(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】貫通性が改善された2重層多重ストランドコード
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20231113BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 M
(21)【出願番号】P 2020570702
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 FR2019051311
(87)【国際公開番号】W WO2019243689
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァレー マリアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】クレマン エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ジャネッティ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ピノー レミ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127160(JP,A)
【文献】特開2005-314833(JP,A)
【文献】特表2004-523406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00 - 19/12
D07B 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層多重ストランドコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)であって、
-螺旋状に巻かれたK>1個の内部ストランド(TI)で構成されたコードの内部層(CI)を含み、
各内部ストランド(TI)が、少なくとも2層(C1,C3)ストランドであり、かつ
・Q個の内部スレッド(F1)で構成された内部層(C1)、及び
・前記内部層(C1)の周りに巻かれたN個の外部スレッド(F3)で構成された外部層(C3)、
を含み、
前記2層多重ストランドコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)は、
-コードの前記内部層(CI)の周りに巻かれたL>1個の外部ストランド(TE)で構成されたコードの外部層(CE)を含み、
各外部ストランド(TE)が、3層(C1’,C2’,C3’)ストランドであり、かつ
・Q’=1個の内部スレッド(F1’)で構成された内部層(C1’)、
・前記内部層(C1’)の周りにピッチp2’で巻かれたM’個の中間スレッド(F2’)で構成された中間層(C2’)、及び
・前記中間層(C2’)の周りにピッチp3’で巻かれたN’個の外部スレッド(F3’)で構成された外部層(C3’)、
を含み、
-2つの隣接する外部ストランドを分離する平均ストランド間距離Eが、30μmよりも大きいか又はそれに等しく、
-各外部ストランド(TE)の前記中間層(C2’)は、不飽和化され、
-各外部ストランド(TE)の前記外部層(C3’)は、不飽和化され、かつ
-前記ピッチp2’及びp3’は、関係:0.36≦(p3’-p2’)/p3’≦0.57を満足
し、
2つの隣接する外部ストランドを分離する前記平均ストランド間距離Eは、70μm以上であり、
各外部ストランドの前記中間層内のスレッド間距離は50μm以上である、
ことを特徴とするコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項2】
0.38≦(p3’-p2’)/p3’≦0.55
である、
ことを特徴とする請求項1に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項3】
K=2、3、又は4である、
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項4】
L=7、8、9、又は10である、
ことを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項5】
コードの前記内部層(CI)は、コード内部層方向にピッチpiで螺旋状に巻かれ、コードの前記外部層(CE)は、コード外部層方向にピッチpeで螺旋状に巻かれ、
コードが、以下の特徴:
-前記コード内部層方向が、前記コード外部層方向とは異なる、
-piが、peとは異なる、
ことのうちの一方及び/又は他方を満足する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項6】
各外部ストランド(TE)の前記外部層(C3’)は、完全に不飽和であることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項7】
-Q’=1、M’=6、N’=11であり、
-各外部ストランド(TE)の前記内部スレッド(F1’)は、該外部ストランド(TE)の各中間スレッド(F2’)の直径d2’よりも大きい直径d1’を有し、
-各外部ストランド(TE)の前記内部スレッド(F1’)は、該外部ストランド(TE)の各外部スレッド(F3’)の直径d3’よりも大きい直径d1’を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項8】
各内部ストランド(TI)の前記外部層(C3)は、不飽和化されていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)。
【請求項9】
請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコード(50;50’;50’’;51;52;53;54;55;56;57;58;59)、
を含むことを特徴とするタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけタイヤを特に大型産業車両のためのタイヤを補強するのに使用することができる多重ストランドコードに関する。
【背景技術】
【0002】
半径方向カーカス補強体を有するタイヤは、トレッドと、2つの非伸張性ビードと、ビードをトレッドに接続する2つの側壁と、カーカス補強体とトレッドの間に周方向に配置されたベルト又はクラウン補強体とを含む。カーカス補強体及びクラウン補強体は、金属タイプ又は織物タイプのコード又はモノフィラメントのような補強要素で場合により補強されたエラストマー化合物で作られた複数のプライを含む。
【0003】
カーカス補強体は、各ビード内に固定され、かつ半径方向にクラウン補強体を載せている。カーカス補強体は、カーカス補強金属フィラメント状要素を含む単一カーカスプライを含む。各カーカス補強金属フィラメント状要素は、タイヤの周方向と80°と90°の間の角度をなす。
【0004】
クラウン補強体はまた、場合に応じて変わる場合がある幅を有して補強要素を含有する又は含有しない場合があるエラストマー化合物の様々な他の追加プライ又は層を含むことができる。一例として、ベルトの残りの部分を外部アタック又は穿孔から保護する役割を有する保護プライとして公知であるもの、又は同じく作動プライに対して半径方向に外側又は内側のいずれかに関わらず実質的に周方向に向けられた補強要素を含有するフーピングプライ(「ゼロ度」プライとして公知である)として公知のものに言及することができる。保護プライは、一般的に、陥凹要因、例えば岩によって印加される応力の影響の下で変形するように高い伸長性を示す補強要素を含む。
【0005】
WO2015090920の例に開示された2層多重ストランド金属コードを含む作動プライ補強要素は、従来技術から公知である。このコードは、内部ストランドで構成されたコードの内部層と、コードの内部層の周りに螺旋状に包まれた6つの外部ストランドで構成されたコードの外部層とを含む。
【0006】
各内部及び外部ストランドは、単一内部スレッドで構成されたストランドの内部層と、6つのスレッドで構成された中間層と、11個の外部スレッドで構成されたストランドの外部層とを含む。内部ストランドの中間及び外部層は、それぞれ内部ストランドの内部及び中間層の周りにS方向に巻かれる。各外部ストランドの中間及び外部層は、それぞれ各外部ストランドの内部及び中間層の周りにZ方向に巻かれる。外部ストランドは、S方向であるコードの巻回方向に内部ストランドの周りに螺旋状に巻かれる。各内部及び外部ストランドの中間層の各ピッチp2、p2’は、14mmに等しく、各内部及び外部ストランドの外部層の各ピッチp3、p3’は、20mmに等しい。
【0007】
大型産業車両のとりわけ建設プラントタイプのタイヤは、数多くのアタックを受ける。具体的には、このタイプのタイヤは、通常、凹凸路面上を走行し、時によってはトレッドの穿孔をもたらす。これらの穿孔は、クラウン補強体、特にクラウンプライの金属補強要素を酸化してタイヤの寿命をかなり縮める腐食物質、例えば空気及び水の侵入を許す。
【0008】
タイヤの寿命を延長するための1つのソリューションは、これらの腐食物質の拡散と戦うことである。すなわち、コードの製造中に各内部及び中間層をエラストマー化合物で覆うように規定することができる。この工程中に、存在するエラストマー化合物が、各ストランドの各層の間に存在する毛細管を貫通し、従って、腐食物質が拡散するのを防止する。一般的に原位置ゴム引きコードと呼ばれるそのようなコードは、従来技術から公知である。
【0009】
タイヤの寿命を延長するための別のソリューションは、コードの破断強度を高めることである。一般的に、破断強度は、コードを構成するスレッドの直径を増すことにより、及び/又はスレッドの個数及び/又は各スレッドの個々の強度を増すことによって高められる。しかし、スレッドの直径を必要なものよりも例えば0.50mmを更に超えて増大することは、コードの可撓性の低下に至り、これは望ましくない。スレッドの個数を増すことは、通常は、ストランドを貫通するエラストマー化合物の能力の低下に至る。最後に、各スレッドの個々の強度を高めることは、スレッドを製造するのに使用される設備内のかなりの投資を必然的に伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2015090920
【文献】WO2010054790
【文献】FR 2 419 181
【文献】FR 2 419 182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術のコードと比較してコードの外部ストランドの改善された貫通性とエラストマー化合物による内部ストランドへのより良い接近可能性とを示し、従って、コードの中へのかつそれに沿った腐食物質の侵入及び拡散を低減することを可能にするコードである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるコード
【0013】
上記の目的を果たすために、本発明の1つの主題は、2層多重ストランドコードであり、これは、螺旋状に巻かれたK>1個の内部ストランドで構成されたコードの内部層であって、各内部層が、少なくとも2層ストランドであり、かつQ個の内部スレッドで構成された内部層と内部層の周りに巻かれたN個の外部スレッドで構成された外部層とを含む上記内部層と、コードの内部層の周りに巻かれたL>1個の外部ストランドで構成されたコードの外部層であって、各外部層が、3層ストランドであり、かつQ’=1個の内部スレッドで構成された内部層と、内部層の周りにピッチp2’で巻かれたM’個の中間スレッドで構成された中間層と、中間層の周りにピッチp3’で巻かれたN’’個の外部スレッドで構成された外部層とを含む上記外部層とを含み、2つの隣接する外部ストランドを分離する平均ストランド間距離Eは、30μmよりも大きいか又はそれに等しく、各外部ストランド(TE)の中間層(C2’)は不飽和化され、各外部ストランド(TE)の外部層(C3’)は不飽和化され、ピッチp2’及びp3’は、関係:0.36≦(p3’-p2’)/p3’≦0.57を満足する。
【0014】
公知であるように、ストランドのピッチは、コードの軸線に対して平行に測定されたストランドの長さであり、この長さの後にこのピッチを有するストランドがこのコード軸線の周りに一回転し終わる長さを表すことを想起されたい。同様に、スレッドのピッチは、このスレッドを内部に収めるストランドの軸線に対して平行に測定されたこのスレッドの長さであり、この長さの後にこのピッチを有するスレッドがこのストランド軸線の周りに一回転し終わる長さを表す。
【0015】
ストランド又はスレッドの層の巻回の方向は、ストランド又はスレッドがコード軸線又はストランド軸線に対してなす方向を意味する。一般的に巻回方向は、文字Z又はSで表される。
【0016】
スレッド及びストランドのピッチ、巻回方向、及び直径は、2014年のASTM D2969-04規格に従って決定される。
【0017】
本発明により、コードの外部層は不飽和化される。
【0018】
定義により、不飽和化ストランド層は、ストランド間にエラストマー化合物が通過することを可能にするのに十分な間隔が存在するようなものである。不飽和化された外部ストランド層は、外部ストランドが接触せず、2つの隣接する外部ストランドの間にエラストマー化合物が内部ストランドに至るまで通過することを可能にするのに十分な間隔が存在することを意味する。それとは対照的に、飽和されたストランド層は、例えば、その各対の2つのストランドが互いに接触することに起因して、層のストランド間にエラストマー化合物が通過することを可能にするのに十分な間隔が存在しないようなものである。
【0019】
本発明により、2つの隣接する外部ストランドが内接する円形包絡線を平均的に分離する最短距離としてコードの主軸線に対して垂直なコードの断面上で定義される外部ストランドの外部層のストランド間距離は、30μmよりも大きいか又はそれに等しい。
【0020】
好ましくは、2つの隣接する外部ストランドを分離する平均ストランド間距離Eは、70μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは100μmよりも大きく/に等しく、更に好ましくは150μmよりも大きく/に等しく、非常に好ましくは200μmよりも大きい/に等しい。
