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特許7383591電動ドライバ及び電動ドライバのトルク制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】電動ドライバ及び電動ドライバのトルク制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
B25B21/00 510Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020161959
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054763
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519016918
【氏名又は名称】王 ▲徳▼煌
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲徳▼煌
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3220704(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111360741(CN,A)
【文献】特開2017-217742(JP,A)
【文献】実開平07-037573(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0209081(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットチャックに接続される、電動ドライバのトルク制御装置であって、駆動ケーシングと、伝動モジュールと、トルクスリーブと、少なくとも一つのストレンゲージとを備え、
前記駆動ケーシングの一端が、前記ビットチャックと連結されるために用いられ、
前記伝動モジュールは、前記駆動ケーシング内に回動可能に設置されると共に、前記ビットチャックを該駆動ケーシングに対して回転させるように駆動するために用いられ、
前記トルクスリーブは、前記駆動ケーシング内に固設されると共に、前記伝動モジュールと取り外し可能に連結され、該伝動モジュールの回転駆動によって変形が生じ、
前記少なくとも一つのストレンゲージが、前記トルクスリーブ上に設置され、該各少なくとも一つのストレンゲージは、該トルクスリーブのひずみを検知し、
前記伝動モジュールは、少なくとも一つの凸部を含み、該各少なくとも一つの凸部は、該伝動モジュールの軸心方向に対して平行な二つの第1当接面を有し、
前記トルクスリーブは、少なくとも一つの凹部を含み、該各少なくとも一つの凹部は、前記伝動モジュールの軸心方向に対して平行な二つの第2当接面を有し、
前記伝動モジュールとトルクスリーブとが連結されると、前記少なくとも一つの凸部と前記少なくとも一つの凹部とが嵌め合わされ、前記二つの第1当接面と前記二つの第2当接面とがそれぞれ当接することを特徴とする電動ドライバのトルク制御装置。
【請求項2】
前記伝動モジュールは周壁を有し、前記少なくとも一つの凸部が、該周壁上において該伝動モジュールの軸心方向に沿って突出するように形成され、
前記トルクスリーブは前連結部を有し、前記少なくとも一つの凹部が、該前連結部上に形成され、前記伝動モジュールとトルクスリーブとが連結されると、前記周壁が該前連結部を囲むことを特徴とする請求項に記載の電動ドライバのトルク制御装置。
【請求項3】
前記トルクスリーブは、前連結部と、後連結部と、検知部とを含み、
前記前連結部は、前記伝動モジュールの後方に取り外し可能に連結され、
前記後連結部は、前記駆動ケーシングに固設されると共に、前記前連結部の後方に位置し、
前記検知部は、前記前連結部と後連結部を連結し、該検知部の厚さは該前連結部及び後連結部の厚さよりも薄く、前記少なくとも一つのストレンゲージが、該検知部の外側面に設置されることを特徴とする請求項1に記載の電動ドライバのトルク制御装置。
【請求項4】
前記検知部は、検知壁と複数の長孔をさらに含み、該複数の長孔は、間隔を置いて、該検知壁上に該検知壁を貫通するように形成されると共に、該検知壁の周方向に延在し、前記少なくとも一つのストレンゲージが、任意の隣接する該複数の長孔の間に設置されることを特徴とする請求項に記載の電動ドライバのトルク制御装置。
