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特許7383637一体に形成された防振構成要素を有する工具ホルダ及び工具ホルダを備える切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】一体に形成された防振構成要素を有する工具ホルダ及び工具ホルダを備える切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/00 20060101AFI20231113BHJP
   B23B 29/02 20060101ALI20231113BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B23B27/00 C
B23B29/02 A
F16F15/02 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020558430
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 IL2019050543
(87)【国際公開番号】W WO2019239397
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】16/006,306
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サフォーリ,ジョニー
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-186240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197258(US,A1)
【文献】特開2003-062735(JP,A)
【文献】特開2008-100332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00,29/02;
B23Q 3/12,11/00;
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ長手方向軸(B)に沿って細長く、工具防振構成要素(28)を有する工具ホルダ(22)であって、前記工具防振構成要素(28)は、
構成要素収容部分(40)と、
防振装置(34)と、を備え、前記防振装置(34)は、
前記構成要素収容部分(40)内に形成され、内向き空洞壁面(38)を有する内部構成要素空洞(36)と、
前記構成要素空洞(36)内に配設され、前記構成要素収容部分(40)と単一の一体化構造を有するように前記構成要素収容部分(40)と一体に形成される振動吸収体部分(52)であって、
前記構成要素空洞(36)内に懸架される振動吸収質量体(54)、及び
前記振動吸収質量体(54)を前記構成要素収容部分(40)に接続する少なくとも1つの弾性懸架部材(62)を備える振動吸収体部分(52)と、
前記振動吸収体部分(52)と前記内向き空洞壁面(38)との間に位置する揺動空間(68)と、を備え、
前記振動吸収質量体(54)は、前記少なくとも1つの懸架部材(62)が弾性変形する際に前記揺動空間(68)内で揺動するように構成され
前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、前記工具ホルダ(22)と同じ方向で細長い、工具ホルダ(22)。
【請求項2】
前記弾性変形は、前記振動吸収質量体(54)によって前記少なくとも1つの懸架部材(62)上に印加される引張荷重によって生じる、請求項1に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項3】
前記構成要素収容部分(40)は、第1の追加的に製造される金属材料を含み、
前記振動吸収質量体(54)は、第2の追加的に製造される金属材料を含み、
前記第1の追加的に製造される金属材料及び前記第2の追加的に製造される金属材料は、互いに異なる、請求項1又は2に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項4】
前記振動吸収体部分(52)は、前記振動吸収質量体(54)を前記構成要素収容部分(40)に接続する単一弾性懸架部材(62)のみを備え、前記振動吸収質量体(54)が前記構成要素空洞(36)内で片持ちされるようにする、請求項1~3のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項5】
前記揺動空間(68)は、前記振動吸収体部分(52)を円周方向で完全に取り囲む、請求項1~4のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項6】
前記揺動空間(68)は、粘性流体で充填される、請求項1~5のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項7】
前記振動吸収質量体(54)は、前記少なくとも1つの懸架部材(62)のみで前記構成要素収容部分(40)に接続される、請求項1~6のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項8】
