(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】無線周波数電力増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20231113BHJP
H03F 3/24 20060101ALI20231113BHJP
H03F 3/68 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H03F1/02
H03F3/24
H03F3/68 220
(21)【出願番号】P 2021523695
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2019079858
(87)【国際公開番号】W WO2020089405
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-05-18
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】306032578
【氏名又は名称】レオナルド・ユーケー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Leonardo UK Ltd
【住所又は居所原語表記】1 Eagle Place,St.James’s,London,SW1Y 6AF,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】クリップス、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】パウエル、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】クァグリア、ロベルト
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0091653(US,A1)
【文献】特公平2-51287(JP,B2)
【文献】特開2002-43946(JP,A)
【文献】特表2007-535828(JP,A)
【文献】特表2018-501726(JP,A)
【文献】国際公開第2020/035140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)信号を増幅するための無線周波数電力増幅器システムであって、 入力直交カプラ手段と、出力直交カプラ手段と、前記入力直交カプラ手段と前記出力直交カプラ手段との間にある2つの増幅器とを有する平衡増幅器を備え、前記出力直交カプラ手段は、前記増幅されたRF信号が出力される第1の出力を有する、
前記無線周波数電力増幅器システムは、前記2つの増幅器の出力におけるインピーダンスを変化させる手段を更に備え、前記手段が、
前記2つの増幅器に接続された無線周波数(RF)制御信号源、前記RF制御信号源は、増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラ手段の第2の出力において出力されるように、前記2つの増幅器によって増幅されるRF制御信号を供給する、と、
前記出力直交カプラ手段の前記第2の出力に接続されており、前記増幅されたRF制御信号を反射して前記出力直交カプラ手段の前記第2の出力に戻すように配置されている信号反射器と
を備えることを特徴とする、無線周波数電力増幅器システム。
【請求項2】
前記入力直交カプラ手段は、増幅されるべきRF信号を受け取るための第1の入力を有し、
前記RF制御信号源は、前記入力直交カプラ手段の第2の入力に前記RF制御信号を供給するために前記入力直交カプラ手段の前記第2の入力に接続されている、
請求項1に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項3】
前記RF制御信号源は、前記RF信号と同じ周波数を有するRF制御信号を供給するように配置されている、請求項1又は2に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項4】
前記RF制御信号及び/又は前記増幅されたRF制御信号の位相及び/又は振幅を修正する手段を備える、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項5】
前記RF制御信号及び/又は前記増幅されたRF制御信号の前記位相及び/又は振幅を修正する前記手段は、前記入力直交カプラ手段の前記第2の入力に入る前記RF制御信号の前記位相をシフトする位相シフタを備える、請求項2に従属する場合の請求項4に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項6】
前記信号反射器は無効負荷を備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項7】
前記無効負荷は、調整可能な無効負荷であり、
前記無線周波数電力増幅器システムは、前記調整可能な無効負荷に接続されており、前記反射された増幅されたRF制御信号
の位相を変化させるために前記無効負荷を調整するように配置されているコントローラを備える、
請求項6に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項8】
前記調整可能な無効負荷は、スイッチ容量性ネットワーク及び/又はスイッチ誘導性ネットワークを備える、請求項7に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項9】
前記入力直交カプラ手段及び前記RF制御信号源を実装する信号発生器を備え、前記信号発生器は、第1の発生器出力端子及び第2の発生器出力端子を有し、
前記2つの増幅器のうちの第1の増幅器が受け取るための前記入力直交カプラ手段の第1の出力端子における第1の所定の信号に対応する、前記信号発生器の前記第1の発生器出力端子における出力のための第1のRF信号を発生させ、
前記2つの増幅器のうちの第2の増幅器が受け取るための前記入力直交カプラ手段の第2の出力端子における第2の所定の信号に対応する、前記信号発生器の前記第2の発生器出力端子における出力のための第2のRF信号を発生させる
ためにコンピュータプログラムを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを備える、請求項1、4、6、7、及び8のいずれか一項に記載の無線周波数電力増幅器システム。
【請求項10】
無線周波数(RF)信号を増幅するように配置されている平衡増幅器の2つの増幅器の出力におけるインピーダンスを変化させる方法であって、前記平衡増幅器は入力直交カプラ手段及び出力直交カプラ手段を備え、前記増幅されたRF信号は、前記出力直交カプラ手段の第1の出力において出力され、前記方法は、
