(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】パターン形成方法、半導体装置の製造方法、及びパターン形成材料
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20231113BHJP
G03F 7/11 20060101ALN20231113BHJP
G03F 7/40 20060101ALN20231113BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
G03F7/11 503
G03F7/40 521
(21)【出願番号】P 2020051206
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅川 鋼児
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 典克
(72)【発明者】
【氏名】杉村 忍
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-249437(JP,A)
【文献】特開2019-023251(JP,A)
【文献】特開2020-002227(JP,A)
【文献】特開昭62-079446(JP,A)
【文献】特開2015-228502(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
G03F 7/11
G03F 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工膜上に有機高分子を含むパターン形成材料を用いてエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクをパターニングする工程とを具備するパターン形成方法であって、
前記有機高分子は、前記有機高分子を構成する炭素原子のうち、sp
2軌道を有する炭素原子を70atom%以上含み、かつsp
3軌道を有する炭素原子を5atom%以上含み、
前記sp
3
軌道を有する炭素原子は、前記有機高分子の主鎖から原子数で4個以上離れた位置に存在し、
前記パターニングされたエッチングマスクは、フッ素原子を含むガスによる前記被加工膜のエッチングに用いられる、パターン形成方法。
【請求項2】
前記sp
3軌道を有する炭素原子は、炭素数が1以上6以下のアルカン又はシクロアルカンの置換基で構成される、請求項
1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記sp
2軌道を有する炭素原子の80atom%以上は、芳香環で構成される、請求項1
又は請求項
2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
さらに、前記パターン形成材料に金属化合物を含浸させて、前記エッチングマスクとして金属を含む複合膜を形成する工程を具備する、請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
被加工膜上に有機高分子を含むパターン形成材料を用いてエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクをパターニングする工程と、前記パターニングされたエッチングマスクを用いて、前記被加工膜をフッ素原子を含むガスでドライエッチングする工程とを具備する半導体装置の製造方法であって、
前記有機高分子は、前記有機高分子を構成する炭素原子のうち、sp
2軌道を有する炭素原子を70atom%以上含み、かつsp
3軌道を有する炭素原子を5atom%以上含
み、
前記sp
3
軌道を有する炭素原子は、前記有機高分子の主鎖から原子数で4個以上離れた位置に存在する、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記sp
3軌道を有する炭素原子は、炭素数が1以上6以下のアルカン又はシクロアルカンの置換基で構成される、請求項
5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記sp
2軌道を有する炭素原子の80atom%以上は、芳香環で構成される、請求項
5又は請求項
6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ガスは、前記フッ素原子と酸素原子とを含み、前記フッ素原子と前記酸素原子の比率が1:1(atom:atom)よりフッ素原子が多い、請求項
5ないし請求項
7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記フッ素原子は、前記ガス中に炭素数が1以上6以下のフッ化炭素として含まれる、請求項
5ないし請求項
8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記エッチングマスクは、前記パターン形成材料に金属化合物を含浸させて形成した複合膜である、請求項
5ないし請求項
9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
被加工膜上に、有機高分子を含むパターン形成材料を用いてエッチングマスクを形成し、前記エッチングマスクのパターニング後に、フッ素原子を含むガスにより前記エッチングマスクをマスクにして前記被加工膜をエッチングする際に用いられる、パターン形成材料であって、
前記有機高分子を構成する炭素原子のうち、sp
2軌道を有する炭素原子を70atom%以上含み、かつsp
3軌道を有する炭素原子を5atom%以上含
み、
前記sp
3
