(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】電気スラスタを備えた地球周回衛星のための操作システム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/24 20060101AFI20231113BHJP
B64G 1/40 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
B64G1/24 Z
B64G1/40 500
B64G1/40 600
(21)【出願番号】P 2021113414
(22)【出願日】2021-07-08
(62)【分割の表示】P 2018514270の分割
【原出願日】2016-09-19
【審査請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2015-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グロゴウスキ、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】オースティン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】レンタティ、アンドレ
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/138592(WO,A2)
【文献】特開平11-291998(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02666723(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02660154(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/24
B64G 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビークル上にスラスタを装着するためのシステムにおいて、第1のスラスタ装着構造体を備え、
前記第1のスラスタ装着構造体は、
前記ビークルに取り付けられている第1の回転ジョイントであって、第1のブラケットを介して前記ビークルに接続され、及び、ある軸の周りに回転する、第1の回転ジョイントと、
前記第1の回転ジョイントに直接接続されている第1のブームであって、前記第1の回転ジョイントは、回転するように前記第1のブームを枢動させる、第1のブームと、
前記第1のブームに接続され、及び、第1の軸線において回転する、第2の回転ジョイントと、
前記第2の回転ジョイントに接続されており、また、前記第1の軸線に対して垂直な第2の軸線において回転する第3の回転ジョイントであって、前記第2の回転ジョイントは、回転するように前記第3の回転ジョイントを枢動させる、第3の回転ジョイントと、
前記第3の回転ジョイントに直接接続されている、矩形の第1のスラスタ・パレットであって、前記第3の回転ジョイントは、第1の載置ブラケットを介して前記第1のスラスタ・パレットの矩形の面の長い縁部に沿って前記第1のスラスタ・パレットに取り付けられ、及び、前記第3の回転ジョイントは、回転するように前記第1のスラスタ・パレットを枢動させる、第1のスラスタ・パレットと、
前記第1のスラスタ・パレットに固定して取り付けられている第1及び第2のスラスタとを備え、
前記第1のスラスタ・パレットは格納位置と配備位置との間で構成することができ、前記格納位置では、前記第1のブームは、前記ビークルの隣接する面に対して実質的に平行に配置され
、
前記格納位置にある時には前記第1のブームが前記ビークルに対して実質的に同一平面上に位置決めされるようになっており、前記第1のスラスタ・パレットは、前記第1のブームの長さの一定の部分と少なくとも部分的に重なるように位置決めされる、システム。
【請求項2】
前記第1のスラスタ・パレットは、前記格納位置にある時には前記ビークルの隣接する面に対して同一平面上にある、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スラスタは、前記格納位置にある時には前記ビークルに対して実質的に垂直の方向に面している、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のスラスタ装着構造体は、ステーション・キーピング位置に配置され、前記ステーション・キーピング位置にある時には前記第1のブームが前記ビークルに対して平行でなく位置決めされるようになっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記スラスタは、前記スラスタによって発生されるスラスト・ベクトルが前記ビークルの重心を通る方を向く、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のスラスタ装着構造体は、軌道上昇位置に配置され、前記軌道上昇位置にある時には前記第1のブームが前記ビークルに対して実質的に垂直に位置決めされるようになっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のスラスタ・パレットは、前記軌道上昇位置にある時には、前記ビークルに対して実質的に平行の方向を向いている、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記スラスタは、前記軌道上昇位置にある時には、前記ビークルから間隔を離して配置された距離にある、
請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の軸線は、前記ビークルのロール軸又は前記ビークルのヨー軸のうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の軸線は、前記ビークルのピッチ-ヨー平面又はピッチ-ロール平面のどこかにおいて、前記第1の軸線に対して垂直である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の回転ジョイント及び前記第2の回転ジョイントは、電動回転ジョイントである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記スラスタは、電気スラスタである、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記ビークルは衛星である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第2のスラスタは、前記第1のスラスタと実質的に同一である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ビークルに取り付けられている第4の回転ジョイントであって、第2のブラケットを介して前記ビークルに接続され、及び、ある軸の周りを回転する、第4の回転ジョイントと、
前記第4の回転ジョイントに直接接続されている第2のブームであって、前記第4の回転ジョイントは、回転するように前記第2のブームを枢動させる、第2のブームと、
前記第2のブームに接続され、及び、前記第1の軸線において回転する、第5の回転ジョイントと、
