(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】機械式化学ポンプを具える陰圧処理
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20231113BHJP
【FI】
A61M27/00
(21)【出願番号】P 2021510173
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019012298
(87)【国際公開番号】W WO2020046410
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519352676
【氏名又は名称】アートラ・メディカル、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AATRU MEDICAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】ブアン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミッドオー、リチャード・エル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイチェホフスキ、ティモシィ
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ、トーマス・イー
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10046095(US,B1)
【文献】特表2010-506691(JP,A)
【文献】国際公開第2017/075331(WO,A1)
【文献】特表2007-509639(JP,A)
【文献】特開2018-047271(JP,A)
【文献】特表2014-501561(JP,A)
【文献】特表2009-536852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0143882(US,A1)
【文献】特表2014-514089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の手当て部位を覆うドレープと、
シーリング要素と、
反応器と、
機械式ポンプ組立体と、
化学ポンプハウジングと、該化学ポンプハウジングのチェインバ内に配置された反応器とを含む化学ポンプ組立体を具える陰圧組立体であって、
前記ドレープが、真空適用時に皮膚に対して密閉されると、該ドレープの下を陰圧に維持することが可能であり、
前記シーリング要素が、前記皮膚に当てられると、前記ドレープと協働し、前記ドレープによって覆われ前記シーリング要素によって囲まれている囲まれた体積を画定し、
前記反応器が、前記ドレープ及び前記シーリング要素に対して配置され、前記ドレープが前記手当て部位を覆っているとき、前記囲まれた体積と流体連通し、前記反応器が、空気中にある選択されたガスを消費するように該選択されたガスと反応するように構成され、
前記機械式ポンプ組立体が、前記囲まれた体積と流体的に接続可能なポンプチェインバを具え、前記囲まれた体積と流体的に接続されているときに空気を前記囲まれた体積から前記ポンプチェインバに引き込むように構成され、
前記機械式ポンプ組立体が、前記化学ポンプ組立体に接続可能であり、前記ポンプチェインバが前記化学ポンプ組立体を介して前記囲まれた体積と流体連通している、
陰圧組立体。
【請求項2】
吸収性材料および前記ドレープを含む手当て用品をさらに含む、請求項1の陰圧組立体。
【請求項3】
前記化学ポンプ組立体が、前記チェインバが前記囲まれた体積と流体連通するように、フィッティングを介して前記手当て用品と接続可能である、請求項1の陰圧組立体。
【請求項4】
前記手当て用品に設けられ、前記囲まれた体積および周囲と流体連通するリリーフバルブをさらに具え、周囲と前記囲まれた体積との間の圧力差が所定の圧力範囲外にあるとき、周囲からのガスが前記リリーフバルブを介して前記囲まれた体積に入ることができるように前記リリーフバルブが構成されている、請求項2の陰圧組立体。
【請求項5】
ホースが前記化学ポンプ組立体、または前記ホースを巻き付けることができるラップ要素を含む前記化学ポンプ組立体に格納可能な、請求項1の陰圧組立体。
【請求項6】
前記チェインバが陰圧下にあるとき、該チェインバに向かって移動するように構成された、前記化学ポンプハウジングに設けられたダイアフラムをさらに含む、請求項1の陰圧組立体。
【請求項7】
前記機械式ポンプ組立体が、バルブ、フィッティング、またはホースを介して前記化学ポンプハウジングに接続可能である、請求項1の陰圧組立体。
【請求項8】
ガスが前記バルブを通って前記ポンプチェインバに出ることができ、周囲の空気が前記バルブを通って前記チェインバに入るのを防ぐことができるように、前記バルブが構成されている、請求項7の陰圧組立体。
【請求項9】
前記化学ポンプハウジングに設けられ、前記チェインバおよび周囲と流体連通するリリーフバルブをさらに具え、周囲と前記チェインバとの間の圧力差が所定の圧力範囲外にあるとき、周囲からのガスが前記リリーフバルブを介して前記チェインバに入ることができるように前記リリーフバルブが構成されている、請求項1の陰圧組立体。
【請求項10】
患者の手当て部位を覆うドレープと、
シーリング要素と、
反応器と、
機械式ポンプ組立体
と、
チェインバおよび化学ポンプハウジングを含む化学ポンプ組立体と、
前記化学ポンプハウジング又は前記ドレープに設けられた双方向バルブを具える陰圧組立体であって、
前記ドレープが、真空適用時に皮膚に対して密閉されると、該ドレープの下を陰圧に維持することが可能であり、
前記シーリング要素が、前記皮膚に当てられると、前記ドレープと協働し、前記ドレープによって覆われ前記シーリング要素によって囲まれている囲まれた体積を画定し、
前記反応器が、前記ドレープ及び前記シーリング要素に対して配置され、前記ドレープが前記手当て部位を覆っているとき、前記囲まれた体積と流体連通し、前記反応器が、空気中にある選択されたガスを消費するように該選択されたガスと反応するように構成され、
