(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/14 20060101AFI20231113BHJP
B60K 5/12 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
F16F13/14 Z
B60K5/12 H
B60K5/12 J
F16F13/14 B
(21)【出願番号】P 2020171738
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】古郡 猛
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086104(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156867(WO,A1)
【文献】特開2016-080056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/14
F16F 13/10
B60K 5/12
F16F 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材、および他方に連結されるとともに、前記内側取付部材を囲繞する外筒と、
前記内側取付部材と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記外筒の中心軸線に沿う軸方向から見た平面視で前記中心軸線に交差する径方向に、前記内側取付部材を挟む両側に各別に配設された中弾性体を備え、
前記内側取付部材と前記外筒との間には、前記平面視で前記中心軸線回りに周回する周方向で互いに隣り合う前記中弾性体同士の間を径方向の外側から覆い前記内側取付部材との間に液室を画成する被覆部材が配設され、
前記被覆部材と前記外筒との間に、各前記液室同士を連通するオリフィス通路が形成され、
前記被覆部材の外周面に、本体溝と、各前記液室のうちのいずれか一方の液室、および前記本体溝に開口する第1連通開口と、各前記液室のうちのいずれか他方の液室、および前記本体溝に開口する第2連通開口と、が形成され、
前記外筒が、前記被覆部材に外嵌することによって、前記本体溝と前記外筒の内周面との間に、前記オリフィス通路が画成され、
前記本体溝は、周方向に延び、互いに前記軸方向の位置を異ならせて配設された第1溝、および第2溝を備え、
前記被覆部材は、射出成形により形成されるとともに、前記本体溝を画成する壁部のうち、周方向に延び、前記第1溝と前記第2溝とを前記軸方向に仕切る仕切壁部に、射出ゲート痕部が設けられ、
前記射出ゲート痕部は、液溜り凹部と、前記液溜り凹部から前記軸方向に延び、前記第1溝、および前記第2溝のうちのいずれか一方に連通する接続溝と、により構成されている、防振装置。
【請求項2】
前記射出ゲート痕部は、前記仕切壁部において、前記第1連通開口、および前記第2連通開口のうちのいずれか一方より、いずれか他方に近い部分に設けられている、請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記射出ゲート痕部は、前記第1連通開口、および前記第2連通開口のうちの前記他方が開口している前記第1溝、若しくは前記第2溝に連通している、請求項2に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材、および他方に連結されるとともに、内側取付部材を径方向の外側から囲繞する外筒と、内側取付部材と外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備え、弾性体が、内側取付部材を径方向に挟む両側に各別に配設され、内側取付部材と外筒との間に、周方向で互いに隣り合う弾性体同士の間を径方向の外側から覆い液室を画成する被覆部材が配設され、被覆部材と外筒との間に、各液室同士を連通するオリフィス通路が形成された防振装置が知られている。
この種の防振装置として、例えば下記特許文献1に示されるように、一方の液室から他方の液室に至るオリフィス通路の流路長を短くする短絡孔を、被覆部材に形成することで、液室に高粘度の液体を封入しても、動ばねの上昇、および液体の漏出等を抑制することができる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、被覆部材を射出成形する金型構造の複雑化を抑えつつ、動ばねの上昇、および液体の漏出等を確実に抑制することに改善の余地があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、高粘度の液体が液室に封入されても、被覆部材を射出成形する金型構造の複雑化を抑えつつ、動ばねの上昇、および液体の漏出等を確実に抑制することができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材、および他方に連結されるとともに、前記内側取付部材を囲繞する外筒と、前記内側取付部材と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備え、前記弾性体は、前記外筒の中心軸線に沿う軸方向から見た平面視で前記中心軸線に交差する径方向に、前記内側取付部材を挟む両側に各別に配設された中弾性体を備え、前記内側取付部材と前記外筒との間には、前記平面視で前記中心軸線回りに周回する周方向で互いに隣り合う前記中弾性体同士の間を径方向の外側から覆い前記内側取付部材との間に液室を画成する被覆部材が配設され、前記被覆部材と前記外筒との間に、各前記液室同士を連通するオリフィス通路が形成され、前記被覆部材の外周面に、本体溝と、各前記液室のうちのいずれか一方の液室、および前記本体溝に開口する第1連通開口と、各前記液室のうちのいずれか他方の液室、および前記本体溝に開口する第2連通開口と、が形成され、前記外筒が、前記被覆部材に外嵌することによって、前記本体溝と前記外筒の内周面との間に、前記オリフィス通路が画成され、前記本体溝は、周方向に延び、互いに前記軸方向の位置を異ならせて配設された第1溝、および第2溝を備え、前記被覆部材は、射出成形により形成されるとともに、前記本体溝を画成する壁部のうち、周方向に延び、前記第1溝と前記第2溝とを前記軸方向に仕切る仕切壁部に、射出ゲート痕部が設けられ、前記射出ゲート痕部は、液溜り凹部と、前記液溜り凹部から前記軸方向に延び、前記第1溝、および前記第2溝のうちのいずれか一方に連通する接続溝と、により構成されている。