前記第5の回転ジョイントに接続されており、また、前記第2の軸線において回転する第6の回転ジョイントであって、前記第5の回転ジョイントは、回転するように前記第6の回転ジョイントを枢動させる、第6の回転ジョイントと、
前記第6の回転ジョイントに直接接続されている、矩形の第2のスラスタ・パレットであって、前記第6の回転ジョイントは、第2の載置ブラケットを介して前記第2のスラスタ・パレットの矩形の面の長い縁部に沿って前記第2のスラスタ・パレットに取り付けられ、及び、前記第6の回転ジョイントは、回転するように前記第2のスラスタ・パレットを枢動させる、第2のスラスタ・パレットと、
前記第2のスラスタ・パレットに固定して取り付けられている第3及び第4のスラスタと
を備え、
前記第2のスラスタ・パレットは格納位置と配備位置との間で構成することができ、前記格納位置では、前記第2のブームは、前記ビークルの隣接する面に対して実質的に平行に配置される、第2のスラスタ装着構造体をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ビークルは、矩形角柱を含み、前記第1のスラスタ装着構造体及び前記第2のスラスタ装着構造体は、前記矩形角柱の両面に装着されている、
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のスラスタ・パレット及び前記第2のスラスタ・パレットは、前記ビークルの6つの自由度を制御する、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第3の回転ジョイントは、前記第2の回転ジョイントに直接取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記格納位置にある時には前記第2のブームが前記ビークルに対して実質的に同一平面上に位置決めされるようになっており、前記第2のスラスタ・パレットは、前記第2のブームの長さの一定の部分と少なくとも部分的に重なるように位置決めされる、
請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気スラスタを備えた地球周回衛星のための操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星及び他の宇宙船は、典型的には、化学的なロケット推進システムを利用し、それらを軌道の中へ推進させ、ミッション動作を実施する。そのような推進システムは、比較的大量のスラストを提供するが、ロケット推進システムは、一般的に、推進剤効率が悪く、比推力が低い。その結果、ロケット推進システムによって推進される衛星及び宇宙船は、典型的には、それらの質量の大部分を推進剤として運搬し、ミッション・ペイロードに利用可能なのは比較的小さい割合の質量になる。電気推進システムは、長距離のミッション又は長期間のミッションのためのロケット推進システムに対する実行可能な代替例を提供し、それは、大量の推進剤を必要とする。電気推進システムは、電気エネルギーを使用することによって、推進剤、典型的にはイオン化されたガスの粒子を、高速で吐き出すように動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようにして、それらは、ロケット推進システムと比較して、比較的高い比推力及び推進剤効率を実現するが、比較的小さい量のスラストを作り出す。これらの特性は、電気推進システムを長距離のミッション又は長期間のミッションに適切なものにし、衛星及び/又は宇宙船は、長期間にわたって加速され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
スラスタをビークルの上に装着するためのシステム及び方法が、本明細書で説明されている。システムは、スラスタ装着構造体を含むことが可能であり、スラスタ装着構造体は、第1の回転ジョイントを含み、第1の回転ジョイントは、ビークルに取り付けられており、第1の軸線において回転するように構成されている。スラスタ装着構造体は、ブームをさらに含むことが可能であり、ブームは、第1の回転ジョイントに接続されており、第1の回転ジョイントは、第1の軸線の周りにブームを枢動させるように構成されている。スラスタ装着構造体は、第2の回転ジョイントをさらに含むことが可能であり、第2の回転ジョイントは、ブームに取り付けられており、第1の軸線において回転するように構成されている。スラスタ装着構造体は、第3の回転ジョイントをさらに含むことが可能であり、第3の回転ジョイントは、第2の回転ジョイントに取り付けられており、また、第1の軸線に対して垂直の第2の軸線において回転するように構成されている。第2の回転ジョイントは、第1の軸線の周りに第3の回転ジョイントを枢動させるように構成され得る。スラスタ装着構造体は、第3の回転ジョイントに取り付けられているスラスタ・パレットをさらに含むことが可能であり、第3の回転ジョイントは、第2の軸線の周りにスラスタ・パレットを枢動させるように構成されており、また、スラスタ装着構造体は、スラスタ・パレットに固定して取り付けられているスラスタを含むことが可能である。いくつかの実施形態では、スラスタ・パレットは、矩形の面を含み、第3の回転ジョイントは、矩形の面の長い縁部に沿ってスラスタ・パレットに取り付けるように構成され得る。
【0005】
ビークルは、衛星又は他の宇宙船を含む、任意の適切なビークルであってよく、また、任意の適切な形状を含むことが可能である。本明細書で説明されているシステム及び方法は、立方体又は矩形角柱のように形状決めされている衛星に関連して考察されているが、当業者によって理解されるように他の衛星及び宇宙船形状も企図され得る。また、スラスタ装着構造体は、立方体/矩形角柱の平坦な表面を含む、ビークルの任意の適切な表面の上に装着され得ることを理解されたい。当業者によって理解されるように他の装着表面も企図され得る。そのうえ、本明細書で説明されているシステム及び方法は、電気スラスタの観点から説明されているが、任意の適切なスラスタが、本明細書で説明されている装着構造体とともに利用され得ることを理解されたい。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1の軸線は、ビークルのロール軸であってよく、第2の軸線は、ビークルのヨー軸、ピッチ軸、又は、ピッチ軸及びヨー軸の組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、第1の軸線は、ビークルのヨー軸であってよく、第2の軸線は、ビークルのロール軸、ピッチ軸、又は、ロール軸及びピッチ軸の組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、第1の回転ジョイント及び第2の回転ジョイントは、電動回転ジョイントであってよい。たとえば、回転ジョイントは、モータ、サーボ、又は、回転移動を変化及び維持するための任意の他の適切なメカニズムを用いることが可能である。いくつかの実施形態では、回転ジョイントは、回転角度を変化及び維持するために、制御入力を受け取ることが可能である。いくつかの実施形態では、回転ジョイントは、回転角度を変化させるための制御が受け取られるまでに、回転角度を強固に維持するように構成され得る。いくつかの実施形態では、第2のスラスタは、スラスタ・パレットに接続され得る。第2のスラスタは、第1のスラスタと実質的に同一であってよく、又は、それは、実質的に異なっていてもよい。たとえば、第2のスラスタは、冗長なスラスタとして作用するために、第1のスラスタと実質的に同じスラストを提供するように構成され得る。
