(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】コンクリート補強アセンブリ
(51)【国際特許分類】
E04C 5/08 20060101AFI20231113BHJP
E04C 5/02 20060101ALI20231113BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20231113BHJP
B28B 23/02 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
E04C5/08
E04C5/02
E04G21/12 104A
E04G21/12 104Z
B28B23/02 A
(21)【出願番号】P 2021504836
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 AU2019050790
(87)【国際公開番号】W WO2020023999
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-29
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521036171
【氏名又は名称】リオフレックス アイピー プロプライエタリ― リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,ジョン
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03937607(US,A)
【文献】国際公開第2013/192497(WO,A2)
【文献】特開2007-216503(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107419848(CN,A)
【文献】特開2012-177284(JP,A)
【文献】特公昭32-010079(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00 - 5/20
E04G 21/12
B28B 23/02
E04C 3/00 - 3/46
B28B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠又は金型を用いて形成されるコンクリート構造物のための補強アセンブリであって、
連結可能な両端部を有する複数の離間された第1のチェーンと、
前記第1のチェーンの連結可能な端部のうちの少なくとも一方と第1のリンク部材との間に取り付け可能な第1のプレテンショナブル部材及び/又は
第1の弾性変形可能部材と、
連結可能な両端部を有する複数の離間された第2のチェーンであって、該第2のチェーンは前記第1のチェーンに対して傾斜している、第2のチェーンと、
前記第2のチェーンの連結可能な端部のうちの少なくとも一方と第2のリンク部材との間に取り付け可能な第2のプレテンショナブル部材及び/又は
第2の弾性変形可能部材と、
を含み、
前記第1の弾性変形可能部材及び前記第2の弾性変形可能部材はばね又は螺旋ばねであり、前記
第1のリンク部材
及び前記第2のリンク部材は前記型枠又は金型に取り付けることができるか又は前記型枠又は金型を通って延在することができ、使用の際、前記補強アセンブリは、前記型枠又は金型にコンクリート混合物が流し込まれる前に前記第1のチェーン及び第2のチェーンに予め張力をかけるために調整可能であるため、予め張力がかけられた当該補強アセンブリが結果として得られるコンクリート構造物内に埋め込まれる、補強アセンブリ。
【請求項2】
前記第1のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と前記第1のリンク部材との中間にある第1の取り付けブロックと、
前記第2のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と前記第2のリンク部材との中間にある第2の取り付けブロックと、
をさらに含み、
前記第1のリンク部材及び前記第2のリンク部材は、前記第1の取り付けブロック及び前記第2の取り付けブロックのそれぞれに取り付け可能であるか又は前記第1の取り付けブロック及び前記第2の取り付けブロックを通って延在可能である、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項3】
前記
第1のプレテンショナブル部材
及び前記第2のプレテンショナブル部材はターンバックル又は他の調整可能な装置である、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項4】
前記第1のチェーンは平行であり、前記第2のチェーンは平行である、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項5】
平行な前記第1のチェーンは、平行な前記第2のチェーンに対して傾斜するとともに、互いに交差されるか又は重ねられて交差したメッシュ構成を形成する、請求項
4に記載の補強アセンブリ。
【請求項6】
前記
第1のチェーン
及び前記第2のチェーンは概して水平なそれぞれの面に沿って離間されているか又は当接している、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項7】
前記第1のチェーンのそれぞれの連結可能な両端部は、各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材により各主取り付けブロックに接続され、前記第2のチェーンのそれぞれの両端部は、各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材により各二次取り付けブロックに接続される、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項8】
