(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】光検出器及び距離計測装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4861 20200101AFI20231113BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231113BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20231113BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20231113BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01C3/06 120Q
G01S17/10
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2020053221
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0249998(US,A1)
【文献】特表2018-528437(JP,A)
【文献】特表2009-544023(JP,A)
【文献】特開2020-031180(JP,A)
【文献】特開2019-190892(JP,A)
【文献】特開2018-044923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
G01J 1/00 - 1/60
11/00
H01L 27/14 - 27/148
27/30
29/76
31/00 - 31/02
31/08 - 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を出射する投光部と、アナログ-デジタル変換と時間-デジタル変換とを実行可能な信号処理部とを備える距離計測装置で使用される光検出器であって、
基板上に2次元に配置された複数のセンサを含む受光部と、
前記受光部に前記複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1の受光領域と、前記第1の受光領域と異なる第2の受光領域とを設定し、
前記第1の受光領域は、各々が少なくとも1つの前記センサを含む第1の画素領域と第2の画素領域とを含み、
前記第2の受光領域は、前記第1の画素領域と前記第2の画素領域それぞれの面積よりも広く、前記第1の画素領域と前記第2の画素領域それぞれよりも多くの前記センサを含む第3の画素領域を含み、
前記第1の画素領域の出力信号と、前記第2の画素領域の出力信号とに、個別にアナログ-デジタル変換処理が実行され、
前記第3の画素領域の出力信号に、時間-デジタル変換処理が実行される、
光検出器。
【請求項2】
前
記信号処理部をさらに備え、
前記信号処理部は、
前記第1の画素領域
の前記出力信号と前記第2の画素領域
の前記出力信号とのそれぞれに対して、
前記アナログ-デジタル変換処理を実行し、
前記第3の画素領域
の前記出力信号に対して、
前記時間-デジタル変換処理を実行する、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記第1の受光領域から出力される出力信号の数と、前記第2の受光領域から出力される出力信号の数とが異なる、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の受光領域と前記第2の受光領域と異なる第3の受光領域をさらに設定し、
前記第1の受光領域は、前記第2の受光領域と前記第3の受光領域との間に配置され、前記第3の受光領域は、前記第1の画素領域と前記第2の画素領域それぞれの面積よりも広い第4の画素領域を含み、
前記第4の画素領域の出力信号に、時間-デジタル変換処理が実行される、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項5】
前記複数のセンサの各々は、アノードが第1電源ノードに接続されたアバランシェフォトダイオードと、一端が第2電源ノードに接続され、他端が前記アバランシェフォトダイオードのカソードに接続されたクエンチ素子とを含み、
前記制御部は、前記センサをオンさせている時に、前記第1電源ノードに第1電圧を印加し、前記第2電源ノードに前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項6】
前記複数のセンサの各々は、前記アバランシェフォトダイオードの前記カソードに接続されたトランジスタをさらに含み、
前記制御部は、前記第1の受光領域と前記第2の受光領域とを設定した際に、前記トランジスタをオフ状態に制御して、前記トランジスタをオフ状態にさせてから第1時間経過した後に、前記トランジスタを一時的にオン状態に変化させる、
請求項
5に記載の光検出器。
【請求項7】
光信号を出射する投光部と、
基板上に2次元に配置された複数のセンサを含む受光部と、
前記受光部に前記複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する制御部と、
アナログ-デジタル変換と時間-デジタル変換とを実行可能な信号処理部と、
を備え、
前記制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1の受光領域と、前記第1の受光領域と異なる第2の受光領域とを設定し、
前記第1の受光領域は、各々が少なくとも1つの前記センサを含む第1の画素領域と第2の画素領域とを含み、
前記第2の受光領域は、前記第1の画素領域と前記第2の画素領域それぞれの面積よりも広く、前記第1の画素領域と前記第2の画素領域それぞれよりも多くの前記センサを含む第3の画素領域を含み、
前記信号処理部は、
前記第1の画素領域の出力信号と、前記第2の画素領域の出力信号とに、個別にアナログ-デジタル変換処理を実行し、
前記第3の画素領域の出力信号に、時間-デジタル変換処理を実行する、
距離計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記投光部が前記光信号を出射する第1のタイミングと、前記受光部が前記光信号の反射光を受光する第2のタイミングとに基づいて、前記光信号を反射した対象物との間の距離を計測する、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、
前記第1の画素領域の出力に対してアナログ-デジタル変換処理が実行された第1の電気信号と、前記第2の画素領域の出力に対してアナログ-デジタル変換処理が実行された第2の電気信号とを加算して出力し、
前記第3の画素領域の出力に対して時間-デジタル変換処理が実行された第3の電気信号を出力し、前記第3の電気信号に基づいて光強度の時間変化を表す第4の電気信号を生成し、
前記制御部は、前記第1の電気信号と前記第2の電気信号とが加算された前記出力から第1の閾値を超えている期間を検出し、前記第4の電気信号において前記期間に含まれたピークの時刻を前記第2のタイミングとする、
請求項
8に記載の距離計測装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記期間において前記第4の電気信号が複数のピークを含む場合、最も強いピークの時刻を前記第2のタイミングとする、
請求項
9に記載の距離計測装置。
【請求項11】
前記受光部は、光が照射されると、前記第1の受光領域内の前記第1の画素領域と前記第2の画素領域とのそれぞれと、前記第2の受光領域内の前記第3の画素領域から、信号を出力させる、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1の受光領域と前記第2の受光領域と異なる第3の受光領域をさらに設定し、
前記第1の受光領域は、前記第2の受光領域と前記第3の受光領域との間に配置され、前記第3の受光領域は、前記第1の画素領域と前記第2の画素領域それぞれの面積よりも広い第4の画素領域を含み、
前記受光部は、光が照射されると、前記第3の受光領域内の前記第4の画素領域から、信号を出力させる、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項13】
前記第1の受光領域は、前記第1の受光領域と前記第2の受光領域とが隣り合う第1方向と交差する第2方向に並んだ第1及び第2チャネルを含み、
前記制御部は、前記投光部によって出射された1つの光信号と、前記受光部が受光した前記1つの光信号に関連付けられた反射光の受光結果とに基づいて、前記光信号を受けた対象物との間の前記第1チャネルに対応する距離と前記第2チャネルに対応する距離とのそれぞれを計測する、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項14】
前記複数のセンサの各々は、アノードが第1電源ノードに接続されたアバランシェフォトダイオードと、一端が第2電源ノードに接続され、他端が前記アバランシェフォトダイオードのカソードに接続されたクエンチ素子とを含み、
前記制御部は、前記センサをオンさせている時に、前記第1電源ノードに第1電圧を印加し、前記第2電源ノードに前記第1電圧よりも高い第2電圧を印加する、
請求項
7に記載の距離計測装置。
【請求項15】
前記複数のセンサの各々は、前記アバランシェフォトダイオードの前記カソードに接続されたトランジスタをさらに含み、
前記制御部は、前記第1の受光領域と前記第2の受光領域とを設定した際に、前記トランジスタをオフ状態に制御して、前記トランジスタをオフ状態にさせてから第1時間経過した後に、前記トランジスタを一時的にオン状態に変化させる、
請求項
14に記載の距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、光検出器及び距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離計測装置が知られている。LiDARは、レーザ光を対象物に照射し、対象物から反射された反射光の強度をセンサ(光検出器)によって検出する。そして、LiDARは、センサから出力される光強度信号に基づいて、LiDARから対象物までの距離を計測する。LiDARで使用されるセンサは多々有るが、今後有望なものとして、2次元に配列された複数のシリコンフォトマルチプライヤを備える二次元センサ(2Dセンサ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
