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特許7383558測定装置および測定方法、並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】測定装置および測定方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20231113BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20231113BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/10
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020074371
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021018231
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019130868
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】芥川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】佃 恭範
(72)【発明者】
【氏名】平野 広之
(72)【発明者】
【氏名】崎村 昇
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 達郎
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-253759(JP,A)
【文献】特開平09-021873(JP,A)
【文献】特開2017-125682(JP,A)
【文献】特開平11-023713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0162632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成する発射タイミング信号生成部と、
前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うカウンタと、
前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて前記発射タイミング信号生成部に指示するタイミング指示部と
を備える測定装置。
【請求項2】
前記反射光におけるパルスを受光したタイミングを示す前記カウントコードから、前記タイミング指示部により指示される前記発射遅延値を減算して、前記測距対象物との間で光が往復する飛行時間を測定した値に対応する測定値を演算する演算部を
さらに備える請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記処理周期が繰り返して行われるたびに前記演算部により求められる前記測定値のヒストグラムを生成し、そのヒストグラムにおいてピークを示す前記測定値を特定するまで、前記処理周期を繰り返して行わせるヒストグラム生成部
をさらに備える請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測距対象物との間の距離を測距の対象としたときに、その距離が含まれる一定の距離幅を表す測距レンジとの間で光が往復する飛行時間の幅である測距レンジ時間を前記処理周期の時間と一致させ、前記処理周期の開始より遅延させた前記発射タイミングから前記測距レンジ時間を開始させる
請求項2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記発射タイミング信号生成部は、1回の前記処理周期内で、パルスの発射回数が2回以上となる前記レーザ光を出力させ、
前記演算部は、前記反射光のパルスが検出される前記カウントコードごとに、そのカウントコードが含まれる複数の前記測距レンジ時間が開始されるタイミングである前記発射遅延値それぞれを、そのカウントコードから減算して前記測定値を求める演算を行う
請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記カウンタがカウントするカウントコードを下位ビットとし、前記カウンタによるカウントとは分けて上位ビットをカウントする構成を設ける
請求項1に記載の測定装置。
【請求項7】
前記タイミング指示部は、前記処理周期の全域にわたって前記レーザ光によるパルスの発射タイミングを変更させる
請求項1に記載の測定装置。
【請求項8】
前記カウンタは、任意の前記処理周期において前記カウントコードの最大値を変えることで、その処理周期の長さを変更する
請求項1に記載の測定装置。
【請求項9】
一定の前記測定値が求められる前記測距レンジ時間の起点とする前記発射タイミングに、前記測距レンジ時間がシフトされる
請求項4に記載の測定装置。
【請求項10】
前記タイミング指示部は、前記処理周期ごとにランダムに変化するように前記発射遅延値を変更する
請求項3に記載の測定装置。
【請求項11】
前記タイミング指示部は、前記処理周期ごとに所定のパターンで変化するように前記発射遅延値を変更する
請求項3に記載の測定装置。
【請求項12】
前記測距対象物との間の距離を測距の対象としたときに、その距離が含まれる一定の距離幅を表す測距レンジとの間で光が往復する飛行時間の幅を測距レンジ時間とし、
前記ヒストグラム生成部は、前記発射遅延値が変化する所定のパターンに基づいて、前記測距レンジ時間の外で検出された反射光のパルスに起因するゴーストの測定値のヒストグラム形状を予測し、前記ゴーストの測定値のヒストグラム形状を抽出する
請求項11に記載の測定装置。
【請求項13】
前記ヒストグラム生成部は、前記ゴーストの測定値のヒストグラム形状に対する所定の演算処理を行う
請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
測定装置が、
所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成することと、
前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うことと、
前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて指示することと
を含む測定方法。
【請求項15】
測定装置のコンピュータに、
所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成することと、
前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うことと、
前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて指示することと
を含む測定処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置および測定方法、並びにプログラムに関し、特に、より短時間で高精度に距離を測定することができるようにした測定装置および測定方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の飛行時間を利用して距離を測定する技術であるTOF(Time of Flight)では、測距対象物に向かってパルス状のレーザ光を出力してから、そのレーザ光が測距対象物で反射して戻ってくる反射光のパルスが受光されるまでの時間が測定される。そして、パルス状のレーザ光を出力する処理周期を繰り返し、複数の処理周期で測定される測定値のヒストグラムを生成して、そのヒストグラムのピークを示す測定値に基づいて測距対象物までの距離が算出される。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の受光画素の各々から出力される複数の受光信号を合成することで、遠方に位置する測定対象物や反射率の低い測定対象物などの検出性能が高められた光学的測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-176750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のTOFにおいて、例えば、処理周期ごとに同一の発射タイミング(例えば、各処理周期の開始と同一のタイミングや、各処理周期の開始から同一の一定時間が経過したタイミングなど)でレーザ光のパルスを発射する場合、測定に必要な時間が長くなることや、DNL(Differential Non-Linearity)が直接的に測距精度に影響を与えることなどがあった。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より短時間で高精度に距離を測定することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の測定装置は、所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成する発射タイミング信号生成部と、前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うカウンタと、前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて前記発射タイミング信号生成部に指示するタイミング指示部とを備える。