前記防振装置(34)は、同調部材(70)を備え、前記同調部材(70)は、前記揺動空間(68)内に突出し、前記少なくとも1つの懸架部材(62)の1つに当接し、前記懸架部材(62)に予荷重を加えるようにする、請求項1~7のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、懸架部材長手方向軸(F)回りにらせん状に延在するばねである、請求項1~8のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、懸架部材長手方向軸(F)回りに延在する懸架部材外周面(66)を備え、
前記懸架部材外周面(66)は、円筒形形状を有する、請求項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項11】
前記構成要素空洞(36)及び前記振動吸収質量体(54)は、前記少なくとも1つの懸架部材(62)と同じ方向で細長い、請求項10に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、前記振動吸収質量体(54)の質量体長手方向端部(60)に接続される、請求項11に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項13】
前記振動吸収体部分(52)は、前記振動吸収質量体(54)の2つの対向する質量体長手方向端部(60)に接続される2つの懸架部材(62)を備える、請求項11又は12に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項14】
前記構成要素空洞(36)、前記振動吸収質量体(54)及び前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、前記工具ホルダ(22)と同軸である、請求項11~13のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項15】
前記振動吸収質量体(54)は、前記振動吸収質量体(54)の長さ方向で測定される質量体長さ(L)を有し、
前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、前記少なくとも1つの懸架部材(62)の長さ方向で測定される懸架部材長さ(L)を有し、
前記質量体長さ(L)は、前記懸架部材長さ(L)よりも少なくとも5倍大きい、請求項11~14のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項16】
前記振動吸収質量体(54)は、質量体最大断面寸法(W)を有し、
前記少なくとも1つの懸架部材(62)は、懸架部材最大断面寸法(W)を有し、
前記質量体最大断面寸法(W)は、前記懸架部材最大断面寸法(W)よりも少なくとも5倍大きい、請求項11~15のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項17】
前記振動吸収質量体(54)は、質量体長手方向軸(E)に沿って延在する質量体長さ(L)を有し、2つの対向する質量体端面(56)と、前記質量体端面(56)の間に延在する質量体外周面(58)とを備え、前記質量体外周面(58)は、前記質量体長手方向軸(E)回りに延在する、請求項1~16のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項18】
前記振動吸収質量体(54)は、前記質量体長手方向軸(E)に直交する平面で取られる質量体横断面を有し、前記質量体横断面は、前記質量体長さ(L)の少なくとも60%で均一である、請求項17に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項19】
前記質量体外周面(58)は、前記質量体端面(56)を除いて円筒形形状を有する、請求項18に記載の工具ホルダ(22)。
【請求項20】
切削工具(20)であって、前記切削工具(20)は、
請求項1~19のいずれか1項に記載の工具ホルダ(22)と、
少なくとも1つの切削インサート(26)を備える切削部分(24)と、を備える、切削工具(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、一般に、工具ホルダに関し、より詳細には、防振構成要素を有するそのような工具ホルダに関し、更に詳細には、追加的な製造によって製造されるそのような防振構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
工具ホルダは、金属切削動作の間に工具ホルダの振動を抑制する防振装置を備えることができる。典型的には、防振装置は、空洞と振動吸収質量体とを含むばね-質量体システムであり、振動吸収質量体は、弾性支持部材によって空洞内に懸架される。空洞は、粘性流体で充填することができる。
【0003】
いくつかのそのような防振装置では、前記弾性支持部材は、Oリング型構造体から形成されることができる。そのような工具保持システムの例は、例えば、米国特許第9,579,730号明細書、米国特許出願公開第2016/305503号明細書、米国特許第7,234,379号明細書、米国特許第6,443,673号明細書及び米国特許第3,774,730号明細書で開示されている。
【0004】
追加的な製造により、代替防振装置を使用することができる。例えば、国際公開第2012/084688号は、例えば粉体とガス又は液体とガスとの材料の流動可能混合物で充填される空洞を開示している。空間構造体は、3次元流体障害物として前記空洞内に設けられる。別の例、米国特許第8,946,585号明細書は、工具振動を制動するように設けた空洞を開示しており、空洞は、非凝固(非溶解)粉状材料で少なくとも部分的に充填される。
【発明の概要】
【0005】