距離計測装置において、近距離対象物に対する距離計測の精度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の光検出器は、受光部と、制御部とを含む。受光部は、基板上に2次元に配置された複数のセンサと、各々が少なくとも一つのセンサを含む複数の画素とを含む。制御部は、受光部に複数のセンサを選択的にオンさせた受光領域を設定する。制御部は、外部から入力された座標の情報に基づいて、第1の受光領域と、第1の受光領域と異なる第2の受光領域とを設定する。第1の受光領域は、各々が少なくとも1つの画素を含む第1の画素領域と第2の画素領域とを含む。第2の受光領域は、第1の画素領域と第2の画素領域との合計の面積よりも広い第3の画素領域を含む。受光部は、光が照射されると、第1の受光領域内の第1の画素領域と第2の画素領域とのそれぞれから個別に信号を出力させ、第2の受光領域内の第3の画素領域から纏めて信号を出力させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る距離計測装置の全体構成の一例を示す概略図。
【
図2】第1実施形態に係る光検出器の平面レイアウトの一例を示す平面図。
【
図3】第1実施形態に係る光検出器の備えるSPADユニットの回路構成の一例を示す回路図。
【
図4】アバランシェフォトダイオードの構造の一例とSPADの動作原理とを示す概略図。
【
図5】第1実施形態に係る光検出器の備える受光部における受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
【
図6】第1実施形態に係る光検出器の出力部の構成の一例を示すブロック図。
【
図7】第1実施形態に係る光検出器の出力部の備える信号処理部の構成の一例を示すブロック図。
【
図8】第1実施形態に係る光検出器における信号処理方法の一例を示す概略図。
【
図9】第1実施形態に係る光検出器における信号処理方法の一例を示す概略図。
【
図10】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法の一例を示す概略図。
【
図11】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法の一例を示す概略図。
【
図12】第1実施形態に係る距離計測装置におけるレーザ光のスキャン方法の一例を示す概略図。
【
図13】非同軸光学系の距離計測装置における反射光の変化の一例を示す概略図。
【
図14】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作における光検出器の受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
【
図15】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において光検出器に照射される入射光の形状の一例を示す平面図。
【
図16】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において遠距離の対象物を検出した場合の計測結果の一例を示す光強度分布図。
【
図17】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において近距離の対象物を検出した場合の計測結果の一例を示す光強度分布図。
【
図18】第1実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において近距離の対象物を検出した場合の計測結果の解析方法のその他の一例を示す光強度分布図。
【
図19】第2実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作における光検出器の受光領域の設定方法の一例を示す平面図。
【
図20】第3実施形態に係る光検出器の備えるSPADユニットの回路構成の一例を示す回路図。
【
図21】第3実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において対象物を検出した場合の計測結果の一例を示す光強度分布図。
【
図22】第3実施形態に係る距離計測装置の距離計測動作において対象物を検出した場合の計測結果の一例を示す光強度分布図。
【
図23】第1実施形態の変形例に係る距離計測装置における投光系及び受光系の配置の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。各実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。尚、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。参照符号を構成する文字の後の数字は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。
【0008】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば当該距離計測装置1と対象物と間の距離を計測することが可能なLiDAR(Light Detection and Ranging)の一種である。以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1について説明する。本明細書において“対象物TG”とは、距離計測装置1が距離を計測する範囲に含まれる物体のことを示している。
【0009】
[1-1]構成
[1-1-1]距離計測装置1の構成について
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の全体構成の一例を示している。
図1に示すように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、例えば、出射部10、光学系20、計測処理部30、及び画像処理部40を備えている。
【0010】
出射部10は、距離計測装置1が対象物TGとの間の距離の計測に用いるためのレーザ光を生成及び出射する。出射部10は、例えば、制御部11、発振器12、第1駆動回路13、第2駆動回路14、及び光源15を含んでいる。尚、制御部11は、出射部制御のための出射用制御部と、計測処理部(受光部)のための受光用制御部とに分かれていても良い。この場合、出射用制御部は出射部10に含まれ、受光用制御部は計測処理部(受光部)30に含まれる。
【0011】
制御部11は、距離計測装置1の全体の動作を制御する。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んでいる。制御部11のROMは、例えば距離計測装置1の動作に使用されるプログラムを格納している。制御部11のCPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、例えば発振器12並びに第1駆動回路13及び第2駆動回路14を制御する。
【0012】
発振器12は、制御部11による制御に基づいて、パルス信号を生成する。そして、発振器12は、生成したパルス信号を第1駆動回路13に出力する。パルス信号が立ち上がるタイミングは、出射部10がレーザ光を出射するタイミングに対応している。
【0013】
第1駆動回路13は、発振器12から入力されたパルス信号に応じて駆動電流を生成し、生成した駆動電流を光源15に供給する。つまり、第1駆動回路13は、光源15の電流供給源として機能する。
【0014】
第2駆動回路14は、制御部11による制御に応じて駆動電流を生成し、生成した駆動電流を光学系20のミラー24に供給する。つまり、第2駆動回路14は、ミラー24の電源回路として機能する。
【0015】
光源15は、レーザダイオード等のレーザ光源である。光源15は、第1駆動回路13から供給された駆動電流に基づいて、レーザ光L1を間欠的に発光(出射)する。レーザ光L1は、後述する光学系20を介して対象物TGに照射される。
【0016】
光学系20は、入射したレーザ光L1を2つに分ける。そして、光学系20は、2つに分けたレーザ光L1の一方を対象物TGに出射し、他方を計測処理部30の光検出器31に出射する。光学系20は、例えば、レンズ21、光学素子22、レンズ23、及びミラー24を含んでいる。
【0017】
レンズ21は、光源15から出射されたレーザ光L1の光路上に配置される。レンズ21は、当該レンズ21を通過するレーザ光L1をコリメートして、コリメートしたレーザ光L1を光学素子22に導光する。
【0018】
光学素子22は、レンズ21によって導かれたレーザ光L1を2つに分ける。2つに分けられたレーザ光L1は、それぞれレンズ23の方向とミラー24の方向とに向かって出射される。光学素子22は、例えばビームスプリッタである。
【0019】
レンズ23は、光学素子22によって分けられたレーザ光L1の一方の光路上に配置される。レンズ23は、当該レンズ23を通過するレーザ光L1を集光して、集光したレーザ光L1を計測処理部30の光検出器31に導光する。つまり、レンズ23は、距離計測装置1が外部に出射する前のレーザ光L1の一部を光検出器31に集める。
【0020】
ミラー24は、当該ミラー24に入射したレーザ光L1を反射する。ミラー24は、第2駆動回路14から供給される駆動電流に基づいて駆動する。例えば、ミラー24の反射面は、互いに交差する2つの軸を中心として回転可能に構成される。ミラー24から反射されたレーザ光L1は、距離計測装置1の外部の対象物TGに出射される。
【0021】
計測処理部30は、光学系20から導かれたレーザ光L1と、対象物TGから反射された反射光L2とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。計測処理部30は、例えば、光検出器31、レンズ32、光検出器33、第1増幅器34、第2増幅器35、時間取得部36、及び距離計測処理部37を含んでいる。
【0022】
光検出器31は、レンズ23を介して当該光検出器31に入射したレーザ光L1を受光する。そして、光検出器31は、受光したレーザ光L1の光強度に基づいた電気信号を、第1増幅器34に出力する。光検出器31は、例えばフォトダイオードである。
【0023】
レンズ32は、対象物TGから反射された反射光L2を集光して、集光した反射光L2を光検出器33に導光する。つまり、レンズ32は、距離計測装置1に対して照射された反射光L2を含む外部の光を光検出器33に集める。
【0024】
光検出器33は、レンズ23を介して当該光検出器33に入射した反射光L2を受光する。そして、光検出器33は、受光した反射光L2の光強度に基づいた電気信号を、例えば第2増幅器35に出力する。光検出器33は、例えば半導体を用いた光電子増倍素子を含む。光検出器33の詳細については後述する。
【0025】
