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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】吸気管
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20231113BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
F02M25/08 N
F02M25/08 Q
F02M25/08 301B
F02M35/10 311Z
F02M35/10 101F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020153583
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047672
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】別所 崇
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0112634(US,A1)
【文献】実開昭58-33769(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機を備える内燃機関に用いられる吸気管であって、
吸気通路を形成する管本体部と、
前記過給機により過給された過給気により負圧を発生させ、その負圧によって燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸引し、前記過給気と前記蒸発燃料との混合ガスを前記吸気通路に吐出するエゼクタ部と、
を備えており、
前記エゼクタ部は、前記管本体部の通路壁部と一体形成されており、
前記通路壁部には、前記吸気通路に開口する凹部が形成されており、
前記凹部内には、前記エゼクタ部の前記過給気の吐出方向に延在するエゼクタハウジング部の吐出筒部が配置されており、
前記吐出筒部の上流側にノズル通路を介して連続する過給気導入筒部が前記凹部から前記通路壁部の外部へ延在するように形成されており、
前記過給気導入筒部内の過給気導入通路及び前記ノズル通路が同一軸線上に形成されている、吸気管。
【請求項2】
請求項1に記載の吸気管であって、
前記吐出筒部は、前記吸気通路内の吸気の流れ方向に対して前記過給気の吐出方向が鋭角を形成するように配置されている、吸気管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸気管であって、
前記凹部は、前記吸気通路の上流側から下流側に向かって溝深さが漸減する溝底部を有しており、
前記吐出筒部は、前記溝底部に沿うように配置されている、吸気管。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の吸気管であって、
前記管本体部には、前記凹部よりも下流側において前記エゼクタ部側に向けて湾曲する湾曲管部を備えている、吸気管。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載の吸気管であって、
前記管本体部には、前記凹部よりも下流側において前記吐出筒部の中心線に対して平行配置される中心線を有する直管部を備えている、吸気管。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の吸気管であって、
前記管本体部は、長さ方向に延びる分割面において分割された2つのパーツを相互に接合することにより構成されており、
前記2つのパーツのうちの一方のパーツには、前記エゼクタ部及び前記凹部が一体成形により形成されている、吸気管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は吸気管に関する。詳しくは、過給機を備える内燃機関いわゆる過給機付き内燃機関に用いられる吸気管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に記載された吸気管がある。吸気管は、吸気通路を形成する管本体部と、過給機により過給された過給気により負圧を発生させ、その負圧によって燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸引し、過給気と蒸発燃料との混合ガス(「パージガス」ともいう)を吸気通路に吐出するエゼクタ部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-53808号公報