本出願の主題の一目的は、新たな、改善された防振装置を提供することである。
【0006】
本出願の主題の第1の態様によれば、工具ホルダを提供し、工具ホルダは、工具ホルダのホルダ長手方向軸に沿って細長く、工具防振構成要素を有し、工具防振構成要素は、
構成要素収容部分と、
防振装置と、を備え、防振装置は、
構成要素収容部分内に形成され、内向き空洞壁面を有する内部構成要素空洞と、
構成要素空洞内に配設され、構成要素収容部分と単一の一体化構造を有するように構成要素収容部分と一体に形成される振動吸収体部分であって、
構成要素空洞内に懸架される振動吸収質量体、及び
振動吸収質量体を構成要素収容部分に接続する少なくとも1つの弾性懸架部材を備える振動吸収体部分と、
振動吸収体部分と内向き空洞壁面との間に位置する揺動空間と、を備え、振動吸収質量体は、少なくとも1つの懸架部材が弾性変形する際に揺動空間内で揺動するように構成される。
【0007】
本出願の主題の第2の態様によれば、切削工具を提供し、切削工具は、
上記した種類の工具ホルダと、
少なくとも1つの切削インサートを備える切削部分と、を備える。
【0008】
本出願の主題の第3の態様によれば、工具ホルダを提供し、工具ホルダは、工具ホルダのホルダ長手方向軸に沿って細長く、工具防振構成要素を有し、工具防振構成要素は、
構成要素収容部分と、
防振装置と、を備え、防振装置は、
構成要素収容部分内に形成され、内向き空洞壁面を有する内部構成要素空洞と、
構成要素空洞内に配設され、構成要素収容部分と単一の一体化構造を有するように構成要素収容部分と一体に形成される振動吸収体部分であって、
構成要素空洞内に懸架される振動吸収質量体、及び
振動吸収質量体を構成要素収容部分に接続する少なくとも1つの弾性懸架部材を備える振動吸収体部分と、
振動吸収体部分と内向き空洞壁面との間に位置する揺動空間と、を備え、揺動空間は、粘性流体で充填され、
振動吸収質量体は、少なくとも1つの懸架部材のみで構成要素収容部分に接続される。
【0009】
上記は、概要であり、以下で説明する特徴は、本出願の主題にあらゆる組合せで適用可能とすることができ、例えば、以下の特徴のいずれかを工具ホルダ又は切削工具に適用可能とし得ることを理解されたい。
【0010】
弾性変形は、振動吸収質量体によって少なくとも1つの懸架部材上に印加される引張荷重によって生じさせることができる。
【0011】
構成要素収容部分は、第1の追加的に製造される金属材料を含むことができる。振動吸収質量体は、第2の追加的に製造される金属材料を含むことができる。第1の追加的に製造される金属材料及び第2の追加的に製造される金属材料は、互いに異なってよい。
【0012】
振動吸収体部分は、振動吸収質量体を構成要素収容部分に接続する単一弾性懸架部材のみを備えることができ、振動吸収質量体が構成要素空洞内で片持ちされるようにする。
【0013】
揺動空間は、振動吸収体部分を円周方向で完全に取り囲むことができる。
【0014】
揺動空間は、粘性流体で充填することができる。
【0015】
振動吸収質量体は、少なくとも1つの懸架部材のみで構成要素収容部分に接続することができる。
【0016】
少なくとも1つの懸架部材は、予荷重を加えなくてよい。
【0017】
少なくとも1つの懸架部材は、予荷重を加えてよい。
【0018】
防振装置は、同調部材を備えることができ、同調部材は、揺動空間内に突出し、少なくとも1つの懸架部材の1つに当接し、懸架部材に予荷重を加えるようにする。
【0019】
少なくとも1つの懸架部材は、工具ホルダと同じ方向で細長くすることができる。
【0020】
少なくとも1つの懸架部材は、懸架部材長手方向軸回りに延在する懸架部材外周面を備えることができる。懸架部材外周面は、円筒形形状を有することができる。
【0021】
構成要素空洞及び振動吸収質量体は、少なくとも1つの懸架部材と同じ方向で細長くすることができる。
【0022】
少なくとも1つの懸架部材は、振動吸収質量体の質量体長手方向端部に接続することができる。
【0023】
振動吸収体部分は、振動吸収質量体の2つの対向する質量体長手方向端部に接続される2つの懸架部材を備えることができる。
【0024】
振動吸収質量体及び少なくとも1つの懸架部材は、工具ホルダと同軸とすることができる。
【0025】
振動吸収質量体は、振動吸収質量体の長さ方向で測定される質量体長さを有することができる。少なくとも1つの懸架部材は、少なくとも1つの懸架部材の長さ方向で測定される懸架部材長さを有することができる。質量体長さは、懸架部材長さよりも少なくとも5倍大きくすることができる。
【0026】
振動吸収質量体は、質量体最大断面寸法を有することができる。少なくとも1つの懸架部材は、懸架部材最大断面寸法を有することができる。質量体最大断面寸法は、懸架部材最大断面寸法よりも少なくとも5倍大きくすることができる。
【0027】
振動吸収質量体は、質量体長手方向軸に沿って延在する質量体長さを有することができ、2つの対向する質量体端面(56)と、質量体端面(56)の間に延在する質量体外周面とを備えることができ、質量体外周面(58)は、質量体長手方向軸回りに延在する。
【0028】
振動吸収質量体は、質量体長手方向軸に直交する平面で取られる質量体横断面を有することができ、質量体横断面は、質量体長さの少なくとも60%で均一とすることができる。
【0029】
質量体外周面は、質量体端面を除いて円筒形形状を有することができる。
【0030】
振動吸収質量体は、質量体長手方向軸に直交する平面で取られる質量体横断面を有することができ、質量体横断面は、質量体横断面に沿って均一ではない。
【0031】
