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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/32 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
H01T13/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020126222
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023347
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】若園 零二
(72)【発明者】
【氏名】上野 加奈子
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-038531(JP,U)
【文献】特開2019-083140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、前記中心電極を絶縁保持し軸線に沿って延びる筒状の主体金具と、前記主体金具に接続される接地電極と、を備えるスパークプラグであって、
前記接地電極は、前記主体金具に接続し前記軸線方向に延びる基端部と、
前記基端部に連なり前記軸線に向かって湾曲する湾曲部と、
前記湾曲部に連なり前記中心電極の先端部と一部が対向する対向部と、を備え、
前記湾曲部は、前記中心電極の側を向き凹状に湾曲する第1面と、前記第1面の反対側に位置し凸状に湾曲する第2面と、を有し、
前記第1面から前記第2面へ向かって凹む凹部が、前記第1面に設けられ
前記凹部は、前記湾曲部のみに設けられているスパークプラグ。
【請求項2】
前記凹部は、前記凹部の内面の少なくとも一部が互いに接触する請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記凹部は、前記凹部の内面が開放されている請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記凹部の深さは、前記凹部の深さ方向における前記凹部の底と前記第2面との間の前記湾曲部の厚さよりも浅い請求項1から3のいずれかに記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関のスパークプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心電極と接地電極との間(火花ギャップ)に放電を生じるスパークプラグにおいて、直角に折れ曲がる接地電極と中心電極とが対向する部分を火花ギャップとする技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-83140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、直角に折り曲げられた接地電極の残留応力が開放されるスプリングバックが生じると、火花ギャップが大きくなるという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、火花ギャップの変化を低減できるスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、中心電極と、中心電極を絶縁保持し軸線に沿って延びる筒状の主体金具と、主体金具に接続される接地電極と、を備える。接地電極は、主体金具に接続し軸線方向に延びる基端部と、基端部に連なり軸線に向かって湾曲する湾曲部と、湾曲部に連なり中心電極の先端部と一部が対向する対向部と、を備える。湾曲部は、中心電極の側を向き凹状に湾曲する第1面と、第1面の反対側に位置し凸状に湾曲する第2面を含む。第1面から第2面へ向かって凹む凹部が、第1面に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のスパークプラグによれば、接地電極の湾曲部に連なる対向部の一部が、中心電極の先端部と対向し火花ギャップが作られる。中心電極の側を向く湾曲部の第1面は凹状に湾曲する。第1面の反対側の湾曲部の第2面は凸状に湾曲する。第1面から第2面へ向かって凹む凹部により、第1面の圧縮の残留応力を低減できるので、残留応力の開放による火花ギャップの変化を低減できる。
【0008】
請求項2記載のスパークプラグによれば、凹部は凹部の内面の少なくとも一部が互いに接触する。凹部の分だけ湾曲部における熱伝導の熱流経路が細くなるが、凹部の内面が互いに接触するので、接触する分だけ熱伝導の熱流経路を拡大できる。湾曲部の伝熱量を増やすことができるので、請求項1の効果に加え、対向部の過熱を低減できる。