前記第1のチェーン及び前記第2のチェーンのそれぞれの一方の連結可能な端部は固定点に接続可能である、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項9】
前記
第1のリンク部材
及び前記第2のリンク部材のそれぞれは、前記型枠の外にあるか又はその外からアクセス可能な追加の又は代替的なテンショナーを含む、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項10】
前記
第1のリンク部材
及び前記第2のリンク部材は、使用時に前記型枠又は金型の外で且つ離れて配置可能な各アンカーに連結される、請求項1に記載の補強アセンブリ。
【請求項11】
内部に埋め込まれた補強アセンブリを含む鉄筋コンクリート構造物であって、該補強アセンブリは第1のチェーン、第2のチェーン、複数のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材及び複数の取り付けブロックを含み、使用の際、前記プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材は、前記第1のチェーン又は前記第2のチェーンと前記複数の取り付けブロックのうちの1つとの中間に配置可能であるため、前記
鉄筋コンクリート構造物を形成する前に前記第1のチェーン及び第2のチェーンに予め張力をかけることができる、鉄筋コンクリート構造物。
【請求項12】
コンクリート構造物を補強する方法であって、
所望のコンクリート構造物の境界を線引きするための仮設の型枠を組み立てるか又は金型を提供するステップと、
前記型枠又は金型内に補強アセンブリを配置するステップであって、該補強アセンブリはチェーンと、取り付けブロックと、プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と、該取り付けブロックに取り付け可能であるとともに使用時に前記型枠又は金型を通って延在するか又は上方を延在するように構成されたリンク部材とを含み、該プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材は、該チェーンの一部の少なくとも一端と対応する取り付けブロックとの中間に配置可能であ
り、該弾性変形可能部材はばね又は螺旋ばねである、ステップと、
前記リンク部材及び/又はプレテンショナブル部材を調整することにより、前記チェーンに張力をかけるステップと、
前記型枠又は金型にコンクリート混合物を流し込んで前記コンクリート構造物を形成するステップと、
前記コンクリート混合物を硬化させるステップと、
前記型枠を取り外すか又は前記金型内から前記コンクリート構造物を取り出すステップであって、前記チェーンは前記コンクリート構造物内で予め張力がかけられた状態で維持されている、ステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
平行で離間された第1のチェーンは、平行で離間された第2のチェーンに対して垂直に又は傾斜して配置可能であり、該第1のチェーン及び該第2のチェーンのそれぞれの両端又は一端に隣接して各取り付けブロックを配置可能である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンクリート構造物を現場に配置することができるように前記コンクリート構造物を持ち上げるためにクレーンを用いるステップをさらに含み、前記チェーンの少なくとも一部に持ち上げ用ラグを接続可能である、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート構造物のための補強アセンブリに関し、一実施形態では、耐震性及び/又は耐衝撃性を有する鉄筋コンクリート構造物に関する。
【0002】
本発明は、現場外で製造されてその後に現場に搬送され設置されるプレキャストコンクリート構造物及び現場特有の型枠に流し込まれて現場で硬化されるコンクリート構造物の双方に関する。コンクリートパネルをとりわけ参照して本発明を説明するが、コンクリート構造物はこの構成に限定されず、限定されないが橋梁、床構造、建築構造物、スラブ、アーチ、道路、擁壁及び地面の補強を含む任意の形状又はサイズの構造物を本発明の補強アセンブリを用いて作られ得ることが分かる。
【背景技術】
【0003】
スラブ又はプレキャストパネル等のコンクリート構造物の従来の補強は、コンクリート混合物を流し込む前にスペーサー又は鉄筋支持具で支持される補強筋(鉄筋)又はメッシュを用いて行われる。
【0004】
そのため、鉄筋、鋼繊維又はスチールメッシュは、さもなければ脆弱なコンクリート材料を補強するのに役立つ。よりスパンの長い梁、床及び橋梁のために高強度鋼材のケーブル及びロッドを用いることができる。
【0005】
一般に、作るべきコンクリート構造物の範囲を画定するために型枠が用いられる。あるいは、コンクリートは再利用可能な又は使い捨ての金型に流し込まれる。型枠又は金型は、コンクリートが十分に固まるまでコンクリートを支持する壁の役割を果たす。例えば、スラブが敷設されている状況では、地面が水平され、提案されたスラブの端に沿って型枠が設置されることにより箱又はエンクロージャが形成される。型枠は地中に打ち込まれる杭によって所定の位置に固定される。そして、スペーサー又は鉄筋支持具の上の箱内に補強用メッシュを配置し、コンクリート混合物を箱内に流し込んで内部の補強用メッシュを包み込む。
【0006】
しかしながら、流し込み工程の間に又は作業者がメッシュの上を歩いているときにスペーサー又は鉄筋支持具が外れることが多々ある。したがって、補強メッシュが位置から外れる可能性があるため、コンクリート構造物が硬化された場合にコンクリート構造物内の最適な位置に位置していないことがある。この一貫性の欠如の結果として、コンクリート構造物内で脆弱な領域が生じ得る。
【0007】
さらに、配管をスラブに通す必要がある場合、補強メッシュを切断する必要があり、これは全体的な構造を弱め得る。
【0008】
