(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】表面改質された金属製の開孔成型体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/11 20060101AFI20231113BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231113BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231113BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231113BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20231113BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20231113BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20231113BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20231113BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20231113BHJP
C23C 18/08 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B22F3/11
B01J37/02 301F
B01J37/08
B01J35/10 301H
B01J32/00
B01J37/34
B01J37/02 101Z
B01J37/00 F
B22F3/10 D
B22F1/17
C23C18/08
(21)【出願番号】P 2020516674
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2018074883
(87)【国際公開番号】W WO2019057625
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】102017216566.9
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519278402
【氏名又は名称】アランタム ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ALANTUM EUROPE GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ビュットナー ティロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター ガンナー
(72)【発明者】
【氏名】ベーム ハンス-ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスガーバー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キーベック ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー クリスティアン イマヌエル
(72)【発明者】
【氏名】コルヴェンバッハ ロビン
(72)【発明者】
【氏名】トルクール ラース
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0280637(US,A1)
【文献】国際公開第2017/026291(WO,A1)
【文献】特表2008-502798(JP,A)
【文献】特開平08-222226(JP,A)
【文献】特開平10-040923(JP,A)
【文献】特開平08-193232(JP,A)
【文献】米国特許第03689320(US,A)
【文献】国際公開第03/051562(WO,A1)
【文献】特開2017-002375(JP,A)
【文献】特開2013-144847(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101254466(CN,A)
【文献】特開2003-064404(JP,A)
【文献】特開2012-036503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
B01J 21/00-38/74
C23C 18/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む改質表面を有する開孔成型体の製造方法であって、
半製品として金属を含む開孔成型体は、その表面を金属化合物の粒子でコーティングし、金属化合物の粒子は、熱処理で
化学還元されることができ、または
熱処理で熱分解もしくは化学分解されることができ、
さらに熱処理で化学還元
することにより、または
熱処理で熱分解もしくは化学分解
することによりそれぞれの金属の粒子を形成
でき;
並びに
コーティング操作に続いて、形成された金属粒子が、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して、半製品の表面および/または形成された隣り合う金属粒子に接合される、少なくとも1つの熱処理を行い、
