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特許7383539制御システム、情報処理装置、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】制御システム、情報処理装置、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/32 20060101AFI20231113BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20231113BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B66C13/32 D
B66C13/00 D
B66C13/48 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020049830
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147196
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三宅 寿英
(72)【発明者】
【氏名】井岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】アハマド ファウジ アリフ
(72)【発明者】
【氏名】平林 照司
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119545(JP,A)
【文献】特開2019-027696(JP,A)
【文献】特開平07-330286(JP,A)
【文献】特開2002-295821(JP,A)
【文献】特開昭58-197191(JP,A)
【文献】特開平05-208794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66C 3/00- 3/20
F23G 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを運搬するクレーンがバケットでごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態で当該バケットを巻き上げるまでの一連の状態を撮影する撮影装置と、
ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデルに、上記撮影により得られた画像を入力して得た出力値から、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出する情報処理装置と、
上記情報処理装置が、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出したときに、上記クレーンに上記バケットの巻き上げ動作を行わせる制御装置と、
を含む制御システム。
【請求項2】
上記制御装置は、上記バケットによるごみを掴む動作の開始後の所定期間内に上記バケットが巻き上げ可能な状態となったことが検出されなかった場合には、当該所定期間の経過を契機として上記バケットの巻き上げ動作を行わせる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
上記制御装置は、上記バケットによるごみを掴む動作の開始後、所定の下限期間が経過し、かつ、上記バケットが巻き上げ可能な状態となったことが検出されたことを条件として上記バケットの巻き上げ動作を行わせる、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
上記情報処理装置は、上記画像に基づいて、ごみ表面上にある上記クレーンのバケットが傾斜していることを検出し、
上記制御装置は、上記情報処理装置が、上記バケットが傾斜していることを検出した場合に、上記クレーンによるごみの掴み位置を変更する制御を行う、請求項1から3の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項5】
上記情報処理装置は、上記画像に基づいて、上記バケットがごみの保持に不十分な閉度となっていることを検出し、
上記制御装置は、上記情報処理装置が、上記バケットがごみの保持に不十分な閉度となっていることを検出した場合に、上記バケットを閉じる制御を行う、請求項1から4の何れか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
ごみを運搬するクレーンがバケットでごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態で当該バケットを巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する画像取得部と、
ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデルに上記画像を入力して得た出力値から、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出する検出部と、を備える情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置による情報処理方法であって、
ごみを運搬するクレーンがバケットでごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態で当該バケットを巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する画像取得ステップと、
ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデルに上記画像を入力して得た出力値から、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出する検出ステップと、を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみを運搬するクレーンの動作制御を行う制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ごみ焼却設備等の設備においては、クレーンを用いてごみの運搬を行っている。そして、このようなクレーンを自動制御するための技術の開発も従来から進められている。例えば、下記の特許文献1には、良好な燃焼状態が得られるように、クレーンのバケットによるごみの掴み量を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-295821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術は、良好な燃焼状態が得られるようにすることを目的としたものであり、クレーンの自動制御時におけるタイムロスを減らすという観点から改良の余地がある。具体的には、上述の従来技術では、バケットでごみを掴んだ後、そのバケットを巻き上げるタイミングを最適化することが難しい。なお、このようなタイミングは、一般にはクレーンのオペレータがバケットとごみの様子を目視確認しながら決定している。
【0005】
ここで、上記特許文献1には、タイマーの計測時間に従ってバケットの開閉の制御を行うことが記載されている。しかしながら、タイマーを用いた制御により、ごみを掴む動作を開始させてから所定時間後にバケットを巻き上げる制御を行う構成とした場合、巻き上げ可能な状態となる前に巻き上げを行ってしまうことを避けるため、所定時間を長めに設定せざるを得ない。そして、このような構成では、バケットが巻き上げ可能となってから、バケットの巻き上げが行われるまでにタイムロスが発生してしまうという問題があった。
【0006】
