(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】選択された抗体を発現するように遺伝子改変されたB細胞を産生するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0781 20100101AFI20231113BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231113BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231113BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231113BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231113BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231113BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231113BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231113BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C12N5/0781 ZNA
C12N5/10
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/09 110
C12N15/864 100Z
A61K35/17
A61P31/00
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2020522004
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 US2018056789
(87)【国際公開番号】W WO2019079772
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522256406
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ジャスティン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】モフェット,ハウエル・エフ
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/176806(WO,A1)
【文献】特表2015-502149(JP,A)
【文献】特表2017-505780(JP,A)
【文献】Delpy, L. et al.,"B cell development arrest upon insertion of a neo gene between JH and Emu: promoter competition results in transcriptional silencing of germline JH and complete VDJ rearrangements",J. Immunol.,2002年,Vol. 169,pp. 6875-6882
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 21/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞を遺伝子操作して、選択された抗体を発現させる方法であって、該方法はB細胞に、
遺伝子構築物の挿入のために標的にされるB細胞における遺伝子領域を切断する遺伝子編集剤及び、
5’から3’に向かって
(i)重鎖プロモーターのヌクレオチド配列、
(ii)シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(iii)選択された抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列
(iv)(a)柔軟なリンカー又は自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列又は(b)スキッピングエレメントのヌクレオチド配列、
(v)選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び
(vi)スプライスジャンクションを含むヌクレオチド配列
を含む遺伝子構築物、を送達することを含み、
遺伝子領域は、
(A)配列番号1、又は
(B)配列番号3
の配列を含み、
遺伝子編集剤による切断後、(A)又は(B)の遺伝子領域に遺伝子構築物が挿入され、それによりB細胞が選択された抗体を発現するように遺伝子操作して、選択された抗体を発現させる方法。
【請求項2】
B細胞の内因性可変重鎖コードゲノムが切り出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝子編集剤が、ガイドRNA(gRNA)と会合したヌクレアーゼを含み、
該ガイドRNA(gRNA)が、
遺伝子領域が(A)であるとき、配列番号88、89、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306又は307の配列を有し、又は
遺伝子領域が(B)であるとき、配列番号87、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345又は346の配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
送達することが電気穿孔、ナノ粒子又はウイルス媒介送達を通じてである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
gRNA及びヌクレアーゼが電気穿孔を通じて送達され、遺伝子構築物がウイルスベクターの一部として送達される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ヌクレアーゼがCas9又はCpf1である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
重鎖プロモーターが、
遺伝子領域が(A)のとき、配列番号111で表される配列を有し、又は
遺伝子領域が(B)のとき、配列番号128で表される配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
シグナルペプチドが、
配列番号185、186、187、188、189、190、191又は192で表されるアミノ酸配列を有し、
配列番号193又は194で表されるアミノ酸配列を有し、
遺伝子領域が(A)のとき、配列番号118で表されるアミノ酸配列を有し、又は
遺伝子領域が(B)のとき、配列番号134で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
柔軟なリンカーが配列番号116で表されるヌクレオチド配列によりコードされ、配列番号122、180、181、182、183又は184で表されるアミノ酸配列を有し、及び/又は
50~80アミノ酸を含むGly-Serリンカーである、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
自己切断ペプチドが配列番号176、177、178又は179で表される配列を有し、又はスキッピングエレメントが内部リボソーム進入部位(IRES)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
スプライスジャンクションを含むヌクレオチド配列が、
遺伝子領域が(A)のとき、配列番号124又は151で表され、又は
遺伝子領域が(B)のとき、配列番号139で表される、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
遺伝子構築物が、配列番号195、196、197、198、199、200、201、202、203又は204で表される配列を有するタグをコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
遺伝子構築物が、アデノ随伴ウイルスベクターの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
遺伝子構築物の挿入の後、
(A)の遺伝子領域が配列番号109で表される配列を含み、又は
(B)の遺伝子領域が配列番号108で表される配列を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
選択された抗体が、
(a)配列番号138で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号136で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、
(b)配列番号138で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号205で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、
(c)配列番号123で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号120で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、又は
(d)配列番号123で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号206で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、
を含む、抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗体、
配列番号150で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号149で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、を含む抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、
配列番号235で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号236で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、を含む抗百日咳抗体、
配列番号159で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号158で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、を含む抗インフルエンザ抗体、
配列番号168で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号166で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、を含む抗エプスタイン・バーウイルス(EBV)抗体、又は
配列番号254で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変重鎖及び、配列番号255で表される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する可変軽鎖、を含む抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体
を含み、前記各抗体中の前記可変重鎖及び前記可変軽鎖における相補決定配列(CDR配列)には変異が含まれない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
選択された抗体が、Kabat番号付けに従い、
配列番号207を含むCDRH1、配列番号208を含むCDRH2、配列番号209を含むCDRH3、配列番号210を含むCDRL1、配列番号211を含むCDRL2及び配列番号212を含むCDRL3を含む、抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗体、
(a)配列番号213を含むCDRH1、配列番号214を含むCDRH2、配列番号215を含むCDRH3、配列番号216を含むCDRL1、配列番号217を含むCDRL2及び配列番号218を含むCDRL3、若しくは
(b)配列番号219を含むCDRH1、配列番号220を含むCDRH2、配列番号221を含むCDRH3、QYGSを含むCDRL1、SGSを含むCDRL2及び配列番号222を含むCDRL3
を含む、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、
(a)配列番号223を含むCDRH1、配列番号224を含むCDRH2、配列番号225を含むCDRH3、配列番号226を含むCDRL1、配列番号227を含むCDRL2及び配列番号228を含むCDRL3、若しくは
(b)配列番号229を含むCDRH1、配列番号230を含むCDRH2、配列番号231を含むCDRH3、配列番号232を含むCDRL1、配列番号233を含むCDRL2及び配列番号234を含むCDRL3
を含む、抗デングウイルス抗体、
配列番号237を含むCDRH1、配列番号238を含むCDRH2、配列番号239を含むCDRH3、配列番号240を含むCDRL1、配列番号241を含むCDRL2及び配列番号242を含むCDRL3を含む、抗C型肝炎抗体、
配列番号243を含むCDRH1、配列番号244を含むCDRH2、配列番号245を含むCDRH3、配列番号246を含むCDRL1、KTSを含むCDRL2及び配列番号247を含むCDRL3を含む、抗インフルエンザウイルス抗体、
配列番号248を含むCDRH1、配列番号249を含むCDRH2、配列番号250を含むCDRH3、配列番号251を含むCDRL1、配列番号252を含むCDRL2及び配列番号253を含むCDRL3を含む、抗エプスタイン・バーウイルス(EBV)抗体、
配列番号256を含むCDRH1、配列番号257を含むCDRH2、配列番号258を含むCDRH3、配列番号259を含むCDRL1、配列番号260を含むCDRL2及び配列番号261を含むCDRL3を含む、抗TNF抗体、
配列番号262を含むCDRH1、配列番号263を含むCDRH2、配列番号264を含むCDRH3、配列番号265を含むCDRL1、配列番号266を含むCDRL2及び配列番号267を含むCDRL3を含む、抗TNF抗体、又は
配列番号268を含むCDRH1、配列番号269を含むCDRH2、配列番号270を含むCDRH3、配列番号271を含むCDRL1、配列番号272を含むCDRL2及び配列番号273を含むCDRL3を含む、抗TNF抗
体
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
選択された抗体が、抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗体、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、抗デングウイルス抗体、抗ボルデテラ・ペルツシス(Bordatella pertussis)抗体、抗C型肝炎抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体、抗メタニューモウイルス(MPV)抗体、抗サイトメガロウイルス抗体、抗エプスタイン・バーウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体、抗クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)細菌毒素抗体、又は抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
遺伝子構築物が、重鎖プロモーターの相同性アーム5’及びスプライスジャンクションの相同性アーム3’を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子構築物が、
配列番号126で表されるアミノ酸配列を有する抗RSV抗体をコードするコード配列を含む、配列番号102で表されるヌクレオチド配列、
配列番号141で表されるアミノ酸配列を有する抗RSV抗体をコードするコード配列を含む、配列番号103で表されるヌクレオチド配列、
配列番号141で表されるアミノ酸配列を有する抗RSV抗体をコードするコード配列を含む、配列番号104で表されるヌクレオチド配列、
配列番号152で表されるアミノ酸配列を有する抗HIV抗体をコードするコード配列を含む、配列番号105で表されるヌクレオチド配列、
配列番号160で表されるアミノ酸配列を有する抗インフルエンザ抗体をコードするコード配列を含む、配列番号106で表されるヌクレオチド配列、
配列番号169で表されるアミノ酸配列を有する抗EBV抗体をコードするコード配列を含む、配列番号107で表されるヌクレオチド配列、
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
遺伝子領域が(A)であるとき、
5’相同性アームが配列番号110又は153で表され、3’相同性アームが配列番号125で表され、
5’相同性アームが配列番号92で表され、3’相同性アームが配列番号93で表され、もしくは
5’相同性アームが配列番号94で表され、3’相同性アームが配列番号95で表され、又は
遺伝子領域が(B)であるとき、
5’相同性アームが配列番号127で表され、3’相同性アームが配列番号140で表され、
5’相同性アームが配列番号90で表され、3’相同性アームが配列番号91で表され、もしくは
5’相同性アームが配列番号142で表され、3’相同性アームが配列番号143で表される、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
遺伝子領域が(A)を含むとき、遺伝子構築物は、
(i)配列番号110で表される5’相同性アーム配列、
(ii)配列番号111で表される配列を有する重鎖プロモーター、
(iii)配列番号118で表されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードするコード配列、
(iv)配列番号285で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の軽鎖をコードするコード配列、
(v)配列番号122で表されるアミノ酸配列を有する柔軟なリンカーをコードするコード配列、
(vi)配列番号123で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするコード配列、
(vii)配列番号124で表される配列を有するスプライスジャンクション、及び
(viii)配列番号125で表される3’相同性アーム配列、を含む、又は
遺伝子領域が(A)を含むとき、遺伝子構築物は、
(i)配列番号110で表される5’相同性アーム配列、
(ii)配列番号111で表される配列を有する重鎖プロモーター、
(iii)配列番号118で表されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードするコード配列、
(iv)配列番号287で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の軽鎖をコードするコード配列、
(v)配列番号122で表されるアミノ酸配列を有する柔軟なリンカーをコードするコード配列、
(vi)配列番号150で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするコード配列、
(vii)配列番号151で表される配列を有するスプライスジャンクション、及び
(viii)配列番号125で表される3’相同性アーム配列、を含む、又は
遺伝子領域が(A)を含むとき、遺伝子構築物は、
(i)配列番号153で表される5’相同性アーム配列、
(ii)配列番号111で表される配列を有する重鎖プロモーター、
(iii)配列番号118で表されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードするコード配列、
(iv)配列番号288で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の軽鎖をコードするコード配列、
(v)配列番号122で表されるアミノ酸配列を有する柔軟なリンカーをコードするコード配列、
(vi)配列番号159で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするコード配列、
(vii)配列番号151で表される配列を有するスプライスジャンクション、及び
(viii)配列番号125で表される3’相同性アーム配列、を含む、又は
遺伝子領域が(A)を含むとき、遺伝子構築物は、
(i)配列番号153で表される5’相同性アーム配列、
(ii)配列番号111で表される配列を有する重鎖プロモーター、
(iii)配列番号118で表されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードするコード配列、
(iv)配列番号289で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の軽鎖をコードするコード配列、
(v)配列番号122で表されるアミノ酸配列を有する柔軟なリンカーをコードするコード配列、
(vi)配列番号168で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするコード配列、
(vii)配列番号151で表される配列を有するスプライスジャンクション、及び
(viii)配列番号125で表される3’相同性アーム配列、を含む、又は
遺伝子領域が(B)を含むとき、遺伝子構築物は、
(i)配列番号127で表される5’相同性アーム配列、
(ii)配列番号128で表される配列を有する重鎖プロモーター、
(iii)配列番号134で表されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードするコード配列、
(iv)配列番号286で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の軽鎖をコードするコード配列、
(v)配列番号122で表されるアミノ酸配列を有する柔軟なリンカーをコードするコード配列、
(vi)配列番号138で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするコード配列、
(vii)配列番号139で表される配列を有するスプライスジャンクション、及び
(viii)配列番号140で表される3’相同性アーム配列、を含む、又は
遺伝子領域が(B)を含むとき、遺伝子構築物は、
(i)配列番号142で表される5’相同性アーム配列、
(ii)配列番号128で表される配列を有する重鎖プロモーター、
(iii)配列番号134で表されるアミノ酸配列を有するシグナルペプチドをコードするコード配列、
(iv)配列番号286で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の軽鎖をコードするコード配列、
(v)配列番号122で表されるアミノ酸配列を有する柔軟なリンカーをコードするコード配列、
(vi)配列番号138で表されるアミノ酸配列を有する選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするコード配列、
(vii)配列番号139で表される配列を有するスプライスジャンクション、及び
(viii)配列番号143で表される3’相同性アーム配列、を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
B細胞が、抗体産生B細胞、記憶B細胞、ナイーブB細胞、B1 B細胞又は周辺帯B細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子操作され、選択された抗体を発現するB細胞であって、該B細胞には、
遺伝子構築物の挿入のために標的にされるB細胞における遺伝子領域を切断する遺伝子編集剤、及び
5’から3’に向かって
(i)重鎖プロモーターのヌクレオチド配列、
(ii)シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、
(iii)選択された抗体の軽鎖をコードするヌクレオチド配列
(iv)(a)柔軟なリンカー又は自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列又は(b)スキッピングエレメントのヌクレオチド配列、
(v)選択された抗体の重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列、及び
(vi)スプライスジャンクションを含むヌクレオチド配列
を含む遺伝子構築物、が送達され、
遺伝子領域は、
(A)配列番号1、又は
(B)配列番号3
の配列を含み、
遺伝子編集剤による切断後、(A)又は(B)の遺伝子領域に遺伝子構築物が挿入されたB細胞。
【請求項24】
B細胞が、抗体分泌B細胞、記憶B細胞、ナイーブB細胞、B1 B細胞又は周辺帯B細胞である、請求項23に記載のB細胞。
【請求項25】
抗感染効果を必要とする対象において抗感染効果を提供するための、治療有効量の請求項23に記載のB細胞を含む医薬組成物。
【請求項26】
ワクチン接種の必要を取り除く、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ワクチン接種プロトコールに取って代わる、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象が免疫抑制された対象である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項29】
対象が、骨髄移植、造血幹細胞移植又は遺伝子改変造血幹細胞の投与を含む処置レジメンの一部として免疫抑制された対象である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項30】
抗炎症効果を必要とする対象において抗炎症効果を提供するための、治療有効量の請求項23に記載のB細胞を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2017年10月20日出願の米国特許仮出願第62/575,275号、2017年11月1日出願の米国特許仮出願第62/580,303号、及び2018年1月29日出願の米国特許仮出願第62/623,371号の優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ、本明細書で完全に記載されているかのように、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願に関連する配列表はハードコピーの代わりにテキスト形式で提供され、それによって参照により本明細書に組み込む。配列表を含有するテキストファイル名は18-024-WO-PCT_ST25.txtである。テキストファイルは184KBであり、2018年10月19日に作成され、EFS-Webにより電子的に提出されている。
【0003】
本開示は、B細胞を遺伝子改変して選択された抗体を発現させるシステム及び方法を提供する。このシステム及び方法を使用して、古典的なワクチン接種の必要性を取り除き、現在利用可能なワクチン接種ができない感染病原体に対する防御を提供し、患者が他の方法で免疫抑制されている場合に感染病原体に対する防御を提供し、及び/又は自己免疫障害の処置においてなど、治療抗体により提供される利益をもたらすことができる。
【背景技術】
【0004】
ワクチンは、B細胞を刺激して標的感染病原体に対する抗体を産生させることにより特定の感染症に対して対象の免疫を増加するように設計される。通例の小児ワクチン接種は、比較的リスクが低く有効性が高い長い間確立している臨床的介入である。しかし、不運なことに、ワクチン接種はあらゆる感染病原体に利用可能なわけではない。一例として、米国では毎年、何百万もの子供たちが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の感染により医者又は救急処置室にかかっている。
【0005】