【0009】
請求項3記載のスパークプラグによれば、凹部は凹部の内面が開放されている。熱膨張により、凹部を境にして基端部を含む部分と対向部を含む部分とが互いに押し合う力を低減できる。請求項1の効果に加え、熱膨張による火花ギャップの変化を低減できる。
【0010】
請求項4記載のスパークプラグによれば、凹部の深さは、凹部の深さ方向における凹部の底と第2面との間の湾曲部の厚さよりも浅い。請求項1から3のいずれかの効果に加え、湾曲部における熱伝導の熱流経路および湾曲部の機械的強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。
図2図1の矢印IIの方向から見た接地電極の側面図である。
図3図2のIII-III線における接地電極の断面図である。
図4図3のIVで示す部分を拡大した湾曲部の断面図である。
図5】(a)は湾曲部を設ける前のワークの側面図であり、(b)は図5(a)のVb-Vb線におけるワークの断面図である。
図6】第2実施の形態におけるスパークプラグの接地電極の側面図である。
図7図6のVII-VII線における接地電極の断面図である。
図8図7のVIIIで示す部分を拡大した湾曲部の断面図である。
図9】第3実施の形態におけるスパークプラグの接地電極の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図2から図9においても同じ)。図1に示すようにスパークプラグ10は、中心電極13と接地電極18とを備えている。中心電極13は絶縁体11に保持され、接地電極18は、絶縁体11を保持する主体金具16に接続されている。
【0013】
絶縁体11は軸線Oに沿う軸孔12を有する略円筒状の部材である。絶縁体11は機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。中心電極13は軸孔12に配置されている。中心電極13は、導電性を有する棒状の金属製の部材である。中心電極13は、例えばNiを主成分とする有底円筒状の母材が、銅を主成分とする芯材を覆っている。芯材を省略することは可能である。中心電極13の先端部14は軸孔12の外に配置されている。
【0014】
中心電極13は、軸孔12内で端子金具15と電気的に接続されている。端子金具15は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具15は、先端側が軸孔12に挿入された状態で、絶縁体11の後端に固定されている。
【0015】
主体金具16は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具16は絶縁体11の先端側を取り囲み、絶縁体11を内側に保持する。主体金具16の外周面に、おねじ17が形成されている。おねじ17は、エンジン(図示せず)のねじ穴に螺合する部位である。接地電極18主体金具16に接続されている。
【0016】
図2図1の矢印IIの方向から見た接地電極18の側面図である。図3図2のIII-III線における接地電極18の断面図である。図3に示すように接地電極18は、主体金具16に接続し軸線Oに沿って延びる直線状の基端部19と、基端部19に連なり軸線Oに向かって湾曲する湾曲部20と、湾曲部20に連なり中心電極13の先端部14と一部が対向する直線状の対向部21と、を備えている。中心電極13の先端部14と対向部21との間に火花ギャップ22が設けられている。本実施形態では、対向部21は中心電極13の先端部14より先端側に位置し、先端部14の先端側に火花ギャップ22が設けられている。
【0017】
本実施形態では、基端部19は軸線Oとほぼ平行に延びている。しかしこれに限るものではない。基端部19は軸線Oに沿って延びていれば良い。例えば基端部19は、軸線Oと同一平面上にあって軸線Oに対して斜めに傾いていても良いし、軸線Oとねじれの位置にあっても良い。
【0018】
本実施形態では、対向部21は、軸線Oとほぼ垂直に延びている。しかしこれに限るものではない。対向部21は湾曲部20につながっていれば良い。例えば対向部21は、軸線Oと同一平面上にあって軸線Oに斜めに交わっていても良いし、軸線Oとねじれの位置にあっても良い。
【0019】
湾曲部20は、中心電極13の側を向く第1面23と、第1面23の反対側に位置する第2面24と、を有する。第1面23は凹状に湾曲し、第2面24は凸状に湾曲する。図2に示すように第1面23には、湾曲部20の第3面25及び第4面26がつながっている。第3面25は第4面26の反対側に位置する。第3面25及び第4面26は第2面24にもつながっている。湾曲部20の第1面23には、第1面23から第2面24へ向かって凹む凹部27が設けられている。
【0020】