【0007】
この発明によれば、本体溝を画成する壁部のうち、周方向に延び、第1溝と第2溝とを前記軸方向に仕切る仕切壁部に、液溜り凹部および接続溝が設けられているので、液室の内圧が上昇したときに、液体を、第1溝、および第2溝のうちのいずれか一方の溝から接続溝を通して液溜り凹部に進入させることが可能になり、高粘度の液体が液室に封入されても、動ばねの上昇、および液体の漏出等を確実に抑制することができる。
液溜り凹部および接続溝が、キャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートによって形成された射出ゲート痕部を構成しているので、例えば新たな成形ピンを設ける必要等が無く、被覆部材を射出成形する金型構造の複雑化を抑えることができる。
【0008】
前記射出ゲート痕部は、前記仕切壁部において、前記第1連通開口、および前記第2連通開口のうちのいずれか一方より、いずれか他方に近い部分に設けられてもよい。
【0009】
この場合、射出ゲート痕部が、仕切壁部において、第1連通開口、および第2連通開口のうちのいずれか一方より、いずれか他方に近い部分に設けられているので、被覆部材において、第1連通開口、および第2連通開口のうちの前記他方の開口を画成する壁部が成形されるキャビティ部分を、ゲートからの溶融樹脂が、円滑に前記他方の開口回りに流動することができる。
【0010】
前記射出ゲート痕部は、前記第1連通開口、および前記第2連通開口のうちの前記他方が開口している前記第1溝、若しくは前記第2溝に連通してもよい。
【0011】
この場合、射出ゲート痕部が、第1連通開口、および第2連通開口のうちの前記他方が開口している第1溝、若しくは第2溝に連通しているので、液室の内圧が上昇し、液体が、液室から前記他方の開口を通して第1溝、若しくは第2溝に進入したときに、液体を、接続溝を通して液溜り凹部に滞り少なく円滑に進入させることが可能になり、高粘度の液体が液室に封入されても、動ばねの上昇、および液体の漏出等をより一層確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る防振装置によれば、高粘度の液体が液室に封入されても、動ばねの上昇、および液体の漏出等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した防振装置の軸方向の中央部における横断面図である。
【
図2】
図1に示す防振装置のII-II線矢視断面図である。
【
図3】
図1に示す防振装置のIII-III線矢視断面図である。
【
図4】
図1に示す防振装置において、外筒を取り外した状態のIV線矢視図である。
【
図5】
図1に示す防振装置において、外筒を取り外した状態のV線矢視図である。
【
図6】
図1に示す防振装置において、外筒を取り外した状態のVI線矢視図である。
【
図7】
図1に示す防振装置において、外筒を取り外した状態のVII線矢視図である。
【
図8】
図1に示す防振装置において、外筒を取り外した状態で第1連通開口を正面視したVIII線矢視図である。
【
図9】
図1に示す防振装置において、外筒を取り外した状態で第2連通開口を正面視したIX線矢視図である。
【
図10】
図4および
図5に示す防振装置において、外筒および被覆部材を取り外した状態でストッパ弾性部を正面視した側面図である。
【
図11】
図6および
図7に示す防振装置において、外筒および被覆部材を取り外した状態で中弾性体を正面視した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る防振装置の一実施形態を、
図1~
図11を参照しながら説明する。
本実施形態の防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内側取付部材11、および他方に連結されるとともに、内側取付部材11を囲繞する外筒12と、内側取付部材11と外筒12とを弾性的に連結する弾性体31、32と、を備えている。
防振装置1は、例えば自動車用のサスペンションブッシュやエンジンマウント、あるいは工場に設置される産業機械のマウント等として用いられる。
【0015】
以下、外筒12の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。軸方向において、防振装置1の中央部側を内側といい、防振装置1の中央部から離れる側を外側という。
【0016】
図1および
図2に示されるように、内側取付部材11は、筒状の芯金部21と、芯金部21の外周面に固着された樹脂部22と、を備えている。
【0017】
芯金部21は、中心軸線Oと同軸に配設されている。芯金部21における軸方向の両端部21dは、外筒12から軸方向の外側に各別に突出している。芯金部21は、軸方向から見て非円形状を呈する。芯金部21の外周面に、軸方向の全長にわたって連続して延びる平坦な第1面取り部21bが、周方向に間隔をあけて2つ形成されている。芯金部21は、軸方向の全長にわたって、軸方向から見て非円形状を呈する。第1面取り部21bは、芯金部21の外周面において、中心軸線Oを径方向に挟む両側に位置する各部分に設けられている。
以下、軸方向から見た平面視において、2つの第1面取り部21bが互いに対向する向きを一方向Xといい、一方向Xに直交する方向を他方向Yという。