第1増幅器34は、光検出器31から入力された電気信号を増幅して、増幅した電気信号を時間取得部36と距離計測処理部37とのそれぞれに出力する。以下では、第1増幅器34が出力した電気信号のことを基準信号とも呼ぶ。
【0026】
第2増幅器35は、光検出器33から入力された電気信号を増幅して、増幅した電気信号を時間取得部36と距離計測処理部37とのそれぞれに出力する。第2増幅器35は、例えばトランスインピーダンス増幅器である。以下では、第2増幅器35が出力した電気信号のことを計測信号とも呼ぶ。
【0027】
時間取得部36は、第1増幅器34から入力された基準信号の信号強度に基づいて、出射部10がレーザ光L1を出射したタイミングに対応する第1の時間を取得する。また、時間取得部36は、第2増幅器35から入力された計測信号の信号強度に基づいて、対象物TGから反射された反射光L2を光検出器33が受光した第2の時間を取得する。尚、第1の時間と第2の時間との組は、間欠的に出射される基準信号毎に取得される。時間取得部36は、各時間を、基準信号又は計測信号の立ち上がり時間に基づいて決定しても良いし、基準信号又は計測信号のピーク時刻に基づいて決定しても良い。
【0028】
距離計測処理部37は、時間取得部36によって取得された第1の時間と第2の時間との時間差に基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。簡潔に述べると、距離計測処理部37は、出射部10によるレーザ光L1の出射タイミングと、対象物TGから反射された反射光L2の光検出器33への入射タイミングとに基づいて、レーザ光L1及びL2の飛行時間を算出する。そして、距離計測処理部37は、当該飛行時間とレーザ光の速度とに基づいて、距離計測装置1と対象物TGとの間の距離を計測する。このような距離の計測方法は、ToF(Time of Flight)方式とも呼ばれる。
【0029】
画像処理部40は、距離計測処理部37によって計測した距離計測装置1と対象物TGとの間の距離の計測結果を取得する。そして、画像処理部40は、取得した複数の計測結果を用いて、距離計測装置1の計測対象の領域における距離情報を含む画像を生成する。生成された画像は、例えば距離計測装置1を備える車両等の制御プログラムによって参照される。
【0030】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、出射部10から出射されるレーザ光L1の光軸と光検出器33が受光する反射光L2の光軸とが異なる非同軸光学系を有している。尚、第1実施形態に係る距離計測装置1の構成は、以上で説明した構成に限定されない。第1実施形態に係る距離計測装置1の構成は、後述する動作を実行することが可能であれば、その他の構成であっても良い。
【0031】
例えば、光学素子22、レンズ23、光検出器31、及び第1増幅器34は、省略されても良い。この場合、これらの構成の代わりに、発振器12が、計測処理部30に対して基準信号を出力しても良い。また画像処理部40による処理は、距離計測装置1に接続された外部の機器によって実行されても良い。
【0032】
[1-1-2]光検出器33の構成について
図2は、第1実施形態に係る光検出器33の平面レイアウトの一例を示している。
図2に示すように、光検出器33は、受光部DPを備えている。尚、以下で参照される図面において、“第1方向”及び“第2方向”は、互いに交差する方向に対応している。
【0033】
受光部DPは、例えば光検出器33が対象物TGから反射した反射光L2を受けるための領域である。受光部DPにおいて光検出器33は、複数の画素PXを含んでいる。複数の画素PXは、例えば、半導体基板上に、第1方向及び第2方向に広がったマトリクス状に配置される。言い換えると、複数の画素PXは、2次元に配置される。
【0034】
複数の画素の各々は、少なくとも1つの光電子増倍素子を含んでいる。光電子増倍素子としては、例えば、単一光子アバランシェダイオード(Single-Photon Avalanche Diode)が使用される。以下では、単一光子アバランシェダイオードのことを“SPAD”と呼び、SPADを使用するための回路のことを“SPADユニットSU”と呼ぶ。SPADの機能の詳細については後述する。画素PXに複数のSPADユニットSUが設けられる場合、複数のSPADユニットSUは、例えば第1方向及び第2方向に広がったマトリクス状に配置される。複数のSPADユニットSUを含む画素PXは、シリコン光増倍素子(SiPM:Silicon Photomultiplier)とも呼ばれる。
【0035】
尚、光検出器33に含まれる画素PXと、画素PXに含まれるSPADユニットSUとのそれぞれの個数は、
図2に示された個数に限定されず、任意の個数に設計され得る。画素PXとSPADユニットSUとのそれぞれの平面形状は、必ずしも正方形でなくても良い。画素PXの形状は、各画素PXに含まれるSPADユニットSUの形状及び配置に応じて変化し得る。例えば、各画素PXにおいて、第1方向に並ぶSPADユニットSUの個数と、第2方向に並ぶSPADユニットSUの個数とは異なっていても良い。光検出器33は、異なる形状の画素PXを利用しても良い。SPADユニットSUの形状は、その他の形状であっても良く、例えば長方形であっても良い。
【0036】
(SPADユニットSUの回路構成について)
図3は、第1実施形態に係る光検出器33の備えるSPADユニットSUの回路構成の一例を示している。
図3に示すように、SPADユニットSUは、例えばアバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqを含んでいる。
【0037】
アバランシェフォトダイオードAPD及びクエンチ抵抗Rqは、高電位ノードNhvと低電位ノードNlvとの間に直列に接続される。具体的には、アバランシェフォトダイオードAPDのアノードが、低電位ノードNlvに接続される。アバランシェフォトダイオードAPDのカソードが、クエンチ抵抗Rqの一端に接続される。クエンチ抵抗Rqの他端が、高電位ノードNhvに接続される。
【0038】
距離計測装置1の距離計測動作において、高電位ノードNhvに印加される電圧は、低電位ノードNlvに印加される電圧よりも高い。つまり、距離計測動作において、逆バイアスが、アバランシェフォトダイオードAPDに印加される。高電位ノードNhvは、SPADに含まれたアバランシェフォトダイオードAPDによる光検出結果の出力端、すなわち出力ノードに対応している。高電位ノードNhvには、トランジスタToutが接続される。トランジスタToutのゲートには、制御信号Soutが入力される。
【0039】
SPADユニットSUは、高電位ノードNhvに接続されたトランジスタToutを介して、光検出結果に対応する出力信号IOUTを出力する。例えば、制御信号Soutが“H”レベルである場合、当該SPADユニットSUは、トランジスタToutを介して、高電位ノードNhvの電圧に基づいた出力信号IOUTを出力する。制御信号Soutが“L”レベルである場合、当該SPADユニットSUによる出力信号IOUTの出力は、トランジスタToutによって遮断される。実際には、多段に接続された複数のトランジスタによって、トランジスタToutが構成される。
【0040】
距離計測装置1では、例えば、画素PX毎に制御信号Soutが独立に制御され得る。つまり、距離計測装置1は、各画素PXに含まれたSPADユニットSUを、必要に応じてアクティブ状態又は非アクティブ状態にすることが出来る。本明細書において、“アクティブ状態のSPADユニットSU”は、当該SPADユニットSUが光信号を検出して出力信号IOUTを出力することが可能な状態であることを示している。“非アクティブ状態のSPADユニットSU”は、当該SPADユニットSUが受けた光信号に基づく出力信号IOUTを出力しない状態であることを示している。以下では、アクティブ状態のSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オン状態の画素PXと呼ぶ。非アクティブ状態のSPADユニットSUを含む画素PXのことを、オフ状態の画素PXと呼ぶ。
【0041】
尚、画素PXの回路構成は、以上で説明した構成に限定されない。例えば、クエンチ抵抗Rqは、トランジスタに置き換えられても良い。高電位ノードNhvには、クエンチ用のトランジスタがさらに接続されても良い。トランジスタToutは、N型トランジスタであっても、P型トランジスタであっても良い。トランジスタToutは、出力信号IOUTを選択的に出力可能であれば、その他のスイッチ素子であっても良い。高電位ノードNhv(出力ノード)の配置は、アバランシェフォトダイオードAPDによる光検出結果を出力可能であれば、その他の配置であっても良い。また、複数のSPADユニットSUは、グループを形成しても良い。この場合、出力信号IOUTは、例えばそのグループに属するSPADユニットSUの出力の総和に相当する電気信号に対応している。
【0042】
(SPADの動作原理について)
以下に、
図4を参照して、アバランシェフォトダイオードAPDの構成の一例と、SPADの動作原理とについて説明する。
図4は、アバランシェフォトダイオードAPDの構造の一例とSPADの動作原理との概略を示している。
【0043】
まず、アバランシェフォトダイオードAPDの構成について説明する。アバランシェフォトダイオードAPDは、例えば、基板50、P型半導体層51、Pプラス型半導体層52、及びNプラス型半導体層53を含んでいる。
【0044】
基板50は、例えばP型の半導体基板である。基板50上に、P型半導体層51、Pプラス型半導体層52、及びNプラス型半導体層53が、この順番に積層されている。Pプラス型半導体層52におけるP型不純物の濃度は、P型半導体層51におけるP型不純物の濃度よりも高い。Nプラス型半導体層53は、N型不純物がドープされた半導体層である。例えば、Nプラス型半導体層53上には、図示が省略された電極が接続される。
【0045】
次に、SPADの動作原理について説明する。第1実施形態に係る距離計測装置1では、基板50側が低電位ノードNlvに対応し、Nプラス型半導体層53が高電位側(カソード)に対応している。
【0046】
距離計測装置1の距離測定動作において、アバランシェフォトダイオードAPDには、Nプラス型半導体層53に対して基板50側が負となるように、高い電圧が印加される。つまり、アバランシェフォトダイオードAPDに高い逆バイアスが印加され、Pプラス型半導体層52とNプラス型半導体層53との間に強い電界が発生する(
図4(1))。すると、Pプラス型半導体層52とNプラス型半導体層53との接合(すなわち、PN接合)領域の付近に、空乏層が形成される(
図4(2))。距離測定動作では、この状態のアバランシェフォトダイオードAPDが、光信号を検知可能な状態に対応している。