【0021】
「少なくとも2つの層」は、ある一定の実施形態では各内部ストランドが2つの層を含むことができ、すなわち、2つに限った個数の層を含み、1つだけの又は3つの層を含まず、他の実施形態では各内部ストランドが3つの層を含むことができ、すなわち、3つに限った個数の層を含み、2つだけの又は4つの層を含みないことを意味する。
【0022】
本発明では、コードは2つのストランド層を有し、すなわち、2つのそれよりも多くも少なくもないストランド層で構成されたアセンブリを含み、すなわち、このアセンブリは、2つの1つでも3つでもなく2つに限った個数のストランド層を有する。コードの外部層は、コードの内部層の周りに巻かれ、それとの接触状態にある。
【0023】
本発明によるコードは、例えば、(p3’-p2’)/p3’が0.30に等しくてその貫通性を本発明によって改善することができるWO2015090920の例にあるコードのような(p3’-p2’)/p3’が本発明による比率範囲外にあるコードと比較して改善された貫通性を有する。本発明を推進する本発明者は、この比率が、各外部ストランド内でエラストマー化合物に対する比較的大きい半径方向通過窓を得ることを可能にするという仮定を前提としている。半径方向通過窓は、一方で外部ストランドの外部層の2つの隣接するスレッドの間の間隔をコードの主軸線に対して平行な平面上に投影したものとし、他方でこの外部ストランドの中間層の2つの隣接するスレッドの間の間隔をコードの主軸線に対して平行な平面上に投影したものとする双方の間の交差点として定義される。そのような半径方向通過窓を
図16に例示している。
【0024】
これに加えて、コードの外部層が不飽和化されることに起因して、本発明によるコードは、エラストマー化合物が通過することを可能にする間隔を外部ストランド間に有する。コードの外部層が飽和状態にある(外部ストランドが対になって互いに接触状態にあることに起因して)ことから比較的高い破断強度を有し、それによってコードに印加される引張力を吸収するアーチを形成するコードが従来技術から公知である。本発明によるコードでは、内部層の周りのアーチは破断されるものの、比率(p3’-p2’)/p3’によって外部ストランドの高い貫通性が可能になり、コードの外部層の不飽和性は、一方で外部ストランド間、他方で外部ストランドと各内部ストランド間をエラストマー化合物が貫通することを可能にする。このようにして、アーチは少なくとも部分的に修復され、従ってコードの破断強度の低下が制限され、それと同時にコードに優れた貫通性が与えられる。更に、この特徴は、エラストマー化合物が内部ストランドの外部層と外部ストランドの外部層との間に浸潤し、それによって内部ストランドと外部ストランド間の力の半径方向成分を少なくとも部分的に吸収するエラストマー化合物の緩衝体を作り出すことを可能にする。
【0025】
単一内部ストランドで構成されたコードの内部層を含む従来技術のコードでは、その貫通性を促進することを目的とするコードの外部層の大幅な不飽和化は、金属質量の大幅な低下、及び従ってコードの破断強度の比較的実質的な低減に至る。本発明のコードでは、各外部ストランドが破断強度に与える寄与が本発明によるコードにおけるものよりも大きい従来技術のコードとは異なり、コードの貫通性を促進することを目的とするコードの外部層の大幅な不飽和化は、K個の内部ストランドの存在に起因して、金属質量のそれ程大幅ではない低下、及び従って破断強度の制御された低減のみを引き起こす。
【0026】
本発明の理由からかつp2’とp3’の間の関係の理由から、各外部ストランドは、円筒層を有するストランドである。非常に有利なことに、各内部ストランドは、この内部ストランドが2つの層又は3つの層のどちらを有するかに関わらず、円筒層を有するストランドである。円筒層を有するストランドは、全ての層のピッチが同じであって全ての層の巻回方向が同じであってより低い貫通性を示す圧密層を有するストランドとは異なり、非常に高い貫通性を有する。
【0027】
任意的にかつ好ましくは、一実施形態では、コードは、いかなるポリマー化合物も持たず、とりわけ、コードの内部層、及び従って各内部ストランドを覆ういずれのポリマー化合物のシースも持たない。別の実施形態では、コードは、いかなるエラストマー化合物も持たず、とりわけ、コードの内部層、及び従って各内部ストランドを覆ういずれのエラストマー化合物のシースも持たない。
【0028】
有利なことに、コードは金属で作られる。定義によって「金属コード」という用語は、主に(すなわち、これらのスレッドのうちの50%超)又は完全に(100%のスレッド)金属材料で形成されたコードを意味するように理解される。そのような金属コードは、好ましくは鋼コード、より好ましくは下記で「炭素鋼」と呼ぶパーライト(又はフェライト系パーライト)炭素鋼で作られた又は他にステンレス鋼(定義によって少なくとも11%のクロム及び少なくとも50%の鉄を含む鋼)で作られたコードを用いて実施される。しかし、他の鋼又は他の合金を用いることが勿論可能である。
【0029】
炭素鋼が有利に用いられる時に、その炭素含有量(鋼の重量%)は、好ましくは0.4%と1.2%の間、特に0.5%と1.1%の間にあり、これらの含有量は、タイヤに求められる機械的性質とこれらのスレッドの利用可能性の間の良好な妥協点を表す。
【0030】
用いられる金属又は鋼は、それが特に炭素鋼又はステンレス鋼のどちらであるかに関わらず、それ自体を例えば金属コード及び/又はその構成要素の加工性、又は接着性、アタック耐性、又は耐経年劣化性のようなコード及び/又はタイヤ自体の使用性を改善する金属層で被覆することができる好ましい実施形態により、用いられる鋼は、黄銅(Zn-Cu合金)又は亜鉛の層で被覆される。
【0031】
好ましくは、事前決定された(内部又は外部)ストランドの1つの同じ層のスレッドは、全て実質的に同じ直径を有する。有利なことに、内部ストランドは、全て実質的に同じ直径を有する。有利なことに、外部ストランドは、全て実質的に同じ直径を有する。「実質的に同じ直径」は、スレッド又はストランドが工業公差の範囲内で同じ直径を有することを意味する。
【0032】
有利なことに、各ストランドの各スレッドは、0.15mmから0.60mm、好ましくは0.20mmから0.50mm、より望ましくは0.22mmから0.40mm、更に好ましくは0.24mmから0.35mmの範囲に及ぶ直径を有する。
【0033】
ポリマー化合物又はポリマー系化合物は、当該化合物が少なくとも1つのポリマーを含有することを意味する。好ましくは、そのようなポリマーは、熱可塑性プラスチック、例えばポリエステル又はポリアミド、熱硬化ポリマー、エラストマー、例えば天然ゴム、熱可塑性エラストマー、又はこれらのポリマーの組合せとすることができる。
【0034】
エラストマー化合物又はエラストマー系化合物は、当該化合物が、少なくとも1つのエラストマー又は1つのゴム(これら2つの用語は同義語である)と少なくとも1つの他の成分とを含有することを意味する。好ましくは、エラストマー化合物は、更に加硫システム又は充填剤を含有する。より望ましくは、エラストマーは、ジエンエラストマーである。
【0035】
有利なことに、ピッチp2’及びp3’は、関係:0.38≦(p3’-p2’)/p3’、好ましくは0.40≦(p3’-p2’)/p3’、より好ましくは0.43≦(p3’-p2’)/p3’、更に好ましくは0.45≦(p3’-p2’)/p3’を満足する。比率(p3’-p2’)/p3’が高いほど又は言い換えればp3’とp2’の間の差が大きいほど、各外部ストランドのアーキテクチャ的安定性は良好である。具体的には、各外部ストランドの中間層のピッチと外部層のピッチが異なる程度が大きいほど、中間スレッドと外部スレッドの互いに対する交差点が多く(この場合、中間スレッドと外部スレッドの間の接触は比較的点状の接触である)、外部スレッドが中間スレッドを機械的により良好に保持することになり、かつ中間層及び外部層のスレッドが各中間層及び外部層の内部で一様に分散されることになる各外部ストランドの貫通性が良好になる。この機械的一体性は、一方で、コードの製造中に中間層の全てのスレッドがアセンブリツールによって発揮される機械力の効果の下で互いに接触する状態で寄り集まるのを回避し、他方で、コードを含むプライ又はコードを含むタイヤの製造中に中間層の全てのスレッドがコードに貫通するエラストマー化合物の圧力の効果の下で互いに接触する状態で寄り集まるのを回避することを可能にする。
【0036】
更に、所与のピッチp3’に関して、比率(p3’-p2’)/p3’を高めることにより、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離が短縮される。当業者は、各外部ストランドの貫通性の低下が見られると予想するであろう。しかし、全く予想に反して、下記で説明する比較試験が示すように、比率(p3’-p2’)/p3’を高めることによって各外部ストランドの中間層のスレッド間距離は確かに短縮するものの、エラストマー化合物に対する半径方向通過窓のサイズが拡大し、すなわち、各外部ストランドの貫通性は明らかに改善される。
【0037】
有利なことに、ピッチp2’及びp3’は、関係:(p3’-p2’)/p3’≦0.55、好ましくは(p3’-p2’)/p3’≦0.53を満足する。これらの値を下回るところでは、エラストマー化合物に対する半径方向通過窓のサイズは最大であり、各外部ストランドの貫通性を最適化することが可能になる。
【0038】
有利なことに、ピッチp2’は、8mm≦p2’≦16mm、好ましくは8mm≦p2’≦14mm、より好ましくは8mm≦p2’≦12mmであるようなものである。
【0039】
有利なことに、ピッチp3’は、10mm≦p3’≦40mm、好ましくは15mm≦p3’≦35mm、より好ましくは15mm≦p3’≦25mm、更に好ましくは17mm≦p3’≦23mmであるようなものである。
【0040】
これらの好ましい範囲内にあるピッチp2’及びp3’は、タイヤ用途に適合する機械的性質、比較的低いコスト、及び比較的軽い直線コード重量を示すコードを得ることを可能にする。
【0041】
定義により、ストランドの直径は、ストランドに外接することができる最小円の直径である。
【0042】
有利なことに、K=2、3、又は4、好ましくはK=3又は4である。
【0043】
一実施形態では、Lは、7、8、9、又は10に等しく、好ましくはL=8、9、又は10、より好ましくはL=8又は9である。
【0044】
第1の変形では、K=2、及びL=7又は8である。
【0045】
第2の変形では、K=3、及びL=7、8、又は9、好ましくはK=3、L=8又は9である。L=8である事例は、コードの外部層の不飽和化、及び従って外部ストランド間のコードの貫通性にとって好都合である。L=9である事例は、外部ストランドの個数、及び従ってコードの破断強度を最大化する。
【0046】
第3の変形では、K=4、及びL=7、8、9、又は10、好ましくはK=4、L=9又は10である。
【0047】
これらの実施形態、とりわけK=3又は4であるものでは、コードが不十分な貫通しか受けない時に腐食物質がコードに沿って拡散するのを非常に助長する中心毛細管の境界を定めるK=3又は4つの内部ストランドの間での腐食物質の著しい拡散に遭遇するリスクがある。この欠点は、後に腐食物質が中心毛細管に接近するのを防止し、更に中心毛細管自体が貫通を受ける最良の場合にはこれらの腐食物質がコードに沿って拡散するのを防止するエラストマー化合物による貫通をコードが受けることができるようにすることによって解消することができる。
【0048】
上記で既に説明したように、K=1であって最も厳しい横荷重が外部ストランドによって内部ストランドに印加される横荷重であるコードとは異なり、本発明によるコードは、K>1であるアーキテクチャを有するので、コードが張力を受けている時にコードに印加される最も厳しい横荷重は、内部ストランド間に印加される横荷重である。最大個数の外部ストランドを加えることによって破断強度を最大限に高めるためにコードの外部層が飽和されるようにK>1であって複数個数の外部ストランドを含むアーキテクチャを示すコードが従来技術から公知である。本発明の場合にコードの外部層が不飽和化されることにより、コードは、一方で、エラストマー化合物が通過することを可能にし、それによってコードをアタックによる影響を受け難いものにすることを可能にする間隔を外部ストランド間に有する。他方で、外部ストランドの個数は低減するものの、コードの外部層の不飽和化により、エラストマー化合物が、一方で外部ストランド間、及び他方で内部ストランド間に貫通し、それによって内部ストランド間に印加される横荷重を少なくとも部分的に吸収するエラストマー化合物の緩衝体を形成することが可能になる。コードの飽和外部層を有する同様のコードと比較して、破断強度とアタック耐性の間のより良好な妥協点が得られる。
【0049】
コードの貫通性を促進する実施形態では、コードの外部層は不完全に不飽和である。
【0050】
定義により、不完全不飽和層とは反対に、完全不飽和ストランド層は、この層のX個のストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のストランドを組み入れるのに十分な間隔がこの層内に存在し、従って複数のストランドが互いに接触状態にあること又はないことが可能であるようなものである。この特定の事例では、コードの外部層のL個の外部ストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(L+1)番目のストランドを組み入れるのに十分な間隔がコードの外部層内に存在する。
【0051】
すなわち、有利なことに、コードの外部層のストランド間距離Eの和SIEは、SIE≧DEであるようなものである。和SIEは、この層の各対の隣接するストランドを分離するストランド間距離Eの和である。層のストランド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内で層の2つの隣接するストランドを平均的に分離する最短距離として定義される。従って、ストランド間距離Eは、層のストランドを分離する間隔の個数で和SIEを除することによって計算される。
【0052】
貫通性と破断強度の間の妥協点を容易にする別の実施形態では、コードの外部層は不完全に不飽和である。
