(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】水性感圧接着剤組成物およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20231113BHJP
C09J 133/08 20060101ALI20231113BHJP
C09J 125/08 20060101ALI20231113BHJP
C09J 133/02 20060101ALI20231113BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J133/08
C09J125/08
C09J133/02
C08F220/10
(21)【出願番号】P 2020512662
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 US2018042423
(87)【国際公開番号】W WO2019050626
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】イェダブ、ヴィニータ
(72)【発明者】
【氏名】エルドラッジ、ジョセフィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス、ジュニア、ウィリアム、ビー.
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-313528(JP,A)
【文献】特開平04-304281(JP,A)
【文献】米国特許第05461103(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感圧接着剤組成物であって、
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体であって、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、
(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、
(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、
(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、
(e)0.1から1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むアクリル共重合体を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有
し、
前記組成物が、エチルアクリレート、酢酸ビニル、またはα-メチルスチレンを含まない、感圧接着剤組成物。
【請求項2】
感圧接着剤組成物であって、
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体であって、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、
(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、
(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、
(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、
(e)0.1から1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むアクリル共重合体を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有し、
前記組成物が、架橋剤を含まない
、感圧接着剤組成物。
【請求項3】
感圧接着剤組成物であって、
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体であって、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、
(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、
(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、
(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、
(e)0.1から1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むアクリル共重合体と、
メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸
、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸
と、を含み
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有する、感圧接着剤組成物。
【請求項4】
感圧接着剤組成物であって、
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体であって、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、
(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、
(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、
(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、
(e)0.1から1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むアクリル共重合体を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有し、
前記アクリル共重合体のガラス転移温度が、-55~-45℃であ
る、感圧接着剤組成物。
【請求項5】
感圧接着剤組成物を調製するための方法であって、
モノマー混合物および界面活性剤を水性媒体中に分散させることによってモノマーエマルジョンを調製し、前記モノマー混合物が、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、および(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むことと、