得られる開孔成型体の比表面積は、30m
2/l以上に、および/または、非コーティング金属半製品の原料と比較して、5倍以上に増大する、
ことを特徴とする開孔成型体の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物の粒子が、粉末、粉末混合物および/または懸濁液/分散液として用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末、粉末混合物および/または懸濁液/分散液の形態での前記金属化合物の粒子の塗布が、静電的および/または磁気的に、圧力補助方式で、浸漬、噴霧することによって行われる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粒子の付着性を向上させるために、溶液、懸濁液/分散液、または粉末として、有機および/または無機バインダーを用いる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属化合物の粒子の塗布が、複数
回繰り返される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属化合物の粒子の塗布が、少なくとも3回繰り返される、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金属化合物の粒子を複数回コーティングする際に、バインダーを用いる場合、バインダーの塗布が、複数
回繰り返される、ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属化合物の粒子を複数回コーティングする際に、バインダーを用いる場合、バインダーの塗布が、少なくとも3回繰り返される、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バインダーの塗布および金属化合物の粒子の塗布が、表面の異なる
側に、異なる量を用いて行われ、それぞれの場合に、配置が異なる表面領域(surface area)において、異なる気孔率、細孔径および/または比表面積が得られる、ことを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
バインダーの塗布および金属化合物の粒子の塗布が、半製品の互いに対向する位置の表面に、異なる量を用いて行われ、それぞれの場合に、配置が異なる表面領域(surface area)において、異なる気孔率、細孔径および/または比表面積が得られる、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、CeまたはMgを半製品の金属、および塗布する粒子として用いるか、あるいは、
Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、CeまたはMgの化合物、特に、塩、酸化物、窒化物、水素化物、炭化物、硫化物、硫酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、アジド、硝酸塩、アミン、アミド、金属-有機錯体または金属-有機錯体の塩を、還元可能な、熱的または化学的に分解可能な化合物の金属として用いる、ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー材料の開孔体をそれぞれの金属で電気化学的にコーティングして得られた半製品が使用される、ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
熱処理による熱分解が不活性雰囲気で行われ、または
熱処理による化学分解が酸化により行われ、酸化が酸素を含む雰囲気中もしくは不活性ガスの混合物であって窒素、アルゴンまたはクリプトンを含む雰囲気中で行われ、または
熱処理による化学還元が水素雰囲気中で行われる、
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
半製品の表面および/または隣り合う粒子の表面に、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して金属粒子が接合された成型体の比表面積が、30m
2/l以上である、ことを特徴とする、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
コーティングおよび焼結された開孔成型体中の細孔径が、使用した金属化合物の粒径の10000倍以下である、ことを特徴とする請求項
14に記載の
方法。
【請求項16】
前記成型体の材料中に、酸素が3質量%以
下存在する、ことを特徴とする請求項
14または
15に記載の
方法。
【請求項17】
前記成型体の材料中に、酸素が1質量%以下存在する、ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を含む改質された表面を有する開孔成型体(open-pored molded body)または開孔成形体(open-pored shaped body)を製造する方法、およびその方法によって製造された成形体に関する。
【0002】
