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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】還元剤供給装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20231113BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B01D53/94 222
B01D53/94
B01D53/94 400
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020103505
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021195917
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸田 敬介
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-14387(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/092665(JP,A1)
【文献】特開2018-135776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)の排気通路(3)に設けられた第1還元触媒(21)の上流側に還元剤を供給する第1噴射弁(61)と、
前記内燃機関(2)の排気通路(3)に設けられた第2還元触媒(22)の上流側に還元剤を供給する第2噴射弁(62)と、
前記第1噴射弁(61)及び前記第2噴射弁(62)内の還元剤をタンク(30)の方向に回収するように作動可能なポンプ(40)と、
前記第1噴射弁(61)、前記第2噴射弁(62)及び前記ポンプ(40)を制御可能な制御装置(80)と、
一方で前記ポンプ(40)と接続するとともに、他方で分岐し、前記第1噴射弁(61)および前記第2噴射弁(62)とそれぞれ接続する供給通路(55)と、
を備えた、還元剤供給装置(10)において、
前記制御装置(80)は、
前記第1噴射弁(61)から還元剤を回収した後、前記第2噴射弁(62)から還元剤の回収を開始する前に、第2所定時間(TS2)の間、前記ポンプ(40)を回収方向に作動させるとともに、前記第1噴射弁(61)および前記第2噴射弁(62)を閉弁させることにより、前記第2噴射弁(62)内に負圧を供給する、
還元剤供給装置。
【請求項2】
前記第2所定時間(TS2)経過時の前記供給通路(55)内の圧力(PL)を第2圧力値(P2)として取得する、
請求項に記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記第2圧力値(P2)に基づいて前記第2所定時間(TS2)を補正する、
請求項に記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記第1噴射弁(61)から還元剤の回収を開始する前に、前記第1噴射弁(61)内に負圧を供給する、
請求項1からのいずれか一項に記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記第1噴射弁(61)から還元剤の回収を開始する前に、第1所定時間(TS1)の間、前記ポンプ(40)を回収方向に作動させるとともに、前記第1噴射弁(61)および前記第2噴射弁(62)を閉弁させることにより、前記第1噴射弁(61)内に負圧を供給する、
請求項に記載の還元剤供給装置。
【請求項6】
前記第1所定時間(TS1)経過時の前記供給通路(55)内の圧力(PL)を第1圧力値(P1)として取得する、
請求項に記載の還元剤供給装置。
【請求項7】
前記第1圧力値(P1)に基づいて前記第1所定時間(TS1)を補正する、
請求項に記載の還元剤供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路へ還元剤を供給する還元剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中に含まれるNOX(窒素酸化物)を還元反応により窒素や水に分解して排気ガスを浄化する装置として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが実用化されている。尿素SCRシステムでは、尿素水溶液を還元剤として用いて、尿素水溶液から生成されるアンモニアが排気ガス中のNOXと反応することによってNOXが分解される。
【0003】
尿素SCRシステムは、排気通路に設けられた還元触媒と、還元触媒よりも上流側の排気通路に尿素水溶液を供給するための還元剤供給装置とを備える。還元触媒は、アンモニアを吸着し、流入する排気ガス中のNOXとアンモニアとの還元反応を促進する機能を有する。還元剤供給装置は、尿素水溶液を圧送するポンプと、ポンプにより圧送される尿素水溶液を噴射する噴射弁と、ポンプ及び噴射弁の作動制御を行う制御装置とを備える。
【0004】
尿素水溶液の凍結温度は、32.5%濃度の尿素水溶液の場合、およそマイナス11℃である。還元剤供給装置の停止中に尿素水溶液が凍結して体積が膨張すると、噴射弁やこれに連結する配管等が破損するおそれがある。このため、内燃機関の停止時には、噴射弁等に残留する尿素水溶液を貯蔵タンクに回収する制御が行われる。