軌道を有する炭素原子は、前記有機高分子の主鎖から原子数で4個以上離れた位置に存在する、パターン形成材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法、半導体装置の製造方法、及びパターン形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置においては3次元デバイス化が進み、アスペクト比が高いパターンを形成する技術への要望が高まっている。このような工程に用いられるマスクパターンは、長時間エッチングガスに曝されるため、高いエッチング耐性が要求されると同時に、エッチング中もマスクパターンの形状をできるだけ維持することが求められている。すなわち、いわゆるマスクパターンの肩落ちを抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、高いエッチング耐性を有すると共に、パターンの形状を維持することを可能にしたパターン形成方法、半導体装置の製造方法、及びパターン形成材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のパターン形成方法は、被加工膜上に有機高分子を含むパターン形成材料を用いてエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクをパターニングする工程とを具備する。実施形態のパターン形成方法において、前記有機高分子は、前記有機高分子を構成する炭素原子のうち、sp2軌道を有する炭素原子を70atom%以上含み、かつsp3軌道を有する炭素原子を5atom%以上含み、前記sp
3
軌道を有する炭素原子は、前記有機高分子の主鎖から原子数で4個以上離れた位置に存在し、前記パターニングされたエッチングマスクは、フッ素原子を含むガスによる前記被加工膜のエッチングに用いられる。
【0006】
実施形態の半導体装置の製造方法は、被加工膜上に有機高分子を含むパターン形成材料を用いてエッチングマスクを形成する工程と、前記エッチングマスクをパターニングする工程と、前記パターニングされたエッチングマスクを用いて、前記被加工膜をフッ素原子を含むガスでドライエッチングする工程とを具備する。実施形態の半導体装置の製造方法において、前記有機高分子は、前記有機高分子を構成する炭素原子のうち、sp2軌道を有する炭素原子を70atom%以上含み、かつsp3軌道を有する炭素原子を5atom%以上含み、前記sp
3
軌道を有する炭素原子は、前記有機高分子の主鎖から原子数で4個以上離れた位置に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態のパターン形成方法の工程を示す図である。
【
図2】パターン形成方法において比較例のエッチングマスクに生じる肩落ちを示す図である。
【
図3】実施形態のパターン形成方法で用いられるエッチングマスキングを構成する有機高分子の一例を示す図である。
【
図4】実施形態のパターン形成方法で用いられるエッチングマスキングを構成する有機高分子の一例を示す図である。
【
図5】実施形態のパターン形成方法で用いられるエッチングマスキングを構成する有機高分子の一例を示す図である。
【
図6】実施形態の半導体装置の製造方法の工程を示す図である。
【
図7】参考例1及び比較例1で用いたエッチングマスキングのエッチング後のパターンの角部形状を示す図である。
【
図8】実施例2でエッチングマスキングとして用いた有機高分子を示す図である。
【
図9】比較例3でエッチングマスキングとして用いた有機高分子を示す図である。
【
図10】実施例2で用いた有機高分子の一部と置き換え得る化合物を示す図である。
【
図11】実施例2で用いた有機高分子の一部と置き換え得る化合物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のパターン形成方法及び半導体装置の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0009】
(パターン形成方法)
実施形態のパターン形成方法について、
図1を参照して説明する。
図1は実施形態のパターン形成方法の工程を示す断面図である。
図1に示すパターン形成方法において、まず
図1(A)に示すように、基板1上に形成された被加工膜2を用意し、被加工膜2上に特定の有機高分子を含むパターン形成材料を用いてエッチングマスク3を形成する。被加工膜2は特に限定されず、各種の機能膜を適用することができる。エッチングマスク3については、後に詳述する。次いで、
図1(B)に示すように、エッチングマスク3上にレジストパターン4を形成する。レジストパターン4は、エッチングマスク3上にレジスト膜を形成し、レジスト膜をリソグラフィ技術又はインプリント技術等を用いてパターニングすることにより形成される。インプリント技術においては、エッチングマスク3上にレジストを滴下し、微細なパターンが形成されたテンプレートをレジスト膜に押し付けて、紫外線を照射してレジスト膜を硬化させることによって、レジストパターン4を形成する。
【0010】
次いで、
図1(C)に示すように、レジストパターン4をマスクとして、エッチングマスク3をドライエッチングによりエッチング加工してパターニングする。
図1(C)はパターニングされたエッチングマスク3を示している。なお、レジスト膜とエッチングマスク3との間のエッチングガスに対するエッチングレートの差が小さい場合には、レジスト膜とエッチングマスク3との間に酸化珪素(SiO
2)膜等を介在させ、レジスト膜とSiO
2膜とをマスクとして、エッチングマスク3をパターニングしてもよい。この後、
図1(D)に示すように、レジストパターン4を除去することによって、被加工膜2上にパターニングされたエッチングマスク3を設けた構造体(パターン形成体)5が得られる。
【0011】
パターン形成体5は、