開始剤を前記モノマーエマルジョンに導入し、それにより、前記モノマー混合物を重合し、感圧接着剤組成物での使用に適したアクリル共重合体を生成することと、を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有
し、
前記組成物が、エチルアクリレート、酢酸ビニル、またはα-メチルスチレンを含まない、調製方法。
【請求項6】
感圧接着剤組成物を調製するための方法であって、
モノマー混合物および界面活性剤を水性媒体中に分散させることによってモノマーエマルジョンを調製し、前記モノマー混合物が、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、および(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むことと、
開始剤を前記モノマーエマルジョンに導入し、それにより、前記モノマー混合物を重合し、感圧接着剤組成物での使用に適したアクリル共重合体を生成することと、を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有し、
前記組成物が、架橋剤を含まない、調製方法。
【請求項7】
感圧接着剤組成物を調製するための方法であって、
モノマー混合物および界面活性剤を水性媒体中に分散させることによってモノマーエマルジョンを調製し、前記モノマー混合物が、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、および(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むことと、
開始剤を前記モノマーエマルジョンに導入し、それにより、前記モノマー混合物を重合し、感圧接着剤組成物での使用に適したアクリル共重合体を生成することと、を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有し、
前記組成物が、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸を含む、調製方法。
【請求項8】
感圧接着剤組成物を調製するための方法であって、
モノマー混合物および界面活性剤を水性媒体中に分散させることによってモノマーエマルジョンを調製し、前記モノマー混合物が、前記モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、および(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むことと、
開始剤を前記モノマーエマルジョンに導入し、それにより、前記モノマー混合物を重合し、感圧接着剤組成物での使用に適したアクリル共重合体を生成することと、を含み、
前記アクリル共重合体が、前記モノマー混合物中の前記モノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有し、
前記アクリル共重合体のガラス転移温度が、-55~-45℃である、調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2017年9月5日出願の米国仮特許出願第62/554,278号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、感圧接着剤組成物に関する。より詳細には、本開示は、幅広い温度範囲にわたって接着性および/または凝集性が改善された状態の水性感圧接着剤組成物、ならびにその作製方法に関する。
【0003】
発明の背景および概要
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。接着剤組成物の1つの特に有用なサブセットは、水性感圧接着剤である。異なる最終使用用途における水性感圧接着剤の使用は、一般に知られている。例えば、水性感圧接着剤は、ラベル、テープ、転写シート、包帯、装飾用および保護用のシート、ならびに多種多様な他の製品に使用することができる。当技術分野で使用されているように、「感圧接着剤」という用語は、乾燥時に室温で積極的かつ永久的に粘着性である1つ以上のポリマー組成物を含む材料を指す。さらに、用語「水性」は、感圧接着剤が水性キャリアを用いて製造されることを示す。典型的な水性感圧接着剤は、指または手で加える以上の圧力を必要とせずに、単なる接触で様々な異なる表面にしっかりと接着するであろう。
【0004】
感圧接着剤業界によって認識されている2つの特性は、これらのポリマー組成物の接着性(例えば、表面への初期粘着性またはある滞留時間後の接着力)および凝集性(例えば、剪断抵抗性)である。ポリマー組成物の弾性率の低下とガラス転移温度を上昇させるための粘着付与剤の添加などによって感圧接着剤の接着特性を改善する試みは、剪断抵抗を低下させる傾向があり、それによって剪断破壊を促進する。水性感圧接着剤の接着特性は、接着剤を様々な温度(例えば、室温およびより低い温度)で使用しなければならないときに特に重要である。
【0005】
したがって、幅広い温度範囲にわたって接着性および/または凝集性が改善された状態の水性感圧接着剤組成物、ならびにその作製方法が、望ましい。
【0006】
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体を含む水性感圧接着剤組成物が開示されている。いくつかの実施形態では、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸を含み、アクリル共重合体の酸含量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満である。
【0007】
いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、機械的安定剤、顔料、充填剤、凍結融解剤、中和剤、可塑剤、粘着付与剤、接着促進剤、およびそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、アクリル共重合体のガラス転移温度は-55~-45℃である。
【0008】
さらに、水性感圧接着剤組成物はアクリル共重合体であって、重合形態で、0℃未満の比較的低いガラス転移温度を有するモノマーと、100℃以上の比較的高いガラス転移温度を有するモノマーと、を含むアクリル共重合体を含み、このアクリル共重合体が、アクリル共重合体を生成するモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有する。