【0053】
ストランドが不完全に不飽和である層は、層のX個のストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のストランドを組み入れるのに十分な間隔がこの層内に存在しないようなものである。この特定の事例では、コードの外部層のL個の外部ストランドと同じ直径を有する少なくとも1つの(L+1)番目の外部ストランドを組み入れるのに十分な間隔が外部層内に存在しない。従って、コードの外部層のストランド間距離Eの和SIEは、SIE<DEであるようなものである。和SIEは、この層内の各対の隣接するストランドを分離するストランド間距離Eの和である。層のストランド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内で層の2つの隣接するストランドを平均的に分離する最短距離として定義される。従って、ストランド間距離Eは、層のストランドを分離する間隔の個数で和SIEを除することによって計算される。
【0054】
定義により、内部ストランドの直径DIは、内部ストランドに外接することができる最小円の直径である。外部ストランドDEの直径は、外部ストランドに外接することができる最小円の直径である。
【0055】
1つの好ましい実施形態では、コードの内部層は、非ゼロピッチpiで螺旋状に巻かれ、コードの外部層は、コードの内部層の周りに非ゼロピッチpeで螺旋状に巻かれる。
【0056】
コードの貫通性にとって特に有利な一実施形態では、コードの内部層は、コード内部層方向にピッチpiで螺旋状に巻かれ、コードの外部層は、コード外部層方向にピッチpeで螺旋状に巻かれ、コードは、以下の特徴:コード内部層方向がコード外部層方向と異なること、piがpeと異なることのうちの1つ及び/又は別のものを満足する。
【0057】
この実施形態では、コードは、その貫通性を促進する円筒層構造(圧密構造ではなく)を有する。
【0058】
別の実施形態では、コードの内部層は、コード内部層方向にピッチpiで螺旋状に巻かれ、コードの外部層は、コード外部層方向にピッチpeで螺旋状に巻かれ、コードは、以下の特徴:コード内部層方向がコード外部層方向に等しいこと、piがpeに等しいことを満足する。
【0059】
この実施形態では、貫通するのが困難なコードの圧密構造にも関わらず、外部ストランドの高貫通性が十分な貫通を示すコードを得ることを可能にする。
【0060】
任意的に、各内部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各内部スレッドの直径d1’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、好ましくは、各内部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各内部スレッドの直径d1’に等しい直径d1を有する。従って、各内部ストランドの内部層内と各外部ストランドの内部層内とで同じスレッド径が用いられ、それによってコードの製造中に管理する必要がある異なるスレッドの数が限られる。
【0061】
任意的に、各内部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、好ましくは、各内部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きい直径d1を有する。
【0062】
任意的に、各内部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、好ましくは各内部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きい直径d1を有する。
【0063】
任意的に、各内部ストランドの各外部スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d3を有し、好ましくは、各内部ストランドの各外部スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きい直径d3を有する。好ましくは、d3>d3’という特性により、各内部ストランドの各外部スレッドは、コードが張力下にある時に外部ストランドによって各内部ストランドに対して発揮される力の半径方向成分に耐えることができることが可能である。このd3>d3’という特性は、外部ストランドによって形成されたアーチを含むコードと比較して又はd3≦d3’であるコードと比較して、コードの破断荷重を回復する又は更に改善することを可能にする。好ましくは、1<d3/d3’≦2、より好ましくは、1<d3/d3’≦1.5、更に好ましくは、1<d3/d3’≦1.25又は1.25<d3/d3’≦1.5である。
【0064】
1つの有利な実施形態では、コードの外部層は、コードの内部層の周りにコード外部層巻回方向に巻かれ、各内部ストランドの各外部層及び各外部ストランドの各外部層は、それぞれ各内部ストランドの内部層及び各外部ストランドの中間層の周りにそれぞれコードの巻回方向と反対の同じ方向に巻かれる。この実施形態では、各内部及び外部ストランドの各外部層の巻回方向と反対のコードの巻回方向は、とりわけ、外部ストランド間のより良好な貫通性をコードに与える。本発明者は、コードの巻回方向が各内部及び外部ストランドの外部層の巻回方向と同じであり、かつ外部ストランドの外部スレッドが内部ストランドの外部スレッドと点状というよりは線形の接触域を形成するように交差し、エラストマー化合物が内部ストランドに至るまで深く進入するのを阻止するコードとは異なり、上記の巻回方向によって外部ストランドの外部スレッドが各内部ストランドの外部スレッドと比較的点状の接触域を形成するように交差するという仮定を前提とする。
【0065】
本発明によるコードの外部ストランド
【0066】
有利なことに、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離の和SI2’は、d3’が各外部ストランドの各外部スレッドの直径である時にSI2’<d3’であり、好ましくはSI2’≦0.8×d3’であるようなものである。和SI2’は、この層内の各対の隣接するスレッドを分離するスレッド間距離の和である。層のスレッド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内でこの層の2つの隣接するスレッドを平均的に分離する最短距離として定義される。従って、スレッド間距離は、層内のスレッドを分離する間隔の個数で和SI2’を除することによって計算される。
【0067】
好ましくは各外部ストランドの外部層の外部スレッドの直径d3’は和SI2’よりも大きいので、外部スレッドが中間層を貫通するのが阻止される。この場合、良好なアーキテクチャ的安定性が保証され、それによって更にエラストマー化合物に対する半径方向通過窓への改変のリスク、及び従って各外部ストランドの良好な貫通性を劣化させるリスクが低減する。
【0068】
有利なことに、各外部ストランドの中間層は不飽和化される。
【0069】
定義により、不飽和化スレッド層は、エラストマー化合物が通過することを可能にするのに十分な間隔がスレッド間に存在するようなものである。従って、不飽和化された層は、この層内のスレッドが接触せず、エラストマー化合物がこの層を通過するのに十分な間隔がこの層内の2つの隣接するスレッドの間に存在することを意味する。それとは対照的に、飽和したスレッド層は、例えば、その各対の2つのスレッドが互いに接触することに起因して、エラストマー化合物が通過することを可能にするのに十分な間隔がスレッド間に存在しないようなものである。
【0070】
有利なことに、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離は5μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、各外部ストランドの中間層内のスレッド間距離は、15μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは、35μmよりも大きいか又はそれに等しく、更に好ましくは、50μmよりも大きいか又はそれに等しく、非常に好ましくは、60μmよりも大きいか又はそれに等しい。
【0071】
各外部ストランドの中間層が不飽和化されるという事実は、エラストマー化合物が各外部ストランドの中に進入し、そこを通り抜けることをより容易にし、それによって各外部ストランドがアタックによる影響を受け難くなることを有利に可能にする。
【0072】
各外部ストランドの貫通性と破断強度の間の妥協点を容易にする実施形態では、各外部ストランドの中間層は不完全に不飽和である。
【0073】
定義により、不完全に不飽和である層は、この層のX個のスレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な間隔がこの層内に存在しないようなものである。この特定の事例では、中間層のM’個の中間スレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(M’+1)番目の中間スレッドを組み入れるのに十分な間隔が中間層内に存在しない。言い換えれば、外部ストランドの不完全不飽和中間層は、この中間層のスレッド間距離I2’の和SI2’がこの中間層の中間スレッドの直径d2’よりも小さいことを意味する。従って、有利なことに、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離の和SI2’は、SI2’<d2’であるようなものである。
【0074】
各外部ストランドの中間層が不完全に不飽和であるという事実は、中間層のアーキテクチャ的安定性を保証することを可能にする。この場合、エラストマー化合物に対する半径方向通過窓を改変し、従って各外部ストランドの良好な貫通性を劣化させることになるものである外部スレッドが中間層を貫通するリスクが低減する。
【0075】
更に、各外部ストランドの中間層が不完全に不飽和であるという事実は、各外部ストランドが比較的多い個数の中間スレッドを含み、従って比較的高い破断強度を示すことを保証することを可能にする。
【0076】
各外部ストランドの貫通性を促進する別の実施形態では、各外部ストランドの中間層は完全に不飽和である。
【0077】
定義により、完全不飽和スレッド層は、この層のX個のスレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な余地がこの層内に存在し、従って複数のスレッドが互いに接触状態にあること又はないことが可能であるようなものである。この特定の事例では、各外部ストランドの中間層のM’個の中間スレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(M’+1)番目の中間スレッドを組み入れるのに十分な間隔がこの中間層内に存在する。言い換えれば、外部ストランドの完全不飽和中間層は、この中間層のスレッド間距離I2’の和SI2’が、この中間層の中間スレッドの直径d2’よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。従って、有利なことに、各外部ストランドの中間層のスレッド間距離の和SI2’は、SI2’≧2’であるようなものである。
【0078】
有利なことに、各外部ストランドの外部層は不飽和化され、好ましくは完全に不飽和である。中間層の場合と同様の方式で、各外部ストランドの外部層が不飽和化されることにより、エラストマー化合物が各外部ストランドの中に進入し、そこを通り抜けることが有利に容易になり、それによって各外部ストランドがアタックによる影響を受け難くなる。
【0079】
有利なことに、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離は5μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離は、15μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは35μmよりも大きいか又はそれに等しく、更に好ましくは50μmよりも大きいか又はそれに等しく、非常に好ましくは60μmよりも大きいか又はそれに等しい。
【0080】
定義により、不完全不飽和層とは反対に、完全不飽和層は、この層のX個のスレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な間隔がこの層内に存在し、従って複数のスレッドが互いに接触状態にあること又はないことが可能であるようなものである。この特定の事例では、外部ストランドの外部層のN’個の外部スレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(N’+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な間隔がこの外部層内に存在する。言い換えれば、外部ストランドの完全不飽和外部層は、この外部層のスレッド間距離I3’の和SI3’がこの外部層の外部スレッドの直径d3’よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。従って、有利なことに、各外部ストランドの外部層のスレッド間距離の和SI3’は、SI3’≧d3’であるようなものである。和SI3’は、外部層内の各対の隣接するスレッドを分離するスレッド間距離の和である。層のスレッド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内でこの層の2つの隣接するスレッドを平均的に分離する最短距離として定義される。従って、スレッド間距離は、外部層内のスレッドを分離する間隔の個数で和SI3’を除することによって計算される。
【0081】
各外部ストランドの外部層が完全な不飽和状態にあることにより、各外部ストランドの中へのエラストマー化合物の貫通を最大限に高めることが可能になり、それによって各外部ストランドがアタックによる影響をより一層受け難くなる。
【0082】