【請求項5】
前記電動ドライバのトルク制御装置が密封リングをさらに備え、該密封リングは、前記トルクスリーブの外周面に固着されると共に、前記少なくとも一つのストレンゲージと前記伝動モジュールとの間に位置することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電動ドライバのトルク制御装置。
【請求項6】
前記電動ドライバのトルク制御装置がオイルシールリングをさらに備え、該オイルシールリングは、前記トルクスリーブ内に固着されると共に、前記少なくとも一つのストレンゲージと前記伝動モジュールとの間に位置することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電動ドライバのトルク制御装置。
【請求項7】
電動ドライバであって、トルク制御装置と、ビットチャックと、モータとを備え、
前記トルク制御装置は、駆動ケーシングと、伝動モジュールと、トルクスリーブと、少なくとも一つのストレンゲージとを含み、該駆動ケーシングは、相対する前端部と後端部を有し、該伝動モジュールは、該駆動ケーシング内に回動可能に設置され、該トルクスリーブは、該駆動ケーシング内に固設されると共に、該伝動モジュールと取り外し可能に連結され、該伝動モジュールの回転駆動によって変形が生じ、該少なくとも一つのストレンゲージが、該トルクスリーブ上に設置され、該各少なくとも一つのストレンゲージは、該トルクスリーブのひずみを検知し、
前記伝動モジュールは、少なくとも一つの凸部を含み、該各少なくとも一つの凸部は、該伝動モジュールの軸心方向に対して平行な二つの第1当接面を有し、
前記トルクスリーブは、少なくとも一つの凹部を含み、該各少なくとも一つの凹部は、前記伝動モジュールの軸心方向に対して平行な二つの第2当接面を有し、
前記伝動モジュールとトルクスリーブとが連結されると、前記少なくとも一つの凸部と前記少なくとも一つの凹部とが嵌め合わされ、前記二つの第1当接面と前記二つの第2当接面とがそれぞれ当接し、
前記ビットチャックが、前記駆動ケーシングの前端部に配置され、
前記モータが、前記駆動ケーシングの後端部に配置されると共に、モータ軸を有し、該モータ軸は、前記トルクスリーブに貫設されると共に、前記伝動モジュールと駆動連結され、該伝動モジュールを駆動することによって、前記ビットチャックを該駆動ケーシングに対して回転させるように駆動することを特徴とする電動ドライバ。
【請求項8】
前記トルク制御装置は、オイルシールリングをさらに含み、該オイルシールリングが、前記トルクスリーブ内に固着されて前記モータ軸に環装されると共に、前記少なくとも一つのストレンゲージと前記伝動モジュールとの間に位置することを特徴とする請求項に記載の電動ドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドツールの構造的改良に関し、特に、電動ドライバ及び電動ドライバのトルク制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動ドライバは、ボルトやネジ等のねじ具の締緩作業を行うためのハンドツールとして、内部の転動モータの回転により、取付け対象物の表面にボルトやネジを迅速に締め付けて固定したり、緩めて外したりするものである。
【0003】
従来の電動ドライバは、締め付けトルク値の調節が可能であるが、取付け対象物の表面の材質や硬度、又はネジやボルト自体の構造強度に応じて回転力を調節する必要がある。回転力が強すぎる場合、取付け対象物の表面及びボルト自体が損傷してしまい、一方、回転力が弱すぎる場合、ボルトを、取付け対象物の表面にしっかりと締め付けることができない可能性がある。
【0004】
具体的に述べると、ユーザーが電動ドライバを起動すると、内部の制御基板が始動され、モータは駆動されて、電動ドライバの締め付けトルク値を設定可能な調節装置に接続されているギヤボックスを連動して回転させる。前記ギヤボックスは、さらに機械式ブレーキ機構に接続され、同時に、該ブレーキ機構が、電動ドライバのビットチャックである出力軸ユニットに連結される。当該電動ドライバが運転中に所定の締め付けトルク値に達すると、前記機械式ブレーキ機構は誘発されて、制御基板に信号を送り、モータの回転を停止させ、これにより、各ネジが同じ所定の締め付けトルク値で締め付けられる。