何十年も、研究者たちは、B細胞を誘導して、RSV、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びジカウイルスなどのウイルスに対して防御するのに有効な抗体を産生させることが可能なワクチンの開発に努力している。しかし、防御抗体を誘導するあらゆる努力は失敗してきた。広く試験された唯一のRSVワクチンは実際には感染をさらに悪化させ、ワクチン接種の後に生成される抗体はウイルスを無力化しなかったが、代わりに、ウイルスが細胞に感染する能力を増強した。RSV、HIV、及びジカウイルスに加えて、利用可能である有効なワクチンがない他のいくつかの感染病原体が存在する。
【0006】
感染と闘うことに加えて、抗体は、自己免疫疾患などの他の状態についての処置としても有用である場合がある。しかし、これらの抗体ベースの療法は典型的には、防御を維持するために抗体の繰り返し注射が必要になる。
【0007】
その上、注目すべきことに、数多くの患者は血液系腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)の処置として骨髄又は造血幹細胞移植片を受ける。他の患者は、その患者に欠けている治療遺伝子を与える遺伝子改変された造血幹細胞の注入を受ける。こうした処置はすべて、患者の既存の免疫系が、移植片又は遺伝子改変された造血幹細胞の投与前に取り除かれることを必要とし、患者の免疫系が処置に続いて再定植する前に免疫抑制の危険な時間帯を残す。免疫抑制のこの時間中、患者は、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、及びメタニューモウイルス(MPV)などの感染症に信じられないほど罹りやすくなる。これらの感染症は高リスク因子であり、こうした処置に続いて多数の死亡数を伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本開示は、B細胞を遺伝子改変して選択された抗体を発現させるシステム及び方法を提供する。特定の実施形態では、選択された抗体は既存のワクチン接種の必要性を減らす又は取り除く。特定の実施形態では、選択された抗体は、現在利用可能である有効なワクチン接種戦略がないウイルス(例えば、RSV、HIV、ジカ)由来の感染に対して防御する。特定の実施形態では、選択された抗体は、種々の自己免疫障害を処置するために施される注射などの治療抗体注射の必要を減らす又は取り除く。特定の実施形態では、選択された抗体は、免疫抑制患者を感染症から防御する。特定の実施形態では、本開示の方法を使用して、何百もの異なる感染病原体又は病原菌に対して、すべてが数日に及ぶ単回研究室操作によって防御するようB細胞を再プログラムすることができる。
【0009】
特定の実施形態では、本開示は、B細胞の内因性ゲノムの特定の領域中への遺伝的構築物の標的された挿入を通じてこれらの利点を提供する。重要なことに、抗体多様性に必要とされるこれらの細胞内の遺伝子配列の高度な可変性のために、B細胞の遺伝子改変は困難である。この高度な遺伝子可変性により、遺伝子操作のために抗体コード領域を直接標的にするのは実行不可能である。さらに、B細胞のゲノムのコード部分を取り除き置き換えることも、このアプローチではB細胞機能に否定的な影響を及ぼすために、有効ではない。
【0010】
抗体は、重鎖及び軽鎖と呼ばれる別々のタンパク質単位から形成されるので、B細胞を遺伝子改変して選択された抗体を発現させることに関してさらなる難問が生じる。異なる鎖はB細胞ゲノムの異なる部分によりコードされるが、機能的な抗体を形成するためには集合しなければならない。
【0011】
本開示は、とりわけ、遺伝子挿入のために確実に標的にすることができ、改変されると、B細胞の天然のゲノムの対応する部分よりも挿入された遺伝子構築物を優先的に発現するB細胞ゲノムの定常領域を同定することにより注目される困難を克服する。この戦略は、B細胞ゲノムに関連する配列可変性を克服し、選択された抗体の機能的発現を達成するための内因性B細胞ゲノムの部分を取り除き置き換える必要性も克服する。内因性B細胞ゲノムの部分を取り除き置き換える必要性を克服すれば、遺伝子操作後B細胞機能は保存される。
【0012】
特定の実施形態では、遺伝子挿入のために標的にされる注目の領域は、配列番号85(ヒト)又は配列番号86(マウス)のEμエンハンサーエレメントの上流又は下流のイントロン領域である。特定の実施形態では、遺伝子挿入のために標的にされる領域は、配列番号1若しくは2(ヒト)又は配列番号3若しくは4(マウス)から選択される定常イントロン領域である。特定の実施形態では、遺伝子挿入のために標的にする配列番号1内のヒトDNA配列は、配列番号5~24を含む。特定の実施形態では、遺伝子挿入のために標的にする配列番号2内のヒトDNA配列は、配列番号25~44を含む。特定の実施形態では、遺伝子挿入のために標的にする配列番号3内のマウスDNA配列は、配列番号45~64を含む。特定の実施形態では、遺伝子挿入のために標的にする配列番号4内のマウスDNA配列は、配列番号65~84を含む。遺伝子改変のためにこれらの部位を特に標的にすることができる遺伝子配列は、ガイドRNA(gRNA)配列番号87~89、及び290~366として本開示内に記載されている。
【0013】
特定の実施形態では、挿入された遺伝子構築物の配置及び構成成分は、B細胞の内因性ゲノムの対応する部分よりも挿入された遺伝子構築物の優先的な発現をもたらす。これらの実施形態は、内因性B細胞ゲノムの異なる領域によりコードされる抗体の部分に関連する難問を克服するエレメントも含む。
【0014】
特定の実施形態では、遺伝子構築物は配列番号1、2、3、及び4のうちの1つ中に挿入され、(i)プロモーター;(ii)シグナルペプチド;(iii)選択された抗体の全軽鎖をコードする導入遺伝子;(iv)柔軟なリンカー又はスキッピングエレメント;(v)選択された抗体の重鎖の可変部分;及び(vi)B細胞の内因性重鎖定常領域の発現をもたらすスプライスジャンクションを含む。これらの実施形態では、選択された抗体を単一の構築物として発現すれば、内因性B細胞ゲノムの異なる領域によりコードされる抗体の部分に関連する難問は克服される。柔軟なリンカーを包含すれば、発現された選択された抗体の軽鎖部分と重鎖部分は、軽鎖と重鎖が機能的な単位を形成するのを可能にし、同時に抗体部分がB細胞の内因性ゲノム由来の他の潜在的に発現される抗体鎖と結合するリスクを低減するように、物理的に連結される。スキッピングエレメントを使用すれば、軽鎖部分と重鎖部分を物理的に連結することはないが、それらの鎖が近接して発現すると、会合して機能的な単位を形成し、同時に、抗体部分がB細胞の内因性ゲノム由来の他の潜在的に発現される抗体鎖と結合するリスクを低減する。スプライスジャンクションを包含すれば、B細胞の目下の活性化及び/又は成熟状態に適した重鎖定常領域を含む選択された抗体が生じる。言い換えると、B細胞の内因性重鎖定常領域のいずれでも有しつつ選択され発現された抗体を発現することが可能であり、選択された抗体と一緒に発現される重鎖定常領域は時間をかけて自然に変化することが可能である。
【0015】
本開示は、選択された抗体を発現するように有効に遺伝子改変されたB細胞のみが製剤化及び患者への投与のために収集されることを保証する方法も提供する。例えば、遺伝子改変前に、B細胞は、カッパ軽鎖又はラムダ軽鎖を含む抗体を天然に発現する。B細胞は、それが天然に発現するカッパ又はラムダ鎖とは異なる軽鎖を発現するように改変することが可能であり、置き換えた鎖を発現するB細胞のみが製剤化及び投与のために選択される。
【0016】
本開示は、本明細書に記載される利点を提供するようにB細胞を有効に改変する数多くの追加の戦略も提供する。これらの及び他の戦略は、下の詳細な説明にさらに完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】古典的ワクチン接種戦略に対するB細胞応答の模式図。
【
図2】呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対する先行技術ワクチン接種戦略の模式図。ホルマリン不活化RSVワクチン(
図2A);「改良された」RSVワクチン(
図2B);RSVエピトープスキャフォールドワクチン(
図2C)。
【
図3】ワクチン接種を迂回しRSVに対する防御抗体を直接提供する以前の努力の要約。パリビズマブ注射(
図3A);アデノウイルス媒介パリビズマブ発現(
図3B);(
図3C)。
【
図4A】本明細書で開示される防御戦略の特定の実施形態についての模式図。RSVに対して防御するB細胞改変。
【
図4B】本明細書で開示される防御戦略の特定の実施形態についての模式図。同時防御のための戦略。
【
図5】感染の存在及び非存在でのB細胞サブタイプによるパリビズマブの仮定される分泌。
【
図6】抗体遺伝子(
図6A)及び抗体タンパク質(
図6B)の構造であり、抗体が2つの別々の遺伝子産物から作製されるタンパク質であるという本開示の技術的難問を強調している。特定の実施形態では、本明細書に開示される選択された抗体をコードする合成遺伝子構築物は、この難問に取り組むためにスキッピングエレメント(例えば、自己切断ペプチド)を利用する。
【
図7】円及び楕円として示されるエンハンサーエレメントと発現可能な6つの潜在的定常領域を組み換えるV、D及びJセグメントを含む、内因性重鎖遺伝子座を描く模式図である。B細胞はμ/δ定常領域を発現することにより始まるが、介在性のDNAを欠失することによりγ、α又はε定常領域を使用することに切り替え可能である。それぞれのVセグメントは、組換えに続いて重鎖の発現を駆動する矢印で示される重鎖プロモーターと会合していることにも留意されたい。
【
図8A】2つのタンパク質が一体となって抗体を形成するので、B細胞の内因性抗体重鎖(IgH)及び/又は内因性抗体軽鎖(IgL)を標的にする又は不活化するのが望ましいことがある。そのようなターゲティング又は不活化がない場合には、望ましくないハイブリッド抗体が形成されるおそれがある(すなわち、内因性軽鎖が選択された抗体重鎖と対合する又は逆もある)。内因性IgHターゲティングへのアプローチ及び選択された抗体(例えば、パリビズマブ)の一部を含む得られたキメラ。
【
図8B】2つのタンパク質が一体となって抗体を形成するので、B細胞の内因性抗体重鎖(IgH)及び/又は内因性抗体軽鎖(IgL)を標的にする又は不活化するのが望ましいことがある。そのようなターゲティング又は不活化がない場合には、望ましくないハイブリッド抗体が形成されるおそれがある(すなわち、内因性軽鎖が選択された抗体重鎖と対合する又は逆もある)。IgL不活化へのアプローチ。描かれているアプローチでは、終止コドンは挿入された遺伝子構築物の上流に(又はその一部として)置くことが可能である。
【
図9】重鎖エンハンサーと(上)内因性VDJ又は(下)挿入された遺伝子構築物によりコードされた合成VDJの相互作用を描く模式図。プロモーターは矢印として描かれている。核酸は箱として描かれている。B細胞は、Eμエンハンサーのもっとも近くにあるプロモーターの下流にある核酸を天然に発現する。
図9に描かれている内因性B細胞ゲノムでは、次に、Eμエンハンサーのもっとも近くの第1の上流プロモーターは内因性重鎖VDJセグメントの発現を駆動する。Eμエンハンサーと第1の内因性プロモーターの間にプロモーターを含む遺伝子構築物を挿入すると、B細胞は内因性重鎖VDJセグメントよりむしろ挿入された遺伝子構築物を発現する。この挿入された遺伝子は、重鎖のVDJ可変領域、重鎖可変VDJと一体になった対合した完全抗体軽鎖又はB細胞重鎖定常領域との融合物として発現されることができる別の合成遺伝子が可能だと考えられる。
図9では、定常領域は、挿入された遺伝子構築物が潜在的重鎖定常領域のいずれかと一緒に発現可能であることを強調するために個々に示されている。
【
図10】挿入のための標的領域(ヒト)。ゲノム中への遺伝子構築物挿入のための領域:#1:末端J領域(ヒトでIGHJ6、マウスでIGHJ4)からEμエンハンサーまで;又は#2:Eμエンハンサーから定常ドメインスイッチ領域の反復配列まで。
【
図11A】ヒトEμイントロンエンハンサー(配列番号85)及びIGHJ6からEμイントロンエンハンサーまでを含む遺伝子挿入のために標的にするヒトDNA配列(配列番号1)。
【
図11B-1】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号5~24)及びgRNA配列(配列番号88、89、及び290~307)。
【
図11B-2】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号5~24)及びgRNA配列(配列番号88、89、及び290~307)。
【
図12A】Eμイントロンエンハンサーからスイッチ領域までを含む遺伝子挿入のために標的にするヒトDNA配列(配列番号2)。
【
図12B-1】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号25~44)及びgRNA配列(配列番号308~327)。
【
図12B-2】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号25~44)及びgRNA配列(配列番号308~327)。
【
図13A】マウスEμイントロンエンハンサー(配列番号86)及びIGHJ4からEμイントロンエンハンサーまでを含む遺伝子挿入のために標的にするマウスDNA配列(配列番号3)。
【
図13B-1】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号45~64)及びgRNA配列(配列番号87、及び328~346)。
【
図13B-2】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号45~64)及びgRNA配列(配列番号87、及び328~346)。
【
図14A】Eμイントロンエンハンサーからスイッチ領域までを含む遺伝子挿入のために標的にするマウスDNA配列(配列番号4)。
【
図14B-1】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号65~84)及びgRNA配列(配列番号347~366)。
【
図14B-2】例示的関連gRNA(例えば、sgRNA)標的部位(配列番号65~84)及びgRNA配列(配列番号347~366)。
【
図15A】CRISPR/Cas9遺伝子編集システムを利用しての、抗RSV抗体をコードする遺伝子構築物の内因性重鎖遺伝子座中への挿入を描く模式図である。遺伝子構築物は、挿入部位のゲノムDNAに相同なヌクレオチドオーバーハングである相同性アーム又はステッチを含むことが可能である。
【
図15B】ゲノムのCas9/sgRNA切断(上)、挿入された配列に隣接する長い相同性アームを含有する一本鎖DNA(中央)、及びDNAオリゴのアニーリングにより産生される挿入された配列に隣接する短い相同性アーム(下)と協働して、挿入された配列に隣接する二本鎖DNA切断を生成するためのsgRNA標的部位が隣接する配列を含むDNA修復鋳型の追加の例を描いている。
【
図16】(上)抗RSV抗体の重鎖可変領域をコードする遺伝子構築物で改変した改変重鎖遺伝子座;(中央)抗RSV抗体の軽鎖可変領域をコードする遺伝子構築物で改変した改変軽鎖遺伝子座;及び(下)抗RSV抗体の軽鎖(すなわち、IgL)、及び抗RSV抗体の重鎖可変領域を、軽鎖と重鎖可変領域の間のリンカー(Strepタグを含む)と共にコードする遺伝子構築物で改変された改変重鎖遺伝子座を描く模式図。
【
図17】本明細書に開示されるように、改変記憶B細胞及び改変抗体分泌B細胞による複数の病原体に対する同時防御の模式図。
【
図18】マウス及びヒトB細胞における標的イントロン領域の効率的Cas9切断。マウス及びヒトB細胞におけるCas9/sgRNAリボ核タンパク質複合体媒介有効切断を用いる電気穿孔。細胞はCas9/sgRNA複合体を用いて電気穿孔した。編集効率は、マウスB細胞株(A20)(
図18A)、初代B細胞(
図18B)及びヒトB細胞株(Ramos)(
図18C)において、電気穿孔後の3日目に分解によるインデルのトラッキング(TIDE)により評価した。
【
図19】RSV特異的抗体をコードする遺伝子構築物のマウスB細胞中への挿入。
【
図21】遺伝子改変されたB細胞はRSV結合抗体を分泌する。
【
図22A】非相同末端結合(NHEJ)及びマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)アプローチは、初代マウスB細胞のゲノム操作のための長い相同組換え修復(HDR)の代替手段を提供する。初代B細胞は24時間プライミングされ、アデノ随伴ウイルス(AAV)と12時間共インキュベートされ、洗浄され、電気穿孔される又はmCherry発現の分析前の3日間で二次培養に直接移された。
【
図22B】非相同末端結合(NHEJ)及びマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)アプローチは、初代マウスB細胞のゲノム操作のための長い相同組換え修復(HDR)の代替手段を提供する。初代B細胞は24時間プライミングされ、モック電気穿孔される、又は鋳型+Cas9/sgRNAを用いて電気穿孔され、mCherry発現の分析前の5日間で二次培養に移された。
【
図23A】機能的抗体をコードする新規の遺伝子構築物をマウス及びヒトB細胞株に挿入すると、表面結合及び分泌抗体の発現が可能になる。部分的抗体構築物の挿入用の部位を示すIgH遺伝子座の図、並びに表面結合及び分泌抗体の描写。emAb=合成抗体であり、本明細書ではsynAbと互換的に使用される。
【
図23B】機能的抗体をコードする新規の遺伝子構築物をマウス及びヒトB細胞株に挿入すると、表面結合及び分泌抗体の発現が可能になる。RSVプレ融合Fタンパク質テトラマー(RSVテトラマー)及び抗StrepタグIIテトラマー(αTagAbテトラマー)を用いた非改変又は抗RSV合成抗体(αRSV synAb)改変マウスA20 B細胞株の染色。
【
図23C】機能的抗体をコードする新規の遺伝子構築物をマウス及びヒトB細胞株に挿入すると、表面結合及び分泌抗体の発現が可能になる。RSVプレ融合テトラマー及び抗StrepタグII抗体テトラマーを用いた非改変又は抗RSV synAb改変ヒトRAMOS B細胞株の染色。
【
図23D】機能的抗体をコードする新規の遺伝子構築物をマウス及びヒトB細胞株に挿入すると、表面結合及び分泌抗体の発現が可能になる。非改変又は抗RSV synAb改変A20細胞培養物の培養培地由来のRSVプレ融合Fタンパク質への抗体の結合についてのELISA。パリビズマブは陽性対照として使用した。
【
図23E】機能的抗体をコードする新規の遺伝子構築物をマウス及びヒトB細胞株に挿入すると、表面結合及び分泌抗体の発現が可能になる。非改変又は抗RSV synAb改変RAMOS細胞培養物の培養培地由来のRSVプレ融合Fタンパク質への抗体の結合についてのELISA。パリビズマブは陽性対照として使用した。
【
図24A】新規の特異性を有する初代マウスB細胞の産生。濃縮前(左パネル)並びに濃縮及び拡大後の抗StrepタグIIテトラマーを用いた、抗StrepタグIIテトラマー(中央パネル)及びRSVプレ融合ウイルスタンパク質テトラマー(右パネル)を用いた、モック処置(上)又は抗RSV synAb改変マウスB細胞株(下)の表面染色。
【
図24B】新規の特異性を有する初代マウスB細胞の産生。非改変又は抗RSV synAb改変マウスB細胞培養物の培養培地由来のRSVプレ融合Fタンパク質への抗体の結合についてのELISA。パリビズマブは陽性対照として使用した。抗体結合は、ポリクローナル抗ヒトIgとHRPに結合している抗マウスIgの1対1混合物を用いて検出される。
【
図24C】新規の特異性を有する初代マウスB細胞の産生。3T3-CD40Lフィーダー細胞及びIL-21を用いた培養における濃縮されたB synAb細胞の急速な拡大。
【
図25A】例示的配列。例示的sgRNA配列(配列番号87、88、89)、ゲノム相同性領域(配列番号90~95)及びスプライシングオリゴヌクレオチド(配列番号96~101)。
【
図25B-1】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-2】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-3】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-4】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-5】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-6】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-7】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-8】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-9】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25B-10】例示的配列。ヒト抗RSV-emAb AAV(2531bp(配列番号102)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号110~126、280、285))。
【
図25C-1】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-2】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-3】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-4】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-5】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-6】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-7】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-8】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-9】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-10】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25C-11】例示的配列。マウス抗RSV-emAb AAV(3134bp(配列番号103)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号127~141、281、286))。
【
図25D-1】例示的配列。マウスemAb-RSV-dsDNA(1736bp(配列番号104)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号142~144))。
【
図25D-2】例示的配列。マウスemAb-RSV-dsDNA(1736bp(配列番号104)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号142~144))。
【
図25D-3】例示的配列。マウスemAb-RSV-dsDNA(1736bp(配列番号104)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号142~144))。
【
図25D-4】例示的配列。マウスemAb-RSV-dsDNA(1736bp(配列番号104)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号142~144))。
【
図25D-5】例示的配列。マウスemAb-RSV-dsDNA(1736bp(配列番号104)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号142~144))。
【
図25D-6】例示的配列。マウスemAb-RSV-dsDNA(1736bp(配列番号104)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号142~144))。
【
図25E-1】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-2】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-3】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-4】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-5】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-6】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-7】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-8】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25E-9】例示的配列。ヒトemAb-VRC01-AAV(2551bp(配列番号105)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号145~152、282、287))。
【
図25F-1】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-2】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-3】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-4】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-5】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-6】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-7】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-8】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25F-9】例示的配列。ヒトemAb-Medi8852-AAV(2544bp(配列番号106)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号153~160、283、288))。
【
図25G-1】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-2】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-3】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-4】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-5】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-6】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-7】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-8】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25G-9】例示的配列。ヒトemAb-AMM01-AAV(2555bp(配列番号107)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号161~169、284、289))。
【
図25H-1】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25H-2】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25H-3】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25H-4】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25H-5】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25H-6】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25H-7】例示的配列。Balb/C mRSV-スプライス組み込み配列(2261bp(配列番号108)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号170~172))。
