IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-パーソナルモビリティ 図1
  • 特許-パーソナルモビリティ 図2
  • 特許-パーソナルモビリティ 図3
  • 特許-パーソナルモビリティ 図4
  • 特許-パーソナルモビリティ 図5
  • 特許-パーソナルモビリティ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】パーソナルモビリティ
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20231113BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20231113BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A61G5/04 701
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020109901
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007145
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-205819(JP,A)
【文献】特開2005-323692(JP,A)
【文献】特開2010-154929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164719(US,A1)
【文献】特開2017-000190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/14
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの移動に用いられるパーソナルモビリティであって、
ユーザが着座する座面と、
前記座面を移動して当該座面の高さと傾きを変更する座面移動手段と、
当該パーソナルモビリティを走行させる走行手段と、
当該パーソナルモビリティの前方のユーザの位置と姿勢を検出するユーザ検出手段と、
制御手段とを有し、
当該制御手段は、
当該パーソナルモビリティの形態が、当該パーソナルモビリティの前方で着座を準備する姿勢である着座準備姿勢をとっているユーザの腿の傾きと前記座面の傾きが一致し、前記座面の高さの範囲が前記着座準備姿勢をとっているユーザの腿の高さの範囲と重なる形態である着座待受形態となるように、前記ユーザ検出手段が検出したユーザの姿勢に基づいて、前記座面移動手段による座面の移動を制御する第1の制御動作と、
前記第1の制御動作の完了後に、当該パーソナルモビリティの形態が、前記着座待受形態から、前記座面が水平となる着座完了形態に遷移するように、前記座面移動手段による座面の移動を制御する第2の制御動作とを行うことを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項2】
請求項1記載のパーソナルモビリティであって、
前記着座完了形態は、前記座面が水平であり、かつ、当該水平な座面の高さが、当該座面に着座したユーザの足が地に付く高さとなる形態であり、
前記制御手段は、前記第2の制御動作において、前記座面の後端が下降するように前記座面が回転して当該座面を水平とするように、前記座面移動手段による座面の移動を制御することを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項3】
請求項2記載のパーソナルモビリティであって、
前記制御手段は、前記第2の制御動作の完了後に、当該座面に着座したユーザの足が地に届かなくなる高さまで前記座面が水平を維持したまま上昇するように、前記座面移動手段による座面の移動を制御する第3の制御動作を行うことを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のパーソナルモビリティであって、
前記着座準備姿勢は、腰をかがめて立っている姿勢であることを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のパーソナルモビリティであって、
前記制御手段は、前記第1の制御動作において、前記着座待受形態にあるパーソナルモビリティの前記座面が、前記着座準備姿勢をとっているユーザの腿の裏に当接するように、前記ユーザ検出手段が検出したユーザの位置と姿勢に基づいて、前記座面移動手段による座面の移動と、前記走行手段による当該パーソナルモビリティの走行とを制御することを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項6】
請求項5記載のパーソナルモビリティであって、
前記座面に加わる圧力を検知する圧力検知手段を有し、
前記制御手段は、前記第2の制御動作において、前記圧力検知手段が検知する圧力が所定の範囲に維持されるように、前記座面移動手段による座面の移動を制御することを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載のパーソナルモビリティであって、