【0005】
ここで、近年、2つ以上の還元触媒を備えた尿素SCRシステムが検討されている。特許文献1には、第1SCR触媒と、第2SCR触媒と、それぞれの触媒の上流側に設けられた第1噴射弁および第2噴射弁と、各噴射弁に尿素水を送る尿素水ポンプと、尿素水ポンプの吐出し口に接続された共通配管と、共通配管から分岐された第1配管および第2配管とを備え、第1配管および第2配管にそれぞれ第1噴射弁および第2噴射弁が接続されている排気処理装置が開示されている。特許文献1には噴射弁等に残留する尿素水溶液を回収する制御を行うに際して、尿素水ポンプを逆転作動させるとともに、第1噴射弁および第2噴射弁をいずれも開弁状態にし、噴射弁中の尿素水が尿素水タンク方向に吸い戻されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-135776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
尿素SCRシステムにおいては、SCR触媒の下流側にNOxセンサが設けられている場合がある。NOxセンサは、NOxおよびアンモニアに反応する。このような場合に、先行技術文献1に開示されているように、内燃機関の停止時において、尿素水を吸い戻す際に、尿素水ポンプを逆転作動させるとともに第1噴射弁および第2噴射弁をいずれも開弁状態にした場合、噴射弁の開口部付近の尿素水が排気通路に漏れるおそれがある。排気通路に漏れた尿素水はアンモニアとなり、これにNOxセンサが反応する。本来、内燃機関の停止後で排気管内にNOxもアンモニアも無いと予想される状況にもかかわらず、NOxセンサが反応したことより、故障診断装置がNOxセンサの故障と誤診断をするおそれがある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、特に、2つ以上の還元触媒の上流側に備えられた複数の噴射弁であって、共通配管から分岐された複数の配管にそれぞれ接続された噴射弁から還元剤である尿素水溶液を回収する際に、尿素水溶液の排気通路への漏れを防ぐことにより、誤診断のおそれがなく、かつ効率よく残留する還元剤を回収可能な還元剤供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある観点によれば、内燃機関の排気通路に設けられた第1還元触媒の上流側に還元剤を供給する第1噴射弁と、前記内燃機関の排気通路に設けられた第2還元触媒の上流側に還元剤を供給する第2噴射弁と、前記第1噴射弁及び前記第2噴射弁内の還元剤をタンクの方向に回収するように作動可能なポンプと、前記第1噴射弁、前記第2噴射弁及び前記ポンプを制御可能な制御装置と、一方で前記ポンプと接続するとともに、他方で分岐し、前記第1噴射弁および前記第2噴射弁とそれぞれ接続する供給通路と、を備えた、還元剤供給装置において、前記制御装置は、前記第1噴射弁から還元剤を回収した後、前記第2噴射弁から還元剤の回収を開始する前に、前記第2噴射弁内に負圧を供給する、還元剤供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、2つ以上の還元触媒の上流側に備えられた複数の噴射弁であって、共通配管から分岐された複数の配管にそれぞれ接続された噴射弁から還元剤である尿素水溶液を回収する際に、噴射弁内に負圧を供給することによって、噴射弁内の尿素水が排気通路に漏れることを防ぎ、したがって、漏れに起因するNOxセンサの故障という誤診断のおそれがなく、かつ効率よく残留する還元剤を回収可能な還元剤供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るSCRシステムの構成例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置による尿素水溶液の回収制御の一例を示すタイムチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置による尿素水溶液の回収制御の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置による尿素水溶液の回収制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.尿素SCRシステムの全体構成>
まず、本実施形態に係る還元剤供給装置を適用可能な尿素SCRシステムの全体構成の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る尿素SCRシステム1の構成例を示す模式図である。
【0014】
尿素SCRシステム1は、ディーゼルエンジンに代表される内燃機関2の排気通路3の途中に設けられた第1還元触媒21及び第2還元触媒22と、第1還元触媒21及び第2還元触媒22それぞれの上流側で排気通路3内に還元剤である尿素水溶液を供給するための還元剤供給装置10とを備える。図1の構成例において、第1還元触媒21は、内燃機関2に近接する位置において排気通路3内に設けられ、第2還元触媒22は、第1還元触媒21よりも下流側の排気通路3内に設けられる。
【0015】
