(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】塵芥収集車及び塵芥収集装置
(51)【国際特許分類】
B65F 3/20 20060101AFI20231113BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B65F3/20 B
B60P3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020058637
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 典浩
(72)【発明者】
【氏名】秋山 優二
(72)【発明者】
【氏名】今岡 大策
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-183015(JP,A)
【文献】特開2011-207608(JP,A)
【文献】特開2003-040403(JP,A)
【文献】特開平11-324904(JP,A)
【文献】特開2003-164999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、車体に搭載された塵芥収集装置によって構成される塵芥収集車であって、前記塵芥収集装置は、塵芥を収納する塵芥収納箱と、積込装置を有し、前記積込装置は、前記塵芥収納箱に塵芥を送り込む積み込み動作を実施するものであり、
前記積込装置は、上下方向の成分を有する方向に移動するスライダと、当該スライダに取り付けられて車体の前後方向に揺動して姿勢変更する押込み部材と、前記スライダを駆動する昇降用シリンダを有し、
前記昇降用シリンダは、前記スライダを上昇方向に移動させる際に加圧される上昇側ポートを有し、
前記積込装置は、前記スライダが上昇位置であって且つ前記押込み部材が前向き姿勢となっている準備姿勢を取ることが可能であり、
前記積み込み動作は、準備姿勢の状態から前記押込み部材を後方に向かって揺動させる反転工程と、前記スライダを降下させる降下工程と、前記押込み部材を前方に向かって揺動させる圧縮工程と、前記スライダを上昇させる上昇工程を順次実施するものである塵芥作業車において、
前記準備姿勢から前記降下工程に至る間に、一時的に前記上昇側ポートを加圧する一時加圧工程を実施可能であることを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記準備姿勢の状態で一時加圧工程が開始され、続いて前記反転工程が開始されることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記積込装置が休止状態から復帰して前記積み込み動作を行う場合に、一時加圧工程が実施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記積み込み動作が繰り返される連続運転モードによる運転が可能であり、当該連続運転モードにおいては、最初の積み込み動作の際に前記一時加圧工程が実施され、二回目以降は前記一時加圧工程が全部又は一部省略されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塵芥収集車。
【請求項5】
車体に搭載される塵芥収集装置であって、塵芥を収納する塵芥収納箱と、積込装置を有し、積込装置は、前記塵芥収納箱に塵芥を送り込む積み込み動作を実施するものであり、
前記積込装置は、上下方向の成分を有する方向に移動するスライダと、当該スライダに取り付けられて車体の前後方向に揺動して姿勢変更する押込み部材と、前記スライダを駆動する昇降用シリンダを有し、
前記昇降用シリンダは、前記スライダを上昇方向に移動させる際に加圧される上昇側ポートを有し、
前記積込装置は、前記スライダが上昇位置であって且つ前記押込み部材が前向き姿勢となっている準備姿勢を取ることが可能であり、
前記積み込み動作は、準備姿勢の状態から前記押込み部材を後方に向かって揺動させる反転工程と、前記スライダを降下させる降下工程と、前記押込み部材を前方に向かって揺動させる圧縮工程と、前記スライダを上昇させる上昇工程を順次実施するものである塵芥収集装置において、