【0047】
そして、アバランシェフォトダイオードAPDに光が照射されると、光のエネルギーの一部が空乏層に到達する(
図4(3))。空乏層に光が照射されると、空乏層において電子と正孔の対、すなわちキャリアが発生する場合がある(
図4(4))。空乏層に発生したキャリアは、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電界によりドリフトする(
図4(5))。例えば、発生したキャリアのうち正孔は、基板50側に向かって加速される。一方で、発生したキャリアのうち電子は、Nプラス型半導体層53側に向かって加速される。
【0048】
Nプラス型半導体層53側に向かって加速された電子は、PN接合の付近に発生した強い電界の下で、原子と衝突する。すると、原子に衝突した電子が、当該原子をイオン化させて、新たな
電子と正孔の対を発生させる。アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧が、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧を超えている場合、このような電子と正孔の対の発生が繰り返される。このような現象は、アバランシェ降伏と呼ばれている(
図4(6))。
【0049】
アバランシェ降伏が発生すると、アバランシェフォトダイオードAPDが放電する(
図4(7))。このような放電は、ガイガー放電と呼ばれている。ガイガー放電が発生すると、SPADユニットSUの出力ノードの電圧が上昇する。これにより、ガイガー放電とその後のリカバリに関わる電気信号が、アバランシェフォトダイオードAPD、すなわち1つのSPADから出力される。
【0050】
また、アバランシェフォトダイオードAPDから出力された電流は、例えばクエンチ抵抗Rqに流れる。その結果、電圧降下が、SPADユニットSUの出力ノードにおいて発生する(
図4(8))。SPADユニットSUにおけるこのような電圧降下は、クエンチングとも呼ばれる。電圧降下によって、アバランシェフォトダイオードAPDに印加された逆バイアスの電圧がブレークダウン電圧未満になると、ガイガー放電が停止する。それから、アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合における容量の充電や、リカバリ電流が流れることが完了すると、アバランシェフォトダイオードAPDは、電流の出力を停止する。ガイガー放電が止まった後に、アバランシェフォトダイオードAPDは、電流の出力がある程度弱まると、次の光を検知することが可能な状態に戻る。
【0051】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1の備える光検出器33は、ガイガーモードで使用されるアバランシェフォトダイオードAPDを有している。そして、これらのアバランシェフォトダイオードAPDは、光入射に応じてアバランシェ降伏を起こし、光検出結果に対応する電気信号を出力する。これにより、光検出器33は、フォトン単位の受光を検知して、電気信号に変換することが出来る。
【0052】
尚、SPADユニットSUに使用されるアバランシェフォトダイオードAPDの構造は、以上で説明された構造に限定されない。例えば、Pプラス型半導体層52は省略されても良い。P型半導体層51、Pプラス型半導体層52、及びNプラス型半導体層53のそれぞれの厚さは、適宜変更され得る。アバランシェフォトダイオードAPDのPN接合は、基板50との境界近傍に形成されても良い。アバランシェフォトダイオードAPDは、P型半導体層とN型半導体層とが反転された構造を有していても良い。
【0053】
(受光領域DRの設定について)
第1実施形態に係る光検出器33は、受光部DPに含まれた所定の領域内の1つ又は複数の画素PXをオン状態にすることによって、受光領域DRを設定することが出来る。以下に、受光領域DRの設定方法の一例について説明する。
【0054】
尚、受光部DPに設けられた複数の画素のそれぞれには、第1方向に対応する座標と第2方向に対応する座標とが割り当てられているものと仮定する。また、本明細書において“受光領域”は、単なる名称に相当している。距離計測装置1の距離計測動作において、光が必ずしも受光領域DRの全体に照射されていなくても良い。
【0055】
図5は、第1実施形態に係る光検出器33の備える受光部DPにおける受光領域DRの設定方法の一例を示している。
図5に示すように、第1実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”とに基づいて、受光領域DRを設定する。“N”は、画素PXの第1方向の座標に対応している。“M”は、画素PXの第2方向の座標に対応している。受光領域DRに関連付けられたこれらの座標は、例えば出射部10の制御部11による制御に基づいて指定される。
【0056】
また、座標“N”及び“M”は、例えば受光領域DR内の左上の画素の座標に対応している。これに限定されず、受光領域DRは、少なくとも座標“N”及び“M”に対応するアドレスを基準として設定されていれば良い。例えば、座標“N”及び“M”が指定する画素PXの座標は、受光領域DR内の左下、右上、右下、中央等、いずれの画素PXの座標に対応していても良い。
【0057】
そして、受光領域DRは、座標“N”及び“M”を基準として、例えば第1方向及び第2方向にそれぞれ3画素及び4画素の広がりを有する領域に設定される。言い換えると、本例では、受光領域DRが、3×4画素を含む矩形領域に設定される。尚、受光領域DR内でオン状態にされる画素PXの配置は、適宜設定され得る。また、受光部DP内且つ受光領域DRに含まれない画素PXは、オフ状態に設定される。
【0058】
受光領域DR内の少なくとも1つの画素PXは、照射された光を電気信号に変換し、光強度に対応する出力信号IOUTを出力し得る。各画素PXによって生成された出力信号IOUTは、画素PX毎に出力される。これにより、光が照射された画素PXの信号のみが使用されるため、光が照射されなかった画素PXからのノイズが除去され、S/N比(Signal to Noise Ratio)が高くなる。
【0059】
以上で説明した受光領域DRの位置及び形状は、距離計測装置1によって出射されるレーザ光のスキャン位置に応じて設定される。具体的には、出射部10の制御部11が、レーザ光を出射したタイミングのミラー24の傾きに関連付けられた座標“N”及び“M”を指定して、受光領域DRの設定を光検出器33に対して指示する。これにより、距離計測装置1が、対象物TGから反射した反射光L2が照射すると推測される領域内の画素PXをオン状態にして、当該反射光L2を検出することが出来る。
【0060】
(光検出器33の出力部について)
第1実施形態に係る光検出器33は、例えば、受光領域DR内の複数の画素PXから取得された光信号(出力信号IOUT)を第2増幅器35に転送する前に、当該出力信号IOUTに対して所定の信号処理を実行する構成をさらに有する。
【0061】
図6は、第1実施形態に係る光検出器33の出力部の構成の一例を示している。本例では、3×4画素を含む矩形の受光領域DRが設定されたものと仮定する。
図6に示すように、受光部DPは、例えば12個の画素PXにそれぞれ対応する出力信号IOUTa1~12を出力する。また、光検出器33は、出力部として、例えばスイッチ部SW及び信号処理部SPをさらに備えている。
【0062】
スイッチ部SWは、複数のスイッチ回路を含み、受光部DPによって出力された複数の出力信号IOUTの順序を整列する機能を有する。具体的には、スイッチ部SWには、例えば受光部DPによって出力された出力信号IOUTa1~12と、受光領域DRの座標を示す座標“N”及び“M”とが入力される。そして、スイッチ部SWは、座標“N”及び“M”に基づいて複数のスイッチ回路を適宜繋ぎ替えることによって、入力された出力信号IOUTa1~12を整列する。それから、スイッチ部SWは、整列された出力信号IOUTa1~12に対応する出力信号IOUTb1~12を、信号処理部SPに出力する。これにより、受光領域DR内の各画素PXの出力順番が、所定の順番(例えば、
図6の下部に示された順番)に変更される。
【0063】
信号処理部SPは、スイッチ部SWから入力された出力信号IOUTb1~12を用いて、様々な信号処理を実行する。信号処理部SPは、例えば増幅回路のようなアナログ回路、アナログ-デジタル変換器、時間-デジタル変換器、加算器のようなロジック回路を含み得る。信号処理部SPによる信号処理によって、例えば画素PX毎の光強度に対応する電気信号や、グループ化された複数の画素PXの光強度に対応する電気信号が生成される。そして、生成された各電気信号が、例えば後段の第2増幅器35に出力される。
【0064】
以上のように、光検出器33の出力部は、受光領域DR内における相対的な位置に関する順番を変更せずに、信号処理を実行することが出来る。このような出力部の構成は、画素PXの出力に使用される信号線の本数を削減することが出来る。
【0065】
(信号処理部SPの構成例について)
図7は、第1実施形態に係る光検出器33の出力部の備える信号処理部SPの構成の一例を示している。
図7に示すように、信号処理部SPは、例えば、AD変換回路(ADC:Analog to Digital Converter)60、加算器61、及びTD変換回路(TDC:Time to Digital Converter)62を含んでいる。これら信号処理部は、光検出器33ではなく、時間取得部36に含まれていても良い。
【0066】
ADC60は、入力されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。ADC60には、出力信号IOUTb1~12のいずれかに対応する1種類の信号IN1が入力される。そして、ADC60は、信号IN1に基づく出力信号OUT1を後段の回路(例えば第2増幅器35)に出力する。
【0067】
加算器61は、入力された複数のアナログ電気信号を積算する。加算器61には、出力信号IOUTb1~12のいずれかに対応する複数種類の信号IN2が入力される。そして、加算器61は、複数種類の信号IN2を積算した信号をTDC62に出力する。加算器61は、電気信号が電流である場合には、単に信号線を結線するだけでも良い。
【0068】
TDC62は、加算器61により入力されたアナログ電気信号に対して、所定の間隔で閾値との比較を行う。そして、TDC62は、当該比較の結果に基づく時間(閾値を超えた時刻と、基準時刻との差)のデジタル電気信号(出力信号OUT2)を後段の回路(例えば第2増幅器35)に出力する。TDC62の時間分解能は、一般に、ADC60の時間分解能よりも高い。閾値については、立上り信号を検出する場合と、立下り信号を検出する場合がある。前者では、信号が特定の閾値を上回った時刻を検出し、後者では、信号が特定の閾値を下回った時刻を検出する。立上り信号を検出する場合が普通だが、立上り時刻と立下り時刻の重み平均を用いる方法もある。