【0007】
回転ジョイントの組み合わせを通して、スラスタ装着構造体は、格納位置、ステーション・キーピング位置、及び軌道上昇位置を含む、さまざまな位置に、スラスタ・パレットを向けることが可能であり得る。格納位置では、ブームは、ビークルに対して実質的に平行に及び/又は同一平面上に位置決めされ得、スラスタ・パレットは、ビークルに接続され得る。いくつかの実施形態では、スラスタ・パレットは、保持受容部に嵌合され得、保持受容部は、スラスタ・パレットが展開されていない状態でスラスタ・パレットを固定することが可能である。たとえば、スラスタ・パレットは、打ち上げの間にビークル本体部に固定され、スペースを最小化することが可能であり、また、スラスタ装着構造体の上の振動及び他の力を最小化することが可能である。いくつかの実施形態では、スラスタ・パレットは、格納位置において、ビークルに対して同一平面上にある状態で維持され得る。いくつかの実施形態では、スラスタは、ビークルに対して、又は、スラスタ装着構造体が装着されているビークルの面に対して、実質的に垂直の方向に面していることが可能である。たとえば、スラスタは、実質的に外側に、又は、実質的にビークルに向けて、ビークルの面に対して垂直の方向に指向され得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、スラスタ装着構造体は、ステーション・キーピング位置に配置され得る。ステーション・キーピング位置は、さらに詳細に下記に考察されているように、衛星/宇宙船の軌道が維持され得るようにスラスト・ベクトルを位置決めすることが意図された、多種多様な向きを含むことが可能である。ステーション・キーピング位置において、スラスタは、ビークル本体部から解放され、第1、第2、及び第3の回転ジョイントを使用して操縦されることになる。いくつかの実施形態では、ブームは、ステーション・キーピング位置において、ビークルに対して平行ではないことになる。いくつかの実施形態では、ブームは、ビークルに対して又はビークルの面に対して垂直な状態を維持されることになる。いくつかの実施形態では、ステーション・キーピング位置にあるスラスタは、ビークルの重心を通る方を向くスラスト・ベクトルを発生させることが可能である。
【0009】
いくつかの実施形態では、スラスタ装着構造体は、軌道上昇位置に配置され得る。軌道上昇位置では、ブームは、ビークルに対して、又は、ビークルの面に対して、実質的に垂直に位置決めされ得る。スラスタ・パレットは、ビークル本体部の上の任意の拘束受容部から解放され得る。軌道上昇位置において、スラスタ及び/又はスラスタ・パレットは、ビークルに対して実質的に平行の方向に向けられ得る。スラスタは、たとえば、ブームによって、ビークルから間隔を離して配置された距離にあってよい。このようにして、スラスタは、ビークルの軌道を上昇又は転移させるために使用され得るスラスト・ベクトルを発生させるように位置決めされ得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、システムは、第2のスラスタ装着構造体を含むことが可能である。第2のスラスタ装着構造体は、第1のスラスタ装着構造体と実質的に同様であってよい。いくつかの実施形態では、ビークルは、矩形角柱形状を含むことが可能であり、第1のスラスタ装着構造体及び第2のスラスタ装着構造体は、矩形角柱の両面に装着され得る。このように、第1のスラスタ装着構造体及び第2のスラスタ装着構造体は、軌道高度、軌道傾斜角、離心率、及び/又はドリフトなどのような、ビークルの運動を変化させるために、独立して制御され得る。第2のスラスタ装着構造体は、ビークルに取り付けられている第4の回転ジョイントを含むことが可能であり、第4の回転ジョイントは、第1の軸線において回転するように構成されている。第4の回転ジョイントは、第1のスラスタ装着構造体の第1の回転ジョイントの軸線と実質的に同じ軸線において回転するように構成され得る。第2のスラスタ装着構造体は、第2のブームをさらに含むことが可能であり、第2のブームは、第4の回転ジョイントに接続され得、第4の回転ジョイントは、第1の軸線の周りにブームを枢動させるように構成されている。第2のスラスタ装着構造体は、第5の回転ジョイントを含むことが可能であり、第5の回転ジョイントは、第2のブームに取り付けられ得、また、第1の軸線において回転するように構成され得る。第2のスラスタ装着構造体は、第5の回転ジョイントに取り付けられている第6の回転ジョイントをさらに含むことが可能であり、第6の回転ジョイントは、第2の軸線において回転するように構成されており、第5の回転ジョイントは、第1の軸線の周りに第6の回転ジョイントを枢動させるように構成されている。第2のスラスタ装着構造体は、第6の回転ジョイントに取り付けられている第2のスラスタ・パレットをさらに含むことが可能であり、第6の回転ジョイントは、第2の軸線の周りに第2のスラスタ・パレットを枢動させるように構成されており、第2のスラスタは、第2のスラスタ・パレットに固定して取り付けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図5】ステーション・キーピング位置に位置決めされている第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図6】軌道上昇位置に位置決めされている第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図7】格納位置に位置決めされているスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図8】ステーション・キーピング位置に位置決めされているスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図9】軌道上昇位置に位置決めされているスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図10A】さまざまな位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図10B】さまざまな位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図10C】さまざまな位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図10D】さまざまな位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【
図10E】さまざまな位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体の例示的な図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で説明されているシステム及び方法の全体的な理解を提供するために、ここで、特定の例示的な実施形態が説明されることになる。しかし、本明細書で説明されているシステム及び方法は、他の適切な用途のために適合及び修正され得ること、ならびに、そのような他の追加及び修正は、その範囲から逸脱しないことになることが当業者によって理解される。