【文献】特開2017-67043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、エゼクタ部の吐出口から吸気通路に至るL字状の連通路、及び、吸気通路と連通路との連通部分に、通路面積を拡大するチャンバ室が形成されている(特許文献1の図3参照)。このため、チャンバ室において吸気の流れを阻害する剥離や渦が生じ、吸気圧損が増大するという問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、吸気通路が通路面積の小さい上流側通路部と通路面積の大きい下流側通路部との間に段差壁部を有し、段差壁部にエゼクタ部の吐出部を配置したものが開示されている(特許文献2の図5参照)。この場合、段差壁部により吸気の流れに剥離や渦を生じ、吸気圧損が増大する。また、特許文献2には、吸気通路にエゼクタ部の少なくとも一部が突出するものも開示されている(特許文献2の図7参照)。この場合も、吸気通路に突出するエゼクタ部の少なくとも一部により吸気の流れが阻害されるため、吸気圧損が増大するという問題がある。
【0006】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、吸気圧損を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、過給機を備える内燃機関に用いられる吸気管であって、吸気通路を形成する管本体部と、前記過給機により過給された過給気により負圧を発生させ、その負圧によって燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸引し、前記過給気と前記蒸発燃料との混合ガスを前記吸気通路に吐出するエゼクタ部と、を備えており、前記エゼクタ部は、前記管本体部の通路壁部と一体形成されており、前記通路壁部には、前記吸気通路に開口する凹部が形成されており、前記凹部内には、前記エゼクタ部の前記過給気の吐出方向に延在するエゼクタハウジング部の吐出筒部が配置されている、吸気管である。
【0009】
第1の手段によると、管本体部の通路壁部に形成された凹部内に、エゼクタ部の過給気の吐出方向に延在するエゼクタハウジング部の吐出筒部が配置されている。したがって、従来(特許文献1、2参照)と比べて、吸気通路を流れる吸気の流れの阻害を低減し、吸気圧損を低減することができる。ひいては、内燃機関への吸気量を増大し、内燃機関の出力を向上させることができる。
【0010】
第2の手段は、第1の手段の吸気管であって、前記吐出筒部は、前記吸気通路内の吸気の流れ方向に対して前記過給気の吐出方向が鋭角を形成するように配置されている、吸気管である。
【0011】
第2の手段によると、例えば、エゼクタハウジング部の吐出筒部50bの過給気の吐出方向が吸気の流れ方向に対して直交状に交差する場合と比べて、エゼクタハウジング部の吐出筒部から吐出されたパージエア(過給気と蒸発燃料との混合ガス)の流れを、吸気通路を流れる吸気の流れにスムーズに合流させることができる。
【0012】
第3の手段は、第1又は2の手段の吸気管であって、前記凹部は、前記吸気通路の上流側から下流側に向かって溝深さが漸減する溝底部を有しており、前記吐出筒部は、前記溝底部に沿うように配置されている、吸気管である。
【0013】
第3の手段によると、管本体部の通路壁部の溝底部を有する凹部の成形にかかる型抜き方向と、エゼクタハウジング部の吐出筒部の成形にかかる型抜き方向と、を同方向に設定することができる。よって、エゼクタ部の成形にかかる型構造を簡素化することができる。
【0014】
第4の手段は、第1~3のいずれか1つの手段の吸気管であって、前記管本体部には、前記凹部よりも下流側において前記エゼクタ部側に向けて湾曲する湾曲管部を備えている、吸気管である。
【0015】
第4の手段によると、エゼクタハウジング部の吐出筒部から吐出されたパージエアが、湾曲管部を流れる吸気の内周側から外周側に向けて合流される。これにより、例えば、エゼクタ部側とは反対側の方向に向けて湾曲する湾曲管部を下流側の管状部に備える場合に比べて、吸気通路を流れる吸気の流れにパージエアを効率良く混合させることができる。
【0016】
第5の手段は、第1~3のいずれか1つの手段の吸気管であって、前記管本体部には、前記凹部よりも下流側において前記吐出筒部の中心線に対して平行又は同心に配置される中心線を有する直管部を備えている、吸気管である。
【0017】