特に、多孔質金属成型体のその表面をコーティングして、その特性を向上させることが知られている。この目的のために、粉末状材料を使用するのが通例であり、それは、成型体の表面にバインダーまたは懸濁液を用いて塗布され、有機成分は熱処理で除去され、次に、成形体の材料とは異なる化学組成のコーティングまたは表面領域が、成形体の表面上に高温で形成されることができる。
【0003】
成形体の比表面積(specific surface area)はまた、これらの既知の可能性によっても増大させることができるが、これは、既知の可能性によって限られた範囲でのみ可能であった。
【0004】
しかしながら、非常に大きな比表面積は、多くの産業用途に有利であり、例えば、触媒支援プロセス、濾過、または電気化学用途の電極において非常に望ましい。
【0005】
さらに、それらの特性に関する限り、開孔成形体の表面上の他の特性にもまた、影響を与えることがしばしば望まれる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、金属材料で構成される開孔成型体であって、表面改質された開孔成型体を形成する基材(base material)に比べて、増大した比表面積と、また、その他の表面特性とを有することができる開孔成型体を提供することにある。
【0007】
この目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。請求項10は、その方法によって製造された成型体に関する。
【0008】
有利な実施形態およびさらなる発展は、従属請求項に示される特徴によって実現することができる。
【0009】
本発明では、金属材料で構成される開孔体を半製品(semifinished part)として用いる。これらは、金属グリッド、金属メッシュ、金属織物、金属発泡体(foam)、金属ウール、または金属繊維を含む半製品であり得る。
【0010】
しかしながら、半製品は、ポリマー材料が金属で電気化学的に被覆された開孔成型体であることも有利である。このようにして製造された半製品は、このポリマーの有機成分を熱分解により除去する熱処理を施すことができる。しかしながら、この有機成分の除去は、後にバインダーを同時に除去する際にも行うことができ、これについては、以下でより詳細に論じる。
【0011】
本発明の一実施形態では、この熱処理の前または後に、得られた金属を含む開孔成型体の表面上に、金属化合物(chemical compound)の粒子を開孔体にコーティングする。ここで、粒子はまた、成形体の内部、すなわち、半製品の細孔または空隙(void)に導入されることが望ましい。
【0012】
金属化合物の粒子は、コーティング操作のための、粉末として、粉末混合物として、懸濁液として、または分散液として使用することができる。半製品の表面への粉末、粉末混合物および/または懸濁液/分散液のコーティングは、圧力補助方式における、浸漬、噴霧(スプレー)によって、静電的および/または磁気的に、行うことができる。
【0013】
本発明のさらなる代替において、開多孔性(open-porous)半製品をコーティングするために使用される粉末、粉末混合物、懸濁液または分散液には、金属化合物の粒子だけでなく、細かく分割した形態で、固体粉末として、粉末、粉末混合物、懸濁液または分散液中に混合された無機及び/または有機バインダー、あるいは、金属化合物の粒子または金属粒子の懸濁液/分散液、溶液の液相中に溶解して存在する無機及び/または有機バインダーを含むことができる。
【0014】
半製品の表面を、溶液または懸濁液/分散液の形態のバインダーでコーティングすることは、浸漬または噴霧により行うことができる。このようにして作製された開孔成形体は、半製品として、化学元素の化合物の粉末でコーティングされている。この粉末は、熱処理において、化学還元または熱分解もしくは化学分解により、金属へ変換され得る化合物を含む。
【0015】
液体バインダーで濡れた表面上の粉末粒子の分布、および、また、表面への粒子の付着は、機械的エネルギー、特に振動の作用によって改善できる。
【0016】
粉末、粉末混合物および/または懸濁液/分散液としての粒子の塗布(application)は、何回も(複数回)、好ましくは少なくとも3回(3回以上)、特に好ましくは少なくとも5回(5回以上)繰り返すことができる。これは、それぞれの場合に実行される振動にも適用され、必要に応じてバインダーの塗布にも適用される。
【0017】
しかしながら、半製品の表面のコーティングは、半製品を製造するのに用いたポリマー材料の有機成分を除去する熱処理の前に行うこともできる。粒子含有材料の塗布後、ポリマー材料の有機成分および揮発成分、ならびに同時に使用したバインダーを除去する熱処理を行う。
【0018】
熱処理および粒子塗布後、熱処理により形成され、還元または分解により形成される金属粒子の粒子と、開孔金属成型体の金属表面との間に、焼結ネックまたは焼結ブリッジを形成する焼結を行う。
【0019】
ここで、このようにしてコーティングおよび焼結された開孔成型体の比表面積は、少なくとも30m2/l(30m2/l以上)に増大させることが望ましいが、半製品としての非コーティング金属成形体の原材料と比較して、少なくとも5倍(5倍以上)に増大させることが望ましい。
【0020】