【0013】
電気スラスタ及び電気スラスタ装着スキームは、以下の米国特許文献により詳細に説明されており、それらは、その全体が本願明細書に援用されている:1998年2月23日に出願された米国特許第6,032,904号;2003年2月21日に出願された米国特許第7,059,571号;1999年1月27日に出願された米国特許第6,296,207号;1992年4月28日に出願された米国特許第5,349,532号;2001年12月21日に出願された米国特許第6,565,043号;及び、2002年4月3日に出願された米国特許第6,637,701号。
【0014】
図1は、衛星100の例示的な実施形態を示している。衛星100は、衛星本体部102、ソーラ・パネル104、ソーラ・パネル装着システム105、通信アンテナ106、及び通信アンテナ装着システム107を含むことが可能である。衛星100は、例示的なためだけに提供されており、本明細書で説明されているスラスタ装着構造体は、任意の適切な衛星の中に一体化され得ることを理解されたい。
【0015】
衛星本体部102は、それに限定されないが、立方体又は矩形角柱を含む、任意の適切な形状であってよい。ソーラ・パネル104は、入射太陽光から電力を発生させるように構成され得、また、ソーラ・パネル装着システム105を通して、衛星本体部102の任意の適切な面の上に装着され得る。ソーラ・パネル装着システム105は、アクチュエータを含むことが可能であり、アクチュエータは、ソーラ・パネル104を回転させるように、及び/又は、ソーラ・パネル104に角度を付けるように構成されている。たとえば、ソーラ・パネル装着システム105は、ソーラ・パネル104を回転させるか又はソーラ・パネル104に角度を付け、太陽を追跡することが可能であり、これによって衛星のためのほとんどの電力を発生させるようになっている。また、ソーラ・パネル装着システム105は、ソーラ・パネル104をしまい込む及び/又は展開するための手段を含むことが可能である。たとえば、ソーラ・パネル104は、貯蔵のために折り畳めるように、及び、展開のために広がるように設計され得る。ソーラ・パネル装着システム105は、アクチュエータ及び/又はラッチを含み、ソーラ・パネル104を展開するように制御信号が受け取られるまで、格納位置にソーラ・パネルを維持することが可能である。通信アンテナ106は、衛星からのデータを通信するための任意の適切な機器であってよい。たとえば、通信アンテナ106は、ミッション・コントロールと通信するために、地球の上の地上ステーションに向けて方向付けられた電磁波を発生させることが可能である。通信アンテナ106は、通信アンテナ装着システム107を通して、衛星本体部102に接続され得る。ソーラ・パネル装着システム106と同様に、通信アンテナ装着システム107は、通信アンテナ106を展開するように制御信号が受け取られるまで、格納状態(たとえば、衛星本体部102に対して折り畳まれている)に通信アンテナ106を維持するために、アクチュエータ及び/又はラッチを含むことが可能である。
【0016】
また、衛星100は、さらに詳細に下記に説明されているスラスタ装着構造体のうちの1つ又は複数を含むことが可能である。スラスタ装着構造体は、衛星本体部102の任意の適切な表面の上に装着又は一体化され得る。たとえば、2つのスラスタ装着構造体は、ソーラ・パネル104と同じ面の上に装着され得、それぞれの面に対して1つずつ装着され得る。このようにして、1対のスラスタ装着構造体は、連絡し合って働き、2つ以上のスラスタを位置決めし、ステーション・キーピング操作又は軌道上昇/転移操作のためのスラスタ・ベクタリングを提供することが可能である。スラスタ装着構造体は、任意の適切なタイプの推進システムを含むことが可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、スラスタ装着構造体は、電気スラスタを含むことが可能である。それに限定されないが、イオン・スラスタ、プラズマ・ベースのスラスタ、静電スラスタ、電熱スラスタ、及び電磁スラスタを含む、任意の適切なタイプの電気スラスタが利用され得る。いくつかの実施形態では、衛星100は、宇宙船本体部102の任意の適切な表面の上に装着された従来のロケット・ベースのスラスタをさらに含むことが可能であり、衛星100は、化学ベースのロケット推進システム及び電気推進システムの組み合わせによって推進されるようになっている。これらの実施形態では、化学ベースのロケット推進システムは、本明細書で説明されているスラスタ装着構造体を使用して、又は、任意の他の適切な方法によって、衛星本体部102に装着され得る。いくつかの実施形態では、衛星100は、電気推進システムだけを含むことが可能である。そのような実施形態では、衛星100は、他の手段を通して衛星本体部102に装着されている電気スラスタに加えて、下記にさらに説明されているようなスラスタ装着構造体を通して衛星本体部102に装着された電気スラスタを含むことが可能である。このようにして、スラスタ装着構造体は、1次的な推進システムに加えて、冗長な又は追加的な推進能力を提供することが可能である。
【0017】
図2は、衛星軌道200の例示的な図を示している。衛星204は、
図1に関連して説明されている衛星100と実質的に同様であってよく、また、天体202の周りの軌道に乗ることが可能である。天体202は、それに限定されないが、地球、月、太陽、惑星、星、又は、任意の他の天体を含む、任意の適切な天体であってよい。衛星204は、天体202の周りの軌道206を確立することが可能である。軌道206は、以下の軌道特性、すなわち、高度、長半径、離心率、傾斜角、及び近点引数、昇交点黄経、近点通過時刻、近点の半径、及び、遠点の半径のうちの1つ又は複数を含むことが可能である。例示的な例として、通信衛星は、地球の赤道の上方の35,786kmの高度において静止(GEO)軌道を確立することが可能であり、これによって地球の表面の上方の一定の位置を維持するようになっている。別の例示的な例として、地球マッピング衛星は、比較的高い傾斜角(たとえば、赤道に対して90度に近い)で極軌道を確立することが可能であり、それが、それぞれの軌道の上の異なる経度において赤道を通過するようになっている。軌道206は、円形軌道、楕円形軌道、又は8の字形の形状を含む、任意の適切な形状を含むことが可能である。
【0018】
