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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20231113BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20231113BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20231113BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H05B3/02 B
H05B3/74
H05B3/10 A
H01L21/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020111533
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010794
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和孝
(72)【発明者】
【氏名】駒津 貴久
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-4946(JP,A)
【文献】特開2015-18704(JP,A)
【文献】特開2018-56332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
H05B 3/74
H05B 3/10
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対方向に設けられる第2の面とを備える板状部材と、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向と略直交する平面上に配置される第1発熱抵抗体と、
前記第1発熱抵抗体における一方の端部と前記第1の方向に延びる接続部材を介して接続される、前記第1の方向と略直交する第2の方向に延びるドライバ電極と、
前記板状部材の前記第2の面に形成されたキャビティの底面に設置されて前記ドライバ電極と接続部材を介して接続された端子パッドと、を備え、
前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1発熱抵抗体は、前記第1の方向から見たときに、前記端子パッドの配置領域以外に配置され、前記第1の方向にて、前記端子パッドより前記第2の面側に配置され、
前記ドライバ電極は、前記第1の方向にて、前記第1発熱抵抗体より前記第1の面側に配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載する保持装置において、
前記板状部材の前記第2の面に接続された筒状の支持部材と、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向にて前記端子パッドより前記第1の面側に配置される第2発熱抵抗体と、を有し、
前記第1の方向から見たときに、
前記第1発熱抵抗体は、前記支持部材の外側に位置し、
前記第2発熱抵抗体の少なくとも一部は、前記支持部材の内側に位置している
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する保持装置において、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向から見たときに、前記板状部材の周縁部に位置する第3発熱抵抗体を有し、
前記第3発熱抵抗体は、前記第1の方向にて前記第1発熱抵抗体より前記第1の面側に配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項2に記載する保持装置において、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向から見たときに、前記支持部材の外側に位置する第4発熱抵抗体を有し、
前記第4発熱抵抗体は、
前記第2の方向にて、前記第1発熱抵抗体よりも前記支持部材側に位置し、
前記第1の方向にて、前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体の間に配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項2に記載する保持装置において、
前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体とは、前記支持部材の周辺にて、前記第1の方向にて重複するように配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持装置に関する従来技術として、例えば、特許文献1に、セラミック基体の内部に発熱抵抗体が同一の平面に配置されている保持装置が開示されている。この種の保持装置では、対象物(例えば、半導体ウエハ等)が保持装置の上面の保持面に配置され、対象物に対して各種処理が行われる。