【0018】
樹脂部22は、例えばポリアミド等の合成樹脂材料で形成されている。樹脂部22は、芯金部21の外周面のうち、軸方向の端部21dより軸方向の内側に位置する部分に設けられている。樹脂部22は、芯金部21の外周面における軸方向の端部21dを除く全域にわたって設けられている。
樹脂部22の少なくとも軸方向の端部の外周面は、軸方向から見て非円形状を呈する。図示の例では、樹脂部22の外周面は、軸方向の全長にわたって、軸方向から見て非円形状を呈する。
【0019】
樹脂部22は、芯金部21の外周面における軸方向の中間部分に設けられた中部分26と、中部分26から軸方向の外側に向けて各別に延びる一対の外部分27と、を備えている。
外部分27の外周面は、外部分27より軸方向の内側に位置する中部分26の外周面より径方向の内側に位置している。
【0020】
外部分27の肉厚は、全域にわたって同等になっている。軸方向から見て、外部分27の外周面は、芯金部21における軸方向の端部21dの外周面と同じ形状を呈する。
中部分26の肉厚は、全域にわたって、外部分27の肉厚より厚くなっている。中部分26の、径方向の外側を向く頂面は、周方向の全長にわたって、軸方向に沿う縦断面視で、軸方向に真直ぐ延びている。中部分26は、軸方向から見て、一方向Xに長い長方形状を呈する。
【0021】
中部分26の外周面のうち、一方向Xを向き、かつ他方向Yに延びる短辺部分26aに、後述するストッパ弾性部34が連結されている。短辺部分26aは、軸方向から見て突の曲線状を呈する。短辺部分26aは、液室14a、14bと径方向で対向している。短辺部分26aは、内側取付部材11の外周面のなかで最も径方向の外側に位置している。
中部分26の外周面のうち、他方向Yを向き、かつ一方向Xに延びる長辺部分26bに、後述する中弾性体32が連結されている。長辺部分26bに、他方向Yに窪む窪み部26cが形成されている。図示の例では、窪み部26cは、長辺部分26bにおける一方向Xの両端部を除く全域に形成されるとともに、一方向Xに沿って中央部から離れるに従い、深さが浅くなっている。長辺部分26bは、軸方向から見て凹曲線状を呈する。なお、長辺部分26bに、窪み部26cを形成しなくてもよい。
【0022】
中部分26において、短辺部分26aにおける他方向Yの中央部の肉厚が最大とされ、長辺部分26bにおける一方向Xの中央部の肉厚が最小となっている。短辺部分26aと長辺部分26bとの接続部分、すなわち内側取付部材11の外周面において、後述するストッパ弾性部34が連結された部分と、後述する中弾性体32が連結された部分と、の接続部分は、軸方向から見て径方向の外側に向けて膨出している。図示の例では、短辺部分26aと長辺部分26bとの接続部分は、軸方向から見て、他方向Yに突の曲線状を呈する。
なお、中部分26の外径を、全周にわたって同等にしてもよい。
【0023】
弾性体31、32は、ゴム材料により形成され、内側取付部材11の外周面に加硫接着されている。弾性体31、32は、軸方向に間隔をあけて配置されるとともに、外筒12内に嵌合された環状の一対の端弾性体31と、端弾性体31同士の間において、内側取付部材11を径方向に挟む両側に各別に配設された一対の中弾性体32と、を備えている。弾性体31、32は、端弾性体31を有しなくてもよい。
【0024】
端弾性体31は、外部分27を径方向の外側から囲う端フランジ部31aと、端フランジ部31aの径方向の内端部と内側取付部材11の外周面とを連結する端連結部31bと、を備えている。
【0025】
端フランジ部31aは、周方向の全長にわたって連続して延びている。端フランジ部31aは、中心軸線Oと同軸に配置されている。端フランジ部31aは、内側取付部材11における軸方向の端部より軸方向の内側に位置している。端フランジ部31aに、周方向に延びる環状の剛体板33が設けられている。剛体板33は、例えば金属材料、若しくは合成樹脂材料等の硬質の材質で形成される。剛体板33は、端フランジ部31a内に埋設されている。
端連結部31bは、筒状に形成され、周方向の全長にわたって連続して延びている。端連結部31bは、端フランジ部31aの径方向の内端部から下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びている。端連結部31bは、中部分26における軸方向の外端部に連結されている。端連結部31bは、中心軸線Oと同軸に配置されている。
【0026】
端弾性体31の内周面に、径方向の内側に向けて突出し、外部分27の外周面に連結された補強部31cが形成されている。端弾性体31は、補強部31cによって外部分27の外周面に連結されている。補強部31cは、周方向の位置を異ならせて2つ設けられ、内側取付部材11を径方向に挟む両側に各別に配設されている。補強部31cは、外部分27の外周面において、中部分26の長辺部分26bにおける一方向Xの中央部と軸方向に隣り合う部分に連結されている。
内側取付部材11において、補強部31cが連結された外部分27の外周面が、外部分27より軸方向の内側に位置する中部分26の外周面より径方向の内側に位置している。これにより、補強部31cの径方向の大きさ、つまり端弾性体31の体積を大きく確保することができる。なお、端弾性体31に補強部31cを形成せず、端弾性体31を外部分27の外周面に連結し、中部分26に連結しなくてもよい。
【0027】
中弾性体32は、内側取付部材11を径方向に挟む両側に各別に配設されている。一対の中弾性体32は、互いに同等の形状で、同等の大きさに形成されている。中弾性体32は、全域にわたってゴム材料により形成されている。中弾性体32は、