その軌道を維持するために、衛星204は、ステーション・キーピング操作208及び210を実施することが可能である。本明細書で使用される場合、「ステーション・キーピング」は、所望の軌道を維持するために必要とされる軌道操作を表している。ステーション・キーピングは、空気抗力、太陽輻射圧、及び、太陽/月からの重力などのような、衛星204の軌道を悪化させる複数の外力に起因して、衛星204に必要である可能性がある。いくつかの実施形態では、そのような外力は、衛星204の軌道速度を減少又は増加させ、それに応じて軌道206の高度(又は、長半径)を減少又は増加させ得る。そのような実施形態では、衛星204は、衛星204の軌道速度を増加又は減少させるために、及び、外力に対抗するように、軌道の方向に、又は、衛星204の移動の方向に、ステーション・キーピング操作208を実施することが可能である。いくつかの実施形態では、衛星204は、フィードバック・ループにしたがってステーション・キーピング操作208を実施することが可能であり、衛星204の軌道速度及び/又は高度が検知されるようになっており、また、衛星204の軌道速度及び/又は高度が所望の軌道速度又は高度と同じではないことを検出したことに応答して、ステーション・キーピング操作208を実施する。いくつかの実施形態では、フィードバック・ループは、衛星204の軌道パラメータを決定するために、天体202の上の地上ステーションとの通信、又は、別の軌道衛星もしくは宇宙船との通信を含むことが可能である。上記に考察されているようなフィードバック・ループは、例示的なためだけに提供されており、また、任意の適切な制御スキームが、ステーション・キーピング操作208によって利用され得ることを理解されたい。
【0019】
いくつかの実施形態では、外力は、衛星204の移動の方向以外の方向に、衛星204の速度の増加又は減少を提供する可能性がある。そのうえ、外力は、正味のトルク又は回転を衛星204に付与することが可能である。そのような場合では、ステーション・キーピング操作210は、そのような速度変化又は回転変化を補正するために使用され得る。たとえば、外力は、軌道206の以下の軌道パラメータ、すなわち、離心率、傾斜角、及び近点引数のうちの1つ又は複数に影響を与えることが可能である。ステーション・キーピング操作208に関連して上記に考察されているように、フィードバック・ループは、軌道パラメータの変化を補正するために使用され得る。いくつかの実施形態では、軌道パラメータのうちの1つ又は複数は、衛星204によって直接、又は、地上ステーションもしくは別の衛星によって、検知され得、検知された軌道パラメータが所望の軌道パラメータとは異なっていると決定したことに応答して、ステーション・キーピング操作210を実施する。いくつかの実施形態では、ステーション・キーピング操作208及び210の組み合わせが、軌道パラメータの変化を補正するために利用され得る。ステーション・キーピング操作208及び210は、直交するものとして
図2に示されているが、ステーション・キーピング操作208及び210は、軌道パラメータに対する変化を補正するために任意の適切な方向を向くことが可能であることを理解されたい。また、ステーション・キーピング操作208及び210は、化学的なロケット・ベースのスラスタ及び電気的なスラスタ、ならびに、任意の数のスラスタ又はスラスタの組み合わせを含む、任意の適切なスラスタによって作り出され得ることを理解されたい。たとえば、いくつかのスラスタは、衛星204の重心を通る方を向くように構成され得、また、衛星204に正味の速度を付与するように設計され得るが、いくつかのスラスタは、衛星204の重心を通る方を向いていないスラスト・ベクトルを提供するように構成され得、また、衛星204に正味の回転を付与するように設計され得る。いくつかのスラスタは、正味の速度及び正味の回転の両方を衛星204に付与するように構成され得る。いくつかのスラスタは、適切な位置又は回転に固定され得るが、他のスラスタは、6つの自由度(3つの並進自由度、3つの回転自由度)のうちの少なくとも1つにおいてスラスタが移動することを可能にするように、装着され又はジンバルに支持され得る。たとえば、衛星204の上に装着されているスラスタのうちの1つ又は複数は、本明細書で説明されているスラスタ装着構造体を使用して装着され得る。
【0020】
図3は、軌道上昇操作300の例示的な図を示している。本明細書で使用されているように、「軌道上昇」又は「軌道転移」は、第1の軌道303から第2の軌道306へ衛星304の軌道を変化させる任意の軌道操作を表している。軌道上昇操作300は、ホーマン転移として
図3に示されているが、軌道上昇操作300は、それが円形であろうが楕円形であろうが任意の初期軌道において始まることが可能であり、また、以下の軌道パラメータ、すなわち、高度、長半径、離心率、傾斜角、及び近点引数、昇交点黄経、近点通過時刻、近点の半径、及び、遠点の半径のうちの少なくとも1つを変化させる任意の適切な軌道操作であってよいことを理解されたい。
【0021】
図3に示されているように、衛星304は、初期軌道303において、天体302の周りの軌道に乗ることが可能である。衛星304は、
図1に示されている衛星100と実質的に同様であってよい。天体302は、
図2に示されている天体202と実質的に同様であってよい。初期軌道303は、他の軌道パラメータに加えて、最終的な軌道306の半径よりも下の半径305を有することが可能である。初期軌道は、他の軌道パラメータに加えて、楕円形の軌道であってよく、近地点は、最終的な軌道306の下にあり、遠地点は、最終的な軌道306の下方にあるか、最終的な軌道306にあるか、又は、最終的な軌道306の上方にあってよい。衛星304は、1つ又は複数の軌道公転にわたって連続的に、又は、それらの任意の組み合わせにわたって、軌道の中の離散的なポイントにおける有限な持続期間の多数のスラスタ燃焼310を実施することが可能であり、これによって所望の速度の変化を付与し、最終的な軌道306に到達するようになっている。スラスタ燃焼ベクトル310は、衛星304の移動の方向になっているか、衛星304の移動の方向の反対側になっているか、又は、それらの間の任意の方向になっていることが可能である。スラスタ燃焼ベクトル310は、軌道の中で、及び、軌道平面に対して、任意の角度になっていることが可能である。
【0022】
図4は、スラスタ装着スキーム400の例示的な図を示しており、衛星本体部402は、第1及び第2のスラスタ装着構造体404を含む。衛星本体部402は、
図1に示されて上記に考察されている衛星本体部102と実質的に同様であってよい。第1のスラスタ装着構造体404は、スラスタ・パレット406、第1の方位角(azimuth)アクチュエータ408、第2の方位角アクチュエータ410、仰角アクチュエータ412、スラスタ414、及びブーム418を含む。第2のスラスタ装着構造体419は、第1のスラスタ装着構造体404と実質的に同じコンポーネントを含むことが可能である。
図4に示されているように、第1及び第2のスラスタ装着構造体404及び419は、衛星本体部402の両面に装着され得る。
【0023】
第1の方位角アクチュエータ408は、第1の方向424に回転するように構成され得る。いくつかの実施形態では、方向424は、
図4に示されているように、z軸の周りの回転であってよい。いくつかの実施形態では、第1の方位角アクチュエータ408は、第1の方向424だけに回転するように構成されている。すなわち、第1の方位角アクチュエータ408は、他の2つの回転方向に対しては、回転方向に硬い。同様に、第2の方位角アクチュエータ410は、第2の方向426に回転するように構成され得、仰角アクチュエータ412は、方向428に回転するように構成され得る。第1の方位角アクチュエータ408と同様に、第2の方位角アクチュエータ410及び仰角アクチュエータ412は、いくつかの実施形態では、それぞれの方向だけに回転するように構成され、他の回転自由度において固定であるように構成され得る。いくつかの実施形態では、第1の方位角アクチュエータ408、第2の方位角アクチュエータ410、及び仰角アクチュエータ412は、回転位置、回転速度、及び/又は回転加速度に関する制御信号及び/又はセットポイントを受け取るように構成された電動アクチュエータであってよい。