【0003】
ここで、保持装置では、一般的に、対象物の保持面における温度均一性が要求されている。温度が均一でないと対象物に熱ひずみ等が発生し、対象物に対する各種処理を高精度に行うことができなくなるからである。そのため、保持装置には、発熱抵抗体を同一の平面上に配置することにより、保持面を均一に加熱するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6084906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の保持装置に備わる発熱抵抗体は、平面視で螺旋(又は円環)状に配置されるため、保持面において、直下に発熱抵抗体が存在する部位と、直下に発熱抵抗体が存在しない部位とで温度差が生じてしまい、均熱性が低下してしまう。ここで、発熱抵抗体の発熱は、セラミック基体の内部の熱伝導により伝熱されて保持面が加熱されるが、その伝熱量は発熱抵抗体から保持面までの直線距離に反比例する。すなわち、発熱抵抗体から保持面までの直線距離は、直下に発熱抵抗体が存在する部位よりも、直下に発熱抵抗体が存在しない部位の方が相対的に長くなる。そのため、保持面において、直下に発熱抵抗体が存在する部位の方が、直下に発熱抵抗体が存在しない部位よりも伝熱量が相対的に大きくなる。その結果として、保持面において、直下に発熱抵抗体が存在する部位と直下に発熱抵抗体が存在しない部位とで温度差が生じるのである。そして、発熱抵抗体から保持面までの距離が近くなるほど、セラミック基体の内部において径方向へ熱移動(熱拡散)が少なくなるため、この温度差が大きくなって均熱性が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、対象物を保持する保持面における均熱性を向上させることができる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対方向に設けられる第2の面とを備える板状部材と、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向と略直交する平面上に配置される第1発熱抵抗体と、
前記第1発熱抵抗体における一方の端部と前記第1の方向に延びる接続部材を介して接続される、前記第1の方向と略直交する第2の方向に延びるドライバ電極と、
前記板状部材の前記第2の面に形成されたキャビティの底面に設置されて前記ドライバ電極と接続部材を介して接続された端子パッドと、を備え、
前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記第1発熱抵抗体は、前記第1の方向から見たときに、前記端子パッドの配置領域以外に配置され、前記第1の方向にて、前記端子パッドより前記第2の面側に配置され、
前記ドライバ電極は、前記第1の方向にて、前記第1発熱抵抗体より前記第1の面側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
この保持装置では、第1発熱抵抗体が、第1の方向から見たときに、端子パッドの配置領域以外に配置され、第1の方向にて、端子パッドより第2の面側に配置されている。これにより、第1発熱抵抗体は、従来の保持装置と比べて、板状部材の第1の面(保持面)から離して配置することができる。そのため、直下に発熱抵抗体が存在する部位と直下に発熱抵抗体が存在しない部位とで、第1発熱抵抗体から第1の面までの直線距離の差が小さくなるとともに、第2の方向への熱の拡散が促進される。従って、第1の面において、直下に第1発熱抵抗体が存在する部位と、直下に第1発熱抵抗体が存在しない部位との温度差が小さくなるため、第1の面における均熱性を向上させることができる。
【0009】
また、ドライバ電極が、第1発熱抵抗体より第1の面側に配置されている。つまり、ドライバ電極が、第1発熱抵抗体と第1の面との間に配置されている。そして、ドライバ電極は、第2の方向に延びている。そのため、第1発熱抵抗体での発熱が、ドライバ電極により第2の方向へ拡散されて第1の面へと伝熱される。従って、第1の面における均熱性をより向上させることができる。
【0010】
上記した保持装置において、
前記板状部材の前記第2の面に接続された筒状の支持部材と、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向にて前記端子パッドより前記第1の面側に配置される第2発熱抵抗体と、を有し、
前記第1の方向から見たときに、
前記第1発熱抵抗体は、前記支持部材の外側に位置し、
前記第2発熱抵抗体の少なくとも一部は、前記支持部材の内側に位置していることが好ましい。
【0011】