【
図25I-1】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図25I-2】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図25I-3】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図25I-4】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図25I-5】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図25I-6】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図25I-7】例示的配列。TT-hRSV-T7-組み込み配列(1707bp(配列番号109)並びに関連ヌクレオチド及びタンパク質配列(配列番号173~175))。
【
図26A】新しい抗体カセットの挿入のためのEμエンハンサーの上流の標的領域;この領域を標的にすることによって、挿入されたemAb遺伝子は天然の(しかし挿入された)IgHプロモーターにより駆動することが可能であり、免疫グロブリン発現の天然の制御を最大にする。単一ヒット挿入を可能にし、オフターゲット相互作用を最小限にするため、emAb構築物は単一鎖融合物として発現された。この融合物は、57アミノ酸グリシン-セリンリンカーで重鎖の可変領域に連結された完全軽鎖配列からなる。軽鎖と重鎖を物理的に連結すれば、挿入されたemAbと内因性軽鎖の間での誤対合の可能性が小限に抑えられる。最適化されたスプライスジャンクションは、emAbが下流内因性IgH定常領域にスプライスすることを可能にする。これにより、emAbは重鎖アイソタイプクラスのいずれかとして発現されることが可能になる。
【
図26B】バーキットリンパ腫由来B細胞株は、ラムダ軽鎖と対合した表面及び分泌型のIgMを天然に発現する。パリビズマブ由来の操作されたαRSV-emAbの発現は、モノマーRSV-Fタンパク質及びリンカー中のStreptagIIモチーフに対して高親和性を有する改変されたストレプトアビジンであるstreptactinを使用して検出した。αRSV-emAb改変RAMOS細胞は操作されたRSV特異的抗体を発現し、この抗体は細胞の表面で検出できた。
【
図26C】操作されたRSV特異的抗体は、上澄み中分泌型でも検出された。
【
図26D】αRSV-emAb改変細胞は、タンパク質抗原に応答して急速で持続するカルシウムシグナル伝達を示したが、対照細胞はそうではなかった。
【
図27A】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。ヒト細胞操作工程の概略図。0日目:B細胞はPBMCから単離され、CD40L、IL2、IL10、IL15及びCpGオリゴヌクレオチドによりプライミングされる。2日目:細胞はcas9/sgRNA RNPで電気穿孔され、電気穿孔の1時間後emAb HR鋳型をコードするAAVで処理され、続いて0日目に記載された通りに培養される。4日目:細胞は抗原結合又はタグ発現により選択される。4~15日目L:選択された細胞は、CD40L、IL2及びIL21を発現し、IL15を補充された照射フィーダー細胞上で拡大される。15~18日目:細胞はIL6、IL15及びIFNγを含む無フィーダー分化培養に移行した。
【
図27B】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。emAbターゲティングCas9/sgRNA RNPで処理された6人の独立したPBMCドナー由来のB細胞におけるインデル頻度。
【
図27C】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。ターゲティングsgRNA部位により報告されている頻度のすべてのヒトSNP。
【
図27D】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。培養の4日目の対照培養された又はRSV-emAb遺伝子改変されたヒトB細胞へのRSV-Fプレ融合モノマーの結合についての代表的FACS。
【
図27E】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。6人の独立したドナー由来のB細胞の操作後RSV-emAb B細胞の頻度。
【
図27F】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。プライミングされた細胞(2日目)及びインビトロで分化した細胞(18日目)におけるプラズマ細胞マーカー(CD19、CD27、CD38及びCD138)についてのFACS。
【
図27G】ヒトB細胞は、対合されたcas9-sgRNA及びAAV鋳型送達により効率的に遺伝子改変されて一本鎖emAbを発現する。培養18日目の対照B細胞又はインフルエンザ標的MEDI8852-emAb B細胞の培養培地中の分泌された抗HA-幹抗体についてのELISA。
【
図28】一本鎖emAbは抗ウイルス抗体の発現のための柔軟なプラットフォームである。ヒトB細胞はモック電気穿孔される(対照B、上列)又は指示された広域中和抗体構築物及びヒトカッパ(パリビズマブ、VRC01及びMEDI8852)又はラムダ(AMM01)軽鎖の可変領域由来のemAb構築物で遺伝子改変された(下列)。対照及びemAb操作された細胞は指示された病原体:RSV-Fモノマー、又はHIV-ENV、EBV GH/GL若しくはHA-幹のテトラマー由来の適合抗原で染色された。
【
図29A】生産的IgH対立遺伝子上のemAb挿入は内因性IgH産生を遮断することが可能である。RAMOS IgH対立遺伝子の図:1つの生産的対立遺伝子はemAb標的部位を含有し、1つの対立遺伝子はc-myc転座がemAb標的部位を除去している。
【
図29B】生産的IgH対立遺伝子上のemAb挿入は内因性IgH産生を遮断することが可能である。インプットRAMOS細胞(CD79b+にゲートをかけた)及びαRSV-emAb操作RAMOS細胞(CD79b+/RSV-F+にゲートをかけた)において結合するラムダ軽鎖及びRSV-F抗原の表面発現を示すフローサイトメトリー。
【
図29C】生産的IgH対立遺伝子上のemAb挿入は内因性IgH産生を遮断することが可能である。初代IgH対立遺伝子の図:1つの生産的対立遺伝子及び機能的な組み合わされたVDJがない1つの非生産的対立遺伝子で、その両方ともemAb標的部位を含有する。
【
図29D】生産的IgH対立遺伝子上のemAb挿入は内因性IgH産生を遮断することが可能である。インプット分別されたλ軽鎖+B細胞(CD79b+にゲートをかけた)及びαRSV-emAb操作B細胞(CD79b+/RSV-F+にゲートをかけた)上で結合するλ軽鎖及びRSV-F抗原の表面発現を示すフローサイトメトリー。
【
図30A】αRSV-emAbカセットを用いた初代マウスB細胞の操作。マウスB細胞操作工程の概略図。0日目:B細胞はネガティブ選択を介して脾臓及び末梢リンパ節(PLN)から単離され、CD40L-HA、抗HA mAb及びIL4でプライミングされる。1日目:細胞はdsDNAと一緒にcas9/sgRNA RNP(dsDNA条件)又はcas9/sgRNA RNP単独で電気穿孔され、続いて電気穿孔の1時間後emAb HR鋳型を含有するAAVで処理する(AAV条件)。次に、細胞は0日目について記載される通りに培養で維持された。3日目:細胞は抗原結合又はタグ発現により選択される。4~8日目L:選択された細胞は、CD40Lを発現し、IL-21を補充された照射フィーダー細胞上で拡大される。
【
図30B】αRSV-emAbカセットを用いた初代マウスB細胞の操作。IgHターゲティングcas9/sgRNA RNPで処理されたB細胞中でのインデルパーセント。
【
図30C】αRSV-emAbカセットを用いた初代マウスB細胞の操作。対照B細胞又はdsDNA若しくはAAV鋳型を使用して操作されたemAb B細胞におけるモノマープレ融合RSV-Fタンパク質への結合についての代表的FACS。
【
図30D】αRSV-emAbカセットを用いた初代マウスB細胞の操作。dsDNA又はAAV鋳型を用いて操作されたB細胞でのemAb細胞の頻度。
【
図30E】αRSV-emAbカセットを用いた初代マウスB細胞の操作。対照B細胞又はdsDNA若しくはAAV鋳型を使用して操作されたB細胞の上澄み中の抗RSV特異的分泌抗体。
【
図31A】操作されたαRSV-emAb B細胞によるウイルス感染からの防御。移入されたemAb細胞による抗ウイルス防御の概略図。0日目:1.5×10
7濃縮RSV-emAb B細胞は、I.P.注射により移入される。5日目:15mg/kgでのパリビズマブI.P.注射。6日目:抗ウイルスAb力価を測定するための採血。7日目:10
6pfu RSVウイルスでの鼻腔内負荷。12日目:肺中でのウイルス力価の測定。
【
図31B】操作されたαRSV-emAb B細胞によるウイルス感染からの防御。RSV-Fモノマー及びストレプトアクチンタグ結合を用いて測定されたRSC-emAb細胞の移入前又は24時間後のRSV-emAb受容体の表面発現。
【
図31C】操作されたαRSV-emAb B細胞によるウイルス感染からの防御。6日目のマウスにおけるαRSV-emAb抗体のプラズマ力価。
【
図31D】操作されたαRSV-emAb B細胞によるウイルス感染からの防御。細胞が移入されていない、αRSV-emAb B細胞を有する、対照B細胞を有する又は15mg/kgのパリビズマブが感染の48時間前にI.P.送達されたマウスの肺におけるRSVのウイルス力価。
【
図32A】NSGマウスへのヒト抗体分泌細胞の複数の移入。NSGマウス中へのヒトemAb B細胞の移入の模式図。0日目:
図27に記載される通りに産生された5×10
6抗Flu emAb B細胞及び5×10
6抗RSV emAb B細胞をI.P.注射を介して移入した。7日目:血清における抗体産生についての採血。
【
図32B】NSGマウスへのヒト抗体分泌細胞の複数の移入。emAb細胞(二重移入)対対照血清(移入なし)を受けたマウスにおける抗RSV-F及び抗HA-幹抗体の血清力価についてのELISA。
【
図33A】マウスIgH遺伝子座へのemAbカセットの長い挿入用の鋳型。ゲノムごとに上列に示されているのは、最終J領域、Eμイントロンエンハンサーエレメント及びμ定常ドメインの開始部を含む生殖系列IgH遺伝子座におけるエレメントの位置である。cas9/sgRNA標的部位の位置が示されている(切断部位)。下には、マウスAAV及びdsDNA構築物に含まれる相同性アームを標的にするターゲティングアームの位置が示されている。ゲノムに挿入されるemAbカセットも示されている。
【
図33B】ヒトIgH遺伝子座へのemAbカセットの長い挿入用の鋳型。ゲノムごとに上列に示されているのは、最終J領域、Eμイントロンエンハンサーエレメント及びμ定常ドメインの開始部を含む生殖系列IgH遺伝子座におけるエレメントの位置である。cas9/sgRNA標的部位の位置が示されている(切断部位)。下には、ヒトAAV構築物に含まれる相同性アームを標的にするターゲティングアームの位置が示されている。ゲノムに挿入されるemAbカセットも示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
ワクチンは、B細胞を刺激して標的感染病原体に対する抗体を産生させることにより特定の感染症に対して対象の免疫を増加するように設計される。抗体は、病原体に対する防御を提供できるタンパク質である。抗体は病原体に結合でき、この結合が病原体の正常な機能を妨害する場合、抗体は防御性である。例えば、多くの防御抗体は、病原体のうちその病原体が細胞に進入するのを妨げる部分に結合する。抗体はB細胞の表面(B細胞受容体として知られる)に結合していることができるが、血液中に分泌される場合にその防御機能の大部分を発揮する。
【0019】
病原体とは、疾患を引き起こすことができる任意の物質を指すことが可能であり、病原性とは疾患を引き起こす物質の能力を指すことが可能である。病原体の例は、宿主に感染して疾患を引き起こすことができるウイルス、細菌及び真菌を含む。病原体の他の例は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、数多くの自己免疫状態(例えば、関節炎)に関連する炎症性分子及びアルツハイマー病の間脳に蓄積する線維性タンパク質であるベータアミロイドプラークなどの、疾患を引き起こす宿主由来タンパク質又は他の宿主由来物質を含む。特定の実施形態では、がん細胞及び/又は腫瘍は、疾患を引き起こすその能力に基づいて病原体又は病原性物質とも呼ぶことができる。
【0020】
ワクチン又は天然の病原体に曝露されると、ワクチンに提供される及び/又は病原体上に存在するエピトープは、ナイーブB細胞上に存在するB細胞受容体に結合することができる。この結合により、B細胞は活性化され防御抗体を産生することが可能になる。
【0021】
ナイーブB細胞は、そのエピトープに接触し終える前のB細胞を指す。それぞれのナイーブB細胞が、独特のエピトープ特異性を有する独特の抗体を発現する。それぞれのナイーブB細胞により発現される独特の抗体は、遺伝子組換えを通じて無作為に生成される。ナイーブB細胞は、膜結合抗体(すなわち、B細胞受容体)を発現し、エピトープ結合すると、急速に増殖することができる。増殖及び成熟中、抗体遺伝子は体細胞突然変異を受け、これがエピトープ結合の親和性を増やすのに役立つ。B細胞成熟中に生じるエピトープ結合の親和性の増加は、病原体に対する有効な防御に必要である。単一のナイーブB細胞は、何十回も細胞分裂を受けて、同じ抗体を発現する何千もの抗体分泌B細胞及び記憶B細胞(
図1)、又は病原体への結合を改善するよう突然変異されている関連抗体を創造することができる。
【0022】
活動性の抗体分泌B細胞に加えて、記憶B細胞は病原体に対する防御に重要である。記憶B細胞は通常、抗体を積極的に分泌しないが、急速に抗体分泌細胞に分化することが可能である。記憶B細胞の抗体分泌細胞への急速な分化は、二次感染又は以前ワクチン接種を通じて遭遇したことのある病原体に対して免疫系が迅速な応答を開始するのを助けることができる(McHeyzer-Williamsら、Nat Rev Immunol.2011年;12(1):24~34頁;Taylorら、Trends Immunol.2012年;33(12):590~7頁)。例えば、記憶B細胞は、抗体分泌B細胞により産生される抗体のレベルが減少した場合、B型肝炎ウイルスに対する防御を維持する(Williamsら、Vaccine.2001年;19(28~29):4081~5頁;Bauerら、Vaccine.2006年;24(5):572~7頁)。したがって、成功したワクチンは、抗体分泌B細胞及び長命の記憶B細胞の生成を刺激し、すべてが病原体上のエピトープに高親和性で結合する抗体を発現することができる。
【0023】
不運なことに、利用可能なワクチンがない感染病原体が数多く存在する。利用可能である有効なワクチン戦略のない感染病原体の例は、RSV、HIV及びジカウイルスを含む。
【0024】
RSVに関しては、1960年代のホルマリン不活化RSVワクチンの惨憺たる失敗はおそらくRSVを標的にする抗体分泌B細胞及び記憶B細胞を誘導できなかったためではなかった。ワクチンはRSVを中和しない抗体の産生を誘導したが、代わりにRSV感染を増強した可能性がある(
図2A)(Blancoら、Hum Vaccin.2010年;6(6):482~92頁;Broadbentら、Influenza Other Respir Viruses.2015年;9(4):169~78頁)。このことは、ワクチンが達成しなければならない微妙なバランス:正しくないエピトープを標的にする「病原性」抗体の産生を刺激することを回避しつつ、ある特定のエピトープを標的にする「防御」抗体の産生を誘導すること、を強調している(
図2A)。
【0025】
世界保健機構国際臨床試験レジストリープラットフォームの2015年分析では、2008年以降臨床的に評価された9種の候補RSVワクチンが確認されたが、そのどれも第2相試験以上に進まなかった(Broadbentら、Influenza Other Respir Viruses.2015年;9(4):169~78頁)。これらの中で、3種の治験のみが完了され、1種のみが結果を報告している。MEDI-559と呼ばれるそのワクチンは、RSV感染を低減するように思われるが、呼吸器症状はさらに試験するには高すぎた(Malkinら、PLoS One.2013年;8(10):e77104)。これらのデータによれば、MEDI-559は防御抗体の産生を誘導したが、おそらく病原性抗体の産生も誘導したことが示唆される(
図2B)。
【0026】
他の「改良された」ワクチン接種戦略は、患者に投与される製剤を変えることである。これらの戦略は、ウイルスを不活化し/減弱する代替法及び炎症応答を増やすことを目指すアジュバントへの変更を含む(Broadbentら、Influenza Other Respir Viruses.2015年;9(4):169~78頁;Gargら、The Journal of general virology.2014年;95(Pt 5):1043~54頁;Swansonら、J Virol.2014年;88(20):11802~10頁;Widjajaら、PLoS One.2015年;10(6):e0130829;Stewart-Jonesら、PLoS One.2015年;10(6):e0128779)。これらのアプローチの一部は、動物モデルにおいて防御抗体の増加をもたらしたが、病原性抗体を誘導する可能性があるため、これらの「改良された」RSVワクチンはMEDI-559と同じ運命を辿るおそれがある。
【0027】
免疫応答を防御抗体が標的にするエピトープに集中させようと努力する中で、最近のアプローチは非RSVスキャフォールド上に単一RSVエピトープを移植することであった(
図2C)。このアプローチは、他のRSVエピトープに特異的である病原性抗体の可能性を取り除く。なぜならば、スキャフォールドにはそうした抗体が存在しないからである。アカゲザルのRSVエピトープスキャフォールドワクチン接種により、一部の動物によって中和抗体が産生されたが、3~5回の注射後のみであった(Correiaら、Nature.2014年;507(7491):201~6頁)。
【0028】
ワクチン接種を迂回し防御抗体を直接提供するアプローチも開発されている。RSVについての唯一の臨床的に承認された予防処置は、高親和性RSV特異的防御抗体パリビズマブの注射である(
図3A)(The PREVENT Study Group.Pediatrics.1997年;99(1):93~9頁;The IMpact-RSV Study Group.Pediatrics.1998年;102(3 Pt 1):531~7頁)。不運なことに、5カ月続くパリビズマブの費用が10,000ドルかかるため、重篤なRSV感染による高いリスクを抱えた子供への使用が制限されてきた(Meissner&Kimberlin、Pediatrics.2013年;132(5):915~8頁)。最長1年にわたるよう設計された他のRSV特異的抗体は現在臨床評価中である(Influenza Other Respir Viruses.2015年;9(4):169~78頁)。しかし、年1回の抗体再注射は生涯にわたる防御には実行可能ではない。
【0029】
一生続く注射の必要性をなくすため、アデノウイルスベクターを使用して、防御抗体をコードする遺伝子を筋肉細胞に移入する方法が開発されている(
図3B)(Schnepp&Johnson、Curr Opin HIV AIDS.2014年;9(3):250~6頁)。有望なことに、パリビズマブのアデノウイルス媒介発現によりマウスはRSV感染から部分的に防御された(Skaricicら、Virology.2008年;378(1):79~85頁)。しかし、このアプローチの限界は、防御レベルの抗体を達成するのに必要な高用量のウイルスを製造する費用が高額であることである(24)。高用量が必要なのは、筋肉細胞による抗体の発現では、単一B細胞による1秒あたり分泌される推定10,000抗体と比べて低いからである(Helmreichら、J Biol Chem.1961年;236:464~73頁;Hibi&Dosch、Eur J Immunol.1986年;16(2):139~45頁)。B細胞は、そのタンパク質産生機構を完全に再プログラム化して抗体分泌に集中することによりこの高率の分泌を達成している。製造能力の大変革がなければ、筋肉細胞へのアデノウイルス媒介抗体遺伝子の移入はRSV予防にとり現実的な選択肢ではない。
【0030】
別のアプローチは、レンチウイルスベクターを使用して防御抗体をコードする遺伝子を造血幹細胞のゲノム中に組み込み、続いてこの細胞を誘導して抗体分泌B細胞に分化させる(
図3C)。このアプローチの1つの限界は、抗体遺伝子挿入が無作為であり、このために疾患をもたらすオフターゲット遺伝子効果のリスクが持ち込まれることである。このアプローチの2つ目の限界は、造血幹細胞から抗体分泌細胞への分化を誘導するのに長期の2カ月間のインビトロ培養条件が必要なことである(Luoら、Blood.2009年;113(7):1422~31頁)。最後の限界は、この戦略が、感染するとすぐに増加させることが可能な抗体の供給源を生成しないことである。したがって、抗体分泌細胞が多数存在しない、又は長命でない場合、感染に対する防御は不十分になる。
【0031】
特定の実施形態では、本開示はワクチン接種を回避する及び/又はB細胞を遺伝子操作して選択された抗体(例えば、感染病原体に対する抗体(例えば、パリビズマブ;
図4A))を発現させることにより繰り返される治療抗体注射の必要性をなくすことを提供する。遺伝子操作するのに特に有用であるB細胞のタイプは、既存の抗体分泌B細胞、記憶B細胞、ナイーブB細胞、B1 B細胞及び周辺帯B細胞を含む。ナイーブB細胞は、最大の増殖的及び機能的潜在力があり、胚中心応答に入ってその結合能力を改善することができる。B1 B細胞はBCRを発現し、腹膜腔などの異なる場所に移動する。B1 B細胞は、BCRを通じて刺激を受けると急速に抗体分泌細胞に分化し、最適機能のためにT細胞のシグナルを必要としない。周辺帯B細胞は大部分が脾臓の周辺帯に位置しており、BCRを通じて刺激を受けると急速に抗体分泌細胞に分化する。周辺帯B細胞も最適機能のためにT細胞からのシグナルを必要としない。B細胞のこれらのサブセットの1種以上を遺伝子操作すると、進行中の又は即座の感染を処置するためのベースラインレベルの抗体及び将来再感染した場合の誘導性抗体の長命の供給源を創造することが可能である。
図4Bは、本開示の教示を利用して多数の病原体に対する同時防御についての関連する戦略を示しており、
図5は、感染の存在下及び非存在下での例示的B細胞サブタイプによるパリビズマブの仮定される分泌を描いている。
【0032】
本開示は、導入遺伝子を含む遺伝子構築物を、内因性B細胞ゲノムの構造及び機能を利用するために特に選択された内因性抗体遺伝子座中に挿入することによるB細胞の遺伝子操作を提供する。例えば、選択された抗体の少なくとも一部をコードする導入遺伝子を内因性抗体遺伝子座中に挿入すれば、内因性抗体発現調節機構を利用することにより選択された抗体の頑強な産生が可能になる。導入遺伝子は、異種(すなわち、外来性)タンパク質をコードするDNAの部分を指す場合がある。遺伝子構築物は、異種タンパク質の発現を可能にするために細胞中に導入されることを目的とする核酸の人工的に構築されたセグメントを指す場合がある。
【0033】
特定の実施形態では、本開示は、選択された抗体を発現するように改変されているB細胞を提供する。抗体は、2つの遺伝子、重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子から産生される。一般に、抗体は重鎖の2つの同一のコピー及び軽鎖の2つの同一のコピーを含む(例えば、
図6B参照)。重鎖は2つのより大きなサブユニットであり、それぞれの重鎖はVDJセグメント及び定常領域を含む(
図6Bにおいて「C」として示される)。VDJセグメント(又はVDJ)は、病原体上のエピトープに結合する抗体重鎖の独特の部分をコードするV、D及びJ遺伝子セグメントの独特の対合を指す。したがって、Vは、病原体上のエピトープに結合する抗体重鎖の独特の部分をコードするD及びJセグメントと無作為に対合する遺伝子セグメントの1つを指す。同様に、Dは、病原体上のエピトープに結合する抗体重鎖の独特の部分をコードするV及びJセグメントと無作為に対合する遺伝子セグメントの1つを指す。最後に、Jは、病原体上のエピトープに結合する抗体重鎖の独特の部分をコードするV及びDセグメントと無作為に対合する遺伝子セグメントの1つを指す。種々の異なる組合せで一体となって特定の重鎖の特定のVDJセグメントを形成することが可能ないくつかのVセグメント、Dセグメント及びJセグメントが存在する(例えば、
図7参照)。
【0034】
それぞれのB細胞は、単一のVDJ組合せを保存された定常C領域と対合して完全長重鎖を形成する。重鎖C領域は、Fc受容体などの他の免疫タンパク質と相互作用して他の免疫細胞を活性化することができる。すべてのナイーブB細胞は同じC領域セグメントを発現するが、活性化に続いて異なるC領域セグメントを発現するように変化することができ、C領域が異なれば抗体は異なる機能を与えられる。例えば、1つのC遺伝子セグメントはεをコードし、εを発現している抗体は「IgE」である。IgEタイプ抗体は体の細胞に結合して、アレルギー反応を媒介することが多い。αC領域を発現する抗体はIgA抗体であり、γC領域を発現する抗体はIgG抗体であり、μC領域を発現する抗体はIgM抗体である。ヒトゲノムは、単一の重鎖遺伝子座を含み、これは第14染色体上に存在する。
【0035】
再び
図6Bに言及して、抗体の軽鎖(IgL)は可変領域及び定常領域を含む。軽鎖可変領域はV及びJ遺伝子セグメントを含み、軽鎖定常領域は単一の免疫グロブリン定常ドメインを含むことができる。ヒトは2つの異なる軽鎖を発現し:Igκは第2染色体上の免疫グロブリンカッパ遺伝子座によりコードされ、Igλは第22染色体上の免疫グロブリンラムダ遺伝子座によりコードされている。
【0036】
図6は、IgH鎖及びIgL鎖をコードする内因性B細胞ゲノムの模式図を描いている。
図8A及び8Bは、本開示に従った外来性遺伝子構築物をどこに挿入すれば選択された抗体の発現を達成できるかの最初の模式図を描いている。
図8Aは、[終止シグナル、選択された抗体のIgL鎖(ここでは、PV)、スキッピングエレメント(ここでは、2A)、及び重鎖のVDJセグメント]を含む遺伝子構築物を内因性VDJセグメントと内因性C領域コードセグメントの間の内因性IgHゲノムに挿入することを描いている。このアプローチは、全外来性IgL鎖、重鎖の外来性VDJセグメント、及び重鎖の内因性C領域の発現をもたらす。内因性C領域を含む抗体の発現は、例えば、この発現により改変されたB細胞は、天然のB細胞活性化及び成熟状態に基づいてC領域発現を調節することが可能になるので、有用になりうる。例えば、重鎖遺伝子座の定常領域における選択的スプライシングにより、改変されたB細胞は膜結合抗体の発現と分泌抗体の発現を切り替えることが可能になる。このアプローチは、内因性VDJの切り出しを必要とせずに外来性VDJの発現も可能にする。この特長は、VDJがDNAの比較的大きなセグメントでありその切り出しが細胞機能にネガティブな影響を及ぼすことがあるので、有益である。
【0037】
図9は、内因性B細胞ゲノムの構造及び機能、並びに本開示がどのようにしてこの構造及び機能を利用して選択された抗体の発現を達成するかに関してさらに詳細に類似する模式図を描いている。プロモーター領域は、遺伝子セグメントの転写を達成するのに必要である。重鎖可変領域(V
H)プロモーターはB細胞系列においては選択的に活性であり、転写開始部位の100塩基対(bp)内にTATAボックス、Inrエレメント、及びオクタマーエレメントを含む。V
Hプロモーター活性は、内因性B細胞ゲノムのEμエンハンサーエレメント(灰色卵円)及び重鎖α定常遺伝子の近位の重鎖遺伝子座の3’末端に位置するエンハンサーエレメント(灰色円)による近位依存性調節下にある。Eμエンハンサーエレメントは、免疫グロブリン重鎖遺伝子座のJ重鎖セグメントとC mu(μ)セグメントの間の700bpイントロン内のDNAのイントロン領域(40~1500bp長)である。Eμエンハンサーエレメントは、アクチベータータンパク質に結合して重鎖遺伝子の転写を増やす又は活性化することができる。ヒトEμエンハンサーエレメントの配列は