図1(E)に示すように、被加工膜2のパターニングに用いられる。具体的には、パターニングされたエッチングマスク3を介して、被加工膜2をエッチングガスに晒してドライエッチングする。これによって、パターニングされた被加工膜2が得られる。ドライエッチングには、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)やイオンビームエッチング(Ion BEtching:RIE)等が適用される。エッチングガスとしては、フッ素(F)原子を含むガスが用いられる。フッ素(F)は、例えば炭素数が1以上6以下のフッ化炭素(C
nF
2n+2、C
nF
2n、C
nF
2n-2:nは1以上6以下の数)としてエッチングガス中に存在させることが好ましい。エッチングガスは、さらに酸素(O
2)を含んでいることが好ましい。フッ素原子(F)と酸素原子(O)とを含むエッチングガスにおいて、これらの比率はフッ素原子と酸素原子の比率が1:1(atom:arom)よりフッ素原子が多いことが好ましい。また、アルゴン(Ar)や窒素(N
2)を必要に応じて添加してもよい。このとき、ArやN
2はフッ素原子と酸素原子の比率には含めない。
【0012】
上記したようなフッ素(F)原子を含むエッチングガスを用いて、パターニングされた被加工膜2を形成するとき、高いエッチング耐性が得られたとしても、エッチング時にマスクパターンの矩形形状を維持しにくい、言い換えると後述するように肩落ちが発生しやすいことが判明した。そこで、実施形態のパターン形成方法では、パターン形成材料に含まれる有機高分子を構成する炭素原子のうち、70atom%以上がsp2軌道を有する炭素原子(以下、sp2炭素原子とも記す。)で構成され、5atom%以上がsp3軌道を有する炭素原子(以下、sp3炭素原子とも記す。)で構成される有機高分子を含むパターン形成材料を使用し、そのようなパターン形成材料をエッチングマスクに適用としている。このようなエッチングマスクによれば、フッ素(F)原子を含むエッチングガスを用いて、被加工膜2をパターニングした場合においても、エッチング時及びエッチング後においても、マスクパターンの形状を維持することができる。このようなエッチングマスクによる耐エッチング性の維持と肩落ちの抑制効果について、以下に述べる。
【0013】
上記した肩落ちは、マスクパターンを用いて被加工膜をエッチング等により加工する際に発生する現象である。
図2にエッチングマスク3に肩落ちが発生する前後のマスクパターンの断面図を示す。
図2(A)は被加工膜2上にマスクパターン3Pが形成された状態を示し、
図2(B)はマスクパターン3Pをマスクとして被加工膜2がエッチングにより加工された状態を示す。
図2(B)において、マスクパターン3Pは断面上辺の角部Cが欠けた状態であり、このような状態を肩落ちが発生した状態と呼称する。マスクパターン3Pに肩落ちが発生すると、被加工膜2の寸法精度が低下する等の問題が生じる。実施形態のパターン形成方法は、エッチングマスク3Pとなるパターン形成材料に含まれる有機高分子の分子構造に上記した構成を適用することによって、肩落ちの発生を抑制している。
【0014】
本発明者等は、ドライエッチング工程においてマスク材のエッチング耐性を高めるにしたがって、
図2(B)に示すようなマスクパターン3Pの肩落ちが発生しやすいという問題があることを見出した。肩落ちは、エッチングする際にマスクパターンを加速されたイオンで叩いたときに、パターンの角部(肩の部分)のエッチング速度が速くなり、肩の部分から削られて形状を維持することができないと考えられる。例えば、3次元デバイス等のアスペクト比の高い加工が必要なとき、上記の肩落ちは非常に深刻な問題となる。この問題の原因を鋭意検討したところ、エネルギーの高い高加速イオンでエッチングするときに、物理的エッチングであるスパッタの要素が大きくなり、肩落ちが発生しやすいことが分かった。
【0015】
フッ素系ガスと酸素ガスとを含むガスを用いたエッチング、特にRIEのメカニズムを分解してみると、主に、酸素による化学的反応、フッ素(ハロゲン)による化学的反応、及び高エネルギーを持った粒子の物理的衝突によるスパッタの3要素から構成される。これまで検討されてきたエッチング耐性の向上については、マスク材に金属を導入して難燃化することによる酸素耐性の向上、マスク材中の炭素原子対酸素原子の構成比(Ohnishiパラメータ:J.Electrochem. Soc. vol. 130, 143, 1983)を上げることによるハロゲン耐性の向上等の施策が提案されており、これらはエッチング耐性の向上に効果を示すことが分かっている。しかしながら、これらの施策ではスパッタ耐性は向上せず、肩落ちが逆に悪化することもあり、解決策が求められていた。
【0016】
スパッタメカニズムは、Sigmundらが理論的に明らかにしたカスケード理論により説明できる(Sigmunnd, Physical Review, 184, 383, 1969)。このときに被スパッタ物質の物性の中で、スパッタ速度と相関が高いのは、原子間の結合エネルギーである。この結合エネルギーより低いエネルギーでイオンが入射されてもスパッタは起こらない(閾値エネルギー)。さらに、法線方向から入射する(低角入射)イオンより、接線方向から入射する(高角入射)イオンの方が、スパッタイールドが高いことが知られている。その結果、マスクパターンの角部(肩の部分)はエッチング速度が速くなり、肩の部分が先に削られる。この現象は、イオンの加速エネルギーが大きくなると、より顕著になる。
【0017】
また、入射角依存性については、原子番号が小さい方が高角のスパッタイールドが高いことが知られている(Oechsner, Z. Physik, 261, 37, 1973)。つまり、スパッタイールドのピーク角度は、元素が重くなると低角側にシフトする。これを肩落ち現象と関連させると、角度の大きいところにスパッタイールドの最大値がある物質では、パターンの角の部分がエッチングされやすく、このために肩落ちが顕著になる。RIEにおいては、ガスやガスの副生成物、エッチングによって飛ばされた原子や分子等の再付着も重要な要因である。例えば、フルオロカーボン系を用いたエッチングにおいては、FラジカルやCF2ラジカル等の付着(deposition)が多く起こる。その結果、エッチングの進行が遅くなったり、止まったりすることが知られている。