質量体外周面は、質量体長手方向軸に向かって内側に先細にすることができる。
【0032】
質量体端面は、平坦であり、質量体長手方向軸に直交して向けることができる。
【0033】
質量体端面は、質量体外周面から離れる方向で質量体長手方向軸に向かって内側に先細にすることができる。
【0034】
構成要素空洞は、振動吸収質量体の形状に一致する形状を有することができる。
【0035】
工具防振構成要素は、工具防振構成要素の構成要素長手方向軸に沿って、工具ホルダと同じ方向で細長くすることができる。
【0036】
工具防振構成要素は、2つの対向する構成要素端面と、2つの対向する構成要素端面の間に延在し、構成要素長手方向軸回りに延在する構成要素外周面と、空洞壁面と構成要素端面の1つと構成要素外周面との間に延在し、空洞壁面、構成要素端面の1つ及び構成要素外周面に開口する少なくとも1つの構成要素貫通孔とを更に備えることができる。構成要素空洞は、少なくとも1つの構成要素貫通孔内に位置する少なくとも1つの封止部材によって封止することができる。
【0037】
工具防振構成要素は、厳密に2つの構成要素貫通孔を備えることができる。
【0038】
少なくとも1つの構成要素貫通孔は、空洞壁面と構成要素端面の1つとの間に延在し、空洞壁面及び構成要素端面の1つに開口することができる。
【0039】
切削部分は、工具ホルダに解放可能に取り付けることができる。
【0040】
防振装置は、切削工具の前端部に配設することができる。
【0041】
少なくとも1つの懸架部材は、懸架部材長手方向軸回りにらせん状に延在するばねとすることができる。
【0042】
工具防振構成要素は、内部冷却剤通路を備え、内部冷却剤通路は、少なくとも1つの懸架部材及び振動吸収質量体を通じて内部に延在することができる。
【0043】
切削工具は、非回転式とすることができる。
【0044】
本出願をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】防振構成要素を示す、本出願の第1の実施形態による切削工具の斜視図である。
図2】防振装置を示す、図1の工具防振構成要素の部分長手方向断面図である。
図3図2の線III-IIIに沿って取った工具防振構成要素の第1の径方向断面図である。
図4図2の線IV-IVに沿って取った工具防振構成要素の第2の径方向断面図である。
図5】参照数字Vによって示される図2の詳細図である。
図6】本出願の第2の実施形態による工具防振構成要素の部分長手方向断面概略図である。
図7】本出願の第3の実施形態による工具防振構成要素の部分長手方向断面概略図である。
図8】本出願の第4の実施形態による工具防振構成要素の部分長手方向断面概略図である。
図9】本出願の第5の実施形態による工具防振構成要素の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
例示を簡単、明快にするため、図面に示す要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことは了解されよう。例えば、要素の一部の寸法は、明快にするために他の要素に対して強調している場合があるか、又はいくつかの物理的構成要素は、1つの機能ブロック若しくは要素内に含まれることがある。更に、適切であると見なされる場合、参照数字は、対応する要素又は類似する要素を示すため、図面の中で繰り返すことがある。
【0047】
以下の説明では、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明のために、特定の構成及び細部を十分詳細に示し、本出願の主題に対する完全な理解を提供する。しかし、本明細書で提示する特定の構成及び細部を伴わずに本出願の主題を実行し得ることも当業者には明らかであろう。
【0048】
まず、本出願の一態様を示す、チップ除去のための切削工具20を示す図1に注意を向けられたい。切削工具20は、工具長手方向軸Aを有する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20は、非回転式切削工具とすることができる。即ち、切削工具20は、固定され、回転軸回りに回転するように設計されていない。図示するこの非限定的な例では、切削工具20は、穴加工棒である。しかし、本出願の主題は、穴加工棒のみに制限されず、例えば、限定はしないが、溝入れ刃にも適用可能であり得る。本出願の主題は、フライス加工工具及び穴あけ工具等の回転式切削工具にも適用可能であり得る。そのような回転式切削工具の場合、切削工具20は、工具長手方向軸A回りの回転方向で回転可能である。
【0049】
切削工具20は、工具ホルダ22を含む。切削工具20は、少なくとも1つの切削インサート26を含む切削部分24も含む。少なくとも1つの切削インサート26は、金属切削動作を実施するように設計され、この目的で切れ刃を有する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの切削インサート26は、工具切削部分24に解放可能に取り付けることができる。切削部分24は、工具ホルダ22と一体に形成することができる。代替的に、切削部分24は、工具ホルダ22に解放可能に取り付けることができる。切削部分24は、工具ホルダ22の前端部に配設することができる。
【0050】