前記機械式ポンプ組立体が、前記囲まれた体積と流体的に接続可能なポンプチェインバを具え、前記囲まれた体積と流体的に接続されているときに空気を前記囲まれた体積から前記ポンプチェインバに引き込むように構成され、
前記機械式ポンプ組立体が、手動で作動するアクチュエータおよび可動ポンプ要素に動作可能に接続されたバイアス機構を含み、前記手動で作動するアクチュエータの作動により、前記バイアス機構が前記可動ポンプ要素を動かし、空気を前記機械式ポンプ組立体内に引き込
み、
前記化学ポンプ組立体が、前記チェインバが前記囲まれた体積と流体連通するように、前記手当て用品と接続可能であり、
前記機械式ポンプ組立体も、前記双方向バルブを介して前記囲まれた体積と流体連通することができる、
陰圧組立体。
【請求項11】
前記バイアス機構がばねであり、前記可動ポンプ要素がピストンである、請求項10の陰圧組立体。
【請求項12】
前記化学ポンプ組立体が、バルブ、フィッティング、またはホースを介して前記手当て用品に接続され、前記化学ポンプ組立体が前記手当て用品に接続され、前記機械式ポンプ組立体が別個のバルブ、フィッティング、および/またはホースを介して前記手当て用品に接続されている、請求項
11の陰圧組立体。
【請求項13】
前記化学ポンプハウジングに設けられ、前記チェインバおよび周囲と流体連通するリリーフバルブをさらに具え、周囲と前記チェインバとの間の圧力差が所定の圧力範囲外にあるとき、周囲からのガスが前記リリーフバルブを介して前記チェインバに入ることができるように前記リリーフバルブが構成されている、請求項
12の陰圧組立体。
【請求項14】
前記化学ポンプ組立体が、バルブ、フィッティング、またはホースを介して第二手当て部位を覆う第二手当て用品に接続可能である、請求項
13の陰圧組立体。
【請求項15】
前記ホースがY字形であり、前記化学ポンプ組立体が前記ホースによって前記手当て用品および前記第二手当て用品に同時に接続可能である、請求項
14の陰圧組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
陰圧療法(negative pressure therapy)とは、皮膚の治療や修復を目的とした陰圧を利用した治療法である。陰圧とは、通常の大気圧以下の圧力を表す用語である。陰圧療法は、創傷や切開部などの皮膚の複数の部位に利用される。さらに、陰圧療法は、複雑な治療の懸念がある創傷を扱うのに有用である。加えて、陰圧療法は、しわを除去するなどの美容目的にも使用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、陰圧療法は、手当て部位上の手当て用品の下で減圧を維持することによって達成される。ポンプなどの真空発生源は、手当て部位上の手当て用品の内部を減圧する。しかしながら、化学反応を利用して作動する真空発生源を最初に作動させると、真空発生源の作動の最初の数分間は、望ましい陰圧が得られない場合がある。その結果、陰圧療法の開始時に手当て用品が適切に密閉されていないと、手当て用品が密閉されていないという徴候に数分間、気付かない場合がある。さらに、最終的に減圧が得られた場合に、陰圧が陰圧療法の目標圧力範囲以下に低下しやすい(例えば、皮膚に真空をかけすぎる)場合がある。また、陰圧が目標圧力範囲以下に低下すると、手当て用品が患者に不快感を与えることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
前述の観点から、陰圧組立体は、ドレープ、シーリング要素、反応器、および機械式ポンプ組立体を含む。ドレープは患者の手当て部位を覆い、真空適用時に、皮膚に対して密閉されると、ドレープの下を陰圧に維持することができる。シーリング要素は、皮膚に当てられると、ドレープと協働して、ドレープによって覆われ、シーリング要素によって囲まれている囲まれた体積を画定する。反応器は、空気中にある選択されたガスと反応して消費するように構成されており、ドレープが手当て部位を覆っている場合、囲まれた体積と流体連通するように、ドレープおよびシーリング要素に対して配置されている。機械式ポンプ組立体は、囲まれた体積と流体的に接続可能であり、囲まれた体積と流体連通するポンプチェインバを有し、囲まれた体積からポンプチェインバ内に空気を引き込む。
【0004】
上記の陰圧組立体は、ドレープと吸収性材料とを含む手当て用品をさらに含んでもよい。さらに、反応器は、手当て用品内に配置されてもよい。さらに、リリーフバルブが手当て用品に配置されてもよい。リリーフバルブは、囲まれた体積および周囲と流体連通している。周囲と囲まれた体積との間の圧力差が所定の圧力範囲外にある場合、リリーフバルブによって、周囲からのガスが囲まれた体積に流入する。
【0005】
機械式ポンプ組立体は手当て用品に接続されてもよく、機械式ポンプ組立体のポンプチェインバは、囲まれた体積と流体連通している。機械式ポンプ組立体は、バルブ、フィッティング、またはホースを介して手当て用品に接続されもよい。バルブは、ガスがバルブを通って機械式ポンプ組立体のポンプチェインバに出ることを可能にする一方で、周囲の空気がバルブを通って囲まれた体積に入ることを防止するように構成されてもよい。または、バルブは、周囲の圧力が囲まれた体積の圧力よりも低い場合、ガスがバルブを通って出ることを可能にし、周囲と囲まれた体積との間の圧力差が所定の圧力範囲外にある場合、周囲からのガスがバルブを通って囲まれた体積に入ることを可能にするように構成された双方向バルブであってもよい。さらに、機械式ポンプ組立体は、手動で作動するアクチュエータと、可動ポンプ要素に動作可能に接続されたバイアス機構を含んでもよい。手動で作動するアクチュエータが作動すると、バイアス機構によって可動ポンプ要素が移動する。その結果、空気が機械式ポンプ組立体内に引き込まれる。バイアス機構はばねであってもよく、可動ポンプ要素はピストンであってもよい。
【0006】
上記の陰圧組立体は、チェインバを有する化学ポンプハウジングを含む化学ポンプ組立体をさらに含んでもよい。この実施形態では、反応器は、手当て用品の替わりに化学ポンプハウジングのチェインバ内に配置される。さらに、化学ポンプ組立体は、チェインバが陰圧下にある場合、そのことを示すためにチェインバに向かって移動するダイアフラム(diaphragm)を含んでもよい。さらに、リリーフバルブは、代替的に手当て用品の替わりに化学ポンプ組立体に設けられてもよいし、手当て用品のままでもよい。
