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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062877
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160158
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】奥島 智靖
(72)【発明者】
【氏名】安田 友則
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃広
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034501(JP,A)
【文献】特開2019-010751(JP,A)
【文献】特開2013-220584(JP,A)
【文献】特開2009-298027(JP,A)
【文献】特開2006-272764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0049575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の印刷媒体に向けてインク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置であって、
前記印刷媒体の搬送経路に沿って設けられた前記印刷媒体を搬送する駆動ローラと、
前記駆動ローラによる前記印刷媒体の搬送距離を計測するためのエンコーダと、
前記搬送経路の上流側に位置する上流側ノズルと、前記搬送経路において前記上流側ノズルの下流側に位置する下流側ノズルを有する印刷ユニットと、
前記印刷媒体における特定位置に向けて前記上流側ノズルがインク滴を吐出した後、前記特定位置が所定の距離だけ搬送された時点で前記下流側ノズルがインク滴を吐出するように前記エンコーダの出力に基づいて前記印刷ユニットを制御する印刷ユニット制御部と、
前記印刷媒体の搬送速度を制御するため、前記駆動ローラの変速を制御する駆動ローラ制御部と、
を備え、
前記駆動ローラ制御部は、前記上流側ノズルがインク滴を吐出するときの前記印刷媒体の搬送速度である第1速度と、前記下流側ノズルがインク滴を吐出するときの前記印刷媒体の搬送速度である第2速度との差である速度差が、前記駆動ローラの変速中における各時点で一定となるように前記駆動ローラを制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置において、
前記印刷ユニット制御部は、前記上流側ノズルが吐出したインク滴の前記印刷媒体における着弾位置である第1着弾位置と、前記下流側ノズルが吐出したインク滴の前記印刷媒体における着弾位置である第2着弾位置とが一致するように前記下流側ノズルにおけるインク滴の吐出タイミングを操作することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記印刷媒体の搬送速度を変化させる指示を入力させる入力部を更に備え、
前記印刷ユニット制御部は、前記印刷媒体の搬送速度が一定となっている間の前記印刷ユニットの制御モードである等速モードと、前記印刷媒体の搬送速度が変化している間の前記印刷ユニットの制御モードである変速モードとを少なくとも含む複数の制御モードのいずれかに従い動作し、前記入力部に入力がなされると前記制御モードを前記等速モードから前記変速モードに切り換えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置において、
前記印刷ユニット制御部は、前記駆動ローラの変速中において、前記印刷媒体の搬送速度が一定となっているときと同じ制御で前記印刷ユニットにおけるインク滴の吐出タイミングの操作を制御することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記駆動ローラの変速のパターンを記憶する記憶部を備え、
前記駆動ローラ制御部は、前記パターンを前記記憶部から読み出して動作することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体を搬送させつつノズルからインク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置に関する。
【0002】
近年、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置が開発されている。このような構成の装置には、複数のヘッドを有し、ヘッドに羅列されている複数のノズルから印刷媒体に対してインクを吐出することにより印刷を行うものがある。
【0003】
各ヘッドは、紙などの印刷媒体の搬送方向に互いに離間して複数設けられている。印刷媒体の搬送経路の上流に位置するノズルを上流側ノズル、印刷媒体の搬送経路の下流に位置するノズルを下流側ノズルとする。一定の速度で搬送される印刷媒体に対し、上流側ノズルと下流側ノズルがインク滴を同時に吐出すると、印刷媒体におけるインク滴の着弾位置がノズルの離間距離だけ離れてしまう。この現象は、上流側ノズルと下流側ノズルとでインク滴の着弾位置を一致させようとするときの妨げとなる。
【0004】
そこで、従来装置によれば、下流側ノズルがインク滴を吐出するタイミングを上流側ノズルがインク滴を吐出するタイミングからずらすようにしている。すなわち、従来装置は、上流側ノズルがインク滴を吐出してから印刷媒体が所定の距離だけ搬送された後、下流側ノズルからインク滴を吐出するようにする。すると、上流側ノズルに係るインク滴が印刷媒体に着弾してから下流側ノズルに係るインク滴が印刷媒体に着弾するまで時間差が生じる。
【0005】