本発明の一態様は、タイマー等による制御で巻き上げを行う場合と比べて、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることができる制御システム等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御システムは、ごみを運搬するクレーンがバケットでごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態で当該バケットを巻き上げるまでの一連の状態を撮影する撮影装置と、ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデルに、上記撮影により得られた画像を入力して得た出力値から、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出する情報処理装置と、上記情報処理装置が、上記クレーンが巻き上げ可能な状態となったことを検出したときに、上記クレーンに上記バケットの巻き上げ動作を行わせる制御装置と、を含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の課題を解決するために、ごみを運搬するクレーンがバケットでごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態で当該バケットを巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する画像取得部と、ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデルに上記画像を入力して得た出力値から、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出する検出部と、を備える。
【0009】
そして、本発明の一態様に係る情報処理方法は、上記の課題を解決するために、情報処理装置による情報処理方法であって、ごみを運搬するクレーンがバケットでごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態で当該バケットを巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する画像取得ステップと、ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデルに上記画像を入力して得た出力値から、上記バケットを巻き上げ可能な状態となったことを検出する検出ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、タイマー等による制御で巻き上げを行う場合と比べて、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの概要を示す図である。
図2】上記制御システムに含まれる情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図3】上記制御システムに含まれる制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図4】上記制御システムに含まれる学習装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図5】手動制御により行われたバケットの巻き上げの制御履歴を示す図である。
図6】状態判定モデルを構築するための教師データとして利用可能な画像の例を示す図である。
図7】機械学習済みのモデルを用いてバケットの状態(水平/傾斜、開/半開、空中)を判定した例を示す図である。
図8】機械学習済みのモデルを用いてバケットの状態(水平、開/閉、空中/接地)を判定した例を示す図である。
図9】上記学習装置が状態判定モデルを構築する処理の一例を示すフローチャートである。
図10】上記情報処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11】上記制御装置の自動制御により、ごみ掴み位置のごみをクレーンによって投下位置に投下させる際に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図12】クレーンに対する制御履歴と、上記情報処理装置による状態判定の結果の遷移とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔システム概要〕
本発明の一実施形態に係る制御システム100の概要を図1に基づいて説明する。図1は、制御システム100の概要を示す図である。また、図1には、制御システム100の制御対象であるごみ運搬用のクレーン93を備えたごみ焼却設備の概要についても併せて示している。
【0013】
図1に示すように、ごみ焼却設備は、収集車Pが搬入するごみを一時的に貯留するごみピット91とごみの焼却炉92とを含む。ごみピット91と焼却炉92はホッパーで接続されており、ごみピット91内のごみは、ホッパーを通って焼却炉92に送り込まれ、焼却される。
【0014】
ごみピット91の底部はごみの貯留部となっており、収集車Pは、搬入用扉から貯留部にごみを落とし込み、このごみが貯留部に貯留される(図示のごみG)。また、ごみピット91の天井部分にはクレーン93が設けられている。このクレーン93は、ガーダ931、横行台車932、ワイヤー933、およびバケット934を備えている。
【0015】
ガーダ931は、ごみピット91の建屋の対向する壁面にそれぞれ設けられたレール(同図の奥行き方向に延在)間を架け渡すように配置されており、このレールに沿って同図の奥行き方向に移動させることができるようになっている。また、横行台車932は、ガーダ931上に設けられており、ガーダ931上を同図の左右方向(ガーダ931の移動方向と直交する方向)に移動させることができるようになっている。この横行台車932には、巻取機(例えばウインチ)が載置されており、巻取機から延びるワイヤー933の先端にはごみGを掴むバケット934が設けられている。このバケット934は開閉動作を行うことができる。
【0016】
このように、ガーダ931は同図の奥行き方向に移動させることができ、横行台車932は同図の左右方向に移動させることができるから、これらの移動の組合せにより、バケット934を貯留部内の任意の位置に移動させることができる。また、巻取機からワイヤー933を伸ばし、バケット934を降下させて、貯留部内のごみGをバケット934で掴み取ることができる。そして、掴み取ったごみGは、ガーダ931、横行台車932、バケット934、および巻取機の動作を制御することにより、貯留部内の別の位置に積み替えたり、ホッパーに投入したりすることができる。
【0017】
このようなクレーン93の動作制御は、貯留部内を監視できるように建屋の側壁部に設けられた操作室94から行うことができる。操作室94には、制御システム100が配備されている。制御システム100には、情報処理装置1と、制御装置3と、学習装置5と、撮影装置7が含まれている。
【0018】
制御システム100による制御を行う場合、撮影装置7は、ごみを運搬するクレーン93がバケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影する。例えば、撮影装置7は、ごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの期間中、バケット934とその周囲の動画像を撮影することにより、上記「一連の状態」を撮影してもよい。また、撮影装置7は、上記期間中、バケット934とその周囲の静止画像を所定周期で撮影することにより、上記「一連の状態」を撮影してもよい。
【0019】
なお、上記「一連の状態」には、巻き上げ不可の状態と、巻き上げ可能な状態とが含まれている。巻き上げ不可の状態は、バケット934で掴んだごみが、周囲に堆積している他のごみと切り離しきれずにつながった状態である。この状態では、巻き上げを行うことができないため、後述するごみ掴み動作を行う等してバケット934で掴んだごみを他のごみと切り離し、これにより巻き上げ可能な状態となる。上記「一連の状態」には、ごみ掴み動作を行っている状態が含まれていてもよい。
【0020】
上記「バケットを巻き上げるまで」の期間は、バケット934の地切りのタイミングまでの期間であるともいえる。地切りとは、掴んだごみがごみ層から切り離されて、バケット934を巻き上げ可能になった状態を指す。無論、撮影装置7は、少なくとも、バケット934がごみを掴んでから地切りまでの期間の撮影を行えばよく、ごみを掴む前から撮影を行ってもよいし、地切り後も撮影を継続してもよい。
