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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231113BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231113BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20231113BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20231113BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20231113BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231113BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08L53/02
C08L67/02
C08K3/06
C08K3/22
B60C1/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020561527
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049945
(87)【国際公開番号】W WO2020130105
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2018237217
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】三重野 香奈
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-006987(JP,A)
【文献】特開2018-087286(JP,A)
【文献】特開2007-154132(JP,A)
【文献】特開2018-080531(JP,A)
【文献】特開2017-137414(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032208(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117214(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117263(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)と、充填剤(B)と、熱可塑性樹脂(C)とを含み、
前記充填剤(B)が、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、30~90質量部であり、
前記熱可塑性樹脂(C)の量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、1~85質量部であり、
前記熱可塑性樹脂(C)は、スチレン・アルキレンブロック共重合体を含み、
前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH-CH(C))-単位(C)と-(CH-CH)-単位(C)とを有し、単位(C)の合計含量が、単位(C)および単位(C)の総質量に対して、40質量%以上である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記単位(C )の合計含量が、前記単位(C )および前記単位(C )の総質量に対して、50~90質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記単位(C )の合計含量が、前記単位(C )および前記単位(C )の総質量に対して、65~80質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分(A)が、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムからなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が、40~150m/gである、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量が、40質量%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(C)が、ポリエステルポリオールをさらに含み、
前記ポリエステルポリオールの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、1~20質量部である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム組成物において、硫黄の量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、8~11質量部である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記ゴム組成物において、亜鉛華の量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、5~9質量部である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
ベーストレッド部用である、請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム組成物をベーストレッド部に用いた、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年12月19日に出願の日本国特許出願第2018-237217号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤは、低燃費性を向上することが求められている。タイヤの低燃費性を向上するために、ゴム組成物のヒステリシスロスを低減して、タイヤの転がり抵抗を低減する手法がある。
【0004】
タイヤは、乾燥路面での操縦安定性を向上することも求められている。そして、タイヤのトレッドベース部などのベースゴムの剛性を高くすることで、タイヤのコーナリングパワーが向上し、タイヤの乾燥路面での操縦安定性を向上することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-189738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、タイヤの操縦安定性と、低転がり抵抗性とをより高度に両立させる余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させるゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分(A)と、充填剤(B)と、熱可塑性樹脂(C)とを含み、
前記充填剤(B)が、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、30~90質量部であり、
前記熱可塑性樹脂(C)の量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、1~85質量部であり、
前記熱可塑性樹脂(C)は、スチレン・アルキレンブロック共重合体を含み、
前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH-CH(C))-単位(C)と-(CH-CH)-単位(C)とを有し、単位(C)の合計含量が、単位(C)および単位(C)の総質量に対して、40質量%以上である、ゴム組成物である。
これにより、ゴム組成物の操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させることができる。
【0009】