ここで、細孔径が450μm~6000μm、比表面積が1m2/l~30m2/lの範囲の多孔質基材(basic framework)は、片側(気孔率(porosity)勾配)からまたは完全な(completely)塗布に応じて、粒子(0.1μm~250μmの範囲の粒径d50)で充填されることが望ましく、あるいは、多孔質金属成型体のストラット(strut)が、表面上にコーティングされることが望ましい。
【0021】
粒子によるコーティングは、それぞれの場合に、異なる(different)気孔率、細孔径、および/または比表面積を得るために、表面の異なる側、特に互いに対向して配置された半製品の表面上に、異なる量を用いて行うことができる。これは、例えば、異なる側に配置された表面上に、バインダーの使用の有無にかかわらず、粉末、粉末混合物としてまたは懸濁液/分散液中の異なる数の粒子の塗布によって達成することができる。本発明に従って製造される成形体の段階的な形成は、このようにして達成することもできる。
【0022】
コーティングおよび焼結された開孔成型体の塗布粒子層内の細孔径は、使用した粒子径の10000倍以下に相当する。細孔容積の減少に関連する拡散、およびそれによる焼結による物質移動(mass transfer)が、温度及び保持時間の増加と共に促進されるので、これは、さらに、最大焼結温度、およびこの温度での保持時間により影響され得る。
【0023】
本発明により製造される成型体を構成する材料は、O2を3質量%以下、好ましくは1質量%以下含むことが望ましい。このためには、有機成分を除去するための熱処理、必要に応じて行う化学還元、および/または焼結を行う間、不活性または還元性雰囲気を与えることが好ましい。
【0024】
熱分解または化学分解では、それぞれの分解プロセスに適した雰囲気条件を選択することができる。これにより、例えばアルゴンなどの不活性雰囲気中で、例えば不要な分解生成物が除去された、例えば水素を含む、真空条件または還元性雰囲気下で、熱処理を行うことができる。
【0025】
本発明に従って製造されるそのような開孔成型体はまた、(i)濾過の分野で、(ii)(例えば、Ag粒子でコーティングされたAg発泡体触媒を用いたエチレンオキシドの合成における)触媒として、(iii)電極材料として、または(iv)触媒活性物質の支持体(support)として用いることができる。
【0026】
用途(i)の場合、比表面積の増大は、吸着傾向および容量が著しく増加するので、濾過性能の向上につながる。
【0027】
用途(ii)では、比表面積の増大は、活性サイトの数を増加するだけでなく、表面にも明確にファセット(faceted)構造を有するので、触媒活性のより大きな比例的増加をもたらす。さらに、その結果生じる増加した表面エネルギーは、開孔した出発(starting)成形体のファセットされていない(unfaceted)表面と比較して、触媒活性の著しい増加をもたらす。
【0028】
用途例(iii)では、比表面積の増大は、同様に、活性中心の増加をもたらし、これは、表面のファセット構造と組み合わせて、商用電極(例えばニッケルまたはカーボン)と比較して、電気的過電圧の著しい減少をもたらす。具体的な用途としては、例えば、Ni粒子またはMo粒子でコーティングされたNiまたはMo発泡体を用いる、電気分解についても言及することができる。特に、この用途では、この場合に、細孔径の段階的な変化(グラデーション(gradation))により気泡が良好に輸送されることを保証するので、片側に金属粒子を被覆した焼結金属開孔成型体を用いることも有利である。
【0029】
用途(iv)の場合、比表面積の増大は、活性成分、例えば、触媒ウォッシュコートの支持体表面への良好な接着をもたらし、これは、触媒材料の機械的、熱的および化学的安定性を著しく高める。
【0030】
本発明に従って製造される成形体が製造可能な、適用される粒子および半製品に適した金属は、Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、CeまたはMgである。
【0031】
熱処理において、化学還元、熱分解または化学分解によって、それぞれの金属の粒子に変換することができる、金属Ni、Fe、Cr、Al、Nb、Ta、Ti、Mo、Co、B、Zr、Mn、Si、La、W、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zn、Sn、Bi、Ce、Mg、Vの化合物、特に、それらの酸化物、窒化物、水素化物、炭化物、硫化物、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アジド、硝酸塩、アミン、アミド、金属-有機錯体(complex)、金属-有機錯体の塩、または粒子を含む材料の分解性塩であって、半製品として存在する開孔成形体の表面を被覆するものを用いることができる。特に好適な化合物は、以下の化合物である:Ni、Fe、Ti、Mo、Co、Mn、W、Cu、Ag、Au、PdまたはPt。
【0032】
化合物を熱的または化学的に分解してそれぞれの金属を得る場合、金属への化合物の熱分解または化学分解が起こるまで、不活性、酸化または還元性であり得る、分解に適した雰囲気を維持する。化合物をそれぞれの金属に化学的に還元する場合、化学還元をもたらす熱処理は、化学還元が行われるまでの少なくともいくらかの間、還元性雰囲気、特に水素雰囲気中で行うことが好ましい。