従来装置において、二つのノズルが吐出したインク滴がどのように印刷媒体に着弾するかについて説明する。まず、上流側ノズルからインク滴が印刷媒体に向けて吐出され、インク滴が印刷媒体に着弾する。上流側ノズルに係るインク滴の着弾位置は、下流側ノズルがインク滴を吐出する前に印刷媒体の搬送により上流側ノズルから離れ、下流側ノズルに向かう。この時点で下流側ノズルはインク滴を印刷媒体に向けて吐出する。下流側ノズルに係るインク滴が下流側ノズルと印刷媒体との間に設けられた間隙を飛翔する間に、印刷媒体における上流側ノズルに係るインク滴の着弾位置は下流側ノズルまで移動する。そして、下流側ノズルに係るインク滴は、上流側ノズルに係るインク滴の着弾位置で印刷媒体に着弾する。このようにして、上流側ノズルと下流側ノズルとは、インク滴を印刷媒体の同じ位置で着弾させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-203048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構成を有する従来装置は、次の様な問題点がある。
すなわち、従来装置は、搬送速度を変化させながら印刷する場合の考慮が不足している。例えば、印刷の開始や、印刷の終了及び中止を実行するとき、印刷媒体の搬送速度を変更させる必要がある。印刷を開始する際における印刷媒体の加速中、または、印刷を終了及び中止する際における印刷媒体の減速中に従来通りの印刷を行うと、印刷媒体の搬送速度が変化しながら上述の時間差を設けたインクの吐出を実行することになる。従来のインク吐出の方式は、印刷媒体の搬送速度が一定の場合を想定している。したがって、印刷媒体の加速または減速中に印刷を実行すると、上流側ノズルに係る着弾位置と下流側ノズルに係る着弾位置とが互いにずれてしまう事態となる。しかも、そのズレは、印刷媒体の変速に伴って変化する。すると、印刷媒体上の印字の色味などが変化してしまう。このように、従来装置によれば、印刷媒体の加速中または減速中に品質の許容できる印刷を行うことができない。
【0008】
したがって、従来装置は、印刷の開始時や中止時には印刷を実行することができず、印刷媒体の搬送速度が安定している間だけインク吐出が実行される。搬送速度の変化中は、印刷の準備期間となる。この準備期間においても印刷媒体は搬送され続けるので、それだけ印刷媒体が無駄となってしまう。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、印刷媒体の搬送速度が変化している状態でも品質の高い印刷が可能な印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る発明者は、研究の結果、次の様な見解を得た。印刷の開始時や中止時に品質の高い印刷ができない理由は、上流側ノズルに係るインク滴の着弾位置から下流側ノズルに係るインク滴の着弾位置までの距離(着弾距離)が時間とともに変化してしまうことにある。
【0011】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係るインクジェット印刷装置は、搬送中の印刷媒体に向けてインク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置であって、印刷媒体の搬送経路に沿って設けられた印刷媒体を搬送する駆動ローラと、駆動ローラによる印刷媒体の搬送距離を計測するためのエンコーダと、搬送経路の上流側に位置する上流側ノズルと、搬送経路において上流側ノズルの下流側に位置する下流側ノズルを有する印刷ユニットと、印刷媒体における特定位置に向けて上流側ノズルがインク滴を吐出した後、特定位置が所定の距離だけ搬送された時点で下流側ノズルがインク滴を吐出するようにエンコーダの出力に基づいて印刷ユニットを制御する印刷ユニット制御部と、印刷媒体の搬送速度を制御するため、駆動ローラの変速を制御する駆動ローラ制御部と、を備え、駆動ローラ制御部は、上流側ノズルがインク滴を吐出するときの印刷媒体の搬送速度である第1速度と、下流側ノズルがインク滴を吐出するときの印刷媒体の搬送速度である第2速度との差である速度差が、駆動ローラの変速中における各時点で一定となるように駆動ローラを制御することを特徴とするものである。
【0012】
[作用・効果]上述の構成によれば、印刷媒体の変速中においても印刷を続行することができる。すなわち、本発明によれば、駆動ローラ制御部は、上流側ノズルがインク滴を吐出するときの印刷媒体の搬送速度である第1速度と、下流側ノズルがインク滴を吐出するときの印刷媒体の搬送速度である第2速度との差である速度差が、駆動ローラの変速中における各時点で一定となるように駆動ローラを制御する。このようにすることで、駆動ローラの変速中における各時点で上流側ノズルに係るインク滴の印刷媒体上の着弾位置と下流側ノズルに係るインク滴の印刷媒体上の着弾位置との関係を一定とすることができる。したがって、印刷媒体の変速中において印刷媒体上の印字の色味などが変化してしまうことがなく、品質の高い印刷ができる。
【0013】
また、上述のインクジェット印刷装置において、印刷ユニット制御部は、上流側ノズルが吐出したインク滴の印刷媒体における着弾位置である第1着弾位置と、下流側ノズルが吐出したインク滴の印刷媒体における着弾位置である第2着弾位置とが一致するように下流側ノズルにおけるインク滴の吐出タイミングを操作すればより望ましい。
【0014】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示している。第1着弾位置と第2着弾位置とを一致させるようにすれば、印字が滲んだりすることを防ぐことができる。
【0015】
また、上述のインクジェット印刷装置において、印刷媒体の搬送速度を変化させる指示を入力させる入力部を更に備え、印刷ユニット制御部は、印刷媒体の搬送速度が一定となっている間の印刷ユニットの制御モードである等速モードと、印刷媒体の搬送速度が変化している間の印刷ユニットの制御モードである変速モードとを少なくとも含む複数の制御モードのいずれかに従い動作し、入力部に入力がなされると制御モードを等速モードから変速モードに切り換えればより望ましい。