【0008】
本開示の一側面の測定方法またはプログラムは、所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成することと、前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うことと、前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて指示することとを含む。
【0009】
本開示の一側面においては、所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号が生成され、レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントが、処理周期の切り替わり時に継続して行われ、処理周期の開始から発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値が、処理周期ごとに異ならせて指示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術を適用した測定装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
図2】処理周期およびパルスの発射タイミングを説明する図である。
図3】測距処理の処理例を説明するフローチャートである。
図4】測距レンジ時間の外で検出された反射光のパルスに起因するゴーストの発生を抑制する効果を説明する図である。
図5】1回の処理周期内で、パルスの発射回数が2回以上となるレーザ光を用いて測距処理を行うことができることによる効果を説明する図である。
図6】DNLが測定精度に与える影響がキャンセルされることによる効果を説明する図である。
図7】上位ビットと下位ビットとを分ける構成で、DNLが測定精度に与える影響がキャンセルされる効果を説明する図である。
図8】処理周期に同期した外乱電波によるノイズの影響について説明する図である。
図9】処理周期に同期した外乱電波によるノイズの影響を抑制する効果について説明する図である。
図10】処理周期の全域にわたってパルスの発射タイミングが変更されない場合について説明する図である。
図11】カウントコードの最大値を変えることによる効果について説明する図である。
図12】測距レンジ時間をシフトすることができる効果を説明する図である。
図13】ランプ波形の変形例を示す図である。
図14】処理周期ごとに等間隔で発射遅延値がずらされる処理例について説明する図である。
図15】レーザ照射タイミングの制御方法とTOF結果の処理方法について説明する図である。
図16】処理周期ごとに所定のパターンで発射遅延値がずらされる処理について説明するフローチャートである。
図17】処理周期ごとに所定のパターンで発射遅延値をずらした場合におけるDNLが測定精度に与える影響がキャンセルされることによる効果について説明する図である。
図18】レンジ外ToFの影響によるゴーストヒストグラムの形状を説明する第1の例を示す図である。
図19】レンジ外ToFの影響によるゴーストヒストグラムの形状を説明する第2の例を示す図である。
図20】本技術を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
<測定装置の構成例>
図1は、本技術を適用した測定装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す測定装置11は、例えば、測距対象物に向かってパルス状のレーザ光を出力してから、そのレーザ光が測距対象物で反射して戻ってくる反射光のパルスを受光するまでの時間を測定することで、測距対象物との距離を測定する。なお、図1では、パルスが4つのレーザ光を測距対象物に対して出力しても、測距対象物との間が遠距離である場合には、破線で示す3つのパルスは戻らずに、反射光として1つのパルスが戻ってくる程度であることを表している。
【0014】
図1に示すように、測定装置11は、発射タイミング信号生成部12、レーザドライバ13、受光素子14、TDC15、タイミング指示部16、演算部17、ヒストグラム生成部18、および距離算出部19を備えて構成される。また、TDC15は、カウンタ21およびラッチ22を有している。例えば、測定装置11では、各ブロックが完全に同期している場合には、各ブロックで同期して処理周期を開始することができる。または、測定装置11では、各ブロックが完全に同期していない場合には、処理周期の開始を知らせる信号が、破線の矢印で示すようにTDC15から発射タイミング信号生成部12およびタイミング指示部16に供給される。
【0015】
発射タイミング信号生成部12は、測定装置11から出力されるレーザ光によるパルスを発射する発射タイミングを指示するTxパルス信号を生成して、レーザドライバ13に供給する。このとき、発射タイミング信号生成部12は、タイミング指示部16から供給される発射遅延値に従って、処理周期を開始するタイミングから発射タイミングを遅延させることができる。
【0016】
レーザドライバ13は、発射タイミング信号生成部12から供給されるTxパルス信号に従って、図示しないレーザ発光素子を駆動し、発射タイミングに基づいてパルス状となるレーザ光を出力させる。
【0017】
受光素子14は、例えば、SPAD(single photon avalanche diode)であり、パルス状のレーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光を受光して、その反射光の波形を示すRxパルス信号を、TDC15のラッチ22に供給する。
【0018】
TDC(Time-to-Digital Conversion)15は、測定装置11から出力されたレーザ光が、測距対象物で反射して戻ってくるまでの時間をディジタル値に変換する。即ち、カウンタ21が、処理周期の開始に合わせてカウントコードのカウントアップを開始し、ラッチ22が、受光素子14から供給されるRxパルス信号が示すパルスのタイミングでカウンタ21からカウントコードを取り込んで出力する。
【0019】
タイミング指示部16は、処理周期の開始からパルスの発射タイミングを遅らせる時間を示す発射遅延値を、発射タイミング信号生成部12および演算部17に供給して、測定装置11からパルスを発射する発射タイミングを指示する。そして、タイミング指示部16は、処理周期ごとに、発射遅延値を変更することができる。これにより、測定装置11では、処理周期ごとに、処理周期の開始から異なる発射タイミングでパルスが発射されることになる。
【0020】
ここで、以下、本実施の形態では、タイミング指示部16により指示される発射遅延値に従って、パルスを発射させる発射タイミングを処理周期ごとに変更することを、パルスモジュレーションと称する。
【0021】
演算部17は、TDC15のラッチ22から供給されるカウントコードから、タイミング指示部16から供給される発射遅延値を減算する演算を行い、その演算により算出された値をToF値としてヒストグラム生成部18に供給する。即ち、測定装置11では、処理周期の開始から発射遅延値に従って遅れた発射タイミングでパルスが発射されるように、パルス状のレーザ光が出力される。そのため、演算部17が、受光素子14が反射光のパルスを受光したタイミングを示すカウントコードから発射遅延値を減算することで、レーザ光が測距対象物との間を往復する飛行時間に対応するToF値を求めることができる。