【0007】
化学ポンプハウジングは、バルブ、フィッティング、またはホースを介して手当て用品に接続されてもよい。さらに、化学ポンプ組立体は、第二バルブ、第二フィッティング、またはホースを介して、第二手当て部位を覆う第二手当て用品に接続されてもよい。ホースは、化学ポンプ組立体を手当て用品と第二手当て用品とに同時に接続すべくY字形であってもよい。化学ポンプハウジングが手当て用品に接続されている場合、化学ポンプ組立体のチェインバは、囲まれた体積と流体連通している。ホースは、化学ポンプ組立体内に格納可能であってもよい。または、ホースは、化学ポンプ組立体に設けられたラップ要素(wrap element)の周りに巻かれてもよい。また、化学ポンプ組立体がフィッティングを介して手当て用品と接続されている場合、機械式ポンプ組立体もまた、フィッティングを介して手当て用品と接続されていてもよい。または、化学ポンプ組立体と機械式ポンプ組立体は、別個のバルブ、フィッティング、および/またはホースを介して手当て用品に接続されていてもよい。
【0008】
さらに別の実施形態では、機械式ポンプ組立体は、化学ポンプ組立体に接続されてもよい。その結果、機械式ポンプ組立体のポンプチェインバは、化学ポンプ組立体を介して囲まれた体積と流体連通する。機械式ポンプ組立体は、バルブ、フィッティング、またはホースを介して化学ポンプハウジングと接続可能であってもよい。バルブを有する実施形態では、周囲の空気がバルブを通ってチェインバ内に入るのを防ぐことができる一方で、ガスは、バルブを通ってポンプチェインバ内に入ることができる。
【0009】
別の実施形態による陰圧組立体は、ドレープ、シーリング要素、バルブ、および機械式ポンプ組立体を含む。ドレープは、患者の手当て部位を覆い、真空適用時に、患者の皮膚に対してドレープが密閉されると、ドレープの下を陰圧に維持することができる。シーリング要素は、皮膚に当てられると、ドレープと協働して、ドレープによって覆われ、シーリング要素によって囲まれている囲まれた体積を画定する。バルブは、ドレープ上に設けられ、ガスがバルブを通って囲まれた体積から出る第一動作状態と、ガスがバルブを通って囲まれた体積から出ることを阻止される第二動作状態とを有する。機械式ポンプ組立体は、バルブが第一動作状態にある場合にバルブを介して囲まれた体積と流体的に接続されたポンプチェインバを具える。機械式ポンプ組立体はまた、囲まれた体積と流体的に接続されている場合に囲まれた体積からポンプチェインバ内に空気を引き込むように構成されている。
【0010】
陰圧組立体は、ドレープ、シーリング要素、および吸収性材料を含む手当て用品をさらに含んでもよい。機械式ポンプ組立体は、ポンプチェインバが囲まれた体積と流体連通するように、バルブを介して手当て用品と接続可能である。陰圧組立体はまた、ドレープが手当て部位を覆っている場合に反応器が囲まれた体積と流体連通するように、ドレープとシーリング要素に対して配置された反応器を含んでもよい。反応器は、空気中にある選択されたガスと反応し、選択されたガスを消費する。一実施形態では、反応器は手当て用品内に配置される。別の実施形態では、陰圧組立体は、反応器が設けられた化学ポンプハウジングを有する化学ポンプ組立体をさらに含む。
【0011】
さらに、リリーフバルブが手当て用品に設けられてもよい。リリーフバルブは、囲まれた体積および周囲と流体連通している。リリーフバルブは、周囲と囲まれた体積との間の圧力差が所定の圧力範囲外にある場合、周囲からのガスがリリーフバルブを通って囲まれた体積に入ることを可能にする。または、バルブは、周囲の圧力が囲まれた体積の圧力よりも低い場合にはガスがバルブを通って出ることを可能にし、周囲と囲まれた体積との間の圧力差が所定の圧力範囲外にある場合には周囲からのガスがバルブを通って囲まれた体積に入ることを可能にする双方向弁であってもよい。所定の圧力範囲は、大気圧よりも50mmHgから200mmHg低い間でもよい。
【0012】
さらに、機械式ポンプ組立体は、手動で作動するアクチュエータと、可動ポンプ要素に動作可能に接続されたバイアス機構とを含んでもよい。手動で作動するアクチュエータを作動させると、バイアス機構によって可動ポンプ要素が移動する。その結果、空気が機械式ポンプ組立体に吸い込まれる。バイアス機構はばねであってもよく、可動ポンプ要素はピストンであってもよい。ホースはまた、機械式ポンプ組立体内に格納可能であってもよい。または、ホースは、機械式ポンプ組立体のラップ要素に巻かれてもよい。機械式ポンプ組立体は、さらに、バルブ、フィッティング、またはホースを介して、第二手当て部位を覆う第二手当て用品に接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の陰圧キットの手当て用品および機械式ポンプ組立体の概略断面図。
【
図3】
図3は、手当て用品および機械式ポンプ組立体の斜視図。
【
図4】
図4は、
図3の手当て用品、および手当て用品に接続される前の化学ポンプ組立体の斜視図。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の化学ポンプ組立体の概略断面図。
【
図5A】
図5Aは、本発明のさらに別の実施形態の化学ポンプ組立体の概略断面図。
【
図6】
図6は、作動前の機械式ポンプ組立体の概略断面図。
【
図7】
図7は、作動後の機械式ポンプ組立体の概略断面図。
【
図8】
図8は、手当て用品、および手当て用品に接続された後であって手当て用品の下が治療範囲の陰圧になる前の化学ポンプ組立体の斜視図。
【
図9】
図9は、手当て用品、手当て用品に接続された後の化学ポンプ組立体、および当該化学ポンプ組立体に接続された後であって作動前の機械式ポンプ組立体(概略断面図)の斜視図。
【
図10】
図10は、手当て用品、手当て用品に接続された後の化学ポンプ組立体、および当該化学ポンプ組立体に接続された後であって作動後の機械式ポンプ組立体(概略断面図)の斜視図。
【
図11】
図11は、手当て用品、および手当て用品に接続された後で、手当て用品の下が治療範囲の陰圧に到達した後であってダイアフラムが化学ポンプ組立体のチェインバに向かって反転した後の化学ポンプ組立体の斜視図。
【
図12】