前記制御手段は、前記ユーザ検出手段が、当該パーソナルモビリティの前方の所定距離内に前記着座準備姿勢をとったユーザを検出したときに、前記第1の制御動作を開始することを特徴とするパーソナルモビリティ。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載のパーソナルモビリティであって、
前記ユーザ検出手段は、当該パーソナルモビリティの前方を撮影するカメラと、当該カメラで撮影した映像を解析して当該パーソナルモビリティの前方のユーザの位置と姿勢を認識する認識手段とを有することを特徴とするパーソナルモビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、電動カートや電動式車椅子などのパーソナルモビリティの座席へのユーザの着座や、当該座席からの起立を補助する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
座席へのユーザの着座や、当該座席からの起立を補助する技術としては、座面が所定の高さで水平となる第1の状態と、第1の状態よりも座面の後部が上方に位置し座面の前部が下方に位置した座面が前下がりに傾いた第2の状態の間で座面の状態を遷移可能に構成し、第1の状態の座面に着座したユーザが座席から起立するときには、着座したユーザの操作に応答して、第1の状態から第2の状態に座面の状態を遷移させ、ユーザが座席に着座するときには、着座しようとするユーザの操作に応答して、第2の状態から第1の状態に座面の状態を遷移させる技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、カメラやステレオカメラ(3Dカメラ)で撮影した映像から人物の骨格を検出する骨格検出の技術も知られている(たとえば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-255047号公報
【文献】特開2018-084951号公報
【文献】特開2020-052867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した座面の状態を遷移させることにより座席へのユーザの着座を支援する技術を、パーソナルモビリティの座席に適用した場合、パーソナルモビリティのユーザが筋力の弱った高齢者等である場合、上述の技術のように、座席へのユーザの着座の際に、座面の傾きや高さなどの状態を予め固定的に定めた態様で遷移させるだけでは、着座動作の全体について充分にユーザをサポートできない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、パーソナルモビリティにおいて、よりユーザの負担が小さくなるようにユーザの座席への着座動作をサポートすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、ユーザの移動に用いられるパーソナルモビリティに、ユーザが着座する座面と、前記座面を移動して当該座面の高さと傾きを変更する座面移動手段と、当該パーソナルモビリティを走行させる走行手段と、当該パーソナルモビリティの前方のユーザの位置と姿勢を検出するユーザ検出手段と、制御手段とを設けたものである。ここで、当該制御手段は、当該パーソナルモビリティの形態が、当該パーソナルモビリティの前方で着座を準備する姿勢である着座準備姿勢をとっているユーザの腿の傾きと前記座面の傾きが一致し、前記座面の高さの範囲が前記着座準備姿勢をとっているユーザの腿の高さの範囲と重なる形態である着座待受形態となるように、前記ユーザ検出手段が検出したユーザの姿勢に基づいて、前記座面移動手段による座面の移動を制御する第1の制御動作と、前記第1の制御動作の完了後に、当該パーソナルモビリティの形態が、前記着座待受形態から、前記座面が水平となる着座完了形態に遷移するように、前記座面移動手段による座面の移動を制御する第2の制御動作とを行う。
【0008】
ここで、このようなパーソナルモビリティは、前記着座完了形態を、前記座面が水平であり、かつ、当該水平な座面の高さが、当該座面に着座したユーザの足が地に付く高さとなる形態とし、前記制御手段において、前記第2の制御動作において、前記座面の後端が下降するように前記座面が回転して当該座面を水平とするように、前記座面移動手段による座面の移動を制御するようにしてもよい。
【0009】
また、この場合には、前記制御手段において、前記第2の制御動作の完了後に、当該座面に着座したユーザの足が地に届かなくなる高さまで前記座面が水平を維持したまま上昇するように、前記座面移動手段による座面の移動を制御する第3の制御動作を行うようにしてもよい。
【0010】
ここで、前記着座準備姿勢は、腰をかがめて立っている姿勢とすることが好ましい。
また、以上のパーソナルモビリティは、前記制御手段において、前記第1の制御動作において、前記着座待受形態にあるパーソナルモビリティの前記座面が、前記着座準備姿勢をとっているユーザの腿の裏に当接するように、前記ユーザ検出手段が検出したユーザの位置と姿勢に基づいて、前記座面移動手段による座面の移動と、前記走行手段による当該パーソナルモビリティの走行とを制御するように構成してもよい。
【0011】