【0024】
スラスタ・パレット406は、金属、炭素繊維、又は複合材料などのような、任意の適切な材料から作製され得る。スラスタ・パレット406は、
図4に示されているように、矩形角柱を含む、任意の適切な形状に構成され得る。スラスタ414は、それに限定されないが、ねじ、リベット、ボルト、溶接、接着剤、又は、それらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な手段を使用して、スラスタ・パレット406の上に直接装着され得る。2つのスラスタ414が
図4に示されているが、任意の数のスラスタが、スラスタ・パレット406の上に装着され得ることを理解されたい。そのうえ、スラスタ414は、電気スラスタ及び/又は化学的なロケット・スラスタを含む、任意の適切なタイプのスラスタであってよい。
【0025】
ブーム418は、金属、炭素繊維、又は複合材料などのような、任意の適切な材料から作製され得る。ブーム418は、任意の適切な形状及び長さであってよい。たとえば、ブーム418は、方形断面を有する中空の部材であってよい。ブーム418は、それに限定されないが、ねじ、リベット、ボルト、溶接、接着剤、又は、それらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な手段を使用して、第1の方位角アクチュエータ408、第2の方位角アクチュエータ410、及び/又は仰角アクチュエータ412のうちの1つ又は複数に取り付けられ得る。たとえば、ブーム418は、第1の方位角アクチュエータ408に取り付けられ得、第1の方位角アクチュエータ408がブームを方向424に枢動させることができるようになっている。第2の方位角アクチュエータ410は、それに限定されないが、ねじ、リベット、ボルト、溶接、接着剤、又は、それらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な手段によって、スラスタ・パレット406に取り付けられ得る。第2の方位角アクチュエータ410は、スラスタ・パレット406を方向426に枢動させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、方向424及び方向426は、同じであってもよい。仰角アクチュエータ412は、スラスタ・パレット及び/又は第2の方位角アクチュエータ410に接続され得る。仰角アクチュエータ412は、スラスタ・パレット406を方向428に枢動させるように構成され得る。
【0026】
第1の方位角アクチュエータ408は、それに限定されないが、ねじ、リベット、ボルト、溶接、接着剤、又は、それらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な手段を使用して、衛星本体部402に直接取り付けられ得る。第1の方位角アクチュエータ408は、スラスタ・パレット406を方向424に回転させ、スリュー角(slew angle)422を提供することが可能である。スリュー角422は、スラスタ414がスラスト・ベクトルを移動の方向又は軌道方向の接線方向に作り出すことを可能にすることができる。これは、衛星の経度ドリフト・レート及び離心率ベクトルの制御を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、第2の方位角アクチュエータ410は、スラスタ・パレット406を回転させ、スラスタ方向420を提供することが可能であり、スラスタ方向420は、衛星の重心を通る方を向いている。衛星の重心は方形断面の中心として示されているが、重心は、衛星本体部402の中の任意のポイントに位置付けされ得る。いくつかの実施形態では、重心は、衛星本体部402の外側にあってよい。
【0027】
図5は、ステーション・キーピング位置に位置決めされている第1及び第2のスラスタ装着構造体504及び519を含む、スラスタ装着スキーム500の例示的な図を示している。第1及び第2のスラスタ装着構造体504及び519は、
図4に関連して説明されている第1及び第2のスラスタ装着構造体404及び419と実質的に同様であってよい。衛星本体部502は、
図4に関連して説明されている衛星本体部402と実質的に同様であってよい。
図5に示されているように、第1及び第2のスラスタ装着構造体504及び519は、衛星本体部502の1つの縁部に沿って装着され得る。
図5に示されている例示的な例では、第1及び第2のスラスタ装着構造体504及び519は、衛星本体部502のy面の上に装着されている。ステーション・キーピング位置では、第1及び第2のスラスタ装着構造体504及び519は、
図4に示されている仰角アクチュエータ412などのような、仰角アクチュエータを使用し、スラスタを枢動させ、スラスタ・ベクトル520を作り出すことが可能であり、スラスタ・ベクトル520は、衛星の重心を通る方を向いている。これは、カント角530を作り出すことが可能であり、カント角530は、スラスト・ベクトル520と宇宙船本体部502のxy平面との間の角度として測定される。カント角530は、移動の方向又は衛星の軌道方向に対して垂直及び/又は半径方向のスラスト・ベクトルをスラスタ514が作り出すことを可能にすることができる。これは、軌道傾斜角及び離心率ベクトルの制御を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、カント角530は、軌道傾斜角及び離心率ベクトルの同時制御を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、衛星の速度は、衛星の角運動量と同時に又は別々に制御され得る。たとえば、カント角530、及び、第1の方位角アクチュエータ424又は第2の方位角アクチュエータ426のいずれかの使用を通して、スラスタ414によって作り出されるスラスト・ベクトルは、重心を通る方を向くように構成され得、それによって、トルクのない速度変化を作り出し、又は、重心からわずかにオフセットされるように構成され得、それによって、正味のトルクを作り出す。ステーション・キーピング操作に関して、第1のスラスタ装着構造体504もしくは第2のスラスタ装着構造体519のいずれか又は両方に関連するスラスタが燃焼され得る。
図2に関連して上記に考察されているように、スラスタ燃焼は、特定の軌道又は軌道特性を維持するために実施され得る。
図4に示されているカント角530及びスリュー角422の使用を通して、幅広い範囲の制御オプションが、衛星本体部502を制御するために有効にされ得、それによって、ミッション最適化及び推進剤消費の低減を可能にする。いくつかの実施形態では、完全なステーション・キーピング動作は、2つのスラスタの使用によって、及び、1日又は軌道周期あたり2つの操作によって、完了され得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2のスラスタ装着構造体504及び519は、衛星本体部502の6つの自由度(3つの並進自由度、3つの回転自由度)を制御するように構成され得る。したがって、完全な軌道及びステーション・キーピング制御が、2つのスラスタの使用だけで実現され得る。
【0028】