【0016】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示している。印刷ユニット制御部が等速モードと変速モードを使い分けて動作するようにすれば、印刷媒体の搬送速度が変速中であっても、確実に第1着弾位置と第2着弾位置とを一致させることができる。
【0017】
また、上述のインクジェット印刷装置において、印刷ユニット制御部は、駆動ローラの変速中において、印刷媒体の搬送速度が一定となっているときと同じ制御で印刷ユニットにおけるインク滴の吐出タイミングの操作を制御すればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示している。駆動ローラの変速中において、印刷ユニット制御部の制御を印刷媒体の搬送速度が一定となっているときと同じ制御とすれば、より装置の制御を単純なものとすることができる。
【0019】
また、上述のインクジェット印刷装置において、駆動ローラの変速のパターンを記憶する記憶部を備え、駆動ローラ制御部は、パターンを記憶部から読み出して動作すればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成は、本発明のより具体的な構成を示している。駆動ローラ制御部がパターンを記憶部から読み出して動作すれば、本発明の印刷媒体の搬送に関する制御を確実に実行することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、印刷媒体の変速中においても印刷を続行することができる。すなわち、本発明によれば、駆動ローラ制御部は、上流側ノズルがインク滴を吐出するときの印刷媒体の搬送速度である第1速度と、下流側ノズルがインク滴を吐出するときの印刷媒体の搬送速度である第2速度との差である速度差が、駆動ローラの変速中における各時点で一定となるように駆動ローラを制御する。このようにすることで、駆動ローラの変速中における各時点で上流側ノズルに係るインク滴の印刷媒体上の着弾位置と下流側ノズルに係るインク滴の印刷媒体上の着弾位置との関係を一定とすることができる。したがって、印刷媒体の変速中において印刷媒体上の印字の色味などが変化してしまうことがなく、品質の高い印刷ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るインクジェット印刷装置の全体構成を説明する機能ブロック図である。
図2】本発明に係る印刷ユニットの構成を図示している。
図3】本発明に係る連続紙の搬送速度が一定のときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図4】本発明に係る連続紙の搬送速度が一定のときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図5】本発明に係る連続紙の搬送速度が一定のときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図6】本発明に係る連続紙の搬送速度が一定のときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図7】本発明に係る連続紙の搬送速度が変化するときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図8】本発明に係る連続紙の搬送速度が変化するときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図9】本発明に係る連続紙の搬送速度が変化するときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図10】本発明に係る連続紙の搬送速度が変化するときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図11】本発明に係る連続紙の搬送速度が変化するときの各ノズルの駆動方法を図示している。
図12】本発明に係る搬送速度と搬送距離との関係を図示している。
図13】本発明に係る搬送速度と搬送距離との関係を図示している。
図14】本発明に係る搬送速度と搬送距離との関係を図示している。
図15】本発明に係る搬送速度と搬送距離との関係を図示している。
図16】本発明に係る搬送速度と搬送距離との関係を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。本発明における印刷媒体の一例としては紙(例えばロール紙)が挙げられる。
【実施例
【0024】
図1は、実施例に係るインクジェット印刷装置10の全体構成を示している。実施例に係るインクジェット印刷装置10は、搬送中の連続紙WPに向けてインク滴を吐出して印刷を行う。そして、インクジェット印刷装置10は、印刷前のロール紙を保持する給紙部1と、印刷装置本体3と、印刷後のロール紙を保持する排紙部5とを備えている。
【0025】
給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、印刷装置本体3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。排紙部5は、印刷装置本体3で印刷された連続紙を水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1は、印刷装置本体3の上流側に配置され、排紙部5は印刷装置本体3の下流側に配置される。
【0026】
印刷装置本体3は、給紙部1から繰り出された連続紙WPを排紙部5側へ向けてロール輸送する、連続紙WPの搬送経路に沿って上流側から下流側にかけて複数の駆動ローラ7,9,11,13を備えている。このうち、駆動ローラ7,9,13は、それぞれ押さえローラ15と協働して連続紙WPを挟み込んで搬送する。駆動ローラ11は、連続紙WPに印刷されたインクを乾燥させるヒートローラである。ヒートローラは、押さえローラを有しておらず、これにより押さえローラに乾燥前のインクが付着することがない。連続紙WPの搬送経路には、駆動ローラ7,9,11,13の他に連続紙WPを案内する複数のガイドローラ17を備えている。
【0027】