図4図3のIVで示す部分を拡大した湾曲部20の断面図である。図4に示す断面図は、凹部27の底28を通り軸線Oを含む断面図、又は、凹部27の底28を通り軸線Oに平行な断面図である。凹部27の底28は、凹部27の最も深いところである。
【0021】
凹部27の内面29は、互いに向かい合う第1部30及び第2部31を含む。第1部30は、内面29のうち基端部19に近い凹部27の端点32と底28との間の部分である。第2部31は、内面29のうち対向部21に近い凹部27の端点33と底28との間の部分である。凹部27の内面29は開放されており、第1部30のうち底28を除く部分と第2部31のうち底28を除く部分とは互いに離れている。
【0022】
凹部27の内面29が開放されているか否かは、例えば湾曲部20を常温硬化型樹脂に埋め込み、樹脂を凹部27に侵入させ、内面29に接した状態で硬化した樹脂が再現する凹部27の形状(樹脂が作る突起)に基づいて判断できる。樹脂が再現した凹部27の形(突起)に、厚さ方向に貫通する穴があいている、又は、突起ができなければ、穴の位置において凹部27の第1部30と第2部31とが接していることを示す。樹脂が再現した凹部27の形(突起)に、厚さ方向に貫通する穴があいていなければ、第1部30と第2部31とが離れている(内面29が開放されている)ことを示す。常温硬化型樹脂としては、例えばKulzer社製のテクノビット(Technovit:登録商標)が挙げられる。
【0023】
凹部27の深さDは、凹部27の底28と第2面24との間の湾曲部20の厚さTよりも浅い。凹部27の深さD及び湾曲部20の厚さTを求めるには、図4において、まず凹部27の端点32,33同士を結ぶ線分34を引く。次いで線分34に垂直な直線であって底28を通る直線35を引く。凹部27の深さDは、線分34及び底28によって直線35が切り取られてできる線分の長さである。湾曲部20の厚さTは、第2面24及び底28によって直線35が切り取られてできる線分の長さである。
【0024】
スパークプラグ10は、例えば以下の方法により製造される。まず絶縁体11の軸孔12の外に中心電極13の先端部14が位置するように、軸孔12に中心電極13を配置する。次に絶縁体11の軸孔12に端子金具15を挿入し、端子金具15と中心電極13とを電気的に接続する。予めワーク36(図5(a)参照)が接続された主体金具16を絶縁体11に組み付け、ワーク36のうち湾曲部20が作られる予定位置に凹部27を設ける。
【0025】
図5(a)は湾曲部20を設ける前のワーク36の側面図である。図5(b)は図5(a)のVb-Vb線におけるワーク36の断面図である。図5(a)及び図5(b)ではワーク36が接続された主体金具16の図示が省略されている。
【0026】
ワーク36は断面の形状が矩形の直線状の部材である。ワーク36は第1面23と、第1面23の反対側の第2面24と、第1面23と第2面24とをつなぐ第3面25及び第4面26と、を含む。本実施形態ではワーク36の第1面23に、ワーク36よりも硬い円錐の圧子を押し付けて凹部27(圧痕)を形成する。圧子の形状は円錐、角錐、角柱、球など適宜設定できる。凹部27は、圧子の形状に応じて、円錐面、角錐面、球冠などの痕跡となる。圧痕で凹部27を作るのに代えて、切削で凹部27を作ることは当然可能である。
【0027】
ワーク36の第1面23に凹部27を設けた後、第1面23の、主体金具16と凹部27との間に第1の金型を接触させ、第2面24の、ワーク36の先端37と凹部27との間を第2の金型で押す。外力により第1の金型を支点にしてワーク36を曲げ、湾曲部20が形成された接地電極18を得る。湾曲部20が作られる予定位置に凹部27が設けられているので、ワーク36の曲げの位置を安定させ易い。
【0028】
ワーク36が曲げられると、湾曲部20の凹状に湾曲する第1面23に圧縮応力が生じ、凸状に湾曲する第2面24に引張応力が生じる。曲げの外力が外れると、第1面23の圧縮の残留応力および第2面24の引張の残留応力によって、湾曲部20の曲げ角度が広がるスプリングバックが生じるおそれがある。スプリングバックが生じて火花ギャップ22が広がると、火花ギャップ22に放電が生じる要求電圧が高くなるという問題点がある。
【0029】
スパークプラグ10によれば、第1面23から第2面24へ向かって凹む凹部27が湾曲部20に設けられているので、第1面23の圧縮の残留応力を低減できる。よって残留応力の開放(スプリングバック)による火花ギャップ22の変化を低減できる。
【0030】
図4において凹部27の端点32を通り軸線Oに平行な仮想直線(図示せず)を引き、仮想直線によって基端部19を含む第1領域(軸線Oを含まない領域)と対向部21を含む第2領域(軸線Oを含む領域)の2つに分けたときに、凹部27の少なくとも一部は、基端部19を含む第1領域に位置する。凹部27の少なくとも一部が第1領域にあるので、湾曲部20の圧縮の残留応力を低減させ易くできる。