前記準備姿勢から前記降下工程に至る間に、一時的に前記上昇側ポートを加圧する一時加圧工程を実施可能であることを特徴とする塵芥収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥を収集して運搬する塵芥収集車に関するものである。また本発明は、塵芥収集車の主要構成たる塵芥収集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭から排出される一般ごみや、飲食店等から排出される生ゴミ等を収集する装置として、塵芥収集車100が知られている。
塵芥収集車100は、
図1(a)の様に車体10に塵芥収集装置11が搭載されたものである。
塵芥収集装置11は、塵芥を収容する塵芥収容箱12と、塵芥投入箱13によって構成されている。塵芥収容箱12は、
図1(b)の様に車体10の後端側が開口した箱であり、塵芥投入箱13は、塵芥収容箱12の開口部分を覆う位置にある。即ち塵芥投入箱13は、
図1(a)(b)の様に塵芥収容箱12を蓋するものであり、塵芥収容箱12と塵芥投入箱13とによって、略密閉された塵芥収納空間15が形成される。
そして塵芥投入箱13には、
図2の様に塵芥が投入される塵芥投入空間16と、塵芥投入空間16に投入された塵芥を塵芥収容箱12内の塵芥収納空間15に押し入れる積込装置18が内蔵されている。
【0003】
積込装置18は、「プレス式積込装置」と称されるものであり、
図2、
図3の様に、スライド板(スライダ)20と、押込み板(押込み部材)21が組み合わされた構造のものである。
スライド板20は、斜め方向に昇降するものであり、上下方向の成分を有する方向に移動する部材である。
そしてスライド板20の先端に押込み板21が設けられている。押込み板21は、揺動軸23を中心として車体の前後方向に揺動する部材である。
【0004】
塵芥収集車100が走行中、積込装置18は、油圧ポンプ等が停止した休止状態となっており、前記したスライド板20と、押込み板21は、
図4(a)の様な準備姿勢となっている。
塵芥を収集する際には、油圧ポンプを起動してスライド板20及び押込み板21を動作させ、一連の積み込み動作が実施される。
即ち、積み込み動作は、「反転工程」「降下工程」「圧縮工程」「上昇工程」によって構成されている。
「反転工程」は、
図4(a)の様な準備姿勢の状態から、
図4(b)の様に押込み板21を後方(車体後方)に向かって揺動させる工程である。
続いて、
図4(c)の様に、スライド板20を降下させる降下工程を実施する。
さらに続いて、
図4(d)の様に、前記押込み板21を前方(車体10の運転席側)に向かって揺動させる圧縮工程を実施する。
さらに続いて、
図4(e)の様にスライド板20を上昇させる上昇工程を実施する。
【0005】
積込装置18では、反転工程を実施することによって押込み板21をスライド板20に対して約180度以上に開いた姿勢にし、この姿勢の状態でスライド板20を降下し(降下工程)、押込み板21を塵芥投入空間16に差し入れる。そしてこの状態で、圧縮工程によって押込み板21を
図4(d)の様に時計方向に回転して塵芥7をすくう。その後に、上昇工程によってスライド板20を上昇させ、塵芥7をすくった状態の押込み板21を引き上げ、塵芥7を塵芥収納空間15内に送り込み、押し入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
塵芥収集車に関して、発現頻度の高い不具合の一つに、異音の問題がある。特許文献1についてもその問題を解決することを課題としている。
本発明は、特許文献1とは異なる方策によって、異音の発生を抑制することを課題とするものである。
具体的には、前記した一連の積み込み動作を行う際、降下工程の開始直後に異音が発生する場合がある。
本発明者らが調査したところ、休止状態からの最初の積み込み動作の際に、異音が発生する頻度が高いことが分かった。