【0018】
既存のレジスト材料等で構成されたパターン付サンプルをRIEすると、エッチングにより膜厚が減少する。しかし、同レベルのエッチング耐性を持つパターン形成材料でも、肩落ちしやすい材料と角部形状が維持されて肩落ちしにくい材料がある。これは、RIEで発生するCFx系物質等の付着物が影響している。プラズマプロセスに重要な作用を果たしている物質はCF2ラジカルであると言われている(Hori et al., J. Vac. Sci. Technol. A 16 233 1998)。仮にそうであれば、ラジカルは長時間存在できないため、フッ素が何等かの形で化学結合を形成してポリマー等に付着していると考えられる。この場合、ポリマーを構成する元素と置換して定着するかどうかは、この元素間の結合エネルギーの差を比較すれば分かる。この理解によって、フッ素原子が付着しやすい材料設計等ができる。
【0019】
単純化のため、脂環構造をシクロヘキサンとし、1つの水素原子をフッ素原子に置換すると、175kJ/mol低下する。これに対し、ベンゼン環の1つの水素原子をフッ素原子に置換しても、38kJ/molしか低下しない。また、フッ素は原子半径が水素原子のそれより大きいため、フッ素原子に置換されると体積が大きくなる。例えば、アルカンの水素原子はフッ素原子に容易に置換されることが知られており、アルカンに比べてフッ化アルカンの体積は、原子半径の違いからアルカンのそれよりも大きくなる。水素からフッ素に置換する反応の進行は、出発物質と生成物の生成エネルギー差に正の相関があるため、アルカンの方がCFx系物質の付着が多く、結果として肩落ちが小さいことの辻褄が合う。その結果、フッ素系ガスでRIEを行うと、アルカンの一部がフッ化し、パターンの体積が増加することが予想される。
【0020】
さらに、結合エネルギーの関係から、例えばアルミニウム(Al)は酸化物よりフッ化物の方が安定であることが知られている。これにより、例えば有機材料への金属含浸処理(メタライズ)を行った際に該有機材料に形成された生成物(Al(OH)x)のAl-O結合を切ってエッチングが進む理由も分かる。具体的には、アルカンの置換基(CH3-CH2-等)の水素が引き抜かれてフッ素に置換されやすいため、パターンの角部が保護されると予想される。また、フッ素分子(F2)を用いた場合でも、アルカンの水素原子(H)を置換する反応にFラジカルが関与するため、RIE中での反応も同様と予想される。すなわち、パターンの肩が保護される有機高分子の特徴としては、高分子鎖の側鎖、特に側鎖の外側にアルカン鎖等が付加されたものであると考えられる。
【0021】
しかし、実施形態のパターン形成方法においては、上記の特徴に加えてエッチング耐性にも優れる有機高分子を含むパターン形成材料を得ることが求められる。ベンゼン環をはじめとする芳香環に比べ、アルカンは環状、鎖状に関わらず、エッチング耐性に劣る。このため、実施形態のパターン形成方法に用いられる有機高分子の主要部分は、芳香環等で構成される方が望ましい。しかしながら、芳香環で構成されたポリマーはドライエッチング耐性が高い反面、パターンの角部が削られやすい傾向があり、肩落ちという面では劣る。このため、有機高分子の主鎖部分は、例えば基本的に芳香環で構成し、高いドライエッチング耐性を保ちながら、高分子鎖の外側にフッ素原子を補足できるアンテナのようにアルカン等を付加させると、肩落ちを低減できると考えられる。
【0022】
具体的には、エッチングマスクのパターン形成材料に含まれる特定の有機高分子について、全ての炭素原子に対して70atom%以上がsp2軌道を有する炭素原子(以降、「sp2炭素原子」とも称する。)で構成され、かつ5atom%以上がsp3軌道を有する炭素原子(以降、「sp3炭素原子」とも称する。)で構成される。芳香環の炭素原子同士は2重結合され、sp2炭素原子を構成している。これらは炭素原子間の結合力が強く、ドライエッチング耐性に優れる。このため、有機高分子を構成する炭素原子は、主にsp2軌道を有する炭素原子で構成されることが好ましい。sp2軌道を有する炭素としては、カルボニル基(-C(=O)-)やカルボキシル基(-C(=O)-O-H)及びそれに基づく2価基(-C(=O)-O-)のsp2炭素原子が含まれていてもよい。ドライエッチング耐性の観点から、sp2炭素原子は全炭素中の70atom%以上であることが好ましい。さらに、85atom%以上に増やすとドライエッチング耐性がさらに向上する。
【0023】
これに対し、アルカンの炭素原子は直鎖状にsp3軌道で繋がっており、炭素-炭素の結合は単結合であるため、結合力が相対的に弱い。従って、エッチング耐性に劣る。なお、sp3軌道による結合もダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボンのように3次元ネットワークとなれば、ドライエッチング耐性が高くなる。アルカンを構成するsp3炭素原子はsp2炭素原子に比べて少数でよいが、有機高分子を構成する全ての炭素原子に対して5atom%以上がsp3炭素原子を含むことが好ましい。さらに、アルカンが高分子鎖の表面に存在すれば、立体効果によりフッ素と反応してフッ化物を形成しやすくなる。このとき、エッチングマスクに用いられるパターン形成材料に含まれる有機高分子は、主鎖を構成する構成原子から原子数で4以上離れている炭素原子がsp3炭素原子であることが好ましい。これにより、立体効果により水素がフッ素で置換しやすくなり、エッチング後のパターンの形状の維持効果を高めることができる。
【0024】
