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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/46 20060101AFI20231113BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231113BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20231113BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
F16H1/46
H02K7/116
H02K7/06 A
B60J5/10 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020103503
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196004
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 貴史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-084447(JP,U)
【文献】特開2015-147562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/46
H02K 7/116
H02K 7/06
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が設けられるモータ部と、
駆動対象物を駆動する駆動軸と、
前記回転軸と前記駆動軸との間に設けられる減速ギヤ部と、
を有するアクチュエータであって、
前記減速ギヤ部は、
前記回転軸により回転される太陽歯車と、
前記太陽歯車の周囲に設けられる内歯車と、
前記太陽歯車と前記内歯車との間に設けられる複数の遊星歯車と、
複数の前記遊星歯車をそれぞれ回転自在に支持する複数の支持軸が設けられ、前記駆動軸を回転させる遊星キャリアと、
を備え、
前記支持軸は、前記遊星キャリアの軸方向において前記駆動軸側に突出され、
前記駆動軸の軸方向における前記遊星キャリア側に、径方向外側に突出されて前記支持軸からの回転力を受ける凸部を有する動力伝達部材が設けられ、
前記駆動軸の回転方向における前記支持軸と前記凸部との間に、弾性部材が設けられ
前記弾性部材は、
前記支持軸が挿通される支持軸挿通穴と、
前記動力伝達部材が係合される係合穴と、
を有し、
前記支持軸と前記支持軸挿通穴との間、および前記弾性部材と前記遊星キャリアとの間に、隙間が設けられていることを特徴とする、
アクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動対象物が車両に設けられる開閉体であり、
前記アクチュエータが前記駆動軸の回転により伸縮される棒状に形成されていることを特徴とする、
請求項1に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸が設けられるモータ部と、駆動対象物を駆動する駆動軸と、回転軸と駆動軸との間に設けられる減速ギヤ部と、を有するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自動車のテールゲートを開閉するアクチュエータが記載されている。特許文献1に記載のアクチュエータは、モータ部と、スクリュー軸と、モータ部とスクリュー軸との間に配置された減速ギヤ部と、スクリュー軸の回転により当該スクリュー軸の軸方向に移動され、アクチュエータを伸縮させるナット部材と、を備えている。これにより、モータ部を駆動することでアクチュエータが伸縮動作されて、テールゲートが開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-082516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたアクチュエータは、細長い棒状のアクチュエータであるため、減速ギヤ部にコンパクトでかつ2段の遊星歯車機構を採用している。すなわち、減速ギヤ部は、一対の太陽歯車,一対の内歯車,複数の遊星歯車および一対の遊星キャリアを備えている。したがって、部品点数が多い2段の遊星歯車機構からなる減速ギヤ部は、モータ部の回転駆動時における回転ブレが大きく、モータ部の回転速度に応じて周期的な騒音が発生して、当該騒音を抑えることが難しかった。
【0005】