図12は、手当て用品、手当て用品に接続される前であって作動前の化学ポンプ組立体、および手当て用品に接続された後の機械式ポンプ組立体の斜視図。
【
図13】
図13は、ラップ部材を含む化学ポンプハウジングの一部の概略断面図。
【
図14】
図14は、本発明の別の実施形態の手当て用品の下が治療範囲の陰圧に到達した後の、化学ポンプ組立体と手当て用品と第2手当て用品の斜視図。
【
図15】
図15は、本発明のさらに別の実施形態の手当て用品に接続された後であって作動前の機械式ポンプ組立体(概略断面図)および手当て用品の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、陰圧療法に有用な陰圧キット10が示されている。本明細書で説明する陰圧とは、大気圧以下の圧力である。陰圧キット10は、トレイキット12および陰圧組立体を含む。
図1に示された実施形態では、陰圧組立体は、少なくとも1つの手当て用品14、化学ポンプ組立体16、および機械式ポンプ組立体18を含む。
【0015】
トレイキット12は、上カバー20および下カバー22を具える。少なくとも1つの凹部24は、少なくとも1つの手当て用品14、化学ポンプ組立体16、および機械式ポンプ組立体18を収納するために、下カバー22に設けられてもよい。トレイキット12が閉まっている場合に上カバー20と下カバー22の間の空間を維持するために、スペーサ壁26を追加してもよい。スペーサ壁26は、少なくとも1つの凹部24の周囲を少なくとも部分的に取り囲んでもよい。下カバー22は、少なくとも1つの凹部24内に構成要素を固定するための固定要素をさらに含んでもよい。また、トレイキット12は、上カバー20と下カバー22を閉じた状態に維持するための閉鎖要素を含んでもよく、トレイキット12が閉まっている場合にトレイキット12をロックするためのロック用部品をさらに含んでもよい。
【0016】
図2を参照して、手当て用品14は、患者の皮膚上の手当て部位28上に配置される。手当て部位28は、これらに限定されないが、創傷、切開部、または創傷若しくは切開部が存在しない皮膚であってよい。図示された実施形態では、手当て用品14は、ドレープ40、ウィッキング、すなわち、吸収性要素42、およびフィッティング44を含む。手当て用品14は、シーリング要素46などのさらなる構成要素を含んでもよいし、米国出願第16/114,813号およびPCT/US2016/059364号に記載された手当て用品と同様の構造であってもよい。ドレープ40は、可撓性材料から作られてもよく、薄い可撓性エラストマーフィルムから作られてもよい。そのような材料の例としては、ポリウレタンまたはポリエチレンフィルムが挙げられる。ドレープ40は、フィッティング44と協働可能な少なくとも1つの開口部48(
図1参照)を含んでもよい。図示された実施形態におけるドレープ40は、開口部48が周囲と連通していない場合、真空適用時に皮膚に対して密閉されると、ドレープ40の下を陰圧に維持することが可能な薄いフィルムである。
【0017】
ドレープ40は、ドレープトップ52とドレープ端54とをさらに具える。ドレープトップ52およびドレープ端54は、1つの連続したピースから作られてもよいし、融着された複数のピースから作られてもよい。ドレープ端54は、手当て部位28の周囲に配置され、ドレープトップ52は手当て部位28を覆う。ドレープ40は、様々な手当て部位28を覆うために、様々な形状およびサイズで作られ得る。開口部48は、ドレープトップ52を貫通して延びる。
【0018】
引き続き
図2を参照して、シーリング要素46は、ドレープ40および皮膚Sと協働し、ドレープ40と手当て部位28との間で画定され、且つ、シーリング要素46によって囲まれている囲まれた体積60を形成する。シーリング要素46は、手当て用品14とは別体であってもよいし、手当て用品14の構成要素であってもよい。シーリング要素46によってドレープ40と皮膚Sとの間の流体(空気を含む)の漏れが防止されるので、シーリング要素46は、ガスケットのように機能する。空気または空気中にある選択されたガスは、適切に密閉されている場合、少なくとも1つの開口部48およびフィッティング44を介して手当て用品14から選択的に出ることができる。このように、シーリング要素46は、手当て用品14内の陰圧を維持するのに役立つ。シーリング要素46は、シリコーンまたはハイドロゲル材料のような材料から作られてもよい。
【0019】
手当て用品14は、創傷接触層68をさらに含んでもよい。ドレープトップ52は、創傷接触層68および/またはウィッキング、すなわち、吸収性要素42を覆う。創傷接触層68は、ゴムのような特性を有するポリマー材料のようなエラストマー材料から作られてもよい。さらに、創傷接触層68は、薄い可撓性エラストマーフィルムであるエラストマー材料であってもよい。このような材料の例としては、銀コーティングされたナイロン、有孔シリコーンメッシュ、または患者の組織に付着しない他の材料が挙げられる。創傷接触層68は、手当て部位28に接触する。創傷接触層68は、ウィッキング要素42と協働するための少なくとも1つの開口部を含んでもよく、これにより、手当て部位28から囲まれた体積60内への滲出液の移動を抑えることができる。シーリング要素46はまた、創傷接触層68(創傷接触層68が含まれない場合にはウィッキング要素42)の手当て部位28に接触する側に設けられてもよい。
【0020】
ドレープリリースライナー(図示せず)が、ドレープ端54の下面に設けられる。ドレープリリースライナーは、手当て用品14が手当て部位28に当てられる前に取外される。ドレープリリースライナーが取外されると、ドレープ端54の下面の接着剤66が露出する。手当て用品14が患者に置かれると、シーリング要素46とは異なるアクリル系接着剤であり得る接着剤66は、患者の手当て部位28の周りの皮膚Sにドレープ端54を固定する。従って、ドレープ端54と皮膚Sとの間の接触が維持される。
【0021】