また、この場合には、パーソナルモビリティに、前記座面に加わる圧力を検知する圧力検知手段を設け、前記制御手段において、前記第2の制御動作において、前記圧力検知手段が検知する圧力が所定の範囲に維持されるように、前記座面移動手段による座面の移動を制御するようにしてもよい。
【0012】
ここで、以上のパーソナルモビリティは、前記制御手段において、前記ユーザ検出手段が、当該パーソナルモビリティの前方の所定距離内に前記着座準備姿勢をとったユーザを検出したときに、前記第1の制御動作を開始するように構成してもよい。
【0013】
また、以上のパーソナルモビリティにおいて、前記ユーザ検出手段は、当該パーソナルモビリティの前方を撮影するカメラと、当該カメラで撮影した映像を解析して当該パーソナルモビリティの前方のユーザの位置と姿勢を認識する認識手段とを備えたものとしてよい。
【0014】
以上のようなパーソナルモビリティによれば、ユーザが着座を準備する姿勢にあるときから腿の裏を座面で広く支持しながら、ユーザを水平な座面に着座した状態に遷移させることができ、ユーザの座席へのユーザの着座動作の負担が軽減される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、パーソナルモビリティにおいて、よりユーザの負担が小さくなるようにユーザの座席への着座動作をサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るパーソナルモビリティを示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るパーソナルモビリティの機能構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るパーソナルモビリティの基本機能を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る着座支援処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態において検出する姿勢を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る着座支援処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1a、b、cに、本実施形態に係るパーソナルモビリティ100を示す。
図1aはパーソナルモビリティ100の右側面を、図1bはパーソナルモビリティ100の正面を、図1cはパーソナルモビリティ100の上面を表している。
図示するように、本実施形態に係るパーソナルモビリティ100は、ベース1と、ベース1に対して固定された座面2とバックレスト3とアームレスト4を備えている。
また、パーソナルモビリティ100は、左右二つの前脚部5と左右二つの前輪6と左右二つの後脚部7と左右二つの後輪8を備えている。左の前脚部5の上端部はベース1の左側部の前方側の位置に連結され、左の前脚部5の下端部は左の前輪6を支持している。また、右の前脚部5の上端部はベース1の右側部の前方側の位置に連結され、右の前脚部5の下端部は右の前輪6を支持している。そして、左の後脚部7の上端部はベース1の左側部の後方側の位置に連結され、左の後脚部7の下端部は左の後輪8を支持している。また、右の後脚部7の上端部はベース1の右側部の後方側の位置に連結され、右の後脚部7の下端部は右の後輪8を支持している。
【0018】
次に、図2に、パーソナルモビリティ100の機能構成を示す。
図示するように、パーソナルモビリティ100は、カメラ9、距離センサ10、圧力分布センサ11、操作部12、音声出力装置13、音声入力装置14、走行機構15、姿勢可変機構16、制御装置17を備えている。
【0019】
カメラ9は、パーソナルモビリティ100の前方のようすを撮影するものであり、たとえば、図3a、bに示すように、バックレスト3の後ろ斜め上方の位置に前方向を撮影するように配置される。なお、カメラ9としてはステレオカメラ(3Dカメラ)を用いてもよい。
【0020】
操作部12は、パーソナルモビリティ100に搭乗したユーザの操作を受け付けるものであり、操作部12としては、たとえば、図3a、bに示すように、右のアームレスト前端に配置したジョイステックを用いる。
【0021】
次に、距離センサ10は、たとえば、図3bに黒丸で示したように座面2に複数配列され、座面2の接近した物体までの座面2からの距離を検出する。
また、圧力分布センサ11は、図3bに白丸で示した、座面2にマトリクス状に複数配置された圧力センサで構成され、座面2に加わる圧力の分布を検出する。
走行機構15は、図3cに示すように、前輪6もしくは後輪8を回転して、パーソナルモビリティ100を前進させたり後進させたりする機構であり、走行用のモータと、走行用のモータの動力をトルクとして前輪6もしくは後輪8に伝達する動力伝達機構などより構成される。
【0022】
そして、制御装置17は、ユーザの操作部12の操作に応じて、走行機構15にパーソナルモビリティ100の前進や後進を行わせる。
次に、姿勢可変機構16は、座面2の高さや傾きを変化させる機構であり、前脚部5や後脚部7が水平に対して成す角度を変化させるアクチュエータや、バックレスト3やアームレスト4のベース1に対する傾きを変化させるアクチュエータ等から構成される。
【0023】