本発明の目的は、減速ギヤ部の回転ブレに伴う周期的な騒音の発生を抑えて、静粛性を向上させることができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアクチュエータでは、回転軸が設けられるモータ部と、駆動対象物を駆動する駆動軸と、前記回転軸と前記駆動軸との間に設けられる減速ギヤ部と、を有するアクチュエータであって、前記減速ギヤ部は、前記回転軸により回転される太陽歯車と、前記太陽歯車の周囲に設けられる内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間に設けられる複数の遊星歯車と、複数の前記遊星歯車をそれぞれ回転自在に支持する複数の支持軸が設けられ、前記駆動軸を回転させる遊星キャリアと、を備え、前記支持軸は、前記遊星キャリアの軸方向において前記駆動軸側に突出され、前記駆動軸の軸方向における前記遊星キャリア側に、径方向外側に突出されて前記支持軸からの回転力を受ける凸部を有する動力伝達部材が設けられ、前記駆動軸の回転方向における前記支持軸と前記凸部との間に、弾性部材が設けられ、前記弾性部材は、前記支持軸が挿通される支持軸挿通穴と、前記動力伝達部材が係合される係合穴と、を有し、前記支持軸と前記支持軸挿通穴との間、および前記弾性部材と前記遊星キャリアとの間に、隙間が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支持軸は、遊星キャリアの軸方向において駆動軸側に突出され、駆動軸の軸方向における遊星キャリア側に、径方向外側に突出されて支持軸からの回転力を受ける凸部を有する動力伝達部材が設けられ、駆動軸の回転方向における支持軸と凸部との間に、弾性部材を設けている。
【0008】
したがって、モータ部の回転駆動に伴う遊星キャリアの回転力は、支持軸から弾性部材を介して動力伝達部材の凸部に伝達される。よって、弾性部材の弾性変形により減速ギヤ部の回転ブレに伴う周期的な騒音の発生が抑えられて、アクチュエータの静粛性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両のテールゲートを示す正面図である。
図2図1のテールゲートを側方から見た側面図である。
図3】アクチュエータを単体で示す斜視図である。
図4図3の破線円A部の断面図である。
図5図4の破線円B部の拡大断面図である。
図6】減速機構を分解して示す斜視図である。
図7】(a),(b)は、弾性部材の動作を説明する図4のC-C線に沿う断面図である。
図8図3の破線円D部の断面図である。
図9図3の破線円E部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は車両のテールゲートを示す正面図を、図2図1のテールゲートを側方から見た側面図を、図3はアクチュエータを単体で示す斜視図を、図4図3の破線円A部の断面図を、図5図4の破線円B部の拡大断面図を、図6は減速機構を分解して示す斜視図を、図7(a),(b)は弾性部材の動作を説明する図4のC-C線に沿う断面図を、図8図3の破線円D部の断面図を、図9図3の破線円E部の断面図をそれぞれ示している。
【0012】
図1および図2に示される車両10は、所謂ハッチバックタイプの車両であり、車両10の後方側には、大きな荷物を車室内に出し入れし得る開口部11が形成されている。開口部11は、車両10の天井の後方側に設けられたヒンジ(図示せず)を中心に回動されるテールゲート(駆動対象物,開閉体)12により、図2の実線矢印および破線矢印のように開閉される。
【0013】
また、車両10には、テールゲート開閉装置13が搭載されている。テールゲート開閉装置13は、テールゲート12を開閉駆動する一対のアクチュエータ20と、操作スイッチ(図示せず)の操作信号に基づいてアクチュエータ20を制御するコントローラ(ECU)13aと、を備えている。
【0014】
ここで、一対のアクチュエータ20は、いずれも同じ構造となっており、車両10の左右側にそれぞれ鏡像対称となるように配置されている。具体的には、それぞれのアクチュエータ20は、テールゲート12を閉じた状態(図1参照)において、車両10の車体ボディ10aと、テールゲート12のドア枠12aとの間に形成され、かつ幅狭で細長い収容スペース(図示せず)に収容される。
【0015】
図1および図2に示されるように、アクチュエータ20は、配線13bを介してコントローラ13aに接続され、コントローラ13aからの駆動電流の供給により伸縮動作するようになっている。これにより、アクチュエータ20を伸張するように作動させることで、閉じているテールゲート12が実線矢印のように開き、アクチュエータ20を縮小するように作動させることで、開いているテールゲート12が破線矢印のように閉じられる。
【0016】
