通過する流体の流量を減少させるように構成されている。例えば、流路抵抗部86は、環状流路83の壁面から環状流路83の内側に突出し、着火ガスの流量を流路抵抗部86の上流よりも下流において減少させる。流入口84は、例えばθ方向において少なくとも一部の凹変形部55の位置に設けられている。流路抵抗部86と流入口84との間における着火ガスの流量は、流路抵抗部86と第2噴射孔81bとの間における着火ガスの流量より多くなり得る。このため、第1噴射孔81aから噴射される着火ガスの流量が、第2噴射孔81bから噴射される着火ガスの流量より多くなり得る。流路抵抗部86はオリフィスを含んでもよい。
【0033】
このように、環状流路83の形状により、凹変形部55の近辺に、凸変形部56の近辺より多くの流量を有する着火ガスが噴射され得る。この結果、複数パルスガス発生装置1は、隔膜5における凹変形部55の位置と、凸変形部56との位置とを制御することができ、隔膜5の変形後の形状を制御し得る。
【0034】
(着火ガスの噴射方向による制御)
着火ガス噴射装置8は、着火ガスを噴射する方向を噴射孔81の位置に応じて変化させることで、凹変形部55の近辺と凸変形部56の近辺との間で噴射される着火ガスによる隔膜5への圧力を変化してもよい。
【0035】
第1噴射孔81aにおける第1流出路88aの延伸方向は、
図14Aに示すように、隔膜5の側面と交差するように形成されてもよい。流路82は、第2点火装置9から環状流路83に着火ガスを送る流入路87と、環状流路83から噴射孔81に着火ガスを送る流出路88とを備える。環状流路83から第1噴射孔81aに接続される流出路88を第1流出路88aと呼ぶ。第1噴射孔81aにおける第1流出路88aの延伸方向が隔膜5の側面と交差するため、着火ガスの噴射方向は‐r方向の成分を有する。これにより、第1噴射孔81aから噴射される着火ガスは隔膜5を押圧し得る。着火ガスは隔膜5に直接噴射されなくてもよい。
【0036】
第2噴射孔81bにおける第2流出路88bの延伸方向は、
図14Bに示すように、隔膜5の側面に平行するように形成されてもよい。流路82の環状流路83から第2噴射孔81bに接続される流出路88を第2流出路88bと呼ぶ。第2噴射孔81bから噴射される着火ガスが隔膜5を押圧する力は、第1噴射孔81aから噴射される着火ガスが隔膜5を押圧する力よりも小さい。これにより、着火ガス噴射装置8は、凹変形部55の近辺と凸変形部56の近辺との間で噴射される着火ガスによる隔膜5への圧力を変化させ、隔膜5の変形後の形状を制御し得る。第1噴射孔81aにおける流出路88と隔膜5の側面との成す角度89が、第2噴射孔81bにおける流出路88と隔膜5の側面との成す角度89より大きくてもよい。
【0037】
(隔膜の構成による制御)
隔膜5の構成、例えば剛性が凹変形部55の位置と凸変形部56の位置との間で異なることで、変形後の隔膜5の形状を制御してもよい。隔膜5は、例えば、θ方向において、凸変形部56の位置の曲げ剛性が、凹変形部55の曲げ剛性より高くなるように構成されてもよい。例えば、θ方向において、凸変形部56の位置のz方向における曲げ剛性が、凹変形部55のz方向における曲げ剛性より高くてもよい。この場合、着火ガス噴射装置8は、
図15に示すように、凹変形部55の近辺で噴射される着火ガスの流量が、凸変形部56の近辺で噴射される着火ガスの流量と同じになるように構成されてもよい。また、着火ガス噴射装置8は、凹変形部55の近辺で噴射される着火ガスの流量が、凸変形部56の近辺で噴射される着火ガスの流量より大きくなるように構成されてもよい。
【0038】
隔膜5は、
図16に示すように、θ方向において凸変形部56の位置に、z方向に延びる補強材57が補強部として設けられてもよい。補強材57は隔膜5の側面に接合可能な柱状形状を有する。補強材57は、例えば隔膜5の筒状部分52が生成されたあとに、筒状部分52の側面に補強材57が接合される。補強材57が凸変形部56の位置に設けられることで、隔膜5の凸変形部56は、凹変形部55よりも曲げ剛性、例えばz方向における曲げ剛性が高い。このため、隔膜5の側面が第2推進薬4の燃焼ガスまたは着火ガスにより押圧されると、凸変形部56よりも、凹変形部55において座屈しやすくなる。
【0039】
隔膜5は、
図17に示すように、θ方向において凸変形部56の位置に、z方向に延びる突出部59が補強部として設けられてもよい。突出部59は他の位置よりも隔膜5の厚さが厚く形成されている。突出部59が凸変形部56に形成されることで、凸変形部56は凹変形部55よりも曲げ剛性、例えばz方向における曲げ剛性が高い。このため、隔膜5の側面が第2推進薬4の燃焼ガスまたは着火ガスにより押圧されると、凸変形部56よりも、凹変形部55において座屈しやすくなる。
【0040】
隔膜5は、エラストマー(elastomer)、例えば繊維強化ゴムで形成されてもよい。例えば、突出部59は、他の部分よりもz方向に延びる強化繊維の割合、例えば単位体積に含まれる強化繊維のうちz方向に延びる強化繊維の割合が大きい。この場合、隔膜5の筒状部分52は、