鉄筋の一貫性のない位置決めの問題を解消するために提案されている1つのシステムが特許文献1に開示されており、伸長されたスチールチェーンのリンクメッシュをコンクリート内に埋め込むことにより鉄筋コンクリートパネルが形成される。しかしながら、パイプをコンクリートスラブに通す必要がある場合、依然としてリンクメッシュを切断する必要があり、これは構造物に大きな影響を及ぼす。なぜなら、チェーンリンクメッシュの個々のワイヤストランドは隣接する絡み合ったワイヤストランドによって張力下で保持されるからである。
【0009】
特許文献2に別のシステムが開示されており、コンクリート構造物内の鉄筋としてチェーンが用いられている。しかしながら、チェーンは、上記の課題を有する従来の棒状の補強要素にそれらを取り付けることによって適所に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6443666号明細書
【文献】国際出願公開第88/07613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
コンクリート構造物は特に運動の影響を受けやすく、とりわけ地震の間に破損しやすい。しかしながら、使用されている既存の鉄筋は比較的剛性が高く、地震時に生じるような大きな変形に適応する能力を有していない。したがって、既存のコンクリート構造物は破壊的な構造物の破壊を招き得る割れ目が生じる傾向がある。
【0012】
さらに、特定の状況では、例えば構造物が外国の武力又は他の敵対勢力から武器で攻撃される場合には耐衝撃性のあるコンクリート構造物へのニーズがある。したがって、ミサイル又は爆発物の損傷に耐えることができるか又少なくとも最小限に抑えることのできるコンクリート構造物へのニーズがある。
【0013】
地震及び衝撃力に関連して本明細書全体を通して用いられる「耐える」又は「耐性がある」という用語は、構造物に結果として加えられる力に対する本発明のコンクリート構造物の耐性は従来の鉄筋コンクリート構造物に比べて大きいことを意味すると理解すべきである。本明細書全体を通して用いる「形成」という用語は、流動可能なコンクリート混合物を型枠等に加えて型枠内で保持された補強アセンブリを覆い、それによりコンクリート構造物を形成することに関することであると読者は理解するであろう。
【0014】
本明細書全体を通して、先行技術についてのいかなる議論は本発明の文脈を提供する目的だけのために含まれており、そのような先行技術が本願の優先日前に存在していたため当該技術分野でそれらが広く知られていること又は技術常識の一部をなすものであることを認めているとみなすべきではない。
【0015】
したがって、説明する実施形態の目的は、急速な地球運動の結果として生じる力又は構造物への衝撃に対する耐性が既存の補強構造に比べてより高い改善された鉄筋コンクリート構造物を提供することである。説明する実施形態の他の目的は、上記の問題の少なくとも一部を解消するか又は公衆に有用な代替案を少なくとも提供することである。上記の目的は累積的であると必ずしも考えるべきではなく、本発明の様々な態様が上記の目的の1つ以上を満たし得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、内部に埋め込まれた補強アセンブリを含む鉄筋コンクリート構造物を含むものと広く理解することができる。補強アセンブリは第1及び第2のチェーンを含み、第1及び第2のチェーンは、コンクリート構造物を形成する前に予め張力をかけることができる(pretensionable)。
補強アセンブリは、チェーンの少なくとも1つの連結可能な端部と取り付けブロック又はリンク部材との中間にプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材を含む。
【0017】
必ずしも最も広いか又は唯一の態様ではない本発明の一態様では、型枠又は金型を用いて形成されるコンクリート構造物のための補強アセンブリが提案される。補強アセンブリは、
連結可能な両端部(tethrable ends)を有する複数の離間された第1のチェーンと、
前記第1のチェーンの連結可能な端部のうちの少なくとも一方と第1のリンク部材との間に取り付け可能な第1のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と、
連結可能な両端部を有する複数の離間された第2のチェーンであって、該第2のチェーンは前記第1のチェーンに対して傾斜している、第2のチェーンと、
前記第2のチェーンの連結可能な端部のうちの少なくとも一方と第2のリンク部材との間に取り付け可能な第2のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と、
を含み、
前記リンク部材は前記型枠又は金型に取り付けることができるか又は前記型枠又は金型を通って延在することができ(extendable through)、使用の際、前記補強アセンブリは、前記型枠又は金型にコンクリート混合物が流し込まれる前に前記第1のチェーン及び第2のチェーンに予め張力をかけるために調整可能であるため、予め張力がかけられた当該補強アセンブリが結果として得られるコンクリート構造物内に埋め込まれる。
【0018】
請求項1に記載の補強アセンブリは、
前記第1のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と前記第1のリンク部材との中間にある第1の取り付けブロックと、
前記第2のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と前記第2のリンク部材との中間にある第2の取り付けブロックと、
をさらに含み、
前記第1のリンク部材及び前記第2のリンク部材は、前記第1の取り付けブロック及び前記第2の取り付けブロックのそれぞれに取り付け可能であるか又は前記第1の取り付けブロック及び前記第2の取り付けブロックを通って延在可能である。
【0019】
一形態では、前記弾性変形可能部材は限定されないが螺旋ばね等のばね又は弾性変形可能材料のブロックであり得る。一形態では、前記プレテンショナブル部材はターンバックル又は他の調整可能な装置であり得る。
【0020】