本発明は、上記した知見に基づくものであり、降下工程の開始直後に発生する異音を抑制することができる塵芥収集車及び塵芥収集装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、車体と、車体に搭載された塵芥収集装置によって構成される塵芥収集車であって、前記塵芥収集装置は、塵芥を収納する塵芥収納箱と、積込装置を有し、前記積込装置は、前記塵芥収納箱に塵芥を送り込む積み込み動作を実施するものであり、前記積込装置は、上下方向の成分を有する方向に移動するスライダと、当該スライダに取り付けられて車体の前後方向に揺動して姿勢変更する押込み部材と、前記スライダを駆動する昇降用シリンダを有し、前記昇降用シリンダは、前記スライダを上昇方向に移動させる際に加圧される上昇側ポートを有し、前記積込装置は、前記スライダが上昇位置であって且つ前記押込み部材が前向き姿勢となっている準備姿勢を取ることが可能であり、前記積み込み動作は、準備姿勢の状態から前記押込み部材を後方に向かって揺動させる反転工程と、前記スライダを降下させる降下工程と、前記押込み部材を前方に向かって揺動させる圧縮工程と、前記スライダを上昇させる上昇工程を順次実施するものである塵芥作業車において、前記準備姿勢から前記降下工程に至る間に、一時的に前記上昇側ポートを加圧する一時加圧工程を実施可能であることを特徴とする塵芥収集車である。
【0009】
本態様の塵芥収集車によると、従来、問題であった降下工程の開始直後の異音の発生頻度が顕著に減少した。
異音の原因は正確には不明であるが、現象から推測して、積込装置が休止状態の際に重力等の影響によって昇降用シリンダ内が負圧傾向となり、油圧系統内に何らかの圧力異常が生じ、当該昇降用シリンダを駆動する際に、圧力の変化や波動が発生していたのではないかと予想される。
本態様の様に、降下工程に先立って、昇降用シリンダの上昇側ポートを加圧することにより、油圧系統内の圧力異常が解消するのではないかと予想される。
いずれにしても、本態様を採用することにより、異音の発生頻度が顕著に減少した。
【0010】
上記した態様において、前記準備姿勢の状態で一時加圧工程が開始され、続いて前記反転工程が開始されることが望ましい。
【0011】
本態様を採用することにより、異音の発生頻度が顕著に減少した。
【0012】
上記した各態様において、前記積込装置が休止状態から復帰して前記積み込み動作を行う場合に、一時加圧工程が実施されることが望ましい。
【0013】
本態様を採用することにより、異音の発生頻度が顕著に減少した。
【0014】
上記した各態様において、前記積み込み動作が繰り返される連続運転モードによる運転が可能であり、当該連続運転モードにおいては、最初の積み込み動作の際に前記一時加圧工程が実施され、二回目以降は前記一時加圧工程が全部又は一部省略することが望ましい。
【0015】
二回目以降の積み込み動作の際に一時加圧工程を実施しなくても、目立った不具合は発生しなかった。
【0016】
塵芥収集装置の態様は、車体に搭載される塵芥収集装置であって、塵芥を収納する塵芥収納箱と、積込装置を有し、積込装置は、前記塵芥収納箱に塵芥を送り込む積み込み動作を実施するものであり、前記積込装置は、上下方向の成分を有する方向に移動するスライダと、当該スライダに取り付けられて車体の前後方向に揺動して姿勢変更する押込み部材と、前記スライダを駆動する昇降用シリンダを有し、前記昇降用シリンダは、前記スライダを上昇方向に移動させる際に加圧される上昇側ポートを有し、前記積込装置は、前記スライダが上昇位置であって且つ前記押込み部材が前向き姿勢となっている準備姿勢を取ることが可能であり、前記積み込み動作は、準備姿勢の状態から前記押込み部材を後方に向かって揺動させる反転工程と、前記スライダを降下させる降下工程と、前記押込み部材を前方に向かって揺動させる圧縮工程と、前記スライダを上昇させる上昇工程を順次実施するものである塵芥収集装置において、前記準備姿勢から前記降下工程に至る間に、一時的に前記上昇側ポートを加圧する一時加圧工程を実施可能であることを特徴とする塵芥収集装置である。
【0017】
本態様を採用することにより、異音の発生頻度が顕著に減少した。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塵芥収集車及び塵芥収集装置は、降下工程の開始直後の異音発生が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明及び従来技術の塵芥収集車の側面図であり、(a)は、塵芥収容箱の開口を塵芥投入箱で塞いだ状態を示し、(b)は、塵芥投入箱を揺動させて塵芥収容箱の開口を開いた状態を示す。