図11に配列番号85として提供されている。マウスEμエンハンサーエレメントの配列は
図13Aに配列番号86として提供されている。
【0038】
内因性重鎖可変領域と内因性Eμエンハンサーの間にVHプロモーターを含む遺伝子構築物を挿入すると、内因性VHプロモーターからの転写活性化を低減する又は遮断しうる。なぜならば、Eμエンハンサーはもっとも近位の上流プロモーターで転写を開始するからである。この方法であれば、内因性VDJの発現は、そのような大きなDNAセグメントの除去(これは、示されるように、細胞機能及び生存にとり問題を含む)を必要とせずに遮断することが可能である。特定の実施形態では、VDJ組換えは、VHプロモーターとEμエンハンサーの間の遺伝物質を取り除き、これによりエンハンサーは本明細書に開示される遺伝子構築物の外来性プロモーターから適切な距離に置かれ、挿入された遺伝子構築物中のプロモーターから開始する転写を活性化する。特定の実施形態では、内因性遺伝物質は除去されない。特定の実施形態では、50未満の塩基対が除去される。特定の実施形態では、外来性遺伝子構築物内のVHプロモーターは、IgK又はIgLについての天然の軽鎖プロモーター、天然のヒトIgHプロモーター、脾フォーカス形成ウイルスプロモーターSFFV、J558h10プロモーター又はIgVH1-69プロモーターを含む。
【0039】
図10は、遺伝子構築物挿入用の標的領域の追加の模式図を提供する。これらの標的領域は、すべてのB細胞に存在する2つの保存された領域:終端J遺伝子セグメント(ヒトでのIGHJ6、マウスでのIGHJ4)から重鎖イントロンエンハンサー(Eμ)まで及びEμからDNAスイッチ組換えに関連する反復配列までを包含する。
【0040】
特定の実施形態では、遺伝子構築物の挿入のために標的にされる内因性B細胞ゲノムの領域は、配列番号85又は86のEμエンハンサーの上流にある。
図11A~14Bは、本明細書に開示される選択された抗体の発現を達成するために遺伝子構築物挿入用に標的にすることができる特定の配列を提供している。
【0041】
図11Aは、IGHJ6からEμイントロンエンハンサーまでのヒトDNA配列(配列番号1;>hg38_dna レンジ=chr14:105862523~105863244 5’pad=0 3’pad=0 ストランド=- リピートマスキング=なし)。
図11Bは、配列番号5~24を含むこの配列内の標的(例えば、gRNA部位)までの例示的レンジ及び関連するgRNA配列(配列番号88、89及び290~307)を提供している。例として、特定の実施形態では、配列番号88のsgRNA(
図25Aも参照)は配列番号7のgRNA部位を標的にするのに使用することができる。特定の実施形態では、配列番号89のsgRNA(
図25Aも参照)は配列番号10のgRNA部位を標的にするのに使用することができる。
【0042】
図12Aは、領域2についてのヒトDNA配列:Eμイントロンエンハンサーからスイッチ領域まで(配列番号2;>hg38_dna レンジ=chr14:105860383~105861690 5’pad=0 3’pad=0 ストランド=-)を提供している。
図12Bは、配列番号25~44を含むこの配列内の標的(例えば、gRNA部位)までの例示的レンジ及び関連するgRNA配列(配列番号308~327)を提供している。
【0043】
図13Aは、領域1についてのマウスDNA配列:IGHJ4からEμイントロンエンハンサーまで(配列番号3;>mm10_dna レンジ=chr12:113427973~113428554 5’pad=0 3’pad=0 ストランド=- リピートマスキング=なし)を提供している。
図13Bは、配列番号45~64を含むこの配列内の標的(例えば、gRNA部位)までの例示的レンジ及び関連するgRNA配列(配列番号87、及び328~346)を提供している。例として、特定の実施形態では、配列番号87のsgRNA(
図25Aも参照)は配列番号46のgRNA部位を標的にするのに使用することができる。
【0044】
図14Aは、領域2についてのマウスDNA配列:Eμイントロンエンハンサーからスイッチ領域まで(配列番号4;>mm10_dna レンジ=chr12:113425446~113426973 5’pad=0 3’pad=0 ストランド=- リピートマスキング=なし)を提供している。
図14Bは、配列番号65~84を含むこの配列内の標的(例えば、gRNA部位)までの例示的レンジ及び関連するgRNA配列(配列番号347~366)を提供している。
【0045】
したがって、特定の実施形態では、本開示は、すべてのB細胞において一定である(組換え前及び後に)イントロン領域での(i)プロモーター及び(ii)選択された抗体の一部をコードする導入遺伝子を含む遺伝子構築物の標的挿入を提供し、(i)プロモーターはプロモーターと相互作用するエンハンサーエレメントに対して位置付けられており、(ii)導入遺伝子はB細胞の内因性重鎖VDJ配列が発現されないような立体配置である。特定の実施形態では、選択された抗体のコードされた部分は、抗体の全軽鎖及び重鎖のVDJセグメントを含む。選択された抗体のこれらの部分は、任意の時間に改変されたB細胞により発現される重鎖定常領域と一緒に発現することができる。遺伝子構築物の特定の実施形態は、シグナルペプチド、柔軟なリンカー、スキッピングエレメント及び/又はスプライスジャンクションも含む又はコードしうる。
【0046】
本開示の1つの技術的難問は、抗体が2つの別々の遺伝子産物、重鎖(IgH)と軽鎖(IgL)から作られているタンパク質であることである(
図6A、6B)。これは、特定の実施形態では、選択された抗体を正しく発現するためには、両方の遺伝子の位置が同時に改変されなければならないことを意味する。しかし、本開示は、両方の遺伝子位置を改変する必要がなく機能的な選択された抗体を産生する戦略も提供する。これを可能にする1つのアプローチは、単一の構築物を通じた抗体発現を可能にする配列の使用を通じてである。特定の実施形態では、これは、遺伝子構築物内にスキッピングエレメントを含むことにより達成される。スキッピングエレメントの1つの例は、自己切断「2A」などの自己切断ペプチドである。2Aペプチドは、リボソームに限定された位置でペプチド結合の合成をスキップさせ、1つのmRNAから2つのタンパク質を産生することにより機能する。2A配列は短く(例えば、20アミノ酸)、サイズが限定された構築物での使用を促進し、タンパク質は1対1比で産生される。特定の例は、T2A(GSG)EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号176);P2A(GSG)ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号177);E2A(GSG)QCTNYALLKLAGDVESNPGPP(配列番号178);及びF2A(GSG)VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号179)を含む。
【0047】
特定の実施形態では、遺伝子構築物は、内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含む。IRESは遺伝子構築物の重鎖VDJの上流に配置することができる。IRESは、リボソームにmRNA分子上の第2の内部部位で翻訳を開始させ、1つのmRNAから2つのタンパク質の産生をもたらす非コード構造RNA配列である。しかし、IRES駆動翻訳は2A駆動翻訳ほど効率的ではなく、転写産物中の第2のタンパク質の発現は低くなる。
【0048】
特定の実施形態では、遺伝子構築物は、選択された抗体の軽鎖部分と選択された抗体の重鎖部分の間の柔軟なリンカーをコードする。リンカーは、連結された配列に相互作用して機能的なユニットを形成させるように1つのタンパク質ドメインを別のタンパク質ドメインに柔軟に連結させる一連のアミノ酸でありうる。
【0049】
特定の実施形態では、柔軟なリンカーは、リンカー配列に柔軟性をもたらす1つ以上の一連のグリシンとセリンの組合せを含むことができる。例示的Gly-Serリンカーは、(GGS)n(配列番号180)、(GGGS)n(配列番号181)、及び(GGGGS)n(配列番号182)を含み、n=1~100及びその間のすべての整数である。特定の実施形態では、n=10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30である。特定の実施形態では、Gly-Serリンカーは、50~80アミノ酸を含む。特定の実施形態では、Gly-Serリンカーは、54、57、又は60アミノ酸を含む。特定の実施形態では、Gly-Serリンカーは、配列番号116によりコードされる。特定の実施形態では、Gly-Serリンカーは、配列番号122を含む。
【0050】
柔軟なリンカーの追加の例は、(KESGSVSSEQLAQFRSLD)n(配列番号183)及び(EGKSSGSGSESKST)n(配列番号184)を含む。これらのリンカーでは、リンカー中のGlyとSer残基は柔軟性をもたらすように設計されており、Glu及びLysは可溶性を改善するのに追加された。Bird、REら、Science、1988年;242:423~426頁。特定の実施形態では、n=1~100及びその間のすべての整数である。特定の実施形態では、n=10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30である。特定の実施形態では、これらのリンカーは、50~80アミノ酸を含む。
【0051】
特定の実施形態は、遺伝子構築物によりコードされているRNAと内因性重鎖定常領域によりコードされているRNAの間のスプライシングを可能にするスプライスジャンクションを含む。特定の実施形態では、遺伝子構築物は3’末端にスプライスジャンクション配列を含む。スプライシングとは、スプライソソームとして知られるRNA/タンパク質複合体によりイントロンを除去しエキソンを1つに結合させることを指すことができる。スプライスジャンクションは、エキソンに直接隣接しているイントロン配列を指す。エキソンの3’末端のスプライスジャンクションは、スプライスドナー部位を含むことができる。スプライスドナー部位配列は典型的には「GU」で始まる。特定の実施形態では、スプライスジャンクションは、VDJの最後のエキソンに続く40~80bpのイントロンを含む場合がある。特定の実施形態では、スプライスジャンクションは、ヒトIGHJ1遺伝子セグメント又はマウスIGHJ3遺伝子の3’末端に隣接する40~80bpのイントロンを含む。特定の実施形態では、スプライスジャンクションは、CAG/gtaagtを含み、切断及びスプライスは大文字のGの後で行われる(「スプライス」注釈により示される)。特定の実施形態では、スプライスジャンクションは、CAG/gtgagtを含む。CAはセリンコドンの末端を形成し、Gは定常領域から最初のコドンを始める。特定の実施形態では、隣接配列のあるスプライスジャンクションは、ヒト遺伝子座への挿入のために遺伝子構築物に配列番号124又は151を含む。特定の実施形態では、隣接配列のあるスプライスジャンクションは、マウス遺伝子座への挿入のために遺伝子構築物に配列番号139を含む。
【0052】
本明細書に開示される遺伝子構築物はシグナルペプチドをコードすることもできる。例示的シグナルペプチドは、MELGLSWIFLLAILKGVQC(配列番号185);MELGLRWVFLVAILEGVQC(配列番号186);MKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号187);MDWTWRILFLVAAATGAHS(配列番号188);MDWTWRFLFVVAAATGVQS(配列番号189);MEFGLSWLFLVAILKGVQC(配列番号190);MEFGLSWVFLVALFRGVQC(配列番号191);及びMDLLHKNMKHLWFFLLLVAAPRWVLS(配列番号192)などのヒトIgH重鎖由来のシグナルペプチド;並びにMDMRVPAQLLGLLLLWLSGARC(配列番号193);及びMKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号194)などのヒトIgL軽鎖由来のシグナルペプチドを含む。特定の実施形態では、シグナルペプチドは配列番号112によりコードされ、ヒト遺伝子座への挿入のために遺伝子構築物に配列番号118を含む。特定の実施形態では、シグナルペプチドは配列番号129によりコードされ、マウス遺伝子座への挿入のために遺伝子構築物に配列番号134を含む。
図25B~25I及びHaryadi Rら、tPLoS One v.10(2);2015年 PMC4338144も参照されたい。
【0053】
示されているように、本開示の特定の実施形態は、内因性B細胞ゲノム内の標的にされた位置での外来性遺伝子構築物の挿入を利用する。特定の実施形態では、そのような標的挿入は、遺伝子構築物の1つ又は両方の末端に相同性領域を含むことにより促進することができる。相同性領域(すなわち、相同性ステッチ又は相同性アーム)は所望の挿入部位での配列に相同である。特定の実施形態では、相同性アームとは、遺伝子構築物に含まれ、改変されているDNAの領域に100%同一であるDNAのセグメントを指す。特定の実施形態では、100%同一性は標的挿入を達成するのに必要とされない場合がある(例えば、少なくとも90%同一性で十分である場合がある)。
【0054】
相同性領域は遺伝子構築物を標的にされた遺伝子領域の隣に整列させ、遺伝子構築物由来のDNAの一部は遺伝子編集技法により切断された領域中に交換される。特定の実施形態では、遺伝子構築物は、20~1,500bpのゲノム相同性のある上流ゲノム相同性末端、及び20~1,500bpのゲノム相同性のある下流ゲノム相同性末端を含む場合がある。相同性の領域は、例えば、
図15Aに示される「相同性ステッチ」を提供する場合があり、このステッチは標的にされた挿入部位への遺伝子構築物の挿入を媒介することができる。特定の実施形態では、上流ゲノム相同性末端及び下流ゲノム相同性末端は、重鎖VDJ領域と重鎖Eμエンハンサーエレメントの間のゲノム配列に相同性のある配列を含んでもよい。特定の実施形態では、相同性の領域は、特に、20~50塩基対;300~500塩基対;350~550塩基対;900~1,000塩基対、又は400~600塩基対を含んでもよい。特定の実施形態では、相同性の領域は、特に、30~40塩基対(例えば、36塩基対);445~455塩基対(例えば、450塩基対);495~510塩基対(例えば、503塩基対);及び/又は960~980塩基対(例えば、968塩基対)を含んでもよい。特定の実施形態では、マウス遺伝子構築物において使用するための相同性領域は、配列番号90、91、96、97、127、140、142、143、170、及び171を含む。特定の実施形態では、ヒト遺伝子構築物において使用するための相同性領域は、配列番号92~95、98~101、110、125、153、173、及び174を含む。
【0055】
特定の実施形態では、遺伝子構築物はタグ配列もコードする。タグ配列は、例えば、遺伝子構築物を発現する細胞が遺伝子改変工程中に同定され及び/若しくは分類されるように、並びに/又は細胞を対象への投与に続いて制御できるように、有用になりうる。例えば、特定の実施形態では、タグ配列は、対象への投与に続いて遺伝子改変された細胞を追跡する及び/又は終了させるように有用になりうる。例示的タグは、STREPTAG(登録商標)(GmbH、LLC、Gottingen、DE)、STREP(登録商標)タグII(WSHPQFEK(配列番号195))又はこれらの任意の変異体;例えば、米国特許第7,981,632号参照)、Hisタグ、Flagタグ(DYKDDDDK(配列番号196))、Xpressタグ(DLYDDDDK(配列番号197))、Aviタグ(GLNDIEAQKIEWHE(配列番号198))、カルモジュリンタグ(KRRWKKNFIAVSAANRFKKISSSGAL(配列番号199))、ポリグルタメートタグ、HAタグ(YPYDVPDYA(配列番号200))、Mycタグ(EQKLISEEDL(配列番号201))、Nusタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag 1(SLAELLNAGLGGS(配列番号202))、Softag 3(TQDPSRVG(配列番号203))、及びV5タグ(GKPIPNPLLGLDST(配列番号204))を含む。
【0056】
特定の実施形態では、本開示は、(i)重鎖プロモーター、及び/又は(ii)免疫グロブリン軽鎖、及び/又は(iii)重鎖可変領域、及び/又は(iv)終止コドン、及び/又は(v)スキッピングエレメント及び/又は(vi)スプライスジャンクション及び/又は(vii)相同性アーム及び/又は(viii)リンカー及び/又は(ix)タグを含む又はコードする選択された抗体発現のための遺伝子構築物を提供する。
【0057】
特定の実施形態は、(i)重鎖プロモーター;(ii)シグナルペプチド;(iii)選択された抗体の全軽鎖;(iv)柔軟なリンカー又はスキッピングエレメント;(v)選択された抗体重鎖の可変領域;及び(vi)スプライスジャンクションを含む又はコードする。
【0058】
特定の実施形態は、(i)重鎖プロモーター;(ii)シグナルペプチド;(iii)選択された抗体の全軽鎖;(iv)柔軟なリンカー又はスキッピングエレメント;(v)選択された抗体重鎖の可変領域;(vi)スプライスジャンクション、及び(vii)相同性アームを含む又はコードする。
【0059】
特定の実施形態は、(i)重鎖プロモーター;(ii)シグナルペプチド;(iii)選択された抗体の全軽鎖;(iv)柔軟なリンカー又はスキッピングエレメント;(v)選択された抗体重鎖の可変領域;(vi)スプライスジャンクション、(vii)相同性アーム;及び(viii)タグを含む又はコードする。
【0060】
図15Bは、DNA修復鋳型の追加の例を描いている。使用することができるDNA修復鋳型の例は合成DNA鋳型及びアデノ随伴ウイルスも含む。特定の実施形態では、合成DNA鋳型は、ゲノム中の標的部位に相同性の20~1,500塩基対が隣接するプロモーター及び選択された抗体部分を含む又はコードする二本鎖DNA(dsDNA)を含むことができる。特定の実施形態では、合成DNA鋳型は、ゲノム中の標的部位に相同性の10~80塩基対、又は400~1000塩基対が隣接するプロモーター及び選択された抗体部分を含む又はコードする一本鎖DNA(ssDNA)を含むことができる。特定の実施形態では、合成DNA鋳型は、最終的にリン酸化により修飾されてDNAライゲーション効率を増やす、dsDNAとssDNAの両方を含むことができる。特定の実施形態では、dsDNAとssDNAの両方は最終的にホスホロチオエート結合で修飾されて安定性を増しエンドヌクレアーゼ消化を防ぐことができる。
【0061】
特定の実施形態では、アデノ随伴ウイルスは、ゲノム中の標的部位に相同性の20~1,500塩基対が隣接する合成抗体部分をコードするセグメントを含むことができる。特定の実施形態では、プロモーターと合成抗体部分コード配列は、相同性配列をゲノムの標的部位に適合させることにより隣接させることができる。
【0062】
特定の実施形態では、DNA修復機構を含む遺伝子構築物(例えば、相同性ステッチ、合成DNA鋳型)は、下でさらに詳しく記載されるCRISPR、TALEN、megaTAL、亜鉛フィンガーヌクレアーゼなどの遺伝子編集システム及び/又はアデノ随伴ウイルスを利用して送達しうる。例えば、本明細書に記載されるゲノムターゲティングエレメント、ゲノムカッティングエレメント、及び遺伝子構築物をB細胞に投与することができる。
【0063】
本開示の適用の特定の例として、B細胞を改変してパリビズマブ抗体を発現させてもよい。B細胞は、2Aペプチドにより分離されているパリビズマブ由来の完全軽鎖(IgLPV)及びVDJ重鎖遺伝子セグメント(VDJPV)の上流で重鎖プロモーターに連接している80bpの相同性アームを含む遺伝子構築物で改変してもよい。ここでは、2Aペプチドは、リボソームスキッピング事象を誘導するために含まれ(Donnellyら、The Journal of general virology.2001年;82(Pt 5):1013~25頁)、この事象により重鎖と軽鎖は、正常に会合して選択された抗体を形成する別々のサブユニットとして産生されることができる。特定の実施形態では、終止コドンは、内因性重鎖可変領域のいかなる潜在的転写も停止するように、挿入された重鎖プロモーターの上流に含まれることが可能である。
【0064】
図16は、「改変された」B細胞ゲノムの例を描いており、
図17は、選択された抗体を発現する得られたB細胞集団を描いている。
【0065】
以下の段落は、(i)例示的な選択された抗体及び配列;(ii)遺伝子編集技法及び細胞選別;(iii)改変B細胞の製剤化;及び(iv)使用方法に関してさらに詳細な説明を提供する。
【0066】
(i)例示的な選択された抗体及び配列。特定の実施形態では、選択された抗体は、病原体又は状態(例えば、自己免疫疾患)に対する防御効果を提供できる抗体である。特定の実施形態では、選択された抗体は抗RSV抗体、抗HIV抗体、抗デングウイルス抗体、抗ボルデテラ・ペルツシス(Bordatella pertussis)抗体、抗C型肝炎抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体、抗メタニューモウイルス(MPV)抗体、抗サイトメガロウイルス抗体、抗エプスタイン・バーウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体、抗クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)細菌毒素抗体、又は抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体である。
【0067】
特定の実施形態では、選択された抗体はキメラ抗体である。特定の実施形態では、キメラ抗体は、(i)B細胞の内因性ゲノムによりコードされている少なくとも1つの部分、及び(ii)挿入された遺伝子構築物によりコードされている少なくとも1つの部分を含む合成抗体を指す。特定の実施形態では、キメラ抗体は、内因性重鎖定常ドメイン、外来性免疫グロブリン可変及び定常軽鎖、並びに外来性可変重鎖を含む。
【0068】
以下の抗体及び配列は、目的の病原体又は抗原に対する標的結合を選択された抗体に与えるのに有用である(明記されなければ、Kabat番号付けが意図されている)。
【0069】
例示的抗RSV抗体はパリビズマブであり、これはRSV融合タンパク質を標的にし、RSV感染症を予防する又は減少するのに使用される。
【0070】
特定の実施形態では、抗RSV抗体は、
【0071】
【0072】
【化2】
を含む可変軽鎖配列を含むマウスパリビズマブである。
【0073】
追加の例示的抗RSV抗体はヒトパリビズマブであり、
【0074】
【0075】
【0076】
可変重鎖及び可変軽鎖内では、相補性決定領域(CDR)と呼ばれるセグメントがエピトープ結合を指示する。それぞれの重鎖は3種のCDR(すなわち、CDRH1、CDRH2及びCDRH3)を有し、それぞれの軽鎖は3種のCDR(すなわち、CDRL1、CDRL2及びCDRL3)を有する。
【0077】
追加の例示的抗RSV抗体は、米国特許第9,403,900号に記載されている。この抗RSV抗体は、GASINSDNYYWT(配列番号207)を含むCDRH1配列、HISYTGNTYYTPSLKS(配列番号208)を含むCDRH2配列、及びCGAYVLISNCGWFDS(配列番号209)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにQASQDISTYLN(配列番号210)を含むCDRL1配列、GASNLET(配列番号211)を含むCDRL2配列、及びQQYQYLPYT(配列番号212)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0078】
例示的抗RSV抗体は、AB1128(MILLIPOREから入手可能)及びab20745(ABCAMから入手可能)も含む。
【0079】
抗HIV抗体の例は10E8であり、これはgp41に結合する広域中和抗体である。10E8抗HIV抗体は、GFDFDNAW(配列番号213)を含むCDRH1配列、ITGPGEGWSV(配列番号214)を含むCDRH2配列、及びTGKYYDFWSGYPPGEEYFQD(配列番号215)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにTGDSLRSHYAS(配列番号216)を含むCDRL1配列、GKNNRPS(配列番号217)を含むCDRL2配列、及びSSRDKSGSRLSV(配列番号218)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0080】
抗HIV抗体の追加の例はVRC01であり、これはgp120のCD4結合部位に結合する広域中和抗体である。VRC01抗体は、GYEFIDCT(配列番号219)を含むCDRH1配列、KPRGGAVN(配列番号220)を含むCDRH2配列、及びRGKNCDYNWDFEHW(配列番号221)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにQYGSを含むCDRL1配列、SGSを含むCDRL2配列、及びQQYEF(配列番号222)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0081】
例示的抗HIV抗体は、ab18633及び39/5.4A(ABCAMから入手可能);並びにH81E(THERMOFISHERから入手可能)も含む。
【0082】
抗デングウイルス抗体の例は米国特許出願公開第20170233460号に記載される抗体55であり、EVQLHQSGAELVKPGASVKLSCTVSGFNIK(配列番号223)を含むCDRH1配列、WVKQRPEQGLEWI(配列番号224)を含むCDRH2配列、及びATIKADTSSNTAYLQLISLTSEDTAVYYCAF(配列番号225)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにDIQMTQSPASLSVSVGETVTITC(配列番号226)を含むCDRL1配列、WYQQKQGKSPQLLVY(配列番号227)を含むCDRL2配列、及びGVPSRFSGSGSGTQYSLKINSLQSEDFGTYYC(配列番号228)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0083】
抗デングウイルス抗体の追加の例は米国特許8,637,035号に記載されるDB2-3であり、YTFTDYAIT(配列番号229)を含むCDRH1配列、GLISTYYGDSFYNQKFKG(配列番号230)を含むCDRH2配列、及びTIRDGKAMDY(配列番号231)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにRSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号232)を含むCDRL1配列、KVSNRFS(配列番号233)を含むCDRL2配列、及びSQSTHVPYT(配列番号234)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。抗デングウイルス抗体の例は、ab155042及びab80914(両方ともABCAMから入手可能)も含む。
【0084】
抗百日咳抗体の例は米国特許第9,512,204号に記載されており、
【0085】
【0086】
【0087】
抗C型肝炎抗体の例は、SYGMHW(配列番号237)を含むCDRH1配列、VIWLDGSNTYYADSVKGR(配列番号238)を含むCDRH2配列、及びARDIFTVARGVIIYFDY(配列番号239)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにRASQSVSSYLA(配列番号240)を含むCDRL1配列、DASNRAT(配列番号241)を含むCDRL2配列、及びQQRSNWVT(配列番号242)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。抗C型肝炎抗体の例は、MAB8694(MILLIPOREから入手可能)及びC7-50(ABCAMから入手可能)も含む。
【0088】