この保持装置では、板状部材の第2の面に接続された筒状の支持部材を有している。そのため、板状部材から支持部材への熱移動が発生するため、第1の面において、支持部材の内側が外側より温度が低くなってしまう。
【0012】
そこで、この保持装置では、第1の方向から見たときに、第2発熱抵抗体を、端子パッドより第1の面側に配置し、その少なくとも一部を支持部材の内側に配置している。つまり、第2発熱抵抗体の少なくとも一部が、第1の方向から見たときに、支持部材の外周面より内側に配置されている。これにより、第1の方向から見たときに、板状部材において支持部材の内側では、第2発熱抵抗体の発熱によって支持部材への熱移動を抑制しつつ第1の面を効率良く加熱することができる。その結果、板状部材において、支持部材の内側の温度を、支持部材の外側の温度と等しくすることができる。そして、第1の方向から見たときに、板状部材において支持部材の外側では、上記のように第1発熱抵抗体によって均一に加熱される。従って、支持部材を有する保持装置であっても、第1の面における均熱性を向上させることができる。
【0013】
上記した保持装置において、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向から見たときに、前記板状部材の周縁部に位置する第3発熱抵抗体を有し、
前記第3発熱抵抗体は、前記第1の方向にて前記第1発熱抵抗体より前記第1の面側に配置されていることが好ましい。
【0014】
このようにすることにより、第1の面において、他の領域よりも温度が低くなり易い板状部材の周縁部を、第3発熱抵抗体により効率的に加熱することができる。よって、第1の面における均熱性を向上させることができる。
【0015】
上記した保持装置において、
前記板状部材の内部に設けられ、前記第1の方向から見たときに、前記支持部材の外側に位置する第4発熱抵抗体を有し、
前記第4発熱抵抗体は、
前記第2の方向にて、前記第1発熱抵抗体よりも前記支持部材側に位置し、
前記第1の方向にて、前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体の間に配置されていることが好ましい。
【0016】
ここで、支持部材を有する保持装置では、第1発熱抵抗体を第1の面から離して配置すると、支持部材の近傍では、第1発熱抵抗体で生じる熱の多くが支持部材へ移動してしまう。そのため、支持部材の近傍では、第1発熱抵抗体から第1の面への伝熱量が他の部位よりも少なくなる。
【0017】
そこで、この保持装置では、支持部材の近傍に、つまり、第1の方向から見たときに、支持部材の外側であって、第1の方向に直交する第2の方向にて、第1発熱抵抗体よりも支持部材側に第4発熱抵抗体を配置している。そして、この第4発熱抵抗体は、第1の方向にて、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体の間に配置されている。つまり、支持部材の近傍に位置する第4発熱抵抗体が、支持部材から離されて配置されている。そのため、支持部材の近傍において、第4発熱抵抗体の発熱によって、板状部材から支持部材への熱移動が抑制されて第1の面を効率良く加熱される。従って、支持部材を有する保持装置であっても、第1の面において、支持部材近傍領域の温度低下を抑制することができるため、第1の面における均熱性を向上させることができる。
【0018】
上記した保持装置において、
前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体とは、前記支持部材の周辺にて、前記第1の方向にて重複するように配置されていることが好ましい。
【0019】
こうすることにより、板状部材において、支持部材周辺における発熱量を増加させることができる。そのため、支持部材周辺において、第1発熱抵抗体及び第2発熱抵抗体から支持部材への熱移動を抑制しつつ第1の面への熱移動を促進することができる。従って、第1の面において、支持部材周辺の部位を効率的に加熱することができる。その結果、支持部材を有する保持装置であっても、第1の面において、支持部材周辺領域の温度低下を抑制することができるため、第1の面における均熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、対象物を保持する保持面における均熱性を向上させることができる保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の保持装置の概略斜視図である。
図2】半導体製造装置内に設置された保持装置の概略構成図である。
図3】第1実施形態の保持装置の内部構成を示す断面図である。
図4】各発熱熱抵抗体及び各ドライバ電極の配置位置を示す図である。
図5】第2実施形態の保持装置の内部構成を示す断面図である。
図6】第3実施形態の保持装置の内部構成を示す断面図である。
図7】第4実施形態の保持装置の内部構成を示す断面図である。