【0031】
凹部27は内面29が開放されているので、熱膨張により、凹部27を境にして基端部19を含む部分と対向部21を含む部分とが互いに押し合う力を低減できる。よって熱膨張による火花ギャップ22の変化を低減できる。
【0032】
凹部27の分だけ湾曲部20の断面積は小さくなる。しかし凹部27の深さDは、凹部27の深さ方向における凹部27の底28と第2面24との間の湾曲部20の厚さTよりも浅いので、湾曲部20における熱伝導の熱流経路および湾曲部20の機械的強度を確保できる。
【0033】
図6から図8までを参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、凹部27の内面29が開放されている場合について説明した。これに対し第2実施形態では凹部42の内面44が互いに接触している場合について説明する。なお第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0034】
図6は第2実施の形態におけるスパークプラグ40の接地電極41の側面図である。図6は、図2と同様に、図1の矢印IIの方向から見た接地電極41の側面図である。図7図6のVII-VII線における接地電極41の断面図である。湾曲部20の第1面23には、第1面23から第2面24へ向かって凹む凹部42が設けられている。第1面23の凹部42は、第3面25及び第4面26の近くまで、直線状に細く長く延びている。
【0035】
接地電極41は、ワーク(図示せず)の第1面23に溝状のノッチを付けた後、ワークを曲げ、湾曲部20を形成して得られる。凹部42は、ワークの第1面23に付けられたノッチが、ワークの曲げ加工により潰れた状態である。湾曲部20に設けられた凹部42によって第1面23の圧縮の残留応力を低減できる。
【0036】
図8図7のVIIIで示す部分を拡大した湾曲部20の断面図である。図8に示す断面図は、凹部42の底43を通り軸線Oを含む断面図、又は、凹部42の底43を通り軸線Oに平行な断面図である。凹部42の底43は、凹部42の最も深いところである。
【0037】
凹部42の内面44は、全体が、凹部42の底43を境にして互いに接している。凹部42の分だけ湾曲部20における熱伝導の熱流経路が細くなるが、凹部42の内面44が互いに接しているので、内面44が接している分だけ熱伝導の熱流経路を拡大できる。凹部42における湾曲部20の伝熱量を増やすことができるので、対向部21の過熱を低減できる。
【0038】
凹部42の深さDは、凹部42の底43と第2面24との間の湾曲部20の厚さTよりも浅い。よって湾曲部20における熱伝導の熱流経路および湾曲部20の機械的強度を確保できる。凹部42の深さD及び湾曲部20の厚さTを求めるには、図8において、凹部42の内面44及び底43を含む直線45を引く。凹部42の深さDは、第1面23及び底43によって直線45が切り取られてできる線分の長さである。湾曲部20の厚さTは、第2面24及び底43によって直線45が切り取られてできる線分の長さである。
【0039】
図9を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、接地電極18,41の第1面23に凹部27,42が設けられる場合について説明した。これに対し第3実施形態では、第1面23に加え、第3面25及び第4面26にも凹部53が設けられる接地電極50について説明する。なお第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0040】
図9は第3実施の形態におけるスパークプラグの接地電極50の斜視図である。図9では、絶縁体11、中心電極13及び主体金具16の図示が省略されている。接地電極50は、第1実施形態で説明した接地電極18に代えて、主体金具16に接続される。
【0041】
接地電極50は、湾曲部20の第1面23と第3面25とが交わる角51、及び、湾曲部20の第1面23と第4面26(図2参照)とが交わる角52に、それぞれ凹部53が設けられている。よって凹部53は、第1面23に加え、第3面25及び第4面26に設けられている。
【0042】
本実施形態ではワーク(図示せず)を曲げて湾曲部20を形成した後、湾曲部20の角51,52に、切削によって凹部53を形成する。圧縮応力が残留する第1面23の一部が、凹部53によって取り除かれるので、第1面23の圧縮の残留応力を低減できる。よって残留応力の開放(スプリングバック)による火花ギャップ22の変化を低減できる。