第5の手段によると、エゼクタハウジング部から吐出されたパージエアが、直管部内を流れる吸気の流れに平行状又は同心状に合流される。これにより、直管部内を流れる吸気にパージエアを効率良く混合させることができる。
【0018】
第6の手段は、第1~5のいずれか1つの手段の吸気管であって、前記管本体部は、長さ方向に延びる分割面において分割された2つのパーツを相互に接合することにより構成されており、前記2つのパーツのうちの一方のパーツには、前記エゼクタ部及び前記凹部が一体成形により形成されている、吸気管である。
【0019】
第6の手段によると、エゼクタ部を備える吸気管が3つ以上のパーツによって構成される場合に比べて、部品点数及び製造工数を削減し、製造コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本明細書に開示の技術によると、吸気圧損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1にかかる過給機付き内燃機関を示す概略図である。
図2】吸気管を示す正面図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4】吸気管を分解して示す左側面図である。
図5】第1パーツを示す後面図である。
図6図5のVI-VI線矢視断面図である。
図7図6のVII-VII線矢視断面図である。
図8図6のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9】実施形態2にかかる吸気管を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。
【0023】
[実施形態1]
本実施形態にかかる吸気管は、自動車等の車両に搭載される過給機付き内燃機関に用いられるものである。
【0024】
(過給機付き内燃機関の概要)
図1は過給機付き内燃機関を示す概略図である。図1に示すように、過給機付き内燃機関は、内燃機関(エンジン)12に空気(吸気)を供給する吸気系10と、燃料タンク22内で発生した蒸発燃料を吸気系10に供給する蒸発燃料パージ系20と、を備えている。
【0025】
(吸気系10)
吸気系10は、その上流側から下流側の内燃機関12に向かって接続されたエアクリーナ13と吸気管14と過給機15と連通管16とスロットル装置17とインテークマニホールド18とを備えている。吸気系10において、空気(吸気)は、エアクリーナ13から吸気管14、過給機15、連通管16、スロットル装置17及びインテークマニホールド18を介して、内燃機関12(詳しくは燃焼室内)に供給される。燃焼室で燃料と吸気との混合気が燃焼された後、排気系(不図示)に排気される。
【0026】
エアクリーナ13は、吸気系10に吸入される空気を濾過する。吸気管14は、エゼクタ部34(後述する)を備えている。過給機15は、ターボチャージャーであり、内燃機関12の排気エネルギーによって作動されるタービンに連動するコンプレッサによってエアクリーナ13を通過した空気(吸気)を過給する。連通管16から分岐された還流配管19は、吸気管14のエゼクタ部34に接続されている。スロットル装置17は、図示しないアクチュエータ及びスロットルバルブを備えている。内燃機関12を制御する制御装置(ECU)によりアクチュエータが制御されることにより、スロットルバルブの開度が調整されることで内燃機関12への吸気量が制御される。
【0027】
(蒸発燃料パージ系20)
蒸発燃料パージ系20は、燃料タンク22に蒸発燃料配管23を介して接続されたキャニスタ24を有する。キャニスタ24内には、燃料タンク22内の蒸発燃料を吸着及び脱離可能な活性炭等の吸着材(不図示)が充填されている。キャニスタ24は、パージ配管25を介して吸気管14のエゼクタ部34に接続されている。蒸発燃料パージ系20において、燃料タンク22内で発生した蒸発燃料は、蒸発燃料配管23を介してキャニスタ24の吸着材に吸着される。キャニスタ24内の蒸発燃料は、エゼクタ部34において過給気の流れにより発生する負圧により吸引され、吸気管14内へパージされる。
【0028】
(吸気管14)
図2は吸気管を示す正面図、図3図2のIII-III線矢視断面図、図4は吸気管を分解して示す左側面図である。図2を基に吸気管14にかかる方位を定めるが、吸気管14の配置方向を特定するものではない。図3に示すように、吸気管14は、略円管状に形成されており、その内部空間が吸気通路31とされている。吸気管14は、管本体部32とエゼクタ部34とを有する。吸気管14は樹脂製である。
【0029】