1つの有利な実施形態では、各外部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1’を有し、非常に好ましくは1≦d1’/d3’≦1.30である。d1’>d3’であるような直径の使用は、外部層の中を通るエラストマー化合物の貫通性を促進することを可能にする。d1’>d3’である場合に、非常に好ましくはd1’/d3’≦1.30であり、それにより、一方で外部層のアーキテクチャ的安定性を制御すること、他方でd1’とd3’の間の差によって生み出される比較的少量の不飽和化に起因して本発明をより一層有利なものにすることが可能になる。d1’=d3’であるような直径の使用は、コードの製造において管理すべき異なるスレッドの数を制限することを可能にし、更にd1’とd3’の間の等値性によって生み出される不飽和化の欠如に起因して本発明をより一層有利なものにすることも可能にする。
【0083】
別の有利な実施形態では、各外部ストランドの各内部スレッドは、各外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1’を有し、非常に好ましくは1≦d1’/d2’≦1.30である。d1’>d2’であるような直径の使用は、中間層の中を通るエラストマー化合物の貫通性を促進することを可能にする。d1’>d2’である場合に、非常に好ましくはd1’/d2’≦1.30であり、それにより、一方で中間層のアーキテクチャ的安定性を制御すること、他方でd1’とd2’の間の差によって生み出される比較的少量の不飽和化に起因して本発明をより一層有利なものにすることが可能になる。d1’=d2’であるような直径の使用は、コードの製造において管理すべき異なるスレッドの数を制限することを可能にし、更にd1’とd2’の間の等値性によって生み出される不飽和化の欠如に起因して本発明をより一層有利なものにすることも可能にする。
【0084】
好ましい実施形態では、Q’=1、M’=5又は6、及びN’=10、11、又は12、好ましくはQ’=1、M’=5又は6、N’=10又は11、より好ましくはQ’=1、M’=6、及びN’=11である。
【0085】
より有利なことに、Q’=1、M’=5又は6、N’=10又は11であり、各外部ストランドの内部スレッドは、この外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1’を有し、かつ各外部ストランドの内部スレッドは、この外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1’を有する。
【0086】
更により有利なことに、Q’=1、M’=6、N’=11であり、各外部ストランドの内部スレッドは、この外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きい直径d1’を有し、かつ各外部ストランドの内部スレッドは、この外部ストランドの各外部スレッドの直径d3’よりも大きい直径d1’を有する。
【0087】
そのような外部ストランドは、上記で提示したアーキテクチャ的安定性及び貫通性という利点を示す。特に、中間層及び外部層が不飽和化され、中間層が不完全飽和状態にあり、外部層が完全に不飽和であることは、異なる直径のスレッドを用いることによって得られる。
【0088】
非常に有利なことに、各外部ストランドの各中間スレッドが直径d2’を有し、各外部ストランドの各外部スレッドが直径d3’を有する時に、d2’=d3’である。従って、各外部ストランドの中間層内と外部層内とで同じ直径のスレッドが用いられ、それによってコードの製造中に管理する必要がある異なるスレッドの数が制限される。
【0089】
有利なことに、各外部ストランドは、原位置非ゴム引きタイプのものである。原位置でゴム引きされないということは、コードの外部層のアセンブリの前及びコードのアセンブリの前に、各外部ストランドが様々な層のスレッドで構成され、いずれのポリマー化合物も、とりわけ、エラストマー化合物も持たないことを意味する。
【0090】
本発明によるコードの内部ストランド
【0091】
有利なことに、各内部ストランドの外部層は不飽和化され、好ましくは完全に不飽和である。各内部ストランドの外部層が不飽和化されることにより、有利なことに、エラストマー化合物が各内部ストランドの中心に至るまで深く侵入することが容易になり、それによって各内部ストランドがアタックによる影響を受け難くなる。
【0092】
有利なことに、各内部ストランドの外部層のスレッド間距離は5μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、各内部ストランドの外部層のスレッド間距離は、15μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは35μmよりも大きいか又はそれに等しく、更に好ましくは50μmよりも大きいか又はそれに等しく、非常に好ましくは60μmよりも大きいか又はそれに等しい。
【0093】
各内部ストランドの外部層は、好ましくは完全不飽和状態にあり、すなわち、外部層のN個のスレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(N+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な間隔が外部層内に存在する。言い換えれば、内部ストランドの完全不飽和外部層は、この外部層のスレッド間距離I3の和SI3がこの外部層の外部スレッドの直径d3よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。従って、有利なことに、各内部ストランドの外部層のスレッド間距離の和SI3は、SI3≧d3であるようなものである。和SI3は、外部層内の各対の隣接するスレッドを分離するスレッド間距離の和である。層のスレッド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内でこの層の2つの隣接するスレッドを平均的に分離する最短距離として定義される。従ってスレッド間距離は、外部層内のスレッドを分離する間隔の個数で和SI3を除することによって計算される。
【0094】
各内部ストランドの外部層が完全に不飽和であることにより、エラストマー化合物が各内部ストランドに貫通するのが容易になり、それによって各内部ストランドがアタックによる影響を一層受け難くなる。
【0095】
一部の好ましい実施形態では、各内部ストランドの各内部スレッドは、各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、非常に好ましくは1≦d1/d3≦1.30である。d1>d3であるような直径の使用は、外部層の中を通るエラストマー化合物の貫通性を促進することを可能にする。d1>d3である場合に、非常に好ましくはd1/d3≦1.30であり、それにより、一方で外部層のアーキテクチャ的安定性を制御すること、他方でd1とd3の間の差によって生み出される比較的少量の不飽和化に起因して各内部ストランドの良好な貫通性をより一層有利なものにすることが可能になる。d1=d3であるような直径の使用は、コードの製造において管理すべき異なるスレッドの数を制限することを可能にし、更にd1とd3の間の等値性によって生み出される不飽和化の欠如に起因して本発明をより一層有利なものにすることも可能にする。
【0096】
2層内部ストランド
【0097】
コードの直径と破断強度の間の妥協点にとって好都合な一実施形態では、各内部ストランドは2つの層を有する。この実施形態では、各内部ストランドの外部層は、各内部ストランドの内部層と接触する状態で各内部ストランドの内部層の周りに巻かれる。この実施形態では、各内部ストランドは、2つのそれよりも多くも少なくもないスレッドで構成されたスレッドの集合体を含み、すなわち、このスレッドの集合体は、2つの1つでも3つでもない2つに限った個数のスレッド層を有する。
【0098】
好ましい実施形態では、Q=1、2、3、又は4である。
【0099】
コードの直径を低減することを可能にする実施形態では、Q=1、N=5又は6、好ましくはQ=1及びN=6である。
【0100】
Q=1、Q=2、3、又は4である実施形態に関してコードの破断強度を高めることを可能にする好ましい実施形態では、好ましくは、Q=3又は4である。Q=1であり、かつコードに印加される繰り返し圧縮荷重の効果の存在下で内部ストランドの内部スレッドが内部ストランドから、更にコードからさえも半径方向に飛び出す事態に遭遇するリスクがある実施形態の場合とは異なり、各内部ストランドの内部層内における数個(Q<1)のスレッドの存在によって圧縮力が内部層の複数のスレッドにわたって分散されることから、このリスクを低減することが可能になる。
【0101】
Q>1であるこれらの好ましい実施形態、とりわけ、Q=3又は4であるものでは、コードが不十分にしか貫通を受けない時に、腐食物質が各ストランドに沿って拡散するのを非常に助長する中心毛細管の境界を定めるQ=3又は4つの内部スレッドの間で腐食物質の著しい拡散に遭遇するリスクがある。この欠点は、ストランドをエラストマー化合物による貫通を受けることができるものにし、それによって腐食物質が中心毛細管に接近するのを阻止し、かつ中心毛細管自体が貫通を受けるという最良の場合にこれらの腐食物質がストランドに沿って拡散するのを阻止することによって解消することができる。
【0102】
Q>1である好ましい実施形態では、N=7、8、9、又は10、好ましくはN=8、9、又は10、より好ましくはN=8又は9である。
【0103】
Q>1であるこれらの実施形態では、有利なことに、各内部ストランドは、円筒層を有し、すなわち、Q個の内部スレッドがピッチp1で各内部ストランドの内部層方向に巻かれ、N個の外部スレッドが中間層の周りにピッチp3で各内部ストランドの外部層方向に巻かれ、p1がp3と異なり、及び/又は内部ストランドの内部層方向が内部ストランド外部層方向と異なるストランドである。
【0104】
第1の代替形態では、Q=2、及びN=7又は8、好ましくはQ=2、N=7である。
【0105】
第2の代替形態では、Q=3、及びN=7、8、又は9、好ましくはQ=3、N=8である。
【0106】
第3の代替形態では、Q=4、及びN=7、8、9、又は10、好ましくはQ=4、N=9である。
【0107】
有利なことに、コードの内部層は、コード内部層方向に巻かれ、各内部ストランドの各内部層(Q>1である時)、中間層、及び外部層は、コード内部層方向と同じ巻回方向に巻かれる。
【0108】
有利なことに、コードの外部層は、コード外部層方向に巻かれ、各外部ストランドの各中間層及び外部層は、コード外部層方向と同じ巻回方向に巻かれる。
【0109】
一実施形態では、コードの内部層方向とコードの外部層方向とは同じである。この実施形態では、直前の実施形態の場合とは異なり、コードの内部層の巻回方向と外部層の巻回方向との間で区別をつける必要がないことから製造は比較的容易である。それにも関わらず、内部ストランドの外部層の外部スレッドと外部ストランドの外部層の外部スレッドとの間の接触は比較的長く、それにより、コードのピッチと直径とアーキテクチャとのある一定の組合せの場合に、例えば、内部ストランド間に形成される溝の中への外部ストランドの望ましくない滑り込みによって引き起こされるアセンブリ欠陥が生じる可能性がある。
【0110】
別の実施形態では、コードの内部層方向とコードの外部層方向とは反対方向である。この実施形態では、内部ストランドと外部ストランド間の交差の結果として内部ストランド間に形成される溝の中への外部ストランドの潜在的な望ましくない滑り込みのリスクは低減される。
【0111】
3層内部ストランド
【0112】
コードの破断強度を改善する別の特に有利な実施形態では、各内部ストランドは3つの層を有し、かつ内部層の周りに巻かれたM個の中間スレッドで構成された中間層と、中間層の周りに巻かれたN個の外部スレッドで構成された外部層とを含む。
【0113】
この実施形態では、各内部ストランドの外部層は、各内部ストランドの中間層と接触する状態で各内部ストランドの中間層の周りに巻かれ、各内部ストランドの中間層は、各内部ストランドの内部層と接触する状態で各内部ストランドの内部層の周りに巻かれる。この実施形態では、各内部ストランドは、3つのそれよりも多くも少なくもないスレッドで構成されたスレッドの集合体を含み、すなわち、このスレッドの集合体は、3つの2つでも4つでもない3つに限った個数のスレッド層を有する。
【0114】
有利なことに、中間層のスレッド間距離の和SI2は、d3が各内部ストランドの各外部スレッドの直径である時にSI2<d3、好ましくはSI2≦0.8×d3であるようなものである。外部ストランドと同様の方式で、各内部ストランドの外部層の外部スレッドの直径d3が好ましくは和SI2よりも大きいので、外部スレッドが中間層を貫通するのが防止される。この場合、それによって良好なアーキテクチャ的安定性が保証され、更にエラストマー化合物に対する半径方向通過窓への改変のリスク、及び従って各内部ストランドの良好な貫通性を劣化させるリスクが低減される。和SI2は、中間層内の各対の隣接するスレッドを分離するスレッド間距離の和である。層のスレッド間距離は、コードの主軸線に対して垂直なコードの断面内でこの層の2つの隣接するスレッドを平均的に分離する最短距離として定義される。従って、スレッド間距離は、中間層内のスレッドを分離する間隔の個数で和SI2を除することによって計算される。
【0115】
有利なことに、各内部ストランドの中間層は不飽和化される。
【0116】
好ましくは、各内部ストランドの中間層のスレッド間距離は5μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、各内部ストランドの中間層内のスレッド間距離は、15μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは35μmよりも大きいか又はそれに等しく、更に好ましくは50μmよりも大きいか又はそれに等しく、非常に好ましくは60μmよりも大きいか又はそれに等しい。
【0117】
各内部ストランドの中間層が不飽和化されることにより、エラストマー化合物が各内部ストランドの中心に至るまで深く進入することが有利に容易になり、それによって各内部ストランドがアタックによる影響を受け難くなる。
【0118】