【0022】
ヒストグラム生成部18は、演算部17によって算出されたToF値のヒストグラムを生成する。例えば、測定装置11では、複数の処理周期が繰り返して行われ、ヒストグラム生成部18は、処理周期が繰り返された分の複数のToF値を用いてヒストグラムを生成する。そして、ヒストグラム生成部18は、ある1つのToF値がピークを示していることが特定されるようなヒストグラムが生成されると、そのピークを示すToF値を距離算出部19に供給する。
【0023】
距離算出部19は、ヒストグラム生成部18から供給されるToF値を用い、光の速度に基づいて測距対象物との距離を算出する。
【0024】
ここで、図2を参照して、測定装置11における処理周期、および、パルスの発射タイミングについて説明する。
【0025】
図2に示すTDC RAMPは、TDC15のカウンタ21がカウントするカウントコードを可視化したランプ波形を表しており、カウンタ21は、処理周期ごとに、カウントコード0からカウントアップを繰り返して行う。そして、測定装置11では、TDC RAMPで示されるように、カウンタ21は、処理周期が開始したタイミングから遅延することなく(0レイテンシで)、カウントアップを開始する。
【0026】
従って、測定装置11では、処理周期の切り替わり時にTDC RAMPが停止することがなく、カウンタ21によるカウントが継続して行われ、カウントコードは0にリセットされるがカウントが停止することはない。これにより、測定装置11では、ある処理周期においてパルスが出力されたタイミングで開始される測距レンジ時間(ToF range)を、次の処理周期に重複させることが可能となる。なお、測距レンジは、測距対象物との間の距離を測距の対象としたときに、その距離が含まれる一定の距離幅を表しており、測距レンジとの間で光が往復する飛行時間の幅を、以下、測距レンジ時間と称する。
【0027】
また、測定装置11では、処理周期を開始するタイミングでパルスが発射されるのではなく、処理周期の開始から発射遅延値DLYに従って遅れた発射タイミングでパルスが発射される。このため、測定装置11では、演算部17が、反射光のパルスを検出したタイミングにおけるカウントコードから、発射遅延値DLYを減算する演算によって、測距対象物との距離を光が往復する時間に対応するToF値を求めることができる。
【0028】
さらに、測定装置11では、タイミング指示部16は、上述したようなパルスモジュレーションを行うことで、処理周期ごとに異なる発射遅延値DLYを発射タイミング信号生成部12に供給する。即ち、図2に示すように、発射遅延値DLY1および発射遅延値DLY2が異なっており、処理周期ごとに、処理周期の開始からパルスが発射されるまでの間隔が一定とならないように調整される。
【0029】
以上のように構成される測定装置11は、処理周期の切り替わり時にカウンタ21によるカウントが継続して行われ、発射遅延値に従ってパルスを発射させる発射タイミングを処理周期ごとに異なるものとすることができる。これにより、測定装置11は、後述するように、測距レンジ時間を重複させたときに生じるゴースト(誤測距)の影響を分散させることができる。従って、測定装置11は、従来のように、例えば、測距レンジ時間を重複させることができず、パルスモジュレーション用のオーバヘッド時間を設けるような構成よりも、より短時間で測距対象物との距離を測定することができる。
【0030】
<測距処理の処理例>
図3に示すフローチャートを参照して、測定装置11において実行される測距処理について説明する。
【0031】
例えば、測距処理を開始するように制御が行われると1回目の処理周期が開始され、ステップS11において、カウンタ21は、カウントコードのカウントアップを開始する。
【0032】
ステップS12において、タイミング指示部16は、処理周期の開始からパルスの発射タイミングを遅らせる時間を示す発射遅延値を、発射タイミング信号生成部12および演算部17に供給する。
【0033】
ステップS13において、発射タイミング信号生成部12は、ステップS12でタイミング指示部16から供給される発射遅延値に従って処理周期開始から遅延した発射タイミングでパルスの発射を指示するTxパルス信号をレーザドライバ13に供給する。これにより、レーザドライバ13は、図示しないレーザ発光素子を駆動し、Txパルス信号が示す発射タイミングに従ってパルスを発射するパルス状のレーザ光を出力させる。
【0034】
ステップS14において、受光素子14は、ステップS13で出力されたパルス状のレーザ光の反射光を受光し、その反射光の波形を示すRxパルス信号をラッチ22に供給する。これにより、ラッチ22は、受光素子14から供給されるRxパルス信号が示すパルスのタイミングでカウンタ21からカウントコードを取り込み、演算部17に供給する。
【0035】
ステップS15において、演算部17は、ステップS14でラッチ22から供給されるカウントコードから、ステップS12でタイミング指示部16から供給される発射遅延値を減算する演算を行うことでToF値を求め、ヒストグラム生成部18に供給する。
【0036】
ステップS16において、ヒストグラム生成部18は、繰り返して行われるステップS15で演算部17から供給される複数のToF値を用いてヒストグラムを生成する。
【0037】
ステップS17において、ヒストグラム生成部18は、直前のステップS16で生成したヒストグラムにおいてToF値のピークが特定されたか否か、例えば、所定のToF値においてピークを示すようなヒストグラムが生成されたか否かを判定する。
【0038】
ステップS17において、ヒストグラム生成部18が、直前のステップS16で生成したヒストグラムにおいてToF値のピークが特定されていないと判定した場合、処理はステップS11に戻る。このとき、カウンタ21がカウントコードの最大値までカウントアップを行って、その次にカウントするタイミングでカウントコードを0にリセットして、以下同様に、2回目以降の処理周期が繰り返して行われる。
【0039】
一方、ステップS17において、ヒストグラム生成部18が、直前のステップS16で生成したヒストグラムにおいてToF値のピークが特定されたと判定した場合、処理はステップS18に進む。即ち、所定のToF値においてピークを示すようなヒストグラムが生成されるまで、処理周期が繰り返される。
【0040】
ステップS18において、ヒストグラム生成部18は、ヒストグラムにおいてピークとして特定されたToF値を距離算出部19に供給する。そして、距離算出部19が、そのToF値を用いて測距対象物との距離を算出した後、処理は終了される。
【0041】
以上のような測定処理により測定装置11は、より短時間で高精度に測距対象物との距離を測定することができる。
【0042】
例えば、測定装置11は、パルスモジュレーションを行うことによって、図4を参照して後述するように、測距対象物との距離に従った真のToF値とは異なるToF値(以下、ゴーストのToF値と称する)が求められることによる悪影響を抑制することができる。これにより、測距対象物との距離の測定に必要な時間を短縮することができる。
【0043】
また、測定装置11は、処理周期の切り替わり時にカウンタ21によるカウントを継続して行うことによって、測距レンジ時間を重複して設定することが可能となり、図5を参照して後述するように、1回の処理周期内で、パルスの発射回数が2回以上となるレーザ光を用いて測距処理を行うことができる。これにより、より多くのToF値を短時間で求めることができ、より早くヒストグラムにおけるピークを特定することができる。
【0044】
また、測定装置11は、パルスモジュレーションを行うことによって、図6および図7を参照して後述するように、DNLが測定精度に与える影響がキャンセルされることになり、より測定精度の向上を図ることができる。
【0045】
また、測定装置11は、パルスモジュレーションを行うことによって、図8乃至図11を参照して後述するように、処理周期に同期した外乱電波によるノイズの影響を抑制することができ、より測定精度の向上を図ることができる。
【0046】
また、測定装置11は、処理周期の切り替わり時にカウンタ21によるカウントを継続して行うことによって、処理周期を跨いで測距レンジ時間を設定することが可能となり、図12を参照して後述するように、測距レンジ時間をシフトすることができる。
【0047】
<測距処理の効果>
図4乃至図12を参照して、上述したような測定装置11の測距処理により得られる効果について説明する。