【0005】
締め付けられているネジのトルク値を正確に検知するために、電動ドライバには一般的に、検知装置が内蔵されている。運転中のモータは高速で回転するため、長期間安定して運転させるために、電動ドライバ内に、潤滑油が充填されている。しかし、潤滑油は、検知装置の精度に影響を与えるので、いかに電動ドライバの操作に影響を及ぼさずに、検知装置から潤滑油を隔離するかが、この分野の研究開発をめぐる焦点の一つである。
【0006】
また、従来の電動ドライバの検知装置は、ストレンゲージが取り付けられた変形構造体付きの伝動モジュールを利用するものであり、該変形構造体における該伝動モジュールの回転駆動によって生じたひずみ量を、該ストレンゲージを介して測定して、締め付けトルク値に換算する仕組みであるが、既存の伝動モジュール及び変形構造体は一体成型されているため、修理やメンテナンス時に、個別に扱うことができず、一体として取り扱いしなければならないので、修理やメンテナンスにかかるコストの上昇を招いている。
【0007】
故に、上述した問題をいかに改善するかが、現在の業界においての課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】台湾特許第I640756号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、メンテナンスコストが低い、電動ドライバ及び電動ドライバのトルク制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、電動ドライバであって、トルク制御装置と、ビットチャックと、モータとを備え、前記トルク制御装置は、駆動ケーシングと、伝動モジュールと、トルクスリーブと、少なくとも一つのストレンゲージとを含み、該駆動ケーシングは、相対する前端部と後端部を有し、該伝動モジュールは、該駆動ケーシング内に回動可能に設置され、該トルクスリーブは、該駆動ケーシング内に固設されると共に、該伝動モジュールに取り外し可能に連結されており、該伝動モジュールの回転駆動によって変形が生じ、該少なくとも一つのストレンゲージが、該トルクスリーブ上に設置されており、該各少なくとも一つのストレンゲージは、該トルクスリーブのひずみを検知し、前記ビットチャックが、前記駆動ケーシングの前端部に配置され、前記モータが、前記駆動ケーシングの後端部に配置されると共に、モータ軸を有し、該モータ軸は、前記トルクスリーブに貫設されると共に、前記伝動モジュールに連結されており、該伝動モジュールを駆動することによって、前記ビットチャックを該駆動ケーシングに対して回転させるように駆動することを特徴とする。
【0011】
前記伝動モジュールは、少なくとも一つの凸部を含み、該各少なくとも一つの凸部は、該伝動モジュールの回転軸に対して平行な二つの第1当接面を有し、前記トルクスリーブは、少なくとも一つの凹部を含み、該各少なくとも一つの凹部は、前記伝動モジュールの回転軸に対して平行な二つの第2当接面を有し、前記伝動モジュールとトルクスリーブとが連結されると、前記少なくとも一つの凸部と前記少なくとも一つの凹部とが嵌め合わされ、前記二つの第1当接面と前記二つの第2当接面とがそれぞれ当接していることを特徴とする。
【0012】
前記伝動モジュールが周壁を有し、前記少なくとも一つの凸部が、該周壁上において該伝動モジュールの軸心方向に沿って突出するように形成され、前記トルクスリーブが前連結部を有し、前記少なくとも一つの凹部が、該前連結部上に形成され、前記伝動モジュールとトルクスリーブとが連結されると、前記周壁が該前連結部を囲むことを特徴とする。
【0013】
前記トルクスリーブは、前連結部と、後連結部と、検知部とを含み、前記前連結部は、前記伝動モジュールの後方に取り外し可能に連結され、前記後連結部は、前記駆動ケーシングに固設されると共に、前記前連結部の後方に位置し、前記検知部は、前記前連結部と後連結部を連結し、該検知部の厚さは該前連結部及び後連結部の厚さよりも薄く、前記少なくとも一つのストレンゲージが、該検知部の外側面に設置されることを特徴とする。
【0014】
前記検知部は、検知壁と複数の長孔をさらに含み、該複数の長孔は、間隔を置いて、該検知壁上に該検知壁を貫通するように形成されると共に、該検知壁の周方向に延在し、前記少なくとも一つのストレンゲージが、任意の隣接する該複数の長孔の間に設置されることを特徴とする。