次に、本出願の別の態様を示す、工具ホルダ22を示す図2を参照されたい。工具ホルダ22は、対向する前方向D及び後方向Dを規定する工具ホルダ長手方向軸Bを有する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20及び工具ホルダ22は、互いに同軸とすることができる。2つの要素(例えば、本ケースでは切削工具20及び工具ホルダ22)の長手方向軸が一致する(互いに位置合わせされている)場合、2つの要素は、互いに同軸であることに留意されたい。
【0051】
明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「前」及び「後」の使用は、工具ホルダ長手方向軸Bの位置における、図2の左及び右それぞれに向かう相対的な位置を指すことを更に留意されたい。概して、前方向は、切削部分26に向かう方向である。
【0052】
図2を再度参照すると、工具ホルダ22は、工具防振構成要素28を含む。工具防振構成要素28は、追加的に製造される。工具防振構成要素28は、単一の一体化構造を有するように一体に形成される。本明細書で使用する場合、ある物品は、この物品が追加的な製造工程から得られる場合、当該物品の追加的製造の間に2つ以上の材料が使用される場合であっても、「単一の一体化構造」を有すると言われる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、工具防振構成要素28は、第1の金属材料を含むことができる。例えば、第1の追加的に製造される金属材料は、鉄鋼又は超硬合金とすることができる。工具防振構成要素28は、更なる第2の追加的に製造される金属材料を含むことができる。第1の追加的に製造される金属材料及び第2の追加的に製造される金属材料は、互いに異なってよい。例えば、第2の追加的に製造される金属材料は、タングステンとすることができる。
【0053】
明細書及び特許請求の範囲全体にわたる用語「追加的に製造」の使用は、3次元物体を生成するために使用される工程を指し、この3次元物体では、材料層が形成されて1つの物体を生成することに留意されたい。そのような方法の例は、限定はしないが、選択的レーザー溶融法(SLM)、レーザー焼結法(SLS)、直接金属レーザー焼結法(DMLS)、熱溶解積層方式(FDM)及び3D印刷を含む。
【0054】
図1に戻ると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、工具防振構成要素28は、工具防振構成要素28の構成要素長手方向軸Cに沿って細長くすることができる。工具防振構成要素28は、工具ホルダ22と同じ方向で細長くすることができる。特に、工具防振構成要素28は、工具ホルダ22と同軸とすることができる。工具防振構成要素28は、2つの対向する構成要素端面30と、2つの対向する構成要素端面30の間に延在する構成要素外周面32とを含むことができる。構成要素外周面32は、構成要素長手方向軸C回りに延在することができる。
【0055】
工具ホルダ22は、工具防振構成要素28に形成される防振装置34を含む。工具防振装置34は、切削工具20が金属切削動作を実施する際に切削工具20の振動を低減又はなくすように設計されている。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、防振装置34及び/又は工具防振構成要素28は、切削工具20の前端部に配設することができる。
【0056】
工具防振構成要素28は、構成要素収容部分40と防振装置34とを含む。防振装置34は、構成要素収容部分40内に形成される内部構成要素空洞36を含む。即ち、内部構成要素空洞36は、構成要素収容部分40内に囲まれている。構成要素空洞36は、内向き空洞壁面38によって形成される。空洞壁面38は、構成要素収容部分40から構成要素空洞36の境界を定める。構成要素収容部分40は、構成要素空洞36を取り囲む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、構成要素空洞36は、構成要素空洞36の空洞長手方向軸Dに沿って細長くすることができる。構成要素空洞36は、工具ホルダ22と同じ方向で細長くすることができる。特に、構成要素空洞36は、工具ホルダ22と同軸とすることができる。空洞壁面38は、2つの対向する空洞壁端面42と、2つの対向する空洞壁端面42の間に延在する空洞壁外周面44とを含むことができる。空洞壁外周面44は、空洞長手方向軸D回りに延在することができる。
【0057】
空洞壁外周面44を通る(空洞長手方向軸Dに直交する平面で取った)構成要素空洞36の第1の径方向断面図を示す図3を更に参照すると、構成要素空洞36は、空洞横断面を有する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、前記空洞横断面は、空洞長手方向軸Dに沿って均一とすることができる。空洞壁外周面44は、円筒形形状を有することができる。図6図8に示すように、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞横断面は、空洞長手方向軸Dに沿って非均一とすることができる。空洞壁外周面44は、空洞長手方向軸Dに沿う両方向で、空洞長手方向軸Dに向かって内側に先細にすることができる。例えば、空洞壁外周面44は、円錐形状を有することができる。
【0058】
図5を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞壁端面42は、空洞壁外周面44から離れる方向で、空洞長手方向軸Dに向かって内側に先細にすることができる。例えば、空洞壁端面42は、空洞長手方向軸Dに対する空洞円錐角度αによって規定される円錐形状を有することができる。円錐角度αは、頂点に向かって減少させることができる。