【0048】
図4は、測定装置11において、測距レンジ時間の外で検出された反射光のパルスに起因するゴーストのToF値の発生を抑制する効果について説明する図である。
【0049】
図4には、循環するように繰り返される処理周期#1乃至#3が示されている。そして、それぞれの処理周期が開始するタイミングからカウンタ21によるカウントアップが開始され、1回の処理周期では、カウントコード0からカウントコード100までがカウントされる。また、1回の処理周期に対応する時間に一致するように、即ち、カウンタ21によってカウントコード100をカウントするのに要する時間に一致するように、測距レンジ時間が設定される。
【0050】
そして、測定装置11は、上述したように、発射遅延値に従ってパルスを発射させる発射タイミングを処理周期ごとに変更するパルスモジュレーションを行うように構成されている。従って、図4に示す例では、処理周期#1では、処理周期開始から発射遅延値20でパルスが発射され、処理周期#2では、処理周期開始から発射遅延値10でパルスが発射され、処理周期#3では、処理周期開始から発射遅延値30でパルスが発射されている。
【0051】
これに応じ、処理周期#1の発射遅延値20で発射されたパルスに応じた測距レンジ時間は、処理周期#1のカウントコード20から処理周期#2のカウントコード20までとなる。また、処理周期#2の発射遅延値10で発射されたパルスに応じた測距レンジ時間は、処理周期#2のカウントコード10から処理周期#3のカウントコード10までとなる。このとき、処理周期#1の発射遅延値20で発射されたパルスに応じた測距レンジ時間と、処理周期#2の発射遅延値10で発射されたパルスに応じた測距レンジ時間とは、処理周期#2のカウントコード10からカウントコード20までの間で重複することになる。
【0052】
まず、図4に示されるTDC15から出力されるカウントコードのケース1(TDCout case1)について説明する。例えば、ケース1では、処理周期#1においてカウントコード25が出力され、処理周期#2においてカウントコード15が出力され、処理周期#3においてカウントコード35が出力されている。
【0053】
従って、処理周期#1のカウントコード25で検出された反射光が、処理周期#1の発射遅延値20で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、カウントコード25から発射遅延値20を減算してToF値5が求められる。同様に、処理周期#2のカウントコード15で検出された反射光が、処理周期#2の発射遅延値10で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、カウントコード15から発射遅延値10を減算してToF値5が求められる。さらに、処理周期#3のカウントコード35で検出された反射光が、処理周期#3の発射遅延値30で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、カウントコード35から発射遅延値30を減算してToF値5が求められる。
【0054】
その後、同様の処理周期が繰り返して行われ、それらの処理周期で求められるToF値のヒストグラムを生成すると、ToF値5がピークを示すことになる。
【0055】
ところで、処理周期#2のカウントコード15で検出された反射光は、処理周期#1の発射遅延値20で発射されたパルスに応じた測距レンジ時間と、処理周期#2の発射遅延値10で発射されたパルスに応じた測距レンジ時間とが重複した範囲となっている。そのため、どちらの測距レンジ時間を適用するべきか判別することはできない。
【0056】
例えば、処理周期#1の発射遅延値20で発射されたパルスに対する測距レンジ時間を適用した場合、処理周期#2におけるカウントコード15は、処理周期#1の開始からカウントを継続するとカウントコード115に対応し、処理周期#1の発射遅延値20を減算してToF値95が求められる。
【0057】
しかしながら、測定装置11では、上述したようなパルスモジュレーションが行われるため、ゴーストのToF値95は、真のToF値5のように一定の値を示すことはなく、処理周期ごとに発射遅延値を変更するのに応じて散らばって分散される。なお、このとき、ノイズについての変化はない。
【0058】
このように、測定装置11では、ゴーストのToF値が散らばることによって、ゴーストのToF値が求められることによる悪影響を抑制することができ、より短時間で真のToF値がピークを示すヒストグラムを生成することができる。従って、測定装置11は、測距対象物との距離の測定に必要な時間を短縮することができる。
【0059】
また、図4に示されるTDC15から出力されるカウントコードのケース2(TDCout case2)について説明する。例えば、ケース2では、処理周期#1においてカウントコードが出力されず、処理周期#2においてカウントコード60が出力され、処理周期#3においてカウントコード50が出力されている。
【0060】
従って、処理周期#2のカウントコード60で検出された反射光が、処理周期#1の発射遅延値20で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、処理周期#2のカウントコード60(処理周期#1の開始からカウントコード160)から発射遅延値20を減算してToF値140が求められる。同様に、処理周期#3のカウントコード50で検出された反射光が、処理周期#2の発射遅延値10で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、処理周期#3のカウントコード50(処理周期#2の開始からカウントコード150)から発射遅延値10を減算してToF値140が求められる。
【0061】
その後、同様の処理周期が繰り返して行われ、それらの処理周期で求められるToF値のヒストグラムを生成すると、ToF値140がピークを示すことになる。
【0062】
ところで、処理周期#2のカウントコード60で検出された反射光が、処理周期#2の発射遅延値10で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、処理周期#2のカウントコード60から発射遅延値10を減算してToF値50が求められる。同様に、処理周期#3のカウントコード50で検出された反射光が、処理周期#3の発射遅延値30で発射されたパルスが反射したものであるとした場合、処理周期#3のカウントコード50から発射遅延値30を減算してToF値20が求められる。しかしながら、これらのToF値50およびToF値20は、上述したようなパルスモジュレーションが行われ、処理周期ごとに発射遅延値が変更するのに伴って散らばってしまい、一定のToF値を取ることはない。即ち、これらのToF値50およびToF値20は、ゴーストのToF値であると判断することができる。
【0063】
このように、測定装置11では、ゴーストのToF値が散らばることによって、ゴーストのToF値が求められることによる悪影響を抑制することができ、より短時間で真のToF値がピークを示すヒストグラムを生成することができる。従って、測定装置11は、測距対象物との距離の測定に必要な時間を短縮することができる。
【0064】
また、測定装置11では、1回の処理周期に対応する時間に一致するように測距レンジ時間を設定することができ、例えば、1回の処理周期に対応する時間を測距レンジ時間より長く設定する(例えば、オーバヘッド時間を設ける)必要がある構成と比較して、より短時間で測距を行うことができる。
【0065】
また、図5を参照して、測定装置11において、1回の処理周期内で、パルスの発射回数が2回以上となるレーザ光を用いて測距処理を行うことができることによる効果について説明する。
【0066】
例えば、通常、1回の処理周期内で、パルスの発射回数が1回となるレーザ光が出力される。これに対し、測定装置11では、測距レンジ時間を重複して設定することが可能であり、1回の処理周期内で、パルスの発射回数が2回以上となるレーザ光を出力することができる。
【0067】
図5には、1回の処理周期内で、パルスの発射回数が4回となるレーザ光の一例が示されている。また、それぞれパルスの発射タイミングから、処理周期に対応する時間(100カウント)の測距レンジ時間が設定されている。
【0068】