図3ないし図9に示されるように、アクチュエータ20は、駆動部30と、駆動部30の駆動により軸方向に移動される移動部40と、駆動部30と移動部40との間に配置されるコイルスプリング50と、を備えている。これらの駆動部30,移動部40およびコイルスプリング50は、それぞれ同軸上に配置されており、アクチュエータ20は細長い棒状に形成されている。
【0017】
駆動部30は、筒状に形成された第1ハウジング31および第2ハウジング32を備えており、これらの第1ハウジング31および第2ハウジング32は、互いに連結されている。第1ハウジング31の長手方向一側(図中右側)は、車体ボディ10a(図1および図2参照)に回動自在に取り付けられる第1固定部33により閉塞されている。また、第1ハウジング31の長手方向他側(図中左側)には、ボールベアリングBBを保持するベアリングホルダ34が固定されている。
【0018】
第1ハウジング31の内部で、かつ第1固定部33とベアリングホルダ34との間には、駆動機構60が収容されている。ここで、ボールベアリングBBは、駆動機構60を形成する出力軸95の基端部を、回動自在に支持している。なお、出力軸95は、雄ねじ部材として機能する所謂「台形ねじ」となっており、本発明における駆動軸を構成している。
【0019】
ベアリングホルダ34の軸方向に沿う駆動機構60側とは反対側(図中左側)には、保持筒35の基端部が固定されている。保持筒35は、移動部40を形成するピストンチューブ41(図8および図9参照)を移動自在に保持しており、駆動機構60を駆動することにより、保持筒35の先端部からピストンチューブ41が出入り(アクチュエータ20が伸縮)するようになっている。
【0020】
ここで、保持筒35の外径寸法は、第1ハウジング31および第2ハウジング32の内径寸法よりも小さくなっている。これにより、第2ハウジング32と保持筒35との間に、第1環状スペース36が形成されている。
【0021】
第1環状スペース36の内部には、コイルスプリング50の長手方向一側が収容されている。なお、第2ハウジング32の基端部には、径方向内側に突出された環状の第1スプリングシート32aが設けられ、第1スプリングシート32aは、コイルスプリング50の長手方向一側を支持している。
【0022】
ここで、第1ハウジング31の長手方向一側を閉塞する第1固定部33には、配線CDを覆うゴム製の配線カバーCVが一体に設けられている。そして、配線カバーCVの長手方向一側からは、図3に示されるように、配線CDが引き出されており、当該配線CDの長手方向一側には、コネクタ接続部CNが設けられている。このコネクタ接続部CNには、車両10側の外部コネクタ(図示せず)が接続されるようになっている。なお、配線カバーCVには、車体ボディ10aに装着されるグロメットGMが設けられ、これにより、車体ボディ10aの内側の空間に、雨水等が進入することが防止される。
【0023】
一方、配線CDの長手方向他側には、図4に示されるように、第1固定部33に近接して配置されたブラシホルダ80が電気的に接続されている。これにより、コントローラ13a(図1および図2参照)からの駆動電流が、外部コネクタ,コネクタ接続部CNおよび配線CDを介して、ブラシホルダ80(駆動機構60)に供給される。
【0024】
駆動機構60は、筒状に形成されたモータケース61を備えている。モータケース61の内部には電動モータ(モータ部)70が収容されており、モータケース61の軸方向両側には、それぞれブラシホルダ80および減速機構(減速ギヤ部)90が設けられている。
【0025】
電動モータ70は、モータケース61の長手方向中央部に配置され、モータケース61の内壁に固定された複数の永久磁石71(図示では2つのみを示す)を備えている。これらの永久磁石71の内側には、所定の隙間(エアギャップ)を介してロータ72が回転自在に設けられている。ロータ72は、複数の鋼板を積層してなるアーマチュア72aと、アーマチュア72aの回転中心に固定された回転軸72bと、回転軸72bに固定された整流子72cと、を備えている。
【0026】
ここで、回転軸72bを有するアーマチュア72aには、複数のコイルCLが所定の巻き方および巻き数で巻装されている。そして、これらのコイルCLの端部と、アーマチュア72aに設けられた整流子72cとが、互いに電気的に接続されている。そして、整流子72cの外周部分には、一対の給電ブラシ82が摺接するようになっている。これにより、一対の給電ブラシ82から整流子72cに駆動電流を供給することで、アーマチュア72a(回転軸72b)が、所定の回転方向に所定の回転速度で回転される。
【0027】