上述したように、実施形態のパターン形成方法に用いられるエッチングマスク3は、エッチングマスク3の形成に用いられるパターン形成材料に有機高分子を含み、該有機高分子を構成する炭素原子のうち、sp2軌道を有する炭素原子を70atom%以上含み、かつsp3軌道を有する炭素原子を5atom%以上含む。該有機高分子は、エッチング耐性の向上のために、sp2軌道を有する炭素原子が80atom%以上含むことが、さらに望ましい。エッチングマスク3は、上記した有機高分子のみで構成した有機膜であってもよいし、後述する有機膜に金属化合物を含浸させた複合膜であってもよい。有機膜に金属化合物を含浸させて金属-有機材料複合体を構成する工程を、メタライズと呼ぶ。なお、有機材料に含まれる炭素原子の一部はsp軌道を有する炭素原子であってもよい。
【0025】
図3及び
図4は実施形態のパターン形成方法でエッチングマスクの形成に用いられるパターン形成材料に含まれる有機高分子の一例を示している。sp
2炭素原子を70atom%以上含む有機高分子としては、例えば
図3に示すように、主鎖に芳香環を含むポリマーが挙げられる。芳香環は、ベンゼン環に限らず、
図3に示すように、ナフタレン環、アントラセン環等の多環式芳香環であってもよい。又は、多環式芳香環はピレン環であってもよい。図中のR
1は、アルキル鎖(-CH
2-)、エーテル(-O-)、エステル(-C(=O)-O-)、アミド(-C(=O)-NH-))、イミド(-C(=O)-NH-C(=O))、スルホニル(-SO
2-)のいずれかを含み、又は、原子がない場合もある。R
2は、芳香環、水酸基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミノ基(-NH
2)、ニトロ基(-NO
2)、スルホン酸(-SO
2OH)のいずれかを含み、もしくは水素原子(-H)である。R
3は、実施形態の直鎖や分岐のある炭素数が1以上6以下のアルキル基又はシクロアルキル基を示している。
【0026】
実施形態の有機高分子は、
図4に示すように、主鎖が芳香環を含まない場合でも、sp
2炭素原子を70atom%以上含めばよい。R
4は水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基のいずれかを含み、R
5はアルキル鎖(-CH
2-)、エーテル(-O-)、エステル(-C(=O)-O-)、アミド(-C(=O)-NH-))、イミド(-C(=O)-NH-C(=O))、スルホニル(-SO
2-)のいずれかを含み、又は原子がない場合もある。R
6は、実施形態の直鎖や分岐のある炭素数が1以上6以下のアルキル基又はシクロアルキル基を示している。
【0027】
実施形態の有機高分子は、
図3及び
図4に示すポリマーを、単独で用いることもできるが、様々な必要特性の向上を満たすため、一般的にはこれらを組み合わせた共重合体として使用される。又は、実施形態のパターン形成材料は、該有機高分子以外の材料を含んでいてもよい。また、エッチングマスク3として使用される際は、上記した有機高分子のみで構成した有機膜であってもよいし、後述する有機膜に金属化合物を含浸させた複合膜であってもよい。又は、実施形態のパターン形成材料は、該有機高分子以外の材料を含んでいてもよい。その場合、溶媒を除いたパターン形成材料のうち、70重量%以上の該有機高分子を含んでいればよい。
【0028】
有機高分子の側鎖には、芳香環や炭化水素基のみに限らず、水酸基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミノ基(-NH2)、ニトロ基(-NO2)、スルホン酸(-SO2OH)等を含んでいてもよく、さらにアルキル基(-CnHn+2)を含んでいてもよい。有機高分子は、例えばポリスチレンのように、脂肪族炭化水素基(-CH2-等)で構成された主鎖に芳香環が結合した材料であってもよい。エッチング耐性を向上させるにあたって、有機高分子はsp2炭素原子の80atom%以上が芳香環で構成されていることが好ましい。
【0029】
前述のsp
3炭素原子を含む基は、主鎖を構成する原子から原子数で4以上離れている炭素を含むことが好ましい。
図5に実施形態で定義する「主鎖からの原子数」の詳細を説明する。
図5中の数字は主鎖の連結部の原子からの「原子数」を示しており、実施形態の「主鎖からの原子数」を表している。この「原子」は、炭素原子であることが多いが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の一般的な有機化合物を構成する水素原子以外の原子でもよい。なお、炭素原子はsp
2炭素原子でもsp
3炭素原子でもよい。高分子鎖は長い鎖であり、それがランダムに糸のように絡みあっている。このため、外部からプレカーサーのような分子が来ても、主鎖に近い原子には接近しにくい。主鎖から遠くなると、立体障害が緩和され、実施形態のメカニズムであるフッ素原子の付着・交換反応が起こりやすくなる。これらの様子は、分子軌道法や分子動力学法を用いて計算することができる。以上の理由から、主鎖に含まれるsp
3炭素原子や主鎖に近いsp
3炭素原子に付加している水素原子が、フッ素原子に置き換わる確率は低い。これに対し、主鎖から遠いsp
3炭素原子に付加している水素原子は、容易にフッ素原子と交換することができる。
【0030】
上記したような有機高分子に含まれるsp
3炭素原子としては、直鎖や分岐のあるアルキル基やシクロアルキル基で構成されることが好ましい。
図3及び
図4において、R
2もしくはR
6はアルキル基又はシクロアルキル基を示している。アルキル基は、直鎖状構造及び分岐のある構造のいずれを有していてもよい。このような基は、いずれもsp
3炭素原子を含んでおり、フッ化炭素等を含むエッチングガスを用いたエッチング工程において、水素原子のフッ素原子との置換が生じやすい。この結果、パターン表面と特に角部に、いわゆる付着(deposition)が生じ易くなり、エッチング後におけるマスクパターンの肩落ちを抑制することができる。sp