図18に示す方法で製造されてもよい。ステップS10において、筒状前駆体が生成される。例えば、筒状形状の型に強化繊維とスラリーとを充填することで、筒状前駆体が生成される。ステップS20において、突出部59を形成する補強前駆体が生成される。補強前駆体は、延伸方向が第1方向である強化繊維を他の方向である強化繊維より多く含み、第1方向に延びる形状を有する。ステップS30において、補強前駆体を筒状前駆体に貼り付けて、成形前駆体が生成される。補強前駆体の延伸方向(第1方向)が筒状前駆体の基軸15に沿った方向になるように、補強前駆体は筒状前駆体に貼り付けられる。ステップS40において、成形前駆体が熱硬化されることで、隔膜5の筒状部分52が形成される。
【0041】
隔膜5は、
図19に示すように、θ方向において凹変形部55の位置に、z方向に延びる脆弱部58が設けられてもよい。脆弱部58は、他の位置よりも隔膜5の厚さが薄く形成されてもよい。脆弱部58は、例えば隔膜5の筒状部分52が生成されたあとに、筒状部分52の側面を削ることで形成され得る。また、筒状部分52を生成するときに、他の部分よりも厚さの薄い脆弱部58が形成されてもよい。隔膜5は、脆弱部58を含む凹変形部55の剛性が他の部分の剛性より低いため、凹変形部55において座屈しやすくなる。
【0042】
(凹変形部の数)
隔膜5が座屈変形したあとの凹変形部55の数は、任意に選択してもよい。例えば、凹変形部55の数は3でもよい。この場合、θ方向において、着火ガス噴射装置8が噴射する着火ガスの流量の大きな位置が3つ設けられてもよい。例えば、着火ガス噴射装置8は、
図20に示すように、θ方向において、凹変形部55を設けるべき3つの位置において第1噴射孔81aの数が、凸変形部56を設けるべき位置における第2噴射孔81bの数より多くなるように構成されている。また、隔膜5の補強部が凹変形部55を設けるべき3つの位置に設けられてもよい。例えば、
図21に示すように、補強材57が、隔膜5の凹変形部55を設けるべき3つの位置に設けられてもよい。また、座屈の数は、4よりも増加させてもよい。座屈の数を増加させることで、凹変形部55の変形が抑制され得る。
【0043】
隔膜5の筒状部分52の厚さを変化させることで、座屈の数が制御されてもよい。例えば、筒状部分52の厚さを薄くすることで、座屈の数が増加し得る。
【0044】
(変形例)
隔膜5は、凸変形部56が凹変形部55よりもz方向に延びる強化繊維を多く含むように形成されてもよい。これにより、凸変形部56の剛性は、突出部59を有することなく、凹変形部55の剛性よりも高くなり得る。
【0045】
複数パルスガス発生装置1は、
図22に示すように、隔膜5の内側に第1推進薬3が設けられなくてもよい。この場合、配置できる第2推進薬4を増やすことができる。
【0046】
着火ガス噴射装置8は、3以上の複数パルスガス発生装置に適用されてもよい。複数パルスガス発生装置は、
図23に示すように、3パルスガス発生装置11でもよい。この場合、3パルスガス発生装置11は、第1推進薬3と、第2推進薬4と、第3推進薬12とを順番に点火する。第1推進薬3は第1点火装置7により点火される。第2推進薬4は、第2点火装置9が生成する着火ガスを着火ガス噴射装置8が第2推進薬4の位置まで送ることで点火される。第3推進薬12は、第3点火装置13が生成する着火ガスを着火ガス噴射装置8の流路82が第3推進薬12の位置に送ることで点火される。着火ガス噴射装置8は、前述の実施の形態と同様に形成されてもよい。また、パルスユニット14の数を増加して、4以上の複数パルスガス発生装置が構成されてもよい。
【0047】
以上において説明した実施の形態および変形例は一例であり、機能を阻害しない範囲で変更してもよい。また、各実施の形態および変形例で説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよく、または/および、任意に組み合わせてもよい。複数パルスガス発生装置1は、例えば、いずれかの実施の形態に係る隔膜5の構成と、いずれかの実施の形態に係る着火ガス噴射装置8の構成とを組み合わせてもよい。例えば、複数パルスガス発生装置1は、
図6に示す着火ガス噴射装置8と、
図16に示す隔膜5とを組み合わせてもよい。また、着火ガス噴射装置8は、いずれかの実施の形態に係る流路82の形状と、いずれかの実施の形態に係る噴射孔81の構成とを組み合わせてもよい。例えば、着火ガス噴射装置8は、
図9に示す噴射孔81の構成と
図12に示す流路82の構成とを組み合わせてもよく、
図10に示す噴射孔81の構成と
図14A、14Bに示す流路82の構成とを組み合わせてもよい。
【0048】
各実施の形態に記載の複数パルスガス発生装置は、例えば以下のように把握される。
【0049】
第1の態様に係る複数パルスガス発生装置は、圧力容器(2)と、隔膜(5)と、第1推進薬(3)と、第2推進薬(4)と、点火装置(9)と、着火ガス噴射装置(8)とを備える。隔膜(5)は、第1推進薬(3)と第2推進薬(4)とを分離する。点火装置(9)は第2推進薬(4)を着火する着火ガスを生成する。着火ガス噴射装置(8)は点火装置(9)が生成した着火ガスを第2推進薬(4)に噴射する。隔膜(5)は、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凹形状に変形されるべき複数の凹変形部(55)と、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凸形状に変形されるべき複数の凸変形部(56)とを有する。1つの凹変形部の外側に設けられた第2推進薬に噴射される着火ガスの流量は、1つの凸変形部の外側に設けられた第2推進薬に噴射される着火ガスの流量よりも多い。