各内部ストランドの貫通性と破断強度の間の妥協点を容易にする実施形態では、各内部ストランドの中間層は不完全に不飽和である。
【0119】
この実施形態では、各内部ストランドの中間層は好ましくは不完全不飽和状態にあり、すなわち、中間層のM個のスレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(M+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な間隔が中間層内に存在しないようなものである。言い換えれば、各内部ストランドの不完全不飽和中間層は、この中間層のスレッド間距離I2の和SI2がこの中間層の中間スレッドの直径d2よりも小さいことを意味する。言い換えれば、内部ストランドの不完全不飽和中間層は、この中間層のスレッド間距離I2の和SI2がこの中間層の中間スレッドの直径d2よりも小さいことを意味する。従って、有利なことに、内部ストランドの中間層のスレッド間距離の和SI2は、SI2<d2であるようなものである。
【0120】
各内部ストランドの中間層が不完全に不飽和であることにより、中間層のアーキテクチャ的安定性を保証することが可能になる。更に、各内部ストランドの中間層が不完全に不飽和であることにより、各内部ストランドが比較的多数の中間スレッドを含み、従って比較的高い破断強度を示すことを保証することが可能になる。
【0121】
各内部ストランドの貫通性を促進する別の実施形態では、各内部ストランドの中間層は不完全に不飽和である。
【0122】
定義により、完全不飽和スレッド層は、この層のX個のスレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(X+1)番目のスレッドを組み入れるのに十分な余地がこの層内に存在し、従って複数のスレッドが互いに接触状態にあること又はないことが可能であるようなものである。この特定の事例では、各内部ストランドの中間層のM個の中間スレッドと同じ直径を有する少なくとも1つの(M+1)番目の中間スレッドを組み入れるのに十分な間隔がこの中間層内に存在する。言い換えれば、内部ストランドの完全不飽和中間層は、この中間層のスレッド間距離I2の和SI2がこの中間層の中間スレッドの直径d2よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。従って、有利なことに、内部ストランドの中間層のスレッド間距離の和SI2は、SI2≧d2であるようなものである。
【0123】
一部の好ましい実施形態では、各内部ストランドの各内部スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、非常に好ましくは1≦d1/d2≦1.30である。d1>d2であるような直径の使用は、中間層の中を通るエラストマー化合物の貫通性を促進することを可能にする。d1>d2である場合に、非常に好ましくはd1/d2≦1.30であり、それにより、一方で中間層のアーキテクチャ的安定性を制御すること、他方でd1とd2の間の差によって生み出される比較的少量の不飽和化に起因して各内部ストランドの良好な貫通性をより一層有利なものにすることが可能になる。d1=d2であるような直径の使用は、コードの製造において管理すべき異なるスレッドの数を制限することを可能にし、更にd1とd2の間の等値性によって生み出される不飽和化の欠如に起因して本発明をより一層有利なものにすることも可能にする。
【0124】
非常に有利なことに、各内部ストランドの各中間スレッドが直径d2を有し、各内部ストランドの各外部スレッドが直径d3を有する時に、d2=d3である。従って、各内部ストランドの中間層内と外部層内とで同じ直径のスレッドが用いられ、それによってコードの製造中に管理する必要がある異なるスレッドの数が制限される。
【0125】
この実施形態の好ましい代替形態では、Q=1、2、3、又は4、好ましくはQ=1、2、又は3、より好ましくはQ=1又は3である。
【0126】
1つの好ましい実施形態ではQ=1である。Q=1であり、かつコードが本発明のものとは異なり不十分な貫通しか受けない実施形態では、コードに印加される繰り返し圧縮荷重の効果の下で各内部ストランドの内部スレッドが、各内部ストランドから、更にコードからさえも半径方向に離脱する事態に遭遇するリスクがある。本発明により、各内部ストランドの優れた貫通に起因して、Q=1であることにも関わらず、エラストマー化合物は、内部ストランドの周りで、とりわけ、内部ストランドの外部層及び中間層の周りでラッピング層のように機能し、繰り返し圧縮荷重の下であっても内部スレッドが抜け出すことはない。
【0127】
Q=1であるこれらの実施形態では、有利なことに、各内部ストランドは、円筒層を有し、すなわち、M個の中間スレッドが内部層の周りにピッチp2で内部ストランド中間層方向に巻かれ、N個の外部スレッドが中間層の周りにピッチp3で内部ストランド外部層方向に巻かれ、p2がp3と異なり、及び/又は内部ストランド中間層方向が内部ストランド外部層方向と異なるストランドである。
【0128】
Q=1である実施形態では、M個の中間スレッドが内部層の周りにピッチp2で巻かれ、N個の外部スレッドが中間層の周りにピッチp3で巻かれ、この場合、ピッチp2及びp3は、0.36≦(p3-p2)/p3≦0.57を有利に満足する。そのような比率(p3-p2)/p3は、各内部ストランド内でエラストマー化合物に対する比較的大きい半径方向通過窓を得ることを可能にする。
【0129】
有利なことに、ピッチp2及びp3は、関係:0.38≦(p3-p2)/p3、好ましくは0.40≦(p3-p2)/p3、より好ましくは0.43≦(p3-p2)/p3、更に好ましくは0.45≦(p3-p2)/p3を満足する。外部ストランドと同様の方式で、比率(p3-p2)/p3が高いほど又は言い換えればp3とp2の間の差が大きいほど、各内部ストランドのアーキテクチャ的安定性は良好である。
【0130】
有利なことに、ピッチp2及びp3は、関係:(p3-p2)/p3≦0.55、好ましくは(p3-p2)/p3≦0.53を満足する。これらの値を下回るところでは、エラストマー化合物に対する半径方向通過窓のサイズは最大であり、各内部ストランドの貫通性を最適化することが可能になる。
【0131】
有利なことに、ピッチp2は、8mm≦p2≦16mm、好ましくは8mm≦p2≦14mm、より好ましくは8mm≦p2≦12mmであるようなものである。
【0132】
有利なことに、ピッチp3は、10mm≦p3≦40mm、好ましくは15mm≦p3≦35mm、より好ましくは15mm≦p3≦25mm、更に好ましくは17mm≦p3≦23mmであるようなものである。
【0133】
これらの好ましい範囲内のピッチp2及びp3は、タイヤ用途に適合する機械的性質、比較的低いコスト、及び比較的軽い直線コード重量を示すコードを得ることを可能にする。
【0134】
1つの好ましい実施形態では、Q=1、M=5又は6、及びN=10、11、又は12、好ましくはQ=1、M=5又は6、N=10又は11、より好ましくはQ=1、M=6、及びN=11である。
【0135】
より有利なことに、Q=1、M=5又は6、N=10又は11であり、各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、かつ各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有する。
【0136】
より有利なことに、Q=1、M=6、N=11であり、各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2よりも大きい直径d1を有し、かつ各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3よりも大きい直径d1を有する。
【0137】
そのような内部ストランドは、上記で提示したアーキテクチャ的安定性及び貫通性という利点を示す。特に、中間層及び外部層が不飽和化され、中間層が不完全飽和状態にあり、かつ外部層が完全に不飽和であるという事実は、異なる直径のスレッドを用いることによって得られる。
【0138】
Q=1である実施形態に関してコードの破断強度を高めることを可能にする好ましい実施形態では、Q=2、3、又は4、好ましくはQ=3又は4である。
【0139】
Q>1であるこれらの実施形態では、有利なことに、各内部ストランドは、円筒層を有し、すなわち、Q個の内部スレッドがピッチp1で内部ストランド内部層方向に巻かれ、M個の中間スレッドが内部層の周りにピッチp2で内部ストランド中間層方向に巻かれ、N個の外部スレッドが中間層の周りにピッチp3で内部ストランド外部層方向に巻かれ、p1、p2、及びp3が各々互いに異なり、及び/又は内部ストランドの隣接層の方向が異なるストランドである。
【0140】
別の好ましい実施形態では、Q=3、M=8又は9、及びN=13、14、又は15、好ましくはQ=3、M=8又は9、N=14又は15、より好ましくはQ=3、M=9、N=14又は15、更に好ましくはQ=3、M=9、及びN=15である。Q=3であり、かつコードが本発明のものとは異なり不十分な貫通しか受けない実施形態では、腐食物質がコードに沿って拡散するのを非常に助長する中心毛細管の境界を定めるQ=3つの内部ストランドの間での腐食物質の著しい拡散に遭遇するリスクがある。コードに印加される繰り返し圧縮荷重の効果の下で各内部ストランドの内部スレッドが、各内部ストランドから、更にコードからさえも半径方向に離脱する事態に遭遇するリスクがある。本発明により、Q=3であり、かつコードが極めて良好な貫通を受ける実施形態では、エラストマー化合物は、腐食物質が中心毛細管に接近するのを阻止し、中心毛細管自体が貫通を受ける最良の場合に腐食物質がコードに沿って拡散するのを阻止する。
【0141】
より有利なことに、Q=3、M=8又は9、N=14又は15であり、各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、かつ各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有する。
【0142】
より有利なことに、Q=3、M=9、N=14又は15であり、各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各中間スレッドの直径d2よりも大きい直径d1を有し、かつ各内部ストランドの内部スレッドは、各内部ストランドの各外部スレッドの直径d3よりも大きい直径d1を有する。
【0143】
そのような内部ストランドは、上記で提示したアーキテクチャ的安定性及び貫通性という利点を示す。特に、中間層及び外部層が不飽和化され、中間層が不完全飽和状態にあり、かつ外部層が完全に不飽和であるという事実は、異なる直径のスレッドを用いることによって得られる。
【0144】
別の有利な実施形態では、各内部ストランドの各中間スレッドは、各外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい直径d2を有し、好ましくは、各内部ストランドの各中間スレッドは、各外部ストランドの各中間スレッドの直径d2’よりも大きい直径d2を有する。
【0145】
一実施形態では、各内部ストランドは、原位置ゴム引きタイプのものである。そのようなストランドは、コードのアセンブリの前に、少なくとも2つの半径方向に隣接するスレッド層の間に、場合によっては半径方向に隣接するスレッド層の各々の間に配置されたポリマー化合物、とりわけ、エラストマー化合物の層を含む。原位置でゴム引きされるそのようなストランドは、とりわけ、WO2010054790に説明されている。
【0146】
別の実施形態では、各内部ストランドは、原位置非ゴム引きタイプのものである。原位置でゴム引きされないということは、コードのアセンブリの前に、各内部ストランドが様々な層のスレッドで構成され、かついずれのポリマー化合物も、とりわけ、エラストマー化合物も持たないことを意味する。
【0147】
本発明によるタイヤ
【0148】
本発明の別の主題は、上記で定義したコードを含むタイヤである。
【0149】
コードは、最も具体的には、「大型車両」、すなわち、地下鉄車両、バス、路上運搬車(貨物車、牽引車、トレーラー)、路外車両、農業車両、又は建設プラント車両、又はその他の輸送車両又は荷役車両のような大型車両から選択された産業車両のためのものである。
【0150】
好ましくは、タイヤは、建設プラントタイプの車両のためのものである。層は、当業者に公知であるように、Wが、Hがタイヤの断面高さであり、Bがタイヤの断面幅であるH/Bという形式にある時にETRTOによって定義される公称偏平率H/Bを表し、H=BであってH及びBが上記で定義したものであるH.00又はB.00という形式にある時にH.00又はB.00を表し、Uが、タイヤを装着することを意図するリム座部の直径をインチを単位として表し、かつRが、タイヤ、ここではラジアルのもののカーカス補強体のタイプを表すWRU形式のサイズを有する。そのような寸法の例は、例えば、40.00 R 57、又は他に59/80 R 63である。
【0151】
好ましくは、U≧35、より好ましくはU≧49、更により好ましくはU≧57である。
【0152】
一実施形態では、タイヤは、2つのビード内に固定されたカーカス補強体を有し、カーカス補強体には、半径方向にクラウン補強体が載っており、クラウン補強体自体には、トレッドが載っており、クラウン補強体は、2つの側壁によってこれらのビードに接合され、カーカス補強体は、上記で定義したコードを少なくとも1つ含む。
【0153】
別の実施形態では、タイヤは、2つのビード内に固定されたカーカス補強体を有し、カーカス補強体には、半径方向にクラウン補強体が載っており、クラウン補強体自体には、トレッドが載っており、クラウン補強体は、2つの側壁によってこれらのビードに接合され、上記で定義したコードを少なくとも1つ含む。
【0154】
有利なことに、カーカス補強体は、各々がタイヤの周方向と80°と90°の間の角度をなす複数のフィラメント状金属カーカス補強要素を含む少なくとも1つのカーカスプライを含む。
【0155】
有利なことに、クラウン補強体は、上記で定義したコードを少なくとも1つ含む作動補強体を含む。
【0156】