【0021】
情報処理装置1は、機械学習により構築された状態判定モデルに、上記撮影により得られた画像を入力して得た出力値から、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出する。詳細は後述するが、上記機械学習は、ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケットの画像を教師データとして学習装置5が行う。
【0022】
そして、制御装置3は、情報処理装置1が、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出したときに、クレーン93にバケット934の巻き上げ動作を行わせる。
【0023】
なお、バケット934の巻き上げ動作とは、バケット934を水平方向に移動可能な高さまで巻き上げる動作を意味する。バケット934でごみを掴んだ後、そのバケット934を巻き上げ可能な状態とするために、バケット934がわずかに宙に浮く程度まで低速でバケット934を巻き上げる場合があるが、情報処理装置1が検出対象とするのはこちらの巻き上げではない。
【0024】
上記の構成によれば、バケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像から、バケット934が巻き上げ可能な状態になったことを自動で検出して巻き上げを行わせる。よって、タイマー等による制御で巻き上げを行う場合と比べて、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることができる。
【0025】
なお、図1には、情報処理装置1と、制御装置3と、学習装置5と、撮影装置7が操作室94に配置されている例を示しているが、クレーン93の手動制御にも用いられる制御装置3を除けば、その配置は特に限定されない。例えば、ごみ焼却設備の外部の遠隔監視施設等に情報処理装置1と学習装置5を配置してもよい。
【0026】
〔情報処理装置の構成〕
情報処理装置1の構成を図2に基づいて説明する。図2は、情報処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置1は、情報処理装置1の各部を統括して制御する制御部10と、情報処理装置1が使用する各種情報を記憶する記憶部11と、ユーザの指示入力を受け付ける入力部12と、他の装置と無線通信を行うための通信部13とを備える。また、制御部10には、画像取得部101、傾斜状態判定部102、傾斜検出部103、クレーン状態判定部104、地切検出部(検出部)105、開閉状態判定部106、および不完全保持検出部107が含まれている。
【0027】
画像取得部101は、撮影装置7が撮影する画像、すなわちクレーン93がバケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する。なお、撮影装置7が動画像を撮影する場合、画像取得部101は、当該動画像から所定時間間隔でフレーム画像を取得してもよい。
【0028】
傾斜状態判定部102は、画像取得部101が取得する画像から、該画像に写るバケット934の傾斜状態を判定する。例えば、傾斜状態判定部102は、機械学習により構築した傾斜判定モデルを用いて傾斜状態を判定してもよい。傾斜判定モデルの構築については、図7等に基づいて後述する。
【0029】
傾斜検出部103は、傾斜状態判定部102の判定結果に基づき、ごみ表面上にあるバケット934が傾斜していることを検出する。そして、傾斜検出部103は、この検出結果を制御装置3に通知する。
【0030】
このように、情報処理装置1は、傾斜状態判定部102と傾斜検出部103を備えているので、撮影装置7が撮影するバケット934の画像に基づいて、ごみ表面上にあるバケット934が傾斜していることを検出することができる。そして、制御装置3は、情報処理装置1が、バケット934が傾斜していることを検出した場合に、クレーン93によるごみの掴み位置を変更する制御を行う。この構成によれば、バケット934が傾斜していることを検出した場合に、ごみの掴み位置を変更するので、傾斜した状態でごみ掴み動作を行うことによるバケット934の転倒やごみの掴み損ね等の発生を防ぐことができる。
【0031】
クレーン状態判定部104は、画像取得部101が取得する画像から、該画像に写るバケット934の状態を判定する。具体的には、クレーン状態判定部104は、学習装置5が構築した状態判定モデル514に、画像取得部101が取得して画像を入力することにより、バケット934の状態を示す出力値を算出する。なお、詳細は後述するが、状態判定モデル514は、ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケット934の画像を教師データ513とした機械学習により構築される。
【0032】
地切検出部105は、状態判定モデル514からの上記出力値に基づき、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出する。そして、地切検出部105は、この検出結果を制御装置3に通知する。なお、ごみを掴んだバケット934が巻き上げ可能となった状態を地切状態とも呼ぶ。
【0033】
このように、情報処理装置1は、クレーン93がバケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する画像取得部101を備えている。また、情報処理装置1は、ごみを掴んで巻き上げ可能な状態となったバケット934の画像を教師データとした機械学習により構築された状態判定モデル514に上記画像を入力して得た出力値から、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出する地切検出部105を備えている。
【0034】
上記の構成によれば、バケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像から、バケット934が巻き上げ可能な状態になったことを自動で検出することができる。よって、この検出を契機として制御装置3に巻き上げを行わせることができ、これにより、タイマー等による制御で巻き上げを行う場合と比べて、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることが可能になる。
【0035】
開閉状態判定部106は、画像取得部101が取得する画像から、該画像に写るバケット934の開閉状態を判定する。例えば、開閉状態判定部106は、機械学習により構築した開閉判定モデルを用いて開閉状態を判定してもよい。開閉判定モデルの構築については、図7等に基づいて後述する。
【0036】
不完全保持検出部107は、開閉状態判定部106の判定結果に基づき、ごみを掴んでいるときのバケット934の閉度が不十分となっていることを検出する。そして、不完全保持検出部107は、この検出結果を制御装置3に通知する。
【0037】
このように、情報処理装置1は、開閉状態判定部106と不完全保持検出部107とを備えているので、画像取得部101が取得する画像に基づいて、バケット934がごみの保持に不十分な閉度となっていることを検出することができる。そして、制御装置3は、情報処理装置1が、バケット934がごみの保持に不十分な閉度となっていることを検出した場合に、バケット934を閉じる制御を行う。
【0038】
ここで、バケット934の開度は、バケット934を開閉する際の油圧で計測することが可能であり、その計測値に従ってバケット934の開度を調整することが可能である。しかし、ごみがバケット934の爪等に挟まる等の原因で、計測値よりもバケット934が開いた状態となってしまうことがある。そこで、上記の構成によれば、バケット934がごみの保持に不十分な閉度となっていることを検出した場合に、バケット934を閉じる制御を行う。これにより、ごみの掴み損ねや、意図しない位置にごみを落下させることを防ぐことができる。
【0039】
〔制御装置の構成〕