補強アセンブリはプレテンショナブル部材及び弾性変形可能部材の双方を含み得ることを読者は理解するであろう。他の形態では、補強アセンブリはプレテンショナブル部材又は弾性変形可能部材のみを含み得る。
【0021】
前記第1のチェーンは平行であり、前記第2のチェーンは平行であるとともに第1のチェーンに対して傾斜していることが好ましい。前記第2のチェーン及び前記第2のチェーンは互いに交差されるか又は重ねられて交差したメッシュ構成を形成し得る。前記第1のチェーン及び前記第2のチェーンは交差部分で連結されるか又は固定されてもよい。
【0022】
一形態では、平行な前記第2のチェーンは平行な前記第1のチェーンに対して垂直であり得る。あるいは、平行な前記第2のチェーンは平行な前記第1のチェーンに対して傾き得る。
【0023】
別の形態では、補強アセンブリ全体にわたって垂直に概して三角形状の空隙を形成するために第1、第2及び第3のチェーンが用いられ得る。追加のチェーンも交差されるか又は重ねられ得る。チェーンは垂直、ウェブ又は所定の構成で配置され得る。
【0024】
個々の第1のチェーンは概ね水平な面に沿って互いに離間されてもよく、個々の第2のチェーンは同じ水平な面に沿って互いに離間されてもよい。あるいは、異なるチェーンは、互いに平行であるか又はオフセットされた異なる平面に沿って延在し得る。
【0025】
前記第1のチェーンのそれぞれの連結可能な両端部は、各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材により各主取り付けブロックに接続され得ることが好ましい。同様に、前記第2のチェーンのそれぞれの両端部は、各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材により各二次取り付けブロックに接続され得る。したがって、一形態では、コンクリート構造物は第1のチェーンにより接続された2つの離間した主取り付けブロックと、第2のチェーンにより接続された2つの離間した二次取り付けブロックとを含み、それらの全てがコンクリート構造物に埋め込み可能である。
【0026】
したがって、主取り付けブロックは第1のチェーンのいずれかの端部に隣接して配置され、二次取り付けブロックは第2のチェーンのいずれかの端部に隣接して配置され得る。
【0027】
別の形態では、第1のチェーン及び/又は第2のチェーンの一端部は各主又は二次取り付けブロックに直接接続され得る。直前の形態では、弾性変形可能部材は第1又は第2のチェーンの一端部のみに配置される。
【0028】
一形態では、各第1のチェーンの第1の端部は、主取り付けブロックに接続さる各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材に連結される。別の形態では、第1のチェーンの複数の第1の端部は、1つの又は複数のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材に接続可能なリンク部に連結される。同様に、各第2のチェーンの第1の端部は各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材に連結され得るか又は1つの又は複数のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材が取り付けられたリンク部に連結され得る。
【0029】
各第1のチェーン及び第2のチェーンの第2の連結可能な端部は各固定点に接続可能であり得る。別の形態では、各第1のチェーン及び第2のチェーンの第2の連結可能な端部は各取り付けブロックに直接又は各プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材によりまとめて連結される。
【0030】
一形態では、リンク部材のそれぞれは、前記型枠の外にあるか又はその外からアクセス可能な追加の又は代替的なテンショナー(tensionable device)を含む。リンク部材は対応する取り付けブロックと各テンショナーとの間で延存するリンク部を含み得る。一形態では、テンショナーはコンクリート構造物が硬化された場合に取り外し可能である。リンク部材は低腐食特性の材料から作られていることが好ましい。別の形態では、リンク部材が延在する開口は、コンクリート構造物内に埋め込まれる補強アセンブリの腐食を抑制するために塞ぐことができる。
【0031】
プレテンショナブル部材は、補強アセンブリが締められると取り付けブロックが型枠又は金型の端部の方に引っ張られるようにすることでチェーンに張力がかかるように枠型にもたれる構成を有していてもよい。別の形態ではリンク部材は型枠又は金型の外に位置し且つ型枠又は金型から離れた各アンカーに連結され得る。アンカーは型枠から離れて地面に打ち込むことができる釘又は杭出あり得る。あるいは、アンカーは既存の構造に接続される連結部であり得る。一形態では、第1及び/又は第2のチェーンの一端は既存のコンクリートスラブ等の既存の構造物又は壁、基礎若しくは他の構造物上のアンカーポイントに接続され得る。
【0032】
プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材は第1及び第2のチェーンの一端部のみに位置していてもよいし、プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材は第1及び第2のチェーンの両端部に位置していてもよい。
【0033】
連結部は型枠の開口を通って延在することにより、型枠内、ひいては結果として得られるコンクリート構造物内で取り付けブロックを正しい高さで保持することが好ましい。開口は適切なプラグで塞ぐことができる。
【0034】
補強アセンブリは、プレキャストコンクリート構造物を動かすのに用いられる持ち上げ用ラグを取り付けることができるように持ち上げ用連結部を含み得る。持ち上げ用ラグはチェーンの少なくとも一部に接続されることにより、プレキャストコンクリート構造物を持ち上げるときに持ち上げ用ラグの欠陥によってコンクリート構造物が落下するのを避けるためにより大きな強度を提供する。
【0035】