ウィッキング要素、すなわち、吸収要素42は、手当て部位28からの滲出液を吸収することができる吸収性材料から作られる。ウィッキング要素42は、超吸収性ポリマー、吸収性ビーズ、発泡体、または天然の吸収体から作られてもよい。また、ウィッキング要素42は、減圧を維持することができるように、空気中にあるガスのための適切な空隙を具えてもよい。例えば、ウィッキング要素42は、創傷からの滲出物を吸収しながらガスの空隙が維持されるように、ドレープ40と比較して比較的剛性の高い発泡体から作られてもよい。ウィッキング要素42はまた、上述の体積コントロールをもたらすために、例えば隣接するビーズ間で膨張してガス空隙を形成する上述の高吸水性ポリマーから作られてもよい。ウィッキング要素42は、スポンジとは異なり、滲出液を化学的に吸収し、滲出液がウィッキング要素を通って真空源に向かって通過することを妨げる、商標「Vilmed」(米国登録商標)の下で入手可能なハイドロアクティブ創傷パッドでもよい。
【0022】
手当て用品14はまた、ドレープトップ52の開口部48を覆う通気性液体不透過性膜70を含んでもよい。一実施形態では、通気性液体不透過性膜70は、ドレープトップ52の下面に設けられる。空気は、通気性液体不透過性膜70を通過することができ、液体は、通気性液体不透過性膜70を通過することができない。従って、滲出液は、通気性液体不透過性膜70を通って流れることができない。別の実施形態では、通気性液体不透過性膜70は、ドレープトップ52の上面に設けられる。さらに、
図2には、ドレープ40の下であって手当て用品14の中に設けられた反応器の形態の化学ポンプ82が示されている。化学ポンプ82は他の場所に配置されてもよく、これは、以下で、より詳細に説明される。
【0023】
図3には、(概略的に示された)ホース62を介して機械式ポンプ組立体18に接続された手当て用品14が示されている。機械式ポンプ組立体18が手当て用品14に接続されているとき、機械式ポンプ組立体18は、以下でより詳細に説明する方法で、フィッティング44を介して囲まれた体積60と流体連通している。機械式ポンプ組立体18が作動すると、開口部48、フィッティング44、およびホース62を介して囲まれた体積60から機械式ポンプ組立体18内に空気が引き込まれる。このように、皮膚Sの手当て用品14による密閉は、ドレープ40が皮膚Sに向かって引き寄せられるという点で確認することができる。その後、ホース62は、フィッティング44から取り外すことができ、これにより、囲まれた体積60内に空気が入り、囲まれた体積60が大気圧に向かって戻る。
【0024】
図4には、手当て用品14および化学ポンプ組立体16が示されている。化学ポンプ組立体16は、化学ポンプハウジング80、チェインバ84(
図5参照)内に設けられた(
図4では破線で示されている)化学ポンプ82、および化学ポンプハウジング80の底部に、チェインバ84と流体連通するように設けられた下部開口部86とを含む。化学ポンプハウジング80内のチェインバ84は、フィッティング44に接続されている場合、下部開口部86、少なくとも1つの開口部48、およびドレープ40上のフィッティング44を介して、囲まれた体積60と流体連通している。化学ポンプ組立体16は、以下でより詳細に説明する方法で、手当て用品14の内部を減圧する。
【0025】
化学ポンプ組立体16の化学ポンプ82は、空気中にある選択されたガスと反応するように構成された反応器である。化学ポンプ82は、化学ポンプ82が囲まれた体積60と流体連通できるように、ドレープ40およびシーリング要素46に対して配置される。化学ポンプ82は、囲まれた体積60から選択されたガスを消費し、それによってガスを除去し、ガスの圧力を低下させる。化学ポンプ組立体16で使用され得る反応器の例は、米国特許出願公開番号2014/0109890A1および国際特許出願番号PCT/US2016/059364に記載されている。創傷治療のために利用される治療用陰圧システムの場合、報告されている作動圧力の範囲は、760mmHgの標準大気圧に対して-50mmHg~-200mmHg(560mmHg~710mmHgの絶対圧力)である。圧力が560mmHg未満である場合、少なくとも1つの手当て用品14は患者にとって不快なものとなり得る。圧力が710mmHgを超えると、陰圧療法は、710mmHg以下の圧力に比べて効果的ではない場合がある。しかしながら、560mmHg~710mmHgの範囲内でより小さい目標圧力範囲が望まれ得る。したがって、反応器82は、所定の目標圧力範囲内の減圧範囲を維持するように構成されてもよい。
【0026】
化学ポンプ組立体16は、化学ポンプ82が囲まれた体積60から選択されたガスを消費する場合、所定のチェインバ体積を維持するように構成される。反応器82の大きさは、特に、チェインバ84の体積、ホース62の体積、および囲まれた体積60に依存する。別の実施形態では、反応器82は、
図2に示されているように、化学ポンプ組立体16の替わりに手当て用品14内に設けられてもよい。その結果、手当て用品14内に陰圧をかける方法では、化学ポンプ組立体16を除いてもよい。
【0027】
図5の示された実施形態では、第一バルブ92が中に設けられている上部開口部90が、化学ポンプハウジング80の上面に設けられている。さらに、上部開口部90および第一バルブ92は、化学ポンプハウジング80の側面および化学ポンプハウジング80の他の場所に設けられてもよい。別の実施形態では、第一バルブ92と同様に動作するバルブを手当て用品14上に設けてもよい。第一バルブ92は、機械式ポンプ組立体18と協働するように構成されている。第一動作状態では、機械式ポンプ組立体18が第一バルブ92内に挿入されると、第一バルブ92によって、空気は、第一バルブ92を介してチェインバ84から出ることができる。第二動作状態では、機械式ポンプ組立体18が第一バルブ92内に挿入されていない場合には、第一バルブ92は、周囲の空気が上部開口部90および第一バルブ92を介してチェインバ84内に入ることを妨げる。このようなバルブの例としては、これらに限定されないが、ばね式逆止弁(spring-biased check valve)およびフラップ(flaps)を具えるバルブが挙げられる。
図5には、フラップ94を有する第一バルブ92が示されている。第一バルブ92のフラップ94は、機械式ポンプ組立体18が上部開口部90に差込まれる前は閉じられている。機械式ポンプ組立体18が搭載されない限り、上部開口部90および第一バルブ92を介してガスが漏れ出ることはない。機械式ポンプ組立体18が取外されると、第一バルブ92のフラップ94は、それらの復元力によって閉位置に戻る。
【0028】