【0009】
水性感圧接着剤組成物を調製する方法も開示する。いくつかの実施形態では、この方法は、モノマー混合物および界面活性剤を水性媒体中に分散させることによってモノマーエマルジョンを調製し、このモノマー混合物が、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、および(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸を含むことと、モノマーエマルジョンに開始剤を導入し、それにより、モノマー混合物を重合して、感圧接着剤組成物での使用に適したアクリル共重合体を生成することと、を含み、アクリル共重合体の酸含量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一時的な本開示は、水性感圧接着剤組成物およびその作製方法に関する。本明細書に開示される水性感圧接着剤組成物は、以下の実施例において詳述されるように、幅広い温度範囲にわたって接着性および/または凝集性が改善されていることを示す。
【0011】
いくつかの実施形態では、アクリル共重合体は、ラジカル重合、例えばエマルジョン重合によって生成される。最終生成物は、水性媒体中にアクリル共重合体粒子の分散液を含むアクリルエマルジョンであり、各構成単位を含むポリマー粒子は、一定時間にわたって反応器に供給されて重合される特定のモノマーに由来する。本明細書で使用するとき、「共重合体」は、2つ以上の異なるタイプのモノマーが同じポリマー鎖に結合しているポリマーを指す。
【0012】
いくつかの実施形態では、エマルジョン重合による接着剤組成物の調製は、最初に水相を重合反応器に投入し、次いで、重合されるモノマー混合物中に供給することによって行われる。水性の初期投入物は、水に加えて、塩を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示による使用に適した界面活性剤の例には、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
モノマー混合物の供給を開始する前に、水性の初期投入物は、30~110℃の範囲の温度まで加熱される。所望の温度に達した後、モノマー混合物は、フリーラジカル重合開始剤の存在下で、一定期間にわたって重合反応器に徐々に供給される。
【0014】
いくつかの実施形態では、開始剤は、熱開始剤または酸化還元系開始剤であり得る。熱開始剤の例には、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。開始剤が酸化還元系開始剤である場合、還元剤は、例えばアスコルビン酸、スルホキシレート、またはエリソルビン酸であり得、一方、酸化剤は、例えば過酸化物または過硫酸塩であり得る。いくつかの実施形態では、使用される開始剤の量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、0.9重量パーセント未満である。
【0015】
いくつかの実施形態では、モノマー混合物の供給中に連鎖移動が加えられ、生成されるアクリル共重合体の分子量を制御する。使用してもよい連鎖移動剤の例には、t-ドデシルメルカプタンなどの長鎖アルキルメルカプタン、メチル3-メルカプトプロピオネート(「MMP」)、イソプロパノール、イソブタノール、ラウリルアルコール、またはt-オクチルアルコールなどのアルコール、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、およびトリクロロブロモエタンが含まれる。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は、メチル-3-メルカプトプロピオネートである。いくつかの実施形態では、連鎖移動剤は、モノマー混合物の約15重量パーセント、または約20重量パーセント、または約25重量パーセントが重合用の反応器に供給された後に加えられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、追加の成分は、モノマー混合物の供給中に加えられてよい。例えば、界面活性剤(存在する場合、初期水性投入物中の界面活性剤に加えて)は、モノマー混合物の供給中に加えられてよい。いくつかの実施形態では、追加の界面活性剤は、モノマー混合物の約30重量パーセント、または約35重量パーセント、または約44重量パーセントが重合用の反応器に供給された後に加えられてよい。界面活性剤は、とりわけ、アクリル共重合体粒子の粒径分布を制御するために加えられてよい。いくつかの実施形態では、重合によって生成される約5~15重量パーセントのアクリル共重合体粒子は、70~150nm、または80~100nmの重量平均径を有し、アクリル共重合体粒子の残りは、300~700nm、または350~450nmの重量平均径を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、モノマー混合物は、比較的低いガラス転移温度を有するモノマーおよび比較的高いガラス転移温度を有するモノマーを含む。いくつかの実施形態では、比較的低いガラス転移温度を有するモノマーは、示差走査熱量計によって加熱速度10℃/分で測定するとき、-0℃以下のガラス転移温度(または「Tg」)である。いくつかの実施形態では、比較的低いガラス転移温度を有するモノマーのTgは、-100~0℃、または-75~-25℃、または-55~-45℃などの0℃未満である。比較的低いガラス転移温度を有する適切なモノマーの例には、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、比較的高いガラス転移温度を有するモノマーのTgは、20℃よりも高い、または20~150℃、または75~125℃、または100~115℃である。比較的高いガラス転移温度を有する適切なモノマーの例には、スチレン、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、比較的高いガラス転移温度を有するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸である。
【0018】