第1還元触媒21及び第2還元触媒22は、それぞれ内燃機関2の排気ガス中に含まれるNOXを選択的に還元する。具体的に、第1還元触媒21及び第2還元触媒22は、還元剤供給装置10により供給される尿素水溶液が分解して生成されるアンモニアを吸着し、流入する排気ガス中のNOXをアンモニアと反応させることにより還元する。尚、第1還元触媒21は、還元触媒及びパティキュレートフィルタの機能を併せ持つものであってもよい。
【0016】
第1還元触媒21は、内燃機関2に近接する位置に設けられていることから、内燃機関2の始動時においてその温度上昇が速く、第1還元触媒21は第2還元触媒22に比べ早く活性化温度に到達し、NOXの還元を開始する。その後、第1還元触媒21はさらに温度上昇するためNOXの還元効率は低下する。しかしながら、第1還元触媒21の還元効率の低下時には、第2還元触媒22が活性化温度に到達し第1還元触媒21の還元効率の低下をカバーできるように構成されている。したがって、内燃機関2の始動後、まず第1還元触媒21が主にNOXを還元し、次に第2還元触媒22が主にNOXを還元するように作動する。本実施形態の還元剤供給装置10は、同じ排気通路3の上下流に設けられた第1還元触媒21および第2還元触媒22に尿素水溶液を供給するものであるが、本発明の実施形態に係る還元剤供給装置は、例えばV型バンクのエンジンにおいて、各バンクのエキゾーストマニホールドにそれぞれ接続された排気通路に配置された還元触媒に尿素水溶液を供給するものであってもよい。
【0017】
さらに、本実施形態に係る尿素SCRシステム1においては、第1還元触媒21の上流側の排気通路3に、公知の酸化触媒23が設けられている。
【0018】
<2.還元剤供給装置>
還元剤供給装置10は、第1還元触媒21の上流側の排気通路3に取り付けられた第1噴射弁61と、第2還元触媒22の上流側の排気通路3に取り付けられた第2噴射弁62と、尿素水溶液を圧送するポンプ40とを備える。尿素水溶液はポンプ40の作動によってタンク30から汲み出され、ポンプ40から供給通路55を経由して第1噴射弁61および第2噴射弁62から排気通路3に供給される。これらの第1噴射弁61、第2噴射弁62及びポンプ40の作動は、制御装置80によって制御される。
【0019】
尿素水溶液としては、例えば凍結温度が最も低い、約32.5%濃度の尿素水溶液が用いられる。この場合の凍結温度は、約マイナス11℃である。還元剤供給装置10の停止中に尿素水溶液が凍結して体積が膨張すると、第1噴射弁61、第2噴射弁62やこれらに連結する配管等が破損するおそれがある。このため、内燃機関2の停止時には、噴射弁等に残留する尿素水溶液をタンク30に回収する制御が行われる。
【0020】
ポンプ40は、例えば、電動式のギヤポンプである。また、ポンプ40はタンク30から各噴射弁に尿素水溶液を圧送する方向(圧送方向)に作動するとともに、その逆方向である各噴射弁からタンク30に尿素水溶液を回収する方向(回収方向)にも作動可能である。ポンプ40の作動方向の切り替えは、制御装置80により制御される。
【0021】
第1噴射弁61及び第2噴射弁62は、例えば、通電制御により開弁及び閉弁を切り替え可能な電磁式開閉弁である。
【0022】
供給通路55は、一方でポンプ40と接続し他方で分岐部56と接続する共通供給通路50と、一方で分岐部56と接続し他方で第1噴射弁61と接続する第1供給通路51と、一方で分岐部56と接続し他方で第2噴射弁62と接続する第2供給通路52とを備えている。供給通路55内の圧力PLは圧力検知手段73によって検出される。例えば、圧力検知手段73は、共通供給通路に取り付けられた圧力センサ74である。また、圧力検知手段73は、ポンプ40の駆動電流を取得し、当該駆動電流に基づいて圧力PLを推定するものであってもよい。
【0023】
第1還元触媒21の下流側、かつ、第2還元触媒22の上流側の排気通路3には、排気温度を検出する排気温度センサ70が設けられている。排気温度センサ70のセンサ信号は制御装置80に送信される。排気温度センサ70により検出される排気温度は、第2還元触媒22の温度の推定にも用いられる。
【0024】
また、第2還元触媒22よりも下流側の排気通路3には、NOXセンサ72が設けられている。NOXセンサ72のセンサ信号は制御装置80に送信される。NOXセンサ72は、アンモニアにも反応し、NOXセンサ72によって第2還元触媒22の下流側に流出したNOX及びアンモニアが検知される。制御装置80に送信されたNOXセンサ72のセンサ信号は、制御装置80内に設けられた故障診断装置にも送られる。故障診断装置は、NOXセンサの故障の有無を診断する。例えば、NOXセンサの故障を検知した場合、故障診断装置は運転者通知装置82にその旨を出力するように構成されていてもよい。運転者に故障を知らせ、修理を促すことができる。運転者通知装置82は例えば車室内に取り付けられたディスプレイである。尚、本実施形態において、故障診断装置は制御装置80に含まれる構成となっているが、制御装置80とは別の制御装置として構成されてもよい。その場合、故障診断装置は、NOXセンサ72からの信号を直接受け取るように接続されていてもよいし、制御装置80を介して受け取るように接続されていてもよい。
【0025】
内燃機関2の停止後、尿素水溶液を回収する際に、各噴射弁から尿素水溶液が排気通路3に漏れた場合には、NOXセンサ72が尿素水溶液から生成されるアンモニアに反応する。その場合、本来、内燃機関の停止後で排気管内にNOxもアンモニアも無いと予想される状況にもかかわらず、NOxが検知されたことになり、故障診断装置がNOxセンサの故障と誤診断をするおそれがある。