また、図5に示す例では、処理周期#1において、発射遅延値20で1回目のパルスが発射され、発射遅延値25で2回目のパルスが発射され、発射遅延値30で3回目のパルスが発射され、発射遅延値35で4回目のパルスが発射されている。同様に、処理周期#2において、発射遅延値10で1回目のパルスが発射され、発射遅延値20で2回目のパルスが発射され、発射遅延値69で3回目のパルスが発射され、発射遅延値77で4回目のパルスが発射されている。また、処理周期#3において、発射遅延値7で1回目のパルスが発射され、発射遅延値15で2回目のパルスが発射され、発射遅延値22で3回目のパルスが発射され、発射遅延値27で4回目のパルスが発射されている。
【0069】
これに対し、反射光のパルスは、処理周期#1のカウントコード80、カウントコード85、カウントコード90、およびカウントコード95で検出されている。同様に、反射光のパルスは、処理周期#2のカウントコード70、およびカウントコード80で検出されている。また、反射光のパルスは、処理周期#3のカウントコード29、カウントコード37、カウントコード67、カウントコード75、およびカウントコード82で検出されている。
【0070】
そして、測定装置11では、反射光のパルスが検出されるカウントコードごとに、そのカウントコードが含まれる複数の測距レンジ時間が開始されるタイミングである発射遅延値それぞれを、そのカウントコードから減算してToF値を求める演算が行われる。
【0071】
例えば、処理周期#1のカウントコード80で検出された反射光のパルスについては、処理周期#1のカウントコード80は、4つの測距レンジ時間に含まれている。そこで、処理周期#1のカウントコード80が含まれる4つの測距レンジ時間が開始されるタイミングである発射遅延値(20,25,30,35)を、処理周期#1のカウントコード80から減算して、ToF値60、ToF値55、ToF値50、およびToF値45が求められる。
【0072】
また、処理周期#2のカウントコード70で検出された反射光のパルスについては、処理周期#2のカウントコード70は、3つの測距レンジ時間に含まれている。そこで、処理周期#2のカウントコード70が含まれる3つの測距レンジ時間が開始されるタイミングである発射遅延値(10,20,69)を、処理周期#2のカウントコード70から減算して、ToF値60、ToF値50、およびToF値1が求められる。
【0073】
また、処理周期#3のカウントコード29で検出された反射光のパルスについては、処理周期#3のカウントコード29は、6つの測距レンジ時間に含まれている。そこで、処理周期#3のカウントコード29が含まれる6つの測距レンジ時間が開始されるタイミングである発射遅延値(処理周期#2の69,77、処理周期#3の7,15,22,27)を、処理周期#3のカウントコード29(または、処理周期#2で対応するカウントコード129)から減算して、ToF値22、ToF値14、ToF値7、ToF値2、ToF値60、およびToF値52が求められる。
【0074】
また、処理周期#3のカウントコード75で検出された反射光のパルスについては、処理周期#3のカウントコード75は、5つの測距レンジ時間に含まれている。そこで、処理周期#3のカウントコード75が含まれる5つの測距レンジ時間が開始されるタイミングである発射遅延値(処理周期#2の77、処理周期#3の7,15,22,27)を、処理周期#3のカウントコード75(または、処理周期#2で対応するカウントコード175)から減算して、ToF値68、ToF値60、ToF値53、ToF値48、およびToF値98が求められる。
【0075】
このように、反射光のパルスが検出されるカウントコードごとに、そのカウントコードが含まれる複数の測距レンジ時間が開始されるタイミングである発射遅延値それぞれを、そのカウントコードから減算して求められるToF値には、真のToF値60が含まれている。また、真のToF値60以外のToF値は、処理周期ごとに発射遅延値を変更するのに応じて散らばって分散される。従って、このような演算により求められる全てのToF値から生成されるヒストグラムにおいて、真のToF値60がピークを示すことになる。
【0076】
従って、測定装置11では、1回の処理周期で、パルスの発射回数が2回以上となるレーザ光を出力しても、それぞれのパルスが検出されたカウントコードから既知の発射遅延値を減算する演算を行うことでToF値を求めることができる。これにより、測定装置11は、より多くのToF値を短時間で求めてヒストグラムにおけるピークを特定することができるので、測距処理に必要な時間の短縮を図ることができる。
【0077】
図6を参照して、測定装置11において、DNLが測定精度に与える影響がキャンセルされることによる効果について説明する。
【0078】
図6には、5個のフリップフロップ回路を有して構成され、32値のカウントコードを出力するカウンタ21の構成例が示されている。また、図6には、カウンタ21から出力されるカウントコードを表す波形、並びに、1カウントごとのDNLおよびINL(Integral Non-Linearity)の成分が示されている。図示するように、DNLおよびINLの成分は、処理周期ごとに、同一のカウントコードでは同じ大きさとなっている。
【0079】
そして、上述したように、測定装置11では、処理周期ごとに異なる発射遅延値に従って、処理周期開始から遅れたタイミング(発光ToF)でパルスが発射される。従って、反射光のパルスが検出されるタイミング(図6では、白抜きの矢印の先端が示すタイミング)も、処理周期ごとに異なるものとなり、それぞれのタイミングにおいてラッチ22に取り込まれるカウントコードも異なるものとなる。その結果、処理周期ごとのカウントコードに含まれるDNLの成分も異なるものとなることより、DNLが測距精度に与える影響をキャンセルすることができる。
【0080】
例えば、従来のように、処理周期が開始するタイミングでパルスが発射される場合には、反射光のパルスが検出されるタイミングは処理周期に関わらず同一となり、そのタイミングでラッチ22に取り込まれるカウントコードも同じものとなる。そのため、従来、処理周期ごとのカウントコードに含まれるDNLの成分が、直接的に、測距精度に影響を与えることになっていた。
【0081】
これに対し、測定装置11では、測定周期ごとのカウントコードに含まれるDNLの成分が異なるものとなり、それらの成分が平均化されることになるため、DNLが直接的に測定精度に与える影響がキャンセルされることになる。従って、測定装置11は、より測定精度の向上を図ることができる。
【0082】
さらに、図7に示すように、上位ビットと下位ビットとを分ける構成にすることで、より確実に、DNLが測定精度に与える影響のキャンセルすることができる。
【0083】
図7には、図6に示したカウントコードを表す波形に加えて、上位桁の1ビットのカウンタが設けられた例が示されている。即ち、32値のカウントコード(下位ビット)に、上位の1ビットを加えることで64値のカウントコードを表現することができる。
【0084】
例えば、カウンタの遷移位置がDNLの周期に影響するため、この上位桁を遷移位置とは無関係に構成することによって、64値の処理周期内で32値のDNLサイクルが2周期現れることになる。例えば、上位桁は、冗長ビットを持たせることや、ラッチ22での直接カウントなどによって構成することができる。
【0085】
このように、64値の処理周期内で32値についてパルスモジュレーションを行うと、DNLの平均化を実現することができ、より確実に、DNLが測定精度に与える影響がキャンセルされる。従って、測定装置11は、さらなる測定精度の向上を図ることができる。
【0086】
図8乃至図11を参照して、処理周期に同期した外乱電波によるノイズの影響を抑制することによる効果について説明する。
【0087】
例えば、図8に示すように、外乱電波が処理周期に同期(外乱電波の周波数f=1/処理周期)している場合、その外乱電波を定在波としてカウントが変調してしまい、外乱電波によるノイズの影響によってヒストグラムに疑似ピークが発生することがある。従って、この場合、パルスモジュレーションを行わずに処理周期ごとに一定の発射タイミングでパルスを発射していると、反射波のパルスを受信したタイミングを示すカウントコードのピークよりも、疑似ピークが高くなるような影響を受けることがある。
【0088】
これに対し、図9の左側に示すように、パルスモジュレーションによって処理周期ごとに異なる発射タイミングでパルスを発射すると、それぞれの発射タイミングに従って、測距レンジ時間が異なるタイミングで開始されることになる。このため、外乱電波が処理周期に同期している場合でも、測距レンジ時間ごとに、外乱電波によるノイズの影響によってヒストグラムに発生する疑似ピークにズレが発生することになる。