いくつかの実施形態では、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセント、または70~75重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセント、または15~25重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセント、または5~6重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセント、または0.5~1.5重量パーセントのスチレン、(e)0.1~1重量パーセント、または0.4~0.8重量パーセント、または0.4~0.6重量パーセントの(メタ)アクリル酸を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、アクリル共重合体は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満、または0.75重量パーセント未満、または0.5重量パーセント未満の総酸含量を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、エチルアクリレートを含まない。いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、酢酸ビニルを含まない。いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、α-メチルスチレンを含まない。いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、任意のエチルアクリレート、酢酸ビニル、またはα-メチルスチレンを含まない。いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、架橋剤を含まない。
【0021】
いくつかの実施形態では、アクリル共重合体は、示差走査熱量計によって加熱速度10℃/分で測定されるとき、-10°C以下のガラス転移温度(または「Tg」)を有する。いくつかの実施形態では、アクリルエマルジョンのTgは、-70~10℃、または-60~-30°C、または-55~-45℃である。
【0022】
いくつかの実施形態では、水性感圧接着剤組成物は、任意選択的に、1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。1つまたは複数の添加剤の例には、増粘剤、消泡剤、湿潤剤、機械的安定剤、顔料、充填剤、凍結融解剤、中和剤、可塑剤、粘着付与剤、接着促進剤、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
水性感圧接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に対して、0~5重量パーセントの増粘剤を含んでもよい。0~5重量パーセントの全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書において開示される。例えば、中和剤の重量%は、0、0.5、または1重量パーセントの下限から1、3、または5重量パーセントの上限までであり得る。増粘剤の例としては、The Dow Chemical Company,Midland,Michiganから市販されているACRYSOL(商標)、UCAR(商標)、およびCELOSIZE(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
水性感圧接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、0~2重量パーセントの中和剤を含んでもよい。0~2重量パーセントの全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書において開示される。例えば、中和剤の重量%は、0、0.3、または0.5重量パーセントの下限から0.5、1、または2重量パーセントの上限までであり得る。中和剤は、典型的には配合された感圧接着剤組成物に安定性を与えるようにpHを制御するために使用される。中和剤の例には、アンモニア水、アミン水溶液、および他の水性無機塩基が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
水性感圧接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、50重量パーセント未満の粘着付与剤を含んでもよい。50重量パーセント未満の全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書において開示される。例えば、粘着付与剤の含有量は、0、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、4、または5重量パーセントの下限から、10、20、30、40、または50重量パーセントの上限までであり得る。粘着付与剤の例としては、ロジン酸および/またはロジン酸をアルコールまたはエポキシ化合物ならびに/もしくはその混合物でエステル化することによって得られるロジンエステルを含むロジン樹脂、非水素化脂肪族C5樹脂、水素化脂肪族C5樹脂、芳香族変性C5樹脂、テルペン樹脂、水素化C9樹脂、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
水性感圧接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、5重量パーセント未満の接着促進剤を含んでもよい。5重量パーセント未満の全ての個々の値および部分範囲は、本明細書に含まれ、本明細書において開示される。例えば、接着促進剤の重量%は、0、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、または4重量パーセントの下限から、0.1、0.2、0.3、0.5、1、2、3、4、5重量パーセントの上限までであり得る。
【0027】
本開示の実施例
本開示を例示的な実施例および比較例(まとめて「実施例」)を論じることによってこれよりさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、例示的な実施例に限定されない。
【0028】
アクリル共重合体の調製
実施例で使用するアクリル共重合体を、以下の手順に従って調製する。コンデンサ、機械的撹拌器、温度制御された熱電対、ならびに開始剤およびモノマー用の入口を備える5リットルの4つ口反応器に、脱イオン水480gを供給し、穏やかな窒素流下で91℃まで加熱する。別の容器では、表1で特定された配合に従って、モノマーエマルジョンを、脱イオン水307gと、50%水酸化ナトリウム水溶液、スルホコハク酸の二ナトリウムエトキシル化アルコール半エステルの30%水溶液、ならびにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アクリル酸(「AA」)、スチレン(「STY」)、2-エチルヘキシルアクリレート(「EHA」)、ブチルアクリレート(「BA」)、およびメチルメタクリレート(「MMA」)の23%水溶液を含むモノマー混合物エマルジョン約2,200gとを混合することによって調製する。