3炭素原子を含む基は、炭素数が1以上6以下のアルキル基やシクロアルキル基であることが好ましい。
【0031】
次に、有機膜のメタライズについて述べる。例えば、
図1(D)に示したパターニングされた有機膜としてのエッチングマスク3をメタライズすることによって、メタライズされたエッチングマスク(マスクパターン)3を得る。有機膜のメタライズは、例えば、以下のようにして行われる。基板1上に被加工膜2及び有機膜3を順に形成した積層体を真空装置内に搬入し、有機膜3を金属含有流体としてトリメチルアルミニウム(trimethylaluminium:TMA)等の金属化合物の気体又は液体に曝露する。この際、例えば有機膜3中のカルボニル基等に金属化合物の分子が吸着され、カルボニル基の末端基(例えば炭化水素基)が脱離する。そして、金属化合物(Al(CH
3)
x)等が有機膜3中の酸素原子に強固に結合した構造が形成される。有機膜3への金属化合物の暴露処理は加熱下で行うのが好ましい。加熱温度は、金属化合物の種類及び有機膜3を構成する有機材料の種類に応じて適宜選択される
【0032】
金属化合物としては、CVD法や原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法で用いる金属化合物が特に制限なく使用できる。金属化合物に含まれる金属としては、アルミニウム、チタン、タングステン、バナジウム、ハフニウム、ジルコニウム、タンタル、モリブデン等が挙げられる。これらの有機金属化合物やハロゲン化物のうち、十分に小さい配位子を備えるものが金属化合物として使用可能である。具体的には、使用可能な金属化合物は、AlCl3、TiCl4、WCl6、VCl4、HfCl4、ZrCl4、Al(CH3)3等が挙げられる。有機膜のメタライズは、気相中でのメタライズに限らず、液相中でメタライズしてもよい。
【0033】
(半導体装置の製造方法)
次に、実施形態の半導体装置の製造方法について、
図6を参照して説明する。
図6は実施形態の半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
図6に示す半導体装置の製造方法において、まず
図6(A)に示すように、半導体基板11上に被加工膜12を形成する。被加工膜12は、例えば窒化珪素13と酸化珪素膜14とが交互に積層された積層膜である。積層膜は、例えば縦型トランジスタ構造のメモリセルを有する三次元積層型不揮発性メモリデバイスの製造に用いられる。このような積層膜からなる被加工膜2上に、特定の有機高分子を含むパターン形成材料を用いたエッチングマスク3を形成する。エッチングマスク3は、前述した実施形態のパターン形成方法で用いたエッチングマスクと同様である。
【0034】
次に、
図6(B)に示すように、エッチングマスク3上にレジストパターン4を形成する。レジストパターン4は、実施形態のパターン形成方法と同様に、エッチングマスク3上に形成されたレジスト膜をリソグラフィ技術又はインプリント技術等を用いてパターニングすることにより形成される。次いで、
図6(C)に示すように、レジストパターン4をマスクとして、エッチングマスク3をドライエッチングによりエッチング加工してパターニングする。
図6(D)に示すように、レジストパターン4を除去した後、パターニングされたエッチングマスク3を介して、被加工膜12をエッチングガスに晒してドライエッチングする。このようなドライエッチングによって、
図6(E)に示すように、パターニングされた被加工膜12が得られる。
【0035】
ドライエッチングには、RIEやIBE等が適用される。エッチングガスとしては、フッ素原子(F)を含むガスが用いられる。フッ素原子(F)は、例えば炭素数が1以上6以下のフッ化炭素(CnF2n+2、CnF2、CnF2n-2:nは1以上6以下の数)としてエッチングガス中に存在させることが好ましい。エッチングガスは、さらに酸素ガス(O2)を含んでいることが好ましい。フッ素原子(F)と酸素原子(O)とを含むエッチングガスにおいて、これらの比率はフッ素原子と酸素原子の比率が1:1(atom:atom)よりフッ素原子が多いことが好ましい。このようなフッ化炭素等を含むエッチングガスを用いることによって、上記した積層膜等の被加工膜12を効果的にエッチングすることができる。
【0036】
前述した実施形態のパターン形成方法で説明したように、特定の有機高分子を含むエッチングマスク3を適用することによって、被加工膜12をフッ化炭素等を含むエッチングガスでドライエッチングした場合においても、高いエッチング耐性が得られると共に、エッチング後のエッチングマスク3のパターンの肩落ちを抑制することができる。従って、
図6に示した被加工膜12のように、アスペクト比が高いホール等を有するパターンを形成する場合においても、被加工膜12のパターン形成精度を高めることができる。これによって、半導体装置の形成精度や製造歩留り等を向上させることが可能になる。なお、実施形態の半導体装置の製造方法において、被加工膜12は上記したような積層膜に限られるものではなく、各種の膜を適用することができる。
【0037】
図6(E)に示すパターニングされた被加工膜12は、例えば既知の方法を用いてメモリセルアレイの作製に適用される。例えば、上記処理により積層膜にホールパターン(メモリホール)を形成したとする。そのようなメモリホール内に、ブロック絶縁層、電荷蓄積層、トンネル絶縁層、チャネル層、及びコア層を順に形成する。さらに、メモリホールとは別に形成されたスリットを介して、積層膜のうちの窒化膜のみを除去し、それにより生じた空間内に導電膜を埋め込む。これによって、絶縁膜(酸化膜)と導電膜とが交互に積層された積層膜が得られ、縦型トランジスタ構造のメモリセル構造を形成することができる。積層膜中の導電膜はワード線として機能させることができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を用いて本実施形態をさらに詳しく説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下には実施形態のエッチングマスクの反応を確認するために、モデル化合物を合成してそれらの特性を評価した結果を示す。