管本体部32は、上から下方に向かって上流側管部32b、中央管部32a及び下流側管部32cを有する(図2参照)。中央管部32aは上下方向に延在している。上流側管部32bは、中央管部32aから上方に向かって斜め後方かつ斜め右方へ延びている。上流側管部32bは、エアクリーナ13(図1参照)と嵌合接続可能に形成されている。
【0030】
下流側管部32cは、中央管部32aから下方に向かって斜め前方かつ斜め右方後方へ延びさらに右方へエルボ管状に湾曲する湾曲管状に形成されている。下流側管部32cの先端外周部には、径方向外方へ突出するフランジ部33が形成されている。フランジ部33は、過給機15(図1参照)と締結可能に形成されている。
【0031】
エゼクタ部34は、中央管部32aの前側部の中央右寄りの位置に一体形成されている(図2参照)。中央管部32aの後側部の中央部には、後方へ突出する円筒状の接続ポート36(図4参照)が形成されている。接続ポート36は、吸気通路31を流れる吸気量を制御するエアバイパスバルブ(不図示)と接続可能に形成されている。
【0032】
図4に示すように、吸気管14は、2つのパーツ14A、14Bを振動溶着等により接合することによって構成されている。第1パーツ14Aは吸気管14の前側部分を構成しており、第2パーツ14Bは吸気管14の後側部分を構成している。第1パーツ14A及び第2パーツ14Bは、いずれも樹脂製で、射出成形による一体成形品である。
【0033】
図3に示すように、第1パーツ14Aと第2パーツ14Bとの接合面でもある分割面37は、管本体部32の中央部分において吸気通路31の中心線31Lに略沿って延びている。このため、エゼクタ部34は第1パーツ14Aに形成されており、また、接続ポート36は第2パーツ14Bに形成されている(図4参照)。
【0034】
分割面37の上端部は、管本体部32の中央管部32aの上端部から斜め前上方に延びている。このため、上流側管部32bの大部分が第2パーツ14Bに形成されている(図4参照)。また、分割面37の下端部は、管本体部32の下流側管部32cの中央付近から下方に向かって延びている。このため、下流側管部32cのフランジ部33を含む下流部分が第1パーツ14Aに形成されている(図4参照)。また、第1パーツ14Aの吸気通路31を形成する部分を通路壁部38という。
【0035】
(第1パーツ14Aの通路壁部38)
図5は第1パーツ14Aを示す後面図、図6図5のVI-VI線矢視断面図、図7図6のVII-VII線矢視断面図、図8図6のVIII-VIII線矢視断面図である。図6に示すように、第1パーツ14Aの通路壁部38には、前方に向かって膨出しかつ吸気通路31側に開口する山形凹状の膨出部40が一体形成されている。第1パーツ14Aは、2つのパーツ14A、14Bのうちの一方のパーツに相当する。
【0036】
図6及び図7に示すように、膨出部40は、左右一対の側壁部40aと、両側壁部40aの前縁部を相互に接続する半円筒状の前壁部40bと、両側壁部40a及び前壁部40bの上縁部に接続するU字板状の上壁部40cと、を有する。上壁部40cは、前壁部40bに対して直角状をなしている。膨出部40内には、吸気通路31に開口する縦長状の溝部41が形成されている。溝部41は本明細書でいう「凹部」に相当する。前壁部40bは、溝部41の底部に相当するため、「溝底部40b」という。
【0037】
図6に示すように、溝底部40bは、吸気通路31の上流側から下流側に向かって漸減する溝深さ41Dを有する。溝部41は、第1パーツ14Aの通路壁部38の中央部の右側に片寄っている(図5参照)。このため、溝深さ41Dは、溝部41の左側部分よりも右側部分が深い(図7参照)。
【0038】
エゼクタ部34は、第1パーツ14Aの通路壁部38の膨出部40の溝底部40bと上壁部40cとのなす隅角部分に一体形成されている。エゼクタ部34は、過給気の吐出方向(図6中、矢印Y2参照)に延在する略円筒状のエゼクタハウジング部50を有する。エゼクタハウジング部50の軸方向の中央部は、膨出部40の上壁部40cに対して直交状に交差するように連続的に形成されている。なお、過給気の吐出方向は、詳しくは過給気と蒸発燃料との混合気の吐出方向のことである。
【0039】
エゼクタハウジング部50の過給気導入筒部50aと吐出筒部50bとを同心状に有する。過給気導入筒部50aは、膨出部40の上壁部40cから上方へ延在するように形成されている。また、吐出筒部50bは、膨出部40の上壁部40cから下方へ延在しており、溝部41内に突出されている。
【0040】