【0026】
<3.制御装置>
制御装置80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリおよびその他の電気回路等を備えて構成される。なお、制御装置80は、一つの制御装置で構成されてもよく、複数の制御装置で構成されていてもよい。制御装置80は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であってもよい。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係る制御装置80の構成例を示すブロック図である。制御装置80は、イグニッションスイッチ4の制御信号、圧力検知手段73、排気温度センサ70及びNOXセンサ72のセンサ信号を取得可能に構成されている。一方、制御装置80は、ポンプ40、第1噴射弁61及び第2噴射弁62に制御信号を出力し、これらを制御可能に構成されているとともに、制御装置80に設けられた故障診断装置から運転者通知装置82に故障診断情報が送信されるように構成されている。
【0028】
まず、内燃機関2の始動後、停止前までの制御装置80が行う制御について説明する。制御装置80は、イグニッションスイッチ4がオンされたことを検出すると、タンク30から第1噴射弁61および第2噴射弁62に尿素水溶液を圧送する方向(圧送方向)にポンプ40の流れ方向を設定するとともに、圧力検知手段73により検出される尿素水溶液の供給圧が所定の目標圧力となるようにポンプ40を作動する。
【0029】
制御装置80は、内燃機関2から排出される排気ガス中のNOX濃度や、排気温度センサ70等の情報に基づいて第1噴射弁61および第2噴射弁62による尿素水溶液の目標噴射量をそれぞれ算出する。制御装置80は、算出した目標噴射量となるように第1噴射弁61および第2噴射弁62の噴射量をそれぞれ制御する。例えば、制御装置80は、目標噴射量にしたがって、一サイクル中の通電時間を変えるデューティ比制御で、各噴射弁の噴射量を制御する。
【0030】
内燃機関2が停止すると、制御装置80は尿素水溶液の回収制御を開始する。図3は本発明の実施形態に係る還元剤供給装置10による尿素水溶液の回収制御の一例を示すタイムチャートである。各横軸は時間tを示す。図3中(a)の縦軸IGはイグニッションスイッチ4のオン(ON)とオフ(OFF)を示す。図3中(b)の縦軸DM1は第1噴射弁61の開弁(OPEN)と閉弁(CLOSE)を示す。図3中(c)の縦軸DM2は第2噴射弁62の開弁(OPEN)と閉弁(CLOSE)を示す。図3中(d)の縦軸Pumpはポンプ40の作動(ON)と非作動(OFF)を示す。図3中(e)の縦軸は供給通路55内の圧力PLである。
【0031】
制御装置80は、時刻t1で、イグニッションスイッチ4がオフされたことを検出すると、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁する。そして時刻t2で、各噴射弁からタンク30に尿素水溶液を回収する方向(回収方向)にポンプ40の流れ方向を設定するとともに、ポンプ40の出力をあらかじめ設定された所定値で固定してポンプ40の作動を開始する。
【0032】
制御装置80は、ポンプ40の作動開始後の経過時間が第1所定時間TS1に達すると(時刻t3)、第1噴射弁61を開弁するとともに、この時点で供給通路50内の圧力PLを第1圧力値P1として取得しメモリに記憶する。この第1所定時間TS1の間、ポンプ40は回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62は閉弁する。このように、第1所定時間TS1の間、ポンプ40を回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁することにより、第1噴射弁61内に負圧を供給し、第1噴射弁を開弁した際に、尿素水溶液が排気通路3に漏れることを防ぐことができる。
【0033】
時刻t2で、ポンプ40が作動を開始すると、第1噴射弁61および第2噴射弁62が閉弁しているために、図3中の(e)に示すように供給通路50内の圧力PLは時間とともに低くなり、0hPa(ゲージ圧)を下回り負圧となる。供給通路55内の圧力PLは第1噴射弁61内の圧力と概ね同じと考えられるので、負圧となった圧力PLの圧力値が低いほど、第1噴射弁61を開弁した際に第1噴射弁61の弁部から尿素水溶液が排気通路3に漏れづらい。しかしながら、供給通路55内の圧力PLをより低くするためには、t2からt3までの時間を長くする必要があり、その場合尿素水溶液の回収時間が長くなり、電力等を余計に消費するため還元剤供給装置10または車両としてのエネルギー効率が悪くなる。したがって、t2からt3までの時間を尿素水溶液が排気通路3に漏れないでかつ極力短い時間に設定する必要がある。
【0034】
そこで予め実験等で第1所定時間TS1を決定する。すなわち、時刻t2時の供給通路55内の尿素水溶液の状態を再現し、ポンプ40が作動後の経過時間であって、第1噴射弁61を開弁しても第1噴射弁61の弁部から尿素水溶液が排気通路3に漏れない時間のうち最小の時間である最小第1所定時間TS1minを決定する。また、最小第1所定時間TS1min経過時の共通供給通路50内の圧力PLを最大第1圧力値P1maxとして取得する。最小第1所定時間TS1minに製品のばらつき等を考慮した分の時間を加えて第1所定時間TS1を算出する。さらに、この第1所定時間TS1に対応する第1所定圧力値PS1を実験等から取得する。これら最小第1所定時間TS1min、最大第1圧力値P1max、第1所定時間TS1および第1所定圧力値PS1を制御装置80のメモリに予め記憶させておく。