示された実施形態では、シーリング要素96は、化学ポンプハウジング80の底部に設けられている。また、シーリング要素96は、化学ポンプハウジング80の側面および化学ポンプハウジング80の他の場所に設けられてもよい。示された実施形態では、シーリング要素96は、下部開口部86内に設けられ、フィッティング44と協働するように構成されている。化学ポンプ組立体16がフィッティング44に圧嵌されると、シーリング要素96よって、空気は下部開口部86を通ってチェインバ84に入ることができる。化学ポンプ組立体16がフィッティング44に嵌合されていない場合には、シーリング要素96によって、周囲の空気はチェインバ84に入ることができない。
図5には、フラップ98を有するシーリング要素96が示されている。シーリング要素96のフラップ98は、化学ポンプ組立体16がフィッティング44に嵌合される前は閉じられている。フラップ98がそれらの最初の閉じた位置から移動しない限り、シーリング要素96を介してガスが入ることはできない。代替的に、シーリング要素96は、フォイル(foil)、またはフィッティング44に押し付けられたときに貫通可能な別の部材であってもよい。
【0029】
図4を参照して、示された実施形態ではダイアフラム100がその中にある陰圧インジケータは、システムが陰圧下にあることをユーザに示すために、化学ポンプハウジング80に設けられ得る。
図4を参照すると、チェインバ84内の圧力が大気圧であり得る所定の圧力以上である場合、ダイアフラム100は、化学ポンプハウジング80から突出するドーム状であり得る。ダイアフラム100は、弾性材料から作られてもよい。化学ポンプ組立体16または手当て用品14内の圧力が目標圧力範囲以下に低下すると、ダイアフラム100は化学ポンプハウジング80内に引き込まれる。ダイアフラム100が化学ポンプハウジング80内に向かって引き込まれると、ダイアフラム100は反転する。ダイアフラム100が反転している場合、これにより、システムが陰圧下にあることがユーザに示される。代替的に、インジケータが、手当て用品14に設けられてもよい。
【0030】
図6および
図7には、機械式ポンプ組立体18が概略的に示されている。示された実施形態では、機械式ポンプ組立体18は、手当て用品14の囲まれた体積60内に陰圧を作り出すために使用される単動真空源である。化学ポンプ組立体16が手当て用品14に最初に取付けられた場合(
図8参照)、手当て用品14の囲まれた体積60内の陰圧は、化学ポンプ組立体16が完全に作動するまで、すなわち、反応器82がチェインバ84および囲まれた体積60から空気中にある選択されたガスを捕集するまで、作り出されない。したがって、機械式ポンプ組立体18が、手当て用品14の陰圧維持を促進してもよい。さらに、機械式ポンプ組立体18が、手当て用品14を手当て部位28に向かって引き寄せることを促進してもよい。
【0031】
一実施形態では、機械式ポンプ組立体18は、手動で作動するアクチュエータ、および可動ポンプ要素に動作可能に接続されたバイアス機構を含んでもよい。手動で作動するアクチュエータの作動によって、バイアス機構は、機械式ポンプ組立体18内に空気を引き込むように可動ポンプ要素を移動させる。その結果、囲まれた体積60内に陰圧が生じる。故に、機械式ポンプ組立体18は、空気圧ピストンシリンダであり得る。
図6を参照して、機械式ポンプ組立体18は、機械式ポンプハウジング120、並びに第一チェインバ138および第二チェインバ140を有するポンプチェインバを具える。反応器144が、機械式ポンプハウジング120の側面に設けられてもよい。反応器144は、手動で操作されてもよく、機械式ポンプ組立体18を作動させるために用いられてもよい。そのようなアクチュエータの例として、これらに限定されないが、ボタン、スイッチ、またはトリガが挙げられる。
【0032】
内壁122が、第一チェインバ138を第二チェインバ140と分け隔てるために用いられてもよい。内壁122は、ピストンロッド130を受入れるためのロッド開口部142を含む。シール124は、内壁122を取囲み、内壁122の周囲の第一チェインバ138と第二チェインバ140との間の任意のガスの通過を防ぐ。代替的に、内壁122は、機械式ポンプハウジング120と一体的に形成されてもよい。さらに、ロッド開口部142内の第二シール146が、ピストンロッド130の動きを制限することなく、第一チェインバ138と第二チェインバ140との間をガスがロッド開口部142を通って通過するのを防止するように、ピストンロッド130を取囲んでもよい。
【0033】
機械式ポンプハウジング120は、底部に設けられた先端部134を含む。先端部134は、第一チェインバ138と流体連通する先端開口部136を含む。さらに、機械式ポンプ組立体18は、先端部134と接続可能なホース62を介して、またはフィッティング44と直接接続された先端部134を介して、ドレープ40の開口部48と流体連通してもよい。ホース62は、任意の長さでよく、従って、長いホース62が利用されてもよい。故に、化学ポンプ組立体16を手当て用品14に取付ける前に、機械式ポンプ組立体18を手当て用品14上で作動させることができる。これにより、手当て部位28における手当て用品14の密閉を促進し得る。その結果、機械式ポンプ組立体18は、手当て用品14を直接減圧することができる。
【0034】
示された実施形態では、バイアス機構はばね126であり、可動要素はピストン128である。ばね126およびピストン128は、第一チェインバ138内に設けられている。機械式ポンプ組立体18が作動する前は、ピストンロッド130の大部分も第一チェインバ138内に配置されている。また、ピストンロッド130の上部に設けられたヘッド132が、第二チェインバ140内に配置されている。機械式ポンプ組立体18が、化学ポンプ組立体16の第一バルブ92(
図9)に搭載される、またはホース62(
図3)によってフィッティング44に接続されると、アクチュエータ144は、機械式ポンプ組立体18を作動させるために用いられる。機械式ポンプ組立体18が作動すると、アクチュエータ144とピストンロッド130との間のコネクタ170(
図6参照)がピストンロッド130を解放し、空気が先端開口部136を介して機械式ポンプハウジング120の第一チェインバ138に入る。コネクタ170は、ピストンロッド130と再係合させることができる。従って、機械式ポンプ組立体18は、再利用可能であってもよい。