【
図2】本発明及び従来技術の塵芥収集車の塵芥投入箱の断面図である。
【
図3】
図1の塵芥収集車の塵芥投入箱の要部の斜視図である。
【
図4】
図1の塵芥収集車の塵芥投入箱の断面図であり、(a)は、準備姿勢の状態を示し、(b)は押込み板を後方に向かって揺動した状態を示し、(c)はスライド板が降下した状態を示し、(d)はスライド板を塵芥投入空間に差し入れて押込み板を回動し塵芥をすくっている状態を示し、(e)はスライド板を引き上げて塵芥を塵芥収容箱側に送り込んだ状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態の塵芥収集装置の油圧回路図であり、塵芥収集車の走行時及び塵芥収集装置の待機時を示す。
【
図6】本発明の実施形態の塵芥収集装置の油圧回路図であり、一時加圧工程時を示す。
【
図7】本発明の実施形態の塵芥収集装置の油圧回路図であり、反転工程時を示す。
【
図8】本発明の実施形態の塵芥収集装置の油圧回路図であり、降下工程時を示す。
【
図9】本発明の実施形態の塵芥収集装置の油圧回路図であり、圧縮工程時を示す。
【
図10】本発明の実施形態の塵芥収集装置の油圧回路図であり、上昇工程時を示す。
【
図11】発明の実施形態の塵芥収集装置の単発運転モードにおける動作を示すフローチャートである。
【
図12】発明の実施形態の塵芥収集装置の連続運転モードにおける動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の塵芥収集車1の外観形状及び機械的構造は、従来技術と同一である。
即ち本実施形態の塵芥収集車1は、
図1の様に、車体10に塵芥収集装置11が搭載されたものである。ただし従来技術と区別するため、附番の一部を変更している。
塵芥収集装置11は、従来技術と同様に、塵芥を収容する塵芥収容箱12と、塵芥投入箱13によって構成されている。
塵芥収容箱12は、
図1の様に、車体10の後端側が開口した箱である。即ち塵芥収容箱12は、後端に大きな開口があり、当該開口を除く5面が頑丈な鋼板によって覆われた構造をしている。本実施形態では、塵芥収容箱12の中に塵芥収納空間15が形成されている。
【0021】
塵芥投入箱13は、塵芥収容箱12の後端にヒンジ19によって取り付けられており、図示しないシリンダによって、
図1(a)の様な開口を蓋する姿勢と、
図1(b)の様な開口を開放する姿勢をとることができる。
本実施形態の塵芥収集車1は、内部に隔壁17があり、従来技術と同様に、スライド板(スライダ)20と、押込み板(押込み部材)21と、塵芥投入槽25が内蔵されている。
また塵芥収容箱12は、左右に側板14a,14bが設けられている。
【0022】
前記した隔壁17は、先の実施形態と同様に両端が側板14a,14bに溶接されたものであり、
図1(a)の様な開口を蓋する姿勢の際に、開口の上部側を覆う。
【0023】
塵芥投入槽25は、底面が半円形の金属槽であり、隔壁17の下に配されている。
【0024】
スライド板(スライダ)20は、
図3の様に側面にコロ26を有している。スライド板(スライダ)20は、隔壁17の外側面にあり、図示しないレールに前記したコロ26が係合していて、斜め方向に摺動可能である。即ちスライド板20の一部が図示しないレールと係合している。そしてスライド板20と左右の側板14a,14bとの間に昇降用シリンダ30a,30bが取り付けられており、昇降用シリンダ30a,30bを伸縮させることによってスライド板20が斜め方向に上下動する。
【0025】
また押込み板21は、スライド板(スライダ)20の下端近傍に軸止されている。押込み板21の揺動軸23a,23bは、スライド板20の下端近傍にある。
また押込み板21の上部近傍とスライド板20との間に揺動用シリンダ40a,40bが取り付けられている。そのため揺動用シリンダ40a,40bを伸縮すると、押込み板21が揺動する。
【0026】