図6は、軌道上昇位置に位置決めされている第1及び第2のスラスタ装着構造体604,619を含む、スラスタ装着スキーム600の例示的な図を示している。第1及び第2のスラスタ装着構造体604,619は、
図4に関連して説明されている第1及び第2のスラスタ装着構造体404,419と実質的に同様であってよい。衛星本体部602は、
図4に関連して説明されている衛星本体部402と実質的に同様であってよい。
図6に示されているように、第1及び第2のスラスタ装着構造体604,619は、衛星本体部602の1つの縁部に沿って装着され得る。
図6に示されている例示的な例では、第1及び第2のスラスタ装着構造体604,619は、衛星本体部602のy面の上に装着されている。軌道上昇位置では、第1及び第2のスラスタ装着構造体604,619は、
図4に示されている仰角アクチュエータ412などのような、仰角アクチュエータを使用し、スラスタを枢動させることが可能であり、スラスタが、
図6に示されているように実質的にビークル602のz方向にスラスト・ベクトル620を作り出すようになっている。いくつかの実施形態では、z方向は、移動の方向、移動の方向の反対側、又は、それらの間のどこかであってよい。スラスト・ベクトル620と衛星本体部602のxy平面との間に生成されるカント角630は、実質的に90度であってよい。いくつかの実施形態では、カント角は、
図5に示されているようにビークル520の重心を通る方向を含むそれ以下の他の方向を向くことが可能である。軌道上昇操作に関して、第1及び第2のスラスタ装着構造体604,619に関連するスラスタのいずれか一方又は両方が燃焼され得る。
図3に関連して上記に考察されているように、スラスタ燃焼は、初期軌道から最終的な軌道へ衛星の軌道を変化させるために、及び/又は、特定の軌道特性を変化させるために実施され得る。
【0029】
図7は、格納位置に位置決めされているスラスタ装着構造体704の例示的な図を示している。スラスタ装着スキーム700は、宇宙船本体部702、スラスタ装着構造体704、第1の方位角アクチュエータ708、ブーム718、スラスタ・パレット706、及びスラスタ714を含み、
図4に関連して上記に考察されている対応するコンポーネントと実質的に同様であってよい。第1の方位角アクチュエータ708は、ブラケット720を介して宇宙船本体部702に直接接続されている。コンポーネント同士を共に直接接続すること、又は、1つのコンポーネントを別のコンポーネントに取り付けることは、それぞれのコンポーネントがそれぞれのコンポーネント間に延在する長尺状部材によって接続されてはいないことを意味しており、そのような長尺状部材は、ブームであり得る。したがって、共に直接接続されているか又は互いに取り付けられているコンポーネント同士は、ごく接近して置かれることになり、ブラケットなどによって共に固定され得る。第1の方位角アクチュエータ708は、静止部分722及び可動取り付け部分724を含む。いくつかの実施形態では、静止部分722は、アクチュエータ708を宇宙船本体部702に装着するために、ブラケット720に直接接続されている。いくつかの実施形態では、可動取り付け部分724は、接続されているコンポーネントを移動又は回転させるために回転可能なアクチュエータ708の一部分である。
図7に示されている格納位置では、ブームは、衛星本体部702に実質的に平行になっていることが可能である。いくつかの実施形態では、ブーム718は、衛星本体部702に接触していることが可能である。いくつかの実施形態では、ブーム718は、衛星本体部702から間隔を離して配置された距離にあってよい。いくつかの実施形態では、ブーム718は、アクチュエータ708の幅726に等しい距離だけ、衛星本体部702から間隔を置いて配置されている。いくつかの実施形態では、スラスタ・パレット706は、スラスタ714が衛星本体部702に対して実質的に平行となるように位置合わせされ得、衛星本体部702に対して実質的に垂直な方を向くスラスト・ベクトルを有する。いくつかの実施形態では、スラスタ・パレット706は、装着構造体を使用して、衛星本体部702に取り付けられ得る。たとえば、装着構造体は、アクチュエータを含むことが可能であり、アクチュエータは、打ち上げの間に適切な場所にスラスタ・パレット706を維持することが意図されており、また、衛星のミッションの間の適当な時間にスラスタ・パレット706を展開することが意図されている。
【0030】
図8は、ステーション・キーピング位置に位置決めされているスラスタ装着構造体804の例示的な図を示している。スラスタ装着スキーム800は、宇宙船本体部802、スラスタ装着構造体804、第1の方位角アクチュエータ808、ブーム818、ブラケット820、静止部分822、可動取り付け部分824、第2の方位角アクチュエータ810、スラスタ・パレット806、及びスラスタ814を含み、
図4に関連して上記に考察されている対応するコンポーネントと実質的に同様であってよい。方位角アクチュエータ808は、可動取り付け部分824を含み、可動取り付け部分824は、接続されているコンポーネントを移動又は回転させるために、アクチュエータ808によって回転可能である。たとえば、
図8に示されているステーション・キーピング位置では、ブーム818は、可動取り付け部分824に直接接続されている。したがって、第1の方位角アクチュエータ808は、衛星本体部802から内又は外にブーム818を回転させることが可能である。
図8のブーム818は、衛星本体部802に対して実質的に垂直であるとして説明されているが、ブーム818は、ステーション・キーピング位置の中の他の角度へ回転され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、第2の方位角アクチュエータ810、及び、
図4に示されている仰角アクチュエータ412などのような仰角アクチュエータが、スラスタ・パレット806を回転させるために使用され得、スラスト・ベクトルが衛星本体部802に対して垂直にならないようになっている。第1の方位角アクチュエータ808、第2の方位角アクチュエータ810、及び仰角アクチュエータは、
図2に関連して上記に考察されているように、1つ又は複数の軌道パラメータの中の偏差を補正するために、スラスタ・パレットをさまざまな位置へ回転させるために利用され得ることを理解されたい。
【0031】
図9は、軌道上昇位置に位置決めされているスラスタ装着構造体904の例示的な図を示している。スラスタ装着スキーム900は、宇宙船本体部902、スラスタ装着構造体904、第1の方位角アクチュエータ908、ブーム918、第2の方位角アクチュエータ910、仰角アクチュエータ912、スラスタ・パレット806、及びスラスタ914を含み、
図4に関連して上記に考察されている対応するコンポーネントと実質的に同様であってよい。
図8に示されている軌道上昇位置では、第1の方位角アクチュエータ908は、衛星本体部902から外にブーム918を回転させることが可能である。