図11に示されるように、内側取付部材11における軸方向の中央部に配設された主部32aと、主部32aから軸方向の外側に向けて各別に突出し、かつ主部32aより体積が小さい一対の副部32bと、を備えている。主部32aおよび副部32bはそれぞれ、径方向の外側から見た正面視で、一対の辺部が周方向に延び、かつ残り一対の辺部が軸方向に延びる矩形状を呈する。主部32aの周方向の大きさは、副部32bの周方向の大きさより大きい。副部32bは、主部32aにおける周方向の中央部に接続されている。副部32bにおける軸方向の外端は、端弾性体31に接続されている。主部32a、および副部32bそれぞれの、径方向の外側を向く外面は、径方向の外側から見た正面視で軸方向に直交する横方向、および軸方向の双方向に延びる平坦面となっている。主部32aおよび副部32bの各外面は、段差なく連なっている。
【0028】
図1、
図2、および
図10に示されるように、内側取付部材11の外周面に、各液室14a、14bに向けて突出したストッパ弾性部34が各別に設けられている。なお、内側取付部材11の外周面に、ストッパ弾性部34を設けなくてもよい。ストッパ弾性部34は、中部分26の短辺部分26aに設けられている。ストッパ弾性部34は、内側取付部材11および外筒12が相対的に接近移動したときに、後述する被覆部材17の内面に当接可能となっている。ストッパ弾性部34は、中弾性体32と周方向に接続されている。ストッパ弾性部34は、端連結部31bと軸方向に接続されている。ストッパ弾性部34、および弾性体31、32は、例えばゴム材料等で一体に形成されている。内側取付部材11の外周面は、全域にわたって例えばゴム材料等で覆われている。
【0029】
ストッパ弾性部34のうち、周方向に沿って、中央部を含み内側に位置する内側部分34aの外表面は、外側に位置して中弾性体32に接続された外側部分34bの外表面より径方向の内側に位置している。なお、ストッパ弾性部34の外径を全周にわたって同等にしてもよい。内側部分34aと外側部分34bとは、軸方向の全長にわたって周方向に接続されている。内側部分34aの外表面は、中心軸線Oを中心とする円弧形状に形成されている。外側部分34bの外表面は、径方向の外側に向けて突の曲面状に形成されている。外側部分34b、および中弾性体32の主部32aそれぞれの軸方向の大きさは互いに同等され、外側部分34b、および主部32aそれぞれの軸方向の位置は互いに同等になっている。
【0030】
内側取付部材11と外筒12との間には、一対の端弾性体31同士の間において、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に位置する部分を、径方向の外側から覆い内側取付部材11との間に液室14a、14bを画成する被覆部材17が配設されている。
ストッパ弾性部34は、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に配設され、液室14a、14bの隔壁の一部を構成している。被覆部材17は、弾性体31、32を形成する材質より硬質の、例えば合成樹脂材料等で形成されている。被覆部材17は、一対の端弾性体31同士の間に嵌合されている。
【0031】
液室14a、14bに、40℃における動粘度が50cSt以上1000cSt以下、好ましくは500cSt以上1000cSt以下の高粘度の液体が封入されている。動粘度の測定は、JIS K2283に準拠し、B型粘度計((株)トキメック製)により行う。液体としては、例えばシリコーンオイル等が挙げられる。
【0032】
被覆部材17の軸方向の両端部のうちのいずれか一方の端部、および端弾性体31に設けられた剛体板33は、外筒12の軸方向の両端部のうちのいずれか一方の端部に形成された固定部23によって軸方向に挟まれて固定されている。本実施形態では、被覆部材17の前記一方の端部に、径方向の外側に向けて突出し、周方向に延びる固定フランジ部17cが形成され、固定フランジ部17c、および剛体板33が、固定部23によって軸方向に挟まれて固定されている。固定フランジ部17cと、剛体板33における径方向の外端部と、がゴム膜を介して軸方向に積層されている。なお、被覆部材17に固定フランジ部17cを形成しなくてもよい。
【0033】
固定部23は、径方向の外側に向けて窪み、周方向の全長にわたって連続して延びる周溝を有している。この周溝に、固定フランジ部17cおよび剛体板33が、端フランジ部31aとともに、周方向の全長にわたって嵌合されている。固定部23は、外筒12の前記一方の端部が、屈曲されて形成されるとともに、径方向の外側に向けて膨出している。
外筒12の軸方向の両端部のうちのいずれか他方の端部に、径方向の内側に向けて突出し、被覆部材17の軸方向の両端部のうちのいずれか他方の端部を、軸方向に支持する支持突部24が形成されている。支持突部24は、外筒12の前記他方の端部が、屈曲されてフランジ状に形成されている。支持突部24は、剛体板33を介して、被覆部材17の前記他方の端部を軸方向に支持している。なお、被覆部材17に支持突部24を形成しなくてもよい。
【0034】
被覆部材17は、内側取付部材11を全周にわたって径方向の外側から囲繞している。被覆部材17の内面は、中弾性体32の外面に液密に当接し、ストッパ弾性部34とは非接触となっている。被覆部材17は、中弾性体32を他方向Yに圧縮変形させている。被覆部材17の内面のうち、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に位置して、液室14a、14bを画成する部分は、中心軸線Oに直交する横断面視で、中心軸線Oを中心とする円弧形状に形成されている。被覆部材17の内面のうち、液室14a、14bを画成する部分に、径方向の内側に向けて突出し、内側取付部材11および外筒12が相対的に接近移動したときに、ストッパ弾性部34の内側部分34aの外表面に当接可能なストッパ部17bが形成されている。
【0035】
図6に示されるように、被覆部材17の外周面に、外筒12の内周面との間にオリフィス通路を画成する本体溝19と、各液室14a、14bのうちのいずれか一方の液室14a、および本体溝19に開口する第1連通開口18と、各液室14a、14bのうちのいずれか他方の液室14b、および本体溝19に開口する第2連通開口20と、が形成されている。