制御装置3の構成を図3に基づいて説明する。図3は、制御装置3の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、制御装置3は、制御装置3の各部を統括して制御する制御部30と、制御装置3が使用する各種情報を記憶する記憶部31と、ユーザの指示入力を受け付ける入力部32と、制御装置3が情報を出力するための出力部33と、他の装置と無線通信を行うための通信部34とを備える。また、制御部30には、クレーン制御部301、バケット移動制御部302、バケット開閉制御部303、およびバケット昇降制御部304が含まれている。
【0040】
クレーン制御部301は、クレーン93の動作を制御する。具体的には、クレーン制御部301は、クレーン93によるごみの掴み位置と、掴んだごみの投下位置とを決定する。そして、クレーン制御部301は、バケット移動制御部302、バケット開閉制御部303、およびバケット昇降制御部304を制御することにより、クレーン93に上記掴み位置でごみを掴む動作を行わせ、上記投下位置でごみを投下させる。ごみの掴み位置と投下位置の決定方法は特に限定されず、例えばごみピット内の各位置におけるごみの撹拌状態や堆積高さ等に基づいて決定してもよいし、予め設定されたスケジュールに従って決定してもよい。
【0041】
バケット移動制御部302は、クレーン制御部301の制御に従って、ガーダ931と横行台車932を移動させ、バケット934をごみ掴み位置または投下位置の直上に移動させる。
【0042】
バケット開閉制御部303は、クレーン制御部301の制御に従って、バケット934の開度を変更する。本実施形態では、バケット開閉制御部303は、クレーン93に正の値の開閉指令を送信することによりバケット934を開状態とし、負の値の開閉指令を送信することによりバケット934を閉状態とする。また、クレーン93への開閉指令の値をニュートラル(0)にすることにより、バケット934の開閉状態を現在の状態に維持する。無論、これらの制御は一例であり、バケット934の開閉のためにどのような制御を行うかは任意である。
【0043】
バケット昇降制御部304は、クレーン制御部301の制御に従って、バケット934を昇降させる。また、バケット934を昇降させる際、バケット昇降制御部304は、クレーン制御部301が指定する昇降速度でバケット934を昇降させる。
【0044】
〔学習装置の構成〕
学習装置5の構成を図4に基づいて説明する。図4は、学習装置5の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、学習装置5は、学習装置5の各部を統括して制御する制御部50と、学習装置5が使用する各種情報を記憶する記憶部51と、ユーザの指示入力を受け付ける入力部52と、学習装置5が情報を出力するための出力部53とを備える。また、制御部50には、履歴抽出部501、時刻特定部502、画像抽出部503、教師データ生成部504、および学習部505が含まれている。そして、記憶部51には、操作履歴DB(データベース)511およびピット画像512が記憶されている。さらに、教師データ513および状態判定モデル514が記憶される。
【0045】
操作履歴DB511は、クレーン93の制御履歴を記録したデータベースである。より詳細には、操作履歴DB511には、クレーン93に対して行われた制御の内容と、その制御が行われた時刻とを示す制御履歴データが記録されている。また、操作履歴DB511には、各制御が手動で行われたか、自動で行われたかについても記録されている。
【0046】
ピット画像512は、ごみ焼却設備の操業期間中に撮影装置7が撮影したごみピット内の画像である。ピット画像512には、クレーン93がバケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を示す画像が含まれている。
【0047】
教師データ513は、状態判定モデル514を構築するための機械学習に用いる教師データである。状態判定モデル514は、少なくとも地切状態を判定できるものであればよいので、教師データ513も少なくとも地切状態を学習できるようなデータとすればよい。なお、教師データ513の詳細は図6に基づいて後述する。
【0048】
状態判定モデル514は、バケット934がごみを掴んで巻き上げ可能な状態(地切状態)となったか否かの判定に使用されるモデルである。状態判定モデル514の詳細についても、教師データ513の詳細と共に図6に基づいて後述する。
【0049】
履歴抽出部501は、操作履歴DB511から、手動で行われた巻き上げ制御の制御履歴データを抽出する。上述のように、操作履歴DB511においては、各制御が手動で行われたか、自動で行われたかについても記録されているから、履歴抽出部501は、この記録に基づいて、手動で行われた巻き上げ制御の制御履歴データを抽出することができる。
【0050】
時刻特定部502は、履歴抽出部501が抽出した制御履歴データから、手動で巻き上げ制御が行われた時刻を特定する。手動で巻き上げ制御が行われた時刻を特定する方法については図5に基づいて後述する。
【0051】
画像抽出部503は、ピット画像512から、時刻特定部502により特定された時刻に撮影された画像を抽出する。例えば、ピット画像512が連続して撮影された時系列の静止画像群からなる場合、画像抽出部503は、時刻特定部502により特定された時刻に撮影された画像を当該静止画像群の中から抽出する。一方、ピット画像512が動画像である場合、画像抽出部503は、時刻特定部502により特定された時刻のフレーム画像を当該動画像から抽出する。
【0052】
教師データ生成部504は、画像抽出部503が抽出した画像に正解データのラベルを対応付けて状態判定モデル514の構築に用いる教師データ513とする。教師データ513の生成方法の詳細は、図6に基づいて後述する。
【0053】
学習部505は、教師データ生成部504が生成した教師データ513を用いて機械学習を行い、状態判定モデル514を構築する。なお、機械学習の方法および構築するモデルの種類等は、画像から物体検出および物体の状態判定が可能なものを採用すればよく、特に限定されない。例えば、畳み込みニューラルネットワークにより状態判定モデル514を構築してもよい。傾斜判定モデルと開閉判定モデルについても同様である。
【0054】
以上のように、学習装置5は、クレーン93の制御履歴データを参照して、クレーン93をオペレータが手動で操作して、バケット934でごみを掴んで巻き上げを行った時刻を特定する時刻特定部502を備えている。また、学習装置5は、時刻特定部502が特定した時刻に撮影されたバケット934の画像を、バケット934の巻き上げが可能な状態を検出するための状態判定モデル514の構築に用いる教師データ513とする教師データ生成部504を備えている。
【0055】
上記の構成によれば、クレーン93をオペレータが手動で操作して、ごみを掴んで巻き上げを行った時刻に撮影されたバケット934の画像を教師データ513とする。したがって、この教師データ513を用いて機械学習を行い、状態判定モデル514を構築することにより、オペレータの操作時と同等のタイミングでバケット934の巻き上げが可能な状態を検出することが可能になる。
【0056】
〔巻き上げ時刻の特定方法〕
時刻特定部502による巻き上げ時刻の特定方法について図5に基づいて説明する。図5は、手動制御により行われたバケット934の巻き上げの制御履歴を示す図である。図5の横軸は時刻であり、縦軸はバケット934の巻上ノッチである。巻上ノッチは、0、1、2、3の4段階であり、0では巻き上げを行わず、1~3では巻き上げを行い、巻上ノッチの値が大きくなるほど巻き上げ速度が速くなる。
【0057】
図5の制御履歴では、14:06:50に巻上ノッチが1に設定されて、この状態が14:06:53まで続いている。つまり、この期間には低速での巻き上げが行われている。そして、14:06:53から14:06:54にかけて、巻上ノッチが1から3に切り替えられて、その後は巻上ノッチが3の状態が維持されている。つまり、この期間には高速での巻き上げが行われている。
【0058】
ここで、一般に、クレーンのオペレータがごみの掴み上げを行う際には、巻上ノッチを低速にして地切りを行い、地切りが完了したと判断した段階で、巻上ノッチを高速にしてバケット934を巻き上げる。
【0059】