【0035】
時刻t3で、第1噴射弁61が開弁すると、第1噴射弁61から空気が導入され、第1噴射弁61、第1供給通路51および共通供給通路50内の尿素水溶液がタンク30の方向に移動する。制御装置80は、第1供給通路51内であって分岐部56の近傍まで空気が侵入した時点(時刻t4)で第1噴射弁61を再び閉弁する。
【0036】
制御装置80は、第1噴射弁61を閉弁後の時間が第2所定時間TS2に達すると(時刻t5)、第2噴射弁62を開弁するとともに、この時点で供給通路55内の圧力PLを第2圧力値P2として取得しメモリに記憶する。この第2所定時間TS2の間、ポンプ40は回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62は閉弁する。このように、第2所定時間TS2の間、ポンプ40は回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62は閉弁することにより、第2噴射弁62内に負圧を供給し、第2噴射弁を開弁した際に、尿素水溶液が排気通路3に漏れることを防ぐことができる。
【0037】
時刻t4で、第1噴射弁61を閉弁すると、第1噴射弁61および第2噴射弁62が閉弁しているために、図3中の(e)に示すように供給通路55内の圧力PLは時間とともに低くなる。供給通路55内の圧力PLは第2噴射弁62内の圧力と概ね同じと考えられるので、負圧となった圧力PLの圧力値が低いほど、第2噴射弁62を開弁した際に第2噴射弁62の弁部から尿素水溶液が排気通路3に漏れづらい。しかしながら、供給通路55内の圧力PLをより低くするためには、t4からt5までの時間を長くする必要があり、その場合尿素水溶液の回収時間が長くなり、電力等を余計に消費するため還元剤供給装置10または車両としてのエネルギー効率が悪くなる。したがって、t4からt5までの時間を尿素水溶液が排気通路3に漏れないでかつ極力短い時間に設定する必要がある。
【0038】
第2所定時間TS2は第1所定時間TS1と同様に実験等で決定する。すなわち、時刻t4時の供給通路55内の尿素水溶液の状態を再現し、第1噴射弁61の再閉弁後の経過時間であって、第2噴射弁62を開弁しても第2噴射弁62の弁部から尿素水溶液が排気通路3に漏れない時間のうち最小の時間である最小第2所定時間TS2minを決定する。また、最小第2所定時間TS2min経過時の圧力PLを最大第2圧力値P2maxとして取得する。最小第2所定時間TS2minに製品のばらつき等を考慮した分の時間を加えて第2所定時間TS2を算出する。さらに、この第2所定時間TS2に対応する第2所定圧力値PS2を実験等から取得する。これら最小第2所定時間TS2min、最大第2圧力値P2max、第2所定時間TS2および第2所定圧力値PS2を制御装置80のメモリに予め記憶させておく。
【0039】
時刻t5での第2噴射弁62の開弁により、第2噴射弁62から空気が導入され、第2噴射弁62、第2供給通路52内および共通供給通路50内の尿素水溶液がタンク30の方向に移動する。第2噴射弁62から導入された空気が分岐部56を通過する際に、第1供給通路51内にもまわりこむので、第1供給通路51内に残留していた僅かな尿素水溶液も一緒にタンク30の方向に回収される。尚、第2噴射弁62が開弁後であって、第2噴射弁62から導入された空気が分岐部56を通過する前に、短時間、第1噴射弁61を開弁してもよい。第1供給通路51内に残留していた僅かな尿素水溶液を確実にタンク30の方向に回収できる。制御装置80は、第2噴射弁開弁後の経過時間が第3所定時間TS3に達した時にポンプ40の作動を停止し(t6)、その後、例えば、2から3秒後に、第2噴射弁62を閉弁する。第3所定時間TS3は、予め実験等により、第2噴射弁開弁後、共通供給通路50内の圧力PLが0hPaとなるまでの時間を計測しておき、第3所定時間TS3としてもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、尿素水溶液の回収時において、第1噴射弁61および第2噴射弁62のそれぞれの開弁前に負圧を供給することにより、開弁時の尿素水溶液の排気通路3内への漏れを防ぐことができる。具体的には、第1噴射弁61および第2噴射弁62のそれぞれの開弁前に両方の噴射弁を閉弁するとともにポンプ40を回収方向に作動する第1所定時間TS1および第2所定時間TS2をそれぞれ設けているので、開弁時の尿素水溶液の排気通路3内への漏れを確実に防ぐことができる。したがって、漏れに起因するNOxセンサの故障という誤診断のおそれがない還元剤供給装置10を提供することができる。また、第1所定時間TS1および第2所定時間TS2を、それぞれ最小第1所定時間TS1minおよび最小第2所定時間TS2minに基づいて定めているので、回収時間を短くし効率よく尿素水溶液を回収可能な還元剤供給装置10を提供することができる。
【0041】