【0089】
従って、処理周期の全域にわたってパルスの発射タイミングを変更させる全域パルスモジュレーションを行い、異なる測距レンジ時間のヒストグラムを足し合わせることによって、図9の右側に示すように、外乱電波の影響を完全に平均化して疑似ピークを消失させることができる。つまり、レーザ光が測距対象物で反射した反射波のパルスを受信したタイミングを示すカウントコードだけがピークとして残ることになる。
【0090】
例えば、測定装置11では、処理周期に同期した外乱電波がある場合には、その外乱電波による電磁誘導を介してタイミング指示部16を起動し、処理周期ごとに異なる発射タイミングでパルスを発射させるパルスモジュレーションが行われるようにしてもよい。
【0091】
なお、全域パルスモジュレーションが行われない場合には、外乱電波の影響は完全には平均化されないことになる。即ち、図10に示すように、処理周期の全域にわたってパルスの発射タイミングを変更させずに、パルスの発射タイミングを変更させる範囲(LTのmodulation範囲)が処理周期より狭い場合には、それぞれのパルスを起点に、パルスの発射タイミングを変更させる範囲での積分(移動平均)による平均化が行われることになる。従って、外乱電波の影響を完全に平均化して、疑似ピークを消失させるためには、全域パルスモジュレーションを行うことが望ましい。
【0092】
また、全域パルスモジュレーションを行うことができない場合には、図11に示すように、任意の処理周期においてカウンタ21がカウントするカウントコードの最大値を変えることで、処理周期と同期する外乱電波の影響を抑制することができる。即ち、カウンタ21がカウントするカウントコードの最大値を変えるのに伴って処理周期のタイミングが変更されることになり、処理周期の位相を外乱電波からズレさせることによって、外乱電波の影響が抑制されることになる。なお、この場合、図11に示すように処理周期が長くなるようにカウントコードの最大値を変えてもいいし、逆に、処理周期が短くなるようにカウントコードの最大値を変えてもよい。
【0093】
このように、測定装置11は、処理周期に同期した外乱電波によるノイズの影響を抑制することができ、反射波のパルスを受信したタイミングを示すカウントコードがピークとなるようなヒストグラムを正確に生成することができる。これにより、測定装置11は、より測定精度の向上を図ることができる。
【0094】
図12は、どの発射タイミングを起点とするかによって測距レンジ時間をシフトすることができる効果を説明する図である。
【0095】
図12には、図4と同様に、循環するように繰り返される処理周期#1乃至#3が示されている。そして、処理周期#1では、処理周期開始から発射遅延値20でパルスが発射され、処理周期#2では、処理周期開始から発射遅延値10でパルスが発射され、処理周期#3では、処理周期開始から発射遅延値30でパルスが発射されている。また、処理周期#1においてカウントコードが出力されず、処理周期#2においてカウントコード60が出力され、処理周期#3においてカウントコード50が出力されている。
【0096】
このとき、処理周期#2のカウントコード60で検出された反射光のパルスについて、処理周期#2の発射遅延値10を起点とするとToF値50が求められる。また、処理周期#3のカウントコード50で検出された反射光のパルスについて、処理周期#3の発射遅延値30を起点とするとToF値20が求められる。従って、このような発射タイミングを起点とすると、これらのToF値50およびToF値20は、ゴーストであると判断することができる。
【0097】
一方、処理周期#2のカウントコード60で検出された反射光のパルスについて、処理周期#1の発射遅延値20を起点とするとToF値140が求められる。また、処理周期#3のカウントコード50で検出された反射光のパルスについて、処理周期#2の発射遅延値10を起点とするとToF値140が求められる。従って、このような発射タイミングを起点とすると、一定のToF値を得られるため、このToF値140が求められるような発射タイミングを起点として測距レンジ時間をシフトすることができる。
【0098】
このように、測定装置11は、一定のToF値が求められるような測距レンジ時間の起点とする発射タイミングに、測距レンジ時間をシフトすることができる。
【0099】
以上のように、測定装置11は、図4乃至図12を参照して説明したように、より短時間で高精度に測距対象物との距離を測定することができる。
【0100】
なお、本実施の形態では、図13のAに示すように、1処理周期ごとにカウントアップを繰り返すようなランプ波形を用いて説明を行ったが、これ以外にカウントを停止することなく循環するランプ波形を用いてもよい。
【0101】
例えば、図13のBに示すように、1処理周期ごとにカウントダウンを繰り返すようなランプ波形や、図13のCに示すように、カウントアップの処理周期とカウントダウンの処理周期とが交互になるようなランプ波形などを用いることができる。また、図13のDに示すように、全ての処理周期の間ではカウントは停止せずに、ある処理周期の間にカウントの停止区間が存在するようなランプ波形を用いてもよい。また、図13のEに示すようなマルチスロープのランプ波形(図13のEに示す例では、2つの波形を組み合わせることで休みなく循環するランプ波形)を用いてもよい。
【0102】
<所定のパターンの発射遅延値>
上述したように、測定装置11は、パルスモジュレーションを行うことによって処理周期ごとに発射遅延値を異ならせることができ、例えば、発射遅延値がランダムとなるように設定することができる。または、測定装置11は、処理周期ごとに所定のパターンで発射遅延値がずらされるように設定してもよい。
【0103】
そこで、図14乃至図19を参照して、処理周期ごとに所定のパターンで発射遅延値がずらされる処理例について説明する。
【0104】
図14には、前処理周期に対して発光タイミングを等間隔(所定のパターン)でずらした発射タイミングで4つのパルスが発射される一例が示されている。
【0105】
このように、発光タイミングを等間隔でずらすことで、前処理周期での発光に起因するレンジ外ToF(測距レンジ時間の外で検出された反射光のパルスに起因するゴーストのToF値)は、ヒストグラムを生成すると等間隔にずれて積算されることになる。従って、測定装置11では、その等間隔(所定のパターン)に基づいたヒストグラム処理を行うことで、レンジ外ToFの形状を予測して、フィルタリングなどを施すことができる。
【0106】
図15を参照して、レーザ照射タイミングの制御方法とTOF結果の処理方法について説明する。
【0107】
図15には、発射遅延値DLY1と発射遅延値DLY2とで交互に変化させるパターンの一例が示されている。即ち、タイミング指示部16は、発射遅延値DLY1と発射遅延値DLY2とが交互になるパターンでパルスの発光タイミングをずらすように、発射タイミング信号生成部12に発射遅延値を供給する。そして、演算部17は、TDC15のラッチ22から供給されるカウントコードから、タイミング指示部16から供給される発射遅延値DLY1と発射遅延値DLY2とを交互に減算する演算を行い、その演算により算出されたToF値をヒストグラム生成部18に供給する。
【0108】
このようなパターンに従って、ヒストグラム生成部18により生成されるヒストグラムは、レンジ外ToFに応じて図示するような2つのピークが発生する。即ち、レンジ内であれば、ヒストグラム形状には1つのピークが発生するのに対し、レンジ外であれば、2つのピークが発生することになる。なお、図15の下側には、より実際に近いヒストグラム形状が示されている。
【0109】
そして、ここで示す例では、ヒストグラム生成部18は、発射遅延値の2倍の2ピークはレンジ外ToFによるヒストグラム形状と予測することができ、その予測に基づいてレンジ外ToFのヒストグラムを抽出することができる。
【0110】
さらに、測定装置11では、ヒストグラム生成部18は、レンジ外ToFのヒストグラムに対する演算処理を行うことができる。例えば、ヒストグラム生成部18は、レンジ外ToFによるヒストグラム形状の重心を別に求める演算処理や、レンジ外ToFに起因する部分を除去する演算処理、レンジ外ToFによるヒストグラム形状の重心を操作する演算処理(例えば、非ROIへ重心を移動する操作などなど)を行うことができる。もちろん、ヒストグラム生成部18は、これら以外の演算処理を採用してもよい。