【表1】
【0029】
次いで、反応器の内容物を約91℃まで加熱し、脱イオン水52g中の過硫酸ナトリウム9.8gと炭酸ナトリウム0.86gとの混合物の溶液および100nm重量平均粒径を有する30.2%固形ラテックス73g(一般に、「シード」または「プリフォームシード」として知られる)を反応器に加える。これらを添加した直後に、モノマー混合物エマルジョンを反応器に供給する。
【0030】
24%モノマー混合物エマルジョンを反応器に加えたとき、脱イオン水20g中のメチル-3-メルカプトプロピオネート(「MMP」)0.98gを、モノマープレエマルジョンに加える。44%モノマー混合物エマルジョンを反応器に加えたとき、脱イオン水36g中のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの23%水溶液24gを反応器に加える。モノマー混合物エマルジョンの反応器への添加が完了した後、硫酸第一鉄七水和物0.018gおよび脱イオン水16g中の硝酸銅の14%水溶液0.073gを反応器に加える。反応器の内容物を徐々に冷却し、脱イオン水52g中の70%水性t-ブチルヒドロペルオキシド12.3gおよび脱イオン水74g中のスルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド6.8gを徐々に加えることによって未重合モノマーを低減する。次いで、脱イオン水16g中に30%アンモニア水15.8gを加えて、エマルジョンのpHを上昇させる。
【0031】
次いで、エマルジョンをCytec Solvay Groupから入手可能な0.7%AEROSOL(商標)OT-75を混合することによって配合し、14%のアンモニアを加えて、pHを約8.0に調整する。次いで、粘度は、LVT Brookfield粘度計(#3、30rpm)で測定するとき、規定のHASEおよび/またはHEURの増粘剤を加えることにより、約1,000cpsの粘度まで上昇する。CE2では、Eastmanから入手可能な追加の10%w/w TACOLYN(商標)1070粘着付与剤を、配合中に加える。次いで、エマルジョンをChemsultantsから入手可能なRP-12剥離ライナ-上にコーティングして、80℃で5分間乾燥させ、次いで、半光沢紙のフェイスストック(特に指示がない限り)と貼り合わせて、パッド状にし、次いで、任意の試験の少なくとも24時間前に50%相対湿度で約23°Fで保管する。
【0032】
得られたエマルジョンは、約60重量パーセントの固形分および約-50℃のガラス転移温度を有する。最終的なエマルジョンは、二峰性の粒径分布を有し、エマルジョン中の約5~15重量パーセントの全ポリマーが、80~100nmの重量平均径を有する粒子に存在し、残りのポリマーは350~450nmの重量平均径を有する粒子に存在する。
【0033】
適用試験
接着性能を、規定の工業的方法(Test Methods for Pressure Sensitive Tapes,16th edition,Pressure Sensitive Tape Council)に従って測定する。ステンレス鋼の剪断を、PSTC試験方法#107に従って1インチ×1インチ×1kgの構成で測定する。ステンレス鋼の剥離を、PSTC試験方法#101に従って測定する。180°剥離を、12インチ/分で測定する。測定は、PSTC試験方法によって設定された規格を保持する恒温室で行う。低温試験を、指定された温度に設定した環境室内で実行する。全ての試験用のHDPEおよびステンレス鋼パネルを、Chemsultantsから得る。市販のポリエチレンフィルム基材を、両面テープでステンレス鋼パネルにフィルムをテーピングすることによって調製する。厚紙パネルは、リサイクルした内容物0%で作製した標準的な厚紙箱から切り取られる。
【0034】
実施例の破壊モード(「FM」)には、以下の略語を使用する。「A」は接着破壊を表し、「C」は凝集破壊を表し、「SS」はスリップスティック破壊を表し、「SI」は繊維の破れまたは厚紙から繊維が剥がれることを表し、「PT」は紙の破れを表す。剥離およびループタック試験の場合、0.5Nを超える性能の差が有意であると見なす。さらに、最低1時間の剪断が望ましい。
【表2】
【0035】
表2に示すように、IE1は、凝集力を損なうことなく、複数のフェイスストック(コート紙、直接感熱紙、およびPET)上で、CE1よりも接着性が有意に改善していることを示す。IE1とCE1との間の破壊モードは、各試験で同じである。
【表3】
【0036】
表3に示すように、IE1、IE2、およびIE3は、CE1よりも室温での接着性が改善していることを示す。
【表4】
【0037】
表4に示すように、IE1およびIE2は、低温(冷蔵庫程度、-5℃)でCE1よりも接着性が改善していることを示す。
【表5】
【0038】
表5に示すように、IE1およびIE2は、低温(冷凍庫程度、-20℃)でCE1よりも接着性が改善されていることを示す。
【表6】
【0039】
表6に示すように、IE1は、室温と低温とのどちらもCE2よりも全体的に接着性が改善されていることを示す。PTまたはFTは、望ましい破壊モードである。
【0040】
上述の実施形態および実施例に記述されたものに加えて、特定の組み合わせの多くの例は本開示の範囲内であり、そのいくつかを以下に述べる。
【0041】
実施形態1.感圧接着剤組成物であって、
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体であって、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、
(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、
(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、
(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、
(e)0.1から1重量パーセントの(メタ)アクリル酸、を含むアクリル共重合体を含み、
このアクリル共重合体が、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有する、感圧接着剤組成物。
【0042】