制御装置80は、第1所定時間TS1を第1圧力値P1に基づいて補正し、第2所定時間TS2を第2圧力値P2に基づいて補正する機能を有していてもよい。例えば第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxに比べて高い場合には、第1所定時間TS1が短く、第1圧力値P1が十分下がっていない可能性がある。そこで、制御装置80は、第1所定時間TS1を長くするように補正する。例えば、第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxとなる場合の時間を算定し、この時間に製品ばらつき等を考慮した分の時間を加えて新たな第1所定時間TS1算定する。逆に、第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxに比べ低すぎる場合、すなわち、最大第1圧力値P1maxから第1圧力値P1を差し引いた差分が所定値より大きい場合には、第1所定時間TS1が長く、第1圧力値P1が不必要に下がっている可能性がある。そこで制御装置80は、第1所定時間TS1を短くするように補正する。例えば、第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxとなる場合の時間を算定し、この時間に製品ばらつき等を考慮した分の時間を加えて新たな第1所定時間TS1算定する。第2所定時間TS2に関する補正も同様である。制御装置80は、新たに取得した第1所定時間TS1および第2所定時間TS2をメモリに記憶する。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、第1所定時間TS1および第2所定時間TS2を補正により適切な長さに調整することができる。例えば還元剤供給装置10の劣化等により第1所定時間TS1等が変化した場合にも、第1所定時間TS1を補正することにより第1噴射弁61開弁前の圧力PLを最大第1圧力値P1max以下に維持することができる。また、ポンプ40が劣化し、その為、ポンプを交換することにより、ポンプの能力が回復した場合にも、第1所定時間TS1および第2所定時間TS2を補正により適切な長さに調整することができる。したがって、尿素水溶液の回収時において、開弁時に尿素水溶液が排気通路3内に漏れることを防ぎ、NOxセンサの故障として故障診断装置が誤診断するおそれがない還元剤供給装置10を提供することができる。
【0043】
制御装置80は、第1所定時間TS1または第2所定時間TS2を補正した場合には、補正回数をメモリに記憶しておくように構成されていてもよい。例えば、第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxに比べて高い場合に第1所定時間TS1を補正した補正回数を上側第1補正回数NU1とし、最大第1圧力値P1maxから第1圧力値P1を差し引いた差分が所定値より大きい場合に第1所定時間TS1を補正した補正回数を下側第1補正回数NL1とし、第2圧力値P2が、最大第2圧力値P2maxに比べて高い場合に第2所定時間TS2を補正した補正回数を上側第2補正回数NU2とし、最大第2圧力値P2maxから第2圧力値P2を差し引いた差分が所定値より大きい場合に第2所定時間TS2を補正した補正回数を下側第2補正回数NL2として、それぞれカウントし、メモリに記憶しておくように構成されていてもよい。NOxセンサの故障を検出した際の修理にあたって、制御装置80のメモリを参照し、補正回数が多い場合には、NOxセンサの故障ではなく、尿素水溶液の回収時における尿素水溶液の排気通路3内への漏れが原因の一つではないかという推測ができる。また、NOxセンサの故障を検出した際に、これらの補正回数(上側第1補正回数NU1、下側第1補正回数NL1、上側第2補正回数NU2、下側第2補正回数NL2)のそれぞれが所定値を超えている場合、または、これら4つの回数のうち少なくとも2つ回数の合計値が所定値を超えている場合にNOxセンサの故障情報とともに、尿素水溶液の回収時における尿素水溶液の排気通路3内への漏れのおそれがある旨を運転者通知装置82を介して運転者に通知してもよい。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、NOxセンサの故障を検出した際の修理にあたって、補正回数を参照することにより、早期に真の原因をつきとめ、適切な修理をすることができる。
【0045】
<4.フローチャート>
図4は、制御装置80による還元剤供給装置の制御方法の一つである尿素水溶液の回収制御処理の一例を示すフローチャートである。制御装置80は、内燃機関2のイグニッションスイッチ4がオフになったことを検知すると(ステップS10)、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁する(ステップS20)。続いて、尿素水溶液が第1噴射弁61および第2噴射弁62からタンク30方向に向かって流れるようにポンプ40の流れ方向を設定するとともに、ポンプ40の作動を開始する(ステップS30)。
【0046】
続いて、制御装置80は、ポンプ40の作動開始後の時間が第1所定時間TS1に達したか否かを判断し(ステップS40)、第1所定時間TS1に達した場合(YES)にはステップS50に進み、供給通路55内の圧力PLを第1圧力値P1として取得するとともにメモリに記憶し、第1噴射弁61を開弁する。第1所定時間TS1に達していない場合(NO)にはステップS40の判断に戻り、第1所定時間TS1に達するまで繰り返す。第1所定時間TS1の決定方法は上述の通りである。
【0047】