このことから、図5に示される制御履歴に係る手動制御では、巻上ノッチが1の期間には地切りが行われており、巻上ノッチが1から3に切り替えられた時刻14:06:54(点P1)の時点で巻き上げが開始されたと認識できる。よって、時刻特定部502は、巻上ノッチが3に切り替えられた時刻、すなわち巻き上げ時に通常適用される所定の速度とする手動制御が行われた時刻を、巻き上げ時刻であると特定してもよい。
【0060】
したがって、操作履歴DB511には、所定の巻き上げ速度とする手動制御が行われた時刻を特定できるようなデータが含まれていればよい。このデータは、図5のようなデータであってもよいし、手動制御が行われた時刻と手動制御の内容とを対応付けたようなデータであってもよい。
【0061】
〔機械学習に用いる画像について〕
時刻特定部502が以上のようにして特定する時刻は、地切りが完了した直後の時刻であるから、当該時刻に撮影されたバケット934の画像は、地切りが完了した状態、すなわち地切状態を示す画像となる。このため、画像抽出部503は、ピット画像512の中から、時刻特定部502が特定した時刻に撮影された画像を地切状態の画像として抽出する。
【0062】
例えば、図5の制御履歴に基づいて14:06:54との時刻が時刻特定部502によって特定された場合、画像抽出部503は、この時刻に撮影された画像を地切状態の画像として抽出する。
【0063】
そして、教師データ生成部504は、時刻特定部502が特定した時刻に撮影され、画像抽出部503が上記のようにして抽出した画像を、バケット934の巻き上げが可能な状態を検出するための状態判定モデル514の構築に用いる教師データ513とする。具体的には、教師データ生成部504は、画像抽出部503が地切状態の画像として抽出した画像に、正解データとして地切状態であることを示すラベルを対応付けて教師データ513とする。
【0064】
また、時刻特定部502が特定した時刻の直前の期間に撮影された画像は、バケット934がごみピット内に堆積したごみ層の表面に接地した接地状態を示す画像となる。このため、画像抽出部503は、ピット画像512の中から、時刻特定部502が特定した時刻の直前の所定期間に撮影された画像を、接地状態を示す画像として抽出してもよい。なお、所定期間の始期は、例えばバケット934が接地したと判定された時刻としてもよい。バケット934の接地は、例えばバケット934を吊るすワイヤー933とバケット934との接続部に設けた重量センサの出力値等から判定可能である。
【0065】
例えば、図5の制御履歴に基づいて14:06:54との時刻が時刻特定部502によって特定された場合、画像抽出部503は、この時刻の直前に撮影された画像(例えば14:06:53の画像)を接地状態の画像として抽出してもよい。この場合、教師データ生成部504は、画像抽出部503が接地状態の画像として抽出した画像に、正解データとして接地状態であることを示すラベルを対応付けて教師データ513とする。
【0066】
図6は、状態判定モデル514を構築するための教師データ513として利用可能な画像の例を示す図である。より詳細には、図6に示す画像のうち、IMG1は接地状態を学習するための画像の例であり、IMG2は地切状態を学習するための画像の例である。
【0067】
IMG1および2の左上には、各画像の撮影時刻が記録されている。この時刻から、IMG1が2018年10月9日の14:06:53に撮影され、IMG2が同日の14:06:54に撮影されたことが分かる。
【0068】
また、IMG1および2においては、バケット934を囲むように領域A1とA2が設定されている。状態判定モデル514を、ごみピット内を撮影した画像からバケット934を検出した上で、検出したバケット934の状態を判定するモデルとする場合、このような領域A1、A2を示す情報を正解データとして教師データ513に含めておけばよい。この場合、領域A1、A2を示す情報は、画像解析等により生成してもよいし、学習装置5のユーザが入力部52を介して入力してもよい。
【0069】
そして、IMG1は、接地状態のバケット934を撮影した画像であるから、接地状態であることを示すラベルを対応付けて教師データ513とすることができる。また、IMG2は、地切状態のバケット934を撮影した画像であるから、地切状態であることを示すラベルを対応付けて教師データ513とすることができる。
【0070】
同様にして、バケット934の様々な状態の画像から教師データを生成することができ、その教師データを用いて機械学習を行うことにより、バケット934の様々な状態を判定することができる。図7および図8は、機械学習済みのモデルを用いてバケット934の状態を判定した例を示す図である。
【0071】
図7に示すIMG3の画像については、バケット934が写る領域A3が検出されていると共に、バケット934の傾斜が水平であり、ごみを掴む爪が開いており、かつ空中に位置している(接地していない)状態であると判定されている。
【0072】
また、IMG4の画像については、バケット934が写る領域A4が検出されていると共に、バケット934が水平ではなく傾斜しており、ごみを掴む爪が半開状態であると判定されている。
【0073】
そして、図8に示すIMG5の画像については、バケット934が写る領域A5が検出されていると共に、バケット934の傾斜が水平であり、ごみを掴む爪が閉じており、かつバケット934が接地している状態であると判定されている。
【0074】
また、IMG6の画像については、バケット934が写る領域A6が検出されていると共に、バケット934が水平であり、ごみを掴む爪が開いており、かつ空中に位置している(接地していない)状態であると判定されている。
【0075】
図7のIMG3および図8のIMG6のような空中状態のバケット934が写る画像については、空中状態であることを示すラベルを対応付けて、教師データ513とすることができる。上述したような、地切状態であることを示すラベルを対応付けた教師データ513と、接地状態であることを示すラベルを対応付けた教師データ513と、空中状態であることを示すラベルを対応付けた教師データ513とを用いることにより、バケット934がこれら3つの状態の何れに該当するかを判定することが可能になる。
【0076】
なお、状態判定モデル514は、その出力値から、地切検出部105が、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出できるようなものであればよい。例えば、状態判定モデル514は、地切状態である確率のみを出力するものであってもよい。この場合、地切検出部105は、地切状態である確率が閾値以上である場合に、バケット934を巻き上げ可能な状態となったと検出すればよい。
【0077】
また、例えば、状態判定モデル514は、バケット934が接地状態である確率と空中状態である確率とを出力するものであってもよい。この場合、地切検出部105は、接地状態である確率と空中状態である確率の何れもが閾値未満である場合、すなわち接地状態とも空中状態とも言い難い場合に、バケット934を巻き上げ可能な状態となったと検出すればよい。
【0078】
さらに、例えば、状態判定モデル514は、バケット934が接地状態である確率のみを出力するものであってもよい。この場合、地切検出部105は、接地状態である確率が閾値以上である状態から、閾値未満である状態に変化したとき、すなわち接地状態から接地状態とは言い難い状態となったときに、バケット934を巻き上げ可能な状態となったと検出すればよい。
【0079】
また、図7のIMG3、および図8のIMG5、6のような水平状態のバケット934が写る画像については、水平状態であることを示すラベルを対応付けて、教師データとすることができる。また、図7のIMG4のような傾斜状態のバケット934が写る画像については、傾斜状態であることを示すラベルを対応付けて、教師データとすることができる。
【0080】
そして、このような教師データを用いて機械学習を行うことにより、傾斜判定モデルを構築することができる。このようにして構築した傾斜判定モデルに、バケット934が写る画像を入力することにより、その画像に写るバケット934が傾斜状態である確率および水平状態である確率を出力させることができる。
【0081】
なお、傾斜判定モデルは、その出力値から、傾斜検出部103が、バケット934がごみを掴み損ねる可能性が高いといえる程度、例えば熟練のオペレータであればごみ掴み動作を行わせない程度に傾斜していることを検出できるようなものであればよい。