本発明に係るタイヤは、上記ゴム組成物をベーストレッド部に用いた、タイヤである。
これにより、タイヤの操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させるゴム組成物を提供することができる。本発明によれば、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
以下の説明では、ゴム成分(A)、充填剤(B)、熱可塑性樹脂(C)を、それぞれ、成分(A)、成分(B)、成分(C)と表すことがある。
【0013】
本発明において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、30~90質量部は、30質量部以上90質量部以下を意味する。
【0014】
(ゴム組成物)
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分(A)と、充填剤(B)と、熱可塑性樹脂(C)とを含み、
前記充填剤(B)が、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、30~90質量部であり、
前記熱可塑性樹脂(C)の量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、1~85質量部であり、
前記熱可塑性樹脂(C)は、スチレン・アルキレンブロック共重合体を含み、
前記スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックが、-(CH-CH(C))-単位(C)と-(CH-CH)-単位(C)とを有し、単位(C)の合計含量が、単位(C)および単位(C)の総質量に対して、40質量%以上である、ゴム組成物である。
【0015】
<ゴム成分(A)>
本発明において、ゴム成分(A)は、ゴム組成物に用いられる公知のゴム成分を用いることができる。成分(A)としては、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンブタジエン共重合体、エチレンブタジエン共重合体、プロピレンブタジエン共重合体、これらの変性体などが挙げられる。
【0016】
成分(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明に係るゴム組成物は、前記ゴム成分(A)が、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
これにより、操縦安定性と、低転がり抵抗性とをより高度に両立させることができる。
【0018】
<充填剤(B)>
本発明において、成分(B)は、カーボンブラックを含み、カーボンブラックの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、30~90質量部である。
【0019】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、公知のカーボンブラックを適宜選択して用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、IISAF、ISAF、HAF、FEF、GPFグレードのカーボンブラックなどが用いられる。
【0020】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、適宜調節すればよく、例えば、30~300m/gである。本発明において、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217-2に準拠して測定する。
【0021】
本発明に係るゴム組成物は、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が、30~300、40~150m/gであることが好ましく、50~130であることがより好ましく、60~110であることが更に好ましい。
これにより、低転がり抵抗性と耐破壊特性が高まる。
【0022】
成分(B)におけるカーボンブラックの比率は、適宜調節すればよく、例えば、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、または100質量%である。また、例えば、成分(B)におけるカーボンブラックの比率は、100質量%以下、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、または60質量%以下である。
【0023】
カーボンブラックの量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、30~90質量部であればよい。例えば、カーボンブラックの量は、成分(A)100質量部に対して、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、または80質量部以上である。また、例えば、カーボンブラックの量は、成分(A)100質量部に対して、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、または40質量部以下である。
【0024】
成分(B)としては、少なくともカーボンブラックを含めばよく、カーボンブラックに加えて、ゴム組成物に用いられる公知の充填剤を用いることができる。カーボンブラック以外の成分(B)としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0025】
成分(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
成分(B)の量は、カーボンブラックの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、30~90質量部であればよく、適宜調節すればよい。成分(B)の量は、成分(A)100質量部に対して、例えば、30~100質量部である。
【0027】
<熱可塑性樹脂(C)>
熱可塑性樹脂(C)は、スチレン・アルキレンブロック共重合体を含む。
【0028】
・スチレン・アルキレンブロック共重合体
成分(C)としてのスチレン・アルキレンブロック共重合体は、スチレン系モノマー由来のブロックと、アルキレンブロックとを有する共重合体である。スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックは、-(CH-CH(C))-単位(C)と-(CH-CH)-単位(C)とを有し、単位(C)の合計含量が、単位(C)および単位(C)の総質量に対して、40質量%以上である。
【0029】
スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量(スチレン系モノマー由来のブロックの合計含量)は、例えば、30質量%以上であり、または30~60質量%である。合計スチレン含量が30質量%以上であることにより、操縦安定性が高まる。
【0030】
本発明に係るゴム組成物は、前記スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量が、40質量%以上であることが好ましい。
これにより、操縦安定性がより高まる。
【0031】
スチレン・アルキレンブロック共重合体の合計スチレン含量は、50質量%以上であることが好ましい。これにより、操縦安定性がより高まる。
【0032】
本発明において、スチレン・アルキレンブロック共重合体のスチレン含量およびアルキレンブロックの各単位の含量は、H-NMRの積分比により求める。
【0033】
スチレン・アルキレンブロック共重合体のスチレンブロックは、スチレン系モノマーに由来する(スチレン系モノマーを重合した)単位を有する。このようなスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。この中でも、スチレン系モノマーとしては、スチレンが好ましい。
【0034】