酸化による化学分解の場合、酸素、フッ素、塩素、これらのガスの任意の混合物、さらには、不活性ガス、例えば窒素、アルゴンまたはクリプトンとの任意の混合物を含む雰囲気が、特に有用である。
【0033】
粒子を形成する金属の対応する化合物の熱分解または化学分解において、少なくともそれぞれの分解プロセスが十分な程度まで終了し、分解の結果として、半製品の材料の焼結結合(sinter connection)のための十分な金属粒子が得られるまで、熱処理の間、適切な雰囲気条件を維持することによって、類似の手順を実施することができる。
【0034】
化学分解の場合、金属カチオンを還元して元素金属を形成することができる。しかしながら、アニオン成分を酸化することは可能である。比較的貴金属の化合物を、空気中、すなわち、比較的酸化性の雰囲気中で、化学分解して、元素金属(Au、Pt、Pd)を得ることも考えられる。例示的方程式:2GeI<->Ge(s)+GeI(g)による不均化は、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムおよびクロムについても可能である。金属中心が既に酸化状態0である結晶性の、金属-有機錯体またはその塩を用いることもできる。
【0035】
本発明に従って製造される開孔成型体の表面特性は、例えば、化学還元、熱分解または化学分解により形成され、半製品の表面に焼結される金属粒子によって、耐熱性、耐腐食性、耐薬品性、触媒ウォッシュコートの付着性および触媒機能に関して、影響を与え得る。ここで、半製品の金属材料と、形成された金属粒子の材料との間の段階的な移行(遷移)(transition)も有利な効果を有する。ここでは、以下の実施例からも分かるように、表面から半製品のストラットに至るまで、様々な相を形成することができる。
【0036】
気孔率、細孔径、および比表面積は、コーティングに使用される粒子の形態によって実質的に影響され得る。高い比表面積および微細な多孔質構造を実現するためには、小さいサイズおよび樹枝状形状を有する粒子、例えば、電解質粉末が有利である。ギャップフリー配置を許容しない不規則な幾何形状の結果として、隣り合う(adjacent)粒子は部分的に接続された空隙を形成し、接触点と粒子本体との間にチャネルを与える。さらに、化合物からの粒子を用いると、熱分解または化学分解において、揮発性成分によって残された付加的な微小孔空間(micropore space)が形成される。化合物の揮発性成分の割合が大きいほど、ひいては、それによって占められる容積が大きいほど、全細孔容積における微小孔空間の割合が高くなる。したがって、酸化状態が高く、その結果として酸素の割合が高い酸化物を使用することは、金属酸化物粒子によるコーティングに有利である。構造の焼結活性は比表面積の増大と共に高くなるので、雰囲気、保持時間および材料依存の焼結温度は、微細孔(fine pore)が著しく緻密化することなく、機械的に安定した方法で、粒子が互いに焼結し、半製品に焼結するように、選択される。
【0037】
以下、例を用いて本発明を説明する。
【0038】
実施例1
ポリウレタンで構成される多孔質発泡体を電気化学的にコーティングして得られた、平均細孔径450μm、気孔率95%、寸法70mm×63mm、厚さ1.6mmの半製品としての、銀から構成される開孔成形体を、実施例1において、熱処理して有機成分を除去した。
【0039】
次いで、有機化合物を除去した半製品の表面を、下記の組成を有する懸濁液を噴霧することによってコーティングした:
- 48%のAg2O金属酸化物粉末<5μm、
- 1.5%のポリビニルピロリドン(PVP)バインダー
- 溶剤として49.5%の水
- 1%の分散剤。
【0040】
この目的のために、最初に、粉末状バインダーを水に溶解し、次いで、他の全ての成分を添加し、スピードミキサーで2×30秒間、2000rpmで混合し、懸濁液を得た。
【0041】
湿式粉末噴霧プロセスにより、調製した粉末懸濁液を半製品の両側に何回か噴霧した。ここで、懸濁液は噴霧装置内で霧化され、半製品の両側の表面に塗布される。懸濁液は、噴霧ノズルからの出口圧力によって、半製品の多孔質ネットワーク内で均一に分散される。懸濁液はストラット表面にのみ付着するため、ストラットは懸濁液で完全に覆われ、半製品の開放気孔率はほとんど保持される。このようにしてコーティングされた半製品は、その後、室温で、空気中で乾燥された。
【0042】
続いて、バインダーの除去、還元および焼結のために、水素雰囲気下、炉内で熱処理を行った。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱した。酸化銀の還元を、水素下で、100℃未満で開始し、200℃で終了し、保持時間は約30分である。次に、残りのバインダーの除去および焼結プロセスは、酸素含有雰囲気、例えば空気中で、200℃~800℃の温度範囲で、1分~180分の保持時間で実施することができる。
【0043】
さらなる熱処理の間に、第一に、酸化銀はナノ結晶形態で存在する金属銀に還元された。残りのバインダーの除去と、その後の銀発泡ストラットへの金属銀粒子の部分焼結の結果として、粒子は成長し、より大きく、より粗い結晶性の集合体(conglomerate)を形成し、第二に、Agはまた、粉末粒子が開孔成型体の表面のストラットに形成される焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して強固に接合するまで、粉末粒子からストラット材料に拡散する。