【0036】
第1連通開口18、および第2連通開口20は、軸方向の位置を異ならせ、かつ周方向で隣り合うように配設されている。第1連通開口18、および第2連通開口20はそれぞれ、本体溝19において、本体溝19が延びる方向の両端部に各別に開口している。第1連通開口18、および第2連通開口20は、軸方向で隣り合うように配設されている。
図8および
図9に示されるように、第1連通開口18、および第2連通開口20は、ストッパ弾性部34の一部と径方向で対向している。図示の例では、第1連通開口18、および第2連通開口20は、ストッパ弾性部34が有する2つの外側部分34bのうちのいずれか一方の軸方向の一端部と径方向で対向している。
図10に示されるように、外側部分34bの軸方向の一端部の外周面は、径方向の内側に向けて窪んでいる。図示の例では、外側部分34bの軸方向の一端部の外周面は、軸方向の外側に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びている。
なお、複数の外側部分34bのうち、後述する注入孔12aが開口した第1連通開口18と径方向で対向する外側部分34bの軸方向の一端部のみを、径方向の内側に向けて窪ませてもよい。また、ストッパ弾性部34のうち、第1連通開口18、および第2連通開口20と径方向で対向する各部分の外周面を、径方向の内側に向けて窪ませなくてもよい。
【0037】
図6および
図7に示されるように、本体溝19は、周方向に延び、互いに軸方向の位置を異ならせて配設された第1溝19a、および第2溝19bと、第1溝19aと第2溝19bとを接続する第3溝19dと、を備えている。
第1溝19a、および第2溝19bそれぞれの周方向の長さは、互いに同じで、第3溝19dの長さより長くなっている。第1連通開口18は、第1溝19aにおける周方向の一端部に開口し、第2連通開口20は、第2溝19bにおける周方向の一端部に開口し、第3溝19dは、第1溝19aおよび第2溝19bそれぞれにおける周方向の他端部同士を接続している。第1溝19aおよび第2溝19bそれぞれにおける周方向の他端部同士は、周方向に隣接している。第3溝19dは、周方向で隣り合う第1連通開口18と第2連通開口20との間に設けられている。
【0038】
被覆部材17の外周面における、第1連通開口18および第2連通開口20のうちの少なくとも一方の開口周縁部の少なくとも一部に、第2面取り部17dが形成されている。なお、被覆部材17の外周面に第2面取り部17dを形成しなくてもよい。
第2面取り部17dは、第1連通開口18および第2連通開口20双方の開口周縁部に形成されている。第2面取り部17dは、径方向の外側に向かうに従い、第1連通開口18および第2連通開口20の各開口を拡げる向きに延びている。第2面取り部17dは、本体溝19を画成する壁部のうち、周方向に延び、第1溝19aと第2溝19bとを軸方向に仕切る仕切壁部19eに形成されている。
【0039】
本体溝19を画成する壁部のうち、本体溝19が延びる方向の両端部に各別に設けられ、軸方向に延びる端壁部19cは、第1連通開口18、および第2連通開口20それぞれにおける内面の一部を各別に画成している。端壁部19cの周方向の大きさは、軸方向の全長にわたって同等になっている。端壁部19cは、軸方向および周方向の双方向に傾斜する方向に直線状に延びている。なお、端壁部19cとして、例えば、軸方向に真直ぐ延びる構成、若しくは軸方向の一方側から他方側に向かうに従い、周方向の大きさが異なる構成を採用する等、適宜変更してもよい。
【0040】
第1連通開口18の内面の一部を画成する端壁部19cは、軸方向に沿って第2溝19bから離れるに従い、周方向に沿う第1連通開口18の反対側に向けて延びている。第2連通開口20の内面の一部を画成する端壁部19cは、軸方向に沿って第1溝19aから離れるに従い、周方向に沿う第2連通開口20の反対側に向けて延びている。第1連通開口18の内面の一部を画成する端壁部19c、および第2連通開口20の内面の一部を画成する端壁部19cは、互いにほぼ平行に延びている。これらの端壁部19cにより周方向で挟まれた部分が、第3溝19dとなっている。すなわち、端壁部19cにおける周方向の両端面19f、19gのうち、いずれか一方の内端面19fが、第1連通開口18、若しくは第2連通開口20の内面の一部を画成し、内端面19fと反対側の外端面19gが、第3溝19dを画成している。
【0041】
被覆部材17は、周方向に分割された複数の分割体15を備えるとともに、周方向で互いに隣り合う分割体15の周端縁15a同士が互いに突き当てられて全体で円筒状をなしている。2つの分割体15は、同等の形状で同等の大きさに形成され、それぞれが軸方向に反転した状態で、周端縁15a同士が周方向に連ねられて配置されている。なお、被覆部材17として、全体が筒状に一体に形成された構成を採用してもよい。
被覆部材17は、中弾性体32を全周にわたって覆っている。分割体15の周端縁15aは、中弾性体32における周方向の中央部に位置している。第1連通開口18、および第2連通開口20はそれぞれ、2つの分割体15それぞれにおいて、周方向で互いに隣接する周端部に各別に形成されている。
【0042】
図1および
図7に示されるように、互いに突き当てられた各分割体15の周端縁15aには、互いに係合することで、周方向で互いに隣り合う各分割体15の軸方向および径方向の相対移動を規制する第1係合部41および第2係合部42が各別に形成されている。なお、各分割体15に、第1係合部41および第2係合部42を形成しなくてもよい。
【0043】