【0059】
図6図8を参照すると、本出願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、空洞壁端面42は、段を付けることができ、段は、2つの個別部分、即ち、第1の空洞壁端面45aと第2の空洞壁端面45bとを有し、第1の空洞壁端面45aは、空洞壁外周面44に隣接し、平坦であり、空洞長手方向軸Dに直交して向けることができ、第2の空洞壁端面45bは、空洞壁外周面44から遠位であり、円筒形形状を有することができる。
【0060】
図1及び図2に示すように、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、工具防振構成要素28は、少なくとも1つの構成要素貫通孔46を含み、少なくとも1つの構成要素貫通孔46は、空洞壁面38と構成要素端面30の1つと構成要素外周面32との間に延在し、空洞壁面38、構成要素端面30の1つ、及び構成要素外周面32に開口する。少なくとも1つの構成要素貫通孔46は、明細書の以下で説明するように、構成要素空洞36に粘性流体を充填することを可能にする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの構成要素貫通孔46は、空洞壁面38と構成要素端面30の1つとの間に延在し、空洞壁面38及び構成要素端面30の1つに開口する。いくつかの実施形態では、工具防振構成要素28は、厳密に2つの構成要素貫通孔46を含むことができる。有利には、2つの構成要素貫通孔46は、粉体及び粒体等の追加的な製造工程の残りを構成要素貫通孔46の一方から排出する一方で、粘性流体をもう一方の構成要素貫通孔46を介して構成要素空洞36に注入することを可能にする。構成要素空洞36を粘性流体で充填した後、構成要素空洞36は、少なくとも1つの構成要素貫通孔46内に位置する少なくとも1つの封止部材50によって封止することができる。少なくとも1つの封止部材50は、空洞壁面38を越えて構成要素空洞36内に延在しなくてよい。構成要素貫通孔46は、ねじを通すことができ、少なくとも1つの封止部材50は、構成要素貫通孔46内に螺合する、ねじ山の付いた封止ねじとすることができる。
【0061】
図2を参照すると、防振装置34は、構成要素空洞36内に配設される振動吸収体部分52も含む。振動吸収体部分52は、振動吸収質量体54を含む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、振動吸収質量体54は、剛性とすることができる。いくつかの実施形態では、構成要素収容40は、鉄鋼等の第1の追加金属材料から形成される一方で、振動吸収質量体54は、タングステン等のより稠密な第2の追加金属材料から形成してよい。そうであっても、上記で説明したように、振動吸収質量体54及び構成要素収容部分40は、追加的製造工程のために、依然として、一体に形成されて単一の一体化構造を有するとみなされる。
【0062】
振動吸収質量体54は、振動吸収質量体54の質量体長手方向軸Eに沿って細長くすることができる。振動吸収質量体54は、工具ホルダ22と同じ方向で細長くすることができる。特に、振動吸収質量体54は、工具ホルダ22と同軸とすることができる。振動吸収質量体54は、質量体長手方向軸Eに沿って離間する2つの対向する質量体長手方向端部60を含むことができる。振動吸収質量体54は、2つの対向する質量体端面56と、2つの対向する質量体端面56の間に延在する質量体外周面58とを含むことができる。質量体外周面58は、質量体長手方向軸E回りに延在することができる。2つの質量体端面56は、2つの質量体長手方向端部60にそれぞれ位置することができる。図2を参照すると、振動吸収質量体54は、振動吸収質量体54の長さ方向(即ち、質量体長手方向軸Eの方向)で測定される質量体長さLを有することができる。図3を参照すると、振動吸収質量体54は、質量体長手方向軸Eに直交する方向で測定される質量体最大断面寸法Wを有することができる。質量体最大断面寸法Wは、質量体幅Wとみなすことができる。
【0063】
質量体外周面58を通る(質量体長手方向軸Eに直交する平面で取った)振動吸収質量体54の第1の径方向断面図を示す図3を更に参照すると、振動吸収質量体54は、質量体横断面を有する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、質量体横断面は、質量体長手方向軸Eに沿って質量体長さLの少なくとも60%で均一とすることができる。質量体外周面58は、質量体端面56を除いて円筒形形状を有することができる。
【0064】
本出願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、質量体横断面は、質量体長手方向軸Eに沿って非均一とすることができる。例えば、図6に示されているように、質量体外周面58は、質量体長手方向軸Eに沿う両方向で、質量体長手方向軸Eに向かって内側に先細にすることができる。例えば、質量体外周面58は、円錐形状を有することができる。振動吸収質量体54は、質量体長手方向軸E回りに回転対称とすることができる。
【0065】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、質量体端面56は、平坦であり、質量体長手方向軸Eに直交して向けることができる。本出願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、質量体端面56は、質量体外周面58から離れる方向で、質量体長手方向軸Eに向かって内側に先細にすることができる。例えば、質量体端面56は、円錐形状を有することができる。