エンコーダ18は、ガイドローラ17と同様に連続紙WPを案内するローラの一種である。エンコーダ18は、他のガイドローラ17とは異なり、連続紙WPの搬送速度を検出するセンサが設けられている。これにより、エンコーダ18は、連続紙WPの搬送速度を示す信号を搬送制御部31に出力することができる。主制御部45はエンコーダ18の出力信号を参照することにより、任意の時間区間において駆動ローラ7,9,11,13が搬送する連続紙WPの搬送距離を計測することができる。
【0028】
エンコーダ18の下流側にはインクジェット方式の印刷ユニット19が設けられている。印刷ユニット19は、インク滴を吐出するノズルが配列されたラインヘッドを備えている。具体的には、連続紙WPの搬送経路に沿って上流側から順に、例えば、ブラック(K),シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y)について個別のラインヘッドが備えられている。ラインヘッドは、連続紙WPの搬送方向と直交する水平方向に延びている。これにより、連続紙WPの幅方向における印刷領域をヘッドが移動することなく印刷をすることができる。すなわち、実施例に係るインクジェット印刷装置10は、ワンパス方式の印刷装置である。印刷ユニット19は、後述するように、連続紙WP搬送経路の上流側に位置する上流側ノズルNUと、搬送経路において上流側ノズルNUの下流側に位置する下流側ノズルNDを有する。
【0029】
ヒートローラである駆動ローラ11の下流には、イメージセンサを備えた検査部35が備えられている。検査部35は、印刷の位置ずれや、印刷された部分に汚れや抜け等が無いか検査する。
【0030】
また、印刷装置本体3は、連続紙WPの搬送経路に沿って複数の図示しない張力センサが設けられている。張力センサは、連続紙WPに作用する張力を検出する構成である。
【0031】
印刷装置本体3の制御に関する構成について説明する。ヘッド制御部29は、印刷ユニット19が有する各ラインヘッドを制御する構成である。ヘッド制御部29は、エンコーダ18の出力信号を参照して印刷ユニット19が有する各ノズルの駆動タイミングを制御する。各ノズルはヘッド制御部29の制御を受けてインク滴を吐出する。ヘッド制御部29は、本発明の印刷ユニット制御部に相当する。
【0032】
搬送制御部31は、エンコーダ18の出力に基づいて、後述する主制御部45が指定する搬送速度で連続紙WPが搬送されるように駆動ローラ7,9,11,13に接続された図示しないモータをフィードバック制御する。主制御部45は、インクジェット印刷装置10の各構成を統括的に制御する。コンソール47は、主制御部45に連続紙WPの搬送速度の変更など、操作者の各種指示を入力させる。記憶部49は、例えば搬送制御部31の制御に用いられるテーブルなどインクジェット印刷装置10の制御に関する情報を記憶している。記憶部49は、特に、駆動ローラ7,9,11,13の変速のパターンを記憶する。搬送制御部31は、これらパターンを記憶部49から読み出して動作する。そして、各制御部は、CPU等のプロセッサにより実現される。搬送制御部31は、本発明の駆動ローラ制御部に相当する。
【0033】
図2は、印刷ユニット19に備えられたノズルを模式的に描いている。印刷ユニット19には、ブラック(K),シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y)についてのラインヘッドが4つ備えられていて、ラインヘッドは、連続紙WPの搬送方向と直交する方向に複数のノズルが配列されて構成される。各ノズルは、インク滴を吐出する吐出孔を備えている。そして、4つのラインヘッドは連続紙WPの搬送方向に配列される。図2においては、4つのラインヘッドが有するノズルを1つずつ取り出して描いている。ノズルN1ないしノズルN4は、互いに異なるラインヘッドに属している。従って、ノズルN1ないしノズルN4は、互いに異なる色合いのインク滴を吐出する構成となっている。
【0034】
図3ないし図6は、ヘッド制御部29における通常の動作について説明している。通常の動作とは、連続紙WPが一定の速度で搬送されているときの印刷ユニット19に対する制御である。便宜上、4つのラインヘッドの内の2つのラインヘッドを取り出して説明する。図3ないし図6によれば、連続紙WPの搬送方向に2つのラインヘッドが備えられ、上流側のラインヘッドに属する上流側ノズルNUと下流側のラインヘッドに属する下流側ノズルNDが連続紙WPの搬送方向に所定の間隔(ノズル間距離Δd1)を隔てて配置されている。
【0035】
この2つのノズルNU,NDを用いて印刷を行う様子について説明する。図3は、インク滴が吐出された直後の様子を示している。上流側ノズルNUから連続紙WPまでの鉛直方向距離と下流側ノズルNDと連続紙WPまでの鉛直方向距離とは実質的に同一である(いずれもヘッドギャップΔd2とする)。また、上流側ノズルNUが吐出する第1インク滴d1の飛翔速度と下流側ノズルNDが吐出する第2インク滴d2の飛翔速度も実質的に同一である。図3を参照すれば分かるように、ノズルNU,NDを用いて印刷を行うときは、まず上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出する。このときの時刻を0とする。ノズルと連続紙WPとの間には隙間(ヘッドギャップΔd2)が設けられているので、吐出されたインク滴は、吐出されてから連続紙WPに着弾するまでにある程度の時間(ヘッドギャップΔd2をインク滴の飛翔速度で除した得た液滴飛翔時間t)を要する。この間にも連続紙WPは速度Vで搬送されているので、時刻0において上流側ノズルNUが連続紙WP上における位置Aに向けて吐出した第1インク滴d1は、位置Aには着弾せず、位置Aとは異なる位置に着弾する。位置Aは、上流側ノズルNUがインク滴d1を吐出した時点におけるインク滴の飛行の軌跡(軌道)と連続紙WPが交わる位置である。
【0036】
図4は、図3の状態から液滴飛翔時間tを経過した時点を示している。図3の状態から液滴飛翔時間tを経過すると、上流側ノズルNUが吐出した第1インク滴d1は連続紙WPに着弾する。連続紙WPは、液滴飛翔時間tの間に距離Vtだけ搬送されているので、連続紙WP上における第1インク滴d1の着弾位置は、位置Aから距離Vtだけ上流に遡った位置となる。