有利なことに、作動補強体は、互いに対して実質的に平行に配置されて各々がタイヤの周方向と最大で60°に等しい、好ましくは15°から40°の範囲に及ぶ角度をなし、上記で定義したコードで形成された複数のフィラメント状金属作動補強要素を含む少なくとも1つの作動プライを含む。
【0157】
1つの有利な実施形態では、作動補強体は、少なくとも第1及び第2の作動プライを含み、各第1及び第2の作動プライは、それぞれ、各第1及び第2の作動プライ内で互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2のフィラメント状金属作動補強要素を含み、各第1及び第2のフィラメント状金属作動補強要素は、タイヤの周方向と最大で60°に等しい、好ましくは15°から40°の範囲に及ぶ角度をなし、かつ上記で定義したコードで形成される。
【0158】
有利なことに、クラウン補強体は、互いに対して実質的に平行に配置されたフィラメント状金属保護補強要素を含む少なくとも1つの保護プライを含む保護補強体を含み、各フィラメント状金属保護補強要素は、タイヤの周方向と最大で10°に等しい、好ましくは10°から35°、望ましくは15°から30°の範囲に及ぶ角度をなす。
【0159】
1つの有利な実施形態では、保護補強体は、第1及び第2の保護プライを含み、各第1及び第2の保護プライは、それぞれ、各第1及び第2の保護プライ内で互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2のフィラメント状金属保護補強要素を含み、各第1及び第2のフィラメント状金属保護補強要素は、タイヤの周方向と少なくとも10°に等しい、好ましくは10°から35°、望ましくは15°から30°の範囲に及ぶ角度をなす。
【0160】
好ましい実施形態では、保護補強体は、トレッドと作動補強体の間に半径方向に挟まれる。
【0161】
有利なことに、クラウン補強体は、少なくとも1つの追加プライを含む追加補強体を含み、追加プライは、追加プライ内で互いに対して実質的に平行に配置された追加フィラメント状金属補強要素を含み、各追加フィラメント状金属補強要素は、タイヤの周方向と最大で10°に等しい、好ましくは5°から10°の範囲に及ぶ角度をなす。
【0162】
1つの有利な実施形態では、追加補強体は、第1及び第2の追加プライを含み、各第1及び第2の追加プライは、それぞれ、各第1及び第2の追加プライ内で互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2の追加フィラメント状金属補強要素を含み、各第1及び第2の追加フィラメント状金属補強要素は、タイヤの周方向と最大で10°に等しい、好ましくは5°から10°の範囲に及ぶ角度をなす。
【0163】
本発明は、専ら非限定的な例として与えて図面を参照する以下の説明を読解することからより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【
図1】本発明によるタイヤの周方向に対して垂直な断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による[3×(0.38+(6+11)×0.35)+9×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードのコード軸線(直線で静止状態にあると仮定する)に対して垂直な概略断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による[2×(0.38+(6+11)×0.35)+8×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードのコード軸線(直線で静止状態にあると仮定する)に対して垂直な概略断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態による[4×(0.38+(6+11)×0.35)+10×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードのコード軸線(直線で静止状態にあると仮定する)に対して垂直な概略断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態による[3×(0.38+(6+12)×0.35)+9×(0.38+(6+12)×0.30)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態による[3×(0.38+(6+11)×0.35)+9×(0.30+(5×0.30+11×0.26)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図8】本発明の第6の実施形態による[3×(1+6+12)×0.40+9×(0.32+(6+11)×0.26)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図9】本発明の第7の実施形態による[3×(3+9+15)×0.38+9×(0.45+(6+11)×0.38)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図10】本発明の第8の実施形態による[3×(0.38+(6+11)×0.35)+9×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図11】本発明の第9の実施形態による[3×(0.60+6×0.50+11×0.45)+9×(0.45+(6+11)×0.38)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図12】本発明の第10の実施形態による[3×((2+7)×0.45)+9×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図13】本発明の第11の実施形態による[3×((3+8)×0.42)+9×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図14】本発明の第12の実施形態による[3×((4+9)×0.40)+9×(0.38+(6+11)×0.30)]+0.28コードの
図3のものと同様の図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態によるコードのアセンブリの前の外部ストランドの軸線を含有する平面の上への概略投影図である。
【
図16】
図15の外部ストランドの中間層のスレッドと外部層のスレッドとによって境界が定められた半径方向通過窓を描く領域XVの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0165】
「aとbの間」という表現で表すあらゆる値範囲は、aを超える値からb未満の値まで延びる(すなわち、端点a及びbを除外する)値範囲を表し、それに対して「aからbまで」という表現で表すあらゆる値範囲は、端点「a」から端点「b」に至るまで延びる、すなわち、厳密な端点「a」と「b」を含む値範囲を意味する。
【0166】
本発明によるタイヤの例
【0167】
図には、タイヤのそれぞれ軸線方向(X)、半径方向(Y)、周方向(Z)の通常の向きに対応する座標系X、Y、Zを描いている。
【0168】
タイヤの「円周正中面」Mは、タイヤの回転軸に対して直角であり、各ビードの環状補強構造から等距離のところに位置し、クラウン補強体の中央を通り抜ける平面である。
【0169】
図1及び
図2は、全体的な参照番号10で表記した本発明によるタイヤを描いている。
【0170】
タイヤ10は、建設プラントタイプ、例えば「ダンプトラック」タイプの大型車両のためのものである。すなわち、タイヤ10は、タイプ53/80R63の寸法を有する。
【0171】
タイヤ10は、クラウン補強体14によって補強されたクラウン12と、2つの側壁16と、各々が環状構造体、この事例ではビードスレッド20で補強された2つのビード18とを有する。半径方向にクラウン補強体14にトレッド22が載っており、クラウン補強体14は側壁16によってビード18に接続される。カーカス補強体24は、2つのビード18に固定され、この事例では2つのビードスレッド20の周りに巻かれ、かつタイヤ20の外側に向かうように位置決めされた折り返し部26を含み、これは、この図にはホイールリム28の上に装着された状態で示している。半径方向にカーカス補強体24にクラウン補強体14が載っている。
【0172】
カーカス補強体24は、フィラメント状金属カーカス補強要素31を含んでタイヤ10の周方向Zと80°と90°の間の角度をなすように一方のビード18から他方のものまで延びる少なくとも1つのカーカスプライ30を含む。
【0173】
タイヤ10は、エラストマーで構成されてタイヤ10の半径方向内面34を定義し、更にタイヤ10の内側の空間から発する空気の拡散からカーカスプライ30を保護することを意図する密封プライ32(一般的に「内側ライナ」として公知である)を更に含む。
【0174】
クラウン補強体14は、半径方向にタイヤ10の内側から外側に向けて半径方向にトレッド22の内側に配置された保護補強体36と、半径方向に保護補強体36の内側に配置された作動補強体38と、半径方向に作動補強体38の内側に配置された追加補強体80とを含む。従って、保護補強体36は、半径方向にトレッド22と作動補強体38の間に挟まれる。作動補強体38は、半径方向に保護補強体36と追加補強体80の間に挟まれる。
【0175】
保護補強体36は、第1及び第2の保護プライ42、44を含み、第1のプライ42は、半径方向に第2のプライ44の内側に配置される。各第1及び第2の保護プライ42、44は、それぞれ、各第1及び第2の保護プライ42、44内に互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2のフィラメント状金属保護補強要素43、45を含む。各第1及び第2のフィラメント状金属保護補強要素43、45は、タイヤの周方向Zと少なくとも10°に等しい、好ましくは10°から35°、より好ましくは15°から30°の範囲内の角度をなす。
【0176】
作動補強体38は、第1及び第2の作動プライ46、48を含み、第1のプライ46は、半径方向に第2のプライ48の内側に配置される。各第1及び第2の作動プライ46、48は、それぞれ、各第1及び第2の作動プライ46、48内に互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2のフィラメント状金属作動補強要素47、49を含む。各第1及び第2のフィラメント状金属作動補強要素47、49は、タイヤ10の周方向Zと最大で60°に等しい、好ましくは15°から40°の範囲内の角度をなす。任意的に、第1及び第2のフィラメント状金属作動補強要素47、49は、一方の作動プライから他方のものへと交差される。
【0177】
制限ブロックとも呼び、膨張の機械的応力に少なくとも部分的に反応するという機能を有する追加補強体80は、第1及び第2の追加プライ82、84を含み、各第1及び第2の追加プライ82、84は、それぞれ、各第1及び第2の追加プライ82、84内に互いに対して実質的に平行に配置された第1及び第2の追加フィラメント状金属補強要素83、85を含む。各第1及び第2の追加フィラメント状金属補強要素83、85は、タイヤ10の周方向Zと最大で10°に等しい、好ましくは5°から10°の範囲内の角度をなす。追加フィラメント状金属補強要素は、例えば、FR 2 419 181又はFR 2 419 182に説明されているものと同様である。
【0178】
一実施形態では、各第1及び第2のフィラメント状金属補強要素47、49は、本発明によるコード、例えば下記で説明するコード50によって形成される。
【0179】
別の実施形態では、各第1及び第2のフィラメント状金属カーカス補強要素31は、本発明によるコード、例えば下記で説明するコード50によって形成される。
【0180】
更に別の実施形態では、各第1及び第2のフィラメント状金属作動補強要素47、49及び各第1及び第2のフィラメント状金属カーカス補強要素31は、本発明によるコードによって形成され、これらの要素がフィラメント状金属補強要素31、47、又は49のいずれであるかに従ってこれらのコードが同じか又は異なることが可能である。
【0181】
本発明の第1の実施形態によるコード
【0182】
図3は、本発明の第1の実施形態によるコード50を描いている。
【0183】
コード50は金属であり、2つの円筒層を有する多重ストランドタイプのものである。従って、コード50を構成する2つのそれよりも多くも少なくもないストランド層が存在することが理解されるであろう。これらのストランド層は、隣接し、かつ同心のものである。コード50には、タイヤの中に組み込まれていない時にはポリマー化合物及びエラストマー化合物が存在しない。
【0184】
コード50は、コード50の内部層CIと外部層CEを含む。内部層CIは、螺旋状に巻かれたK>1個の内部ストランドTIで構成される。この事例ではK=2、3、又は4、好ましくはK=3又は4であり、ここではK=3である。外部層CEは、コードの内部層CIの周りに巻かれたL>1個の外部ストランドTEで構成される。この特定の事例では、L=7、8、9、又は10、特に好ましくはL=8、9、又は10、より好ましくはL=8又は9であり、ここではL=9である。
【0185】
コード50は、単一ラッピングスレッドで構成されたラッパーFを更に含む。
【0186】
内部層CIは、コード内部層方向に、この事例ではZにピッチpi、ここではpi=80mmで螺旋状に巻かれ、外部層CEは、コード外部層方向に、この事例ではZにピッチpe、ここではpi=100mmで螺旋状に巻かれる。piはpeとは異なるので、コードは、円筒形の層を有する。
【0187】
ラッパーFは、この事例では外部層CEの巻回方向と反対のラッパー巻回方向、この事例ではS方向に外部層CEの周りに巻かれる。ラッピングスレッドは、2mm≦pf≦10mm、好ましくは3mm≦pf≦8mmであるようなピッチpfで外部ストランドTEの周りに螺旋状に巻かれる。ここではPF=5.1mmである。
【0188】
内部層CIと外部層CEとで構成されたアセンブリ、すなわち、ラッパーFのないコード50は、直径D=7.0mmを有する。
【0189】