ブラシホルダ80は、溶融されたプラスチック材料等を射出成形することで有底筒状に形成されており、モータケース61の長手方向一側を閉塞するようにして配置されている。ブラシホルダ80は、略円板形状に形成されたホルダ本体81を備えており、ホルダ本体81の軸方向他側(図中左側)には、一対の給電ブラシ82が移動自在に設けられている。具体的には、一対の給電ブラシ82は、図示しないブラシスプリングのばね力により、それぞれ整流子72cに向けて所定圧で押圧されている。
【0028】
また、ブラシホルダ80は、ホルダ本体81に一体に設けられた筒状壁部83を備えている。筒状壁部83の径方向内側には、センサ基板84が設けられ、当該センサ基板84にはホールIC85が実装されている。そして、ホールIC85の正面には、回転軸72bの軸方向一側に固定されたセンサマグネットMGが対向配置されている。これにより、ホールIC85は、回転軸72bの回転状態(回転方向や回転速度等)を検出して、配線CDを介してコントローラ13aに送出する。よって、コントローラ13aは、アクチュエータ20の伸縮動作を精度良く制御することが可能となっている。
【0029】
なお、ブラシホルダ80には、一対の給電ブラシ82やセンサ基板84の他にも、複数の電子部品(図示せず)が設けられている。例えば、電気的なブラシノイズがアクチュエータ20の外部に放出されるのを防止するチョークコイルや、電動モータ70が過熱状態になって焼損してしまうのを防止するPTCサーミスタ等(いずれも図示せず)が、ブラシホルダ80に設けられている。
【0030】
さらに、ブラシホルダ80のホルダ本体81には、環状の鋼材よりなる第1ラジアルベアリングRB1が装着されている。この第1ラジアルベアリングRB1は、回転軸72bの軸方向一側を回転自在に支持している。
【0031】
減速機構90は、有底筒状に形成された減速機構ホルダ91を備えている。減速機構ホルダ91の底壁部92には、第2ラジアルベアリングRB2が装着されており、当該第2ラジアルベアリングRB2は、回転軸72bの軸方向他側を回転自在に支持している。なお、減速機構ホルダ91は、モータケース61の長手方向他側を閉塞するようにして配置されている。
【0032】
図4ないし図6に示されるように、減速機構ホルダ91の内部には、第1減速機構93および第2減速機構94が、それぞれ減速機構90の軸方向に並んで設けられている。第1減速機構93および第2減速機構94は、それぞれ遊星歯車減速機となっている。そして、第1減速機構93は、駆動部30側(入力側)に配置され、第2減速機構94は、移動部40側(出力側)に配置されている。すなわち、減速機構90は、回転軸72bと出力軸95との間に動力伝達可能に設けられている。これにより、高速で回転する回転軸72bの回転速度が所定の回転速度にまで減速されて、減速されて高トルク化された回転力が出力軸95から出力される。
【0033】
このように、減速機構90は、第1減速機構93および第2減速機構94により2段減速を行う。したがって、第1減速機構93および第2減速機構94をそれぞれ小型化(小径化)して、筒状の第1ハウジング31の内部に設置可能としている。
【0034】
第1減速機構93は、回転軸72bの軸方向他側に固定された第1太陽歯車93aを備えている。つまり、第1太陽歯車93aは、回転軸72bと同じ回転速度で回転される。また、第1太陽歯車93aの周囲には、環状の第1内歯車93bが設けられており、当該第1内歯車93bは、減速機構ホルダ91の内壁により形成され、かつ第1ハウジング31に対して固定されている。すなわち、第1内歯車93bは、回転軸72bの回転により回転することは無い。
【0035】
第1太陽歯車93aと第1内歯車93bとの間には、合計3つの第1遊星歯車93cが設けられている。これらの第1遊星歯車93cは、それぞれ第1太陽歯車93aおよび第1内歯車93bの双方に噛み合わされている。そして、合計3つの第1遊星歯車93cは、第1太陽歯車93aの周囲に等間隔(120度間隔)で配置されており、第1太陽歯車93aの回転に伴い、第1太陽歯車93aの周囲を転動するようになっている。
【0036】
また、第1太陽歯車93aおよび第1遊星歯車93cの軸方向における底壁部92側とは反対側には、略円板状に形成された第1遊星キャリア93dが回転自在に設けられている。そして、第1遊星キャリア93dには、合計3つの第1支持軸93eが一体に設けられている。具体的には、第1支持軸93eは丸鋼棒からなり、その軸方向他側が、第1遊星キャリア93dに差し込み固定されている。そして、それぞれの第1支持軸93eは、第1遊星キャリア93dの周方向に等間隔(120度間隔)で配置されており、第1遊星歯車93cを回転自在に支持している。これにより、それぞれの第1遊星歯車93cの転動に伴い、第1遊星キャリア93dは、第1太陽歯車93aよりも減速されて高トルク化された状態で回転される。