実施形態2.組成物が、エチルアクリレートを含まない、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0043】
実施形態3.組成物が、酢酸ビニルを含まない、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0044】
実施形態4.組成物が、α-メチルスチレンを含まない、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0045】
実施形態5.組成物が、エチルアクリレート、酢酸ビニル、またはα-メチルスチレンを含まない、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0046】
実施形態6.組成物が、架橋剤を含まない、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0047】
実施形態7.モノマー混合物が、70~75重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレートを含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0048】
実施形態8.モノマー混合物が、15~25重量パーセントのブチルアクリレートを含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0049】
実施形態9.モノマー混合物が、5~6重量パーセントのメチルメタクリレートを含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0050】
実施形態10.モノマー混合物が、0.5~1.5重量パーセントのスチレンを含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0051】
実施形態11.モノマー混合物が、0.4~0.8重量パーセントのアクリル酸を含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0052】
実施形態12.モノマー混合物が、0.4~0.6重量パーセントのアクリル酸を含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0053】
実施形態13.モノマー混合物が、0.75重量パーセント未満のアクリル酸を含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0054】
実施形態14.モノマー混合物が、0.5重量パーセント未満のアクリル酸を含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0055】
実施形態15.増粘剤、消泡剤、湿潤剤、機械的安定剤、顔料、充填剤、凍結融解剤、中和剤、可塑剤、粘着付与剤、接着促進剤、およびそれらの組み合わせをさらに含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0056】
実施形態16.メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される酸をさらに含む、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0057】
実施形態17.アクリル共重合体のガラス転移温度が、-55~-45℃である、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0058】
実施形態18.感圧接着剤組成物であって、
アクリル共重合体であって、重合形態で、
0℃未満の比較的低いガラス転移温度を有するモノマーと、
100℃以上の比較的高いガラス転移温度を有するモノマーと、を含むアクリル共重合体を含み、
このアクリル共重合体が、アクリル共重合体を生成するモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有する、感圧接着剤組成物。
【0059】
実施形態19.比較的低いガラス転移温度を有するモノマーが、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0060】
実施形態20.比較的高いガラス転移温度を有するモノマーが、スチレン、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0061】
実施形態21.比較的高いガラス転移温度を有するモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カルボン酸、およびその組み合わせからなる群から選択される酸である、前述または後述の実施形態のいずれか一つに記載の感圧接着剤組成物。
【0062】
実施形態22.感圧接着剤組成物を調製するための方法であって、
モノマー混合物および界面活性剤を水性媒体中に分散させることによってモノマーエマルジョンを調製し、モノマー混合物が、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、および(e)0.1~1重量パーセントの(メタ)アクリル酸を含むことと、
開始剤をモノマーエマルジョンに導入し、それにより、モノマー混合物を重合し、感圧接着剤組成物での使用に適したアクリル共重合体を生成することと、を含み、
このアクリル共重合体が、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有する、感圧接着剤組成物。
【0063】
実施形態23.感圧接着剤組成物であって、
モノマー混合物から生成されるアクリル共重合体であって、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、
(a)60~80重量パーセントの2-エチルヘキシルアクリレート、
(b)10~30重量パーセントのブチルアクリレート、
(c)3~7重量パーセントのメチルメタクリレート、
(d)0.1~3重量パーセントのスチレン、
(e)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、カルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される0.1~1重量パーセントの酸、を含むアクリル共重合体を含み、
このアクリル共重合体が、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて、1重量パーセント未満の酸含量を有する、感圧接着剤組成物。