【0082】
例えば、傾斜判定モデルは、バケット934がごみを掴み損ねる可能性が高いといえる程度に傾斜したバケット934の画像を教師データとして構築してもよい。この場合、傾斜検出部103は、傾斜判定モデルから出力される、傾斜状態である確率値が閾値以上である場合に、バケット934が傾斜していると検出すればよい。
【0083】
また、例えば、傾斜判定モデルは、水平状態であるバケット934の画像を教師データとして構築してもよい。なお、この場合、ごみを掴み損ねる可能性が低いといえる程度、言い換えれば熟練のオペレータであればごみ掴み動作を行わせる程度に傾斜したバケット934の画像についても、水平状態であるとして学習させてもよい。このような学習を行った場合、傾斜検出部103は、傾斜判定モデルから出力される、水平状態である確率値が閾値未満である場合、すなわち水平状態であるとは言い難い場合に、バケット934が傾斜していると検出すればよい。
【0084】
また、図7のIMG3および図8のIMG6のようなバケット934が開状態のバケット934が写る画像については、開状態であることを示すラベルを対応付けて、教師データとすることができる。また、図8のIMG5のような閉状態のバケット934が写る画像については、閉状態であることを示すラベルを対応付けて、教師データとすることができる。同様に、図7のIMG4のようなバケット934が半開状態のバケット934が写る画像については、半開状態であることを示すラベルを対応付けて、教師データとすることができる。
【0085】
そして、このような教師データを用いて機械学習を行うことにより、開閉判定モデルを構築することができる。このようにして構築した開閉判定モデルに、バケット934が写る画像を入力することにより、その画像に写るバケット934が開状態である確率、閉状態である確率、および半開状態である確率を出力させることができる。
【0086】
なお、開閉判定モデルは、その出力値から、不完全保持検出部107が、バケット934がごみの保持に不十分な閉度となっていることを検出できるようなものであればよい。例えば、開閉判定モデルは、半開状態である確率のみを出力するものであってもよい。この場合、不完全保持検出部107は、半開状態である確率が閾値以上である場合に、不十分な閉度であると検出すればよい。
【0087】
また、例えば、開閉判定モデルは、バケット934が開状態である確率と閉状態である確率とを出力するものであってもよい。この場合、不完全保持検出部107は、開状態である確率と閉状態である確率の何れもが閾値未満である場合、すなわち開状態とも閉状態とも言い難い場合に、不十分な閉度であると検出すればよい。
【0088】
なお、状態判定モデル514、傾斜判定モデル、および開閉判定モデルは、それぞれ独立した学習済みモデルとして構築することもできるし、これらの複数を併合して1つの学習済みモデルとすることもできる。例えば、これら3つのモデルを併合して1つの学習済みモデルとしてもよい。この場合、バケット934を撮影した画像からバケット934が写る領域を検出すると共に、そのバケット934について、傾斜/水平、開/閉/半開、空中/接地/地切り、の各状態に該当する確率値を当該モデルに出力させることができる。このようなモデルを用いる場合、図2のブロック図における傾斜状態判定部102、クレーン状態判定部104、および開閉状態判定部106は1つのブロックに統合される。
【0089】
〔処理の流れ(状態判定モデルの構築)〕
学習装置5が状態判定モデル514を構築する処理(学習方法)の流れを図9に基づいて説明する。図9は、学習装置5が状態判定モデル514を構築する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図9の処理が開始されるまでに、操作履歴DB511に所定期間におけるクレーン93の制御履歴データが記録されており、当該所定期間におけるごみピット内の様子を撮影した動画像がピット画像512として記録されているとする。
【0090】
S1では、履歴抽出部501が、操作履歴DB511に記録されている制御履歴データの中から、手動で行われた巻き上げ制御の制御履歴データを抽出する。続いて、S2では、時刻特定部502が、S1で抽出された制御履歴データについて、その巻き上げ制御が行われた時刻を特定する。
【0091】
S3では、画像抽出部503が、ピット画像512から、S2で特定された時刻に撮影された画像を抽出する。この画像には、図6のIMG2の例のように、地切状態のバケット934が写っている。
【0092】
S4では、教師データ生成部504が、S3で抽出された画像に、正解データとして地切状態であることを示すラベルを対応付けて、巻き上げ可能な状態を検出するためのモデルである状態判定モデル514の構築に用いる教師データ513とする。
【0093】
S5では、学習部505が、S4で生成された教師データ513を用いて機械学習を行い、状態判定モデル514を構築する。そして、S6では、学習部505は、S5で構築した状態判定モデル514を記憶部51に記録し、これにより図9の処理は終了する。
【0094】
なお、S2において、巻き上げ制御が行われた時刻の直前の時刻を特定する構成とすれば、S3では接地状態のバケット934が写る画像が抽出される。この場合、S4では、教師データ生成部504は、S3で抽出された画像に、正解データとして接地状態であることを示すラベルを対応付けて状態判定モデル514の構築に用いる教師データ513とする。
【0095】
また、S2において、バケット934にある時刻(例えば、バケット934の巻き上げ制御が行われた後、バケット934を下降させる制御が行われるまでの期間内の時刻)を特定する構成とすれば、S3では空中状態のバケット934が写る画像が抽出される。この場合、S4では、教師データ生成部504は、S3で抽出された画像に、正解データとして空中状態であることを示すラベルを対応付けて状態判定モデル514の構築に用いる教師データ513とする。
【0096】
なお、上記フローチャートでは、S1において手動で行われた巻き上げ制御の制御履歴データを抽出しているが、妥当なタイミングで巻き上げ制御が行われていれば、自動で行われた巻き上げ制御の制御履歴データを抽出してもよい。つまり、履歴抽出部501は、S1において、操作履歴DB511に記録されている制御履歴データの中から、妥当なタイミングで行われた巻き上げ制御の制御履歴データを抽出すればよい。
【0097】
〔処理の流れ(状態判定および通知)〕
情報処理装置1が実行する処理(情報処理方法)の流れを図10に基づいて説明する。図10は、情報処理装置1が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、クレーン93の稼働期間中、情報処理装置1が図10の処理を実行するのと並行して、制御装置3が後述する図11の処理を実行する。
【0098】
S11(画像取得ステップ)では、画像取得部101が、撮影装置7によって撮影されたクレーン93の画像を取得する。取得する画像は静止画像または動画像から抽出したフレーム画像である。なお、S11~S16の処理は、少なくともクレーン93の自動制御期間中には繰り返し行われる。このため、S11の処理も繰り返し行われ、クレーン93がバケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像が取得されることになる。
【0099】
S12では、傾斜状態判定部102が、S11で取得された画像を傾斜判定モデルに入力することにより、バケット934の傾斜状態を判定する。そして、傾斜検出部103は、傾斜判定モデルの出力値が、バケット934が傾斜状態である可能性が閾値以上であることを示している場合に、制御装置3にバケット934が傾斜状態であると検出する。
【0100】
S13(検出ステップ)では、クレーン状態判定部104が、S11で取得された画像を状態判定モデル514に入力することにより、クレーン93の状態を判定する。そして、地切検出部105は、状態判定モデル514の出力値が、地切状態である可能性が閾値以上であることを示している場合に、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出する。