【0015】
前記電動ドライバのトルク制御装置が密封リングをさらに備え、該密封リングは、前記トルクスリーブの外周面に固着されると共に、前記少なくとも一つのストレンゲージと前記伝動モジュールとの間に位置することを特徴とする。
【0016】
前記電動ドライバのトルク制御装置がオイルシールリングをさらに備え、該オイルシールリングは、前記トルクスリーブ内に固着されると共に、前記少なくとも一つのストレンゲージと前記伝動モジュールとの間に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明の優れたところは、伝動モジュールとトルクスリーブが分離可能に連結されていることで、修理やメンテナンスの際に、交換すべき部品だけを交換すれば済み、伝動モジュールとトルクスリーブを一緒に交換する必要がないので、維持コストを大幅に低減することができる点である。
さらに、密封リング及びオイルシールリングの設置により、ストレンゲージが、電動ドライバ内の潤滑油から隔離されていることで、潤滑油が付着することがなく、悪影響を与えることがないので、ストレンゲージの耐久性及び精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る電動ドライバのビットチャック、モータ、及びトルク制御装置を示す斜視図である。
図2】本発明に係る電動ドライバのビットチャック、モータ、及びトルク制御装置を示す分解図である。
図3】本発明に係る電動ドライバのビットチャック、モータ、及びトルク制御装置を示す側面視断面図である。
図4】本発明に係るトルク制御装置の斜視図である。
図5】本発明に係るトルク制御装置の分解図である。
図6】本発明に係るトルク制御装置のトルクスリーブ、密封リング、及びオイルシールリングを示す斜視図である。
図7】本発明に係るトルク制御装置の側面視断面図である。
図8】本発明に係るトルク制御装置のトルクスリーブを示す側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図3に示すように、本発明は電動ドライバであって、ビットチャック10と、モータ20と、トルク制御装置30を備える。該ビットチャック10とモータ20がそれぞれ、該トルク制御装置30の先端と末端に配置され、該モータ20はモータ軸21を有する。以下の説明では、前記ビットチャック10が配置されている側を前方とし、前記モータ20が配置されている側を後方とする。
【0020】
さらに、図3図5に示すように、前記トルク制御装置30は、駆動ケーシング31、伝動モジュール32、トルクスリーブ33、少なくとも一つのストレンゲージ34を含むと共に、選択的に、密封リング35とオイルシールリング36、及び/或は少なくとも一つのスラスト軸受37を含むこともできる。
【0021】
前記駆動ケーシング31は、相対する前端部と後端部を有し、該前端部が前記ビットチャック10と連結され、該後端部が前記モータ20と連結される。前記伝動モジュール32は、回動可能に前記駆動ケーシング31内に設置されると共に、前記ビットチャック10を該駆動ケーシング31に対して回転させるように駆動するために用いられる。尚、本実施例において、前記伝動モジュール32は、遊星歯車機構を含む。
【0022】
前記伝動モジュール32は、周壁321、少なくとも一つの凸部322を含み、該少なくとも一つの凸部322が、該周壁321上に形成されると共に、該伝動モジュール32の軸心方向に沿って突出するように延在する。本実施例においては、前記凸部322を複数含み、全体として略王冠状を呈しており、各凸部322は、前記伝動モジュール32の軸心方向に対して平行な二つの第1当接面を有する。
【0023】
引き続き、図1図6及び図7に示すように、前記トルクスリーブ33は、前記駆動ケーシング31内に固設されると共に、前記伝動モジュール32と取り外し可能に連結されており、該伝動モジュール32の回転駆動によって変形が生じる。本実施例において、前記トルクスリーブ33は、円筒状のスリーブであるが、その外形は円筒状に限定されるものではない。
前記モータ20のモータ軸21は、前記トルクスリーブ33に貫設されると共に、前記伝動モジュール32と駆動連結され、該伝動モジュール32を駆動することによって、前記ビットチャック10を前記駆動ケーシング31に対して回転させるように駆動する。