図7に示されているとおり、ばね126は、ピストン128を内壁122に向かって付勢し、これにより空気が第一チェインバ138内に引き込まれる。ピストンロッド130は第二チェインバ140内に移動し、ヘッド132は機械式ポンプハウジング120の上面に向かって移動する。その結果、手当て用品14に陰圧が作り出される。
【0035】
陰圧組立体は、例えば、過剰な真空または陰圧が囲まれた体積60内で達成されるなど、目標圧力範囲よりも低い陰圧に到達しやすくてもよい。
図5に示されるように、目標圧力範囲を維持するために、必要に応じて圧力を解放するために、リリーフバルブ148が化学ポンプハウジング80に設けられてもよい。または、リリーフバルブ148と同様の動作をするリリーフバルブが手当て用品14のドレープ40に設けられてもよい。リリーフバルブ148は、必要に応じて手動でまたは自動で圧力を解放することができる任意のバルブであり得る。
図5には、リリーフバルブ148が化学ポンプ組立体16に設けられている一実施形態が示されている。リリーフバルブ148は、リリーフバルブ148が手当て用品14に設けられている一実施形態と同様に機能することが理解されるであろう。
図5を参照すると、リリーフバルブ148は、ポスト162に連結された化学ポンプハウジング80内に突出する可撓性キャップ160を具える。可撓性キャップ160は、通常、開口部164を覆う。可撓性キャップ160は、弾性材料から作られ得る。周囲と手当て用品14または周囲と化学ポンプ組立体16のチェインバ84との間の圧力差が、例えば50mmHgと200mmHgとの間に設定することができる所定の圧力範囲外になると、可撓性キャップ160の可撓性周囲190が、化学ポンプハウジング80またはドレープ40内に引き込まれる。可撓性キャップ160の可撓性周囲190が化学ポンプハウジング80またはドレープ14の内部に向かって引き込まれると、可撓性キャップ160の周囲には、空気が開口部164を通過することができるように空間が形成される。開口部164が可撓性キャップ160によって覆われていない場合には、可撓性キャップ160の可撓性周囲190が化学ポンプハウジング80の内面で緩んで開口部164を再密閉して閉じるような圧力に内圧が達するまで、周囲からの空気が化学ポンプ組立体16または手当て用品14に入る。その後、化学ポンプ組立体16および/または手当て用品14は、リリーフバルブ148が再密閉される陰圧を加えられる。これは、まだ治療範囲内、例えば50mmHg~200mmHgの間である一方で、開口部164が開かれる圧力差とは違ってもよい。
【0036】
別の実施形態では、
図5Aに示されているように、第一バルブ192およびリリースバルブ148の替わりに、双方向バルブ184が化学ポンプハウジング80に設けられている。代替的に、双方向バルブ184は、少なくとも1つの手当て用品14に設けられ得る。さらに別の実施形態では、双方向バルブ184は、米国特許第5,439,143号に記載されているバルブと同様の構造であってもよい。化学ポンプ組立体16は、双方向バルブ184を介して囲まれた体積60と流体連通してもよい。さらに、機械式ポンプ組立体18も、双方向バルブ184を介して囲まれた体積60と流体連通してもよい。
図15に示されているように、ホース62は、機械式ポンプ組立体18に取付けられ、双方向バルブ184内に挿入されてもよい。その結果、機械式ポンプ組立体18は、囲まれた体積60と流体連通する。
【0037】
双方向バルブ184は、3つの動作状態を含んでもよい。第一動作状態では、外圧が囲まれた体積60および/またはチェインバ84内の圧力より低い場合、ガスは双方向バルブ184を介してチェインバ84および/または囲まれた体積60から出ることができる。第二動作状態では、チェインバ84および/または囲まれた体積60の圧力が第一所定閾値と第二所定閾値との間にある場合、双方向バルブ184によって、双方向バルブ184を介してガスが囲まれた体積60および/またはチェインバ84に出入りすることが阻止される。第三動作状態では、囲まれた体積60および/またはチェインバ84内の圧力が所定の閾値より低い場合、双方向バルブ184によって、周囲からのガスは双方向バルブ184を介して囲まれた体積60および/またはチェインバ84内に入ることができる。一実施形態では、所定の閾値は、560mmHg、すなわち、大気圧より200mmHg低い値である。さらに別の実施形態では、双方向バルブ184は、圧力差が第一または第二所定閾値に場合に、双方向バルブ184を自動的に作動させるばねを含んでもよい。
【0038】
さらに別の実施形態では、機械式ポンプ組立体18は、複数の手当て用品に接続される。さらに、機械式ポンプ組立体18は、複数の手当て用品に同時に接続されてもよい。例えば、機械式ポンプ組立体18は、第二手当て用品188に接続されてもよい。ホース62は、機械式ポンプ組立体18を手当て用品14および第二手当て用品188に同時に接続するためのY字型フィッティング186を含んでもよい。さらに、化学ポンプ組立体16も、複数の手当て用品に接続されてもよく、複数の手当て用品に同時に接続されてもよい。
図14に示されているように、ホース62は、化学ポンプ組立体16を手当て用品14および第二手当て用品188に同時に接続するためのY字型フィッティング186を含んでもよい。
【0039】
以下、本発明の陰圧キット10を用いて陰圧療法を達成する方法について説明する。まず、少なくとも1つの手当て用品14がトレイキット12から取外され、ドレープリリースライナーが取外されてドレープ端54の下面の接着剤66が露出する。ドレープ端54は、少なくとも1つの手当て部位28の周囲の皮膚S上に配置され、接着剤66によって皮膚Sに固定される。
【0040】
図8を参照して、ドレープ40が手当て部位28の上に固定され、化学ポンプ組立体16の第二バルブ96がドレープ40のフィッティング44に取付けられる。第二バルブ96は、フィッティング44の上に配置され、フラップ98が開かれる。フラップ98が開かれると、化学ポンプ組立体16は手当て用品14と流体連通する。反応器82は、囲まれた体積60から選択されたガスを消費し始めるが、この時点では完全ではない。
【0041】
その後、機械式ポンプ組立体18は、