吐出筒部50bの前縁部は、膨出部40の溝底部40bの上流側半部に沿うように連続的に形成されている。これにより、エゼクタハウジング部50の吐出筒部50bが溝部41の底部内に配置されている。また、吐出筒部50bと膨出部40の両側壁部40aとの間には、溝部41の一部を形成する左右一対の側溝部41aが形成されている(図5図7及び図8参照)。すなわち、吐出筒部50bの前縁部を除く周囲は、両側溝部41aを含む溝部41により取り囲まれている。また、吐出筒部50bは、溝部41内に全体的に収容されるように形成されている。
【0041】
また、管本体部32の下流側管部32cは、溝部41よりも下流側においてエゼクタ部34側(前方)に向けて湾曲している(図3参照)。下流側管部32cは本明細書でいう「湾曲管部」に相当する。
【0042】
エゼクタハウジング部50の内部空間には、上端部から下端部に向かって同一軸線上に並ぶ過給気導入通路51、ノズル通路52及びディフューザ通路53が形成されている。過給気導入筒部50aは、還流配管19を介して内燃機関12の吸気系10の連通管16と接続される(図1参照)。
【0043】
エゼクタハウジング部50は、吸気通路31内の吸気の流れ方向(図6中、矢印Y1参照)に対して過給気の吐出方向(図6中、矢印Y2参照)が鋭角をなすように配置されている。
【0044】
膨出部40の溝底部40bの上端部には、前方へ突出する円筒状の蒸発燃料吸引筒部55が形成されている。蒸発燃料吸引筒部55内には、ディフューザ通路53の上流側端部に連通する蒸発燃料吸引通路56が形成されている。蒸発燃料吸引筒部55は、内燃機関12の蒸発燃料パージ系20のキャニスタ24とパージ配管25を介して接続される(図1参照)。
【0045】
蒸発燃料吸引筒部55の途中には、上方へ突出する円筒状の圧力センサ接続ポート58が形成されている。圧力センサ接続ポート58は、蒸発燃料吸引通路56内の圧力を検出する圧力センサ(不図示)と接続可能に形成されている。圧力センサ接続ポート58は、過給気導入筒部50aと平行状をなすように配置されている。
【0046】
(エゼクタ部34の作用)
内燃機関12の作動中において、過給機15による過給気が、連通管16から還流配管19を介してエゼクタ部34の過給気導入通路51に印加される。すると、エゼクタ部34のノズル通路52からディフューザ通路53への過給気の流れにより発生する負圧により、キャニスタ24からの蒸発燃料がパージ配管25を介して蒸発燃料吸引通路56に吸入される。その蒸発燃料は、過給気と混合しつつディフューザ通路53から溝部41を介して吸気通路31に吐出されることでパージされる。
【0047】
(実施形態1の作用・効果)
前記した吸気管14によると、管本体部32の通路壁部38に形成された溝部41内に、エゼクタ部34の過給気の吐出方向に延在するエゼクタハウジング部50の吐出筒部50bが配置されている。したがって、従来(特許文献1、2参照)と比べて、吸気の流れの阻害を低減し、吸気圧損を低減することができる。ひいては、内燃機関12への吸気量を増大し、内燃機関12の出力を向上させることができる。
【0048】
また、エゼクタハウジング部50の吐出筒部50bは、吸気通路31内の吸気の流れ方向(図6中、矢印Y1参照)に対して過給気の吐出方向(図6中、矢印Y2参照)が鋭角を形成するように配置されている。したがって、例えば、エゼクタハウジング部50の吐出筒部50bの過給気の吐出方向が吸気の流れ方向に対して直交状に交差する場合と比べて、吐出筒部50bから吐出されたパージエア(過給気と蒸発燃料との混合ガス)の流れ(図6中、矢印Y2参照)を、吸気通路31を流れる吸気の流れ(図6中、矢印Y1参照)にスムーズに合流させることができる。
【0049】
また、吸気通路31の上流側から下流側に向かって溝深さ41Dが漸減する溝底部40bを有しており、吐出筒部50bは、溝底部40bに沿うように配置されている。したがって、管本体部32の通路壁部38の溝底部40bを有する溝部41の成形にかかる型抜き方向と、エゼクタハウジング部50の吐出筒部50bの成形にかかる型抜き方向と、を同方向に設定することができる。よって、エゼクタ部34の成形にかかる型構造を簡素化することができる。
【0050】
また、管本体部32には、溝部41よりも下流側においてエゼクタ部側に向けて湾曲する下流側管部32cを備えている。したがって、エゼクタハウジング部50の吐出筒部50bから吐出されたパージエアが、下流側管部32cを流れる吸気の内周側から外周側に向けて合流される。これにより、吸気通路31を流れる吸気の流れ(図6中、矢印Y1参照)にパージエアを効率良く混合させることができる。例えば、管本体部32にエゼクタ部側とは反対側の方向に向けて湾曲する下流側管部を備える場合では、その下流側管部を吸気がエゼクタ部側から遠ざかる方向へ向けて流れていくため、吸気の流れにパージエアが干渉し難く、吸気とパージエアとの混合効率が低い。これに対し、管本体部32にエゼクタ部側に向けて湾曲する下流側管部32cを備えることで、吸気の流れ(図6中、矢印Y1参照)にパージエアが干渉し易くなるため、吸気とパージエアとの混合効率を向上させることができる。また、エゼクタ部34の成形にかかる型抜きの制約を少なくし、エゼクタ部34の成形にかかる型構造を簡素化することができる。