【0069】
尚、信号処理部SPは、複数のADCを含んでいても良いし、1つまたは複数のADCがアナログ-デジタル変換処理を逐次実行しても良い。また、信号処理部SPは、加算器61、及びTDC62の組を複数含んでいても良いし、1つまたは複数のTDC62が時間-デジタル変換処理を逐次実行しても良い。
【0070】
図8は、第1実施形態に係る光検出器33における信号処理方法の一例を示している。
図8の左側が、単位時間毎に加算器61に入力されるパルス信号の一例に対応し、
図8の右側が、加算器61によって処理された後の光信号の一例に対応している。ここで、SPADは、リカバリ時間の極めて短い、高速なものを想定している。また、一般に、複数のSPADの入力を結線した場合が、有効である。
【0071】
図8に示すように、加算器61は、受信したパルス信号の数を例えば2nsの期間毎にカウントすることにより、光検出器33が検知した光信号の強度を算出する。簡潔に述べると、加算器61が、例えば2nsの期間内で、検出されたパルス信号の数を積算して、TDC62に出力する。そして、加算器61の出力は、積算結果を出力した後にリセットされ、加算器61は、同様の動作を繰り返し実行する。これにより、TDC62は、単位時間当たりのパルス信号の数に基づいて、光強度のアナログ値を出力することが出来る。言い換えると、TDC62は、加算器61から入力された信号を多値のアナログ信号に変換することが出来る。
【0072】
図9は、第1実施形態に係る光検出器における信号処理方法のその他の一例を示し、加算器61がローパスフィルタに置き換えられた場合に対応している。
図9の左側が、ローパスフィルタに入力されるパルス信号の一例に対応し、
図9の右側が、ローパスフィルタによって処理された後の光信号の一例に対応している。
【0073】
図9に示すように、ローパスフィルタにより、近似的に積算と同様の処理を行うことが可能である。ローパスフィルタは、例えばキャパシタ及び抵抗により構成される。尚、ローパスフィルタは、アナログ回路又はデジタル回路のいずれであっても良く、IIR回路又はFIR回路により実装されても良い。加算器61がローパスフィルタである場合、例えば
図8を用いて説明されたリセット処理は実行されない。
【0074】
尚、加算器61は、アナログ回路及びデジタル回路のいずれであっても良い。加算器61は、所定時間ごとにリセットされるパルス信号を計数するカウンタであっても良い。信号IN1は、ADC60に入力される前に増幅器を介して増幅されても良い。信号IN2は、加算器61に入力される前に増幅器を介して増幅されても良い。加算器61とTDC62との間に、平滑化回路が挿入されても良い。TDC62と後段の第2増幅器35との間に、ADCが挿入されても良い。
【0075】
また、スイッチ部SWと信号処理部SPとは、一体で設けられても良い。第2増幅器35が、信号処理部SPに含まれていても良い。受光部DPと信号処理部SPとは、異なる基板上に形成されても良い。ADCを含む信号の経路とTDCを含む信号の経路との総計は、受光部DPの出力経路の数に基づいて設計される。ローパスフィルタが使用される場合、当該ローパスフィルタは、光検出器33と同じ基板に設けられても良いし、光検出器33の外に設けられても良い。
【0076】
[1-2]動作
以下に、第1実施形態に係る距離計測装置1の動作について説明する。第1実施形態に係る距離計測装置1は、非同軸光学系を使用する。このため、受光部DPにおいて、近距離の対象物TGによる反射光が照射される位置と、遠距離の対象物TGによる反射光が照射される位置との間でずれ、すなわち視差が生じ得る。まず、反射光の視差の発生について簡潔に説明する。
【0077】
[1-2-1]スキャン方法について
まず、第1実施形態に係る距離計測装置1におけるレーザ光L1のスキャン方法の一例について説明する。
図10~
図12は、対象物TGに対するレーザ光L1の照射方法の一例を示し、互いに異なるスキャン方法を例示している。
【0078】
図10に示された一例では、距離計測装置1が、紙面の右方向にスキャンした後に、折り返して左方向にスキャンし、紙面の左方向にスキャンした後に、再び折り返して右方向にスキャンする。距離計測装置1は、このような左右方向のスキャンを繰り返し実行する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば2軸のミラーを使用することが考えられる。
【0079】
図11に示された一例では、距離計測装置1が、縦方向に細長い形状の照射面を有するレーザ光源、及び/或いは異方性のある非球面コリメータレンズを用いて、縦一列に複数の画素を同時に照射する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば、回転ミラーや1軸のミラーを使用することが考えられる。また、ミラーを使用せずに、距離計測装置1をそのまま回転させても良い。
【0080】
図12に示された一例では、距離計測装置1が、縦方向に細長い形状の照射面を有するレーザ光源、及び/或いは異方性のある非球面コリメータレンズを用いて縦一列に複数の画素を同時に照射し、且つ垂直方向に位置がずらされたスキャンを複数回繰り返し実行する。このようなスキャンを実現する手段としては、例えば、異なるチルト角を有するポリゴンミラー、回転ミラー、及び2軸のミラー等が挙げられる。
【0081】
以上で例示されたスキャン方法は、機械的なものであるが、別のスキャン方法としては、OPA方法(Optical Phased Array)が知られている。第1実施形態に係る距離計測装置1による効果は、光をスキャンする方法に依存しない。このため、第1実施形態に係る距離計測装置1は、機械的な方法とOPA方法とのいずれを用いてレーザ光L1のスキャンを実行しても良い。以下では、説明を簡潔にするために、距離計測装置1が、
図10に示された方法を用いてレーザ光L1のスキャンを実行する場合について説明する。
【0082】
[1-2-2]反射光の位置ずれについて
図13は、非同軸光学系の距離計測装置における反射光の視差の一例を示し、距離計測装置1内の光源15、レンズ21及び32、並びに光検出器33と、遠距離の対象物TGfと、近距離の対象物TGnとを表示している。
【0083】
図13に示すように、光源15から出射されるレーザ光L1は、レンズ21を介して対象物TGf又はTGnに照射され、対象物TGf又はTGnから反射した反射光L2(反射光)は、レンズ32を介して光検出器33に照射される。以下では、遠距離の対象物TGfから反射したレーザ光のことを“L2f”とも呼び、近距離の対象物TGnから反射したレーザ光のことを“L2n”とも呼ぶ。
【0084】
光検出器33の受光領域DRは、例えばミラー24の状態と遠距離の対象物TGfからの反射光の位置に合わせて同期するように設定される。しかしながら、非同軸光学系が使用される場合、反射光の視差が距離計測装置1と対象物TGとの距離に応じて生じ得る。このような視差は、出射光の光軸から離れる方向に生じる。また、視差は、対象物TGが接近する程大きくなる。
【0085】
このため、受光領域DRは、遠距離の対象物TGfから反射した反射光L2fを受光することが出来たとしても、近距離の対象物TGnから反射した反射光L2nを受光領域DRの中心部分で受光することが出来なくなる。つまり、受光領域DR内の複数の画素PXに対して、反射光L2nが照射される強度に偏りが生じ得る。
【0086】
また、近距離の対象物TGnから反射した反射光L2nは、飛行距離が短く、エネルギーの減衰が小さい。このため、反射光L2nを受光する画素PXでは、ダイナミックレンジの不足により検出した光信号が飽和し、光強度のピークの算出が困難になり得る。
【0087】
これに対して、第1実施形態に係る距離計測装置1は、距離測定動作において、光検出器33の受光領域DRに、遠距離用の受光領域と、近距離用の受光領域とを設定する。そして、第1実施形態に係る距離計測装置1は、遠距離用の受光領域にADC60を使用し、近距離用の受光領域にTDC62を使用する。以下では、ADC60が使用される受光領域のことをADC領域ARと呼び、TDC62が使用される受光領域のことをTDC領域TRと呼ぶ。
【0088】
[1-2-3]TDC領域TRを含む受光領域DRの設定について
図14は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作における光検出器33の受光領域DRの設定方法の一例を示し、距離計測装置1の出射光及び出射光の光軸と、光検出器33の受光部DPとを表示している。
図14に示すように、第1実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”が指定されると、ADC領域ARとTDC領域TR1及びTR2とを含む受光領域DRを設定する。
【0089】
尚、本明細書において“画素”は、少なくとも1つのSPADユニットSUを含む領域に対応している。また、“画素PX”は、画素の最小単位に対応している。光検出器33では、複数の画素PXが組み合わされる(例えば、複数の画素PXが結線される)ことによって、1つの大きな画素が構成され得る。第1実施形態に係る光検出器33は、ADC領域ARとTDC領域TRとの間で、異なる大きさの画素を設定することが出来る。
【0090】
ADC領域ARは、例えば3×3画素PXを含む矩形領域に設定される。TDC領域TR1及びTR2のそれぞれは、例えば1×3画素PXを含む矩形領域に設定される。TDC領域TR1及びTR2は、ADC領域ARを第2方向に挟んでいる。言い換えると、TDC領域TR1、ADC領域AR、及びTDC領域TR2は、この順番に、出射光の光軸に対して近接している。第2方向における幅は、TDC領域TR1及びTR2のそれぞれよりもADC領域ADCの方が広く設定されることが好ましい。TDC領域TR1及びTR2のそれぞれとADC領域ARとは、必ずしも隣接していなくても良い。
【0091】
ADC領域ARは、主に遠距離の対象物TGfからの反射光(反射光L2f)を検出するための領域である。ADC領域ARは、反射光L2fが当該ADC領域ARの中心近傍に入射するように配置されることが好ましい。ADC領域AR内でオン状態に設定された複数の画素PXは、個別に出力される。そして、ADC領域ARにおける複数の画素PXのそれぞれの出力信号IOUTには、それぞれADC60によってアナログ-デジタル変換処理が実行される。
【0092】