図9に示されているように、フラップ94を開くために、化学ポンプ組立体16に設けられた第一バルブ92に挿入される。フラップ94が開かれると、機械式ポンプ組立体18は、化学ポンプ組立体16のチェインバ84と流体連通する。または、機械式ポンプ組立体18は、双方向バルブ184内に挿入される。また、機械式ポンプ組立体18は、化学ポンプ組立体16を介して囲まれた体積60と流体連通する。機械式ポンプ組立体18が化学ポンプ組立体16と流体連通している場合、アクチュエータ144は、
図10に示されているように、機械式ポンプ組立体18を作動させるために用いられる。その後、ばね126が、ピストン128を内壁122に向かって押す。ピストン128が移動すると、空気が機械式ポンプ組立体18の第一チェインバ138に入り、手当て用品14が皮膚Sに向かって引き寄せられる。その後、機械式ポンプ組立体18が取外され、第一バルブ92のフラップ94が、
図11に示されているように、それらの復元力によって閉じられる。双方向バルブ184を有する実施形態では、機械式ポンプ組立体18が双方向バルブ184から取外されると、双方向バルブ184は第二動作状態に移動する。化学ポンプ組立体16の反応器82は、手当て用品14に減圧をかけ続ける、すなわち、手当て用品14の減圧を維持してもよい。その結果、手当て用品14内の圧力は陰圧まで低下し、陰圧インジケータ100は、陰圧が達成されると信号を発する。減圧が目標圧力範囲より低下したときはいつでも、リリーフバルブ148または双方向バルブ184は、減圧を所定の圧力差に戻すために必要に応じて圧力を解放する。
【0042】
別の実施形態では、機械式ポンプ組立体18は、化学ポンプ組立体16より先に挿入されてもよい。まず、少なくとも1つの手当て用品14が、少なくとも1つの手当て部位28の上に配置され、固定される。次いで、機械式ポンプ組立体18は、ホース62によって手当て用品14のフィッティング44に接続される。代替的に、手当て用品14と機械式ポンプ組立体18との間で直接的な流体連通をさせるために、第一バルブ92または双方向バルブ184が、化学ポンプ組立体16の替わりに手当て用品14に設けられる。その結果、機械式ポンプ組立体18が、囲まれた体積60と流体連通する。第一バルブ92または双方向バルブ184は、さらに、フィッティング44と置換えられてもよい。これらの代替実施形態では、機械式ポンプ組立体18は、手当て用品14の第一バルブ92または双方向バルブ184に挿入される。
【0043】
機械式ポンプ組立体18が手当て用品14に接続された後、機械式ポンプ組立体18は、アクチュエータによって作動される。その結果、ピストン128が内壁122に向かって移動し、空気が機械式ポンプ組立体18の第一チェインバ138に入る。機械式ポンプ組立体18は取外され、化学ポンプ組立体16と入れ替わる。化学ポンプ組立体16の反応器82は、手当て用品の陰圧を維持するために、空気中にある選択されたガスと反応を開始する。囲まれた体積60内の陰圧が達成されると、手当て用品14および/または化学ポンプ組立体16のインジケータは、手当て用品14が陰圧に達した信号を発する。減圧が目標圧力範囲より低下した場合、必要に応じて、リリーフバルブ148または双方向バルブ184は、圧力を解放する。
【0044】
さらに別の実施形態では、化学ポンプ組立体16および機械式ポンプ組立体18の両方が、少なくとも1つの手当て用品14に接続される。この実施形態では、第一バルブ、フィッティング、またはホース、および第二バルブ、フィッティング、またはホースが手当て用品14に設けられている。化学ポンプ組立体16は、第一バルブ、フィッティング、またはホースを介して手当て用品に接続されている。機械式ポンプ組立体18は、第二バルブ、フィッティング、またはホースを介して接続されている。例えば、
図12に示されているように、機械式ポンプ組立体18が、ホース62および手当て用品14に設けられた第二フィッティング166を介して手当て用品14に接続されている一方で、化学ポンプ組立体16は、手当て用品14に設けられたフィッティング44を介して手当て用品14に接続されている。また、特に、上述したリリーフバルブ148に類似した少なくとも1つのリリーフバルブを含む手当て用品14の場合、化学ポンプ組立体16は、現在既知の陰圧創傷治療装置で使用されているものと同様の電気機械式ポンプと交換することができる。しかしながら、既知の陰圧創傷治療装置とは異なり、手当て用品14のリリーフバルブ(複数可)は、手当て用品の下の囲まれた体積を治療範囲内の圧力に維持するために(上述したように)開閉することができる。また、リリーフバルブの換わりに、手当て用品14は、機械式ポンプ組立体18と協働し得る双方向バルブ184に類似した双方向バルブを具えることができる。一方で、既知の陰圧創傷治療装置で現在使用されているものと同様の電気機械式ポンプは、
図12に示されているフィッティング44に接続され得る。
【0045】
さらに、ホース62を収納するための少なくとも1つのアタッチメントが機械式ポンプ組立体18または化学ポンプ組立体16に設けられてもよい。そのようなアタッチメントの例としては、これに限定されないが、ラップ要素が挙げられる。
図13を参照して、化学ポンプ組立体16は、その周りにホース62を巻き付けることができ、化学ポンプハウジング80に設けられたラップ要素176を含むことができる。または、ラップ要素176は、機械式ポンプハウジング120設けられてもよい。ホース62は、保管および輸送中にホース62が固定されるように、少なくとも1つのアタッチメントの周りに巻かれ得る。別の実施形態では、ホース62は、化学ポンプ組立体16内に引っ込むことができる。さらに別の実施形態では、ホース62は、機械式ポンプ組立体18内に格納されてもよい。代替的に、トレイキット12は、ホース62を収納するための追加の凹部を含んでもよい。
【0046】
上述した実施形態の様々な実施形態、および他の特徴および機能、またはそれらの代替物または変種が、好ましくは、他の多くの異なるシステムまたはアプリケーションに結合され得ることが理解されるであろう。また、現在予測されていない、または予期されていない様々な代替、修正、変形、または改良が、当業者によって後になされ得ることもまた、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。