そして、姿勢可変機構16により、図3dに示すように座面2を上下に昇降することができる。また、姿勢可変機構16により、図3eに示すように、バックレスト3やアームレスト4の傾きを維持したまま、座面2の高さや傾きを変化させることができる。
【0024】
次に、本実施形態において、パーソナルモビリティ100が停車中であって座面2にユーザが着座していないときに制御装置17が行う着座支援処理について説明する。
なお、座面2にユーザが着座していないことの検出は、たとえば、圧力分布センサ11で検出した座面2の圧力分布から求まる座面2に加わる総荷重が、所定のしきい値未満であるときに、座面2にユーザが着座していないことを検出すること等により行う。
【0025】
図4に、この着座支援処理の手順を示す。
図示するように、制御装置17は、着座支援処理において、パーソナルモビリティ100の前方の所定距離内(所定距離は、たとえば1m)に着座準備姿勢をとったユーザが存在するかどうかの判定を、存在すると判定されるまで繰り返す(ステップ402)。
【0026】
ここで、ステップ402では、カメラ9で撮影した映像から、パーソナルモビリティ100の前方所定距離内のユーザの有無、パーソナルモビリティ100の前方所定距離内のユーザの顔の向き、パーソナルモビリティ100の前方所定距離内のユーザの姿勢を画像認識し、パーソナルモビリティ100の前方所定距離内に後方に顔を向け、腰をかがめて立っている姿勢のユーザが存在する場合に、パーソナルモビリティ100の前方の所定距離内に着座準備姿勢をとったユーザが存在すると判定する。ただし、顔の向きに関わらずに、前方所定距離内に腰をかがめて立っている姿勢のユーザが存在する場合に、パーソナルモビリティ100の前方の所定距離内に着座準備姿勢をとったユーザが存在すると判定するようにしてもよい。
【0027】
ここで、腰をかがめて立っている姿勢の検出は、骨格検出技術を用いて、たとえば、図5a、b、cに示す、足首と膝を結ぶ骨格要素L1、膝と腰を結ぶ骨格要素L2、腰と首を結ぶ骨格要素L3、首と頭部を結ぶ骨格要素L4を検出し、各骨格要素の向きからユーザが立っているかどうかを判定すると共に、ユーザの骨格要素L1と骨格要素L2の成す角と、骨格要素L2と骨格要素L3の成す角が所定角度範囲内にあるときにユーザの姿勢が腰をかがめている姿勢であると判定することにより行う。所定角度範囲は、たとえば、120度以上150度未満とする。ただし、骨格要素L1と骨格要素L2の成す角は考慮せずに、立っていると判定されたユーザの骨格要素L2と骨格要素L3の成す角が所定角度範囲内にあれば、腰をかがめて立っている姿勢として検出するようにしてもよい。
【0028】
そして、パーソナルモビリティ100の前方の所定距離内に着座準備姿勢をとったユーザが存在すると判定されたならば(ステップ402)、姿勢可変機構16を制御して、パーソナルモビリティ100の形状を着座待受姿勢に変形し、走行機構15を制御しパーソナルモビリティ100を着座待受位置に移動させる(ステップ404)。
【0029】
ここで、着座待受姿勢とは、バックレスト3やアームレスト4の水平に対する傾きを維持したまま、座面2の傾きを、膝と腰を結ぶ骨格要素L2の傾き、すなわち、腿の傾きに一致する傾きとし、座面2の後端の高さを、骨格要素L2の上端の高さよりも少し上の高さ、すなわち、尻の高さよりも少し上の高さとした姿勢である。
【0030】
また、着座待受位置とは、着座待受姿勢にあるパーソナルモビリティ100の座面2が、ユーザの尻から腿の裏に所定の軽い圧力で押し当てられる位置である。
ここで、着座待受位置への移動は、たとえば、カメラ9で撮影した映像から識別したユーザの位置や姿勢と、距離センサ10で検出される座面2とユーザの距離に応じて、走行機構15によってパーソナルモビリティ100を、ユーザの後方において、座面2がユーザの尻や腿の裏と至近となる位置まで走行させた後、圧力分布センサ11で検出される座面2のユーザの尻や腿の裏に当接する範囲の圧力分布が、所定の軽い圧力の一様な分布となるように、走行機構15によってパーソナルモビリティ100の位置や向きを調整したり、姿勢可変機構16によって座面2の傾きを調整したりすることにより行う。
【0031】
そして、着座待受姿勢のパーソナルモビリティ100を着座待受位置に移動させたならば(ステップ404)、座面2からユーザに加わる圧力分布を所定範囲内の分布に維持しながら、姿勢可変機構16を制御して、パーソナルモビリティ100の形状を着席完了姿勢に変形させる(ステップ406)。
【0032】
ここで、着席完了姿勢とは、着座待受姿勢から、バックレスト3やアームレスト4の水平に対する傾きを維持したまま、座面2の前端を左右に通る軸を回転軸として、座面2の後端が下降する回転方向に、座面2を水平となるまで回転させた姿勢である。
【0033】
また、座面2からユーザに加わる圧力分布の所定範囲内の分布への維持は、圧力分布センサ11で検出される座面2のユーザの尻や腿の裏に当接する範囲の圧力分布が、おおよそ一様となり、かつ、圧力分布センサ11で検出した座面2の圧力分布から求まる座面2に加わる総荷重が所定の範囲内となるように、パーソナルモビリティ100の位置や座面2の傾きや変形の速度を微調整することにより行う。なお、座面2に加わる総荷重が所定の範囲内となるようにするのは、ユーザの尻や腿の裏を座面2から反力を与えて支持しつつ、座面2が尻や腿の裏から離れてしまうことを抑止するためである。