TDC領域TR1及びTR2のそれぞれは、主に近距離の対象物TGnからの反射光(反射光L2n)を検出するための領域である。つまり、TDC領域TRは、デフォーカス及び視差の影響を受けた反射光L2nを検知することが可能なように設定される。TDC領域TR1内でオン状態に設定された複数の画素PXの出力信号IOUTは、例えば結線されることによって、加算出力される。同様に、TDC領域TR2内でオン状態に設定された複数の画素PXは、例えば結線されることによって、加算出力される。
【0093】
つまり、TDC領域TR1及びTR2のそれぞれは、1×3画素PXによって構成された1つの大きな画素を有するものと見なされる。TDC領域TR1及びTR2のそれぞれの画素が含むSPADユニットSUの個数は、ADC領域ARの画素PXが含むSPADユニットSUの個数よりも多い。そして、TDC領域TR1における画素の出力信号IOUTと、TDC領域TR2における画素の出力信号IOUTとのそれぞれには、それぞれTDC62によって時間-デジタル変換処理が実行される。
【0094】
[1-2-4]距離計測動作における反射光の具体例について
図15は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において光検出器33に照射される反射光の具体例を示し、
図14と同様の受光部DPを表示している。また、
図15の上側が、遠距離の対象物TGfによる反射光の形状の一例に対応し、
図15の下側が、近距離の対象物TGnによる反射光の形状の一例に対応している。
【0095】
図15の上側に示すように、遠距離の対象物TGfからの反射光(反射光L2f)は、主にADC領域ARの中心近傍に照射される。一方で、
図15の下側に示すように、近距離の対象物TGnからの反射光(反射光L2n)は、
図13を用いて説明したように、反射光の照射位置のずれ(視差)が発生し得る。
【0096】
また、距離計測装置1の受光側の光学系(例えばレンズ32等)の焦点は、例えば無限遠、すなわち遠距離の対象物TGfを基準に設定される。このため、近距離の対象物TGnからの反射光は、遠距離の対象物TGfからの反射光と比べてデフォーカスが発生し得る。その結果、デフォーカスにより広がった光が、TDC領域TR2の全体にも照射されている。尚、反射光の光強度は、対象物TGが近くなるほど大きく、対象物TGが遠くなるほど小さくなる。また、反射光の単位面積当たりの光強度は、デフォーカスが発生するほど小さくなる。
【0097】
(遠距離の対象物TGfに対する受光波形の一例について)
図16は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において遠距離の対象物TGfを検出した場合の計測結果(光強度分布)の一例を示している。また、
図16は、出射信号(出射光)の波形と、ADC領域ARにおける受光波形と、TDC領域TRにおける受光波形とを表示している。
【0098】
図16に示すように、距離計測装置1は、出射部10及び光学系20を用いて、レーザ光L1を出射する。図示されたレーザ光L1は、間欠的に出射されるレーザ光L1のうちの一つに対応している。レーザ光L1が出射され、暫く時間が経過すると、遠距離の対象物TGfからの反射光を計測処理部30内の光検出器33が受光する。このとき、反射光は、例えばADC領域ARとTDC領域TRとのそれぞれにおいて検出される。
【0099】
ADC領域ARにおいて検出された反射光に対しては、複数の画素PXの出力信号IOUTを用いた積算処理及びAD変換処理が実行される。時間取得部36は、この積算処理(平均化処理)によって得られた受光波形から、より良いS/N比にて、ピークを検出することが出来る。例えば、より遠い距離にある対象の測距が可能になる。
【0100】
一方で、TDC領域TRでは、ADC領域ARよりも多くのSPADを用いた出力信号IOUTが得られる。このため、TDC領域TRにおけるダイナミックレンジは、ADC領域ARにおけるダイナミックレンジよりも広い。TDC領域TRにおいて検出された反射光に対してTD変換処理が実行されると、検出された反射光に基づいたパルス信号が得られる。本例では、TDC62の閾値TH1が高めに設定されており、TD変換処理によってパルス信号が生成されていない場合が示されている。
【0101】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、遠距離の対象物TGfの反射光に対する信号処理において、ADC領域ARから取得された光強度分布によってピークを検出することが出来る。この場合、ADC領域ARから取得されたピークに基づいて、時間取得部36及び距離計測処理部37が、距離計測装置1と対象物TGfとの間の距離を計測することが出来る。
【0102】
(近距離の対象物TGnに対する受光波形の一例について)
図17は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において近距離の対象物TGnを検出した場合の計測結果(光強度分布)の一例を示している。
図17に示すように、距離計測装置1は、
図16の説明と同様にレーザ光L1を出射し、計測処理部30内の光検出器33が、近距離の対象物TGnからの反射光を受光する。
【0103】
ADC領域ARにおいて検出された反射光の強度は、ダイナミックレンジを超過し、受光波形が飽和している(Pile up)。この場合、AD変換を介した複数の画素PXの受光波形が積算されたとしても、ピークが見えなくなる。このため、時間取得部36は、積算処理によって得られた受光波形からピークを検出することが出来ない。
【0104】
一方で、TDCは、ピークの時刻ではなく、閾値を超えた時刻で時刻を決定するため、pile upが発生した場合にも測距することが可能である。しかし、TDCは、大きなダイナミックレンジを必要とするため、ADC領域ARの画素PXの様に画素当たりのSPADの数が少ない場合に、測距することが難しくなる。しかし、TDC領域TRの画素は、ADC領域AR内の画素PXよりも多くのSPADを含み、ダイナミックレンジが広い。このため、TDC領域TRの画素は、近距離の対象物TGnからの反射光を受光し得る。そして、TDC領域TRにおいて検出された反射光に対してTD変換処理が実行されると、検出された反射光に基づいた時刻とその結果より距離が得られる。本例では、閾値TH1を超えた部分が存在しているため、受光波形が閾値TH1を超えた部分において、パルス信号が生成されている。
【0105】
以上のように、第1実施形態に係る距離計測装置1は、近距離の対象物TGnの反射光に対する信号処理において、TDC領域TRから取得された反射光の届いた時刻を検出することが出来る。この場合、TDC領域TRから取得された時刻に基づいて、時間取得部36及び距離計測処理部37が、距離計測装置1と対象物TGfとの間の距離を計測することが出来る。
【0106】
尚、第1実施形態に係る距離計測装置1は、ADC領域ARとTDC領域TRとの両方で時刻が検出された場合に、例えばTDC領域TRにおいて検出された時刻を用いて距離の計測を実行する。この理由は、TDCの方がADCよりも時間分解能が高く、より精確な計測結果を得ることが出来るからである。
【0107】
(ノイズ含む受信結果の一例について)
図18は、第1実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作において近距離の対象物TGnを検出した場合の計測結果の解析方法のその他の一例を示している。また、
図18は、ADC領域ARにおいて検知された反射光の受光結果の波形と、TDC領域TRにおいて検知された反射光の受光結果の波形とを表示している。
【0108】
図18に示すように、本例では、ADC領域ARにおける受光結果と、TDC領域TRにおける受光結果とのそれぞれにおいて、ノイズが検出されている。このような場合、計測処理部30は、まずADC領域ARにおける距離範囲を検出する。本明細書において“距離範囲”とは、ADC領域ARにおける受光結果に対応する光強度分布において、所定の閾値TH2を超えている期間が、所定の時間を超えている期間に対応している。他には、ピーク値の半値を超えている期間が、距離範囲として検出されても良い。また、距離範囲の検出に用いる閾値としては、ピーク値の半値ではなく、所定の割合が使用されても良い。
【0109】
距離範囲を検出した後に、計測処理部30は、TDC領域TRにおける受光結果から、距離範囲に含まれている閾値を超える時刻を複数検出する。本例では、TDC領域TRにおける受光結果が、2つの時刻を含んでいる。このように、距離範囲に複数の時刻が含まれている場合、計測処理部30は、同時刻のADC領域ARにおける最も光強度の強いピークを選択して、距離の計測に使用する。尚、ADC領域ARの結果については、補間により、サンプリング時間よりも高い分解能で(任意の時刻について)光強度が算出されても良い。
【0110】
一般に、TDCはADCと比べて、時間精度の高い測距が可能であり、第1実施形態により、距離精度を高めることが可能である。さらに、第1実施形態に係る距離計測装置1は、ADC領域ARにおける受光結果に飽和が発生してピークが検出することが出来ず、且つTDC領域TRにおける受光結果から複数のピークが検出された場合に、距離の計測に用いる適切なピークを選択することが出来る。
【0111】
尚、以上で説明したピークの選択方法は、あくまで一例である。例えば、距離範囲が複数含まれる場合、計測処理部30は、TDC領域TRにおける受光結果における時刻の選択の基準として、最も長い距離範囲を選択的に利用しても良い。計測処理部30は、TDC領域TRにおける受光結果の時刻を選択する前に、迷光や鏡面等と推測される反射光のデータを除外しても良い。
【0112】
[1-3]第1実施形態の効果
距離計測システムの一種であるLiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザを計測対象物に照射し、計測対象物から反射された反射光の強度をセンサで感知し、センサの出力に基づいて反射光の戻って来る時刻を計測する。そして、LiDARと計測対象物との間の距離が、例えばレーザが発光してから感知した反射光の戻って来るまでの時間差に基づいて計算される。LIDARの計測データは、例えば車両の制御に使用することが想定されるため、高い精度が求められている。
【0113】
LiDARを安価に製造するためには、可能な限り簡素な構成であることが好ましい。コストを抑制する方法としては、非同軸光学系と2Dセンサとの組み合わせにより、光学系のコストを抑制することが考えられる。2Dセンサは、投光系のスキャンに同期して、受光領域の位置を変更する。投光系と受光領域との同期精度は、2Dセンサが1つの画素でなく複数の画素を用いて光を検出することにより緩めることが出来る。また、2Dセンサは、受光領域を広く設けることによって、受光位置のずれによる影響も抑制され得る。一方で、受光領域を広く設けることは、空間解像度を低下させ、消費電力の増加に繋がる。消費電力は可能な限り抑制されることが好ましいため、受光領域は最低限の範囲に設定されることが好ましい。