コード50の外部層CEは不飽和化される。2つの隣接する外部ストランドTEを分離する平均ストランド間距離Eは、30μmよりも大きいか又はそれに等しい。好ましくは、2つの隣接する外部ストランドTEを分離する平均ストランド間距離Eは、70μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは100μmよりも大きく/それに等しく、更に好ましくは150μmよりも大きく/それに等しく、非常に好ましくは200μmよりも大きい/それに等しい。この実施形態では、外部ストランドの外部層のストランド間距離は、200μmよりも大きいか又はそれに等しい。この場合、E=255μmである。
【0190】
各内部ストランドTIは直径DIを有し、各外部ストランドTEは直径DEを有する。この特定の事例では、DI=1.78mm及びDE=1.58mmである。
【0191】
コード50の外部層CEは不飽和化される。特に、SIE=9×0.255=2.3mmであり、この値は、DE=1.58mmよりも高い値である。
【0192】
コード50の内部ストランドTI
【0193】
各内部ストランドTIは、少なくとも2つの層を有する。この事例では、各内部ストランドTIは3つの層を有する。各内部ストランドTIは、3つのそれよりも多くも少なくもない層を含み、この事例ではそれで構成される。
【0194】
各内部ストランドTIは、Q個の内部スレッドF1で構成された内部層C1と、内部層C1の周りに螺旋状に巻かれたM個の中間スレッドF2で構成された中間層C2と、内部層C1及び中間層C2の周りに螺旋状に巻かれて中間層C2と接触状態にあるN個の外部スレッドF3で構成された外部層C3とを含む。
【0195】
Q=1、2、3、又は4、好ましくはQ=1、2、又は3であり、ここではより好ましくはQ=1である。
【0196】
Q=1、M=5又は6、及びN=10、11、又は12である場合に、好ましくはQ=1、M=5又は6、及びN=10又は11であり、ここではQ=1、M=6、及びN=11である。
【0197】
内部スレッドF1は、無限ピッチを有する。
【0198】
各内部ストランドTIの中間層C2は、各内部ストランドTIの内部層C1の周りに巻回方向Zに巻かれる。M個の中間スレッドF2は、内部スレッドF1の周りに8mm≦p2≦16mm、好ましくは8mm≦p2≦14mmであるようなピッチp2で螺旋状に巻かれる。ここでは、p2=14mmである。
【0199】
各内部ストランドTIの外部層C3は、各内部ストランドTIの内部層C1及び中間層C2の周りに巻回方向Zに巻かれる。N個の外部スレッドF3は、M個の中間スレッドF2の周りに10mm≦p3≦40mm、好ましくは15mm≦p3≦35mm、より好ましくは15mm≦p3≦25mm、更に好ましくは17mm≦p3≦23mmであるようなピッチp3で螺旋状に巻かれる。ここでは、p3=20mmである。
【0200】
p1はp2と異なり、p2はp3と異なるので、各内部ストランドTIは円筒層状である。
【0201】
各内部ストランドTIの中間層C2は不飽和化され、不完全に不飽和である。M個の中間スレッドを平均的に分離する中間層C2のスレッド間距離I2は、5μmよりも大きいか又はそれに等しい。スレッド間距離I2は、好ましくは10μmよりも大きいか又はそれに等しく、ここでは11.6μmに等しい。中間層C2は不完全に不飽和であるので、中間層C2のスレッド間距離I2の和SI2は、中間層C2の中間スレッドF2の直径d2よりも小さい。ここでは、和SI2=6×0.0116=0.07mmであり、この値は、d2=0.35mmよりも厳密に小さい。
【0202】
中間層C2のスレッド間距離I2の和SI2は、外部層C3の外部スレッドF3の直径d3よりも小さく、好ましくは0.8×d3よりも小さいか又はそれに等しい。ここでは、和SI2=6×0.0116=0.07mmであり、この値は、d3=0.35mmよりも厳密に小さい。
【0203】
各内部ストランドTIの外部層C3は不飽和化され、完全に不飽和である。N個の外部スレッドを平均的に分離する外部層C3のスレッド間距離I3は、5μmよりも大きいか又はそれに等しい。スレッド間距離I3は、好ましくは15μmよりも大きいか又はそれに等しく、35μmよりも大きいか又はそれに等しく、この実施形態では45μmに等しい。外部層C3のスレッド間距離I3の和SI3は、外部層C3の外部スレッドF3の直径d3よりも大きいか又はそれに等しい。ここでは、和SI3=11×0.045=0.50mmであり、この値は、d3=0.35mmよりも厳密に大きい。
【0204】
各内部ストランドTIの各内部スレッド、中間スレッド、及び外部スレッドは、それぞれ、直径d1、d2、及びd3を有する。各内部ストランドTIの各内部スレッド直径d1、中間スレッド直径d2、及び外部スレッド直径d3は、0.15mmから0.60mm、好ましくは0.20mmから0.50mm、より好ましくは0.25mmから0.45mm、更に好ましくは0.28mmから0.42mmの範囲に及ぶ。
【0205】
各内部ストランドTIの内部スレッドF1は、各内部ストランドTIの各中間スレッドF2の直径d2よりもよりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、非常に好ましくは1≦d1/d2≦1.30である。各内部ストランドTIの内部スレッドF1は、各内部ストランドTIの各外部スレッドF3の直径d3よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、非常に好ましくは1≦d1/d3≦1.30である。各内部ストランドTIの各中間スレッドF2の各直径d2及び各内部ストランドTIの各外部スレッドF3の各直径d3は、d2=d3であるようなものである。
【0206】
この事例では、d1>d2及びd1>d3、d1/d2=d1/d3=1.27、並びにd1=0.38mm、d2=d3=0.35mmである。
【0207】
コード50の外部ストランドTE
【0208】
各外部ストランドTEは3つの層を有する。従って、各外部ストランドTEは、この事例では3つのそれよりも多くも少なくもない層で構成される。
【0209】
各外部ストランドTEは、Q’=1個の内部スレッドで構成された内部層C1’と、内部層C1’の周りに螺旋状に巻かれたM’個の中間スレッドF2’で構成された中間層C2’と、内部層C1’及び中間層C2’の周りに螺旋状に巻かれ、中間層C2’と接触状態にあるN’’個の外部スレッドF3’で構成された外部層C3’とを含む。
【0210】
Q’=1、M’=5又は6、及びN’=10、11、又は12であり、ここでは、好ましくはQ’=1、M’=5又は6、及びN’=10又は11であり、ここではQ’=1、M’=6、N’=11である。
【0211】
内部スレッドF1’は、無限ピッチを有する。
【0212】
各外部ストランドTEの中間層C2は、各外部ストランドTEの内部層C1’の周りに巻回方向Zに巻かれる。M’個の中間スレッドF2’は、内部スレッドF1’の周りに8mm≦p2’≦16mm、好ましくは8mm≦p2’≦14mm、更に好ましくは8mm≦p2’≦12mmであるようなピッチp2’で螺旋状に巻かれる。ここでは、p2’=10mmである。
【0213】
各外部ストランドTEの外部層C3’は、各外部ストランドTEの中間層C2’の周りに巻回方向Zに巻かれる。N’’個の外部スレッドF3’は、M’個の中間スレッドF2’の周りに10mm≦p3’≦40mm、好ましくは15mm≦p3’≦35mm、より好ましくは15mm≦p3’≦25mm、更に好ましくは17mm≦p3’≦23mmであるようなピッチp3’で螺旋状に巻かれる。ここでは、p3’=20mmである。
【0214】
p1’はp2’と異なり、p2’はd3’と異なるので、各外部ストランドTEは円筒層状である。
【0215】
ピッチp2’及びp3’は、0.36≦(p3’-p2’)/p3’≦0.57を満足する。
【0216】
0.38≦(p3’-p2’)/p3’、好ましくは0.40≦(p3’-p2’)/p3’、より好ましくは0.43≦(p3’-p2’)/p3’、更に好ましくは0.45≦(p3’-p2’)/p3’である。
【0217】
(p3’-p2’)/p3’≦0.55、好ましくは(p3’-p2’)/p3’≦0.53である。
【0218】
この事例では、(p3’-p2’)/p3’=0.50である。
【0219】
各外部ストランドTEの中間層C2’は不飽和化され、不完全に不飽和である。M’個の中間スレッドを平均的に分離する中間層C2’のスレッド間距離I2’は、5μmよりも大きいか又はそれに等しい。スレッド間距離I2’は、好ましくは15μmよりも大きいか又はそれに等しく、35μmよりも大きいか又はそれに等しく、この実施形態では35.4μmに等しい。中間層C2’は不完全に不飽和であるので、中間層C2’のスレッド間距離I2’の和SI2’は、中間層C2’の中間スレッドF2’の直径d2’よりも小さい。ここでは、和SI2’=6×0.0354=0.21mmであり、この値は、d2’=0.30mmよりも厳密に小さい。
【0220】
更に、中間層C2’のスレッド間距離I2’の和SI2’は、外部層C3’の外部スレッドF3’の直径d3’よりも小さく、好ましくは0.8×d3’よりも小さいか又はそれに等しい。ここでは、和SI2’=6×0.0354=0.21mmであり、この値は、d3’=0.30mmよりも厳密に小さい。
【0221】
各外部ストランドTEの外部層C3’は不飽和化され、完全に不飽和である。N’’個の外部スレッドを平均的に分離する外部層C3’のスレッド間距離I3’は、5μmよりも大きいか又はそれに等しい。スレッド間距離I3’は、15μmよりも大きいか又はそれに等しく、より好ましくは35μmよりも大きいか又はそれに等しく、更に好ましくは50μmよりも大きいか又はそれに等しく、この実施形態では55.4μmに等しい。外部層C3’のスレッド間距離I3’の和SI3’は、外部層C3’の外部スレッドF3’の直径d3’よりも大きい。ここでは、和SI3’=11×0.0554=0.61mmであり、この値は、d3’=0.30mmよりも厳密に大きい。
【0222】
各外部ストランドTEの各内部スレッド、中間スレッド、及び外部スレッドは、それぞれ、直径d1’、d2’、及びd3’を有する。各内部ストランドTIの内部スレッド直径d1’、中間スレッド直径d2’、及び外部スレッド直径d3’は、0.15mmから0.60mm、好ましくは0.20mmから0.50mm、より好ましくは0.25mmから0.45mm、更に好ましくは0.28mmから0.42mmの範囲に及ぶ。
【0223】
各外部ストランドTEの内部スレッドF1’は、各外部ストランドTEの各中間スレッドF2’の直径d2’よりもよりも大きいか又はそれに等しい直径d1’を有し、非常に好ましくは1≦d1’/d2’≦1.30である。各外部ストランドTEの内部スレッドF1’は、各外部ストランドTEの各外部スレッドF3’の直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1’を有し、非常に好ましくは1≦d1’/d3’≦1.30である。各外部ストランドTEの各中間スレッドF2’の各直径d2’及び各外部ストランドTEの各外部スレッドF3’の各直径d3’は、d2’=d3’であるようなものである。
【0224】
この事例では、d1’>d2’及びd1’>d3’、d1’/d2’=d1’/d3’=1.27、並びにd1’=0.38mm、d2’=d3’=0.30mmである。
【0225】
各内部ストランドTIの各内部スレッドF1は、各外部ストランドTEの各内部スレッドF1’の直径d1’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、好ましくは、各内部ストランドTIの各内部スレッドF1は、各外部ストランドTEの各内部スレッドF1’の直径d1’に等しい直径d1を有する。ここでは、d1=d1’=0.38mmである。
【0226】
各内部ストランドTIの各内部スレッドF1は、各外部ストランドTEの各中間スレッドF2’の直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、好ましくは、各内部ストランドTIの各内部スレッドF1は、各外部ストランドTEの各中間スレッドF2’の直径d2’よりも大きい直径d1を有する。ここでは、d1=0.38mm>d2’=0.30mmである。
【0227】
各内部ストランドTIの各内部スレッドF1は、各外部ストランドTEの各外部スレッドF3’の直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d1を有し、好ましくは、各内部ストランドTIの各内部スレッドF1は、各外部ストランドTEの各外部スレッドF3’の直径d3’よりも大きい直径d1を有する。ここでは、d1=0.38mm>d3’=0.30mmである。
【0228】
各内部ストランドTIの各中間スレッドF2は、各外部ストランドTEの各中間スレッドF2’の直径d2’よりも大きいか又はそれに等しい直径d2を有する。好ましくは、ここでは、d2=0.35mm>d2’=0.30mmである。
【0229】
各内部ストランドTIの各外部スレッドF3は、各外部ストランドTEの各外部スレッドF3の直径d3’よりも大きいか又はそれに等しい直径d3を有する。好ましくは、ここでは、d3=0.35mm>d3’=0.30mmである。
【0230】
各スレッドは、Rmと表記する2500MPa≦Rm≦3100MPaであるような破断強度を有する。これらのスレッドのための鋼は、SHT(「超高張力」)級のものと呼ばれる。上級スレッド、例えばUT(「超張力」)級又はMT(「メガ張力」)級のものを用いることができるのと全く同様に、他のスレッド、例えば低級スレッド、例えばNT(「標準張力」)級又はHT(「高張力」)級のものを用いることができる。
【0231】
本発明によるコードを製造する方法
【0232】
本発明によるコードは、当業者に公知の段階を含む方法を用いて製造される。
【0233】
以下の段階を用いて内部ストランドを製造するための段階では、好ましくは、以下がインラインでかつ連続して実施される:
-まず最初に、内部層C1のQ個の内部スレッドF1をピッチp1でZ方向にケーブリングによって組み立てて第1の組み立て点で内部層C1を形成する第1の段階であって、Q=1である実施形態ではこの第1の組み立てる段階が省略される上記第1の段階;