抗インフルエンザウイルス抗体の例は、米国特許第9,469,685号に記載されており、GMTSNSLA(配列番号243)を含むCDRH1配列、IIPVFETP(配列番号244)を含むCDRH2配列、及びATSAGGIVNYYLSFNI(配列番号245)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにQTITTW(配列番号246)を含むCDRL1配列、KTSを含むCDRL2配列、及びQQYSTYSGT(配列番号247)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。抗インフルエンザウイルス抗体の例は、C102(THERMOFISHERから入手可能である)も含む。
【0089】
例示的抗MPV抗体はMPE8を含む。
【0090】
例示的抗CMV抗体は、MCMV5322A、MCMV3068A、LJP538及びLJP539を含む。RG7667は、MCMV5322AとMCMV3068Aの混合物を含み、CSJ148は、LJP538とLJP539の混合物を含む。例えば、Dengら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 62(2)e01108~17頁(2018年2月);及びDoleら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 60(5)2881~2887頁(2016年5月)も参照されたい。
【0091】
抗EBV抗体の例は、YTFIHFGISW(配列番号248)を含むAMM01 CDRH1配列、IDTNNGNTNYAQSLQG(配列番号249)を含むAMM01 CDRH2配列、及びRALEMGHRSGFPFDY(配列番号250)を含むAMM01 CDRH3配列を含む可変重鎖;並びにGGHNIGAKNVH(配列番号251)を含むAMM01 CDRL1配列、YDSDRPS(配列番号252)を含むAMM01 CDRL2配列、及びCQVWDSGRGHPLYV(配列番号253)を含むAMM01 CDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0092】
抗HSV抗体の例は、HSV8-N及びMB66を含む。
【0093】
抗クロストリジウム・ディフィシル抗体の例は、アクトクスマブ及びベズロトクスマブを含む。例えば、Wilcoxら、N Engl J Med 376(4)305~317頁(2017年)も参照されたい。
【0094】
市販されている抗TNF抗体は、インフリキシマブ(レミケード(登録商標)Centocor、Inc.、Malvern、PA、バイオシミラーにインフレクトラ(登録商標)Pfizer、Kent、UK、及びIxifi(登録商標)Pfizer、New York、NYがある)、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標)Abbott Laboratories、Abbott Park、IL、バイオシミラーにAmjevita(登録商標)Amgen、Thousand Oaks、CA、及びCyltezo(登録商標)Boehringer Ingelheim Int’l、Ingelheim、DEがある)、ゴリムマブ(Simponi(登録商標)Johnson&Johnson Corp.、New Brunswick、NJ)、エタネルセプト(Enbrel(登録商標)Immunex Corp、Thousand Oaks、CA、バイオシミラーにErelzi(登録商標)Novartis AG、Basel、CHがある)、及びセルトリズマブペゴル(Cimzia(登録商標)UCB Pharma、Brussels、BE)を含む。
【0095】
特定の実施形態では、インフリキシマブのCDRは、重鎖残基26~37、52~70、及び103~116並びに軽鎖残基24~39、55~61、及び94~102を含む。特定の実施形態では、インフリキシマブの重鎖はEVKLEESGGGLVQPGGSMK(配列番号254)から始まり、軽鎖はDILLTQSPAILSVSPGER(配列番号255)から始まる。
【0096】
特定の実施形態では、インフリキシマブは、IFSNHW(配列番号256)を含むCDRH1配列、RSKSINSATH(配列番号257)を含むCDRH2配列、及びNYYGSTY(配列番号258)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにFVGSSIH(配列番号259)を含むCDRL1配列、KYASESM(配列番号260)を含むCDRL2配列、及びQSHSW(配列番号261)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0097】
特定の実施形態では、アダリムマブは、TFDDYA(配列番号262)を含むCDRH1配列、TWNSGHID(配列番号263)を含むCDRH2配列、及びVSYLSTASSL(配列番号264)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにGIRNYLA(配列番号265)を含むCDRL1配列、YAASTLQ(配列番号266)を含むCDRL2配列、及びRYNRA(配列番号267)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0098】
特定の実施形態では、セルトリズマブは、VFTDYG(配列番号268)を含むCDRH1配列、NTYIGEPI(配列番号269)を含むCDRH2配列、及びGYRSYAM(配列番号270)を含むCDRH3配列を含む可変重鎖;並びにNVGTNVA(配列番号271)を含むCDRL1配列、YSASFLY(配列番号272)を含むCDRL2配列、及びQYNIY(配列番号273)を含むCDRL3配列を含む可変軽鎖を含む。
【0099】
本開示の教示内で使用可能な数多くの追加の抗体配列が利用可能であり当業者には公知である。市販の抗体についての配列情報は、Drug Bankデータベース、CAS Registry、及び/又はRSCB Protein DATA Bankで見つけられる。さらに、本明細書に記載される選択された抗体の部分をコードする核酸配列は当業者であれば容易に導き出せる。
【0100】
(ii)遺伝子編集技法及び細胞選別。遺伝子編集システムは遺伝子療法の標的部位に対する制御を可能にする。本開示の教示内で、正確な配列ターゲティング及び改変が可能であるいかなる遺伝子編集システムも使用可能である。これらのシステムは典型的には、正確なターゲティングのためのターゲティングエレメント及び標的遺伝子部位を切断するためのカッティングエレメントを含む。ガイドRNAはターゲティングエレメントの一例であり、種々のヌクレアーゼはカッティングエレメントの例を提供する。ターゲティングエレメントとカッティングエレメントは、別々の分子でも又は、例えば、ナノ粒子により連結されていることも可能である。代わりに、ターゲティングエレメントとカッティングエレメントは、繋ぎ合わせて1つの二重の目的の分子にすることが可能である。治療核酸配列の挿入が意図される場合、システムは、遺伝子構築物に関連する相同組換え修復鋳型(すなわち、上記の相同性アーム)も含むことができる。しかし、さらに下に詳述するように、異なる遺伝子編集システムは、選択されたゲノム部位を正確に標的にし、切断し、改変する能力は維持しつつ、異なる成分及び立体配置を取り入れることが可能である。
【0101】
特定の実施形態は、遺伝子編集剤として亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を利用する。ZFNは、特定の位置でDNAに結合し切断するように操作された部位特異的ヌクレアーゼの一種である。ZFNを使用してDNA配列中の特定の部位に二本鎖切断(DSB)を導入し、これによりZFNは種々の異なる細胞においてゲノム内の独特の配列を標的にすることが可能になる。さらに、二本鎖切断に続いて、相同組換え修復(HDR)又は非相同末端結合(NHEJ)が起きてDSBを修復し、したがって、ゲノム編集が可能になる。
【0102】
ZFNは、亜鉛フィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより合成される。DNA結合ドメインは、転写因子である3~6つの亜鉛フィンガータンパク質を含む。DNA切断ドメインは、例えば、Foklエンドヌクレアーゼの触媒ドメインを含む。Foklドメインは、標的配列上の部位への独特のDNA結合ドメインを有する2つの構築物を必要とするダイマーとして機能する。Fokl切断ドメインは、2つの逆位半部位を分離する5~6塩基対スペーサー配列内で切断する。
【0103】
ZFNに関する追加の情報は、Kimら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 93、1156~1160頁(1996年);Wolfeら、Annual review of biophysics and biomolecular structure 29、183~212頁(2000年);Bibikovaら、Science 300、764(2003年);Bibikovaら、Genetics 161、1169~1175頁(2002年);Millerら、The EMBO journal 4、1609~1614頁(1985年);及びMillerら、Nature biotechnology 25、778~785頁(2007年)を参照されたい。
【0104】
特定の実施形態は、遺伝子編集剤として転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を使用可能である。TALENは、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)DNA結合タンパク質及びDNA切断ドメインを含む融合タンパク質を指す。TALENを使用して、DNA中にDSBを誘導し、これにより細胞において修復機構を誘導することにより遺伝子及びゲノムを編集する。一般に、2つのTALENは、DNA切断ドメインが二量体化してDSBを誘導するためには、標的DNA部位のそれぞれの側に結合して隣接しなければならない。外来性二本鎖ドナーDNA断片が存在する場合には、DSBはNHEJ又はHDRにより細胞で修復される。
【0105】
示されるように、TALENは、例えば、内因性ゲノムの標的配列に結合し、標的配列の位置でDNAを切断するように操作されている。TALENのTALEは、キサントモナス細菌により分泌されるDNA結合タンパク質である。TALEのDNA結合ドメインは高度に保存された33又は34個のアミノ酸反復を含み、それぞれの反復の12番目及び13番目の位置に多様な残基を有する。これら2つの位置は、反復可変二残基(RVD)と呼ばれ、特定のヌクレオチド認識と強い相関を示す。したがって、ターゲティング特異性は、RVDのアミノ酸を変え、従来にないRVDアミノ酸を組み込むことにより改善することができる。
【0106】
TALEN融合物において使用可能であるDNA切断ドメインの例は、野生型及び変異Foklエンドヌクレアーゼである。TALENに関する追加の情報については、Bochら、Science 326、1509~1512頁(2009年);Moscou&Bogdanove、Science 326、1501(2009年);Christianら、Genetics 186、757~761頁(2010年);及びMillerら、Nature biotechnology 29、143~148頁(2011年)を参照されたい。
【0107】
特定の実施形態は遺伝子編集剤としてMegaTALを利用する。MegaTALは、TALEがメガヌクレアーゼのDNA切断ドメインと融合している一本鎖希少切断ヌクレアーゼ構造を有する。メガヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼとしても知られるが、同じドメインにDNA認識とヌクレアーゼ機能の両方を有する単一ペプチド鎖である。TALENとは対照的に、megaTALは、機能的活性のためには単一ペプチド鎖の送達だけが必要である。
【0108】
特定の実施形態では、内因性B細胞ゲノムは、CRISPR遺伝子編集システムにより標的にすることが可能である。CRISPRヌクレアーゼシステムは、プラスミド及びファージなどの異種遺伝子エレメントに対する抵抗性を与え、一種の獲得免疫を提供する原核生物免疫系である。CRISPRは塩基配列の短い反復を含有するDNA遺伝子座である。原核生物免疫系という文脈では、それぞれの反復には、原核生物が曝露された異種遺伝子エレメントに属するスペーサーDNAの短いセグメントが続く。スペーサーで分散された反復のこのCRISPRアレーはRNAに転写することができる。RNAは成熟型まで処理され、cas(CRISPR-会合)ヌクレアーゼなどのヌクレアーゼと会合することができる。異種遺伝子エレメントにハイブリダイズすることができる配列を有するRNA及びCasヌクレアーゼを含むCRISPR-Casシステムは、次に、ゲノム中のこれらの外来性遺伝子エレメントを認識し切断することができる。
【0109】
CRISPR-Casシステムは、特定の配列を標的にするのにカスタマイズされたタンパク質の生成を必要としないが、むしろ、単一Cas酵素は、特定のDNA標的を認識するよう短いガイドRNA分子(crRNA)によりプログラムすることが可能である。細菌及び古細菌適応免疫のCRISPR-Casシステムは、タンパク質組成及びゲノム遺伝子座構造の極端な多様性を示す。CRISPR-Casシステム遺伝子座は、50を超える遺伝子ファミリーを有し厳密に普遍的な遺伝子はなく、急速な進化及び遺伝子座構造の極端な多様性を示している。今までのところ、多方面アプローチを採用して、93のCasタンパク質については395プロファイルの広範なcas遺伝子が同定されている。分類は、シグネチャー遺伝子プロファイルプラス遺伝子座構造のシグネチャーを含む。これらのシステムが2つのクラス、多サブユニットエフェクター複合体を有するクラス1、及びCas9タンパク質が例証する単一サブユニットエフェクターモジュールを有するクラス2に広く分割されるCRISPR-Casシステムの新しい分類が提唱されている。
【0110】
少なくとも3つの異なるCas9ヌクレアーゼがゲノム編集のために開発されている。第1は野生型Cas9であり、これは特定のDNA部位に二本鎖切断(DSB)を導入し、DSB修復機構を活性化する。DSBは、非相同末端結合(NHEJ)、相同組換え修復(HDR)又はマイクロホモロジー媒介修復(MMEJ)により修復可能である。NHEJは、修復中に結合する2つの末端間に相同性(<5bp)のないDSBを修復することができ、HDRは、修復中結合された末端間に大きな領域(100以上のヌクレオチド)の相同性があるDSBを修復することができ、MMEJは修復中結合された末端間に小さな(5~50bp)領域の相同性があるDSBを修復することができる。別のタイプのCas9は、Cas9D10Aとして知られ、ニッカーゼ活性のみがある変異Cas9を含み、これはこの変異Cas9が1つのDNA鎖のみを切断し、NHEJを活性化しないことを意味する。したがって、DNA修復はHDR経路のみを介して進行する。第3は、切断活性はないがDNAに結合することができるヌクレアーゼ欠損Cas9(dCas9)である。したがって、dCas9は切断なしにゲノムの特定の配列を標的にすることができる。dCas9を種々のエフェクタードメインと融合させることにより、dCas9は遺伝子サイレンシングツール又は活性化ツールとして使用可能である。
【0111】
クラス1及びクラス2 CRISPR-Casシステムに加えて、つい最近、Cpf1により例証される推定クラス2、タイプV CRISPR-Casクラスが同定されているZetscheら、(2015年)Cell 163(3):759~771頁。Cpf1ヌクレアーゼは特に、プロトスペーサー隣接モチーフ又はPAMとして知られる短い3塩基対認識配列(TTN)によって標的部位選択の追加の柔軟性を提供できる。Cpf1の切断部位はPAM配列から少なくとも18bp離れており、したがって、この酵素は、インデル(挿入と欠失)形成後特定の遺伝子座を繰り返し切断して、HDRの効率を増やすことができる。さらに、粘着末端を持つ食い違いDSBは、配向特異的ドナー鋳型挿入を可能にする。
【0112】
CRISPR-Casシステム及びこの構成成分に関する追加の情報は、米国特許第8697359号、米国特許第8771945号、米国特許第8795965号、米国特許第8865406号、米国特許第8871445号、米国特許第8889356号、米国特許第8889418号、米国特許第8895308号、米国特許第8906616号、米国特許第8932814号、米国特許第8945839号、米国特許第8993233号、及び米国特許第8999641号、及びにこれらに関係する出願、並びに国際公開第2014/018423号、国際公開第2014/093595号、国際公開第2014/093622号、国際公開第2014/093635号、国際公開第2014/093655号、国際公開第2014/093661号、国際公開第2014/093694号、国際公開第2014/093701号、国際公開第2014/093709号、国際公開第2014/093712号、国際公開第2014/093718号、国際公開第2014/145599号、国際公開第2014/204723号、国際公開第2014/204724号、国際公開第2014/204725号、国際公開第2014/204726号、国際公開第2014/204727号、国際公開第2014/204728号、国際公開第2014/204729号、国際公開第2015/065964号、国際公開第2015/089351号、国際公開第2015/089354号、国際公開第2015/089364号、国際公開第2015/089419号、国際公開第2015/089427号、国際公開第2015/089462号、国際公開第2015/089465号、国際公開第2015/089473号、国際公開第2015/089486号、国際公開第2016205711号、国際公開第2017/106657号、国際公開第2017/127807号、及びにこれらに関係する出願に記載されている。
【0113】
特定の実施形態は、tracrRNAとcrRNAを組み合わせて単一の合成単一ガイドRNAにする(例えば、配列番号87~89、又は290~366を利用するsgRNA)。特定の実施形態では、sgRNAは、crRNA及びtracrRNA配列に類似している20ヌクレオチド配列を含むことができる。ある特定の遺伝子編集システムでは、標的配列はPAMに隣接していてもよい(例えば、5’-20nt標的-NGG-3’)。特定の実施形態では、標的配列はPAM(配列番号5~84)を含むことができる。特定の実施形態では、ガイドRNA(gRNA)は、ゲノム編集複合体が標的にするPAMに隣接する標的部位を含む。gRNAは、PAMに隣接する少なくとも16、17、18、19、20、21、又は22ヌクレオチドを含むことができる。
【0114】
特定の実施形態では、カッティングエレメントは、操作されたgRNAの助けを借りて標的DNA位置に向けられる(
図25A(Sternbergら、Mol Cell.2015年;58(4):568~74頁))。相同性アームが切断ゲノム領域に隣接している遺伝子構築物は、相同性組換えDNA修復機構によりこの位置に効率的に挿入される(例えば、
図15B参照(Elliottら、Mol Cell Biol.1998年;18(1):93~101頁))。このアプローチを使用すると、内因性抗体の発現を除き、選択された抗体をコードする遺伝子は標的遺伝子位置に挿入される。この標的挿入は、無作為な遺伝子挿入から生じるオフターゲット効果の可能性を除く又は著しく減少させる。
【0115】
特定の実施形態では、それぞれの内因性抗体のマウス又はヒトIgHを標的にするsrRNAは、J領域の100bp下流の領域を標的にする(
図9)。実験例では、この領域は標的にされて、内因性ゲノム由来のC領域を含有する選択された抗体パリビズマブのバージョンを発現した(
図7及び9)。crispr.mit.eduアルゴリズム(Hsuら、Nat Biotechnol.2013年;31(9):827~32頁)は、この領域について、オフターゲット結合がたとえあるにしてもほとんどないと予想される22のターゲティング配列を同定した。個々のターゲティング配列は完全長sgRNA中に挿入させ、記載される通りにインキュベーションの直前にCas9などのヌクレアーゼと混合させ(Schumannら、Proc Natl Acad Sci U S A.2015年;112(33):10437~42頁)、B細胞中に電気穿孔することができる(Kimら、J Immunol.1979年;122(2):549~54頁)。Cas9により切断されるDNAの細胞修復により遺伝子機能が失われることが多いので(Symington&Gautier、Annu Rev Genet.2011年;45:247~71頁)、抗体コード領域を標的にする効率的なsgRNAは抗体を欠くいくつかのB細胞の出現をもたらすと予想され、これはフローサイトメトリーにより容易に評価することができる。イントロン配列を標的にするsgRNAの活性は、シーケンシングにより、又はT7エンドヌクレアーゼアッセイなどの酵素的アッセイを通じて評価することができる。
【0116】
特定の実施形態では、ゲノムターゲティング及びカッティングエレメントは、電気穿孔、ナノ粒子媒介送達及び/又はウイルスベクター送達を通じて投与することができる。電気穿孔は、例えば、ターゲティングエレメント及び/又はカッティングエレメントを送達するのに有用になりうる。なぜならば、細胞の膜は通常ではそのような異種分子を細胞内に入れないからである。電気穿孔は細胞に電気ショックを送り、このショックがそのような異種分子が細胞膜を通過するのを一時的に可能にする。
【0117】
特定の実施形態では、挿入用の遺伝子構築物は、電気穿孔、ナノ粒子媒介送達及び/又はウイルスベクター送達を通じて投与することができる。アデノ随伴ウイルスベクターは、例えば、アデノウイルス5(Ad5)、アデノウイルス35(Ad35)、アデノウイルス11(Ad11)、アデノウイルス26(Ad26)、アデノウイルス48(Ad48)、又はアデノウイルス50(Ad50)、及びアデノ随伴ウイルス(AAV;例えば、米国特許第5,604,090号;Kayら、Nat.Genet.24:257(2000年);Nakaiら、Blood 91:4600(1998年)参照)由来のベクターを含む。
【0118】
特定の実施形態では、ゲノムターゲティング及びカッティングエレメントは、電気穿孔を通じて投与することができ、挿入用の遺伝子構築物はAAV媒介送達を通じて投与することができる。特定の実施形態では、ゲノムターゲティング及びカッティングエレメントは、ナノ粒子媒介送達を通じて投与することができ、挿入用の遺伝子構築物はAAV媒介送達を通じて投与することができる。
【0119】
特定の実施形態では、導入遺伝子を含む遺伝子構築物は、電気穿孔の直前又は少し前にターゲティングエレメント(例えば、sgRNA)及びカッティングエレメント(例えば、Cas9又はcpf1)と混合することができる。選択された抗体発現は、フローサイトメトリーにより蛍光的にタグ付けされた標的タンパク質への細胞結合を測定することにより後で(例えば、3日後に)確認することができる。エピトープ特異的B細胞を検出し分析するための濃縮及び分析方法を使用することができる(Papeら、Science.2011年;331(6021):1203~7頁;Taylorら、J Exp Med.2012年;209(3):597~606頁;Taylorら、J Exp Med.2012年;209(11):2065~77頁;Haaskenら、J Immunol.2013年;191(3):1055~62頁;Taylorら、J Immunol Methods.2014年;405:74~86頁;Nantonら、Eur J Immunol.2015年;45(2):428~41頁;Hamiltonら、J Immunol.2015年;194(10):5022~34頁;Taylorら、Science.2015年;347(6223):784~7頁)。これらの方法は、全B細胞集団の異常なほどわずか0.00002%の頻度で選択された抗体発現B細胞の検出を可能にする(Taylorら、Science.2015年;347(6223):784~7頁)。
【0120】
特定の実施形態では、細胞は、遺伝子構築物を送達する前又は後で、マーカー発現に基づいて同定する及び/又は分別することができる。例えば、遺伝子構築物の送達に先立って、特定のタイプのB細胞(例えば、記憶B細胞、抗体分泌B細胞、ナイーブB細胞、B1 B細胞、周辺帯B細胞)を試料から単離することが有用である場合がある。別の例として、血液試料に存在する他の細胞からB細胞を単離することが有用である場合がある。CD19は、B細胞により発現されるタンパク質の例であるが、身体の他の細胞ではほとんど発現されない。CD19を蛍光分子で標識することにより、B細胞を特異的に同定することができる。B220はマウスB細胞を同定するのに有用なマーカーである。
【0121】
CD27は、記憶B細胞で発現されるタンパク質の例であるが、ナイーブヒトB細胞では発現されない。CD27を蛍光分子で標識することにより、記憶B細胞を同定することができる。
【0122】
CD21は、感染に続いて急速に抗体を分泌する能力を持つ一部の記憶ヒトB細胞により発現されない(又は発現される程度が低い)タンパク質の例である。低CD21発現を使用して、プラズマ細胞分化のためにプライミングされたB細胞を規定することができる。CD21を蛍光分子で標識することにより、これらのB細胞は、例えば、負の選択により特異的に同定することができる。
【0123】
ヒトナイーブB細胞は、マーカープロファイルIgM+ IgD+ CD27-により同定することができる。マウスナイーブB細胞は、マーカープロファイルCD38+ GL7- IgM+ IgD+により同定することができる。ヒトB1 B細胞は、マーカープロファイルCD5+ CD43+により同定することができる。マウスB1 B細胞は、マーカープロファイルCD43+ B220LOWにより同定することができる。ヒト周辺帯B細胞は、マーカープロファイルCD21+++ IgM++ IgD- CD27+により同定することができる。マウス周辺帯B細胞は、マーカープロファイルCD21+++ IgM++ IgD-により同定することができる。
【0124】
特定の実施形態は、CD19+CD27+CD21loマーカープロファイルを利用しうる。
【0125】
CD45は、本明細書に記載される実験において使用される細胞型を同定する及び/又は単離するために使用されるマーカーである。マウス系統が異なればCD45と呼ばれるタンパク質の異なるバージョンが発現され、CD45.1及びCD45.2と名付けられる。本明細書で開示される実験では、CD45.2を発現するマウス由来のB細胞が採取され、CD45.1を発現するマウス中に移される。CD45.1とCD45.2を異なる蛍光分子で標識することにより、ドナー動物由来の細胞を同定することができる。なぜならば、この細胞はCD45.2を発現するがCD45.1は発現しないからである。
【0126】
特定の実施形態は、外来性軽鎖の発現に基づいて遺伝子改変後B細胞を分別することを含む。例えば、天然にカッパ軽鎖を発現するB細胞は、ラムダ軽鎖を含む選択された抗体を発現するように改変することが可能である。天然にラムダ軽鎖を発現するB細胞は、カッパ軽鎖を含む選択された抗体を発現するように改変することが可能である。外来性軽鎖の発現に基づく分別は、選択された抗体を発現するB細胞のみの単離を可能にする。特定の実施形態では、その内因性軽鎖の表面発現を完全に欠くB細胞のみが製剤化及び対象への投与のために単離される。
【0127】
特定の実施形態では、細胞はフローサイトメトリーを使用して同定しうる及び/又は単離しうる。フローサイトメトリーは、レーザー光を使用して何百万もの個々の細胞を標識する蛍光分子を個別に分析する感度の良い強力な分析アプローチである。それぞれの細胞を標識している蛍光分子の組合せを分析することにより、異なるB細胞サブタイプを同定することができる。フローサイトメトリーを使用して、B細胞サブセットを同定しこれらの細胞内での選択された抗体(例えば、パリビズマブ)の発現を分析することができる。
【0128】
特定の実施形態では、B細胞を改変する方法は、造血幹細胞(HSC)を入手する、及び/又は遺伝子構築物をHSCに送達することを含むことができる。HSCとは、B細胞並びに免疫系の他のあらゆる細胞を天然に産生するタイプの幹細胞を指すことができる。HSCは、例えば、臍帯血から入手可能である。
【0129】
本明細書に記載される特定の実験結果は、新たに単離したB細胞に移るのに先立ってA20細胞を利用して遺伝子改変方法を開発した。A20は、マウスB細胞から作られた不死化細胞株である。
【0130】
特定の実施形態では、B細胞はヒト対象から入手してもよく、入手したB細胞又はこのサブセットはイクスビボで改変しうる。
【0131】