第1係合部41および第2係合部42は、分割体15の周端縁15aのうち、第1溝19aと第2溝19bとの間に位置する部分に形成されている。第1係合部41および第2係合部42の各一部は、仕切壁部19eに形成されている。第1係合部41および第2係合部42は、内側取付部材11を径方向に挟む第3溝19dの反対側に設けられている。第1係合部41は、一方の分割体15の周端縁15aから周方向に突出する凸部となっている。第2係合部42は、他方の分割体15の周端縁15aに形成された周方向に窪む凹部となっている。第2係合部42は、被覆部材17の、径方向の内側を向く内面に開口せず、仕切壁部19eの外周面に開口している。第2係合部42内に、第1係合部41が嵌合されている。
【0044】
互いに突き当てられた各分割体15の周端縁15aには、互いに係合することで、周方向で互いに隣り合う各分割体15の軸方向および径方向の相対移動を規制する第3係合部43および第4係合部44が各別に形成されている。なお、各分割体15に、第3係合部43および第4係合部44を形成しなくてもよい。
【0045】
第3係合部43は、第2係合部42に軸方向に連なり、他方の分割体15の周端縁15aから周方向に突出する凸部となっている。第4係合部44は、第1係合部41に軸方向に連なり、一方の分割体15の周端縁15aに形成された周方向に窪む凹部となっている。第4係合部44は、被覆部材17の内面に開口せず、仕切壁部19eの外周面に開口している。第4係合部44内に、第3係合部43が嵌合されている。第3係合部43および第1係合部41は、軸方向に積層されている。
【0046】
図4および
図5に示されるように、被覆部材17は、射出成形により形成されるとともに、仕切壁部19eに、射出ゲート痕部36が設けられている。射出ゲート痕部36は、液溜り凹部36aと、液溜り凹部36aから軸方向に延び、第1溝19a、および第2溝19bのうちのいずれか一方に連通する接続溝36bと、により構成されている。
射出ゲート痕部36は、仕切壁部19eにおいて、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちのいずれか一方より、いずれか他方に近い部分に設けられている。なお、射出ゲート痕部36を、仕切壁部19eにおいて、第1連通開口18、および第2連通開口20の双方から同等の距離離れた部分に設けてもよい。
射出ゲート痕部36は、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちの前記他方が開口している第1溝19a、若しくは第2溝19bに連通している。なお、射出ゲート痕部36を、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちの前記一方が開口している第1溝19a、若しくは第2溝19bに連通させてもよい。
【0047】
図示の例では、射出ゲート痕部36は、仕切壁部19eに2つ設けられ、一方の射出ゲート痕部36は、第2連通開口20より第1連通開口18に近い位置に設けられ、かつ第1溝19aに連通し、他方の射出ゲート痕部36は、第1連通開口18より第2連通開口20に近い位置に設けられ、かつ第2溝19bに連通している。射出ゲート痕部36は、各分割体15に1つずつ設けられている。
【0048】
外筒12が、被覆部材17に外嵌することによって、外筒12と内側取付部材11とが弾性的に連結されるとともに、本体溝19と外筒12の内周面との間に、各液室14a、14b同士を連通するオリフィス通路が画成されている。オリフィス通路は、第1連通開口18、および第2連通開口20を通して、各液室14a、14b同士を連通している。オリフィス通路は、被覆部材17と外筒12との間に、周方向に1周半以上にわたって延設されている。図示の例では、オリフィス通路は、被覆部材17と外筒12との間に、周方向にほぼ2周にわたって延設されている。
そして、この防振装置1に振動が入力されたときに、弾性体31、32が弾性変形しつつ、各液室14a、14bの内容積が変動することで、液室14a、14b内の液体がオリフィス通路を流通して液柱共振を生じさせることにより振動が減衰、吸収される。
【0049】
図3に示されるように、外筒12の外周面に、径方向の内側に向けて窪む凹部12bが設けられている。なお、外筒12の外周面に凹部12bを設けなくてもよい。外筒12の内周面のうち、凹部12bの底壁と対応する部分は、径方向の内側に向けて膨出している。凹部12bは、仕切壁部19eにおける第2面取り部17dの内側に挿入されている。凹部12bの底壁に、液室14a、14bに液体を注入するための注入孔12aが形成されている。注入孔12aは、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちの少なくとも一方に向けて開口している。図示の例では、注入孔12aは、第1連通開口18に向けて開口している。注入孔12aに、封止材16が嵌合され、封止材16により注入孔12aが封止されている。図示の例では、封止材16はリベットとされ、リベットの頭部は、外筒12の外周面より径方向の内側に位置している。封止材16は、第1連通開口18内に挿入されている。外筒12に、第2連通開口20に向けて開口した注入孔12aを形成してもよい。
【0050】
図6に示されるように、オリフィス通路を画成する壁面に、このオリフィス通路内を一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する液体を、他方の液室14b内に短絡して到達させる第1短絡貫通孔37、および、このオリフィス通路内を他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する液体を、一方の液室14a内に短絡して到達させる第2短絡貫通孔38が形成されている。
第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38を通過する液体の流通抵抗は、オリフィス通路の流通抵抗より小さい。第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38の各流路断面積は、例えば約3mm