-それに続いてM個の中間スレッドF2を内部層C1のQ個の内部スレッドF1の周りにピッチp2でZ方向にケーブリング又はツイスティングによって組み立てて第2の組み立て点で中間層C2を形成する第2の段階;
-それに続いてN個の外部スレッドF3を中間層C2のM個の中間スレッドF2の周りにピッチp3でZ方向にケーブリング又はツイスティングによって組み立てて第3の組み立て点で外部層C3及び各内部ストランドTIを形成する第3の段階;
-好ましくは最終ツイスト-バランス調整段階。
【0234】
以下の段階を用いて外部ストランドを製造する方法では、好ましくは、以下がインラインでかつ連続して実施される:
-まず最初に、M’個の中間スレッドF2’を内部層C1’のQ’=1個の内部スレッドF1’の周りにピッチp2’でZ方向にケーブリングによって組み立てて第1の組み立て点で中間層C2’を形成する第1の段階;
-それに続いてN’’個の外部スレッドF3’を中間層C2’のM’個の中間スレッドF2’の周りにピッチp3’でZ方向にケーブリングによって組み立てて第2の組み立て点で外部層C3’及び各外部ストランドTEを形成する第2の段階;
-好ましくは最終ツイスト-バランス調整段階。
【0235】
ここでは「ツイスト-バランス調整」は、当業者に公知であるように、外部層における場合と同様に中間層においてもストランドの各スレッドに印加される残存トルク(又は捻りの弾性回復)の相殺を意味する。
【0236】
この最終ツイスト-バランス調整段階の後に、各ストランドの製造は完了する。各ストランドは、多重ストランドコードを得るために基本ストランドをケーブリングによって組み立てるその後の作動の前に保管に向けて1つ又は2つ以上の受け入れリールの上に巻かれる。
【0237】
内部層CIを製造する段階では、K個の内部ストランドTIが、ピッチpiでのZ方向のケーブリングによって組み立てられて第1の組み立て点で内部層CIが形成される。
【0238】
次に、その後の製造段階では、L個の外部ストランドTEが、内部層CIの周りにピッチpeでZ方向にケーブリングすることによって組み立てられて層CIとCEとのアセンブリが形成される。
【0239】
場合により、最終アセンブリ段階では、ラッパーFが、先に得られたアセンブリの周りにピッチpfでS方向に巻かれる。
【0240】
コードは、次に、ラジアルタイヤのクラウン補強体を製造するために従来から用いられている天然ゴムと補強充填材としてのカーボンブラックとに基づく公知の組成物から形成された合成繊維の中にスキミングによって組み込まれる。基本的に、この化合物は、エラストマー及び補強充填材(カーボンブラック)に加えて、抗酸化剤、ステアリン酸、伸展油、接着促進剤としてのナフテン酸コバルト、及び最終的な加硫系(硫黄、促進剤、及びZnO)を含有する。
【0241】
これらのコードによって補強された合成繊維は、コードのいずれかの側に重畳されて包含的に1mmと4mmの間の厚みをそれぞれ有するエラストマー化合物の2つの薄層から形成されたエラストマー化合物母材を有する。スキム-コーティングピッチ(コードがエラストマー化合物繊維に敷かれるピッチ)は、4mmから8mmの範囲に及ぶ。
【0242】
これらの合成繊維は、次に、当業者には他に公知の段階を有するタイヤを製造する方法中にクラウン補強体に作動プライとして用いられる。
【0243】
本発明の第2の実施形態によるコード
【0244】
図4は、本発明の第2の実施形態によるコード50’を描いている。第1の実施形態のものと同様の要素を同じ参照番号で表記している。
【0245】
上記で説明した第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態によるコード50’は、K=2及びL=8であるようなものである。
【0246】
本発明の第3の実施形態によるコード
【0247】
図5は、本発明の第3の実施形態によるコード50’’を描いている。第1の実施形態のものと同様の要素を同じ参照番号で表記している。
【0248】
上記で説明した第1の実施形態とは異なり、第3の実施形態によるコード50’’は、K=4及びL=10であるようなものである。
【0249】
下記の表Aは、様々なコード50、50’、及び50’’の特性を要約している。
【0250】
【0251】
本発明の第4から第12の実施形態によるコード
【0252】
図6から
図14は、本発明の第4から第12の実施形態によるコード51から59を描いている。
【0253】
本発明の第4から第12の実施形態によるコード51から59の特徴を下記の表B及び表Cに要約している。
【0254】
【0255】
【0256】
比較試験
【0257】
エラストマー化合物によるストランドの貫通性のインジケータ
【0258】
エラストマー化合物による貫通を受けるストランドの能力が、以下の試験において中間層C2’の2つの隣接するスレッドF2’と外部層C3’の2つの隣接するスレッドF3’とによって形成された半径方向通過窓のサイズを模擬することによって決定された。そのような窓は、外部ストランドの主軸線Pに沿う外部ストランドの概略図を描く
図15と、上記で定義した半径方向通過窓Sを描く
図16とに例示されている。
【0259】
ストランドの貫通性のそのようなインジケータは、空気に対するストランドの不透過性のイメージを与える。特に、窓のサイズが大きいほど、貫通性インジケータは高く、エラストマー化合物はストランドに貫通し易く、ストランドは空気に対してより高い不透過性を有する。一定圧力下で所与の期間にわたって試験試料に沿って通過する空気の容積を測定することによって空気に対する試験されるストランド又はコードの長手方向透過性を決定することを可能にする透過性試験を用いて透過性を決定することもできると考えられる。当業者に公知のそのような試験の原理は、ストランド又はコードを空気に対して不透過性のものにするためのストランド又はコードの処理の有効性を実証することであり、例えばASTM D2692-98規格に説明されている。そのような試験は、製造時の及び未経年劣化のストランド又はコードに対して実施される。未処理のストランド又はコードは、コーティング化合物と呼ぶエラストマー化合物で事前に外側を被覆される。この目的を果たすために、平行に敷かれた10個のストランド又はコードの列(コード間距離:20mm)が、未処理状態にあるジエンエラストマー化合物からなり、各々が5mmの厚みを有する2つの層又は「スキム」(80mm×200mmの大きさの2つの四角形)の間に配置され、次にストランド又はコードがモールド内に配置される時に直線で延びることを保証するために締め付けモジュールを用いて十分な張力(例えば3daN)下に保たれた状態で、これら全てがモールド内に固定され、続いて120℃前後の温度及び15バールの圧力で10時間から12時間前後にわたって加硫(硬化)される(80mm×200mmの大きさの長方形ピストン)。その後、全体がモールドから取り出され、こうして被覆されたストランド又はコードの10個の試験試料は、特性評価に向けて7mm×7mm×60mmの大きさの直方体の形状へと切り抜かれる。コーティングエラストマー化合物として用いられる化合物は、天然(コロイド状)ゴムとカーボンブラックN330(65phr)とに基づき、更に硫黄(7phr)、スルフェンアミド促進剤(1phr)、ZnO(8phr)、ステアリン酸(0.7phr)、抗酸化剤(1.5phr)、ナフテン酸コバルト(1.5phr)(phrはエラストマー100重量部当たりの重量部を意味する)といった通常の添加剤を含有するタイヤで従来から用いられているジエンエラストマー化合物であり、コーティングエラストマー化合物のE10弾性率は、10MPa前後である。試験は、硬化状態にある周囲エラストマー化合物(又はコーティングエラストマー化合物)で上記に従って被覆された6cm長のストランド又はコードに対して、ストランド又はコードの入口端部の中に1バールの圧力で空気を注入し、出口端部で流量計(例えば0cm3/分から500cm3/分に較正された)を用いて空気の容積を測定するという手法で実施される。測定中に、ストランド又はコードの長手方向軸線に沿って一方の端部から他方の端部へと通過する空気の量のみが測定によって捉えられるように、ストランド又はコードのサンプルは、圧縮気密シール(例えば高密発泡体又はゴムで作られたシール)内に固定され、気密シール自体の気密性は、固体エラストマー化合物試験試料、すなわち、ストランドとコードの両方が不在のものを用いて事前に検査される。ストランド又はコードの長手方向の不透過性が高いほど、測定される平均空気流量(10個の試料にわたって平均された)は小さくなる。測定値は、±0.2cm3/分の精度で取得されるので、0.2cm3/分よりも小さいか又はそれに等しい測定値はゼロと見なされ、これらの測定値は、軸線(すなわち長手方向)に沿って気密(完全に気密)なものとして説明することができるストランド又はコードに対応する。
【0260】
それにも関わらず、ストランドを評価することができる速さの目的で、本発明者は、透過性試験よりも窓Sの模擬及び計算を選択する。
【0261】
コード50のピッチp3’による外部ストランドに対する貫通性インジケータの評価
【0262】
本発明によるコード50の外部ストランドに類似する様々な外部ストランドが、様々なp3’値に対してp2’値を変化させ、コードの全ての他の構造的特徴を上記の説明と比較して変わらないままに留めることによって模擬された。
【0263】
これらの模擬の結果は、様々な表1から表5において、各事例において(p3’-p2’)/p3’=0.30であるような対照ストランドに対してベース100で照合された。すなわち、試験されるストランドに対する窓サイズ値St及び対照ストランドに対する窓サイズ値S0に関して、貫通性インジケータは、St*100/S0に等しい。従って、100よりも高い結果は、試験されるストランドが、対応する対照ストランドよりも優れた貫通性を示すことを意味する。窓サイズは、貫通性インジケータが120よりも大きいか又はそれに等しい時、すなわち、試験されるストランド内の窓サイズが対照ストランドのものよりも20%高い時に有意に高いと推定される。
【0264】
各表1から表5は、それぞれ、15、17、20、23、25mmに等しいピッチp3’に対応する。
【0265】
スレッド間距離I2’は、p2’が長くなる時に長くなるが、半径方向通過窓に対する最大値は、必ずしも最高値ではないI2’値に対して得られることに注目されたい。すなわち、本発明を実施する前では、I2’が低いほどストランドの貫通性が低いという仮定から始める当業者は、I2’に対して比較的低い値を生じるp2’値に対する最大貫通性を予測するのが困難であると考えられる。
【0266】
0.36から0.57の範囲に及ぶ比率(p3’-p2’)/p3’に対する間隔の範囲内では、試験される各p3’値に関して、貫通性インジケータに対する値は、対応する対照ストランドに対して得られるものよりも有意に高い。
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
コード50’、50’’及び51から59の外部ストランドに対する貫通性インジケータの評価
【0272】
本発明の第1の実施形態によるコード50と同様の方法で、本発明の様々な実施形態によるコード52からコード59の様々な外部ストランドが、p3’の値を上記で説明した値に固定する一方でp2’の値を変化させ、各コードの全ての他の構造的特徴を上記の説明と比較して変わらないままに留めることによって模擬された。
【0273】
コード50’、50’’、及び51の外部ストランドはコード50のものと同じであるので結論は変わらず、すなわち、0.36から0.57の範囲に及ぶ比率(p3’-p2’)/p3’に対する間隔の範囲内では、試験される各p3’値に関して、貫通性インジケータに対する値は、対応する対照ストランドに対して得られるものよりも有意に高い。
【0274】
これらの模擬の結果は、様々な表6から表10において、各事例において(p3’-p2’)/p3’=0.30であるような対照ストランドに対してベース100で照合された。すなわち、試験されるストランドに対する窓サイズ値St及び対照ストランドに対する窓サイズ値S0に関して、貫通性インジケータはSt*100/S0に等しい。従って、100よりも高い結果は、試験されるストランドが、対応する対照ストランドよりも優れた貫通性を示すことを意味する。窓サイズは、貫通性インジケータが120よりも大きいか又はそれに等しい時、すなわち、試験されるストランド内の窓サイズが対照ストランドのものよりも20%高い時に有意に高いと推定される。
【0275】
スレッド間距離I2’は、p2’が長くなる時に長くなるが、半径方向通過窓のサイズに対する最大値は、必ずしも最高値ではないI2’値に対して得られることに注目されたい。従って、本発明を実施する前では、I2’が低いほどストランドの貫通性が低いという仮定から始める当業者は、I2’に対して比較的低い値を生じるp2’値に対する最大貫通性を予測するのが困難であると考えられる。
【0276】
0.36から0.57の範囲に及ぶ比率(p3’-p2’)/p3’に対する間隔の範囲内では、試験される各p3’値に関して、貫通性インジケータに対する値は、対応する対照ストランドに対して得られるものよりも有意に高い。
【0277】
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
表6から表10は、様々なコード構成に関して、外部ストランドの中へのエラストマー化合物の貫通、及び従ってこのエラストマー化合物が各内部ストランドに接近する能力が、(p3’-p2’)/p3’=0.30である対照コードと比較して0.36から0.57の範囲に及ぶ比率(p3’-p2’)/p3’では有意に改善されることを示している。
【0283】
勿論、本発明は、上述の例示的実施形態に制約されない。
【0284】
産業的実現可能性、コスト、及び全体的な性能の理由から、本発明は、従来の円形断面を有する線形スレッド、すなわち、真直ぐなスレッドを用いて実施することが好ましい。
【0285】
上記で説明又は構想した様々な実施形態の特性をこれらの特性が互いに適合するという条件の下で組み合わせることも可能であろう。
【符号の説明】
【0286】
50 コード
E 平均ストランド間距離
F ラッパー
TE 外部ストランド
TI 内部ストランド