ステップS50において、第1噴射弁61を開弁すると、第1噴射弁61から空気が導入され、第1噴射弁61、第1供給通路51および共通供給通路50内の尿素水溶液がタンク30の方向に移動する。制御装置80は、第1供給通路51内であって分岐部56の近傍まで空気が侵入したか否かを判断する(ステップS60)。ステップS60における判断は、例えば、第1噴射弁61開弁後の時間が所定時間に達したか否かで判断する。第1供給通路51内であって分岐部56の近傍まで空気が侵入したと判断できる場合(YES)には、ステップS70に進み第1噴射弁61を閉弁する。NOの場合には、ステップ60に戻り、YESとなるまで繰り返す。
【0048】
ステップS70の後、ステップS80に進み、制御装置80は、第1噴射弁61の閉弁後の時間が第2所定時間TS2に達したか否かを判断し、第2所定時間TS2に達した場合(YES)にはステップS90に進み、供給通路55内の圧力PLを第2圧力値P2として取得するとともにメモリに記憶し、第2噴射弁62を開弁する。第2所定時間TS2に達していない場合(NO)にはステップS80の判断に戻り、第2所定時間TS2に達するまで繰り返す。第2所定時間TS2の決定方法は上述の通りである。
【0049】
ステップ90の後、ステップS100に進み、制御装置80は、第2噴射弁開弁後の経過時間が第3所定時間TS3に達したか否かを判断する。第3所定時間TS3に達した場合(YES)にはステップ110に進み、ポンプ40の作動を停止し、その後、例えば、2から3秒後に、第2噴射弁62を閉弁する。達していない(NO)場合には、ステップS100の判断に戻り、第3所定時間TS3に達するまで繰り返す。
ステップ110の後、ステップS120に進み、第1所定時間TS1、第2所定時間TS2について評価を行い、本フローを終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、尿素水溶液の回収時において、第1噴射弁61および第2噴射弁62のそれぞれの開弁前に負圧を供給することにより、開弁時の尿素水溶液の排気通路3内への漏れを防ぐことができる。具体的には、第1噴射弁61および第2噴射弁62のそれぞれの開弁前に両方の噴射弁を閉弁するとともにポンプ40を回収方向に作動する第1所定時間TS1および第2所定時間TS2をそれぞれ設けているので、開弁時の尿素水溶液の排気通路3内への漏れを確実に防ぐことができる。したがって、漏れに起因するNOxセンサの故障という誤診断のおそれがない還元剤供給装置10の制御方法を提供することができる。また、第1所定時間TS1および第2所定時間TS2を、それぞれ最小第1所定時間TS1minおよび最小第2所定時間TS2minに基づいて定めているので、回収時間を短くし効率よく尿素水溶液を回収可能な還元剤供給装置10の制御方法を提供することができる。
【0051】
図5は、図4のステップS120における処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御装置80は、ステップS121で、図4のステップS50で取得した第1圧力値P1とステップS90で取得した第2圧力値P2を読み込む。続いて、ステップS122で、制御装置80は、第1圧力値P1が最大第1圧力値P1maxよりも大きいか否かを判断する。第1圧力値P1が最大第1圧力値P1maxよりも大きい場合(YES)にはステップS123に進み、第1圧力値P1が最大第1圧力値P1max以下の場合(NO)にはステップS124に進む。
【0052】
ステップS123で、制御装置80は、第1所定時間TS1が短く、第1圧力値P1が十分下がっていない可能性があるので、第1所定時間TS1を長くするように補正する。例えば、第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxとなる場合の時間を算定し、この時間に製品ばらつき等を考慮した分の時間を加えて新たな第1所定時間TS1算定する。
さらに、制御装置80は、上側第1補正回数NU1に1を加算した新たな上側第1補正回数NU1を算出する。制御装置80は、新たな第1所定時間TS1および新たな上側第1補正回数NU1をメモリに記憶する。ステップS123の後は、ステップS126に進む。
【0053】
ステップS124で、制御装置80は、最大第1圧力値P1maxから第1圧力値P1を差し引いた差分が所定値より大きいか否かを判断する。最大第1圧力値P1maxから第1圧力値P1を差し引いた差分が所定値より大きい場合(YES)には、ステップS125に進み、最大第1圧力値P1maxから第1圧力値P1を差し引いた差分が所定値以下の場合(NO)にはステップS126に進む。
【0054】
ステップS125で、制御装置80は、第1所定時間TS1が長く、第1圧力値P1が不必要に下がっている可能性があるので、第1所定時間TS1を短くするように補正する。例えば、第1圧力値P1が、最大第1圧力値P1maxとなる場合の時間を算定し、この時間に製品ばらつき等を考慮した分の時間を加えて新たな第1所定時間TS1算定する。さらに、制御装置80は、下側第1補正回数NL1に1を加算した新たな下側第1補正回数NL1を算出する。制御装置80は、新たな第1所定時間TS1および新たな下側第1補正回数NL1をメモリに記憶する。ステップS125の後は、ステップS126に進む。
【0055】