図8】第5実施形態の保持装置の内部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示に係る実施形態である保持装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置に使用される保持装置を例示する。
【0023】
[第1実施形態]
第1実施形態の保持装置1は、図1図3に示すように、板状部材10と、支持部材40とを有し、チャンバ70内に設置される。以下の説明においては、説明の便宜上、図1に示すようにXYZ軸を定義するものとする。ここで、Z軸は保持装置1の軸方向(図1の上下方向)の軸であり、X軸とY軸は保持装置1の径方向の軸である。なお、Z軸方向は、本開示の「第1の方向」の一例であり、X軸又はY軸方向(径方向)は、本開示の「第2の方向」の一例である。
【0024】
板状部材10は、Z軸方向(上下方向)に略直交する一の表面(以下、「保持面」という)11と、保持面11とは反対側の表面(以下、「裏面」という)12とを備える略円板状の部材である。板状部材10は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス焼結体により形成されている。板状部材10の直径は、例えば、100~500mm程度であり、板状部材10の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、3~30mm程度である。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。また、保持面11は本開示の「第1の面」の一例であり、裏面12は本開示の「第2の面」の一例である。
【0025】
板状部材10の裏面12には、一対の端子パッド30に対応する一対のキャビティ21が形成され、各端子パッド30に対してそれぞれ棒状の給電端子41が接続されている。給電端子41は外部電源に接続されている。端子パッド30及びキャビティ21は、Z軸方向視で、後述する内側領域Ainに配置されている。なお、本実施形態では、例えば、2組の一対の端子パッド30及びキャビティ21を備えている。各端子パッド30は、例えば、Z軸方向視で略円形の板状部材であり、タングステンやモリブテン等の導電性材料により形成されており、その厚さは、例えば、0.02~5mm程度である。また、給電端子41は、ニッケルやチタン等の導電性材料により形成されており、その直径は、例えば、3~8mm程度である。また、キャビティ21のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状は、例えば略円形である。
【0026】
このような板状部材10の内部には、図2図3に示すように、板状部材10を加熱するヒータとしての発熱抵抗体50が配置されている。本実施形態では、発熱抵抗体50として、第1発熱抵抗体50aと第2発熱抵抗体50bとを備えている。そして、Z軸方向視で、第2発熱抵抗体50bは、板状部材10の中心付近で、支持部材40の内側(内周側)に位置する内側領域Ainに配置されており、第1発熱抵抗体50aは、支持部材40の外側(外周側)に位置する外側領域Aoutに配置されている。
【0027】
本実施形態では、内側領域Ainに端子パッド30が配置されており、外側領域Aoutには端子パッド30は配置されていない。つまり、外側領域Aoutに配置されている第1発熱抵抗体50aは、端子パッド30の配置領域外に配置されていることになる。そして、第2発熱抵抗体50bの全部が、内側領域Ainに配置されている。本開示において、支持部材40の内側とは支持部材40の外周面より内側を意味し、支持部材40の外側とは支持部材40の外周面より外側を意味する。なお、内側領域AinのZ軸方向視での形状は、略円形であり、外側領域AoutのZ軸方向視での形状は、略環状である。
【0028】
そして、第1発熱抵抗体50aと第2発熱抵抗体50bとは、Z軸方向で異なる位置に配置されている。すなわち、Z軸方向と略直交する別々の仮想平面(XY平面)上に配置されている。より詳細には、Z軸方向にて、第1発熱抵抗体50aは端子パッド30より裏面12側に配置され、第2発熱抵抗体50bは端子パッド30より保持面11側に配置されている。
【0029】
各発熱抵抗体50は、Z軸方向視で、線状の抵抗発熱体であるヒータライン部51と、ヒータライン部51の両端部に接続されたヒータパッド部52とを有している。これらのヒータライン部51及びヒータパッド部52は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブテン、白金など)により形成されている。そして、各発熱抵抗体50は、例えば、Z軸方向視で略螺旋状に延びるパターンを構成しており、発熱抵抗体50の線幅は、例えば、0.1~10mm程度、発熱抵抗体50の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、0.02~3mm程度である。