【0114】
しかしながら、非同軸光学系が使用される場合、計測対象物の位置に応じて視差が発生する。また、2Dセンサは、通常、遠距離の対象物に対してフォーカスを合わせた設定を使用する。このため、近距離の対象物からの反射光には、デフォーカスが発生し得る。デフォーカスが発生すると、反射光が2Dセンサに照射される領域が大きくなる。さらに、近距離の対象物からの反射光の強度は、遠距離の対象物からの反射光の強度よりも大きい。このため、2Dセンサは、近距離の対象物からの反射光による画素PXの出力信号は、ダイナミックレンジの不足により飽和し得る。その結果、2Dセンサにより受光された光強度分布のピークが検出できず、距離の測定が困難になるおそれがある。
【0115】
そこで、第1実施形態に係る距離計測装置1は、光検出器33に対して、遠距離の対象物TGfを対象としたADC領域ARと、近距離の対象物TGnを対象としたTDC領域TRとを設ける。そして、距離計測装置1は、ADC領域ARにおける受光結果に対して、積算処理若しくは平均化処理を実行することによって、反射光を検出する。さらに、距離計測装置1は、TDC領域TRにおける画素のサイズを、ADC領域ARよりも大きく設定する。つまり、TDC領域TRにおいて、信号処理部SPによって処理される出力信号に対応するSPADの数が、ADC領域ARよりも多くなる。このため、TDC領域TR内の画素PXのダイナミックレンジが、ADC領域AR内の画素PXよりも広くなる。
【0116】
これにより、第1実施形態に係る距離計測装置1は、近距離の対象物TGnによる反射光のピークを検出することが出来る。そして、第1実施形態に係る距離計測装置1は、時間分解能の高いTDC62を使用するため、近距離の対象物TGnとの間の距離を精確に計測することが出来る。
【0117】
尚、第1実施形態において、TDC62は、閾値の設定によっては、ノイズと反射光の受光結果との区別が困難になる。TDC62で低い閾値が使用された場合、ノイズによる誤検出が発生し得る。誤検出は、例えば車載された場合に事故の発生に繋がり得るため、TDC62の閾値は、ノイズを上回るように設定されることが好ましい。閾値を適切に設定し、TDC62を使用するためには、画素がある程度多くのSPADを有する必要がある。
【0118】
これに対して、第1実施形態に係る距離計測装置1では、上述したように、TDC領域TR内の画素のSPAD数が、ADC領域AR内の画素よりも多くなるように設定される。その結果、第1実施形態に係る距離計測装置1は、TDC領域TRにおける画素のダイナミックレンジが広くなり、TDC62の使用において適切な閾値を設定することが可能となる。従って、第1実施形態に係る距離計測装置1は、誤検出の発生を抑制することが出来る。
【0119】
また、第1実施形態に係る距離計測装置1は、ADC領域ARにおける受光結果を用いて、TDC領域TRにおいて距離の計測に用いるピークの選択をすることも出来る。簡潔に述べると、ADC領域ARにおける受光結果において光強度が大きい期間(以下、距離範囲)は、反射光を受光している可能性が高い。そこで、距離計測装置1は、TDC領域TRにおける受光結果から、距離範囲に対応する信号を抽出する。
【0120】
これにより、第1実施形態に係る距離計測装置1は、TDC領域TRにおける受光結果からピークを探す際に、ノイズ成分を測距時刻の候補から除外することが出来る。さらに、第1実施形態に係る距離計測装置1は、距離範囲において複数の測距時刻を検出した場合に、光強度が高い方の測距時刻を選択することによって、距離の計測精度をより向上させることが出来る。
【0121】
以上で説明された第1実施形態に係る距離計測装置1において、TDC領域TRにおける受光結果は、スキャン位置の補正に使用されても良い。例えば、TDC領域TR1と、TDC領域TR2間で、受光した光強度の偏りがあることが検知された場合に、距離計測装置1は、偏りが抑制されるようにスキャン位置を補正しても良い。
【0122】
また、第1実施形態に係る距離計測装置1では、TDC領域TRにおける出力信号IOUTの加算に、出力結合(電流加算)が適用されても良い。この場合、TDC領域TR内の複数の画素PXは、受光領域DRから出力される時点で加算され、信号処理部SP内の加算器61が省略される。この場合、距離計測装置1は、TDC領域TR1及びTR2のそれぞれに対応するチップ出力のピンを共有することが出来、ピン数を抑制することが出来る。また、距離計測装置1は、例えばTDC62による確度の低いデータを出力しないことにより、出力のバンド幅を小さくし、出力ピン数を削減することも出来る。
【0123】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と同様の構成を有し、距離計測動作において第1方向に延伸した形状のパルス光を用いる。以下に、第2実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0124】
[2-1]光検出器33の動作
図19は、第2実施形態に係る距離計測装置1の距離計測動作における光検出器33の受光領域DRの設定方法の一例を示している。
図19に示すように、第2実施形態に係る距離計測装置1では、出射光が第1方向に延伸した形状を有している。第2実施形態における出射光の形状は、少なくとも第1方向に延伸した部分を有していればよく、例えば楕円形であっても良い。
【0125】
また、第2実施形態における受光領域DRは、複数のチャネルCH1~CH5を含んでいる。1つのチャネルCHは、例えば対象物TGに対する1つの計測点に対応している。チャネルCH1~CH5は、第1方向に並んでいる。第2実施形態では、対象物TGにおける反射光が、第1方向に延伸した形状の出射光を用いることによって、複数のチャネルCHのそれぞれに照射され得る。これにより、第2実施形態に係る距離計測装置1は、距離計測動作において、1つのパルス光(出射光)に対応して第1方向に並んだ5つの計測結果を得ることが出来る。
【0126】
各チャネルCHに対応して設定される受光領域は、例えば第1実施形態で説明した受光領域DRと同様の構成を有している。第2実施形態に係る光検出器33は、座標“N”及び“M”が指定されることによって、第1方向に並んだ5つのチャネルCHを含む受光領域DRを設定することが出来る。第2実施形態に係る距離計測装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0127】
[2-2]第2実施形態の効果
以上のように、第2実施形態に係る距離計測装置1は、縦長のパルス光を使用し且つ受光領域DRに複数のチャネルCHを設けることによって、一度に複数の計測結果を得ることが出来る。つまり、第2実施形態に係る距離計測装置1は、1画面分のスキャンを実行する速度を向上させることが出来、測長のフレームレートを向上させることが出来る。また、第2実施形態に係る距離計測装置1は、各チャネルCHにADC領域ARとTDC領域TRとを設定することによって、各チャネルCHにおいて第1実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0128】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る光検出器33は、第1実施形態に対して、能動的にクエンチを行うための回路が追加された構成を有する。以下に、第3実施形態に係る距離計測装置1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0129】
[3-1]SPADユニットSUの回路構成について
第1実施形態に係る光検出器33は、クエンチ抵抗Rqの電圧降下によりクエンチングを行っており、“Passive quench”と呼ばれる方式に従っている。一方で、第3実施形態に係る光検出器33は、クエンチングの動作をトランジスタの様な能動素子で行う“Active quench”と呼ばれる方法に従う。Active quench(AQ)については、Zappa,etal, “Fully Integrated Active Quenching Circuit for Single Photon Detection”,ESSCIRC 2002、Richardson, J, Henderson, R & Renshaw, D 2007, Dynamic Quenching for Single Photon Avalanche Diode Arrays. in 2007 International Image Sensor Workshop. pp. 13.で紹介されている。
【0130】
図20は、第3実施形態に係る光検出器33の備えるSPADユニットSUの回路構成の一例を示している。
図20に示すように、第3実施形態に係るSPADユニットSUは、トランジスタTSq及びTSr、抵抗Rs、AQ(Active Quench)制御回路70、並びに論理和回路71をさらに含んでいる。
【0131】
トランジスタTSqとTSrの一端は、例えば抵抗Rqよりも小さな抵抗Rsを介して、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードに接続される。トランジスタTSqの他端は、ノードNlvに対して、Vbd(APDのブレークダウン電圧の絶対値)よりも低い電位に設定される。トランジスタTSrの他端は、ノードNhvに接続される。また、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードには、抵抗Rsを介してAQ制御回路70が接続される。
【0132】
AQ制御回路70は、アバランシェフォトダイオードAPDがアバランシェ降伏を起こし、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードに大きな電流が流れることを検知すると、トランジスタTSqをオンに切り替える。これにより、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードがブレークダウン電圧以下になり、ガイガー現象が収束する。
【0133】
さらに、AQ制御回路70は、アバランシェ現象が収まるまでの所定の時間、トランジスタTSqをオン状態に維持する。所定の時間が経過すると、AQ制御回路70は、トランジスタTSqをオフさせると共に、トランジスタTSrをオンさせる。すると、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードの電位が、急速にブレークダウン電圧以上に上昇し、アバランシェフォトダイオードAPDが再度の測距をすることが可能な状態になる。