図9のブーム918は、衛星本体部902に対して実質的に垂直であるとして説明されているが、ブーム918は、軌道上昇位置の中の他の角度へ回転され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、第2の方位角アクチュエータ910及び仰角アクチュエータ912が、スラスタ・パレット906を回転させるために使用され得、スラスト・ベクトルが衛星本体部902に対して実質的に平行になるようになっている。いくつかの実施形態では、第2の方位角アクチュエータ910は、可動取り付け部分930及び静止部分931を含む。いくつかの実施形態では、静止部分931は、ブーム918に直接接続されている。いくつかの実施形態では、可動取り付け部分930は、仰角アクチュエータ912の可動取り付け部分932に直接接続されている。いくつかの実施形態では、第2の方位角アクチュエータ910及び仰角アクチュエータ912は、スラスタ・パレット906の上の装着ブラケット934を介して直接接続されている。したがって、いくつかの実施形態では、第2の方位角アクチュエータ910及び仰角アクチュエータ912は、少なくとも2つの軸線においてスラスタ・パレット906を回転させるように協働することが可能である。
図9に示されているように、ブーム918は、衛星本体部902から間隔を置いて配置された距離に、スラスタ・パレット906及びスラスタ914を位置決めすることが可能である。いくつかの実施形態では、スラスタ914は、ビークルのz方向と実質的に一致する合成スラスト・ベクトルを作り出す。いくつかの実施形態では、個々のスラスタは、個々のスラスト・ベクトルがz方向とビークルの重心を通る方向との間のどこかの方を向くように回転され得る。
図3に関連して上記に考察されているように、この向きのスラストは、初期軌道から最終的な軌道へ衛星の軌道を変化させるために使用され得る。
【0032】
図10A~Eは、さまざまな位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体1004の例示的な
図1000を示している。宇宙船本体部1002、スラスタ装着構造体1004、第1の方位角アクチュエータ1008、ブーム1018、第2の方位角アクチュエータ1010、スラスタ・パレット1006、及びスラスタ1014は、
図4に関連して上記に考察されている対応するコンポーネントと実質的に同様であってよい。
図10Aは、格納位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体1004を示している。
図7に関連して上記に考察されているように、格納位置では、ブーム1018は、衛星本体部1002に実質的に平行であり、及び/又は、同一平面状にあってよい。スラスタ・パレット1006は、その最も長い縁部に沿って平行となるように回転されることができ、スラスタが衛星本体部1002から外側を指向するようになっている。
図7に関連して考察されているように、スラスタ・パレット1006は、装着スキームを使用して衛星本体部1002に固定され得、装着スキームは、衛星のミッションの間の適当な時間にスラスタ・パレット1006を解放又は展開するように構成されている。このようにして、格納位置は、必要とされる貯蔵スペースを最小化し、また、たとえば、打ち上げの間に、スラスタ・パレット1006に付与される任意の逆向きの力を最小化することが可能である。
【0033】
図10Bは、軌道上昇位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体1004を示している。
図6及び
図9に関連して上記に考察されているように、軌道上昇位置では、スラスタ1014は、合成スラスタ・ベクトルが実質的にz方向を向くように回転され得る。いくつかの実施形態では、スラスタは、個々のスラスト・ベクトルがz方向とビークルの重心を通る方向との間のどこかの方を向くように回転され得る。
図3に関連して上記に考察されているように、z方向のスラストは、衛星の速度を増加させ、軌道の変化をもたらすことが可能である。
図10Bに示されているように、ブーム1018は、衛星本体部1002のxz面に対して垂直でなくてもよい。いくつかの実施形態では、軌道上昇操作に関して、第1及び第2のスラスタ装着構造体に関連するスラスタの両方は、衛星本体部1002の上の任意の望ましくない回転を低減させるために燃焼され得る。
【0034】
図10Cは、ステーション・キーピング位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体1004を示している。
図5及び
図8に関連して上記に考察されているように、ステーション・キーピング位置では、スラスタ1014は、さまざまな位置へ回転され、特定の軌道パラメータの偏差を補正することが可能である。
図10Cに示されている位置では、第1及び第2のスラスタ装着構造体1004は、傾斜角及び離心率の両方の偏差を補正することが可能である。たとえば、スラスタ1014の向きは、z方向及びy方向の両方の力を作り出すことが可能であり、それは、それらの方向の外力を補償することが可能である。
図10Cに示されているように、ブーム1018は、衛星本体部1002のxz面に対して垂直でなくてもよい。いくつかの実施形態では、ステーション・キーピング操作に関して、第1及び第2のスラスタ装着構造体に関するスラスタのうちの一方又は両方は、必要に応じて、軌道偏差を補正するために燃焼され得る。
【0035】
図10D及び
図10Eは、他のステーション・キーピング位置にある第1及び第2のスラスタ装着構造体1004を示している。
図5及び
図8に関連して上記に考察されているように、ステーション・キーピング位置では、スラスタ1014は、さまざまな位置へ回転され、特定の軌道パラメータの偏差を補正することが可能である。
図10D及び
図10Eに示されている位置では、第1及び第2のスラスタ装着構造体1004は、傾斜角、離心率、及びドリフトの偏差を補正することが可能である。たとえば、スラスタ1014の向きは、x方向、y方向、及びz方向のすべてに力を作り出すことが可能であり、それは、それらの方向の外力を補償することが可能である。スラスト・ベクトルの角度は、第1の方位角アクチュエータ1008、第2の方位角アクチュエータ1010、及び、
図4に示されているような仰角アクチュエータ412などのような仰角アクチュエータを使用して制御され得る。
図10D及び
図10Eに示されているように、ブーム1018は、衛星本体部1002のxz面に対して垂直でなくてもよい。いくつかの実施形態では、ステーション・キーピング操作に関して、第1及び第2のスラスタ装着構造体に関するスラスタのうちの一方又は両方は、必要に応じて、軌道偏差を補正するために燃焼され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、衛星の重心の場所に応じて、
図10B、
図10C、
図10D、及び
図10Eに示されている向きは、また、衛星本体部1002に正味のトルク及び/又は回転を付与することが可能である。
【0037】
本明細書で説明されている実施形態は単なる例として提供されていることが当業者に明らかであろう。多数の変形例、代替例、変化例、及び置換例が、本発明を実践する際に当業者によって用いられ得ることを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書で開示されている実施形態に限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲から理解されるべきであり、特許請求の範囲は、法律で許容される限り広く解釈されるべきであることを理解されたい。