【0030】
また、板状部材10の内部には、発熱抵抗体50への給電を行うためのドライバ電極28が配置されている。ドライバ電極28は、Z軸方向に略直交する仮想的な平面(XY平面)上に配置され、4つのドライバ電極28a~28dを備えており、径方向へ延びる形状の導体パターンであって、導電性材料(例えば、タングステン、モリブテン、白金など)により形成されている。このようなドライバ電極28は、板状部材10の内部において、第1発熱抵抗体50aと第2発熱抵抗体50bとの間に配置されている。すなわち、ドライバ電極28は、Z軸方向にて、第1発熱抵抗体50aより保持面11側に配置され、第2発熱抵抗体50bよりも裏面12側に配置されている。
【0031】
各ドライバ電極28(28a~28d)は、図4に示すように、Z軸方向視で板状部材10を、ドライバ電極28a~28dの数分(本実施形態では4つ)に分割して形成される領域(本実施形態では4つの領域)のそれぞれに配置されている。各ドライバ電極28a~28dのZ軸方向視の形状は、略扇状であり、短絡防止のため、所定の間隔をあけて配置されている。本実施形態では、ドライバ電極28a,28bが第1発熱抵抗体50aに電気的に接続され、ドライバ電極28c,28dが第2発熱抵抗体50bに電気的に接続される。
【0032】
具体的には、ドライバ電極28aと第1発熱抵抗体50aのヒータパッド部52の一方とが、Z軸方向に延びるビア29aを介して電気的に接続され、ドライバ電極28bと第1発熱抵抗体50aのヒータパッド部52の他方とが、別のビア29aを介して電気的に接続されている。そして、ドライバ電極28a,28bのそれぞれは、Z軸方向に延びる個別のビア29cを介して個別の端子パッド30に電気的に接続されている。これにより、第1発熱抵抗体50aは、ビア29a、ドライバ電極28a,28b、ビア29c、及び端子パッド30を介して給電端子41と電気的に接続される。
【0033】
また、ドライバ電極28cと第2発熱抵抗体50bのヒータパッド部52の一方とが、Z軸方向に延びるビア29bを介して電気的に接続され、ドライバ電極28dと第2発熱抵抗体50bのヒータパッド部52の他方とが、別のビア29bを介して電気的に接続されている。そして、ドライバ電極28c,28dのそれぞれは、Z軸方向に延びるビア個別の29cを介して個別の端子パッド30に電気的に接続されている。これにより、第2発熱抵抗体50bは、ビア29b、ドライバ電極28c,28d、ビア29c、及び端子パッド30を介して給電端子41と電気的に接続される。
【0034】
支持部材40は、図1図3に示すように、Z軸方向に延びる略円環状の部材である。支持部材40は、例えば、窒化アルミニウムやアルミナ(Al)を主成分とするセラミックス焼結体により形成されている。支持部材40の高さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、100~300mm程度である。また、支持部材40の内径は、例えば、10~70mm程度である。この支持部材40の内側(内周側)に、給電端子41が収容されている。なお、保持装置1の使用時には、この支持部材40の内部(内周部)は、大気圧雰囲気に晒されている。
【0035】
そして、板状部材10と支持部材40とは、板状部材10の裏面12と支持部材40の上面とがZ軸方向に互いに対向するように、かつ、板状部材10と支持部材40とが互いに略同軸となるように配置されている。これら板状部材10と支持部材40とは、公知の接合材料により接合されている。
【0036】
このような保持装置1において、外部電源から各給電端子41と各端子パッド30を介して、第1発熱抵抗体50a及び第2発熱抵抗体50bのそれぞれに電圧が印加されると、第1発熱抵抗体50a及び第2発熱抵抗体50bが発熱する。この発熱により、板状部材10の保持面11が加熱され、板状部材10の保持面11上に保持された対象物(例えば、半導体ウエハW)が所定の温度(例えば、400~800℃程度)に加熱される。
【0037】
ここで、本実施形態の保持装置1では、第1発熱抵抗体50aが、第1の方向から見たときに、外側領域Aout、つまり端子パッド30の配置領域以外に配置され、Z軸方向にて、端子パッド30より裏面12側に配置されている。これにより、第1発熱抵抗体50aを、従来の保持装置と比べて、板状部材10の保持面11から離して配置することができる。そのため、保持面11において、第1発熱抵抗体50aが、直下に存在する部位と直下に存在しない部位とで、第1発熱抵抗体50aから保持面11までの直線距離の差が小さくなるとともに、径方向への熱の拡散が促進される。従って、保持面11において、第1発熱抵抗体50aが、直下に存在する部位と直下に存在しない部位との温度差が小さくなるため、保持面11における均熱性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態の保持装置1では、ドライバ電極28a~28dが、第1発熱抵抗体50aより保持面11側に配置されている。つまり、ドライバ電極28a~28dが、第1発熱抵抗体50aと保持面11との間に配置されている。そして、28a~28dは、径方向に延びる略扇状であるため、第1発熱抵抗体50aでの発熱が、ドライバ電極28a~28dにより径方向へ拡散されて保持面11へと伝熱される。従って、保持面11における均熱性をより向上させることができる。