【0024】
前記トルクスリーブ33は、前記伝動モジュール32の後方に取り外し可能に連結される前連結部331と、該前連結部331の後方に位置する後連結部332と、該前連結部331と後連結部332との間に位置する検知部333とをさらに含む。
【0025】
本実施例において、前記トルクスリーブ33は両端が貫通する円筒状スリーブであり、前記検知部333の厚さは、前記前連結部331及び後連結部332の厚さよりも薄い。また、該検知部333は、検知壁3331と複数の長孔3332を含み、前述した該検知部333の厚さは、該検知壁3331の厚さを指しており、該複数の長孔3332は、間隔を置いて、該検知壁3331上に該検知壁3331を貫通するように形成されると共に、該検知壁3331の周方向に延在する。
【0026】
図5に示すように、前記トルクスリーブ33は、少なくとも一つの凹部3310を含む。本実施例においては、該凹部3310を複数含んでおり、その数は、前記伝動モジュール32の凸部322の数と一致している。具体的に述べると、前記凹部3310が、前記前連結部331上において、前記伝動モジュール32の軸心方向に沿って、凹むように形成されるが、構造はこれに限定されるものではない。
前記各凹部3310が、前記伝動モジュール32の軸心方向に対して平行な二つの第2当接面を有し、該伝動モジュール32が前記トルクスリーブ33に接続されると、前記周壁321が前記前連結部331を囲み、前記各凸部322の二つの第1当接面がそれぞれ、該凹部3310の第2当接面に当接する。前記凸部322の第1当接面及び前記凹部3310の第2当接面は、前記伝動モジュール32の軸心方向と平行であることから、該伝動モジュール32の回転時に、該凹部3310の第2当接面に与える法線力で前記トルクスリーブ33をねじり変形させる。
【0027】
図6に示すように、前記各ストレンゲージ34は、前記トルクスリーブ33のひずみを検知及び記録するために、該トルクスリーブ33上に設置される。本実施例において、前記ストレンゲージ34の数は複数であるが、特にこれに限定されることはない。前記複数のストレンゲージ34は、前記検知部333の外周壁面上に配置され、より詳しく述べると、該各ストレンゲージ34は、任意の隣接する前記長孔3332の間に配置される。これにより、該長孔3332とストレンゲージ34が、前記検知壁3331上に交互に配置されるように構成する。
【0028】
図6図8に示すように、本実施例において、前記トルクスリーブ33の前連結部331が、前記伝動モジュール32内部の内歯車(図示せず)に連結され、該トルクスリーブ33の後連結部332が、複数のネジによって前記駆動ケーシング31内に固設される。
前記伝動モジュール32内部の遊星歯車機構が、一定の締め付けトルク値に達すると、該遊星歯車機構の太陽歯車は、内歯車を回転させるように駆動し、該内歯車に連結されているトルクスリーブ33が回り始めようとすると、該トルクスリーブ33の後連結部332が前記駆動ケーシング31に固定されているため、回らなくなり、該前連結部331と後連結部332との間に、相対的な回転運動が生じる。その結果、該前連結部331と後連結部332との間の検知部333にねじり変形が発生する。
【0029】
すると、前記検知部333上のストレンゲージ34によって、該検知部333のねじり変形を検出し、該ストレンゲージ34は、信号検知装置40と電気連結されていることから、該信号検知装置40を介して、該ストレンゲージ34が記録したねじり変形を信号に変換して外部のコンピュータ(図示せず)に転送する。本実施例において、前記信号検知装置40は、前記トルクスリーブ33内に設置されているが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記密封リング35は、前記トルクスリーブ33の外周面上に固着されるように、前記駆動ケーシング31の内周壁面に密着すると共に、前記ストレンゲージ34と伝動モジュール32との間に位置する。
前記オイルシールリング36は、前記トルクスリーブ33内に固着されると共に、前記ストレンゲージ34と伝動モジュール32との間に位置する。本実施例においては、前記オイルシールリング36が同時に、前記モータ20のモータ軸21に環装されている。前記密封リング35及びオイルシールリング36の設置により、前記伝動モジュール32内の潤滑油が前記ストレンゲージ34の設置空間に流入するのを防止する。