【0050】
1つの凹変形部の外側に設けられた第2推進薬に噴射される着火ガスの流量は、1つの凸変形部の外側に設けられた第2推進薬に噴射される着火ガスの流量よりも多いため、凹変形部は凹形状に座屈変形し、凸変形部は凸形状に座屈変形する。このように、隔膜の座屈変形を制御することで、第2推進薬の燃焼ガスを安定して供給することができる。
【0051】
第2の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第1の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、噴射孔(81)が隔膜の外側を囲むように環状に複数配置されるように構成されている。
【0052】
第3の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第2の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、1つの凹変形部(55)の外側に設けられた第2推進薬に着火ガスを噴射する噴射孔(81a)の断面積の合計は、1つの凸変形部(56)の外側に設けられた第2推進薬に着火ガスを噴射する噴射孔(81b)の断面積の合計より大きくなるように構成されている。
【0053】
第4の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第2の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、1つの凹変形部(55)の外側に設けられた第2推進薬に着火ガスを噴射する噴射孔(81a)の数は、1つの凸変形部(56)の外側に設けられた第2推進薬に着火ガスを噴射する噴射孔(81b)の数より多くなるように構成されている。
【0054】
これにより、凹変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量は、凸変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量より多くなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【0055】
第5の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第2の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、第1噴射孔(81a)が着火ガスを噴射する噴射方向と隔膜(5)の筒状部分(52)の側面との成す角度(89)は、第2噴射孔(81b)が着火ガスを噴射する噴射方向と隔膜の筒状部分の側面との成す角度より大きくなるように構成されている。
【0056】
これにより、凹変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスが隔膜を押圧する力は、凸変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスが隔膜を押圧する力より大きくなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【0057】
第6の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第2の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、隔膜の筒状部分の側面に沿った環状方向において、凸変形部が隣接する2つの噴射孔の間に設けられるように構成されている。
【0058】
これにより、凹変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量は、凸変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量より多くなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【0059】
第7の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第1の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、噴射孔が隔膜を囲むように環状に形成され、隔膜の筒状部分の側面に沿った環状方向において、凸変形部の位置のうち少なくとも一部に、噴射孔の壁面から突出した噴射抵抗部(85)を備えるように構成されている。
【0060】
第8の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第1の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、噴射抵抗部(85)が、隔膜の筒状部分の基軸(15)に直行する第1方向において、噴射孔(81)を覆うように構成されている。