【0134】
また、AQ制御回路70は、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードに大きな電流が流れることを検知するや否や、短時間だけ出力電流を出力ノードNoutに発生させる。出力ノードNoutには、複数のSPADユニットSUが接続される。そして、出力ノードNoutの電圧に基づいた出力信号IOUTが、トランジスタToutを介して出力される。
【0135】
論理和回路71は、AQ制御回路70とトランジスタTSqのゲートとの間に設けられる。具体的には、論理和回路71は、第1入力端にAQ制御回路70が接続され、第2入力端に制御信号Soutの反転信号/Soutが入力され、出力端がトランジスタTSqのゲートに接続される。これにより、論理和回路71は、SPADユニットSUが選択されていない場合に、アバランシェフォトダイオードAPDがアバランシェ現象を起こすこと防ぎ、光検出器33の消費電力を抑制することが出来る。
【0136】
尚、トランジスタTSr及びTSqのそれぞれは、上述した動作を実行することが可能であれば、N型のトランジスタであっても、P型のトランジスタであっても良い。トランジスタTSqは、高電位ノードNhvを低電位に接続することが可能であれば、その他のスイッチ素子であっても良いし、その他のノードに接続されても良い。
【0137】
[3-2]距離計測動作について
図21は、距離計測動作における対象物TGの検出結果の一例を示し、
図21の上側が第1実施形態に対応するPassive quenchを利用した場合のADC及びTDCの結果の一例を示し、
図21の下側が第3実施形態に対応するActive quenchを利用した場合のADC及びTDCの結果の一例を示している。
【0138】
図21の上側に示すように、第1実施形態のPassive quenchの場合は、アバランシェフォトダイオードAPDのアバランシェ現象が発生してから、光検出可能な状態にリカバリするまでに時間がかかり得る。具体的には、“真値”と表示された信号を検出したい場合に、一つ前の信号あるいはノイズ(ダーク・ノイズあるいは光ノイズ)によって、アバランシェ現象からのリカバリが終了しない場合がある。この場合、TDCによって真値の検出が出来なくなる場合がある。尚、このTDCは、入力信号が閾値を下回った後に閾値を超えた場合に、光信号を検出するものを想定している。
【0139】
図21の下側に示すように、第3実施形態のActive quenchの場合は、アバランシェフォトダイオードAPDのアバランシェ現象が発生してから、光検出可能な状態にリカバリするまでの時間が、Passive quenchよりも短い。すなわち、Active quenchは、高速にリカバリすることが可能である。具体的には、“真値”と表示された信号を検出する時刻までに、一つ前の信号あるいはノイズによるアバランシェ現象からのリカバリが終了し、TDCによって真値の時刻を検出することが可能になる。尚、ADCにおいて特定された時刻範囲の中に、検出された真値の時刻が含まれる場合、第1実施形態と同様に、当該時刻範囲に含まれた真値の時刻が、距離値の第一候補として選択される。
【0140】
図22は、距離計測動作における対象物TGの検出結果の一例を示し、
図22の上側が第1実施形態に対応するPassive quenchを利用した場合のADC及びTDCの結果の一例を示し、
図22の下側が第3実施形態に対応するActive quenchを利用した場合のADC及びTDCの結果の一例を示している。
図22では、これらの結果が、鏡面からの反射光に基づく信号を含んでいる。
【0141】
光検出器33は、メタリック塗装の車の様な鏡面をなす物体との距離を計測する場合、鏡面の反射光の他に、鏡面に反射した物体(反射物)からの反射光を検出し得る。これらの距離が近い場合、入力信号のピークが一体化し得る。例えば、鏡面の反射光よりも反射物からの光強度の方が強い場合、ADCに基づくピーク検出だけでは、鏡面の光を見落とす場合がある。
【0142】
これに対して、第1実施形態に係る光検出器33は、TDCにより鏡面からの反射光を検出することが出来る。しかしながら、鏡面と反射物との両方を検出出来ることが最も望ましいが、第1実施形態に係る光検出器33では、ノイズの影響によって、TDCが、反射物からの信号を検出することが出来なくなり得る。
【0143】
一方で、第3実施形態に係る光検出器33は、Active quenchによってノイズの残留を抑制することが出来る。その結果、第3実施形態に係る光検出器33は、鏡面に加えて反射物からの信号も検出できる可能性が、第1実施形態よりも高くなる。第3実施形態に係る距離計測装置1のその他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0144】
[3-3]第3実施形態の効果
以上のように、第3実施形態に係る距離計測装置1では、光検出器33が能動的にクエンチを行う素子(例えば、トランジスタTSq及びTSr)を有している。トランジスタTSq及びTSrのオンオフは、AQ制御回路70及び論理和回路71と、制御信号/Soutとによって制御される。そして、トランジスタTSrによって、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードが接続されたノードに溜まったキャリアが適宜強制的に排出される。
【0145】
これにより、第3実施形態に係る距離計測装置1は、迷光を受光したSPADのリカバリ時間を短縮することが出来、TDCにより短距離からの反射光の届く時刻をより確実・正確に検出することが出来る。すなわち、第3実施形態に係る距離計測装置1は、前の一つの信号やノイズ、および鏡面の影響を除去することが出来、近距離の対象物TGnを検知することが出来る。従って、第3実施形態に係る距離計測装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることが出来、且つ近距離の対象物TGnに対する距離の計測精度を向上させることが出来る。その結果、距離計測装置1を利用するユーザが、より良く状況を把握することが可能になる。
【0146】
[4]その他
図23は、第1実施形態の変形例に係る距離計測装置1における投光系及び受光系の配置の一例を示している。
図23に示された投光系は、例えば光学系20に対応し、受光系は、光検出器33に対応している。距離計測装置1における投光系と受光系の配置としては、例えば
図23に示された2種類(第1及び第2の配置例)が考えられる。
【0147】
第1の配置例では、投光系が第2方向にレーザ光を出射し、投光系及び受光系が第1方向に並んで配置される。この場合、第2実施形態のように縦長のレーザ光が使用されることによって、
図13を用いて説明したような反射光の位置ずれの問題が緩和され得る。第2の配置例では、投光系が第2方向にレーザ光を出射し、投光系及び受光系が第2方向に並んで配置される。距離計測装置1のシステム次第では、第2の配置例の方が第1の配置例よりも製造コストを抑制することが出来る場合がある。第1実施形態の変形例における配置は、第2実施形態及び第3実施形態のそれぞれにも適用され得る。
【0148】
上記実施形態は、組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態は、第3実施形態と組み合わされても良い。複数の実施形態が組み合わされた距離計測装置1は、組み合わされた実施形態のそれぞれの効果を得ることが出来る。距離の計測に伴う計測処理部30の種々の処理は、制御部11によって実行されるものと見なされても良い。
【0149】
第1実施形態で説明されたTDC領域TRの配置は、あくまで一例である。TDC領域TRは、例えばADC領域ARによって挟まれていても良い。このような場合にも、TDC領域TR内の画素PXに含まれたSPADの数がADC領域AR内の画素PXに含まれたSPADの数よりも多く設定されることによって、TDC領域TRにおける画素PXのダイナミックレンジが広くなる。すなわち、距離計測装置1が、TDCによる距離の計測を実行することが出来る。
【0150】
本明細書において、“画素領域”は、ADC60若しくはTDC62に入力される画素PXの出力信号IOUTの合計に対応している。例えば、ADC領域AR内の画素領域の大きさは、画素PXの大きさに対応している。TDC領域TR内の画素領域の大きさは、TDC62に入力される信号に対応する複数の画素PXの合計の大きさに対応している。画素の大きさは、例えば受光部DPから一括で出力される信号に関連付けられているSPADの数及び配置によっても定義され得る。“クエンチ素子”は、例えばクエンチ抵抗、又はトランジスタに対応している。
【0151】
本明細書において“H”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオン状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオフ状態になる電圧である。“L”レベルの電圧は、ゲートに当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオフ状態になり、ゲートに当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオン状態になる電圧である。
【0152】
本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、例えば間に別の素子を介することを除外しない。また、明細書において“オン状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧以上の電圧が印加されていることを示している。“オフ状態”とは、対応するトランジスタのゲートに当該トランジスタの閾値電圧未満の電圧が印加されていることを示し、例えばトランジスタのリーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0154】
1…距離計測装置、10…出射部、11…制御部、12…発振器、13…駆動回路、14…駆動回路、15…光源、20…光学系、21…レンズ、22…光学素子、23…レンズ、24…ミラー、30…計測処理部、31…光検出器、32…レンズ、33…光検出器、34…増幅器、35…増幅器、36…時間取得部、37…距離計測処理部、40…画像処理部、50…基板、51…P型半導体層、52…Pプラス型半導体層、53…Nプラス型半導体層、60…AD変換回路、61…加算器、62…TD変換回路、63…パルス処理部、L1…レーザ光、L2,L2f,L2n…反射光、IOUT…出力信号