【0111】
図16は、処理周期ごとに所定のパターンで発射遅延値がずらされる処理について説明するフローチャートである。
【0112】
ステップS21において、タイミング指示部16は、パルスの発光タイミングを所定のパターン(例えば、図15に示したような交互のパターン)で変化させるような発射遅延値を発射タイミング信号生成部12に供給する。これにより、発射タイミング信号生成部12は、発射遅延値に従って、処理周期を開始するタイミングから遅延した発射タイミングを変化させたTxパルス信号を生成し、レーザドライバ13は、Txパルス信号に従ってパルス状のレーザ光を出力する。
【0113】
ステップS22において、ヒストグラム生成部18は、演算部17から供給されるToF値のヒストグラムを生成する際に、パルスの発光タイミングを変化させた所定のパターンに基づいて、レンジ外ToFのヒストグラム形状(例えば、図15に示したような2つのピーク)を予測する。
【0114】
ステップS23において、ヒストグラム生成部18は、ステップS22で予測したレンジ外ToFのヒストグラム形状から、レンジ外ToFのヒストグラムを抽出(フィルタリング)する。
【0115】
ステップS24において、ヒストグラム生成部18は、ステップS23で抽出したレンジ外ToFのヒストグラムに対して、上述したような各種の演算処理を行い、その後、処理は終了される。
【0116】
図17は、上述の図6と同様に、処理周期ごとに所定のパターンで発射遅延値をずらした場合におけるDNLが測定精度に与える影響がキャンセルされることによる効果について説明する図である。
【0117】
図17に示すように、同じDNLおよびINLが繰り返し現れ、繰返し周期でINL=0となる。そして、パルスモジュレーションを行うことによって、同じToF値が、TDC15から出力される異なるカウントコードから取得される。即ち、同じToF値を取得するのに、異なるDNLをもつTDC15の出力の影響を分散することができる。
【0118】
なお、図17では、カウンタ21のエッジ間の時間差がLSBであり、時間誤差がDNLである。また、下位カウンタの繰り返し周期(32 LSB)でINLは0であり、パルスの発射タイミングに応じて32通りのDNL平均は0になる。このように、DNLを平均化するために発射タイミングを変化させることが必要であり、発射タイミングの発射遅延値を所定パターンでずらすことで、レンジ外ToFの影響によるゴーストヒストグラムの形状を極力、変化させないようにすることができる。
【0119】
ここで、図18および図19を参照して、レーザ照射タイミングの遅延およびDNLの関係と、レンジ外ToFの影響によるゴーストヒストグラムの形状とについて説明する。なお、図18および図19では、説明の簡易化のために5binの平均化(図17では32binの平均化)が図示されている。
【0120】
図18には、10から14まで1処理周期ごとに1ずつ増加した後に14から10まで1処理周期ごとに1ずつ減少するようなパターンで発射遅延値がずらされる第1の例が示されている。
【0121】
このようなパターンで発射遅延値をずらした場合、レンジ外ToFの照射N回目とN+1回目との差、レンジ外ToFの照射N+1回目とN+2回目との差、レンジ外ToFの照射N+2回目とN+3回目との差、および、レンジ外ToFの照射N+3回目とN+4回目との差は、それぞれ-1となる。また、レンジ外ToFの照射N+4回目とN+5回目との差は、0となる。さらに、レンジ外ToFの照射N+5回目とN+6回目との差、レンジ外ToFの照射N+6回目とN+7回目との差、レンジ外ToFの照射N+7回目とN+8回目との差、および、レンジ外ToFの照射N+8回目とN+9回目との差は、それぞれ+1となる。
【0122】
従って、図示するように、-1および+1の2つのピークが発生し、レンジ外ToFの中央値である0で低くなるようなヒストグラム形状となる。なお、発射遅延値を変化させなかった場合には、破線で示すようなピークのヒストグラム形状となる。
【0123】
図19には、10から14まで3処理周期ごとに1ずつ増加した後に14から10まで3処理周期ごとに1ずつ減少するようなパターンで発射遅延値がずらされる第2の例が示されている。
【0124】
このようなパターンで発射遅延値をずらした場合、レンジ外ToFの照射N+2回目とN+3回目との差、レンジ外ToFの照射N+5回目とN+6回目との差、レンジ外ToFの照射N+8回目とN+9回目との差、および、レンジ外ToFの照射N+11回目とN+12回目との差は、それぞれ-1となる。また、レンジ外ToFの照射N+18回目とN+19回目との差、レンジ外ToFの照射N+21回目とN+22回目との差、レンジ外ToFの照射N+24回目とN+25回目との差、および、レンジ外ToFの照射N+27回目とN+28回目との差は、それぞれ+1となる。そして、それ以外では、0となる。
【0125】
従って、図示するように、発射遅延値を変化させる頻度が小さくなると特定のToF値の頻度が高くなるようなヒストグラム形状となる。なお、発射遅延値を変化させなかった場合には、破線で示すようなピークのヒストグラム形状となる。即ち、発射遅延値を変化させる頻度によって、レンジ外ToFの中央値である0の高さの増減をコントロールすることができる。
【0126】
このように、発射タイミングの発射遅延値を所定パターンでずらすことで、レンジ外ToFの影響によるゴーストヒストグラムの形状を極力、変化させないようにすることができる。例えば、発射タイミングの発射遅延値をランダムにずらした場合には分散されるため、このようなヒストグラム形状とならない。
【0127】
<コンピュータの構成例>
次に、上述した一連の処理(測定方法)は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
【0128】
図20は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0129】
プログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのハードディスク105やROM103に予め記録しておくことができる。
【0130】
あるいはまた、プログラムは、ドライブ109によって駆動されるリムーバブル記録媒体111に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体111は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。ここで、リムーバブル記録媒体111としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto Optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリ等がある。
【0131】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体111からコンピュータにインストールする他、通信網や放送網を介して、コンピュータにダウンロードし、内蔵するハードディスク105にインストールすることができる。すなわち、プログラムは、例えば、ダウンロードサイトから、ディジタル衛星放送用の人工衛星を介して、コンピュータに無線で転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送することができる。
【0132】
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)102を内蔵しており、CPU102には、バス101を介して、入出力インタフェース110が接続されている。
【0133】
CPU102は、入出力インタフェース110を介して、ユーザによって、入力部107が操作等されることにより指令が入力されると、それに従って、ROM(Read Only Memory)103に格納されているプログラムを実行する。あるいは、CPU102は、ハードディスク105に格納されたプログラムを、RAM(Random Access Memory)104にロードして実行する。
【0134】
これにより、CPU102は、上述したフローチャートにしたがった処理、あるいは上述したブロック図の構成により行われる処理を行う。そして、CPU102は、その処理結果を、必要に応じて、例えば、入出力インタフェース110を介して、出力部106から出力、あるいは、通信部108から送信、さらには、ハードディスク105に記録等させる。