2以上とされ、オリフィス通路の流路断面積より小さい。第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38の各長さは、オリフィス通路の長さより短い。
【0051】
第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38は、被覆部材17の外周面に形成され、本体溝19の溝底面に形成されている。第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38は、2つの分割体15に各別に形成されている。
第1短絡貫通孔37は、第1溝19aにおける周方向の他端部に開口している。第1短絡貫通孔37、および第2連通開口20それぞれの周方向の位置は、互いに同等になっている。第2短絡貫通孔38は、第2溝19bにおける周方向の他端部に開口している。第2短絡貫通孔38、および第1連通開口18それぞれの周方向の位置は、互いに同等になっている。第1短絡貫通孔37は、他方の液室14bにおいて、オリフィス通路内を液体が一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する流通方向F1の前側の端部に開口している。第2短絡貫通孔38は、一方の液室14aにおいて、オリフィス通路内を液体が他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する流通方向F2の前側の端部に開口している。
【0052】
第1短絡貫通孔37は、第1連通開口18から流通方向F1に沿って中心軸線Oを中心に180°を超えて離れた位置に配置され、第2短絡貫通孔38は、第2連通開口20から流通方向F2に沿って中心軸線Oを中心に180°を超えて離れた位置に配置されている。
第1短絡貫通孔37は、第1溝19aにおける軸方向の中央部に配置され、第2短絡貫通孔38は、第2溝19bにおける軸方向の中央部に配置されている。第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38それぞれにおける本体溝19の溝底面における開口形状は、周方向に長い長円形状となっている。
【0053】
第1短絡貫通孔37の内周面のうち、液体がオリフィス通路内を一方の液室14aから他方の液室14bに向けて流通する流通方向F1の後側の端部に位置し、流通方向F1の前側を向く後端面37aは、径方向の外側から内側に向かうに従い、流通方向F1の前側に向けて延びている。図示の例では、第1短絡貫通孔37の内周面のうち、流通方向F1の前側の端部に位置し、流通方向F1の後側を向く前端面37bも、径方向の外側から内側に向かうに従い、流通方向F1の前側に向けて延びている。第1短絡貫通孔37における後端面37aおよび前端面37bはほぼ平行になっている。
【0054】
第2短絡貫通孔38の内周面のうち、液体がオリフィス通路内を他方の液室14bから一方の液室14aに向けて流通する流通方向F2の後側の端部に位置し、流通方向F2の前側を向く後端面38aは、径方向の外側から内側に向かうに従い、流通方向F2の前側に向けて延びている。図示の例では、第2短絡貫通孔38の内周面のうち、流通方向F2の前側の端部に位置し、流通方向F2の後側を向く前端面38bも、径方向の外側から内側に向かうに従い、流通方向F2の前側に向けて延びている。第2短絡貫通孔38における後端面38aおよび前端面38bはほぼ平行になっている。
【0055】
図2、
図10および
図11に示されるように、中弾性体32には、液室14a、14bの内圧により弾性変形することで、各液室14a、14b同士を連通し、液体を各液室14a、14b同士の間を流通させる溝状のリーク通路28、29が形成されている。リーク通路28、29は、各液室14a、14bの内圧が変動する前の待機状態では、被覆部材17がリーク通路28、29の隔壁を弾性変形させていることにより、リーク通路28、29を通した各液室14a、14b同士の連通が遮断されている。
リーク通路28、29は、中弾性体32において、被覆部材17の内面に当接した外面に形成されている。リーク通路28、29は、中弾性体32の、周方向を向く側面に開口している。リーク通路28、29は、中弾性体32の外面を径方向の外側から見た正面視で、軸方向に直交する方向に直線状に延びている。
【0056】
リーク通路28、29は、中弾性体32に軸方向の位置を異ならせて複数形成されている。図示の例では、リーク通路28、29は、中弾性体32における主部32aおよび一対の副部32bに1つずつ形成されている。
複数のリーク通路28、29のうち、主部32aに形成された第1リーク通路28は、主部32aにおける軸方向の中央部に配置され、副部32bに形成された第2リーク通路29における軸方向の中央部は、副部32bにおける軸方向の中央部より軸方向の外側に位置している。複数のリーク通路28、29のうちの少なくとも2つは、流路長が互いに異なっている。図示の例では、第1リーク通路28の周方向の長さは、第2リーク通路29の周方向の長さより長くなっている。第1リーク通路28の幅は、第2リーク通路29の幅より狭くなっている。
【0057】
複数のリーク通路28、29のうちの少なくとも2つは、被覆部材17によるこのリーク通路28、29の隔壁の弾性変形量が互いに異なっている。本実施形態では、第1リーク通路28の隔壁の被覆部材17による弾性変形量が、第2リーク通路29の隔壁の被覆部材17による弾性変形量より大きくなっている。第1リーク通路28が開く液室14a、14bの内圧が、第2リーク通路29が開く液室14a、14bの内圧より高くなっている。
なお、第1リーク通路28の隔壁の被覆部材17による弾性変形量を、第2リーク通路29の隔壁の被覆部材17による弾性変形量以下としてもよい。また、第1リーク通路28が開く液室14a、14bの内圧を、第2リーク通路29が開く液室14a、14bの内圧以下としてもよい。