【0039】
(参考例1、比較例1)
参考例1及び比較例1では、アクリル樹脂を適用する。まず、フッ化されやすいと考えられるポリマーとして、シクロアルカンが側鎖に付いたメタクリル酸シクロヘキシル(cyclohexyl methacrylate:CM)とアクリル酸シクロヘキシル(cyclohexyl acrylate:CA)を、それぞれ重合してポリマー(参考例1)を作製した。また、フッ化されにくいポリマーとして、ベンゼン環が側鎖についたメタクリル酸フェニル(phenyl methacrylate:PM)とアクリル酸フェニル(phenyl acrylate:PA)を、それぞれ重合してポリマー(比較例1)を作製した。
【0040】
さらに、4-メチルフェニルメタクリル酸(4-methylphenyl methacrylate:MPM)と4-メチルフェニルアクリル酸(4-methylphenyl acrylate:MPA)を選択し、それぞれ重合してポリマーを作製した。これらのポリマーは構造的に似ているが、側鎖の6員環がシクロアルカンであるシクロヘキサンであるか、芳香環であるベンゼン環であるかの違いであり、純粋にフッ素原子の付着による肩落ち効果を観察できる。
【0041】
全てのポリマーは溶媒耐性を持たせるため、架橋性のメタクリル酸グリシジル(glycidyl methacrylate:GM)を2モル%共重合させた。2モル%GMは、架橋により溶媒耐性を持たせるには十分な割合であるが、量が少ないためRIE反応後の肩落ち特性を見る際には無視できる量である。これらのポリマーの架橋基であるGMに対して、相手方の架橋剤としてクエン酸(citric acid)を混合し、シクロヘキサノン(cyclohexanone)溶媒に溶解させた。このとき、GMのグリシジル基とクエン酸のカルボニル基を等モル比になるように混合した。スピン塗布及びアニールにより架橋まで行った。
【0042】
架橋が起こるとレジスト溶液であるプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(propylene glycol monomethyl ether acetate:PGMEA)溶媒耐性が発現し、レジストを塗布した後にパターン露光が可能になり、200℃以上のアニールでPGMEA溶媒耐性を示すことを確認した。膜厚は約1.5μmになるように濃度と回転数で調整した。その上から、スピンオングラス(Spin On Glass:SOG)としてJSR NSC SOG270-61を50nm厚で塗布し、200℃でSOGを硬化させた。さらに、その上からi線レジスト(Fuji, FHi-672B)を0.4μm厚で塗布した。i線露光装置を用いてラインアンドスペース(L/S)及びコンタクトホール(CH)パターンを印加し、水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide:TMAH)水溶液で現像してパターニングした。得られたレジストパターンをマスクにしてCF4RIEでSOGを除去した後、O2RIEを行い、上記ポリマー膜をエッチングしてパターンを転写した後、PGMEA溶媒でレジストを除去した。
【0043】
上記した各サンプルについて、エッチングガスにCF
4ガスを用いてRIEを行った。その結果、肩落ち量を比較すると、L/Sパターン及びCHパターン共に、PA≧PM>MPA≧MPM>>CA≧CMの順になった。これより、主に芳香環で構成されるPAやPMに比べシクロアルカンで構成されるCAやCMの方が、肩落ち量が少ないことが分かった。さらに、ベンゼン環の先にメチル基を付加したMPMやMPAも肩落ちが見られなかった。また、微妙な差ではあるがメタクリル酸の方が、アクリル酸より肩落ちが少ない傾向がみられる。以上より、アルカンの方が芳香環より肩落ちに対する耐性に優れることが分かる。
図7に各サンプルのエッチング後のパターン形状を示す。
図7において、線が太く示される部分は、例えばエッチングによる付着物を示している。
【0044】
以上はアクリルポリマーの結果であるが、RIE耐性の高いベンゼン環をナフタレン環やアントラセン環、フェナントレン環に置き換えても同じことが起こる。すなわち、同様の方法でアクリル酸ナフチル(naphthylacrylate)とアクリル酸メチルナフチル(methyl-naphthylacrylate)と比較すると、メチル基が付加された方が肩落ちが小さい。同様に、アクリル酸アントラセン(anthracyl acrylate)、アクリル酸フェナントリル(phenanthryl acrylate)でもメチル基が付加された方が肩落ちが小さい。メチル基よりは、エチル基の方がさらに肩落ち防止効果が大きく、さらに炭素数が多いアルカンの方が効果的である。ただし、アルキル基を伸ばし過ぎると肝心のエッチング耐性が劣化する。このため、アルキル基の炭素数は6以下が好ましい。また、フッ素系ガスと酸素ガスの混合ガスでRIEを行っても、同様の傾向が得られる。
【0045】
以上の検証結果から、実施形態の基本的な考え方が確認された。ただし、アクリル樹脂は、主鎖が単結合で構成され、さらに各エステル結合に2つの酸素原子が含まれている。このため、Ohnishiパラメータ的な観点からRIE耐性は高くないため、さらにエッチング耐性の高い材料で実施形態の考え方を検証する。
【0046】
(実施例1、比較例2)