【0051】
また、管本体部32は、長さ方向に延びる分割面37において分割された第1パーツ14Aと第2パーツ14Bとを相互に接合することにより構成されており、第1パーツ14Aには、エゼクタ部34及び溝部41が一体成形により形成されている。したがって、エゼクタ部34を備える吸気管14が3つ以上のパーツによって構成される場合に比べて、部品点数及び製造工数を削減し、製造コストを抑制することができる。
【0052】
また、第1パーツ14Aにエゼクタ部34を一体成形したことにより、第1パーツ14Aに別体のエゼクタを接着したり、組付部材を用いて組み付けたりする場合と異なり、第1パーツ14Aとエゼクタ部34との間のシール性を確保することができ、吸気洩れの懸念がなくなる。このため、別体のエゼクタを備える場合と比べて、部品点数及び製造工数を削減し、製造コストを抑制することができる。
【0053】
また、吐出筒部50bの前縁部を除く周囲が両側溝部41aを含む溝部41により取り囲まれているため、エゼクタ部34の成形にかかる型構造を簡素化することができる。
【0054】
[実施形態2]
本実施形態は、実施形態1の吸気管14(図3参照)に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明する。実施形態2の変更にかかる部位には100番台の符号を付す。図9は吸気管を示す側断面図である。図9に示すように、本実施形態では、実施形態1における吸気管14の管本体部32の下流側管部32c(図3参照)に代えて、下方へ延びるストレート管状の直管部132cが形成されている。直管部132cの中心線132Lは、エゼクタ部34のエゼクタハウジング部50の吐出筒部50bの中心線50Lと平行をなすように配置されている。また、第1パーツ14Aと第2パーツ14Bとの分割面(接合面)37の下端部は、管本体部32の直管部132cの中央付近から斜め後下方へ延びている。このため、直管部132cのフランジ部33を含む部分は、第1パーツ14Aに形成されている。
【0055】
本実施形態によると、エゼクタハウジング部50の吐出筒部50bから吐出されたパージエアが、直管部132c内を流れる吸気の流れに平行状に合流される。これにより、直管部132c内を流れる吸気にパージエアを効率良く混合させることができる。
【0057】
実施形態2では、フランジ部33を第1パーツ14Aに一体成形可能である形状を示したが、分割面37を変更し、フランジ部33を第2パーツ14Bと一体成形してもよい。
【0058】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、また、過給機15としては、ターボチャージャに代えて、スーパーチャージャ、電動ターボチャージャを用いてもよい。また、エゼクタ部34のエゼクタハウジング部50の吐出筒部50bの過給気の吐出方向は任意の方向に向けてもよい。また、凹部の形状は、吐出筒部50bを収容する凹状であれば任意である。例えば、凹部を吐出筒部50bを全周に亘って取り囲むように形成してもよい。また、吐出筒部50bの先端部(吐出側端部)は吸気通路31側へ突出してもよい。また、実施形態では、エゼクタ部34のエゼクタハウジング部50の過給気導入筒部50aが吐出筒部50bと同心状に形成されているが、過給気導入筒部50aと吐出筒部50bとを屈曲状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
12 内燃機関
14 吸気管
15 過給機
22 燃料タンク
31 吸気通路
32 管本体部
32a 中央管部
32b 上流側管部
32c 下流側管部(湾曲管部)
34 エゼクタ部
38 通路壁部
37 分割面
40 膨出部
40a 側壁部
40b 溝底部(前壁部)
41 溝部(凹部)
41D 溝深さ
50 エゼクタハウジング部
50a 過給気導入筒部
50b 吐出筒部
50L 中心線
55 蒸発燃料吸引筒部
132c 直管部(下流側管部)
132L 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9