本発明に係るゴム組成物において、スチレン・アルキレンブロック共重合体のアルキレンブロックは、-(CH-CH(C))-単位(C)と-(CH-CH)-単位(C)とを有し、単位(C)の合計含量が、単位(C)および単位(C)の総質量に対して、40質量%以上である。これにより、低転がり抵抗性を悪化させずに良好な操縦安定性を確保することができる。
【0035】
単位(C)および単位(C)の総質量に対する、単位(C)の合計含量は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。また、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がより好ましい。
【0036】
スチレン・アルキレンブロック共重合体は、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)などの市販品を用いてもよい。このような市販品としては、例えば、JSR社のJSR DYNARON(登録商標)8903P、9901Pなどが挙げられる。
【0037】
スチレン・アルキレンブロック共重合体の量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、1~85質量部の範囲内で適宜調節すればよく、例えば、成分(A)100質量部に対して、1質量部以上、2質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、または80質量部以上である。また、例えば、スチレン・アルキレンブロック共重合体の量は、成分(A)100質量部に対して、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、または5質量部以下である。
【0038】
成分(C)は、スチレン・アルキレンブロック共重合体に加えて、その他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。その他の熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0039】
・ポリエステルポリオール
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、特に限定されず、公知のポリエステルポリオールを適宜選択して用いることができる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸などの多価カルボン酸と、多価アルコールとの反応により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0040】
多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などが挙げられる。
【0041】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどの2価アルコール;グリセリンなどの3価アルコールなどが挙げられる。
【0042】
一実施形態では、熱可塑性樹脂(C)は、ポリエステルポリオールをさらに含む。
【0043】
ポリエステルポリオールは、分子構造内に芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂であることが好ましい。
【0044】
芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂は、芳香族環を主鎖または側鎖に含むポリエステルポリオール樹脂であることが好ましく、水に対する非溶解性の観点から、主鎖に芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂がより好ましい。
【0045】
前記芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂は、例えば、芳香族多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合物であって、1分子内に水酸基を2個以上有する樹脂、または、多価カルボン酸と芳香族多価アルコールとの重縮合物であって、1分子内に水酸基を2個以上有する樹脂などが挙げられる。
【0046】
上記芳香族多価カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸若しくはナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、またはナフタレントリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸が挙げられる。前記芳香族多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0047】
上記多価アルコールとしては、例えば、ジアルコール、トリアルコールなどが挙げられる。多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。前記多価アルコールとしては、ジアルコールが好ましい。
【0048】
上記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0049】
上記芳香族多価アルコールとしては、例えば、1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、ビスフェノールA、レゾルシノールなどが挙げられる。
【0050】
芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン社製の商品名「ゼオファイン100」などの「ゼオファイン」(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0051】
本発明における芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂の重量平均分子量(Mn)は、20,000~100,000が好ましく、30,000~80,000が好ましい。Mnが20,000以上であると、分子量効果により、水溶けを低減または抑制しやすい。また、Mnが100,000以下であると、他の成分と相溶し易い。なお、本発明において、Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定する。また、Mnは、標準ポリスチレン換算分子量である。
【0052】
本発明における芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂は、水酸基価が45~78mgKOH/gが好ましい。当該ポリエステルポリオール樹脂における1分子内の水酸基の数は、3以上が好ましい。
【0053】
芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
芳香族環を有するポリエステルポリオール樹脂の量は、例えば、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1~20質量部、または1~20質量部である。
【0055】
本発明に係るゴム組成物は、前記熱可塑性樹脂(C)が、ポリエステルポリオールをさらに含み、
前記ポリエステルポリオールの量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、1~20質量部であることが好ましい。
これにより、操縦安定性と、低転がり抵抗性とをより高度に両立させることができる。
【0056】
ポリエステルポリオール以外のその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、国際公開第2015/079703号公報、国際公開第2017/077712号公報に記載の、C5系樹脂、C5~C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アルキルフェノール系樹脂などが挙げられる。
【0057】