【0034】
そして、このようにしてパーソナルモビリティ100を着席完了姿勢に変形したならば(ステップ406)、ユーザの着座の完了を判定する(ステップ408)。
このステップ408では、圧力分布センサ11で検出した座面2の圧力分布の重心が安定的に座面2の内側部分にあるときに、ユーザが座面2にしっかりと着座したものと見なして、着座の完了を判定する。
【0035】
そして、ユーザの着座が完了したと判定されたならば(ステップ408)、姿勢可変機構16を制御して、パーソナルモビリティ100の形状を標準姿勢に変形し(ステップ410)、着座支援処理を終了する。
【0036】
ここで、標準姿勢とは、パーソナルモビリティ100の走行時に用いられる形状であり、着席完了姿勢から座面2を水平を維持したまま上方に移動した姿勢であり、標準姿勢のときの座面2の高さは、座面2に着座したユーザの足は床面(路面)から離れる高さに設定されている。
【0037】
以上、制御装置17が行う着座支援処理について説明した。
次に、このような着座支援処理の処理例を図6に示す。
図6aに示すように、ユーザがパーソナルモビリティ100に座ろうと、パーソナルモビリティ100の前方で後方のパーソナルモビリティ100に顔を向けながら腰をかがめると、これを検出したパーソナルモビリティ100は、図6b、cに示すように、着座待受姿勢に変形して移動し、腿の傾きに一致する傾きとした座面2をユーザの尻から腿の裏に軽い圧力で押し当てる。
【0038】
そして、その後、図6d、e、fに示すように、パーソナルモビリティ100は、座面2からユーザに加わる圧力分布を所定範囲内の分布に維持しながら、座面2を後部が下降するように回転して、座面2が水平となる着席完了姿勢に変形する。
【0039】
ここで、この変形に伴って、ユーザは、座面2のサポートを受けながら着座動作を行って、水平な座面2に着座した状態に移行することができる。
そして、ユーザの座面2への着座状態が安定したなら、パーソナルモビリティ100において、圧力分布センサ11で検出した座面2の圧力分布より着座の完了が検出され、パーソナルモビリティ100は、図6g、hに示すように、座面2を水平を維持したまま上方に移動して標準姿勢に遷移する。
【0040】
ここで、図6hに示すように、標準姿勢では、座面2に着座したユーザの足が床面(路面)から離れ、パーソナルモビリティ100の走行が可能となる。

以上、着座支援処理の処理例について説明した。
このように着座支援処理によれば、ユーザが着座を準備する姿勢にあるときから腿の裏を座面2で広く支持しながら、ユーザを水平な座面2に着座した状態に遷移させることができ、ユーザの座席への着座動作の負担を軽減することができる。
【0041】
ところで、以上の着座支援処理は、ステップ404でパーソナルモビリティ100を移動させる着座待受位置は、座面2がユーザの尻から腿の裏に所定の軽い圧力で押し当てられる位置ではなく、ユーザの後方において座面2がユーザの尻や腿の裏と至近となる位置としてもよい。ただし、この場合には、ステップ404実行後に、ユーザの尻や腿の裏が座面2に所定程度の圧力で当接するのを待ってから、ステップ406のパーソナルモビリティ100の形状の着席完了姿勢への変形を開始するようにする。ここで、この所定程度の圧力での当接は、当接圧力分布センサ11で検出することができる。
【0042】
また、以上の着座支援処理では、ステップ402でパーソナルモビリティ100の前方の所定距離内に着座準備姿勢をとったユーザの存在の有無を判定し、存在するときにステップ404以降の処理に進んだが、ステップ402は、たとえば「座らせて」といったような着座補助の指示を表す音声入力を音声入力装置14で受け付けたときに、ステップ404以降の処理に進むものとしてもよい。
【0043】
次に、制御装置17が、座面2にユーザが着座しているときに制御装置17が行う起立支援処理について説明する。
起立支援処理では、たとえば「立たせて」といったような起立補助の指示を表す音声入力を音声入力装置14で受け付けたならば、パーソナルモビリティ100が走行中で有る場合には走行機構15を制御して走行を停止した上で、姿勢可変機構16を制御してパーソナルモビリティ100の形状を図6hに示す標準姿勢から、図6gに示す着席完了姿勢に変形させる。
【0044】
また、次に、姿勢可変機構16を制御して、図6f、e、d、cのように、パーソナルモビリティ100の形状を着座待受姿勢に変形させることによりユーザの起立を補助する。
そして、その後、圧力分布センサ11で検出した座面2の圧力分布より、ユーザが座面2から完全に離れたことが検出されたならば、パーソナルモビリティ100の形状を標準姿勢に復帰し起立支援処理を終了する。
以上、本発明の実施形態について説明した。
【符号の説明】
【0045】
1…ベース、2…座面、3…バックレスト、4…アームレスト、5…前脚部、6…前輪、7…後脚部、8…後輪、9…カメラ、10…距離センサ、11…圧力分布センサ、12…操作部、13…音声出力装置、14…音声入力装置、15…走行機構、16…姿勢可変機構、17…制御装置、100…パーソナルモビリティ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6