本発明の一態様では、上記の補強アセンブリが組み込まれた耐震性構造物を提案する。本発明の別の態様では、上記の補強アセンブリが組み込まれた耐衝撃性構造物を提案する。上記の補強アセンブリは構造物がミサイル又は爆発装置等の兵器による衝撃を受けた場合に損傷を抑制する。
【0036】
コンクリート構造物は、加熱された場合に膨らむことにより火事が起こった場合にコンクリートを保護する耐火塗料等の耐熱コーティングを含み得る。あるいは、コンクリート構造物は火事の間に損傷を抑制するか又は少なくとも遅らせる難燃性添加物が組み込まれ得る。
【0037】
補強アセンブリは地震の間に又は自動車、ミサイル若しくは他の兵器により衝撃を受けたときに緩衝装置と同様な形で機能することを読者は理解するであろう。
【0038】
本発明の別の態様では、内部に埋め込まれた補強アセンブリを含む鉄筋コンクリート構造物を提案する。補強アセンブリは第1のチェーン、第2のチェーン、複数のプレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材及び複数の取り付けブロックを含み、使用の際、前記プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材は、前記第1のチェーン又は前記第2のチェーンと前記複数の取り付けブロックのうちの1つとの中間に配置可能であるため、前記コンクリート構造物を形成する前に前記第1のチェーン及び第2のチェーンに予め張力をかけることができる。
【0039】
本発明の別の態様では、コンクリート構造物を補強する方法を提案する。当該方法は、
所望のコンクリート構造物の境界を線引きするための仮設の型枠を組み立てるか又は金型を提供するステップと、
前記型枠又は金型内に補強アセンブリを配置するステップであって、該補強アセンブリはチェーンと、取り付けブロックと、プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材と、該取り付けブロックに取り付け可能であるとともに使用時に前記型枠又は金型を通って延在するか又は上方を延在するように構成されたリンク部材とを含み、該プレテンショナブル部材及び/又は弾性変形可能部材は、該チェーンの一部の少なくとも一端と対応する取り付けブロックとの中間に配置可能である、ステップと、
前記リンク部材及び/又はプレテンショナブル部材を調整することにより、前記チェーンに張力をかけるステップと、
前記型枠又は金型にコンクリート混合物を流し込んで前記コンクリート構造物を形成するステップと、
前記コンクリート混合物を硬化させるステップと、
前記型枠を取り外すか又は前記金型内から前記コンクリート構造物を取り出すステップであって、前記チェーンは前記コンクリート構造物内で予め張力がかけられた状態で維持されている、ステップと、
を含む。
【0040】
前記方法において、平行で離間された第1のチェーンは、平行で離間された第2のチェーンに対して垂直に又は傾斜して配置可能であり、該第1のチェーン及び該第2のチェーンのそれぞれの両端又は一端に隣接して各取り付けブロックを配置可能である。
【0041】
前記方法は第1及び第2のチェーンを交差させるか又は重ねるさらなるステップを含む。
【0042】
前記方法において、複数の第3の又はそれ以上のチェーンが第1及び第2のチェーンと交差されるか又は重ねられる。
【0043】
前記方法は前記コンクリート構造物を現場に配置することができるように前記コンクリート構造物を持ち上げるためにクレーンを用いるステップをさらに含み、前記チェーンの少なくとも一部に持ち上げ用ラグを接続可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本明細書に組み込まれ且つ本明細書の一部を構成する添付の図面は本発明の実施を示し、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲と共に本発明の利点及び原理を説明する役割を果たす。
【
図1】
図1は、コンクリート構造物のための補強アセンブリの一実施形態の斜視図であり、取り付けブロック内に位置する弾性変形可能部材の一部を示す。
【
図2】
図2は、コンクリート構造物内に埋め込まれた
図1の補強アセンブリの斜視図であり、コンクリート構造物の一部が取り除かれている。
【
図3】
図3は、
図2のコンクリート構造物の端部を線引きするのに用いられる型枠の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3の型枠内に位置し、アンカーポイントに接続された補強アセンブリの斜視図である。
【
図5】
図5は、コンクリート混合物が流し込まれた後の
図4の型枠の斜視図である。
【
図6a】
図6aは、補強アセンブリのアンカーポントの別の実施形態の上面概略図である。
【
図6b】
図6bは、締め付けられた構成の
図6aのアンカーポイントの上面概略図である。
【
図7】
図7は、第1及び第2のチェーンの斜視図であり、交差された構成を示す。
【
図8】
図8は、持ち上げ用ラグにより持ち上げられたプレキャストコンクリート構造物の斜視図である。
【
図9】
図9は、プレキャストコンクリート構造物に取り付け可能な
図8の持ち上げ用ラグの側面図である。
【
図10】
図10は、
図9の持ち上げ用ラグを取り付け可能な持ち上げ用連結部を示すプレキャストコンクリート構造物の概略図である。
【
図11】
図11は、チェーン構成の別の実施形態の上面図であり、第1、第2及び第3のチェーンを示す。
【
図12】
図12は、チェーン構成の上面図であり、互いにオフセットされた異なる平面に沿って延びる第1、第2及び第3のチェーンを示す。
【
図13】
図13は、弾性変形可能部材の一実施形態の平面図であり、砂時計状のばねの使用を示す。
【
図14】
図14は、補強アセンブリのさらに別の実施形態の部分斜視図である。
【
図16】
図16は、プレテンショナブル部材の一実施形態の平面図である。
【
図18】
図18は、補強アセンブリの別の実施形態の斜視図である。
【
図20】