本実施形態の塵芥収集車1の基本的な動作は、従来技術と同様である。即ち押込み板21を後方へ揺動させスライド板20に対して開いた姿勢にした状態で、スライド板20を降下し、押込み板21を塵芥投入槽25に差し入れる。そしてこの状態で、押込み板21を前方へ揺動して塵芥7をすくう。その後に、スライド板20を上昇させて塵芥7をすくった状態の押込み板21を引き上げ、塵芥7を塵芥収納空間15内に押し入れる。
【0027】
本実施形態の塵芥収集装置11では、昇降用シリンダ30a,30bが、伸長方向に動作することによってスライド板(スライダ)20が上昇し、昇降用シリンダ30a,30bを収縮方向に動作することによってスライド板(スライダ)20が降下する。
従って、昇降用シリンダ30a,30bは、
図2、
図5乃至
図9の様に、ボトム側ポートが上昇側ポート31となり、ロッド側ポートが下降側ポート32となる。
【0028】
本実施形態の塵芥収集装置11では、揺動用シリンダ40a,40bを、伸長方向に動作することによって押込み板21が前方に向かって揺動し、揺動用シリンダ40a,40bを、収縮方向に動作することによって押込み板21が後方に向かって揺動する。
従って、揺動用シリンダ40a,40bは、ボトム側ポートが前方揺動側ポート41となり、ロッド側ポートが後方揺動側ポート42となる。
【0029】
各シリンダを動作させる油圧回路及び各動作時におけるシリンダの動作と電磁弁の作動状態は、
図5乃至
図9の通りである。
塵芥収集装置11の油圧回路は、油圧ポンプ50、昇降用シリンダ30(30a,30b、揺動用シリンダ40(40a.40b)、昇降用電磁弁51、揺動用電磁弁52を有している。なお、実際には、各部に逆止弁やリリーフ弁等が配されているが、これらについては省略している。
【0030】
昇降用電磁弁51及び揺動用電磁弁52は、いずれも3位置、4方向電磁弁であり、公知の通り、順方向に作動油を通過させる順方向位置と、逆方向に作動油を通過させる逆方向位置と、中立位置を有している。
昇降用電磁弁51及び揺動用電磁弁52は、クローズドセンタ型の電磁弁であり、中立位置においては、全てのポートが閉止される。
【0031】
本実施形態では、昇降用電磁弁51は、スプールが順方向位置である際に、昇降用シリンダ30a,30bの上昇側ポート31が加圧状態となって、上昇側ポート31から昇降用シリンダ30a,30bに作動油が供給され、昇降用シリンダ30a,30bが収縮してスライド板(スライダ)20が上昇する。そのため、以下の説明では、昇降用電磁弁51は、スプールが順方向位置である状態を上昇方向位置と称する。同様に、昇降用電磁弁51は、スプールが逆方向位置である状態を降下方向位置と称する。
【0032】
また本実施形態では、揺動用電磁弁52は、スプールが順方向位置である際に、揺動用シリンダ40a,40bの前方揺動側ポート41が加圧状態となって、前方揺動側ポート41から揺動用シリンダ40a,40bに作動油が供給され、揺動用シリンダ40a,40bが収縮して押込み板21が前方に向かって揺動する。そのため、以下の説明では、揺動用電磁弁52は、スプールが順方向位置である状態を前方方向位置と称する。同様に、揺動用電磁弁52は、スプールが逆方向位置である状態を後退方向位置と称する。
【0033】
本実施形態の塵芥収集装置11は、
図1の様に制御装置60を有し、前記した油圧回路の油圧ポンプ50や、昇降用電磁弁51、揺動用電磁弁52が、当該制御装置60から出力される信号によって駆動・停止される。
また塵芥収集装置11は、スライド板(スライダ)20が、上昇位置にあることを検知する図示しない上方側検知スイッチと、降下位置にあることを検知する図示しない下方側検知スイッチを有している。
また、押込み板21が前方位置にあることを検知する図示しない前方位置検知スイッチと、後方位置にあることを検知する図示しない後方位置検知スイッチを有している。
これらの検知スイッチの検知信号は、制御装置60に入力される。
【0034】
制御装置60には、
図11及び
図12のフローチャートに示す動作を実現するためのコンピュータプログラムが格納されている。
また塵芥収集装置11は、スイッチ群62を有している。