改変B細胞の製剤化。改変後、細胞は培養培地から採取し、洗浄して、治療有効量で担体中に濃縮することができる。例示的担体は、食塩水、緩衝食塩水、生理食塩水、水、ハンクス液、リンゲル液、Nonnosol-R(Abbott Labs)、PLASMA-LYTE A(登録商標)(Baxter Laboratories、Inc.、Morton Grove、IL)、グリセロール、エタノール、及びこれらの組合せを含む。
【0132】
特定の実施形態では、担体は、ヒト血清アルブミン(HSA)若しくは他のヒト血清成分又はウシ胎仔血清で補充することができる。特定の実施形態では、注入用の担体は、5%ヒアルロン酸ナトリウム塩(HAS)又はブドウ糖を含む緩衝食塩水を含む。追加の等張剤は、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、又はマンニトールなどの三価以上の糖アルコールを含む多価糖アルコールを含む。
【0133】
担体は、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、及び/又はトリエチルアミン塩などの緩衝剤を含むことができる。
【0134】
安定化剤とは、充填剤から容器壁への細胞接着を予防する一助となる添加剤まで機能範囲が及ぶことができる広い範疇の賦形剤を指す。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール;アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸及びスレオニンなどのアミノ酸;ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール及びイノシトールなどのシクリトールなどの有機糖又は糖アルコール;PEG;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、アルファ-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち、<10残基);HSA、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース及びグルコースなどの単糖;ラクトース、マルトース及びサクロースなどの二糖;ラフィノースなどの三糖、並びにデキストランなどの多糖を含むことができる。
【0135】
必要である又は有益である場合、製剤は注射部位の疼痛を和らげるためにリドカインなどの局所麻酔薬を含むことができる。
【0136】
例示的保存剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物、塩化ヘキサメトニウム、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及び3-ペンタノールを含む。
【0137】
製剤は、例えば、102よりも多い改変B細胞、103よりも多い改変B細胞、104よりも多い改変B細胞、105よりも多い改変B細胞、106よりも多い改変B細胞、107よりも多い改変B細胞、108よりも多い改変B細胞、109よりも多い改変B細胞、1010よりも多い改変B細胞、又は1011よりも多い改変B細胞を含むことができる。
【0138】
使用方法。本明細書に開示される方法は、対象(例えば、ヒト、獣医動物(イヌ、ネコ、爬虫類、鳥類)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、ニワトリ)及び研究動物(例えば、サル、ラット、マウス、魚))を本明細書で開示される製剤で処置することを含む。対象の処置は、治療有効量を送達することを含む。治療有効量は、有効量、予防的処置及び/又は治療的処置を提供する量を含む。
【0139】
「有効量」とは、対象において所望の生理的変化をもたらすのに必要な組成物の量である。有効量は、研究目的で投与される場合が多い。本明細書で開示される有効量は、状態の発症、進行及び/又は消散の評価に関連する動物モデルにおいて又はインビトロアッセイにおいて統計的に有意な効果を引き起こすことができる。
【0140】
「予防的処置」は、処置が状態を発症するリスクを軽減する又は減少させる目的で施されるように、状態の徴候若しくは症状を示さない又は状態の初期の徴候若しくは症状のみを示す対象に施される処置を含む。したがって、予防的処置は、状態に対する予防治療として機能する。特定の実施形態では、予防的処置は、状態の悪化を低減する、遅延させる、又は予防する。特定の実施形態は、現在のところ有効なワクチンがない場合に予防的防御として本明細書に記載される製剤の投与を含む。特定の実施形態は、従来のワクチン接種戦略の代替法としての予防的な防御として本明細書に記載される製剤の投与を含む。特定の実施形態は、従来のワクチン接種戦略の補助法としての予防的な防御として本明細書に記載される製剤の投与を含む。
【0141】
「治療的処置」は、状態の症状又は徴候を示す対象に施される処置を含み、状態のそれらの徴候又は症状を軽減する又は除く目的で対象に施される。治療的処置は、状態の存在若しくは活性を低減する、制御する若しくは除く及び/又は状態の副作用を低減する、制御する若しくは除くことができる。
【0142】
特定の実施形態では、状態は感染症である。
【0143】
有効量としての機能、予防的処置又は治療的処置は互いに排他的ではなく、特定の実施形態では、管理された投薬量は1つよりも多い処置タイプを達成しうる。
【0144】
特定の実施形態では、治療有効量は抗病原体効果を提供する。抗病原体効果は、抗感染効果を含むことができる。抗感染効果は、感染症の発生の減少、感染症の重篤度の減少、感染症の持続期間の減少、感染した細胞数の減少、感染した組織量の減少、平均余命の増加、免疫クリアランスに対する感染細胞の誘導感受性、減少した感染関連疼痛、及び/又は処置された感染症に関連する症状の低減若しくは除去を含むことができる。
【0145】
特定の実施形態では、治療有効量は抗炎症効果を提供する。抗炎症効果は、炎症関連疼痛、発熱、発赤、腫脹及び/又は機能喪失の減少を含むことができる。
【0146】
特定の実施形態では、治療有効量は、抗クローン病効果又は抗潰瘍性大腸炎効果を提供する。抗クローン病効果又は抗潰瘍性大腸炎効果は、下痢、直腸出血の減少、不可解な体重減少の縮小、発熱の減少、腹痛及び筋痙攣の減少、疲労及び活気のなさの減少、並びに/又は食欲の回復を含むことができる。
【0147】
特定の実施形態では、治療有効量は抗関節炎効果を提供する。抗関節炎効果は、関節の疼痛、こわばり、腫脹、発赤の減少及び/又は可動域の回復を含むことができる。関節炎の種類は、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、及び乾癬性関節炎を含む。
【0148】
特定の実施形態では、治療有効量は抗尋常性乾癬効果を提供する。抗尋常性乾癬効果は、赤斑、鱗屑性斑点、掻痒、灼熱痛、ひりひりする痛み、爪床異常及び/又は腫脹若しくは硬直した関節の減少を含むことができる。
【0149】
特定の実施形態では、B細胞は対象から入手してもよく、B細胞のサブセットはイクスビボで改変してもよく、次に、改変されたB細胞は製剤化して対象に投与してもよい。特定の実施形態では、対象のB細胞の最初のサブセットは、最初の遺伝子構築物で改変して最初の病原体に対する選択された抗体を産生させてもよく、対象のB細胞の第2のサブセットは、第2の遺伝子構築物で改変して第2の病原体に対する選択された抗体を産生させて、それによって2つの病原体に対する防御抗体を提供してもよい。示されたように、いかなる数の病原体に対してもB細胞を形成して対象に投与することが可能である。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗RSV抗体、抗HIV抗体、抗デングウイルス抗体、抗ボルデテラ・パータシス(Bordatella pertussis)抗体、抗C型肝炎抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体、抗MPV抗体、抗サイトメガロウイルス抗体、抗エプスタイン・バーウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体、抗クロストリジウム・ディフィシル細菌毒素抗体、及び/又は抗TNF抗体でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗RSV抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体及び/又は抗MPV抗体のうちの1種以上でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗RSV抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体及び抗MPV抗体でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体はパリビズマブである。
【0150】
特定の実施形態では、B細胞は、免疫学的にレシピエントに適合している骨髄ドナー又は造血幹細胞ドナーから入手しうる。特定の実施形態では、ドナーのB細胞の最初のサブセットは最初の遺伝子構築物で改変して最初の病原体に対する選択された抗体を産生させてもよく、ドナーのB細胞の第2のサブセットは第2の遺伝子構築物で改変して第2の病原体に対する選択された抗体を産生させて、それによって2つの病原体に対する防御抗体を提供してもよい。示されたように、いかなる数の病原体に対してもB細胞を形成して対象に投与することが可能である。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗RSV抗体、抗HIV抗体、抗デングウイルス抗体、抗ボルデテラ・パータシス抗体、抗C型肝炎抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体、抗MPV抗体、抗サイトメガロウイルス抗体、抗エプスタイン・バーウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体、抗クロストリジウム・ディフィシル細菌毒素抗体、及び/又は抗TNF抗体でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗RSV抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体及び/又は抗MPV抗体のうちの1種以上でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗RSV抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体及び抗MPV抗体でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体はパリビズマブである。遺伝子改変されたB細胞は、レシピエントに投与されて、移植された細胞がレシピエント自身の免疫系に再定植するまで、感染に対する防御(例えば、抗感染効果)を与えることができる。
【0151】
特定の実施形態では、レシピエントは、血液系腫瘍に対する処置としてドナー由来の骨髄又は造血幹細胞移植片を受けている。血液系腫瘍の例は、急性リンパ性白血病、B細胞性前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫/白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(悪性度I、II、III、又はIV)、ホジキンリンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、周辺帯リンパ腫(節外性又は結節性)、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、POEMS症候群/骨硬化性骨髄腫、原発性体液性リンパ腫、脾臓周辺帯リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む。
【0152】
特定の実施形態では、レシピエントは、レシピエントが欠いている遺伝子を与える遺伝子改変造血幹細胞を受けている。これらのレシピエントは、造血幹細胞を通じた治療遺伝子の提供で処置することができる原発性又は続発性免疫不全症を抱えている可能性がある。80を超える原発性免疫不全疾患が世界保健機構により認識されている。これらの疾患は、一部の場合、身体が感染に対するいかなる抗体も又は十分な抗体を産生できない免疫系の固有の欠陥を特徴とする。他の場合では、感染と闘う細胞防御が正しく働けなくなる。典型的には、原発性免疫不全症は遺伝性障害である。X連鎖重症複合免疫不全症(SCID-X1)は原発性免疫不全症の別の例である。X連鎖SCIDは、共通ガンマ鎖遺伝子(γC)における突然変異により引き起こされる細胞性と体液性免疫枯渇の両方をもたらし、この突然変異によりT及びナチュラルキラー(NK)リンパ球がなくなる。
【0153】
続発性又は後天性免疫不全症は、受け継がれた遺伝子異常の結果ではなく、むしろ、免疫系が免疫系以外の要因により損なわれる個人において起こる。例は、外傷、ウイルス、化学療法、毒素及び汚染を含む。後天性免疫不全症候群(AIDS)はウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)により引き起こされる続発性免疫不全障害の例であり、Tリンパ球の枯渇により身体が感染と闘えなくなる。
【0154】
特定の実施形態では、B細胞は対象から入手してもよく、B細胞のサブセットはイクスビボで改変してもよく、次に、改変されたB細胞は製剤化して対象に投与してもよい。特定の実施形態では、対象のB細胞の最初のサブセットは、最初の遺伝子構築物で改変して、炎症性サイトカインなどの炎症性分子に対する選択された抗体を産生させてもよい。特定の実施形態では、選択された抗体は、抗TNF抗体及び/又は抗IL-1抗体でありうる。特定の実施形態では、選択された抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ及び/若しくはゴリムマブ、並びに/又はこれらの承認されたバイオシミラーである。
【0155】
投与では、治療有効量(本明細書では用量とも呼ばれる)は、最初は、インビトロアッセイ及び/又は動物モデル研究からの結果に基づいて評価することが可能である。そのような情報を使用して、目的の対象における有用な用量をもっと正確に決定することができる。特定に対象に投与される実際の投与量は、年齢、以前の予防接種(もしあれば)、標的、体重、状態の重篤度、状態の種類、状態の段階、以前若しくは現在の治療介入、対象の特発性疾患及び投与経路を含む身体的及び生理的要因などのパラメータを考慮に入れて医師、獣医又は研究者により決定することができる。
【0156】
示されるように、特定の実施形態では、改変されたB細胞は、例えば、対象への投与後トラッキング及び/又は除去を可能にするタグを発現する。
【0157】
例示的用量は、102よりも多い改変B細胞、103よりも多い改変B細胞、104よりも多い改変B細胞、105よりも多い改変B細胞、106よりも多い改変B細胞、107よりも多い改変B細胞、108よりも多い改変B細胞、109よりも多い改変B細胞、1010よりも多い改変B細胞、又は1011よりも多い改変B細胞を含むことができる。
【0158】
特定の実施形態では、選択された抗体の効果は、ウイルス力価を使用して測定可能である。ウイルス力価とは、検出可能なウイルスの量を指す。高ウイルス力価は高レベルの感染を意味する。最適防御応答は、ゼロまで下がる力価で観察される。
【0159】
当業者であれば理解するように、特定の実施形態が説明されてきたが、本開示の範囲内で追加の実施形態も利用しうる。以下の説明は、代表的な追加の実施形態の説明及び実施可能性を提供する。
【0160】
例示的実施形態
1.B細胞を遺伝子操作して選択された抗体を発現させる方法であって、すべてのB細胞において一定であるイントロン領域での(i)プロモーター及び(ii)選択された抗体の一部をコードする導入遺伝子を含む遺伝子構築物の標的挿入を含み、(i)プロモーターはプロモーターと相互作用して導入遺伝子の発現を駆動させるエンハンサーエレメントに対して位置付けられており、(ii)導入遺伝子はB細胞の内因性抗体コードゲノムの一部が発現されないような立体配置である方法。
2.B細胞を遺伝子操作して選択された抗体を発現させる方法であって、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4中に、(i)重鎖プロモーター、(ii)シグナルペプチド、(iii)選択された抗体の完全長軽鎖;(iv)柔軟なリンカー又はスキッピングエレメント;(v)選択された抗体の重鎖の可変領域;及び(vi)スプライスジャンクションを含む遺伝子構築物を挿入し、それによってB細胞を遺伝子操作して選択された抗体を発現させることを含む方法。
3.B細胞の内因性可変重鎖コードゲノムが遺伝子改変中に切り出されない、実施形態1又は2の方法。
4.選択された抗体が、抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗体、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、抗デングウイルス抗体、抗ボルデテラ・ペルツシス抗体、抗C型肝炎抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体、抗メタニューモウイルス(MPV)抗体、抗サイトメガロウイルス抗体、抗エプスタイン・バーウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体、抗クロストリジウム・ディフィシル細菌毒素抗体又は抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体である、実施形態1~3のいずれかの方法。
5.遺伝子構築物が、配列番号102~175、278、279又は280~289を含む、実施形態1~4のいずれかの方法。
6.柔軟なリンカーが、選択された抗体の完全長軽鎖と選択された抗体の重鎖の可変領域の間にある、実施形態2~5のいずれかの方法。
7.柔軟なリンカーが、配列番号180~184から選択される、実施形態2~6のいずれかの方法。
8.柔軟なリンカーが、50~80アミノ酸を含むGly-Serリンカーである、実施形態2~7のいずれかの方法。
9.柔軟なリンカーが、57アミノ酸を含むGly-Serリンカーである、実施形態2~8のいずれかの方法。
10.柔軟なリンカーが配列番号122である、実施形態2~6、8又は9のいずれかの方法。
11.スキッピングエレメントが、選択された抗体の完全長軽鎖と選択された抗体の重鎖の可変領域の間にある、実施形態2~10のいずれかの方法。
12.スキッピングエレメントが自己切断ペプチドである、実施形態2~11のいずれかの方法。
13.自己切断ペプチドが配列番号176~179から選択される、実施形態12の方法。
14.スキッピングエレメントが内部リボソーム進入部位(IRES)である、実施形態2~13のいずれかの方法。
15.重鎖プロモーターが配列番号111及び128から選択される、実施形態2~14のいずれかの方法。
16.重鎖プロモーターがIgVH1-69又はJ558H10である、実施形態2~15のいずれかの方法。
17.シグナルペプチドが配列番号118、134及び185~194から選択される、実施形態2~16のいずれかの方法。
18.シグナルペプチドが、ヒトIgH重鎖又はヒトIgL軽鎖に由来する、実施形態2~17のいずれかの方法。
19.遺伝子構築物が相同性アームを含む、実施形態1~18のいずれかの方法。
20.相同性アームが、配列番号90~101、110、125、127、140、142、143、153、170、171、173、174、278又は279を含む、実施形態19の方法。
21.遺伝子構築物がタグをコードする、実施形態1~20のいずれかの方法。
22.タグが、STREPTAG(登録商標)、STREP(登録商標)タグII、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタメートタグ、HAタグ、Mycタグ、Nusタグ、Sタグ、SBPタグ、Sofタグ1、Sofタグ3又はV5タグを含む、実施形態21の方法。
23.タグが配列番号122又は195~204を含む、実施形態21又は22の方法。
24.配列番号87~89及び290~366の1つ以上から選択されるガイドRNA(gRNA)配列並びにヌクレアーゼをB細胞に送達することをさらに含む、実施形態1~23のいずれかの方法。
25.送達することが電気穿孔、ナノ粒子又はウイルス媒介送達を通じてである、実施形態24の方法。
26.遺伝子構築物がアデノ随伴ウイルスベクターの一部である、実施形態1~25のいずれかの方法。
27.gRNA及びヌクレアーゼが電気穿孔を通じて送達され、遺伝子構築物がアデノ随伴ウイルスベクターの一部として送達される、実施形態24~26のいずれかの方法。
28.ヌクレアーゼがCas9又はCpf1である、実施形態24~27のいずれかの方法。
29.gRNA配列の1つ以上により標的にされる標的配列が配列番号5~84の1つ以上から選択され、gRNAが配列番号87~89及び290~366の1つ以上から選択される、実施形態24~28のいずれかの方法。
30.選択された抗体が、パリビズマブ、AB1128又はab20745を含む抗RSV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
31.選択された抗体が、配列番号138を含む重鎖及び配列番号136を含む軽鎖を含むパリビズマブ;配列番号138を含む重鎖及び配列番号205を含む軽鎖を含むパリビズマブ;配列番号123を含む重鎖及び配列番号120を含む軽鎖を含む抗RSV抗体;又は配列番号123を含む重鎖及び配列番号206を含む軽鎖を含む抗RSV抗体である、実施形態1~30のいずれかの方法。
32.選択された抗体が、配列番号207を含むCDRH1、配列番号208を含むCDRH2、配列番号209を含むCDRH3;配列番号210を含むCDRL1、配列番号211を含むCDRL2、及び配列番号212を含むCDRL3を含む抗RSV抗体である、実施形態1~30のいずれかの方法。
33.選択された抗体が、10E8、VRC01、ab18633又は39/5.4Aを含む抗HIV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
34.選択された抗体が、配列番号150を含む重鎖及び配列番号149を含む軽鎖を含む抗HIV抗体である、実施形態1~29又は33のいずれかの方法。
35.選択された抗体が、配列番号213を含むCDRH1、配列番号214を含むCDRH2、配列番号215を含むCDRH3、配列番号216を含むCDRL1、配列番号217を含むCDRL2、及び配列番号218を含むCDRL3又は配列番号219を含むCDRH1、配列番号220を含むCDRH2、配列番号221を含むCDRH3、QYGSを含むCDRL1、SGSを含むCDRL2、及び配列番号222を含むCDRL3を含む抗HIV抗体である、実施形態1~29又は33のいずれかの方法。
36.選択された抗体が、抗体55、DB2-3、ab155042又はab80914を含む抗デングウイルス抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
37.選択された抗体が、配列番号223を含むCDRH1、配列番号224を含むCDRH2、配列番号225を含むCDRH3;配列番号226を含むCDRL1、配列番号227を含むCDRL2、及び配列番号228を含むCDRKL3又は配列番号229を含むCDRH1、配列番号230を含むCDRH2、配列番号231を含むCDRH3、配列番号232を含むCDRL1、配列番号233を含むCDRL2、及び配列番号234を含むCDRL3を含む抗デングウイルス抗体である、実施形態1~29又は36のいずれかの方法。
38.選択された抗体が、配列番号235を含む重鎖及び配列番号236を含む軽鎖を含む抗百日咳抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
39.選択された抗体が、MAB8694又はC7-50を含む抗C型肝炎抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
40.選択された抗体が、配列番号237を含むCDRH1、配列番号238を含むCDRH2、配列番号239を含むCDRH3、配列番号240を含むCDRL1、配列番号241を含むCDRL2、及び配列番号242を含むCDRL3を含む抗C型肝炎抗体である、実施形態1~29又は39のいずれかの方法。
41.選択された抗体が、C102を含む抗インフルエンザウイルス抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
42.選択された抗体が、配列番号159を含む重鎖及び配列番号158を含む軽鎖を含む抗インフルエンザウイルス抗体である、実施形態1~29又は41のいずれかの方法。
43.選択された抗体が、配列番号243を含むCDRH1、配列番号244を含むCDRH2、配列番号245を含むCDRH3、配列番号246を含むCDRL1、KTSを含むCDRL2、及び配列番号247を含むCDRL3を含む抗インフルエンザウイルス抗体である、実施形態1~29又は41のいずれかの方法。
44.選択された抗体が、MPE8を含む抗MPV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
45.選択された抗体が、MCMV5322A、MCMV3068A、LJP538又はLJP539を含む抗CMV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
46.選択された抗体が、配列番号168を含む重鎖及び配列番号166を含む軽鎖を含む抗EBV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
47.選択された抗体が、配列番号248を含むCDRH1、配列番号249を含むCDRH2、配列番号250を含むCDRH3、配列番号251を含むCDRL1、配列番号252を含むCDRL2、及び配列番号253を含むCDRL3を含む抗EBV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
48.選択された抗体が、HSV8-N及びMB66を含む抗HSV抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
49.選択された抗体が、アクトクスマブ又はベズロトクスマブを含む抗クロストリジウム・ディフィシル抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
50.選択された抗体が、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、セルトリズマブ又はこれらの承認されたバイオシミラーを含む抗TNF抗体である、実施形態1~29のいずれかの方法。
51.選択された抗体が、配列番号254を含む重鎖及び配列番号255を含む軽鎖;配列番号256を含むCDRH1、配列番号257を含むCDRH2、及び配列番号258を含むCDRH3;配列番号259を含むCDRL1、配列番号260を含むCDRL2、及び配列番号261を含むCDRL3;配列番号262を含むCDRH1、配列番号263を含むCDRH2、及び配列番号264を含むCDRH3;配列番号265を含むCDRL1、配列番号266を含むCDRL2、及び配列番号267を含むCDRL3;又は配列番号268を含むCDRH1、配列番号269を含むCDRH2、及び配列番号270を含むCDRH3;配列番号271を含むCDRL1、配列番号272を含むCDRL2、及び配列番号273を含むCDRL3を含む抗TNF抗体である、実施形態1~29又は50のいずれかの方法。
52.遺伝子改変が配列番号87、88、89、90~175、278~366のいずれかを含む配列を利用する、実施形態1~51のいずれかの方法。
53.B細胞が、抗体産生B細胞、記憶B細胞、ナイーブB細胞、B1 B細胞又は周辺帯B細胞である、実施形態1~52のいずれかの方法。
54.実施形態1~53のいずれか1つの方法に従って改変されたB細胞。
55.B細胞が、抗体分泌B細胞、記憶B細胞、ナイーブB細胞、B1 B細胞又は周辺帯B細胞である、実施形態54のB細胞。
56.抗感染効果を必要とする対象において抗感染効果を提供する方法であって、実施形態54又は55のB細胞の治療有効量を対象に投与し、それによって抗感染効果を提供することを含む方法。
57.提供することでワクチン接種の必要を取り除く、実施形態56の方法。
58.投与することがワクチン接種プロトコールに取って代わる、実施形態56又は57の方法。
59.対象が免疫抑制されている、実施形態56~58のいずれかの方法。