ステップS126で、制御装置80は、第2圧力値P2が最大第2圧力値P2maxよりも大きいか否かを判断する。第2圧力値P2が最大第2圧力値P2maxよりも大きい場合(YES)にはステップS127に進み、第2圧力値P2が最大第2圧力値P2max以下の場合(NO)にはステップS128に進む。
【0056】
ステップS127で、制御装置80は、第2所定時間TS2が短く、第2圧力値P2が十分下がっていない可能性があるので、第2所定時間TS2を長くするように補正する。例えば、第2圧力値P2が、最大第2圧力値P2maxとなる場合の時間を算定し、この時間に製品ばらつき等を考慮した分の時間を加えて新たな第2所定時間TS2算定する。
さらに、制御装置80は、上側第2補正回数NU2に1を加算した新たな上側第2補正回数NU2を算出する。制御装置80は、新たな第2所定時間TS2および新たな上側第2補正回数NU2をメモリに記憶し、本フローを終了する。
【0057】
ステップS128で、制御装置80は、最大第2圧力値P2maxから第2圧力値P2を差し引いた差分が所定値より大きいか否かを判断する。最大第2圧力値P2maxから第2圧力値P2を差し引いた差分が所定値より大きい場合(YES)には、ステップS129に進み、最大第1圧力値P1maxから第1圧力値P1を差し引いた差分が所定値以下の場合(NO)には本フローを終了する。
【0058】
ステップS129で、制御装置80は、第2所定時間TS2が長く、第2圧力値P2が不必要に下がっている可能性があるので、第2所定時間TS2を短くするように補正する。例えば、第2圧力値P2が、最大第2圧力値P2maxとなる場合の時間を算定し、この時間に製品ばらつき等を考慮した分の時間を加えて新たな第2所定時間TS2算定する。さらに、制御装置80は、下側第2補正回数NL2に1を加算した新たな下側第2補正回数NL2を算出する。制御装置80は、新たな第2所定時間TS2および新たな下側第2補正回数NL2をメモリに記憶し、本フローを終了する。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、第1所定時間TS1および第2所定時間TS2を補正により適切な長さに調整することができる。例えば還元剤供給装置10の劣化等により第1所定時間TS1等が変化した場合にも、第1所定時間TS1を補正することにより第1噴射弁61開弁前の圧力PLを最大第1圧力値P1max以下に維持することができる。また、ポンプ40が劣化し、その為、ポンプを交換することにより、ポンプの能力が回復した場合にも、第1所定時間TS1および第2所定時間TS2を補正により適切な長さに調整することができる。したがって、尿素水溶液の回収時において、開弁時に尿素水溶液が排気通路3内に漏れることを防ぎ、NOxセンサの故障として故障診断装置が誤診断するおそれがない還元剤供給装置10の制御方法を提供することができる。
【0060】
<5.変形例1、2>
前述の還元剤供給装置10および還元剤供給装置の制御方法は、第1所定時間TS1の間、ポンプ40を回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁することにより、第1噴射弁61内に負圧を供給していたが、変形例1に係る還元剤供給装置10および還元剤供給装置の制御方法は、供給通路55内の圧力PLが第1所定圧力値PS1以下となるまで、ポンプ40を回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁することにより、第1噴射弁61内に負圧を供給する点で異なる。また、前述の還元剤供給装置10および還元剤供給装置の制御方法は、第2所定時間TS2の間、ポンプ40を回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁することにより、第2噴射弁62内に負圧を供給していたが、変形例2に係る還元剤供給装置10および還元剤供給装置の制御方法は、供給通路55内の圧力PLが第2所定圧力値PS2となるまで、ポンプ40を回収方向に作動し、第1噴射弁61および第2噴射弁62を閉弁することにより、第2噴射弁62内に負圧を供給する点で異なる。
【0061】
以上のように、本変形例1,2によれば、尿素水溶液の回収時において、供給通路55内の圧力PLが第1所定圧力値PS1以下となった後に第1噴射弁61を開弁するので、開弁時の尿素水溶液の排気通路3内への漏れを確実に防ぐことができる。したがって、漏れによるNOxセンサの故障として故障診断装置が誤診断するおそれがない。
また、本変形例2によれば、尿素水溶液の回収時において、供給通路55内の圧力PLが第2所定圧力値PS2以下となった後に第2噴射弁62を開弁するので、開弁時の尿素水溶液の排気通路3内への漏れを確実に防ぐことができる。したがって、漏れによるNOxセンサの故障として故障診断装置が誤診断するおそれがない。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1 尿素SCRシステム、2 内燃機関、3 排気通路、10 還元剤供給装置、21 第1還元触媒、22 第2還元触媒、23 酸化触媒、30 タンク、40 ポンプ、50 共通供給通路、51 第1供給通路、52 第2供給通路、55 供給通路、56 分岐部61 第1噴射弁、62 第2噴射弁、70 排気温度センサ、72 NOXセンサ、73 圧力検知手段、74 圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5