本実施形態では、スイッチ群62には、単独回スイッチ63と、連続運転スイッチ65と、停止スイッチ66が含まれている。
【0035】
本実施形態の塵芥収集装置11は、従来技術と同様、
図4(a)の様な準備姿勢の状態から、
図4(b)の様に押込み板21を後方に向かって揺動させる反転工程を実施する。
続いて、
図4(c)の様に、スライド板20を降下させる降下工程を実施する。
さらに続いて、
図4(d)の様に、前記押込み板21を前方に向かって揺動させる圧縮工程を実施する。
さらに続いて、
図4(e)の様にスライド板20を上昇させる上昇工程を実施する。
本実施形態の塵芥収集装置11は、特徴的構成として、最初の反転工程が行わる前に、短時間だけ、スライド板20を上昇方向に付勢する方向に、昇降用シリンダ30a,30bが加圧される。
即ち、最初の反転工程が実施される前に、一時的に前記上昇側ポートを加圧する一時加圧工程が実施される。
【0036】
以下、塵芥収集装置11の一連の動作を
図11、
図12のフローチャート及び
図5乃至
図10の配管図を参照しつつ説明する。
本実施形態の塵芥収集車1は、走行中である場合や、塵芥収集装置11が準備中である場合には、積込装置18が休止状態となっている。この休止状態とは、油圧ポンプ50等が停止している状態あるいは油圧ポンプ50が駆動することにより作動油を吐出しているがリリーフ弁(図示せず)等を経由してオイルタンクに還流し、昇降用シリンダ30や揺動用シリンダ40の作動油が電磁弁51、52によりそれぞれ封止が静止した状態をいう。また、前記したスライド板20と、押込み板21は、
図4(a)の様な準備姿勢となっている。即ちスライド板20は、上端の位置にあり、押込み板21は、前方に向いている。
揺動用シリンダ40a,40bは、伸長状態である。昇降用シリンダ30a,30bは、スライド板20が上端の位置で停止しているので伸長状態である。
昇降用電磁弁51及び揺動用電磁弁52は、
図5の様に、いずれもスプールが中立位置にある。従って、揺動用シリンダ40a,40bは、伸長状態で停止し、昇降用シリンダ30a,30bも、伸長状態で停止している。
【0037】
塵芥収集装置11は、単独回運転モードと、連続運転モードを選択することができる。単独回運転モードは、積み込み動作を一回だけ実施する運転モードである。単独運転モードにおいては、
図11のフローチャートに基づいて各機器が動作する。
単独回運転モードによる運転を実施する際には、単独回スイッチ63をオンする。
即ち、ステップ1で、単独回スイッチ63のON信号を待ち、単独回スイッチ63がオンされると、ステップ2に進み、油圧ポンプ50が駆動される。
【0038】
ステップ3では、
図6の様に、昇降用電磁弁51が、中立位置から、上昇方向位置に切り替えられる。その結果、昇降用電磁弁51を経由して昇降用シリンダ30a,30bの上昇側ポート31が加圧されて一時加圧工程が実施される。
ここで、前記した様に、塵芥収集装置11が準備中である場合には、スライド板20は、上端の位置にあり、昇降用シリンダ30a,30bは、伸長状態である。
本実施形態の塵芥収集装置11では、昇降用シリンダ30a,30bがすでに伸長状態であるにも関わらず、スライド板20の降下に先立って、再度、昇降用シリンダ30a,30bの上昇側ポート31が加圧される。
昇降用シリンダ30a,30bは、
図4(a)の様に既に伸び切った状態であるから、
図6の様に上昇側ポート31が加圧されても、多くの場合、作動油の流量は無い。もちろん、作動油が流れる場合もあると考えられる。
この加圧(一時加圧工程)によって、昇降用シリンダ30a,30bの圧力バランスが正常化すると予想される。
【0039】
一時加圧工程は、極短時間で足る。実際には、1秒未満で足る。
ステップ4で微小時間の経過を待ち、当該時間が満了すれば、ステップ5に移行して、昇降用電磁弁51を中立位置に戻す。
【0040】
続くステップ6では、
図7の様に、揺動用電磁弁52を後退方向位置に切り替える。その結果、
図4(b)の様に押込み板21が後方に向かって揺動する反転工程が実施される。
ステップ7で、押込み板21が後退位置に至ったことが確認されると、ステップ8に移行し、揺動用電磁弁52が中立位置に切り替えられる。
【0041】