60.対象が、骨髄移植、造血幹細胞移植又は遺伝子改変造血幹細胞の投与を含む処置レジメンの一部として免疫抑制されている、実施形態56~59のいずれかの方法。
61.抗炎症効果を必要とする対象において抗炎症効果を提供する方法であって、実施形態54又は55のB細胞の治療有効量を対象に投与し、それによって抗炎症効果を提供することを含む方法。
62.B細胞を改変して選択された抗体を発現させるための遺伝子構築物であって、(i)重鎖プロモーター、(ii)シグナルペプチド、(iii)選択された抗体の完全長軽鎖;(iv)柔軟なリンカー又はスキッピングエレメント;(v)選択された抗体の重鎖の可変領域;及び(vi)スプライスジャンクションを含む又はコードする遺伝子構築物。
63.配列番号102~175又は280~289を含む、実施形態62の遺伝子構築物。
64.柔軟なリンカーが、選択された抗体の完全長軽鎖と選択された抗体の重鎖の可変領域の間にある、実施形態62又は63の遺伝子構築物。
65.柔軟なリンカーが、配列番号180~184から選択される、実施形態62~64のいずれかの遺伝子構築物。
66.柔軟なリンカーが、50~80アミノ酸を含むGly-Serリンカーである、実施形態62~65のいずれかの遺伝子構築物。
67.柔軟なリンカーが、57アミノ酸を含むGly-Serリンカーである、実施形態62~66のいずれかの遺伝子構築物。
68.柔軟なリンカーが配列番号122である、実施形態62~64、66又は67のいずれかの遺伝子構築物。
69.スキッピングエレメントが、選択された抗体の完全長軽鎖と選択された抗体の重鎖の可変領域の間にある、実施形態62~68のいずれかの遺伝子構築物。
70.スキッピングエレメントが自己切断ペプチドである、実施形態62~69のいずれかの遺伝子構築物。
71.自己切断ペプチドが配列番号176~179から選択される、実施形態70の遺伝子構築物。
72.スキッピングエレメントが内部リボソーム進入部位(IRES)である、実施形態62~69のいずれかの遺伝子構築物。
73.重鎖プロモーターが配列番号111及び128から選択される、実施形態62~72のいずれかの遺伝子構築物。
74.重鎖プロモーターがIgVH1-69又はJ558H10である、実施形態62~73のいずれかの遺伝子構築物。
75.シグナルペプチドが配列番号118、134及び185~194から選択される、実施形態62~74のいずれかの遺伝子構築物。
76.シグナルペプチドが、ヒトIgH重鎖又はヒトIgL軽鎖に由来する、実施形態62~75のいずれかの遺伝子構築物。
77.相同性アームを含む、実施形態62~76のいずれかの遺伝子構築物。
78.相同性アームが、配列番号90~101、110、125、127、140、142、143、153、170、171、173、174、278又は279を含む、実施形態77の遺伝子構築物。
79.タグをコードする、実施形態62~78のいずれかの遺伝子構築物。
80.タグが、STREPTAG(登録商標)、STREP(登録商標)タグII、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタメートタグ、HAタグ、Mycタグ、Nusタグ、Sタグ、SBPタグ、Sofタグ1、Sofタグ3又はV5タグを含む、実施形態79の遺伝子構築物。
81.タグが配列番号122又は195~204を含む、実施形態79又は80の遺伝子構築物。
82.選択された抗体が、パリビズマブ、AB1128又はab20745を含む抗RSV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
83.選択された抗体が、配列番号138を含む重鎖及び配列番号136を含む軽鎖を含むパリビズマブ;配列番号138を含む重鎖及び配列番号205を含む軽鎖を含むパリビズマブ;配列番号123を含む重鎖及び配列番号120を含む軽鎖を含む抗RSV抗体;又は配列番号123を含む重鎖及び配列番号206を含む軽鎖を含む抗RSV抗体である、実施形態62~82のいずれかの遺伝子構築物。
84.選択された抗体が、配列番号207を含むCDRH1、配列番号208を含むCDRH2、配列番号209を含むCDRH3;配列番号210を含むCDRL1、配列番号211を含むCDRL2、及び配列番号212を含むCDRL3を含む抗RSV抗体である、実施形態62~82のいずれかの遺伝子構築物。
85.選択された抗体が、10E8、VRC01、ab18633又は39/5.4Aを含む抗HIV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
86.選択された抗体が、配列番号150を含む重鎖及び配列番号149を含む軽鎖を含む抗HIV抗体である、実施形態62~81又は85のいずれかの遺伝子構築物。
87.選択された抗体が、配列番号213を含むCDRH1、配列番号214を含むCDRH2、配列番号215を含むCDRH3、配列番号216を含むCDRL1、配列番号217を含むCDRL2、及び配列番号218を含むCDRL3又は配列番号219を含むCDRH1、配列番号220を含むCDRH2、配列番号221を含むCDRH3、QYGSを含むCDRL1、SGSを含むCDRL2、及び配列番号222を含むCDRL3を含む抗HIV抗体である、実施形態62~81又は85のいずれかの遺伝子構築物。
88.選択された抗体が、抗体55、DB2-3、ab155042又はab80914を含む抗デングウイルス抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
89.選択された抗体が、配列番号223を含むCDRH1、配列番号224を含むCDRH2、配列番号225を含むCDRH3;配列番号226を含むCDRL1、配列番号227を含むCDRL2、及び配列番号228を含むCDRKL3又は配列番号229を含むCDRH1、配列番号230を含むCDRH2、配列番号231を含むCDRH3、配列番号232を含むCDRL1、配列番号233を含むCDRL2、及び配列番号234を含むCDRL3を含む抗デングウイルス抗体である、実施形態62~81又は88のいずれかの遺伝子構築物。
90.選択された抗体が、配列番号235を含む重鎖及び配列番号236を含む軽鎖を含む抗百日咳抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
91.選択された抗体が、MAB8694又はC7-50を含む抗C型肝炎抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
92.選択された抗体が、配列番号237を含むCDRH1、配列番号238を含むCDRH2、配列番号239を含むCDRH3、配列番号240を含むCDRL1、配列番号241を含むCDRL2、及び配列番号242を含むCDRL3を含む抗C型肝炎抗体である、実施形態62~81又は91のいずれかの遺伝子構築物。
93.選択された抗体が、C102を含む抗インフルエンザウイルス抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
94.選択された抗体が、配列番号159を含む重鎖及び配列番号158を含む軽鎖を含む抗インフルエンザウイルス抗体である、実施形態62~81又は93のいずれかの遺伝子構築物。
95.選択された抗体が、配列番号243を含むCDRH1、配列番号244を含むCDRH2、配列番号245を含むCDRH3、配列番号246を含むCDRL1、KTSを含むCDRL2、及び配列番号247を含むCDRL3を含む抗インフルエンザウイルス抗体である、実施形態62~81又は93のいずれかの遺伝子構築物。
96.選択された抗体が、MPE8を含む抗MPV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
97.選択された抗体が、MCMV5322A、MCMV3068A、LJP538又はLJP539を含む抗CMV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
98.選択された抗体が、配列番号168を含む重鎖及び配列番号166を含む軽鎖を含む抗EBV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
99.選択された抗体が、配列番号248を含むCDRH1、配列番号249を含むCDRH2、配列番号250を含むCDRH3、配列番号251を含むCDRL1、配列番号252を含むCDRL2、及び配列番号253を含むCDRL3を含む抗EBV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
100.選択された抗体が、HSV8-N及びMB66を含む抗HSV抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
101.選択された抗体が、アクトクスマブ又はベズロトクスマブを含む抗クロストリジウム・ディフィシル抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
102.選択された抗体が、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、セルトリズマブ又はこれらの承認されたバイオシミラーを含む抗TNF抗体である、実施形態62~81のいずれかの遺伝子構築物。
103.選択された抗体が、配列番号254を含む重鎖及び配列番号255を含む軽鎖;配列番号256を含むCDRH1、配列番号257を含むCDRH2、及び配列番号258を含むCDRH3;配列番号259を含むCDRL1、配列番号260を含むCDRL2、及び配列番号261を含むCDRL3;配列番号262を含むCDRH1、配列番号263を含むCDRH2、及び配列番号264を含むCDRH3;配列番号265を含むCDRL1、配列番号266を含むCDRL2、及び配列番号267を含むCDRL3;又は配列番号268を含むCDRH1、配列番号269を含むCDRH2、及び配列番号270を含むCDRH3;配列番号271を含むCDRL1、配列番号272を含むCDRL2、及び配列番号273を含むCDRL3を含む抗TNF抗体である、実施形態62~81又は102のいずれかの遺伝子構築物。
104.実施形態62~103のいずれかの遺伝子構築物及び配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4を標的にするgRNAを含む、B細胞を遺伝子改変するためのキット。
105.gRNAが、配列番号87、88、89及び290~366の1つ以上から選択される実施形態104のキット。
106.ヌクレアーゼをさらに含む、実施形態104又は105のキット。
107.ヌクレアーゼがCas9又はCpf1である、実施形態106のキット。
108.ナノ粒子又はアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む、実施形態104~107のいずれかのキット。
109.gRNA及びヌクレアーゼがナノ粒子と会合している、実施形態104~108のいずれかのキット。
110.遺伝子構築物がアデノ随伴ウイルスベクターの一部である、実施形態104~109のいずれかのキット。
【実施例】
【0161】
[実施例1]ワクチンなしで呼吸器合胞体ウイルス感染に対する生涯の防御を提供する。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、幼い子供、特に、慢性肺疾患、先天性心疾患又は早産の幼児における重篤な呼吸器疾患の主因である。液性免疫はRSVに対する有効な防御を媒介することができ、組換え抗体Synagis(登録商標)(Medlmmune、Inc.)/パリビズマブの治療効果により実証されている。しかし、自然感染も以前のワクチン治験も、RSVに対する完全防御免疫応答を誘導できないでいた。
【0162】
疾患に対してワクチン接種するのが困難なRSVなどでは、初代B細胞を操作して所望の治療抗体の発現を誘発させることによりワクチン接種を迂回することは極めて魅力的である。免疫グロブリン(Ig)遺伝子座は極めて大きく、多様で、広範なゲノム組換え及び編集を受けやすい。さらに、膜と分泌型の両方を産生するための免疫グロブリン遺伝子の転写は、調節DNAエレメントによるmRNAスプライシングの調節及びポリアデニル化を利用している。この複雑さにより、リンパ球の細胞工学のための従来のアプローチである、ウイルス形質導入は、治療B細胞を産生するには技術的に実行不可能である。
【0163】
特定の実施形態は、シングルヒット免疫遺伝子操作による初代B細胞抗体特異性の迅速及び選択的再プログラミングのためのプラットフォームを含む。このプラットフォームは、初代B細胞におけるマイクロホモロジー媒介末端結合DNA修復経路の高活性を利用して、Cas9/sgRNAリボタンパク質によるDNA切断の作出後完全合成ハイブリッド二本鎖/一本鎖DNA鋳型を挿入する。このアプローチのキーとなるのは、内因性調節エレメントの保存であり、これにより表面結合及び分泌抗体発現の天然の制御が可能になる。さらに、戦略はRSVに制限されない。単回採血とそれに続く数日後の細胞注入だけで、実質的にいかなる病原体に対しても防御する抗体を発現することが可能になる。
【0164】
材料及び方法。sgRNAの設計。マウス及びヒトIgH遺伝子座におけるイントロン配列を標的にするsgRNAはCrispRGold(crisprgold.mdc-berlin.de)を使用して設計し、2’-O-メチル類似物及び3’ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を最初の3つの5’及び3’終端RNA残基で組み込む合成の形態で産生した(Synthego)。ゲノムターゲティング配列は以下の通りである:
【0165】
【0166】
鋳型配列の設計及び組立
ヒト:抗体構築物は、IgVH1-69重鎖プロモーター領域(配列番号111)、パリビズマブの完全長コドン最適化軽鎖(配列番号113(ヌクレオチド)及び配列番号120(アミノ酸))、StrepタグIIモチーフの3直列コピーを含有する57アミノ酸グリシン-セリンリンカー(配列番号116(ヌクレオチド)及び配列番号122(アミノ酸))、パリビズマブ重鎖のコドン最適化可変領域(配列番号117(ヌクレオチド)及び配列番号123(アミノ酸))、及びヒトIgHJ1遺伝子セグメント由来の60bpの隣接配列のあるスプライスジャンクション(配列番号124)を含む。
【0167】
マウス:mCherry鋳型は、J5558H10重鎖プロモーター、完全コドン最適化mCherryオープンリーディングフレーム及びsv40ポリアデニル化部位を含む。抗体構築物は、J5558H10重鎖プロモーター(配列番号128、V.A Loveら、Molecular Immunology 2000年)、完全長コドン最適化抗体軽鎖(配列番号130(ヌクレオチド)及び配列番号135(アミノ酸))、StrepタグII配列の2直列コピーを含有する57アミノ酸グリシン-セリンリンカー(配列番号116(ヌクレオチド)及び配列番号122(アミノ酸))、重抗体鎖のコドン最適化可変領域(配列番号133(ヌクレオチド)及び配列番号138(アミノ酸))、及びマウスIgHJ3遺伝子セグメント由来の60bpの隣接配列のあるスプライスジャンクション(配列番号139)を含む。
【0168】
ステッチングオリゴヌクレオチド(すなわち、スプライシングオリゴヌクレオチド)のアニーリング。パム末端及びパム近位非標的DNA鎖に36bpの相補性並びに挿入された鋳型に50~100bpの相補性のあるステッチングオリゴヌクレオチドは合成的に産生され、使用前にDNA鋳型(例えば、配列番号96~101)にプレアニールされた。
図15に示されるように、スプライシングオリゴヌクレオチドは「相同性ステッチ」を提供できる。
【0169】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクター鋳型送達。AAVウイルスベクターは、MNDプロモーター、完全コドン最適化mCherryオープンリーディングフレーム及び2つのマウスsgRNA認識部位又は400bpの相同性により隣接しているsv40ポリアデニル化部位を含有していた。AAVビリオンはAVV6ウイルスカプシドを持つ偽型の293T細胞において産生され、サクロース勾配遠心分離により精製され-80℃で保存した。鋳型DNAのウイルス送達では、濃縮されたAAVウイルスは、電気穿孔12時間前に全培養容積の10%の最終容積に添加された。
【0170】
マウスB細胞及び電気穿孔。基本B細胞培地は、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)、10mMのHEPES(Gibco)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco)、55μMのβメルカプトエタノール(Sigma)、及び示される無抗生物質ステップを除いて、100U/mlのペニシリンプラス100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)を備えたRPMI培地を含んだ。
【0171】
B細胞は、磁気ビーズ(Miltenyi)を用いたネガティブ選択により脾臓及びリンパ節から単離し、100ng/mlの無組換えキャリアーHAタグ付きマウスCD40L(R&D systems)、100ng/mlの抗HA抗体(クローン543851、R&D systems)及び4ng/mlのマウスIL-4(R&D systems)を補充したB細胞培地において2×106/mlで24時間培養した。次に、B細胞を、以下の通りNeonトランスフェクションシステム及び10μlチップを使用して電気穿孔した。Cas9タンパク質(Invitrogen)及び合成sgRNA(Synthego)を、3μgのCas9/900ngのsgRNAの比で混合し、室温で少なくとも10分間インキュベートした。B細胞はPBSで洗浄し、Cas9/sgRNA及び予め組み立てられたDNA鋳型と一緒に、最終密度2.5×107細胞/mlでNeonバッファーTに懸濁した。細胞は電気穿孔し(1675V、10ミリ秒、3パルス)、直ちに予め温めた無抗生物質培地に分注した。
【0172】
細胞拡大では、B細胞は、20ng/mlのマウスIL-21の存在下で、照射(80gy)3T3-CD40Lフィーダー細胞と共培養された。
【0173】
分解によるインデルのトラッキング(TIDE)によるsgRNA活性の評価。全ゲノムDNAは、電気穿孔後3~5日目にモック及びCas9処置細胞から単離した。切断部位に隣接する500~600bp領域は、以下のオリゴ:
【0174】
【0175】
結果。結果は
図18A~18C、
図22A&22B、
図23B~23E及び
図24A~24Cに示されている。
図18A、18B及び18Cは、Cas9/sgRNAリボ核タンパク質を用いた細胞の電気穿孔後の標的IgH遺伝子座でのそれぞれマウスB細胞株A20、初代マウスB細胞及びヒトB細胞株RAMOSの成功した切断を実証している。
図22A及び22Bは、初代マウスB細胞のIgH遺伝子座中へのmCherry蛍光タンパク質レポーターの挿入を描いている。
図23B及び23Cは、A20マウスB細胞株(
図23B)及びRAMOSヒトB細胞株(
図23C)中への部分的抗体カセットの挿入後の抗RSV抗体の表面発現を実証している。
図23D及び23Eは、A20マウスB細胞株(
図23D)及びRAMOSヒトB細胞株(
図23E)中への部分的抗体カセットの挿入後の抗RSV抗体の分泌を実証している。
図24Aは、最初の(左パネル)及びインビトロでの濃縮及び拡大後(右パネル)の、初代マウスB細胞中への部分的抗体カセットの挿入後の抗RSV抗体の表面発現を実証している。
図24Bは、初代マウスB細胞株中への部分的抗体カセットの挿入後の抗RSV抗体の分泌を実証している。
図24Cは、操作されたB細胞のインビトロ増殖ポテンシャルを示している。
【0176】
[実施例2]本実施例の目標は、IgH遺伝子座のゲノム操作を通じて分泌されたIg及び表面Ig発現の自然な制御を維持する限定された特異性を持つ遺伝子改変B細胞を産生することであった。B細胞におけるIgH遺伝子座は、B細胞に存在する高度に可変的な配列に起因して、ゲノム操作のために標的にするのが困難な領域である。B細胞発生により、1メガベースを超えるDNA上でV、D及びJエレメントが組み換えられて、抗体多様性にとって必須のVDJ可変領域が生成される。後にB細胞個体発生過程において、異なる定常領域間のクラススイッチにより類似する配列範囲にわたりDNAが失われる(Reviewed in Watsonら、(2017年).Trends Immunol 38(7):459~470頁)。
【0177】
この配列多様性により、抗体コード領域を直接標的にするのは実行不可能である。しかし、すべてのB細胞には、最後のJ遺伝子セグメントとクラススイッチに関与するスイッチ領域の間に小さなDNA領域が存在する。この普遍的な標的は、その弱いプロモーターにもかかわらず、IgH遺伝子の高レベルの発現を協働して駆動するいくつかの強力なエンハンサーエレメントの1つである、重要なイントロンEμエンハンサーを含有する。これらのエンハンサーの活性は、一部Eμエンハンサーに対するプロモーターの近接により調節されており、組換えVDJセグメントとEμエンハンサーの間に導入遺伝子を挿入するとVDJ転写を完全に遮断することができる(Delpyら、(2002年).J Immunol 169(12):6875~6882頁)。この理由で、本実施例で使用される方法は、新しい抗体カセットを挿入するためにEμエンハンサーの上流の領域を標的にした(
図26A)。この領域を標的にすることにより、挿入されたemAb遺伝子は天然の(しかし、挿入された)IgHプロモーターが駆動させることができ、免疫グロブリン発現の自然な制御を最大にする。
【0178】
ワンヒット挿入を可能にし、オフターゲット相互作用を最小限に抑えるため、emAb構築物は一本鎖融合物として発現された。この融合物は、一本鎖F(ab)断片について記載されてきた(Koerberら、(2015年).J Mol Biol 427(2):576~586頁)57アミノ酸グリシン-セリンリンカーで重鎖の可変領域に連結された、完全軽鎖配列からなる(
図26A)。このリンカーは、遺伝子改変細胞の検出及び濃縮を促進するためStrepタグIIモチーフの3直列反復を含有する(Schmidt&Skerra(2007年).Nat Protoc 2(6):1528~1535頁)。軽鎖と重鎖を物理的に連結すると、挿入されたemAbと内因性軽鎖の間の誤対合の可能性が最小限に抑えられる。最適化されたスプライスジャンクションはemAbを下流内因性IgH定常領域にスプライスさせる。これによりemAbは重鎖アイソタイプクラスのいずれかとして発現される。
【0179】
戦略はRAMOSヒトB細胞株において試験された。このバーキットリンパ腫由来B細胞株は、ラムダ軽鎖と対合した表面及び分泌型のIgMを天然に発現する。これらの実験では、パリビズマブ由来の操作されたαRSV-emAbの発現は、単量体RSV-Fタンパク質及びリンカー中のStrepタグIIモチーフに対して高親和性の改変ストレプトアビジンであるストレプトアクチンを使用して検出した。αRSV-emAb遺伝子改変RAMOS細胞は、操作されたRSV特異的抗体を発現し、この抗体は細胞の表面で(
図26B)及び上澄み中分泌型として(
図26C)検出することができた。emAb BCRがBCRシグナル伝達にとって重要な二次タンパク質複合体と会合することを確かめるため、RAMOS細胞を多量体化RSV-F抗原での刺激に晒した。αRSV-emAb操作されたしかし対照ではない細胞は、タンパク質抗原に応答して急速で持続したカルシウムシグナル伝達を示した(
図26D)。これらのデータは、emAb操作アプローチの実行可能性を確認するのに役立った。
【0180】
次に、ヒト初代B細胞を、拡大及び分化の多段階工程を使用して遺伝子改変した(
図27A)。予め複合体化したガイドRNAとCas9の電気穿孔により、ゲノムDNAは高度に効率的に切断され、複数の独立したドナーにわたり分析された標的対立遺伝子の70%においてこの領域に不完全な修復が生じた(
図27B)。sgRNA標的部位はヒトでは強力に保存されており、報告されている一塩基多型で1%を超える頻度で報告されたものはなかった(
図27C)。AAV送達αRSV-emAbカセットの添加によりヒトB細胞はRSV-Fタンパク質に結合するように効率的に再プログラムされた(
図27D)。注目すべきことに、emAb B細胞は試験されたすべてのヒトドナーから首尾よく産生されており、平均操作率は24%であった(
図27E)。emAb産生中のインビトロ培養及び分化は抗体分泌ポテンシャルを増加した。2日目にプライミングされた細胞は、高レベルのCD19、並びにわずかな量のプラズマ細胞マーカーCD138、CD27及びCD138を発現し、CD19のレベルがもっと低く、並びにCD38、CD27及びCD138が増加した18日目の細胞とは対照的であった(
図27F)。細胞表面マーカーのこれらの変化に対応して、分化したemAb操作B細胞は、相当量の標的抗体を分泌する(
図27G)。まとめると、これらのデータは、初代B細胞を急速に効率的に操作して特定の防御抗体を産生させる能力を実証している。
【0181】
プラットフォームの柔軟な側面を実証するため、抗HIV標的VRC01、EBV標的AMM01及びインフルエンザHA-幹標的MEDI8852を含む、3つの追加の広域中和抗ウイルス抗体由来のemAbカセットを試験した。初代B細胞は4つすべての構築物を用いて効率的に再プログラムされ、構築物はカッパ(パリビズマブ、VRC01、MEDi8852)とラムダ(AMM01)軽鎖の両方を持つ抗体を含んでいた(
図28)。これらのデータは、emAbプラットフォームの柔軟で広く適用可能な性質を実証している。
【0182】
内因性Ig重鎖の産生を遮断することは、emAbの産生を最大化し、遺伝子改変細胞からの未知の内因性抗体の産生の可能性を最小化するために重要である。RAMOS B細胞株は、ラムダ軽鎖と対合したIgHを内在的に発現する。これらの細胞をカッパ軽鎖に連結したαRSV-emAbを用いて操作すると、IgH発現の有効な手段としての表面ラムダ軽鎖発現の使用が可能になる。さらに、RAMOS細胞は、いかなるemAb挿入も必要性によって生産的対立遺伝子中であるように、c-myc転座を受けて、1つのIgH対立遺伝子を破壊している(
図29A)。インプットRAMOS細胞は表面上に高レベルのラムダ軽鎖を発現し、αRSV-emAbを発現している細胞はほぼ完全にラムダ発現を失っている(
図29B)。これらのデータは、生産的対立遺伝子上のemAb挿入は内因性IgHの発現を有効に遮断できることを示している。ほぼすべての初代B細胞では、1つのIgH対立遺伝子は生産的VDJ再編成を有し、もう一方の対立遺伝子はVDJ組換えを受けていない、又は非生産的に組み換えられた。しかし、これらの対立遺伝子は両方がemAb挿入のための潜在的な部位を有している(
図29C)。emAb挿入の効果を試験するため、精製されたラムダ軽鎖発現初代B細胞をαRSV-emAbを用いて遺伝子改変した。インプット細胞は表面上でラムダ軽鎖と対合した内因性抗体を発現し続けた。これとは対照的に、αRSV-emAb操作B細胞の半分はラムダ軽鎖発現を失った(
図29D)。RAMOS及び初代B細胞で見られる差示的発現パターンは、emAb挿入が、生産的対立遺伝子中に挿入された場合は内因性IgH発現を遮断できることを示唆している。表面軽鎖の差示的発現は、emAb構築物を排他的に発現する細胞の精製のための手段である。代わりに、いずれかの対立遺伝子への挿入の可能性は、操作のための抗ウイルス記憶B細胞の最初のプールの選択により、又はそれぞれの対立遺伝子上への異なるカセットの挿入により、二重抗体発現emAb細胞の産生の可能性を提供する。
【0183】
B細胞を操作する能力を実証したので、次にウイルス感染のマウスモデルにおいて細胞の防御能力を確かめた。マウスemAb B細胞は、プライミング、電気穿孔+emAbカセット送達、及びヒト初代B細胞において使用された拡大に類似する拡大を使用して産生された(
図30A)。予め複合体化したガイドRNAとCas9切断と組み合わせた電気穿孔は高度に効率的であり、分析されたDNAの80%においてこの領域に不完全な修復が生じた(
図30B)。AAVを介したマウスαRSV-emAbカセットの送達はマウスB細胞を再現性よく改変し、マウスB細胞の8~24%がRSV-Fと結合した(
図30C、30D)。細胞の1~7%における挿入も、AAVの代わりに短い相同性領域を含有する二本鎖DNA(dsDNA)を使用して達成され(
図30C、30D(実施例1も参照))、純粋に合成的な成分を使用するB細胞のemAb操作の可能性を提供する。分泌された操作された抗体の高力価も両方の方法により産生された培養上澄みにおいて検出できた(
図30E)。
【0184】
抗ウイルス防御の可能性を試験するため、1.5×10
7遺伝子改変マウスB細胞を野生型Balbc/byJマウス中に注入し、続いて採血及びRSV負荷を行った(