【0031】
図7に示すように、前記少なくとも一つのスラスト軸受37が、前記駆動ケーシング31内に設置される。本実施例において、前記少なくとも一つのスラスト軸受37の数は二つであり、該二つのスラスト軸受37はそれぞれ、前後に配置されるように、前記伝動モジュール32に環装されると共に、該各スラスト軸受37の内周面と外周面がそれぞれ、前記伝動モジュール32と前記駆動ケーシング31に当接する。
【0032】
さらに、図3図6、及び図7に示すように、本発明を使用時に、前記信号検知装置40を介して、外部のコンピュータ(図示せず)に接続することができる。当該コンピュータを利用して、前記モータ20の締め付けトルク値を予め設定できる。尚、該信号検知装置40は同時に、停止指令や、加工プロセス、計数管理などのデータを転送することができる。
【0033】
実際に操作する時は、ユーザーが電動ドライバを始動させて、モータ20を運転させ、ボルトやネジを、ビットチャック10の回転につれて、締め付け対象物に捩じり込む。ビットチャック10にかかる負荷トルクが次第にトルクスリーブ33に移行し、すると、トルクスリーブ33がねじれ、ねじり変形が発生し、ストレンゲージ34によってねじり変形を検出すると、信号検知装置40を介して、外部のコンピュータやコントローラーに信号を転送する。ストレンゲージ34によって検出されたねじり変形の程度が所定の値に達すると、コンピュータやコントローラーから停止指令が出され、モータ20の運転を停止させて、電動ドライバを停止させる。こうして、定締め付けトルク値での締結作業が完了する。
【0034】
上述したように、本発明は、少なくとも以下の優れた点と有利な効果を有する。
【0035】
その1、本発明に係る伝動モジュール32とトルクスリーブ33が分離可能に連結されていることで、修理やメンテナンスの際に、交換すべき部品だけを交換すれば済み、伝動モジュール32とトルクスリーブ33を一緒に交換する必要がないので、維持コストを大幅に低減することができる。また、密封リング35及びオイルシールリング36の設置により、ストレンゲージ34が、電動ドライバ内の潤滑油から隔離されていることで、潤滑油が付着することがなく、悪影響を与えることがないので、ストレンゲージ34の耐久性及び精度を向上させることができる。
【0036】
その2、図3に示すように、ねじり変形量を検出及び記録することができるストレンゲージ34の設置によって、毎回加工過程のデータを記録することが可能になる。更に、毎回加工するときに生じた結果と誤差などの状況を集成かつ検討し、このデータを整理することにより、工場内のさまざまな設備と組み合わせて、インダストリー4.0の目的を達成する。
【0037】
その3、締め付けトルク値のフィートバックにより、ユーザーは、コンピュータやコントローラーを介して、単一の電動ドライバに対する締め付けトルク値を制御することができるようになる。すなわち、各加工工程での各電動ドライバの締め付けトルク値を調節することにより、異なる取付け対象物に対して、適切に対応することができ、さらに、コンピュータの制御により、迅速かつ直接に各電動ドライバの締め付けトルク値を調節することができるので、電動ドライバを使用する作業員がわざわざ、異なる締め付けトルク値に対応するために複数の電動ドライバを用意せずに済む。
【0038】
その4、トルクスリーブ33を締め付けトルク値の検出装置として利用することにより、電動ドライバの使用時における部材の磨耗を減少させることができるので、電動ドライバの耐用年数を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 ビットチャック
20 モータ
21 モータ軸
30 トルク制御装置
31 駆動ケーシング
32 伝動モジュール
321 周壁
322 凸部
33 トルクスリーブ
331 前連結部
3310 凹部
332 後連結部
333 検知部
3331 検知壁
3332 長孔
34 ストレンゲージ
35 密封リング
36 オイルシールリング
37 スラスト軸受
40 信号検知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8