【0037】
図5は、その後の様子について説明している。ヘッド制御部29は引き続いて、下流側ノズルNDに第2インク滴d2を吐出させる。例えば、ヘッド制御部29が下流側ノズルNDから第2インク滴d2を吐出させるのは、位置Aが下流側ノズルNDの直下まで到来したときであるとする。位置Aが下流側ノズルNDの直下まで到来したときとは、実際には、連続紙WPの搬送により、下流側ノズルNDが第2インク滴d2を吐出した時点におけるインク滴の飛行の軌跡(軌道)と連続紙WPが交わる位置が位置Aとなったときのことである。ヘッド制御部29は、位置Aが下流側ノズルNDの直下まで到来したかどうかをエンコーダ18の出力により容易に認識することができる。下流側ノズルNDがインク滴d2を吐出するのは、図4の状態から第1時間t経過後であるものとする。第1時間t1はノズル間距離Δd1を搬送速度Vで除して得た時間である。したがって、図5の状態は、図3の状態から液滴飛翔時間t+第1時間t経過後を示している。ちなみに、上流側ノズルNUに係るインク滴の着弾位置は、第1時間t経過する間に上流側ノズルNUに対し距離Vtだけ下流側に移動している。
【0038】
図6は、図5の状態からさらに液滴飛翔時間tを経過した時点を示している。図5の状態から液滴飛翔時間tを経過すると、下流側ノズルNDが吐出した第2インク滴d2は連続紙WPに着弾する。連続紙WPは、液滴飛翔時間tの間に距離Vtだけ搬送されているので、連続紙WP上におけるインク滴の着弾位置は、位置Aから距離Vtだけ上流に遡った位置となる。したがって、上流側ノズルNUが吐出した第1インク滴d1と、下流側ノズルNDが吐出した第2インク滴d2は、連続紙WP上の同じ位置に着弾する。なお、図6の状態は、図3の状態から2t+t経過後(すなわち、液滴飛翔時間tとノズル間距離Δd1を搬送距離で除して得た時間(t1+t)との和)である。
【0039】
このように、印刷ユニット19が有する各ラインヘッドは、連続紙WP上の特定位置である1点に対し連続紙WPの搬送方向に離間して配置された複数のノズルからインク滴を吐出することで印刷を実行する構成となっている。連続紙WP上の特定位置である1点には、色合いの異なる各インク滴が重なって配置される。
【0040】
以上の説明は、ヘッド制御部29による連続紙WPが一定の搬送速度Vで搬送されているときの印刷ユニット19に対する制御である。本実施例の特徴は、連続紙WPが減速中または加速中であっても印刷を続行することができることにある。連続紙WPが変速する場合とは、例えば、連続紙WPの搬送を停止させたり、停止している連続紙WPの搬送を開始させたりする場合が考えられる。図7ないし図11は、一例として連続紙WPが減速する場合について説明している。
【0041】
なお、図7ないし図11の説明では、上流側ノズルNUに係る第1インク滴d1の着弾位置と、下流側ノズルNDに係る第2インク滴d2の着弾位置とが一致しないような説明となっている。これは、実施例の特徴を簡潔に説明する必要性からであり、実際には後述するように、下流側ノズルNDの吐出タイミングを操作することでこの位置ずれは消去される。あるいは位置ずれ量を縮小することができる。
【0042】
図7の状態は、連続紙WPの減速が開始されてから所定の時間が経過している。この時の連続紙WPの搬送速度はVであり、図3ないし図6の説明における搬送速度Vよりも遅い速度となっている。図7は、インク滴が吐出された直後の様子を示している。図7を参照すれば分かるように、ノズルNU,NDを用いて印刷を行うときは、この場合も、まず上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出する。このときの時刻を0とする。吐出された第1インク滴d1が吐出されてから液滴飛翔時間t後に連続紙WPに着弾するのは、連続紙WPが搬送速度Vで搬送されているときと同じである。時刻0において上流側ノズルNUが連続紙WP上における位置Bに向けて吐出したインク滴は、位置Bには着弾せず、位置Bとは異なる位置に着弾する。位置Bは、上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出した時点におけるインク滴の飛行の軌跡(軌道)と連続紙WPが交わる位置である。位置Bは事実上、上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出した時点における上流側ノズルNUの直下の位置である。以下の説明では位置Bを特定位置Bと呼ぶ。
【0043】
図8は、図7の状態から液滴飛翔時間tを経過した時点を示している。図7の状態から液滴飛翔時間tを経過すると、上流側ノズルNUが吐出した第1インク滴d1は連続紙WPに着弾する。連続紙WPは、液滴飛翔時間tの間に距離Vtだけ搬送されているので、連続紙WP上におけるインク滴の着弾位置は、特定位置Bから距離Vtだけ上流に遡った位置となる。図8において破線で示すインク滴は、連続紙WPが搬送速度V(>搬送速度V)で搬送されたとしたときに連続紙WP上に着弾するはずの部位に位置している。連続紙WPの搬送速度Vは搬送速度Vよりも遅いので、破線のインク滴の位置が上流側ノズルNUの直下に到達する前に第1インク滴d1が着弾する。この破線のインク滴の位置と実際のインク滴の位置との差を第1差分距離Xとする。なお、第1インク滴d1の飛翔速度の高速性およびヘッドギャップΔd2の微小性により、液滴飛翔時間tは極めて短時間(例.100ms~200ms)になる。このため、液滴飛翔時間tにおける搬送速度V0の減少は無視することができる。
【0044】