【0037】
第2減速機構94は、第1遊星キャリア93dの軸心に固定された第2太陽歯車94aを備えている。つまり、第2太陽歯車94aは、第1遊星キャリア93dと同じ回転速度で回転される。また、第2太陽歯車94aの周囲には、環状の第2内歯車94bが設けられており、当該第2内歯車94bは、減速機構ホルダ91の内壁により形成され、かつ第1ハウジング31に対して固定されている。すなわち、第2内歯車94bは、第1遊星キャリア93dの回転により回転することは無い。
【0038】
ここで、第1遊星キャリア93dに一体に設けられた第2太陽歯車94aは、本発明における太陽歯車を構成しており、第2内歯車94bは、本発明における内歯車を構成している。すなわち、第2太陽歯車94aは、第1減速機構93を介して回転軸72bにより回転されるようになっている。
【0039】
また、第2太陽歯車94aと第2内歯車94bとの間には、合計4つの第2遊星歯車94cが設けられている。これらの第2遊星歯車94cは、本発明における遊星歯車を構成しており、それぞれ第2太陽歯車94aおよび第2内歯車94bの双方に噛み合わされている。そして、合計4つの第2遊星歯車94cは、第2太陽歯車94aの周囲に等間隔(90度間隔)で配置されており、第2太陽歯車94aの回転に伴い、第2太陽歯車94aの周囲を転動するようになっている。
【0040】
さらに、第2太陽歯車94aおよび第2遊星歯車94cの軸方向における底壁部92側とは反対側には、略円板状に形成された第2遊星キャリア94dが回転自在に設けられている。第2遊星キャリア94dは、本発明における遊星キャリアを構成しており、当該第2遊星キャリア94dには、合計4つの第2支持軸94eが一体に設けられている。これらの第2支持軸94eは、本発明における支持軸を構成している。具体的には、第2支持軸94eは丸鋼棒からなり、その軸方向における略中央部分が、第2遊星キャリア94dに差し込み固定されている。そして、それぞれの第2支持軸94eは、第2遊星キャリア94dの周方向に等間隔(90度間隔)で配置されており、かつそれぞれの第2支持軸94eの軸方向一側には、第2遊星歯車94cが回転自在に支持されている。これにより、それぞれの第2遊星歯車94cの転動に伴い、第2遊星キャリア94dは、第2太陽歯車94aよりも減速されて高トルク化された状態で回転される。
【0041】
また、合計4つの第2支持軸94eの軸方向他側は、図5に示されるように、第2遊星キャリア94dの軸方向において出力軸95側に突出されている。そして、第2支持軸94eの出力軸95側に突出された部分には、図6に示されるような弾性部材100が装着されるようになっている。
【0042】
弾性部材100は、天然ゴム等の可撓性を有する柔軟な材料により略円板状に形成されている。そして、弾性部材100の径方向外側寄りの部分には、当該弾性部材100の周方向に合計4つの挿通穴101が等間隔(90度間隔)で設けられている。これらの挿通穴101は、本発明における支持軸挿通穴を構成しており、それぞれの挿通穴101には、第2支持軸94eの出力軸95側に突出された部分が、それぞれ第1隙間S1(図5参照)を介して挿通されている。つまり、第2支持軸64eと挿通穴101との間に、第1隙間S1が形成されている。これにより、弾性部材100は、第2減速機構94の第2遊星キャリア94dと同じ回転速度で回転される。
【0043】
また、図6に示されるように、弾性部材100の中央部分には、略十字形状に形成された係合穴102が設けられている。係合穴102は、弾性部材100の径方向外側に窪んだ合計4つの凹部102aを備えている。そして、これらの隣り合う凹部102aの間に、挿通穴101がそれぞれ配置されている。すなわち、合計4つの凹部102aと合計4つの挿通穴101は、弾性部材100の周方向に交互に並んでいる。
【0044】
さらに、図5に示されるように、減速機構90の軸方向における弾性部材100と第2遊星キャリア94dとの間には、第2隙間S2が設けられている。このように、本実施の形態では、挿通穴101に第1隙間S1を介して第2支持軸94eを挿通し、かつ弾性部材100と第2遊星キャリア94dとの間に第2隙間S2を設けている。なお、これらの第1隙間S1および第2隙間S2は、本発明における隙間を構成している。
【0045】
これにより、アクチュエータ20の組み立て時において、それぞれの第2支持軸94eに弾性部材100を容易に装着することができる(組み立て性向上)。また、アクチュエータ20の作動時において、弾性部材100は容易に弾性変形可能であり、この場合、それぞれの第2支持軸94eからの回転力により弾性部材100が比較的大きく弾性変形されても、弾性部材100の反力が第2遊星キャリア94dの軸方向に作用することが抑えられる。よって、アクチュエータ20への負荷が大きい場合であっても、減速機構90のスムーズな回転が確保される。