【0066】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、空洞壁外周面44は、質量体外周面58の形状に一致する形状を含むことができる。2つの空洞壁端面42の一方又は両方は、対応する質量体端面56の形状に一致する形状を有することができる。構成要素空洞36は、振動吸収体部分52の形状に一致する形状を有することができる。
【0067】
振動吸収体部分52は、少なくとも1つの弾性懸架部材62を含む。懸架部材62は、弾性変形可能である。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの懸架部材62は、予荷重を加えなくてよい(即ち、圧縮又は伸張しなくてよい)。少なくとも1つの懸架部材62は、懸架部材長手方向軸F回りにらせん状に延在するばねとすることができる(図9を参照)。
【0068】
代替的に、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの懸架部材62は、懸架部材長手方向軸Fに沿って細長くすることができる。少なくとも1つの懸架部材62は、工具ホルダ22と同じ方向で細長くすることができる。特に、少なくとも1つの懸架部材62は、工具ホルダ22と同軸とすることができる。少なくとも1つの懸架部材62は、懸架部材長手方向軸Fに沿って離間する2つの対向する懸架部材長手方向端部64を含む。少なくとも1つの懸架部材62は、懸架部材長手方向軸F回りに延在する懸架部材外周面66を含むことができる。
【0069】
懸架部材外周面66を通る(懸架部材長手方向軸Fに直交する平面で取った)1つの懸架部材62の第2の径方向断面図を示す図4を更に参照すると、1つの懸架部材62は、懸架部材横断面を有する。懸架部材外周面66は、円筒形形状を有することができる。図2を参照すると、少なくとも1つの懸架部材62は、懸架部材62の長さ方向(即ち、懸架部材長手方向軸Fの方向)で測定される懸架部材長さLを有することができる。図4を参照すると、少なくとも1つの懸架部材62は、懸架部材長手方向軸Fに直交する方向で測定される懸架部材最大断面寸法Wを有することができる。懸架部材最大断面寸法Wは、懸架部材幅Wとみなすことができる。
【0070】
振動吸収体部分52は、構成要素収容部分40と一体に形成され、構成要素収容部分40と単一の一体化構造を有する。振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62で構成要素収容部分40に接続される。したがって、振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62によって構成要素空洞36内に懸架される。
【0071】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの懸架部材62は、質量体長手方向端部60の1つに接続することができる。振動吸収体部分52は、2つの質量体長手方向端部60に接続される2つの懸架部材62を含むことができる。振動吸収体部分52は、厳密に2つの懸架部材62を含むことができる。各懸架部材62の懸架部材外周面66は、それぞれの質量体端面56からそれぞれの空洞壁端面42に延在することができる。
【0072】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62よりも長くすることができる。例えば、質量体長さLは、懸架部材長さLよりも少なくとも5倍大きくてよい。振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62よりも幅広とすることができる。例えば、質量体最大断面寸法Wは、懸架部材最大断面寸法Wよりも少なくとも5倍大きくてよい。
【0073】
防振装置34は、構成要素空洞36内に形成される揺動空間68を含む。揺動空間68は、振動吸収体部分52と構成要素収容部分40との間(より詳細には、振動吸収体部分52と内向き空洞壁面38との間)に位置する。別の言い方をすれば、構成要素収容部分40及び振動吸収体部分52は、揺動空間68によって離間している。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、揺動空間68は、振動吸収体部分52を円周方向で完全に取り囲む。即ち、揺動空間68は、空洞長手方向軸Dの全(360°)角度回りで延在することができる。揺動空間68は、振動吸収質量体54における内部環状細穴を形成することができる。
【0074】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62のみで構成要素収容部分40に接続される。したがって、(例えば米国特許第7,234,379号明細書に示されるように)Oリング等の個別の更なる中実要素は、空洞壁面38と質量体端面56及び/又は質量体外周面58の間に配設され、空洞壁面38及び質量体端面56及び/又は質量体外周面58に当接するものであるが、揺動空間68には、こうした個別の更なる中実要素が一切ない。
【0075】
振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62が弾性変形する際に揺動空間68内で揺動するように構成される。別の言い方をすれば、振動吸収質量体54は、少なくとも1つの懸架部材62が弾性変形を受けた際に揺動空間68内で揺動変位可能である。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、弾性変形は、振動吸収質量体54によって少なくとも1つの懸架部材62上に印加される引張荷重によって生じさせることができる。