実施例1及び比較例2では、スチレン系樹脂を適用する。まず、ポリスチレン(polystyrene:PS)、ポリ(4-メチルスチレン)(poly(4-methylstyrene:P4MS)、ポリ(2-ビニルナフタレン)(poly(2-vinylnaphtalene:PVN)、ポリ(2-フェニル-6-メチルナフタレン)(poly(2-pthenyl-6-methylnaphthalene:P6MVN)をそれぞれ重合した。参考例1と同様に、架橋基としてGMを2モル%共重合した。また、重合開始剤にはアゾビスイソブチロニトリル(azobis(isobutyronitrile):AIBN)を用い、合成溶媒にはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)を用いた。
【0047】
参考例1と同様に、これらのポリマーの架橋基であるGMに対して、相手方の架橋剤としてクエン酸(citric acid)をシクロヘキサノン(cyclohexanone)溶媒に溶解させた。このとき、GMのグリシジル基とクエン酸のカルボニル基を等モル比になるように混合した。スピン塗布及びアニールにより架橋まで行った。架橋起こるとPGMEA溶媒耐性が発現し、レジストを塗布してパターン露光が可能になり、200℃以上のアニールでPGMEA溶媒耐性があることを確認した。膜厚は約1.5μmになるように濃度と回転数で調整した。その上から、SPGとしてJSR NSC SOG270-61を50nm厚で塗布し、200℃でSOGを硬化させた。さらに、その上からi線レジスト(Fuji, FHi-672B)を0.4μm厚で塗布した。i線露光装置を用いてラインアンドスペース(L/S)及びコンタクトホール(CH)パターンを印加し、TMAH水溶液で現像してパターニングした。得られたレジストパターンをマスクにしてCF4RIEでSOGを除去した後、O2RIEを行い、上記ポリマー膜をエッチングしてパターンを転写した後、PGMEA溶媒でレジストを除去した。
【0048】
上記した各サンプルについて、エッチングガスにCF4ガスを用いてRIEを行った。その結果、肩落ち量を比較すると、L/Sパターン及びCHパターン共に、P4MS>PS及びP6MVN>PVNの順になった。芳香環の先にメチル基を付加したP4MSやP6MVNには肩落ちが見られなかった。これらのことはアクリルポリマーと同様に、RIE耐性の高い芳香環をアントラセン環、フェナントレン環に置き換えても同じことが起こる。メチル基よりは、エチル基の方がさらに肩落ち防止効果が大きい。しかし、アルキル基を伸ばし過ぎると肝心のエッチング耐性が劣化する。このため、アルキル基の炭素数は6以下とすることが好ましい。
【0049】
(実施例2、比較例3)
実施例2及び比較例3では、芳香環骨格を有する有機化合物を適用する。実施例2として、2,2’-[メチレンビス(1,2-ナフタレンジイルオキシメチレン)]ビス[オキシラン](CAS番号:1059-93-4)0.5molと3-ヒドロキシ-7-メチル-2-ナフタレンカルボン酸(CAS番号:143355-55-9)1.0molを、2-メトキシ-1-プロパノール溶液中に溶解し、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.025molを加えて120℃で8時間反応させた。反応生成物に1Lのメチルイソブチルケトン(methylisobutylketone:MIBK)を加えて分液漏斗に投入し、純水で数回洗浄した。有機相を減圧乾燥して、
図8に示す個体の化合物(1)を回収した。
【0050】
比較例3として、3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸(CAS番号:92-70-6)を、3-ヒドロキシ-7-メチル-2-ナフタレンカルボン酸の代わりに用いて、同様の反応を行い、
図9に示す個体の化合物(2)を回収した。
【0051】
架橋剤として、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(CAS番号:17464-88-9)とトリプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸メチル(CAS番号:1001324-50-0)をPGMEA溶媒に溶解させ、250℃で60秒間アニールした。この250℃以上のアニールでPGMEA溶媒耐性があることを確認した。膜厚は約1.0μmになるように濃度と回転数で調整した。その上から、SPGとしてJSR NSC SOG270-61を50nm厚で塗布し、200℃でSOGを硬化させた。さらに、その上からi線レジスト(Fuji, FHi-672B)を0.4μm厚で塗布した。i線露光装置を用いてラインアンドスペース(L/S)及びコンタクトホール(CH)パターンを印加し、TMAH水溶液で現像してパターニングした。得られたレジストパターンをマスクにしてCF4RIEでSOGを除去した後、O2RIEを行い、上記ポリマー膜をエッチングしてパターンを転写した後、PGMEA溶媒でレジストを除去した。
【0052】
上記した各サンプルについて、エッチングガスにCF4ガスを用いてRIEを行った。その結果、肩落ち量を比較すると、L/Sパターン及びCHパターン共に、化合物(1)>化合物(2)の順になった。これより、芳香環の外側にメチル基を付加することで、肩落ちが低減されることが分かった。
【0053】
ここで、2,2’-[メチレンビス(1,2-ナフタレンジイルオキシメチレン)]ビス[オキシラン]に代えて、
図10に示す化合物(3)~(6)を用いても、同様の結果が得られる。また、3-ヒドロキシ-7-メチル-2-ナフタレンカルボン酸に代えて、
図11に示す化合物(7)~(11)を用いても、同様の結果が得られる。
図11において、Rは炭素数が1~6のアルキル基である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1…基板、2,12…被加工膜、3…エッチングマスク、4…レジストパターン、11…半導体基板、13…窒化膜、14…酸化膜。