図20は、プレテンショナブル部材及び弾性変形可能部材の双方を含む補強アセンブリの実施形態の平面図である。
【
図22】
図22は、チェーンの代替的なレイアウトの上面図である。
【
図23】
図23は、チェーンのさらに代替的なレイアウトの上面図である。
【
図24】
図24は、チェーンのさらに別の代替的なレイアウトの平面図である。
【
図25】
図25は、厚さ100mmのスラブについての荷重対たわみ曲線の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図面全体を通して、同様の参照符号は対応する部分を示す。図面に示す特定の部分の寸法は明瞭性又は説明を目的として変更及び/又は誇張されていることがある。
【0046】
より詳細な説明のために図面を参照して、補強アセンブリ10が示される。補強アセンブリ10は、一例として示すコンクリート構造物12に埋め込むことができ、本発明の原理が用いられる得る構成である。コンクリート構造物12は、
図3~
図5に示すように現場特有の型枠14に流し込まれて現場で硬化されるか又はコンクリート構造物12は現場外で金型又は型枠内で作られてから搬送されて現場で所定の位置に設置されるよう持ち上げられるプレキャストコンクリート構造物であり得る。読者には型枠又は金型は同じ機能を果たすことが分かるため、本明細書全体を通した型枠14への言及は金型の概念をも包含する。
【0047】
図1に示すように、補強アセンブリ10は、概ね平行で離間された複数の第1のチェーン16a~16fを含み、それぞれ連結可能な両端部(opposite tetherable ends)18及び20を有する。6つの第1のチェーンが図示されているが、当業者であれば第1のチェーンの数は6つよりも多いか又は少なくてもよいことが分かる。
【0048】
主取り付けブロック22、24は、チェーン16と総称する第1のチェーンの両端部18、20にそれぞれ隣接して位置する。
【0049】
本実施形態では、弾性変形可能部材26は、第1のチェーン16の各端部18及び20のそれぞれと主取り付けブロック22又は24との中間に位置する。弾性変形可能部材26は、主取り付けブロック22又は24上の対応する固定点28に接続される。図示のように、弾性変形可能部材26は螺旋ばね又はコイルばねであり得るが、本発明の範囲から逸脱することなく他の弾性変形可能部材を用いることができることを読者は理解すべきである。さらに、ばねはチェーンの部分の中間及び取り付けブロックから離れて位置し得ることが分かる。チェーンの2つの部分が細長いチェーンを形成するか又はバネは、互いに垂直であるか又は傾斜したチェーンの部分を接続し得ることが分かる。
【0050】
図1は、主取り付けブロック24に接続された弾性変形可能部材26のみを示すが、主取り付けブロック22も主取り付けブロック22に取り付けられたそれぞれの弾性変形可能部材26を有し得ることが分かる。あるいは、第1のチェーン16の端部20のみがそれに取り付けられる弾性変形可能部材26を有し、他端部18は単に取り付けブロック22上の固定点に直接接続される。
【0051】
主取り付けブロック22、24のそれぞれは、
図4に示すようにリンク部材34、36と係合するための連結部30、32を含む。
【0052】
アセンブリ10は、概ね平行で離間された複数の第2のチェーン38a~38gを含み、それぞれ連結可能な両端部40及び42を有する。7つの第2のチェーンが図示されているが、当業者であれば第2のチェーンの数は7つよりも多いか又は少なくてもよいことが分かる。図に示すように、第1及び第2のチェーンの数は異なり得るが、第1及び第2のチェーンの数は代替的に同じであってもよいことを理解すべきである。
【0053】
二次取り付けブロック46、46は、チェーン38と総称する第2のチェーンの両端部18、20にそれぞれ隣接して位置する。
【0054】
図示していないが、弾性変形可能部材26は、第2のチェーン38の一端部又は両端部40、42と二次取り付けブロック44又は46との中間に配置され得る。弾性変形可能部材26は、取り付けブロック22又は24上の対応する固定点28に接続される。
【0055】
二次取り付けブロック44、46のそれぞれは、
図4に示すようにリンク部材54、56と係合するための連結部50、52を含む。
【0056】
図2は、得られたコンクリート構造物12内に埋め込まれた補強アセンブリ10を示し、張力がかけられた状態で内部に保持された補強アセンブリ10を示すためにコンクリート構造物12の一部が取り除かれている。
図2は、リンク部材がどのようにコンクリート構造物12の外端まで広がっているかも示す。本図では、リンク部材36及び54のみを示すが、リンク部材34及び56についても同様であることが読者には分かるであろう。
【0057】
当業者であれば、既存の補強ロッドと同様にコンクリートが鉄筋の周りだけでなく各チェーンリンクに広がっていることも理解するであろう。本発明者は、この構成が構造的完全性を改善し、コンクリート構造物内でのチェーンの位置を維持するのを支援するものと予想する。
【0058】
リンク部材は、
図2に示すようにコンクリート構造物12の外端で終了するか又は外側に延びないように切断され得る。リンク部材34、36、54、56は低腐食特性の材料から作られているか又はリンク部材を外部環境から守るためにプラグ(図示せず)で包まれ得る。
【0059】
図3に示すように、特定場所専用の型枠14は、杭68によって直立姿勢で保持されたボード60、62、64、66を用いて作られる。特定場所専用の型枠14は、コンクリート構造物12の外端を線引きするのに用いられる。
図3にさらに示すように、ボード60、62、64、66のそれぞれは開口70を有し、各リンク部材は開口70を通ってコンクリート構造物12内で取り付けブロックを正しい高さで保持することができる。使用の際、開口は
図5に示すように適切なプラグ72で塞ぐことができ得る。
【0060】
しかしながら、本発明は図示の特定場所専用の型枠の使用に限定されず、プレキャストコンクリート構造物を製造するのに再利用可能な金型が用いられ得ることを読者は理解すべきである。したがって、図示の型枠の構成は本発明の説明を補助するための一例として提供しているに過ぎない。