【0039】
そして、本実施形態の保持装置1では、一部が大気圧雰囲気に晒される支持部材40を有しているため、板状部材10から支持部材40への熱移動が発生する。そのため、保持面11において、内側領域Ainの温度が外側領域Aoutの温度より低くなってしまうおそれがある。
【0040】
ところが、本実施形態の保持装置1では、Z軸方向視で、第2発熱抵抗体50bが、端子パッド30より保持面11側で、内側領域Ainに配置されている。つまり、第2発熱抵抗体50bが、Z軸方向視で、支持部材40の外周面より内側に配置されている。そのため、Z軸方向視で、板状部材10において内側領域Ainでは、第2発熱抵抗体50bの発熱によって支持部材40への熱移動を抑制しつつ保持面11を効率良く加熱することができる。これにより、板状部材10において、内側領域Ainの温度を、外側領域Aoutの温度と等しくすることができる。そして、上記のように、外側領域Aoutは、第1発熱抵抗体50aによって均一に加熱される。従って、支持部材40を有する保持装置1であっても、保持面11における均熱性を向上させることができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、支持部材を備えていない点が第1実施形態とは異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0042】
本実施形態の保持装置1aでは、図5に示すように、第1発熱抵抗体50aが、Z軸方向視で端子パッド30の配置領域以外に配置されており、第1実施形態と比較して、保持面11から離して配置される第1発熱抵抗体50aをより広範囲に設置することができる。従って、保持面11における均熱性をより向上させることができる。なお、本実施形態では、支持部材が存在しないため、板状部材10から外部(支持部材)への熱移動がほとんどなくなるため、第2発熱抵抗体50bの発熱量を、第1実施形態よりも小さくする必要がある。
【0043】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同じであるが、第3発熱抵抗体を更に備えている点が第1実施形態とは異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
ここで、板状部材10の保持面11において、周縁部22の温度は、その他の領域の温度よりも低くなり易い。保持面11の周縁部22では、保持面11を加熱するための第1発熱抵抗体50aからの伝熱量が、その他の領域に比べて少なくなっているからである。
【0045】
そこで、本実施形態の保持装置1bは、図6に示すように、発熱抵抗体50として、第1発熱抵抗体50a、第2発熱抵抗体50bの他に、第3発熱抵抗体50cを備えている。この第3発熱抵抗体50cは、Z軸方向視で、板状部材10の周縁部22に配置されている。また、第3発熱抵抗体50cは、Z軸方向にて、第1発熱抵抗体50aより保持面11側に配置されている。このような第3発熱抵抗体50cは、ビア59aを介して第1発熱抵抗体50aと電気的に接続されている。これにより、第1発熱抵抗体50aに電圧が印加されると、第3発熱抵抗体50cにも電圧が印加されて発熱するようになっている。なお、本実施形態では、第3発熱抵抗体50cを第1発熱抵抗体50aに電気的に接続しているが、ドライバ電極28a,28bに電気的に接続してもよい。そして、本実施形態では、第3発熱抵抗体50cと保持面11との距離が、第1発熱抵抗体50aと保持面11との距離より小さくなっているので、第1実施形態と比べて、保持面11の周縁部22への伝熱量が大きくなる。
【0046】
このように本実施形態の保持装置1bでは、保持面11において、他の領域よりも温度が低くなり易い周縁部22を、保持面11に近づけて配置した第3発熱抵抗体50cにより効率的に加熱することができる。そのため、第1発熱抵抗体50aから保持面11の周縁部22への伝熱量の減少分を、第3発熱抵抗体50cからの伝熱量で補完することができるので、保持面11における均熱性を向上させることができる。
【0047】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同じであるが、第4発熱抵抗体を更に備えている点が第1実施形態とは異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