【0046】
また、上述のような第1隙間S1および第2隙間S2を設けることで、複数の歯車からなる減速機構90の回転ブレを許容しつつも、金属製の第2支持軸94eは弾性部材100に接触されるため、回転ブレに伴う周期的な騒音の発生が抑えられる。したがって、例えば、安価な部品により減速機構を構成しても、静粛性を確保することができ、ひいてはコスト低減を実現することができる。
【0047】
さらに、図5および図6に示されるように、弾性部材100の係合穴102には、鋼板を打ち抜き加工等することで略十字形状に形成された動力伝達部材110が嵌り込むようにして係合される。そして、弾性部材100の厚み寸法および動力伝達部材110の厚み寸法は、それぞれ略同じ厚み寸法Tとなっている。具体的には、弾性部材100および動力伝達部材110の厚み寸法Tは、第2遊星キャリア94dの厚み寸法t程度となっている(T≒t)。これにより、アクチュエータ20の軸方向への寸法増大が抑えられている。
【0048】
動力伝達部材110は、当該動力伝達部材110の径方向外側に突出した合計4つの凸部111を備えている。これらの凸部111は、それぞれの第2支持軸94eからの回転力を受ける部分(受止部)であって、それぞれの凸部111は、弾性部材100の凹部102aにそれぞれ嵌合するようになっている。すなわち、出力軸95の回転方向における第2支持軸94eと凸部111との間に、弾性部材100の一部が設けられる(配置される)ことになる。
【0049】
これにより、動力伝達部材110に対する第2遊星キャリア94dの相対回転により、第2支持軸94eと凸部111との間で弾性部材100の一部が弾性変形され、ひいては減速機構90の回転ブレに伴う周期的な騒音の発生が抑えられる。
【0050】
具体的には、弾性部材100は、図7(a),(b)に示されるように弾性変形される。つまり、それぞれの第2支持軸94eの動力伝達部材110に対する矢印RT1方向および矢印RT2方向への相対回転により、回転方向前方側の弾性部材100の一部が、厚み寸法L1となるように押圧される(負荷が掛かる)。これに対し、回転方向後方側の弾性部材100の一部は、厚み寸法L2、すなわち弾性部材100が自然状態となるように負荷が除かれる(L1<L2)。
【0051】
また、図6および図7(a),(b)に示されるように、動力伝達部材110の中央部分には、断面が非円形(略小判形状)に形成された連結孔112が設けられている。この連結孔112には、出力軸95の軸方向一側(図6中下側)に設けられた固定突起95aが、圧入により強固に固定されている。つまり、動力伝達部材110は、出力軸95の軸方向における第2遊星キャリア94d側に設けられている。これにより、出力軸95は動力伝達部材110と一緒に回転される。具体的には、減速機構90の回転力は、合計4つの第2支持軸94eから弾性部材100に伝達され、当該弾性部材100に伝達された回転力は、合計4つの凸部111を介して動力伝達部材110に伝達される。その結果、最終的に出力軸95が、減速されて高トルク化された状態で回転(駆動)される。
【0052】
このように、第2遊星キャリア94dに固定された第2支持軸94e(金属製)と、出力軸95に固定された動力伝達部材110(金属製)との間に、弾性部材100(ゴム製)を介在させている。これにより、複数の歯車からなる減速機構90からの振動が、出力軸95を介してテールゲート12(図1および図2参照)に伝達されることが抑えられる。したがって、テールゲート12がガタつくようなことが効果的に抑えられて、テールゲート12の開閉音がより静かになる。
【0053】
また、例えば、アクチュエータ20が伸長した状態にあり、当該アクチュエータ20にテールゲート12からの比較的大きな荷重が掛かり、アクチュエータ20に折り曲げ方向に応力が作用すると、出力軸95は減速機構90に対して傾斜された状態となる。この場合、第2支持軸94eと動力伝達部材110との間の弾性部材100が弾性変形して、出力軸95の減速機構90に対する傾斜を許容する。そして、出力軸95が減速機構90に対して傾斜された状態でも、アクチュエータ20は停止すること無くスムーズに伸縮動作される。よって、出力軸95からの無理な抉り力が減速機構90に伝達することが抑えられて、減速機構90を形成する複数の歯車が早期に摩耗すること等が防止される。これによってもアクチュエータ20の静粛性向上が図られている。
【0054】
次に、出力軸95の正逆方向(図7(a),(b)の矢印RT1,RT2の方向)への回転により移動される移動部40の構造について説明する。