【0061】
図4に示すように、取り付けブロック46に接続されるリンク部材54、56のそれぞれは追加のテンショナー74及びリンク76を含む。テンショナー74は、
図4に示すように型枠14の外側にあってもよいし、型枠14の外からアクセス可能であってもよい。リンク76は取り付けブロック46とテンショナー74との間で延在する。テンショナー74は型枠14の外に位置し且つ型枠14から離れたアンカー杭78に連結されている。図示していないが、取り付けブロック22、24及び44に取り付けられたリンク部材34、36、54及び56は同様の構成を有し得ることを読者は理解するであろう。
【0062】
図5は、コンクリート混合物が流し込まれた型枠14を示す。生コンクリートを硬化させ、次にテンショナー74がリリースされてリンク76から取り外される。次に、ボード60、62、64、66を従来の方法で取り外すことができる。この時点でコンクリートは硬化されているため、補強アセンブリ10は内部で張力を受けた状態で保持されている。
【0063】
テンショナー74は杭78に固定されず、むしろチェーンに張力がかけられて、取り付けブロックが型枠14の隣接するボード60、62、64、66の方に引っ張られるように型枠14にもたれる(bear against)ように構成されてもよいことを読者は理解すべきである。例えば、孔を有するU字状の鋼製チャンネルRSJコラムを型枠14に固定してプレテンショナブル部材79のためのアンカーポイントを提供することができる。
【0064】
しかしながら、チェーンはその一端又は両端を既存のコンクリートスラブ等の既存の構造物又は壁若しくは基礎(図示せず)上のアンカーポイントにも接続され得ること読者は理解するであろう。
【0065】
図6aは型枠14にもたれるプレテンショナブル部材79の一実施形態を示す。本実施形態では、プレテンショナブル部材79はねじ付きシャフト82、六角ナット84及びワッシャ86を含む。ねじ付きシャフト82は連結部30に接続されるリンク76に接続される。本実施形態では、連結部30はチェーン16aの取り付けられるばね26のための固定点28に直接接続される。
図6bに示すように六角ナット84がねじ付きシャフト82上で締められると、取り付けブロック24がボード62の方に引かれてチェーン16aが締められる。さらに図示するように、ばね26もわずかに延びるか又は少なくとも張力がかけられる。
【0066】
ばね26がわずかに延びるようにされた状況において、コンクリート混合物が流し込まれた場合にコンクリートはコイル間の間隙に流入し、コンクリートが硬化されるとばね26を広がった構成で維持するのを支援することを読者は理解すべきである。したがって、地震又は地震活動が起きた場合、ばね26はコンクリート構造物のパーツのうちで最初に動き、それにより構造物12の壊滅的な破損を防止するコンクリート構造物12内での一定の動きを可能にするパーツであることが予想される。コンクリート構造物12内での補強アセンブリ10の一部の内部運動は、極端な応力を受けた場合に、耐震性又は耐衝撃性を改善しつつより大きな強度を有する構造を提供する。
【0067】
図7に示すように、第1のチェーン16及び第2のチェーン38は交差されることによりメッシュを形成する。
図7の左側の拡大部分に示すように、チェーン16aのチェーンリンク80は、チェーン38bのチェーンリンク80の下を通る。そして、
図7の右側の拡大部分に示すように、チェーン16aのチェーンリンク80はチェーン38cのチェーンリンク80の上を通る。チェーン16、38を交差させることは、応力破壊につながり得る水平方向の脆弱線に沿ってコンクリートが積層されるのを阻害することによりコンクリート構造物12の強度を高める。しかしながら、チェーンは部分的に交差されるか又は重ねられ、上側にあるチェーンは連結クリップ若しくは固定クリップ又は弾性変形可能部材により下側にあるチェーンに連結され得ることを理解すべきである。
【0068】
図8~
図10に示すように、補強アセンブリ10は、プレキャストコンクリート構造物12を動かすのに用いられる持ち上げ用ラグ90を取り付けることができるように持ち上げ用連結部88を含む。このようにして、クレーン(図示せず)の持ち上げチェーン92を取り付けて、コンクリート構造物12を持ち上げて動かすことができる。
【0069】
本実施形態では、持ち上げ用ラグ90は、持ち上げ用連結部88に着脱可能に取り付けることができる。
図9に示すように、持ち上げ用ラグ90は、持ち上げ用チェーン92を取り付けるための孔98を有するねじ付きシャフト94及びフランジ96を含む。ねじ付きシャフト94は、
図10に示すように、持ち上げ用連結部88のねじボア100と係合するように構成されている。本実施形態では、持ち上げ用連結部88はチェーン16bに直接接続されているが、持ち上げ用連結部88は取り付けブロック22、24、44又は46のうちの1つに接続され得ることを読者は理解するであろう。
【0070】
従来のプレキャストパネルで使用されている持ち上げ用ラグが折れることにより、パネルが時期尚早にリリースされて周辺にいる人員が負傷するか又は死亡することがある。したがって、チェーンの少なくとも一部に接続された持ち上げ用ラグ90を有することの利点の1つは、コンクリートパネル12の本体に広がる要素に持ち上げ用ラグ90が接続されているため、コンクリート構造物12が動かされている間にコンクリート構造物12をより確実に保持することができる点である。
【0071】
図11は、概して三角形状の空隙104が形成されるように互いに交差されるか又は重ねられた第1のチェーン16、第2のチェーン38及び第3のチェーン102を示すチェーン構成の別の実施形態を示す。
【0072】
図12の上面図に示すように、第1のチェーン16、第2のチェーン38及び第3のチェーン102は、互いにオフセットされた異なる平面に沿って延在する。
図12は互いに対して傾斜したチェーンの部分を相互接続するばね26も示す。
【0073】
別の実施形態では、