【0101】
S14では、開閉状態判定部106が、S11で取得された画像を開閉状態判定モデルに入力することにより、バケット934の開閉状態を判定する。そして、不完全保持検出部107は、開閉状態判定モデルの出力値が、バケット934が半開状態である可能性が閾値以上であることを示している場合に、不完全保持状態であると検出する。なお、S12~S14の処理の実行順は任意である。また、これらの処理を並行で行う構成としてもよい。
【0102】
S15では、S12~S14の判定結果のうち、制御装置3への通知を要するものを制御装置3に通知する。具体的には、傾斜検出部103は、S12においてバケット934が傾斜状態であると検出した場合、その旨を制御装置3に通知する。また、地切検出部105は、S13においてバケット934を巻き上げ可能な状態であると検知した場合、その旨を制御装置3に通知する。また、不完全保持検出部107は、S14において不完全保持状態であると検知した場合、その旨を制御装置3に通知する。
【0103】
S16では、画像取得部101が、クレーン93の自動制御を終了するか否かを判定する。自動制御を終了するか否かの判定基準は特に限定されず、例えば、自動制御を終了する旨の操作が入力部12に対して行われたときに自動制御を終了すると判定してもよい。なお、S12~S14の判定結果は、手動制御の際の参考にすることもできるから、クレーン93の動作期間中は図10の処理を継続するようにしてもよい。この場合、S16では、クレーン93の動作を終了するか否かを判定する構成とすればよい。
【0104】
S16で終了すると判定された場合(S16でYES)には図10の処理は終了する。一方、終了しないと判定された場合(S16でNO)には処理はS11に戻り、画像取得部101は新たな画像(前回のS11で取得した画像の時系列順で次の画像)を取得する。
【0105】
以上のように、情報処理装置1による情報処理方法は、クレーン93がバケット934でごみを掴んだ後、ごみを掴んだ状態でバケット934を巻き上げるまでの一連の状態を撮影した画像を取得する画像取得ステップ(S11)を含む。また、この情報処理方法は、状態判定モデル514に上記画像を入力して得た出力値から、バケット934を巻き上げ可能な状態となったことを検出する検出ステップ(S13)を含む。
【0106】
よって、S13の検出結果に基づくS15における当該検出結果の通知を契機として制御装置3に巻き上げを行わせることができる。これにより、タイマー等による制御で巻き上げを行う場合と比べて、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることが可能になる。
【0107】
〔処理の流れ(クレーン制御)〕
制御装置3が自動でクレーン93の動作制御を行う際に実行する処理(制御方法)の流れを図11に基づいて説明する。図11は、制御装置3の自動制御により、ごみ掴み位置のごみをクレーン93によって投下位置に投下させる際に実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0108】
S21では、クレーン制御部301がごみ掴み位置を特定する。そして、クレーン制御部301は、バケット移動制御部302に指示して、特定した上記位置にバケット934を移動させる。その後、クレーン制御部301は、バケット開閉制御部303に指示してバケット934を開状態にし、バケット昇降制御部304に指示してバケット934を下降させる。これにより、バケット934がごみ表面に接地した状態となる。
【0109】
ここで、S21における制御に従ってクレーン93が動作している期間中、その様子を撮影装置7が撮影している。そして、撮影装置7が撮影した画像は情報処理装置1に送られて、情報処理装置1は当該画像を用いて図10の処理を行い、判定結果を制御装置3に随時通知する。以下の制御装置3による処理は、このような通知に基づいて行われる。
【0110】
S22では、クレーン制御部301は、ごみ掴み位置を変更するか否かを判定する。具体的には、クレーン制御部301は、情報処理装置1からバケット934が傾斜状態であるとの検出結果を受信していた場合にはごみ掴み位置を変更する(S22でYES)と判定し、処理はS23に進む。一方、クレーン制御部301は、そのような検出結果を受信していなかった場合にはごみ掴み位置を変更しない(S22でNO)と判定し、処理はS24に進む。
【0111】
S23では、クレーン制御部301は、ごみ掴み位置を変更し、処理はS21に戻る。ごみ掴み位置の変更方法は特に限定されない。例えば、クレーン制御部301は、直前のごみ掴み位置から所定距離だけずらした位置にごみ掴み位置を変更してもよい。
【0112】
S24では、クレーン制御部301は、バケット開閉制御部303にごみ掴み動作を開始させる。ごみ掴み動作の内容は予め定めておけばよい。例えば、バケット934に対する開指令と閉指令を所定時間毎に所定回数ずつ行うことにより実現される動作をごみ掴み動作としてもよい。
【0113】
S25では、クレーン制御部301は、バケット934の巻き上げを実行するか否かを判定する。ここで、クレーン制御部301は、ごみ掴み動作の開始後、所定の下限期間が経過し、かつ、情報処理装置1によりバケット934が巻き上げ可能な状態となったことが検出された場合に、巻き上げを実行する(S25でYES)と判定する。なお、所定の下限期間は、例えば一般的に地切りに要する時間等を参考にして適宜定めておけばよい。つまり、所定の下限期間は、一般的に地切りに要する時間を考慮すれば、地切りができているとは考えにくいような期間とすればよい。
【0114】
S25では、情報処理装置1によりバケット934が巻き上げ可能な状態となったことが検出されて、その旨が制御装置3に通知されていても、その通知タイミングが所定の下限時間の経過前であれば、巻き上げを実行するとは判定しない。これにより、例えば、情報処理装置1の誤検出により、未だ巻き上げ可能な状態となっていないにもかかわらず、巻き上げ可能な状態となったと検出してしまった場合であっても、そのような状態での巻き上げは行われない。これにより、ごみを掴み損ねる等による大きなタイムロスの発生を防ぐことができる。
【0115】
クレーン制御部301は、S25で巻き上げを実行する(S25でYES)と判定した場合には、S27の処理に進み、バケット昇降制御部304にバケット934の巻き上げを行わせる。
【0116】
一方、クレーン制御部301は、S24で開始させたごみ掴み動作の終了時点までに、情報処理装置1からバケット934が巻き上げ可能な状態となったことが通知されなかった場合、当該通知に基づく巻き上げは実行しないと判定する(S25でNO)。この場合、クレーン制御部301は、S24で開始させたごみ掴み動作が終了する(S26)まで待機し、その後、バケット昇降制御部304にバケット934の巻き上げを行わせる(S27)。
【0117】
このように、クレーン制御部301は、ごみを掴む動作の開始後の所定期間内に巻き上げ可能な状態となったことが検出されなかった場合には、当該所定期間の経過を契機としてバケット934の巻き上げ動作を行わせる。これにより、情報処理装置1が巻き上げ可能な状態となったことを検出できなかった場合でも、所定期間の経過後に巻き上げ動作を行わせるので、タイムロスの発生を防ぐことができる。
【0118】
上記所定期間は、クレーン93により所定のごみ掴み動作が開始されてから終了するまでの期間とすればよい。ごみ掴み動作は、バケット934を巻き上げ可能にするために規定されたクレーン93の一連の動作であり、この動作が終了した時点では、バケット934が巻き上げ可能な状態となっている可能性が高いためである。例えば、ごみ掴み動作の制御を、バケット934に対する開指令と閉指令を所定時間毎に所定回数ずつ行う制御とした場合、所定回数目の閉指令によるバケット934の閉動作が完了した時点で、上記所定期間が経過したと判定してもよい。
【0119】