図31A)。RSV特異的抗体及び遺伝子改変B細胞が、遺伝子改変マウスB細胞の移入の6日後血液中に存在していた(
図31B、31C)。重要なことに、遺伝子改変マウスB細胞を受けたマウスはRSV感染に対してほぼ完全に防御されていた(
図31D)。この防御は、感染2日前にパリビズマブの注射により提供される防御に近づいた(
図31D)。RSV及びインフルエンザを標的にする混合ヒトemAb細胞のNOD-scidIL2Rガンマヌル(NSG)マウスへの移入により、両方のウイルスを標的にする抗体の血清力価が生じる(
図32A、32B)。これらの結果は、本明細書に開示される遺伝子改変B細胞がウイルス感染に対して防御することを示している。
【0185】
方法。一本鎖抗体鋳型配列の設計。ヒト:抗体構築物は、IgVH1-69重鎖プロモーター領域(配列番号111)、完全長抗体軽鎖(例えば、配列番号113、145、154及び161(ヌクレオチド)並びに配列番号119、148、157及び165(アミノ酸))、StrepタグIIモチーフの3直列コピーを含有する57アミノ酸グリシン-セリンリンカー(配列番号116(ヌクレオチド)及び配列番号122(アミノ酸))、重鎖の可変領域(例えば、配列番号117、147、156及び164(ヌクレオチド)並びに配列番号123、150、159及び168(アミノ酸))、及びIgHJ可変領域を適合させることに由来する60塩基対の隣接配列を有するスプライスジャンクション(例えば、配列番号124及び151)を含んでいた。
【0186】
マウス:抗体構築物は、J5558H10重鎖プロモーター(配列番号128、V.A Loveら、Molecular Immunology 2000年)、完全長コドン最適化抗体軽鎖(例えば、配列番号130(ヌクレオチド)及び配列番号135(アミノ酸))、StrepタグIIモチーフの3直列コピーを含有する57アミノ酸グリシン-セリンリンカー(配列番号116(ヌクレオチド)及び配列番号122(アミノ酸))、重抗体鎖のコドン最適化可変領域(配列番号133(ヌクレオチド)及び配列番号138(アミノ酸))、及びマウスIgHJ3遺伝子セグメント由来の60塩基対の隣接配列を有するスプライスジャンクション(例えば、配列番号139)を含んでいた。
【0187】
例示的抗体構築物の完全配列は
図25B~25Iで入手可能である。
【0188】
組換えAAVベクターの産生。AAVベクターは、PEIを使用するHEK239T細胞中へのAAVベクター、セロタイプ6カプシド及びアデノウイルスヘルパープラスミド(pHelper)三重トランスフェクションにより生成した。トランスフェクション後24時間で、培地は無血清DMEMに交換し、72時間後細胞を収集し、凍結融解により溶解し、ベンゾナーゼ処理し、イオジキサノール勾配上で精製し、続いてAmicon Ultra-15カラム(EMD Millipore)を使用してPBS中に濃縮した(Choiら、(2007年).Curr Protoc Mol Biol Chapter 16:Unit 16 25)。ウイルスストックの力価は、AAVゲノムのqPCRにより決定し、範囲はマイクロリットルあたり5×1010~1×1012に及んだ(Aurnhammerら、(2012年).Hum Gene Ther Methods 23(1):18~28頁)。
【0189】
マウスdsDNA emAb鋳型の産生。
【0190】
αRSV-emAb鋳型を増幅し、短い相同性領域は以下の通り改変DNAオリゴ:
フォワードプライマー:(太字の5’リン酸、マウスゲノム相同性領域を含有する)
【0191】
【化9】
リバースプライマー(太字のホスホロチオエート安定化DNA結合(
*)マウスゲノム相同性領域を含有する)
【0192】
【化10】
により付加し、dsDNA鋳型はPCRにより増幅し、minElute PCRクリーンアップカラム(Qiagen)を使用して精製し濃縮した。
【0193】
細胞株。3T3-msCD40Lは、NIH AIDS Reagent Program、Division of AIDS、NIAID、NIH:Cat#12535のDr.Mark Connorsから入手した。3T3は、10%のウシ胎仔血清(Gibco)、100U/mlのペニシリンプラス100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)、及びG418(350μg/mL)を備えたDMEM培地で培養した。
【0194】
RAMOS細胞はATCC(CRL-1596(商標))から入手した。RAMOS細胞は、10%のウシ胎仔血清(Gibco)及び100U/mlのペニシリンプラス100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)を備えたRPMI培地で培養した。
【0195】
マウスB細胞培養及び電気穿孔。基本B細胞培地は、10%のウシ胎仔血清(Gemini Biosciences)、10mMのHEPES(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)、55μMのベータメルカプトエタノール(Sigma)及び示されるように無抗生物質ステップを除いて、100U/mlのペニシリンプラス100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)を備えたRPMI培地を含んでいた。
【0196】
B細胞は、磁気ビーズ(Miltenyi)を用いたネガティブ選択により脾臓及びリンパ節から単離し、100ng/mlの無組換えキャリアーHAタグ付きマウスCD40L(R&D systems)、100ng/mlの抗HA抗体(クローン543851、R&D systems)及び4ng/mlのマウスIL-4(R&D systems)を補充したB細胞培地において2×106/mlで24時間培養した。次に、B細胞を、以下の通りNeonトランスフェクションシステムを使用して電気穿孔した。Cas9タンパク質(Invitrogen)及び合成sgRNA(Synthego)を、1μgのCas9対300ngのsgRNAの比で混合し、室温で少なくとも10分間インキュベートした。B細胞はPBSで洗浄し、12μgのCas9 RNP/108細胞と一緒に、最終密度2.5×107細胞/mlでNeonバッファーTに懸濁した。dsDNA条件では、7.5μgのdsDNA鋳型/106細胞も電気穿孔に含めた。細胞は電気穿孔し(1675V、10ミリ秒、3パルス)、直ちに予め温めた無抗生物質培地に分注した。AAV条件では、PBSに濃縮したAAVは15%の最終培養容積まで添加した。電気穿孔後、B細胞は、100ng/mlの無組換えキャリアーHAタグ付きマウスCD40L(R&D systems)、100ng/mlの抗HA抗体(クローン543851、R&D systems)、4ng/mlのマウスIL-4(R&D systems)及び20ng/mlのマウスIL-21(Biolegend)を補充したB細胞培地を用いてさらに48時間拡大した。二次拡大では、B細胞は、20ng/mlのマウスIL-21(Biolegend)の存在下で照射(80gy)NIH 3T3-CD40Lフィーダー細胞と共培養した。
【0197】
ヒトB細胞培養及び電気穿孔。ヒトB細胞培養(hBCM)用の基本培地は、10%のウシ胎仔血清(Gemini Biosciences)、注記される無抗生物質ステップを除いて、100U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)を備えたIMDM培地においてであった。
【0198】
ヒトPBMCはFred Hutchinson Cancer Research Centerを通じて入手した。細胞は解凍し、Miltenyi B細胞単離キットII(Human)を製造業者のプロトコールに従って使用するネガティブ選択を使って単離した。単離した細胞は、100ng/mLのMEGACD40L(Enzo Life Sciences)、50ng/mLの組換えIL-2(Biolegend)、50ng/mLのIL-10(Shenandoah Biotech)、10ng/mLのIL-15(Shenandoah Biotech)、1μg/mLのCpG ODN2006(IDT)を補充したhBCMに0.5~1.0×106細胞/mLで再懸濁した。
【0199】
48時間の刺激後、細胞はNeonトランスフェクションシステムを使用して電気穿孔した。Cas9タンパク質(Invitrogen)とH7 sgRNA(Synthego)は、バッファーT中、室温で20分間、2対1の比で予め複合体化した。細胞はPBS(Gibco)で洗浄し、予め複合体化したCas9 RNPを含有するバッファーT中最終濃度2.5×107細胞/mlでバッファーTに再懸濁した。細胞-RNP混合物は10μLのNeonトランスフェクションTip中に充填し、製造業者のプロトコールに従って1750V、20ms及び1パルスの設定で電気穿孔した。電気穿孔直後、細胞は抗生物質なしで上記の通り刺激培地に蒔いた。30分後、AAVは最終濃度10~15%培養容積まで添加し、徹底的に混合した。2~4時間後、細胞はもっと大きな培養皿に移して、さらに拡大させた。
【0200】
電気穿孔の2日後、細胞は蛍光色素標識抗原又はストレプトアクチンを用いて染色し、遺伝子改変された細胞を選択した。二次拡大では、B細胞は、5μg/mLのヒト組換えインスリン(Sigma)、50μg/mLのトランスフェリン(Sigma)、50ng/mLの組換えIL-2(Biolegend)、20ng/mLのIL-21(Biolegend)及び10ng/mLのIL-15(Shenandoah Biotech)を含有するhBCMにおいて、照射(80gy)NIH 3T3-CD40Lフィーダー細胞と共培養した。
【0201】
プラズマ細胞への分化を促進するため、細胞は、拡大条件から、5μg/mLのヒト組換えインスリン(Sigma)、50μg/mLのトランスフェリン(Sigma)、500U/mLのユニバーサルタイプ1 IFNタンパク質(R&D Systems)、50ng/mLのIL-6(Shenandoah Biotech)、10ng/mLのIL-15(Shenandoah Biotech)を補充したhBCMを含有する新鮮な無フィーダー培養条件に移した。
【0202】
TIDEによるsGRNA活性の評価。全ゲノムDNAは、電気穿孔後3~5日でモック及びCas9/sgRNA処理細胞から単離した。sgRNA標的部位に隣接する500~600塩基対領域は、以下のオリゴ:
マウス:
【0203】
【0204】
精製PCR産物はサンガー塩基配列決定し、モック電気穿孔細胞と比べたCas9/sgRNA電気穿孔細胞中のインデルの頻度はICEアルゴリズムを使用して決定した(Hsiauら、(2018年).「Inference of CRISPR Edits from Sanger Trace Data.」bioRxiv)。
【0205】
タンパク質抗原。プレ融合RSV-Fタンパク質、EBVgh/gl複合体及び改変HIV env抗原(426c TM4 d1-3)は記載される通りに産生した(McLellanら、(2013年).Science 342(6158):592~598頁;McGuireら、(2016年).Nat Commun 7:10618; Snijderら、(2018年).Immunity 48(4):799~811頁 e799)。安定化したインフルエンザHA-幹は、記載される通りに株H1 1999NC由来のVRCクローン3925から産生した(Yassineら、(2015年).Nat Med 21(9):1065~1070頁)。単量体プレ融合RSV-Fタンパク質はAlexa-488(Thermo Fisher)で標識した。他のすべてのタンパク質は、0.8~2のビオチン対タンパク質モル比を使用してビオチンにコンジュゲートし、続いてストレプトアビジン-PE又は-APC(prozyme)を用いて四量体化した。
【0206】
フローサイトメトリー。フローサイトメトリー分析はFACSymphony装置(BD bioscience)で行い、細胞はAriaII(BD bioscience)上で分別し、データはFlowjoソフトウェア(Tree Star)を使用して解析した。
【0207】
マウスにおけるEmAb治療研究。動物研究は、フレッド・ハッチンソンがん研究センター動物実験委員会により承認されこれに従って行った。
【0208】
RSV負荷では、EmAb又は対照B細胞を1.5×107細胞の単一腹腔内(IP)用量として投与した。パリビズマブの受動移入では、マウスは15mg/kg i.p.の単一用量を受けた。GFP-発現RSV(本明細書では簡単化のためRSVと呼ばれる)は豊富に提供された(Munirら、(2008年).J Virol 82(17):8780~8796頁)。同齢BALB/cByJマウス(Jackson Labs)は、40μLのPBS中106pfuのサクロース精製RSVで鼻腔内に接種した。肺は感染後5日目に採取し、力価はプラークアッセイにより以前記載された通りに決定した(Murphyら、(1990年).Vaccine 8(5):497~502頁)。手短に言えば、肺は、GentleMACSディソシエーター中2ml培養液においてホモジナイズし、400×g、10分間の遠心分離により浄化し、次に瞬間冷凍して-80℃で保存した。上澄みはDMEM培養液において1対10及び1対20で2通りに希釈した。100μLのそれぞれの希釈液は、37℃で2時間、24ウェルプレートにおいてコンフルエントVero細胞に添加した。次に、0.8%メチルセルロースの上塗りを添加し、プレートは、GFPについてのフィルター設定付きのTyphoonイメージャーでの撮像に先立って5日間インキュベートした。pfu/肺における力価は、もっとも高い陽性希釈液中のプラークの数を計数し希釈係数について補正することにより計算した。
【0209】
ヒト細胞の生着では、ヒトemAb B細胞は、5×106細胞の単一IP用量/emAb特異性(1×107全体)としてNOD-scid IL2Rガンマヌル(NSG)マウス(FHCRC飼育室により産生)に投与した。移入7日後、採血し、血清中のRSV-F及びHA-幹に対するヒトemAb力価はELISAにより決定した。
【0210】
統計解析。統計解析はGraphPad Prism 7を使用して実施した。ペアワイズ比較はウェルチ補正付きの独立t検定を使用して実施した。
【0211】
本明細書に記載される核酸配列は、37 C.F.R.§1.822で定義されている通り、ヌクレオチド塩基を表す標準文字省略形を使用して示される。一部の例では、それぞれの核酸配列の1つの鎖のみが示されるが、相補鎖は、それが適切だと考えられる実施形態に含まれると理解されている。例としては、配列番号5~84を含む標的部位に相補的な配列は、これらの部位を標的にするgRNAターゲティング配列を提供する。
【0212】
本明細書に記載される選択された抗体構築物をコードするいかなる核酸も利用しうる。本明細書で開示される核酸配列の変異体は、配列の違いがコードされたタンパク質の機能に実質的な影響を及ぼさない種々の配列多型、突然変異及び変化を含む。用語核酸又は「遺伝子」は、コード配列だけではなく、プロモーター、エンハンサー及び終結領域などの調節領域も含んでいてよい。用語は、すべてのイントロン及びmRNA転写物からスプライスされた他のDNA配列、加えて選択的スプライシング部位から生じる変異体をさらに含むことができる。コード核酸は1つ以上の選択された抗体構築物の発現を指示するDNA又はRNAでありうる。これらの核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列又はタンパク質に翻訳されるRNA配列でもよい。核酸配列は、完全長核酸配列並びに完全長タンパク質に由来する非完全長配列の両方を含む。配列は、天然の配列又は特定の細胞型でコドン選択を提供するように導入してもよい配列の縮重コドンも含むことができる。選択された抗体構築物をコードする核酸配列は、選択された抗体構築物の関連するアミノ酸配列から容易に調製することができる。
【0213】
タンパク質配列の「変異体」は、本明細書の他の場所で開示されているタンパク質配列と比べて、1つ以上のアミノ酸付加、欠失、停止位置又は置換を有するタンパク質配列を含む。
【0214】
アミノ酸置換は保存的又は非保存的置換でありうる。本明細書で開示されるタンパク質配列の変異体は、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するタンパク質配列を含むことができる。「保存的置換」又は「保存的アミノ酸置換」は、以下の保存的置換群:群1:A、G、S、T;群2:D、E;群3:N、Q;群4:R、K、H;群5:I、L、M、V;及び群6:F、Y、Wの1つに見出される置換を含む。
【0215】
さらに、アミノ酸は、類似する機能、化学構造又は組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族の、芳香族の又は硫黄含有)により保存的置換群に分類することができる。例えば、脂肪族分類化は、置換の目的で、G、A、V、L及びIを含みうる。互いに保存的置換と見なされるアミノ酸を含む他の群は、硫黄含有:M及びC;酸性の:D、E、N及びQ;小さな脂肪族非極性又はわずかに極性の残基:A、S、T、P及びG;極性負電荷残基及びそのアミド:D、N、E及びQ;極性正電荷残基:H、R及びK;大きな脂肪族非極性残基:M、L、I、V及びC;並びに大きな芳香族残基:F、Y及びWを含む。
【0216】
非保存的置換は:変化の領域でのペプチド骨格の構造(例えば、アルファヘリックス又はベータシート構造);標的部位の分子の電荷若しくは疎水性;又は側鎖の容積に著しい影響を及ぼす置換を含む。一般に、タンパク質の特性に最大の変化を生み出すと予想される非保存的置換は、(i)親水性残基(例えば、S又はT)は疎水性残基(例えば、L、I、F、V又はA)を(又は疎水性残基(例えば、L、I、F、V又はA)で)置換可能である;(ii)C若しくはPは他のいかなる残基をも(又は他のいかなる残基によっても)置換可能である;(iii)正電荷を持つ側鎖を有する残基(例えば、K、R又はH)は負電荷を有する残基(例えば、Q又はD)を(又は負電荷を有する残基(例えば、Q又はD)で)置換可能である;又は(iv)かさばった側鎖を有する残基(例えば、F)はかさばった側鎖を持たない残基(例えば、G)を(又はかさばった側鎖を持たない残基(例えば、G)で)置換可能である置換である。追加の情報は、Creighton(1984年)Proteins、W.H.Freeman and Companyに見出される。
【0217】
本明細書に開示される核酸及びタンパク質配列の変異体は、本明細書に開示される基準配列に少なくとも70%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、少なくとも95%配列同一性、少なくとも96%配列同一性、少なくとも97%配列同一性、少なくとも98%配列同一性、又は少なくとも99%配列同一性のある配列も含む。
【0218】
本明細書で同定された配列に関して「パーセント(%)配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要であれば、ギャップを導入した後の、基準配列中の核酸又はアミノ酸残基と同一である候補配列中の核酸又はアミノ酸残基の百分率と定義される。パーセント核酸又はアミノ酸配列同一性を決定する目的での整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内である種々の方法で達成可能である。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大整列を達成するのに必要ないかなるアルゴリズムも含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。例えば、WU-BLAST-2コンピュータプログラムを使用して生み出される%配列同一性値(Altschulら、Methods in Enzymology、266:460~480頁(1996年))は、いくつかの検索パラメータを使用し、その大半がデフォルト値に設定されている。デフォルト値に設定されていないパラメータ(すなわち、調整可能パラメータ)は以下の値:オバーラップスパン=1、オバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11及びスコアリングマトリックスBLOSUM62を用いて設定される。
【0219】
変異体は典型的には、同じ質的生物活性を示し、基準核酸又はペプチド配列に実質的に類似する生体応答を誘発するが、変異体は、必要とされる基準核酸又はペプチドの特徴を改変するように選択することが可能である。変異体のスクリーニングは、本明細書に記載される実験プロトコールを使用して実施することができる。
【0220】
当業者であれば理解するように、本明細書に開示されるそれぞれの実施形態は、その特定の記述される要素、ステップ、成分又は構成成分を含む、から本質的になる又はからなることができる。したがって、用語「含む(include)」又は「含む(including)」は、「含む(comprise)、からなる(consist of)又はから本質的になる(consist essentially of)」を列挙すると解釈されるべきである。転換語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」は、含む(includes)を意味するが、これに限定されず、特定されていない要素、ステップ、成分又は構成成分の包含を、たとえ多量でも、許容する。転換語句「からなる(consisting of)」は、特定されていないいかなる要素、ステップ、成分又は構成成分も排除する。転換語句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、実施形態の範囲を特定された要素、ステップ、成分又は構成成分に及び実施形態に物質的に影響を及ぼさない要素、ステップ、成分又は構成成分に限定する。物質的効果は、選択された抗体のB細胞発現の統計的に有意な減少を引き起こすと考えられる。
【0221】
他の方法で示されていなければ、明細書及び特許請求の範囲において使用される分子量、反応条件、その他などの成分の量、特性を表すすべての数字は、あらゆる場合に、用語「約(about)」に修飾されていると理解するべきである。したがって、反対に示されていなければ、明細書及び添付の特許請求の範囲に述べられている数値パラメータは本発明が入手しようとしている所望の特性に応じて変動しうる近似である。少なくとも及び均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとする試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして及び通常の四捨五入法を適用することにより少なくとも解釈するべきである。さらに明確さが必要な場合には、用語「約(about)」は、述べられた数値又は範囲と併せて使用した場合、当業者がその用語に帰すと考えるのが道理にかなっている意味を有し、すなわち、述べられた値又は範囲より幾分多い又は幾分少なく、述べられた値の±20%、述べられた値の±19%、述べられた値の±18%、述べられた値の±17%、述べられた値の±16%、述べられた値の±15%、述べられた値の±14%、述べられた値の±13%、述べられた値の±12%、述べられた値の±11%、述べられた値の±10%、述べられた値の±9%、述べられた値の±8%、述べられた値の±7%、述べられた値の±6%、述べられた値の±5%、述べられた値の±4%、述べられた値の±3%、述べられた値の±2%、又は述べられた値の±1%の範囲内までを意味する。
【0222】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似であるにもかかわらず、特定の実施例で示される数値はできる限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、そのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含有する。
【0223】
本発明を説明するという文脈で(特に、以下の特許請求の範囲という文脈で)使用される用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」及び類似する指示対象は、本明細書において別段指示されていない又は文脈と明白に矛盾しなければ、単数と複数の両方を包含すると解釈するべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に収まるそれぞれ個別の値に個々に言及する簡略表記法として働くことが意図されているだけである。本明細書において別段指示されていなければ、それぞれ個々の値はそれが本明細書において個々に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において別段指示されていない又は文脈と別段明白に矛盾しなければ、いかなる適切な順にでも実施可能である。本明細書で提供されるありとあらゆる実施例又は例示的言語(例えば、「などの(such as)」)の使用は、本発明をもっとよく明らかにするためだけに意図されており、他の方法で請求される本発明の範囲を限定しない。明細書の言語は、本発明の実行に不可欠ないずれかの請求されない要素をも示していると解釈するべきではない。
【0224】
本明細書で開示される本発明の代わりの要素又は実施形態の群化は限定と解釈するべきではない。それぞれの群メンバーは、個別に又は群の他のメンバー若しくは本明細書に見出される他の要素と任意の組合せで言及する及び請求してもよい。群の1つ以上のメンバーは、便宜上及び/又は特許資格の理由で群に含めても、群から削除してもよいことが予期されている。いかなるそのような包含又は削除が生じた場合でも、明細書は、改変された群を含有し、したがって、添付された特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュ群の書面による明細を満たしていると見なされる。
【0225】
本発明を実行するために本発明者らに知られている最良の様式を含む、本発明のある特定の実施形態が本明細書に記載されている。当然のことながら、これらの記載された実施形態の変動は、前述の説明を読めば当業者には明らかになる。本発明者は、当業者であれば適切であるとしてそのような変動を用いるものと予想しており、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載される以外の方法で実行されることを意図している。したがって、本発明は、適用法令により認められる通り、これに添付されている特許請求の範囲に列挙される主題のすべての改変物及び等価物を含む。さらに、そのあらゆる考えられる変動における上記の要素のいかなる組合せも、本明細書において別段指示されていない又は文脈と別段明白に矛盾しなければ、本発明に包含される。
【0226】
さらに、本明細書全体を通じて、特許、出版物、雑誌論文及び他の文書を数多く参照してきた(本明細書の参照資料)。参照資料のそれぞれは個別に、その参照される教示のために参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0227】
締めくくりに、本明細書に開示される本発明の実施形態は本発明の原理を説明していることは理解されるべきである。用いてもよい他の改変は本発明の範囲内である。したがって、例として、しかし、限定としてではなく、本発明の代わりの構成は、本明細書の教示に従って利用しうる。したがって、本発明は正確に示され記載された発明に限定されない。
【0228】
本明細書に示される特徴は、例としてのものであり本発明の好ましい実施形態の例証となる議論のみを目的とし、本発明の原理及び種々の実施形態の概念上の側面のもっとも有用であり容易に理解される説明だと考えられることを提供するために提示される。これに関して、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳細に本発明の構造的な詳細を示そうと試みてはおらず、図及び/又は実施例と一緒に取り入れた記述は、本発明のいくつかの形態がどのようにして実際に用いられうるかを当業者に明らかにする。
【0229】
本開示において使用される定義及び説明は、以下の実施例において明白に曖昧さを残さずに改変されなければ、又は意味の適用がいかなる解釈も無意味にする若しくは本質的に無意味にする場合、いかなる将来の解釈においても支配的であることが意味され意図されている。用語の解釈がその解釈を無意味にする又は本質的に無意味にすると考えられる場合には、定義はウェブスター辞典第3版又は生化学及び分子生物学のオックスフォード辞典(Ed.Anthony Smith、Oxford University Press、Oxford、2004年)などの当業者に公知である辞書から取り入れるべきである。
【配列表】