そして、ステップ9に移行し、
図8の様に、昇降用電磁弁51が降下方向位置に切り替えられる。その結果、昇降用シリンダ30a,30bの下降側ポート32から作動油が流れ、昇降用シリンダ30a,30bが収縮し、
図4(c)の様に、スライド板20を降下させる降下工程が開始される。
【0042】
ステップ10で、スライド板20が所定の位置まで降下したことが確認されると、ステップ11に移行し、昇降用電磁弁51が中立位置に切り替えられる。
【0043】
次いで、ステップ12に移行し、
図9の様に、揺動用電磁弁52を前方方向位置に切り替える。その結果、
図4(d)の様に押込み板21が前方に向かって揺動する圧縮工程が開始される。
ステップ13で、押込み板21が前方位置に至ったことが確認されると、ステップ14に移行し、揺動用電磁弁52が中立位置に切り替えられる。
【0044】
そしてステップ15に移行し、
図10の様に、昇降用電磁弁51が上昇方向位置に切り替えられる。その結果、昇降用シリンダ30a,30bの上昇側ポート31から作動油が流れ、昇降用シリンダ30a,30bが伸長し、
図4(e)の様にスライド板20を上昇させる上昇工程が開始される。
【0045】
ステップ16で、スライド板20が所定の位置まで上昇したことが確認されると、ステップ17に移行し、昇降用電磁弁が中立位置に切り替えられる(
図5)。
以上の工程によって。単独回運転モードにおける運転が終了する。
【0046】
次に、連続運転モードにおける運転について説明する。連続運転モードは、積み込み動作を繰り返す運転モードである。連続運転モードにおいては、
図12のフローチャートに基づいて各機器が動作する。
連続運転モードにおいても、一時加圧工程(ステップ3~ステップ5)が実施されるが、一時加圧工程は、最初の積み込み動作の際だけ行われる。
連続運転モードにおけるフローチャートは、
図11のフローチャートで示した工程を繰り返すものであるが、一回目の積み込み動作が終了した段階のステップ18で、停止スイッチがオンされているか否が判断される。
停止スイッチがオンであれば、連続運転が終了される。
停止スイッチがオンでなければ、ステップ6に移行し、揺動用電磁弁を後退方向位置に切り替えて反転工程が開始され、以後、単独回運転と同様の工程が実施される。
連続運転モードにおける運転中に停止スイッチがオンされた場合、及び連続運転モードにおける運転中に単独回スイッチ63がオンされた場合は、一連の積み込み動作が終了した段階で、運転が停止する。
【0047】
以上説明した実施形態では、反転工程に先立って一時加圧工程を実施したが、反転工程の後で一時加圧工程を実施してもよい。また反転工程と一時加圧工程を並行して行ってもよい。
要するに、降下工程が開始される前に、一時加圧工程が行わればよい。
上記した実施形態では、連続運転モードにおいて、最初の積み込み動作の際に限って一時加圧運転を実施したが、毎回一時加圧運転を行ってもよい。また一定回数ごとに一時加圧運転を行ってもよい。
【0048】
以上説明した実施形態では、単独回スイッチ63や連続回スイッチ65のオンに応じて、油圧ポンプ50を起動する構成を採用したが(ステップ2)、油圧ポンプ50の起動方法や動力源は、限定されるものではない。
例えば独立したポンプ起動スイッチを設け、当該ポンプ起動スイッチを操作することによって、油圧ポンプ50のモータを起動してもよい。
また油圧ポンプの動力を車両から導いてもよい。即ち、車両の走行駆動源と油圧ポンプとを接続・切断するPTOスイッチを設けてもよい。
積込装置18において押込み板21を揺動させるアクチュエータとして揺動用シリンダ40a、40bを用いたが、他のアクチュエータ(例えば油圧モータ)に変えてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 塵芥収集車
11 塵芥収集装置
12 塵芥収容箱
13 塵芥投入箱
15 塵芥収納空間
16 塵芥投入空間
18 積込装置
20 スライド板(スライダ)
21 押込み板(押込み部材)
30a、30b 昇降用シリンダ
31 上昇側ポート
40 揺動用シリンダ
50 油圧ポンプ
51 昇降用電磁弁
60 制御装置
63 単独回スイッチ
65 連続運転スイッチ