ここで、支持部材40を備える場合、板状部材10から支持部材40への熱移動は、支持部材40と板状部材10との接合部を介して生じる。そのため、第1発熱抵抗体50aの最も内側に位置する部位での発熱の多くが、板状部材10から支持部材40へと熱移動して、保持面11への伝熱量が少なくなる。
【0049】
そこで、本実施形態の保持装置1cは、図7に示すように、発熱抵抗体50として、第1発熱抵抗体50a、第2発熱抵抗体50bの他に、第4発熱抵抗体50dを備えている。この第4発熱抵抗体50dは、Z軸方向視で、支持部材40の外側(本実施形態では、支持部材40の外周近傍)に配置されている。また、第4発熱抵抗体50dは、径方向にて、第1発熱抵抗体50aよりも支持部材40側(内周側)に位置し、Z軸方向にて、第1発熱抵抗体50aと第2発熱抵抗体50bとの間に配置されている。つまり、支持部材40の外側近傍に位置する第4発熱抵抗体50dが、支持部材40から離されて配置されている。このような第4発熱抵抗体50dは、ビア59bを介してドライバ電極28a,28bに電気的に接続されている。これにより、第1発熱抵抗体50aに電圧が印加される際に、第4発熱抵抗体50dにも電圧が印加されて発熱するようになっている。
【0050】
このように本実施形態の保持装置1cでは、支持部材40の外側近傍に位置する第4発熱抵抗体50dが、支持部材40から離されて配置されている。そのため、保持面11において、支持部材40の近傍が、第4発熱抵抗体50dの発熱によって効率良く加熱される。これにより、支持部材40を有する場合であっても、保持面11において、支持部材40の近傍領域の温度低下を抑制することができるため、保持面11における均熱性を向上させることができる。
【0051】
[第5実施形態]
最後に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第1実施形態と基本的な構成は同じであるが、第2発熱抵抗体50bを外側領域Aoutにも配置している点が第1実施形態とは異なる。そこで、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0052】
本実施形態の保持装置1dでは、図8に示すように、支持部材40の周辺にて、第1発熱抵抗体50aと第2発熱抵抗体50bとが、Z軸方向で重複するように配置されている。つまり、第2発熱抵抗体50bは、大部分が内側領域Ainに配置されているが、一部(螺旋パターンの外周部分)が外側領域Aoutに配置されている。そして、第2発熱抵抗体50bのうち外側領域Aoutに配置されている部分が、第1発熱抵抗体50aとZ軸方向で重複している。
【0053】
従って、本実施形態の保持装置1dによれば、板状部材10において、支持部材40周辺における発熱量を増加させることができる。そのため、支持部材10周辺において、第1発熱抵抗体50aの発熱が、支持部材40へ熱移動して保持面11への伝熱量が減少する分を、外側領域Aoutに配置された第2発熱抵抗体50bの発熱により補完することができる。そのため、保持面11において、支持部材40周辺の部位を効率的に加熱することができる。これにより、支持部材40を有する場合であっても、保持面11において、支持部材40周辺領域の温度低下を抑制することができるため、保持面11における均熱性を向上させることができる。
【0054】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、発熱抵抗体50の配置パターンとして、2ゾーンパターンを例示しているが、発熱抵抗体50の配置パターンは2ゾーン以上のパターン(3ゾーンパターンや4ゾーンパターン等)であってもよい。そして、発熱抵抗体50の配置パターンに応じて必要となる数のドライバ電極を設ければよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ビア29a~29c,59a,59bとして、1本のビアを設けた場合を例示しているが、複数本のビアを設けることもできる。複数本のビアを設けることにより、1本のビアが断線したとしても導通を確保することができるため信頼性が向上する。
【0056】
また、上記の実施形態では、本開示の接続部材として、ビア29(29a~29c)を例示しているが、ビアの他に、例えば金属棒(成型体)を埋め込んで内部接続を行う金属系端子等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 保持装置
10 板状部材
11 保持面(第1の面)
12 裏面(第2の面)
21 キャビティ
22 周縁部
28 ドライバ電極
29 ビア(接続部材)
30 端子パッド
40 支持部材
41 給電端子
50 発熱抵抗体
50a 第1発熱抵抗体
50b 第2発熱抵抗体
50c 第3発熱抵抗体
50d 第4発熱抵抗体
Ain 内側領域
Aout 外側領域
W ウエハ(対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8