図9は、その後の様子について説明している。ヘッド制御部29は引き続いて、下流側ノズルNDに第2インク滴d2を吐出させる。実際にヘッド制御部29が下流側ノズルNDからインク滴d2を吐出させるのは、特定位置Bが下流側ノズルNDの直下まで到来したときである。位置Bが下流側ノズルNDの直下まで到来したときとは、実際には、連続紙WPの搬送により、下流側ノズルNDがインク滴を吐出した時点におけるインク滴の飛行の軌跡(軌道)と連続紙WPが交わる位置が位置Bとなったときのことである。ヘッド制御部29は、位置Bが下流側ノズルNDの直下まで到来したかどうかをエンコーダ18の出力により容易に認識することができる。このような印刷動作が行われている間にも、連続紙WPの搬送速度は低下を続けている。図9における連続紙WPの搬送速度(すなわち、基準位置Bが下流側ノズルNDの直下に到達した時点における連続紙WPの搬送速度)を、Vとする。搬送速度Vは、搬送速度Vよりも遅い速度である。
【0045】
下流側ノズルNDが第2インク滴d2を吐出するのは、図8の状態から第2時間t経過後であるものとする。第2時間t2は連続紙WPの搬送速度がV0からV1まで低下するのに要する時間であり、第1インク滴D1が連続紙WPに着弾した時刻から特定位置Bが下流側ノズルNDの直下位置まで移動するのに要した時間でもある。したがって、図9の状態は、図7の状態から液滴飛翔時間t+第2時間tを経過した状態を示している。
【0046】
図10は、図9の状態から液滴飛翔時間tを経過した時点を示している。図9の状態から液滴飛翔時間tを経過すると、下流側ノズルNDが吐出した第2インク滴d2は連続紙WPに着弾する。連続紙WPは、液滴飛翔時間tの間に距離Vtだけ搬送されているので、連続紙WP上における第2インク滴d2の着弾位置は、位置Bから距離Vtだけ上流に遡った位置となる。したがって、上流側ノズルNUが吐出した第1インク滴d1と、下流側ノズルNDが吐出した第2インク滴d2は、連続紙WP上の異なる位置に着弾する。連続紙WPの搬送速度VはVよりも遅いので、破線のインク滴の位置が下流側ノズルNDの直下に到達する前に第2インク滴d2の着弾が起こる。この破線のインク滴の位置と実際の第2インク滴d2の位置との差を第2差分距離Xとする。なお、連続紙WPの搬送速度Vは、Vよりも遅いので、第2差分距離Xは、第1差分距離Xよりも大きくなる。図10の状態は、図7の状態から2t+t(すなわち、液滴飛翔時間tの2倍と第2時間t2との和)を経過した後の状態である。
【0047】
図11は、上流側ノズルNUに係る第1インク滴d1の着弾位置と下流側ノズルNDに係る第2インク滴d2の着弾位置とのズレ量について説明している。まず、上流側ノズルNUに係る第1インク滴d1は、連続紙WP上において位置Bから距離Vtだけ上流側に遡った位置に着弾している。そして、下流側ノズルNDに係る第2インク滴d2は、連続紙WP上において位置Bから距離Vtだけ上流側に遡った位置に着弾している。搬送速度Vは、搬送速度Vよりも遅いので、距離Vtは、距離Vtよりも短くなる。この2つのインク滴における着弾位置の差は、距離(V-V)tとなる。
【0048】
本実施例において、最も特徴的なのは、連続紙WPの変速中において、搬送制御部31は、上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出するときの連続紙WPの搬送速度である第1速度Vと、下流側ノズルNDが第1インク滴d1に対応する第2インク滴d2を吐出するときの連続紙WPの搬送速度である第2速度Vとの差である速度差Dが、駆動ローラ7,9,11,13の変速中における各時点で一定となるように駆動ローラ7,9,11,13を制御することにある。
【0049】
換言すれば、本実施例において特徴的なのは、上流側ノズルNUから吐出された第1インク滴d1が連続紙WPに着弾したタイミングでの連続紙WPの搬送速度である第1速度Vと、前記第1インク滴d1を吐出した時点に上流側ノズルNUの直下に位置していた特定位置Bが下流側ノズルNDの直下に位置したタイミングでの連続紙WPの搬送速度である第2速度Vとの差である速度差Dが、駆動ローラ7,9,11,13の変速中における各時点で一定となるように駆動ローラ7,9,11,13を制御することにある。
【0050】
より一般的に述べると、連続紙WPに設定された着目点が連続紙WPの搬送経路に沿って設定された任意の2点間を通過する間における連続紙WPの搬送速度の速度差が駆動ローラ7,9,11,13の変速中における各時点で一定となるように駆動ローラ7、9、11、13を制御する。
【0051】
図12は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置10の連続紙WPの搬送経路を単純化したモデル図である。図12に示すように、給紙部1に保持された連続紙WPは駆動ローラ7(他の駆動ローラ9,11,13は省略)によって引き出され、印刷ユニット19に向かって搬送される。図7ないし図11を用いて先述したように印刷ユニット19の上流側ノズルNUおよび下流側ノズルNDとはノズル間距離Δd1だけ搬送方向に離隔している。連続紙WP上に着目点P1~P3を設定する。着目点P1~P3の間隔は任意でよいが、説明の都合からノズル間距離Δd1で互いに離隔しているものとする。
【0052】
図13ないし図15は連続紙WPの搬送量と連続紙WPの搬送速度とを対応付けたグラフである。図13は着目点P1に着目した連続紙WPの搬送速度の変化である。連続紙WP上の着目点P1は搬送ローラ7等が連続紙WPを搬送するのに従って上流側から下流側に移動する。
【0053】
まず、着目点P1について説明する。図13に示すように、駆動ローラ7が連続紙WPを所定長さLだけ給紙部1から引き出すまで連続紙WPは一定速度Vで移動する。駆動ローラ7が所定長さLを引き出した後、駆動ローラ7は連続紙WPの搬送速度を徐々に低下させる。連続紙WPの搬送量に対する搬送速度の変化は一律である。すなわち、搬送距離と搬送速度の関係は、一次式で表される。連続紙WPがさらに所定長さmだけ搬送されると着目点P1が上流側ノズルNUの直下に到達する(搬送量L+m)。この時点での連続紙WPの搬送速度は速度Vである(図7の状態)。このタイミングで上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出する。連続紙WPがさらにノズル間距離Δd1だけ引き出されると着目点P1が下流側ノズルNDの直下に到達する(搬送量L+m+Δd1)。この時点での連続紙WPの搬送速度は速度Vである(図9の状態)。このタイミングで下流側ノズルNDが第2インク滴d2を吐出する。図11を用いて先述したように、第1インク滴d1と第2インク滴d2との着弾位置の差は距離(V-V)tになる。