【0043】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば接地電極18,41,50の形、凹部27,42,53の形や大きさは一例であり適宜設定される。
【0044】
実施形態では、中心電極13の先端部14と接地電極18,41,50の対向部21との間であって、先端部14の軸線方向の先端側に火花ギャップ22が設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。中心電極13の先端部14と接地電極18,41,50の対向部21との間であって、先端部14の径方向(軸線Oに垂直な方向)の外側に火花ギャップ22を設けることは当然可能である。この場合も湾曲部20の第1面23に凹部27,42,53を設けることにより、圧縮の残留応力を低減し湾曲部20のスプリングバックを低減できる。
【0045】
実施形態では、接地電極18,41,50の第1面23、第2面24、第3面25及び第4面26に囲まれた断面形状が矩形の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極18,41,50の断面を、第2面24を示す線が円弧である半円形状にすることは当然可能である。
【0046】
第1実施形態では、ワーク36に凹部27を設けた後に曲げ加工を行う場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ワーク36を曲げて湾曲部20を形成した後、湾曲部20の第1面23に、プレスや切削によって凹部27を形成することは当然可能である。圧縮応力が残留する第1面23の一部が、凹部27によって取り除かれるので、第1面23の圧縮の残留応力を低減し、スプリングバックによる火花ギャップ22の変化を低減できる。
【0047】
第2実施形態では、凹部42の内面44のうち対面する部分の全体が互いに接している場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凹部42の内面44のうち対面する部分の少なくとも一部が互いに接していても良い。この場合も、内面44が接している分だけ熱伝導の熱流経路を拡大できる。
【0048】
第1実施形態および第2実施形態では、湾曲部20に凹部27,42が一つ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。2つ以上の凹部27,42を湾曲部20の第1面23に設けることは当然可能である。
【0049】
第3実施形態では、ワーク(図示せず)に湾曲部20を設けた後、湾曲部20の第1面23に凹部53を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ワークの第1面23に凹部53を設けた後、曲げ加工を行い、湾曲部20に凹部53を設けることは当然可能である。
【0050】
第3実施形態では、湾曲部20の第1面23に凹部53を2つ設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凹部53を一つ、又は、凹部53を3つ以上にすることは当然可能である。
【0051】
第3実施形態では、第1面23と第3面25とにまたがる凹部53、及び、第1面23と第4面26とにまたがる凹部53を湾曲部20に設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1面23のみに凹部53を設けることは当然可能である。角51の凹部53と角52の凹部53とをつなげて、第1面23の幅方向の全長に亘って凹部53を設けることは当然可能である。
【0052】
実施形態では、ワークの第1面23に凹部27,42を設けた後、曲げ加工を行い、湾曲部20に凹部27,42を設ける場合、及び、ワークの曲げ加工を行った後、湾曲部20に凹部53を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。曲げ加工を行うときの第1の金型に突起を設け、突起をワークの第1面23に食い込ませることにより第1面23に凹部を形成し、第2の金型を使って第1の金型を支点にワークを曲げ、湾曲部20に凹部が形成された接地電極を得ることは当然可能である。この場合も凹部によって第1面23の圧縮の残留応力を低減できるので、スプリングバックによる火花ギャップ22の変化を低減できる。
【符号の説明】
【0053】
10,40 スパークプラグ
13 中心電極
14 先端部
16 主体金具
18,41,50 接地電極
19 基端部
20 湾曲部
21 対向部
23 第1面
24 第2面
27,42,53 凹部
28,43 凹部の底
29,44 凹部の内面
D 凹部の深さ
O 軸線
T 湾曲部の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9