さらなる熱処理の後、銀100%で形成された均質な開孔成型体が得られる。
気孔率は約93%である。
【0044】
ストラットの表面は粗さが高くなっている。この理由は、塗布した粉末粒子が、焼結ネック/焼結ブリッジを介してのみ半製品の表面に接合するため、元の粒子形態が保持されるためである。完成した開孔成型体の比内部表面積(BET法で測定される)は、実施したプロセスによって、初期(非コーティング状態)の10.8m2/lから、その後(コーティング状態)の82.5m2/lに増大させることができた。
【0045】
実施例2
半製品として、ニッケルから構成され、平均細孔径450μm、気孔率約95%、寸法200mm×80mm、厚さ1.6mmの開孔成形体(PU発泡体上にNiを電解析出することによって製造したもの)を使用し、平均粒径<60μm、質量15gのMoS2粉末と、バインダーとして、体積20mlの1%濃度ポリビニルピロリドン水溶液を使用した。
【0046】
ニッケルから構成される半製品の片側にバインダー溶液を噴霧し、片側の予め開いていた細孔をバインダーによって閉じた。次に、バインダーで濡れた半製品を振動装置に固定し、バインダーコーティングされた側にMoS2粉末を散布する。表面近くの細孔空間は、凝集体形成により完全に満たされていた。振動により、半製品の内部にも一部粉体が飛散した。このようにしてコーティングされた半製品の下側は、非コーティングのままであった。結果として、発泡体中の粉体の装填は、上側から下側へと段階的に変化していた(gradate)。
【0047】
バインダー除去(有機成分の除去)は、アルゴン雰囲気中の熱処理で行った。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱した。バインダーの除去を約300℃で開始し、600℃で終了し、保持時間を約30分とした。次いで、1100℃まで加熱を続け、この最高温度で保持時間を1時間とし、MoS2をMoとSとに分解し、気相中の硫黄をアルゴンガス流によって輸送する。その後、熱処理時の雰囲気をアルゴンから水素に変更し、加熱を継続した。焼結プロセスは、1260℃以上の温度で、保持時間60分で行った。
【0048】
焼結中、Moは、粉末粒子が半製品のストラットを形成する、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介して強固に結合するまで、粉末粒子からストラット材料中に拡散する。しかしながら、元素濃度の完全な均一化は起こらない。
【0049】
この熱処理後、段階的な気孔率と細孔径を有する開孔成型体が得られる。予めバインダーで湿潤させて粉体を塗布した側では、気孔率は<30%であり、細孔径は5μm~50μmの範囲であり、成形体の非コーティング側では、気孔率95%、細孔径450μmまで連続的に増大する。
【0050】
モリブデンコーティング発泡体ストラットは、以下のような段階的な相組成を有する:
組成/相:Mo(ストラットの外側および充填された細孔空間内の多孔質層)
MoNi(移行領域外側)
MoNi3(移行領域中央)
MoNi4(移行領域内側)
Ni(ストラットの内部)
ストラットの表面は粗さが高くなっている。この理由は、塗布された粉末粒子が、焼結ネックまたは焼結ブリッジを介してのみ支持発泡体に接合されるため、元の粒子形態が保持されるためである。
【0051】
実施例3
半製品として、ニッケルから構成され、平均細孔径580μm、気孔率約95%、寸法75mm×70mm、厚さ1.9mmの開孔成形体(PU発泡体上にNiを電解析出させて製造したもの)を使用し、粉末として、平均粒径<45μm、質量12gのTiH2水素化チタン粉末、平均粒径<80μm、質量0.12gのステアラミドワックスを使用し、バインダーとして、体積20mlの1%濃度のポリビニルピロリドン水溶液を使用した。
【0052】
Turbulaミキサーを用いて、粉末とステアラミドワックスを10分間混合した。
【0053】
半製品の両側にバインダー溶液を噴霧した。その後、それを振動装置に固定し、水素化チタン粉末を両側に散布した。振動の結果、粉末は半製品の多孔質ネットワーク中に分散した。バインダーと粉末のコーティングを5回繰り返し、細孔空間を完全に充填した。その後、このようにして処理された半製品を、室温で、空気中で乾燥した。
【0054】
水素雰囲気条件下でバインダーの除去を行った。この目的のために、炉を5K/分の加熱速度で加熱した。バインダーの除去を約300℃で開始し、600℃で終了し、この温度での保持時間は約30分である。次いで、水素化チタニウムから水素およびチタンへの分解を、真空条件下で、700℃、保持時間60分間の熱処理で行った。その後、さらに900℃の焼結温度まで加熱し、保持時間を30分間とした。
【0055】
焼結に至る熱処理の後、水素化チタンでコーティングされた半製品のストラットは、以下のような段階的な相組成を有する:
組成/相:Ti(ストラットの外側および充填された細孔空間内の多孔質層)
Ti2Ni(移行領域外側)
TiNi(移行領域中央)
TiNi3+TiNi(移行領域内側)
Ni(ストラットの内部)
このようにして処理された開孔成型体の気孔率は48%であり、比表面積は55m2/lである。