【0054】
駆動ローラ7がさらに連続紙WPをノズル間距離Δd1だけ搬送するとする(搬送量L+m+2(Δd1))。搬送速度はVからVまで低下する。搬送量と搬送速度との関係は一次式で表されるので、速度差(V-V)は速度差(V-V)と等しい。
【0055】
駆動ローラ7がさらに連続紙WPをノズル間距離Δd1だけ搬送するとする(搬送量L+m+3(Δd1))。搬送速度はVからVまで低下する。搬送量と搬送速度との関係は一次式で表されるので、速度差(V-V)は速度差(V-V)および速度差(V-V)と等しい。
【0056】
本実施形態では、連続紙WP上の任意の着目点が搬送経路に沿って設定された任意の2点(例えば上流側ノズルNUと下流側ノズルND)の間を移動する間の連続紙WPの搬送速度の速度差が駆動ローラ7,9,11,13の変速中における各時点で一定となるように駆動ローラ7,9,11,13を制御している。例えば、図14に示すように、着目点P2が上流側ノズルNUの直下に到達するタイミングでの連続紙WPの搬送速度はVであり、下流側ノズルNUの直下に到達するタイミングでの連続紙WPの搬送速度はVであるが、速度差(V-V)は先述した速度差(V-V)と等しい。これにより、着目点P1を特定位置Bとしてインク吐出制御を実行したときの第1液滴d1と第2液滴d2との着弾位置の差(V-V)tは、着目点P2を特定位置Bとしてインク吐出制御を実行したときの第1液滴d1と第2液滴d2との着弾位置の差(V-V)tと等しくなる。
【0057】
同様に、図15に示すように、着目点P3が上流側ノズルNUの直下に到達するタイミングでの連続紙WPの搬送速度はVであり、下流側ノズルNUの直下に到達するタイミングでの連続紙WPの搬送速度はVであるが、速度差(V-V)は先述した速度差(V-V)と等しい。これにより、着目点P3を特定位置Bとしてインク吐出制御を実行したときの第1液滴d1と第2液滴d2との着弾位置の差(V-V)tは、着目点P2を特定位置B1としてインク吐出制御を実行したときの第1液滴d1と第2液滴d2との着弾位置の差(V-V)tと等しくなる。
【0058】
このように速度を設定することで生じる利点について説明する。図7ないし図11を用いた説明では、2つのインク滴における着弾位置の差は、(V-V)tであった。この場合の速度差は、V-Vであり、本実施例においては、これが定数となっている速度差Dに等しい。速度差Dは、連続紙WPの減速中における上流側ノズルNUのインク滴が吐出した時点における任意の搬送速度Vと、上流側ノズルNUのインク滴に対応する下流側ノズルNDのインク滴が吐出した時点における搬送速度Vとの間の速度差に等しい。したがって、2つのインク滴における着弾位置の差は、常にDtとなり一定である。
【0059】
この着弾位置の差を消去するように駆動ローラ7,9,11,13を制御するのは容易である。着弾位置の差は、連続紙WPの変速中において常に一定なので、これに見合うようにノズルのインク滴の吐出タイミングを変更することで着弾位置の差は消去される。より具体的には、上流側ノズルNUがインク滴を吐出した後、下流側ノズルNDの吐出タイミングを調整すればよい。図7ないし図11の説明では、特定位置Bが下流側ノズルNDの直下に到達した時点で下流側ノズルNDがインク滴を吐出していた。これに代えて、特定位置Bが下流側ノズルNDの直下に到達した時点から更に距離Dtだけ連続紙WPが搬送されるのを待って下流側ノズルNDにインク滴の吐出を実行させるようにすれば、上流側ノズルNUに係るインク滴の着弾位置と、下流側ノズルNDに係るインク滴の着弾位置とが一致する。搬送制御部31は、エンコーダ18の出力を参照することにより連続紙WPが距離Dtだけ搬送されたかどうかを容易に認識することができる。このような制御の変更を連続紙WPの変速中の各時点で行うようにすれば、上流側ノズルNUに係るインク滴の着弾位置と、下流側ノズルNDに係るインク滴の着弾位置とが常に一致することになる。
【0060】
図16は、一定の搬送速度Vで搬送されていた連続紙WPの搬送を停止させるときの速度の変化をグラフで表したものである。横軸は、変速が開始された時点から連続紙WP上のある位置が搬送された距離(搬送距離)を示している。この距離が長いほど、連続紙WPの搬送は停止状態に近づくことになる。縦軸は、連続紙WPの搬送速度である。本実施例における搬送距離と搬送速度の関係は、一次式で表される。このような様式で連続紙WPの変速を実行すれば、変速中におけるどの時点でも、上流側ノズルNUのインク滴が吐出した時点における搬送速度と、当該インク滴に対応する下流側ノズルNDのインク滴が吐出した時点における搬送速度との間の速度差とが一定となる。
【0061】
このような変速を実現する搬送制御部31の具体的な構成について説明する。記憶部49は、搬送制御に関する速度と時間とが関連したテーブルを変速の様式に対応した数だけ記憶している。変速の様式とは、加速または減速の種別、初期速度、目標速度、および初期速度から目標速度となるまでに要する時間を変化させることによって生じる様式である。実施例に係るインクジェット印刷装置10は、連続紙WPの搬送速度を変化させる指示を入力させるコンソール47を備えている。搬送制御部31は、コンソール47を通じて指示された変速の様式に対応するテーブルを読み出して駆動ローラ7,9,11,13を制御する。
【0062】