また、上記所定期間は、クレーン93の過去の制御履歴等に基づいて設定してもよい。この場合、過去の制御履歴等から、ごみを掴む動作の開始後、バケット934が巻き上げ可能な状態となる可能性が高くなるタイミングを特定し、そのタイミングを基準として上記所定期間を設定してもよい。例えば、巻き上げ中にごみを落とす等のエラーを発生させることなく適正な巻き上げが行われた制御履歴を抽出し、それらの制御履歴における巻き上げの開始タイミングから、巻き上げ可能な状態となる可能性が高いタイミングを特定してもよい。そして、特定したタイミングに基づいて上記所定時間を設定してもよい。例えば、適正な巻き上げが行われた制御履歴における、ごみを掴む動作の開始から巻き上げ開始までの平均時間に所定のマージンを加えた値を上記所定時間としてもよい。
【0120】
S28では、クレーン制御部301は、バケット934の閉度が不十分ではないか判定する。ここでは、クレーン制御部301は、情報処理装置1からバケット934が半開状態である旨が通知されていれば、バケット934の閉度が不十分である(S28でYES)と判定し、S29の処理に進む。一方、クレーン制御部301は、情報処理装置1からバケット934が半開状態である旨が通知されていなければS28ではNOと判定し、S30の処理に進む。
【0121】
S29では、クレーン制御部301は、バケット開閉制御部303にバケット934の閉度を上げる制御を行わせる。これにより、バケット934は、よりしっかりとごみを保持した状態となるので、保持したごみを意図しない場所で落下させてしまう可能性を低減することができる。
【0122】
S30では、クレーン制御部301は、ごみの投下位置を特定する。そして、バケット移動制御部302に指示して上記投下位置にバケット934を移動させ、その後、バケット開閉制御部303に指示してバケット934を開状態にさせる。これにより、ごみ掴み位置で掴んだごみが投下位置に投下され、図11の処理は終了となる。なお、投下位置は、ごみピット内の位置であってもよいし、ホッパーの位置であってもよい。
【0123】
〔効果実証のための実験〕
情報処理装置1が地切状態を検知したタイミングでバケット934の巻き上げを行うことにより、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることができることを実証するための実験を行った。この実験では、情報処理装置1が地切状態を検知するタイミングと、所定のごみ掴み動作が終了するタイミングとを比較した。
【0124】
上記実験の結果を図12に示している。図12は、クレーン93に対する制御履歴と、情報処理装置1による状態判定の結果の遷移とを示す図である。より詳細には、図12の上側のグラフには、バケット934の巻上指令と開閉指令の制御履歴を示し、図12の下側のグラフには、バケット934の状態判定の結果の遷移とバケット934が掴んでいるごみの重量の計測結果の遷移とを示している。なお、バケット934の状態判定では、空中状態、接地状態、および地切状態の3つの状態の何れに該当するかを判定した。そして、グラフでは、空中状態を3、接地状態を1、地切状態を2の数値で表し、状態判定不能(何れの判定結果も閾値未満)は0とした。
【0125】
実験開始直後の21:53:45の時点では、バケット934はごみを掴んでいない状態で空中にある。その後、バケット934を一度閉じてまた開き、21:54:02付近において、負の巻上指令、すなわちバケット934を下ろす制御を行った。図12の下側のグラフに示す掴み重量は、この制御結果を反映し、バケット934が空中にある期間は0となっており、バケット934が接地した時点で負の値となっている。
【0126】
次に、バケット934を下ろした後の21:54:15から、21:54:35頃までの約20秒間、ごみ掴み動作を行った。具体的には、21:54:15には負の開閉指令、すなわちバケット934を閉じる制御を行い、その後、バケット934の閉度をニュートラル(0)に戻して低速で短時間の巻き上げを行う制御を2回繰り返した。この巻き上げにより、バケット934はごみの表面から少し浮いた状態になり、図12の下側のグラフに示すように、バケット934によるごみの掴み重量が計測結果に正しく反映されるようになる。なお、これらの制御は、バケット934を地切状態とするための制御である。
【0127】
そして、ごみ掴み動作をした、21:54:35にバケット934の巻き上げを開始した。なお、この時点での巻き上げは、バケット934が水平方向に移動可能な高さとなるまで行い、ごみ掴み動作時の巻き上げよりも巻き上げ速度が速く、巻き上げ距離も長い。
【0128】
以上の制御を行った期間におけるバケット934の状態判定の結果は、図12の下側のグラフに示すように、21:53:55~21:54:00付近で誤判定および判定不能状態があったが、全体としてバケット934の状態を正しく判定できていた。特に、21:54:12付近における空中状態から接地状態への遷移と、21:54:30付近における接地状態から地切状態への遷移のタイミングを正しく判定できていた。
【0129】
ここで、接地状態から地切状態への遷移が検出された21:54:30という時刻は、ごみ掴み動作が終了して巻き上げが開始された21:54:35よりも5秒程度早いタイミングである。言い換えれば、図12に示す自動制御では、21:54:30に巻き上げが可能な状態になっているにもかかわらず、その後もごみ掴み動作を継続して行うことにより、巻き上げを行うまでに5秒程度のタイムロスを発生させている。
【0130】
この実験結果は、情報処理装置1が地切状態への遷移を検出したことを契機として巻き上げを開始することにより、巻き上げ可能となってから巻き上げを行うまでのタイムロスを少なくすることができることを示している。
【0131】
〔変形例〕
上記実施形態で説明した各処理の実行主体は一例であり、適宜変更することができる。例えば、図9に示した学習方法、図10に示した情報処理方法、および図11に示した制御方法は、それぞれ複数のコンピュータに実行させることもできる。
【0132】
例えば、図9のS1~S4の処理を実行するコンピュータと、S5およびS6の処理を実行するコンピュータを含む学習システムによって、図9のS1~S6の処理を実現することもできる。また、例えば、図10のS12~S14の各処理を個別のコンピュータに行わせてもよいし、これらの処理を制御装置3が行うようにしてもよい。
【0133】
また、制御システム100の構成要素も上記実施形態の例に限られない。例えば、上記のように、図10のS12~S14の各処理を制御装置3が行うようにした場合、制御システム100の構成要素から情報処理装置1が省かれる。また、状態判定モデル等のモデルの構築は制御システム100外で行うようにしてもよく、この場合、制御システム100の構成要素から学習装置5が省かれる。また、撮影装置7は、制御のための画像を提供するものであり、制御自体には関与しないため、制御システム100の構成要素から外してもよい。この場合、制御システム100外の撮影装置7が撮影した画像を取得して制御を行うことになる。なお、制御システム100により動作制御されるクレーン93、およびクレーン93を備えたごみ焼却設備も本発明の範疇に含まれる。
【0134】
また、上述のように、情報処理装置1の判定および検出の結果は、自動制御に利用できると共に、手動制御の参考情報として利用することもできる。後者の場合、情報処理装置1の判定および検出の結果は、例えば表示装置等の出力装置に出力させて、クレーン93のオペレータに提示すればよい。これにより、クレーン93のオペレータは、当該出力結果を参考にしてクレーン93の手動制御を行うことができる。
【0135】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1、制御装置3、および学習装置5の制御ブロック(制御部10、30、50に含まれる各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0136】
後者の場合、情報処理装置1、制御装置3、および学習装置5は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0137】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1 情報処理装置
101 画像取得部
105 地切検出部(検出部)
3 制御装置
7 撮影装置
100 制御システム
93 クレーン
934 バケット
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