【0055】
図8および図9に示されるように、移動部40は、駆動部30を形成する保持筒35の先端部から出入りする筒状のピストンチューブ41を備えている。そして、ピストンチューブ41の長手方向他側(図中左側)は、テールゲート12(図1および図2参照)に回動自在に取り付けられる第2固定部42により閉塞されている。
【0056】
これに対し、ピストンチューブ41の長手方向一側(図中右側)には、出力軸95にねじ結合される環状の雌ねじ部材43が固定されている。これにより、出力軸95の正逆方向への回転に伴って、ピストンチューブ41が保持筒35の先端部から出入りする。つまり、駆動部30に対して移動部40が移動するようになっている。
【0057】
ここで、出力軸95の先端部には、円板状のガイド部材95bが固定されており、当該ガイド部材95bは、ピストンチューブ41の内壁に摺接するようになっている。すなわち、ガイド部材95bは、ピストンチューブ41を保持筒35に対して真っ直ぐに移動させる機能を有している。これにより、アクチュエータ20の作動時(伸縮時)において、テールゲート12からの負荷によりアクチュエータ20が屈曲してしまうこと等が防止され、ひいてはアクチュエータ20のスムーズな動作が確保される。
【0058】
このように、駆動軸としての出力軸95は、ピストンチューブ41を介してテールゲート12を開閉駆動するようになっている。つまり、駆動軸としての出力軸95は、駆動対象物としてのテールゲート12を駆動するようになっている。
【0059】
また、ピストンチューブ41の径方向外側には、筒状に形成された第3ハウジング44が設けられている。そして、第3ハウジング44における軸方向一側の外周部分は、駆動部30における第2ハウジング32の内周部分に摺動自在に装着されている。具体的には、第3ハウジング44は、ピストンチューブ41の移動に伴って、第2ハウジング32に対して摺動するようになっている。
【0060】
ここで、ピストンチューブ41の外径寸法は、第3ハウジング44の内径寸法よりも小さくなっている。これにより、第3ハウジング44とピストンチューブ41との間に、第2環状スペース45が形成される。
【0061】
第2環状スペース45の内部には、コイルスプリング50の長手方向他側が収容されている。なお、第3ハウジング44の軸方向他側には、径方向内側に突出された環状の第2スプリングシート44aが設けられ、第2スプリングシート44aは、第2固定部42に固定され、かつコイルスプリング50の長手方向他側を支持している。
【0062】
そして、コイルスプリング50は、駆動部30を形成する第1スプリングシート32aと、移動部40を形成する第2スプリングシート44aとの間に、所定の初期荷重が加えられた状態で突っ張るようにして配置されている。すなわち、コイルスプリング50のばね力は、駆動部30から移動部40を押し出す方向(アクチュエータ20が伸張する方向)に常時作用している。
【0063】
これにより、テールゲート12が開いた状態において、アクチュエータ20にその軸方向から比較的大きな負荷が掛かったとしても、アクチュエータ20の伸張状態が保持される。よって、テールゲート12が不意に閉じてしまうようなことが防止される。
【0064】
以上詳述したように、本実施の形態に係るアクチュエータ20によれば、第2支持軸94eは、第2遊星キャリア94dの軸方向において出力軸95側に突出され、出力軸95の軸方向における第2遊星キャリア94d側に、径方向外側に突出されて第2支持軸94eからの回転力を受ける凸部111を有する動力伝達部材110が設けられ、出力軸95の回転方向における第2支持軸94eと凸部111との間に、弾性部材100を設けている。
【0065】
したがって、電動モータ70の回転駆動に伴う第2遊星キャリア94dの回転力は、第2支持軸94eから弾性部材100を介して動力伝達部材110の凸部111に伝達される。よって、弾性部材100の弾性変形により減速機構90の回転ブレに伴う周期的な騒音の発生が抑えられて、アクチュエータ20の静粛性を向上させることが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態に係るアクチュエータ20によれば、弾性部材100は、第2支持軸94eが挿通される挿通穴101と、動力伝達部材110が係合される係合穴102と、を有するので、減速機構90を構成する第2支持軸94eを利用しつつ、第2支持軸94eと動力伝達部材110との間に1つの部品からなる弾性部材100を設けることができる。
【0067】
よって、減速機構90と出力軸95との間の連結構造を大型化すること無く、減速機構90と出力軸95との間に単一の弾性部材100を配置することができ、ひいては、アクチュエータ20の組み立て性を低下させること無く、アクチュエータ20のストローク量を十分に確保することができる。