続いて、連続紙WPの変速中におけるヘッド制御部29の動作について説明する。ヘッド制御部29には、連続紙WPの搬送速度が一定となっている間の制御モードである等速モードと、連続紙WPの搬送速度が変化している間の制御モードである変速モードが用意されている。等速モードにおいては、ヘッド制御部29は、図3ないし図6で説明した様式で各ノズルを制御する。そして、変速モードにおいては、上述した2つのインク滴の着弾位置の離間距離Dtが消去されるように各ノズルを制御する。連続紙WPの搬送速度が一定のとき、ヘッド制御部29は、等速モードにより各ヘッドを制御する。コンソール47より、例えば、連続紙WPの搬送停止の指示がなされると、ヘッド制御部29は、制御モードを等速モードから変速モードに切り換えて各ノズルの制御を実行する。各モードの具体的な制御方法は、記憶部49に記憶されている。ヘッド制御部29は、記憶部49から制御に必要なデータを読み出して動作する。
【0063】
このように、ヘッド制御部29は、連続紙WPにおける特定位置Bに向けて上流側ノズルNUがインク滴を吐出した後、特定位置Bが所定の距離だけ搬送された時点で下流側ノズルNDがインク滴を吐出するようにエンコーダ18の出力に基づいて印刷ユニット19を制御する。より具体的には、ヘッド制御部29は、上流側ノズルNUが吐出したインク滴の連続紙WPにおける着弾位置である第1着弾位置と、下流側ノズルNDが吐出したインク滴の連続紙WPにおける着弾位置である第2着弾位置とが一致するように下流側ノズルNDにおけるインク滴の吐出タイミングを操作する。
【0064】
以上のように、ヘッド制御部29は、連続紙WPの搬送速度が一定となっている間の印刷ユニット19の制御モードである等速モードと、連続紙WPの搬送速度が変化している間の印刷ユニット19の制御モードである変速モードとを少なくとも含む複数の制御モードのいずれかに従い動作し、コンソール47に入力がなされると制御モードを等速モードから変速モードに切り換える。
【0065】
なお、図16においては、搬送速度は最終的には0となる。ノズルによるインク滴の吐出は、搬送速度が0になる前に終了する。すなわち、ヘッド制御部29は、位置BからDtだけ遡った位置が下流側ノズルNDに到来することが不可能になる前にノズルによるインク滴の吐出を終了する。このようにしないと、上流側ノズルNUのインク滴の着弾位置と、下流側ノズルNDのインク滴の着弾位置とが互いにずれてしまうからである。
【0066】
以上のように、本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、連続紙WPの変速中においても印刷を続行することができる。すなわち、本発明によれば、搬送制御部31は、上流側ノズルNUが第1インク滴d1を吐出するときの連続紙WPの搬送速度である第1速度と、下流側ノズルNDが第1インク滴d1に対応する第2インク滴d2を吐出するときの連続紙WPの搬送速度である第2速度との差である速度差Dが、駆動ローラ7,9,11,13の変速中における各時点で一定となるように駆動ローラ7,9,11,13を制御する。このようにすることで、駆動ローラ7,9,11,13の変速中における各時点で上流側ノズルNUに係るインク滴の連続紙WP上の着弾位置と下流側ノズルNDに係るインク滴の連続紙WP上の着弾位置との関係を一定とすることができる。したがって、連続紙WPの変速中において連続紙WP上の印字の色味などが変化してしまうことがなく、品質の高い印刷ができる。
【0067】
本発明は上述の実施例の構成に限られず下記のように変形実施が可能である。
【0068】
(1)上述した実施例においては、ヘッド制御部29は、等速モードと変速モードを使わける構成となっていたが、本発明は、この構成に限られない。ヘッド制御部29が駆動ローラ7,9,11,13の変速中において、連続紙WPの搬送速度が一定となっているときと同じ制御で印刷ユニット19におけるインク滴の吐出タイミングの操作を制御するようにしてもよい。このようにすると、より装置の制御を簡単なものとすることができる。
【0069】
(2)上述した実施例においては、搬送制御部31は、記憶部49に記憶されたテーブルを読み出して動作したが、本発明は、この構成に限られない。記憶部49に複数の関数を記憶しておき、搬送制御部31がこれらを参照して動作するようにしてもよい。
【0070】
(3)上述した実施例においては、一例として連続紙WPの減速中について説明していたが、連続紙WPの加速中においても本発明を適用できる。また、上述の実施例のように、変速後の速度を0としなくてもよい。この場合、ヘッド制御部29は、搬送速度が一定となるのに合わせて動作を変速モードから等速モードに戻すようにしてもよい。
【0071】
(4)上述した実施例においては、コンソール47の入力により搬送制御部31は、連続紙WPの変速を認識するようにしていたが、本発明はこの構成に限られない。例えば、搬送制御部31は、排紙部5が発する印刷の減速または加速に関する信号に基づいて連続紙WPの変速を認識するようにしてもよい。このような信号は、例えば、排紙部5の処理が印刷に対して間に合わない場合などに発せられる。本変形例における印刷装置本体3は、排紙部5から当該信号を受信する入力端子を備え、この入力端子に信号が入力されるかにどうかによって搬送制御部31は、連続紙WPの変速を認識するようになっている。
【0072】
(5)上述した(4)の変形例に関する変形例として、搬送制御部31が主制御部45に基づいて連続紙WPの変速を認識するように構成してもよい。主制御部45が印刷の減速または加速に関する信号を搬送制御部31に送信する例としては、例えば、ジョブの開始または終了時を挙げることができる。
【0073】
(6)上述した変形例においては、印刷ユニット19にはブラック(K),シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y)について個別のラインヘッドが備えられていたが、本発明はこの構成に限られない。これらとは異なる色合いに対応するラインヘッドを備えるようにしてもよいし、色合いが同じ複数のラインヘッドを備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
7,9,11,13 駆動ローラ
10 インクジェット印刷装置
18 エンコーダ
19 印刷ユニット
29 ヘッド制御部(印刷ユニット制御部)
31 搬送制御部(駆動ローラ制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16