【0076】
図2に示される実施形態では、2つの懸架部材62を使用し、振動吸収質量体54を構成要素収容部分40に接続する、即ち、1つの懸架部材54を振動吸収質量体54の2つの対向する端部のそれぞれに接続する。しかし、いくつかの実施形態では、単一懸架部材62のみを使用し、振動吸収質量体54を構成要素収容部分40に接続してよい。そのような場合、振動吸収質量体54は、構成要素空洞36内で片持ちされる。
【0077】
切削工具20が工作物に遭遇すると、振動を受けやすい。典型的には、旋削又はフライス加工切削動作の場合、振動は側方振動である。典型的には、穴あけ切削動作の場合、振動はねじれ振動である。振動吸収質量体54は、振動周波数で揺動する。防振装置34は、振動吸収質量体54に、切削工具20の自然周波数に近い又は同一の振動周波数をもたらすように設計されており、これにより、切削工具20の振動を低減又はなくす。
【0078】
有利には、防振装置34は、あらゆる分離可能部品の分解を必要とせずに、(振動吸収質量体54の振動周波数が切削工具20の自然周波数に一致するように)同調可能とすることができる。1つ又は複数の機構は、単独又は組合せにかかわらず、振動吸収質量体54が揺動する振動周波数を変更するように使用することができる。非限定的な一例では、少なくとも1つの懸架部材62は、予荷重を加えることができる。例えば、図6を参照すると、防振装置34は、揺動空間68に突出する同調部材70を含むことができる。同調部材70は、少なくとも1つの懸架部材62の1つに当接することができ、これにより、少なくとも1つの懸架部材62の弾性特性を調節する。特に、工具防振構成要素28は、ねじが通される同調貫通孔72を含むことができ、同調貫通孔72は、空洞壁面38と構成要素外周面32との間に延在し、空洞壁面38及び構成要素外周面32に開口する。同調部材70は、同調貫通孔72内に螺合される、ねじ山の付いた調節ねじとすることができる。
【0079】
揺動空間68は、粘性流体で充填することができ、粘性流体が振動吸収質量体54を円周方向で取り囲み、振動吸収質量体54に対して制動効果を生じさせるようにする。制動効果を調節するため、異なる粘度を有する様々な粘性流体を使用することができる。
【0080】
振動吸収質量体54は、第2の追加的に製造される金属材料から製造し得る一方で、構成要素収容部分40は、第1の追加的に製造される金属材料から製造し得る。そのような構成において、振動吸収質量体54の重量は、その寸法を変更せずに調節することができる。
【0081】
本出願の主題の別の特徴は、防振装置34は、側方振動及びねじれ振動の無効化に適していることに更に留意されたい。
【0082】
本出願の主題は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。
【0083】
図7を参照すると、例えば、工具防振構成要素28は、更なる第2の防振装置34を含むことができる。工具ホルダ22は、更なる第2の工具防振構成要素28を含むことができる(図示せず)。したがって、工具ホルダ22は、2つの防振装置34を含むことができる。そのような構成において、2つの揺動空間68は、構成要素貫通孔46を介して互いに流体連通することができる。
【0084】
図8を参照すると、工具ホルダ22はモジュール式とすることができる。即ち、工具ホルダ22は、シャンク構成要素74を含むことができ、シャンク構成要素74は、工具防振構成要素28とは個別に製造され、工具防振構成要素28に接続され、工具ホルダ22を形成する。いくつかの実施形態では、工具防振構成要素28は、シャンク構成要素74内に形成した空洞に挿入してよい。工具防振構成要素28は、例えば、ろう付け、溶接、螺合等によってシャンク構成要素74に接続することができる。代替的に、シャンク構成要素74は、シャンク・スリーブ部分76を含むことができ、工具防振構成要素28は、締まり嵌めを介してシャンク・スリーブ部分76内に接続される。シャンク構成要素74は、追加的に製造することができる。代替的に、シャンク構成要素74は、従来のサブトラクティブ技術によって、工具ホルダ22がいわゆる「ハイブリッド」であるように製造することができる。
【0085】
代替的に、図1で最良に見られるように、工具ホルダ22は、非モジュール式とすることができ、工具防振構成要素28は、単一の一体化構造で工具ホルダ22と一体に形成され、工具防振構成要素28が工具ホルダのシャンクであるようにする。有利には、そのような構成において、工具ホルダ22は、製造後に個別部品を組み立てる必要がない。
【0086】
図9を参照すると、工具防振構成要素28は、内部冷却剤通路78を備えることができ、内部冷却剤通路78は、少なくとも1つの懸架部材62及び振動吸収質量体54を通じて内部に延在する。少なくとも1つの懸架部材62がらせん状である構成において、内部冷却剤通路78も同じ軸回りにらせん状に延在することができる。振動吸収質量体54は、質量体凹部80を含むことができ、少なくとも1つの懸架部材62は、質量体凹部80内で振動吸収質量体54に接続することができる。有利には、このことは、工具防振構成要素28の長さを増大させずに、少なくとも1つの懸架部材62の長さを増大させることができる。
【0087】
本出願の主題は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9