スチレン・アルキレンブロック共重合体以外のその他の熱可塑性樹脂の合計量は、適宜調節すればよく、例えば、成分(A)100質量部に対して、1質量部以上、2質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、または40質量部以上である。また、例えば、スチレン・アルキレンブロック共重合体以外のその他の熱可塑性樹脂の合計量は、成分(A)100質量部に対して、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、または5質量部以下である。
【0058】
成分(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
一実施形態では、成分(C)は、スチレン・アルキレンブロック共重合体のみである。
【0060】
成分(C)の量は、成分(A)に対して1~85質量部であり、例えば、成分(A)100質量部に対して、1質量部以上、2質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、または80質量部以上である。また、例えば、成分(C)の量は、成分(A)100質量部に対して、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、または5質量部以下である。
【0061】
<その他の成分>
本発明に係るゴム組成物は、前述の成分以外に、ゴム工業界で通常使用される成分、例えば、軟化剤、加硫促進剤、シランカップリング剤、加硫剤、老化防止剤、加硫促進助剤、有機酸化合物などを、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜選択して含有することができる。
【0062】
本発明にかかるゴム組成物において、硫黄を多く配合することにより、硬い物性が得られ、硫黄を多く配合し過ぎると、耐熱老化性が悪化する為、硫黄の量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、8~11質量部であることが好ましい。
【0063】
また、本発明にかかるゴム組成物において、上記好適範囲の硫黄配合量に対して、効率よい加硫反応を実現するため、亜鉛華の量は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、5~9質量部であることが好ましい。
【0064】
(ゴム組成物の調製方法)
本発明に係るゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の混練方法を用いて、成分(A)、成分(B)、成分(C)などの成分を混練すればよい。
【0065】
本発明に係るゴム組成物は、好適にはタイヤ用である。
【0066】
本発明に係るゴム組成物は、ベーストレッド部用であることが好ましい。
これにより、より効果的に、タイヤの操縦安定性と、低転がり抵抗性とを両立させることができる。
【0067】
(タイヤ)
本発明に係るタイヤは、上記いずれかに記載のゴム組成物をベーストレッド部に用いた、タイヤである。
これにより、タイヤの操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させることができる。
【実施例
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。実施例において、配合量は、特に断らない限り、質量部を意味する。
【0069】
実施例で使用した材料の詳細は以下のとおりである。
【0070】
成分(A)
NR:Tg=-60℃
SBR:JSR社製の商品名「JSR 1500」、Tg=-55℃
BR:JSR社製の「JSR BR01」、Tg=-100℃
【0071】
成分(B)
カーボンブラック1:旭カーボン社製の商品名「♯70L」、NSA=84m/g
カーボンブラック2:NSA=69m/g
カーボンブラック3:キャボット社製の商品名「VULCAN 7H」、NSA=117m/g
【0072】
成分(C)
スチレン・アルキレンブロック共重合体:JSR社製の商品名「DYNARON(登録商標)9901P」(SEBS)、単位(C)の単位(C)および単位(C)の総質量に対する割合70質量%、合計スチレン含量53質量%
ポリエステルポリオール:日本ゼオン社製の商品名「ゼオファイン(登録商標)100M」
【0073】
(その他)
WAX:マイクロクリスタリンワックス、日本精蝋社製の商品名「オゾエース0701」
老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック(登録商標) 6C」
老化防止剤:2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(TMQ)、大内新興化学工業社製の商品名「ノクラック(登録商標) 224」
加硫促進剤:1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、住友化学社製の商品名「ソクシノール(登録商標)D-G」
加硫促進剤:ジ(2-ベンゾチアゾリル)ペルスルフィド(MBTS)、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)DM」
加硫促進剤:N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(CBS)、大内新興化学工業社製の商品名「ノクセラー(登録商標)CZ」
【0074】
<ゴム組成物の調製及び評価>
表1~3に示す配合処方に従い、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を調製し、そのゴム組成物をベーストレッド部に用いて、サイズ195/65R15の乗用車用空気入りラジアルタイヤを作製する。実施例1について、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を調製した。また実施例1について、ゴム組成物をベーストレッド部に用いて、サイズ195/65R15の乗用車用空気入りラジアルタイヤを作製した。そのゴム組成物又はタイヤに対して、下記の方法で、操縦安定性、低転がり抵抗性および性能両立を予測評価する。実施例1のゴム組成物およびタイヤに対して、下記の方法で、操縦安定性、転がり抵抗性及び性能両立を評価した。結果を表1~3に示す。
【0075】
<操縦安定性>
操縦安定性は、コーナリングパワーによって評価した。実施例1についてコーナリングパワーは、フラットベルト式コーナリング試験機を用いて測定した。ベルト速度を100km/hとして、タイヤの転動方向とドラムの円周方向との間のスリップアングル(SA)を1°の状態でコーナリングフォースを測定した。比較例1のコーナリングフォースを100として指数表示した。この指数値が大きいほど、コーナリングパワーが大きく、操縦安定性に優れることを示す。
【0076】
<低転がり抵抗性>
ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムについて、損失正接(tanδ)を、GABO製粘弾性試験機、温度50℃、初期歪2%、動歪1%、周波数15Hzの条件で測定した。比較例1の損失正接の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、転がり抵抗が低く、低転がり抵抗性に優れることを示す。
【0077】
<性能両立>
操縦安定性と低転がり抵抗性の両立について、以下の基準で評価した。結果を表1~3に合わせて示す。
A:両方の性能が、指数値105以上である場合
B:両方の性能が、指数値100以上であり、かつ、少なくとも一方の性能が、指数値104以下である場合
C:少なくとも一方の性能が指数値99以下である場合
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
表1に示すように、本発明に係るゴム組成物によって、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させるゴム組成物を提供することができる。本発明によれば、操縦安定性と、低転がり抵抗性とを高度に両立させたタイヤを提供することができる。