【0058】
被覆部材17の内面には、第1リーク通路28内、および第2リーク通路29内に各別に挿入された突リブ17aが形成されている。突リブ17aは、被覆部材17の内面において、中心軸線Oを径方向に挟む各位置に、軸方向に間隔をあけて複数ずつ形成され、各突リブ17aが、第1リーク通路28内、および第2リーク通路29内に各別に挿入されている。突リブ17aは、第1リーク通路28内、および第2リーク通路29内にそれぞれ、周方向の全長にわたって配置されている。突リブ17aは、第1リーク通路28、および第2リーク通路29の各内面に全域にわたって当接している。
【0059】
突リブ17aは、分割体15の内面における周方向の両端部に形成されている。突リブ17aは、分割体15の周端縁15aで周方向に分断され、2つの分割体15が周方向に組み合わされて構成されている。
第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38は、第1リーク通路28より軸方向の外側で、かつ第2リーク通路29より軸方向の内側に位置している。
【0060】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、本体溝19を画成する壁部のうち、周方向に延び、第1溝19aと第2溝19bとを軸方向に仕切る仕切壁部19eに、液溜り凹部36aおよび接続溝36bが設けられているので、液室14a、14bの内圧が上昇したときに、液体を、第1溝19a、および第2溝19bのうちのいずれか一方の溝から接続溝36bを通して液溜り凹部36aに進入させることが可能になり、高粘度の液体が液室14a、14bに封入されても、動ばねの上昇、および液体の漏出等を確実に抑制することができる。
液溜り凹部36aおよび接続溝36bが、キャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートによって形成された射出ゲート痕部36を構成しているので、例えば新たな成形ピンを設ける必要等が無く、被覆部材17を射出成形する金型構造の複雑化を抑えることができる。
【0061】
射出ゲート痕部36が、仕切壁部19eにおいて、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちのいずれか一方より、いずれか他方に近い部分に設けられているので、被覆部材17において、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちの前記他方の開口を画成する壁部が成形されるキャビティ部分を、ゲートからの溶融樹脂が、円滑に前記他方の開口回りに流動することができる。
【0062】
射出ゲート痕部36が、第1連通開口18、および第2連通開口20のうちの前記他方が開口している第1溝19a、若しくは第2溝19bに連通しているので、液室14a、14bの内圧が上昇し、液体が、液室14a、14bから前記他方の開口を通して第1溝19a、若しくは第2溝19bに進入したときに、液体を、接続溝36bを通して液溜り凹部36aに滞り少なく円滑に進入させることが可能になり、高粘度の液体が液室14a、14bに封入されても、動ばねの上昇、および液体の漏出等をより一層確実に抑制することができる。
【0063】
高粘度の液体が液室14a、14bに封入されているので、オリフィス通路における液柱共振に基づく減衰特性のピークを、広い周波数範囲にわたって生じさせることが可能になり、広い周波数範囲で減衰性能を発揮させることができる。
【0064】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
外筒12に注入孔12aを形成しなくてもよく、注入孔12aは、例えば本体溝19等に向けて開口してもよい。
端弾性体31に剛体板33を設けなくてもよく、外筒12に固定部23を形成しなくてもよい。
内側取付部材11として、全体が一体に形成された構成を採用してもよい。
内側取付部材11の外径を、軸方向の全長にわたって同等にしてもよい。
【0066】
被覆部材17に、第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38を形成しなくてもよい。本体溝19において、第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38を形成する位置は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。第1短絡貫通孔37、および第2短絡貫通孔38の各内周面は、例えば径方向に延びる等、適宜変更してもよい。
オリフィス通路として、周方向に1周以下延びる構成を採用してもよい。
液室14a、14bに封入する液体は、前記実施形態に限らず例えば、水、およびエチレングリコール等を採用してもよい。
【0067】
中弾性体32に補強体を埋設してもよく、被覆部材17により中弾性体32を圧縮変形しなくてもよく、被覆部材17を、周方向で互いに隣り合う中弾性体32同士の間に嵌合し、中弾性体32を、周方向で互いに隣り合う被覆部材17同士の間から露出させてもよい。
中弾性体32に、複数のリーク通路28、29を形成しなくてもよい。
中弾性体32として、主部32aおよび副部32bを備える構成を示したが、例えば、主部32aおよび副部32bのうちのいずれか一方のみを備える構成を採用する等適宜変更してもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 防振装置
11 内側取付部材
12 外筒
14a、14b 液室
17 被覆部材
18 第1連通開口
19 本体溝
19a 第1溝
19b 第2溝
19c 端壁部
19e 仕切壁部
20 第2連通開口
32 中弾性体(弾性体)
36 射出ゲート痕部
36a 液溜り凹部
36b 接続溝
O 中心軸線