図13に示すように、補強アセンブリ10は、一端がチェーン16に結合され、他端がアイボルト110を介して取り付けブロック24に結合された砂時計状のばね108の形態の弾性変形可能部材を含む。ケーブル112の形態のリンク部材は、反対側が取り付けブロック24に取り付けられたアイボルト114に接続されている。ケーブル112は型枠ボード62の開口70を通過し、杭78に接続されたアイボルト116に連結されている。
【0074】
図14及び
図15は、
図13と同様の構成であるが、プレテンショナブル部材がばねではなくターンバックル118の形態である構成を示す。
【0075】
図16及び17もターンバックル118の使用を示すが、この構成ではターンバックル118は剛性のパイプ122を介して係合するアイボルト120に接続されている。アイボルト120の端部124は、型枠ボード62の開口70を貫通しナット126により固定されている。剛性のパイプ122は金属で形成され、コンクリート構造物12が形成された場合にコンクリート構造物12の縁部内で保持されるように構成されている。別の形態では、アイボルト120は型枠ボード62が必要とされない状況において既存の壁又は支持構造等の永久構造に接続されている。
【0076】
さらに別の実施形態では、
図18及び
図19に示すように、ターンバックル118の外側孔部128は型枠ボード62の開口70を貫通している。本実施形態では、コンクリート構造物が十分に硬化された場合に、外側孔部128をターンバックル118から分離することにより型枠ボード62が取り外される。コンクリート構造物12の側部にある残りの開口孔(図示せず)は、必要に応じて適切なコーキング材料で塞がれ得る。
【0077】
図20は、ターンバックルの形態のプレテンショナブル部材118及び砂時計状の螺旋ばねの形態の弾性変形可能部材108の双方を含む補強アセンブリ10の別の実施形態を示す。
図20は取り付けブロック24の使用を示すが、プレテンショナブル部材118は別の実施形態ではケーブル112に直接接続され得ることを読者は理解すべきである。
【0078】
図21~
図24は、チェーンのレイアウトの代替的な実施形態を示す。
図21では、2つの重ねられたチェーン16及び38は正方形の格子パターンで用いられている。
図22は、正方形の格子パターンのチェーン16及び38の上に斜めに置かれた追加のチェーン102を示す。
【0079】
図23は、交差するチェーン130、132、134、136及び交差するチェーン138、140、142、144を有する概ね正方形のウェブ形状の構成を示す。
【0080】
図24は、
図22のチェーン16、38及び102の上に斜めに置かれた追加のチェーン146を示す。本発明の範囲から逸脱することなく、例えば限定されないがメッシュ又はワイヤ等の他の追加の補強材が用いられ得ることを読者は理解するであろう。
【0081】
図25は、従来の補強材を含む厚さが100mmのスラブ(従来のスラブ)と比較した場合の本発明の補強アセンブリ10を含む厚さが100mmのスラブ(チェーンスラブ)の荷重対たわみ曲線の試験結果を示す。従来のスラブは、長手方向に200mmの間隔で置かれた直径10mmの棒及び横方向に200mmの間隔で置かれた6mmの棒を含む補強材を含んでいた。チェーンスラブは、対照スラブと同様に200mm c/cの間隔で置かれた直径10mmのチェーンと共に成形された。双方のスラブのサイズは2.2m×0.9m×0.1mであった。試験の間、パネルはその長辺で支持され、較正されたロードセルを介して負荷が加えられた。チェーンスラブの最大荷重は43.3kNであるのに対して対照スラブの最大荷重は33kNであった。
【0082】
図25に全てのパネルの荷重対たわみのプロットを示す。図から分かるように、対照スラブにより維持された最大荷重は33kN(W)(同等の線荷重は約16.5kN/m)、最大たわみは83mmである。チェーンスラブにより維持された最大荷重は43.3kN(W)(同等の線荷重は約21.65kN/m)であり、最大たわみは92mmである。チェーンRCスラブの耐荷力は対照スラブをはるかに上回っていることに読者は留意すべきである。加えて、チェーンスラブは完全には崩壊しなかったのに対して、対照スラブは荷重載荷点(point of loading)で2つに割れた。
【0083】
図25から、チェーン補強スラブは破壊荷重まで線形弾性挙動を呈することも推測できる。これは、チェーン補強スラブは従来の理論的アプローチを用いて解析できること、すなわちモーメント能力ついての既存の方程式を容易に修正できることを示唆する。予想されるように、通常のスラブは最大負荷まで線形弾性挙動を呈し、その後にひずみ硬化挙動及び破壊に進む。これに対して、チェーン補強スラブはより強く且つ弾性があるが通常の補強スラブは初期段階で剛性がより高いことを示唆し得る。
【0084】
当業者であれば、説明した本発明の多くの利点を理解するだろう。一形態では、本発明は、構造物の全体的な強度に悪影響を及ぼすことなく、耐震性又は耐衝撃性が改善されているとともに配管等のサービスに対応するために動かすことができるとともにコンクリートパネルの本体内での補強材の最適な位置決めを支援する移動可能な又は調整可能な補強要素を含むコンクリート構造物を補強するためのアセンブリ及び方法を提供することができる。したがって、本発明は地震が起きやすい地域やコンクリート構造物が兵器又は他の衝撃からの衝撃に耐えることができるか又は耐性を有することが必要とされる場合での使用に好適である。「耐性を有する」という用語は、本発明がコンクリート構造物の壊滅的な不具合が起こる可能性を低減するように結果として生じる損傷を最小化するという考えを包含することを読者は理解するであろう。
【0085】
本発明の例示の実施形態に関連して本発明の様々な特徴を具体的に図示説明してきた。しかしながら、これらの特定の構成は説明のためのものに過ぎず、本発明はそのような構成に限定されないことを理解すべきである。したがって、本発明は本発明の精神及び範囲内にある様々な変形を含むことができる。明細書の目的上、「含む」という用語は「含むがこれに限定されない」ことを意味する。