【0068】
また、減速機構90と出力軸95との間の連結構造に、減速機構90を構成する第2支持軸94eを利用するため、部品点数の増加を抑えつつ、機能的に優れたアクチュエータ20を実現することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態に係るアクチュエータ20によれば、第2支持軸94eと挿通穴101との間、および弾性部材100と第2遊星キャリア94dとの間に、それぞれ第1隙間S1および第2隙間S2が設けられている。
【0070】
これにより、それぞれの第2支持軸94eに弾性部材100を容易に装着することができ、アクチュエータ20の組み立て性を向上させることができる。また、アクチュエータ20の作動時において、弾性部材100を容易に弾性変形させることができ、このときの弾性部材100の反力が、第2遊星キャリア94dの軸方向に作用するのを抑えることができる。よって、アクチュエータ20への負荷が大きい場合であっても、減速機構90のスムーズな回転を確保できる。
【0071】
さらに、第1隙間S1および第2隙間S2を設けることで、複数の歯車からなる減速機構90の回転ブレを許容しつつも、金属製の第2支持軸94eは弾性部材100に接触するので、回転ブレに伴う周期的な騒音の発生を効果的に抑制することいができる。よって、安価な部品により減速機構を構成しても、静粛性を確保することが可能となり、コスト低減を実現することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係るアクチュエータ20によれば、アクチュエータ20の駆動対象物が車両10に設けられるテールゲート12であり、アクチュエータ20が出力軸95の回転により伸縮される細長い棒状に形成されているので、従前からある棒状の支持装置としてのガススプリング(シリンダ内に高圧ガスを封入して、この高圧ガスの反力をばねとして利用した支持装置)に換えて、容易にアクチュエータ20を設置することが可能となる。
【0073】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、アクチュエータを、車両10のテールゲート12を開閉する棒状のアクチュエータ20としたものを示したが、本発明はこれに限らず、他の車載機器、例えば、ワイパ装置,パワーウィンドウ装置,サンルーフ装置さらにはスライドドア開閉装置等に用いられ、かつ遊星歯車機構を有するアクチュエータにも適用可能である。
【0074】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0075】
10:車両,10a:車体ボディ,11:開口部,12:テールゲート(駆動対象物,開閉体),12a:ドア枠,13:テールゲート開閉装置,13a:コントローラ,13b:配線,20:アクチュエータ,30:駆動部,31:第1ハウジング,32:第2ハウジング,32a:第1スプリングシート,33:第1固定部,34:ベアリングホルダ,35:保持筒,36:第1環状スペース,40:移動部,41:ピストンチューブ,42:第2固定部,43:雌ねじ部材,44:第3ハウジング,44a:第2スプリングシート,45:第2環状スペース,50:コイルスプリング,60:駆動機構,61:モータケース,70:電動モータ(モータ部),71:永久磁石,72:ロータ,72a:アーマチュア,72b:回転軸,72c:整流子,80:ブラシホルダ,81:ホルダ本体,82:給電ブラシ,83:筒状壁部,84:センサ基板,85:ホールIC,90:減速機構(減速ギヤ部),91:減速機構ホルダ,92:底壁部,93:第1減速機構,93a:第1太陽歯車,93b:第1内歯車,93c:第1遊星歯車,93d:第1遊星キャリア,93e:第1支持軸,94:第2減速機構,94a:第2太陽歯車(太陽歯車),94b:第2内歯車(内歯車),94c:第2遊星歯車(遊星歯車),94d:第2遊星キャリア(遊星キャリア),94e:第2支持軸(支持軸),95:出力軸(駆動軸),95a:固定突起,95b:ガイド部材,100:弾性部材,101:挿通穴(支持軸挿通穴),102:係合穴,102a:凹部,110:動力伝達部材,111:凸部,112:連結孔,BB:ボールベアリング,CD:配線,CL:コイル,CN:コネクタ接続部,CV:配線カバー,GM:グロメット,MG:センサマグネット,RB1:第1ラジアルベアリング,RB2:第2ラジアルベアリング,S1:第1隙間(隙間),S2:第2隙間(隙間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9