【0061】
これにより、凹変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量は、凸変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量より多くなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【0062】
第9の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第1の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、流入口(84)は、隔膜の筒状部分の側面に沿った環状方向において、凹変形部(55)の位置に設けられるように構成されている。
【0063】
第10の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第9の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、流路(82)が、環状方向における凸変形部の位置と流入口との間に、通過する着火ガスの流量を減少させる流路抵抗部(86)を備えるように構成されている。
【0064】
これにより、凹変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量は、凸変形部の近辺に設けられた噴射孔が噴射する着火ガスの流量より多くなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【0065】
第11の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第1の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、凸変形部の剛性が凹変形部の剛性より高くなるように構成されている。
【0066】
第12の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第11の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、凸変形部が隔膜の筒状部分の基軸方向に延びる補強部を備えるように構成されている。
【0067】
第13の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第12の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、補強部における基軸方向に延びる強化繊維の割合は、隔膜のうち補強部を除く部分よりも多くなるように構成されている。
【0068】
第14の態様に係る複数パルスガス発生装置は、第11の態様に係る複数パルスガス発生装置であって、凹変形部に他の位置よりも厚さが薄い脆弱部(58)が設けられているように構成されている。
【0069】
これにより、凸変形部の剛性は凹変形部の剛性より高くなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【0070】
各実施の形態の複数パルスガス発生装置は、例えば以下のように把握される。
【0071】
第15の形態に係る複数パルスガス発生装置は、圧力容器(2)と、隔膜(5)と、第1推進薬(3)と、第2推進薬(4)と、点火装置(9)と、着火ガス噴射装置(8)とを備える。第2推進薬(4)は隔膜の外側に設けられている。点火装置(9)は第2推進薬(4)を着火する着火ガスを生成する。着火ガス噴射装置(8)は点火装置(9)が生成した着火ガスを第2推進薬(4)に噴射する。隔膜(5)は、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凹形状に変形されるべき複数の凹変形部(55)と、第2推進薬の燃焼ガスまたは着火ガスの圧力により凸形状に変形されるべき複数の凸変形部(56)とを有する。凸変形部の剛性は前記凹変形部の剛性より高い。
【0072】
これにより、凸変形部の剛性は凹変形部の剛性より高くなる。この結果、隔膜の座屈変形を制御し得る。
【符号の説明】
【0073】
1 :複数パルスガス発生装置
2 :圧力容器
3 :第1推進薬
3a :端面
3b :側面
4 :第2推進薬
5 :隔膜
6 :燃焼室
7 :第1点火装置
8 :着火ガス噴射装置
9 :第2点火装置
10 :燃焼ガス排出部
11 :3パルスガス発生装置
12 :第3推進薬
13 :第3点火装置
14 :パルスユニット
15 :基軸
51 :破断部
52 :筒状部分
53 :環状部分
54 :貫通孔
55 :凹変形部
55a :凹頂点
56 :凸変形部
56a :凸頂点
57 :補強材
58 :脆弱部
59 :突出部
81 :噴射孔
81a :第1噴射孔
81b :第2噴射孔
82 :流路
83 :環状流路
84 :流入口
85 :噴射抵抗部
86 :流路抵抗部
87 :流入路
88 :流出路
88a :第1流出路
88b :第2流出路
89 :角度
500 :中間点