【0135】
なお、入力部107は、キーボードや、マウス、マイク等で構成される。また、出力部106は、LCD(Liquid Crystal Display)やスピーカ等で構成される。
【0136】
ここで、本明細書において、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に行われる必要はない。すなわち、コンピュータがプログラムに従って行う処理は、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含む。
【0137】
また、プログラムは、1のコンピュータ(プロセッサ)により処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであっても良い。
【0138】
さらに、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0139】
また、例えば、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。
【0140】
また、例えば、本技術は、1つの機能を、ネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0141】
また、例えば、上述したプログラムは、任意の装置において実行することができる。その場合、その装置が、必要な機能(機能ブロック等)を有し、必要な情報を得ることができるようにすればよい。
【0142】
また、例えば、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。換言するに、1つのステップに含まれる複数の処理を、複数のステップの処理として実行することもできる。逆に、複数のステップとして説明した処理を1つのステップとしてまとめて実行することもできる。
【0143】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、プログラムを記述するステップの処理が、本明細書で説明する順序に沿って時系列に実行されるようにしても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで個別に実行されるようにしても良い。つまり、矛盾が生じない限り、各ステップの処理が上述した順序と異なる順序で実行されるようにしてもよい。さらに、このプログラムを記述するステップの処理が、他のプログラムの処理と並列に実行されるようにしても良いし、他のプログラムの処理と組み合わせて実行されるようにしても良い。
【0144】
なお、本明細書において複数説明した本技術は、矛盾が生じない限り、それぞれ独立に単体で実施することができる。もちろん、任意の複数の本技術を併用して実施することもできる。例えば、いずれかの実施の形態において説明した本技術の一部または全部を、他の実施の形態において説明した本技術の一部または全部と組み合わせて実施することもできる。また、上述した任意の本技術の一部または全部を、上述していない他の技術と併用して実施することもできる。
【0145】
<構成の組み合わせ例>
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成する発射タイミング信号生成部と、
前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うカウンタと、
前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて前記発射タイミング信号生成部に指示するタイミング指示部と
を備える測定装置。
(2)
前記反射光におけるパルスを受光したタイミングを示す前記カウントコードから、前記タイミング指示部により指示される前記発射遅延値を減算して、前記測距対象物との間で光が往復する飛行時間を測定した値に対応する測定値を演算する演算部を
さらに備える上記(1)に記載の測定装置。
(3)
前記処理周期が繰り返して行われるたびに前記演算部により求められる前記測定値のヒストグラムを生成し、そのヒストグラムにおいてピークを示す前記測定値を特定するまで、前記処理周期を繰り返して行わせるヒストグラム生成部
をさらに備える上記(2)に記載の測定装置。
(4)
前記測距対象物との間の距離を測距の対象としたときに、その距離が含まれる一定の距離幅を表す測距レンジとの間で光が往復する飛行時間の幅である測距レンジ時間を前記処理周期の時間と一致させ、前記処理周期の開始より遅延させた前記発射タイミングから前記測距レンジ時間を開始させる
上記(2)に記載の測定装置。
(5)
前記発射タイミング信号生成部は、1回の前記処理周期内で、パルスの発射回数が2回以上となる前記レーザ光を出力させ、
前記演算部は、前記反射光のパルスが検出される前記カウントコードごとに、そのカウントコードが含まれる複数の前記測距レンジ時間が開始されるタイミングである前記発射遅延値それぞれを、そのカウントコードから減算して前記測定値を求める演算を行う
上記(4)に記載の測定装置。
(6)
前記カウンタがカウントするカウントコードを下位ビットとし、前記カウンタによるカウントとは分けて上位ビットをカウントする構成を設ける
上記(1)から(5)までのいずれかに記載の測定装置。
(7)
前記タイミング指示部は、前記処理周期の全域にわたって前記レーザ光によるパルスの発射タイミングを変更させる
上記(1)から(6)までのいずれかに記載の測定装置。
(8)
前記カウンタは、任意の前記処理周期において前記カウントコードの最大値を変えることで、その処理周期の長さを変更する
上記(1)から(7)までのいずれかに記載の測定装置。
(9)
一定の前記測定値が求められる前記測距レンジ時間の起点とする前記発射タイミングに、前記測距レンジ時間がシフトされる
上記(4)に記載の測定装置。
(10)
前記タイミング指示部は、前記処理周期ごとにランダムに変化するように前記発射遅延値を変更する
上記(3)に記載の測定装置。
(11)
前記タイミング指示部は、前記処理周期ごとに所定のパターンで変化するように前記発射遅延値を変更する
上記(3)に記載の測定装置。
(12)
前記測距対象物との間の距離を測距の対象としたときに、その距離が含まれる一定の距離幅を表す測距レンジとの間で光が往復する飛行時間の幅を測距レンジ時間とし、
前記ヒストグラム生成部は、前記発射遅延値が変化する所定のパターンに基づいて、前記測距レンジ時間の外で検出された反射光のパルスに起因するゴーストの測定値のヒストグラム形状を予測し、前記ゴーストの測定値のヒストグラム形状を抽出する
上記(11)に記載の測定装置。
(13)
前記ヒストグラム生成部は、前記ゴーストの測定値のヒストグラム形状に対する所定の演算処理を行う
上記(12)に記載の測定装置。
(14)
測定装置が、
所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成することと、
前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うことと、
前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて指示することと
を含む測定方法。
(15)
測定装置のコンピュータに、
所定の処理周期ごとに繰り返して、レーザ光のパルスを発射する発射タイミングを指示する信号を生成することと、
前記レーザ光が測距対象物で反射して戻ってきた反射光におけるパルスを受光したタイミングを示すカウントコードのカウントを、前記処理周期の切り替わり時に継続して行うことと、
前記処理周期の開始から前記発射タイミングを遅延させる時間を示す発射遅延値を、前記処理周期ごとに異ならせて指示することと
を含む測定処理を実行させるためのプログラム。
【0146】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0147】
11 測定装置, 12 発射タイミング信号生成部, 13 レーザドライバ, 14 受光素子, 15 TDC, 16 タイミング指示部, 17 演算部, 18 ヒストグラム生成部, 19 距離算出部, 21 カウンタ, 22 ラッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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