増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラ手段の第2の出力において出力されるように、前記平衡増幅器の前記2つの増幅器によって増幅されるRF制御信号を供給するために、前記2つの増幅器に接続されている無線周波数制御信号源を使用することと、
前記出力直交カプラ手段の前記第2の出力から出力された前記増幅されたRF制御信号を反射して前記出力直交カプラ手段の前記第2の出力に戻すことと
を備える方法。
【請求項11】
増幅されるべき前記RF信号を前記入力直交カプラ手段の第1の入力に入力することと、
増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラ手段の第2の出力において出力されるように、前記RF制御信号を前記入力直交カプラ手段の第2の入力に入力することと
を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記RF信号に対して前記RF制御信号及び/又は前記増幅されたRF制御信号
の位相及び/又は振幅を修正することを備える、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
第1の発生器出力端子と、第2の発生器出力端子と、前記2つの増幅器のうちの第1の増幅器が受け取るための前記入力直交カプラ手段の第1の出力端子における第1の所定の信号に対応する
、信号発生器の前記第1の発生器出力端子における出力のための第1のRF信号をデジタル的に発生させ、前記2つの増幅器のうちの第2の増幅器が受け取るための前記入力直交カプラ手段の第2の出力端子における第2の所定の信号に対応する、前記信号発生器の前記第2の発生器出力端子における出力のための第2のRF信号をデジタル的に発生させる前記入力直交カプラ手段を実装するコンピュータプログラムを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサとを有する信号発生器を使用することを備える、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された平衡無線周波数電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力増幅器はそれが消費する電力を低減するために高効率であることが望ましい。これにより、冷却の必要性が低減されるため、それが一部を形成するシステム全体の電力消費が低減される。これは、電力供給が限られている適用例において特に重要である。
【0003】
従来の無線周波数電力増幅器(RFPA)の効率は、出力電力が低減するにつれて非常に急速に低下する(一般に「電力バックオフ」又はPBOと呼ばれる)。そのため、伝送中に出力電力が大きく変動する振幅変調無線システムは、RFPAのピーク電圧効率(peak potential efficiency)よりもはるかに低い効率で動作する。
【0004】
「ドハティ」電力増幅器(PA)は、現代のモバイル通信システムにおいて広範に使用されており、従来の平衡電力増幅器よりも効率的に改善されている。ドハティ電力増幅器は、主増幅器とピーク増幅器とを備え、これらは、典型的に動作クラスが異なり、定義された入力電力範囲にわたってピーク増幅器が主増幅器と一緒に動作するように配置されている。
【0005】
しかしながら、ドハティPAは一般に、動作帯域幅が限られているため、広帯域幅にわたって高効率が求められる電子戦争(EW)システムではほとんど使用されていない。この制限は、より広い帯域幅を必要とする新しい移動通信システムの開発の際にも問題となる。
【0006】
米国特許第7064606号明細書には、複数の補助段を使用して、電力バックオフでより平坦な効率特性が得られるドハティPAが記載されている。これは、無効負荷が掛けられた絶縁ポートを有する直交出力結合器を備える。単一の入力信号を2つの等しい直交成分に分割するために直交カプラも使用される。
【0007】
Chireixアウトフェージングアーキテクチャのような代替的な負荷変調技法では、位相オフセット信号から独立して駆動される2つの増幅器が使用される。2つの増幅器は共通負荷に接続されるため、この負荷を流れる電流は、2つの増幅器の出力信号の位相及び大きさの重ね合わせである。負荷変調は、入力信号のうちの一方の位相を変化させることによって達成され、それによって、出力信号における位相オフセットは、負荷にわたって波形の建設的な変調又は破壊的な変調を引き起こして、負荷電流の大きさを増加又は減少させ、これは、出力電力の増加又は減少につながる。2つの増幅器は共通負荷の両端に接続されているため、2つの増幅器によって見られる見掛けの負荷も変調される。Chireix増幅器の問題点は、使用可能な増幅器の実現を困難にする差動負荷を必要とすることであり、これは、典型的に負荷が外部にあり接地を基準とするためである。第2の問題は、位相オフセットを伴う負荷変調効果により、各増幅器に提示されるべき非常に反応性の高い見掛けの負荷が作成されるが、反応性符号が異なる、すなわち、一方の増幅器が正のリアクタンスを経験し、他方が負のリアクタンスを経験する点である。位相オフセット制御を通して増幅器の有用な「電力バックオフ」範囲を広げるためには、動作帯域幅を制限する増幅器出力ネットワークの各々に位相補償ネットワークを追加することが必要である。
【0008】
英国特許出願公開第2533824号明細書には、平衡増幅器の増幅器によって見られるインピーダンスを変化させるために、入力信号が出力カプラの絶縁ポートに提示される平衡増幅器が記載されている。この配置は、従来の平衡増幅器と比較してより広い入力電力範囲にわたって平衡増幅器の効率を拡張し、従来のドハティPAと比較してより広い帯域幅にわたって動作することができる。
【0009】
増幅器が効率的に機能するために、絶縁ポートに提示される入力信号は、最初に、補助増幅器によって増幅される。補助増幅器は、出力カプラの絶縁ポートに注入される信号の振幅を正確に制御して、信号が効率に対して悪影響ではなく好影響を与えることを確実にするために、継続的で慎重な調整を必要とする。信号の振幅の制御は、実際には困難であり得る。追加的に、補助増幅器の効率は、全体的な増幅器の効率に悪影響を及ぼす可能性がある。以下の発明は、英国特許出願公開第2533824号明細書の増幅器を改良するために考案されたものである。
米国特許出願公開第2015/091653号明細書は、並列に結合されたキャリア増幅器及びピーク増幅器を有する再構成可能な負荷変調増幅器に関するものである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様に従って、請求項1記載のRF信号を増幅するための無線周波数電力増幅器システムが提供される。
【0011】
本発明は、増幅器の出力におけるインピーダンスを変化させて、ピーク動力伝達以下で動作するときの増幅器の効率を改善するために、出力カプラの「絶縁ポート」に信号を供給する代替方法を提供する。
【0012】
反射して第2のポートに戻る制御信号は、2つの増幅器によって既に増幅されているため、本発明の平衡増幅器設計は、補助増幅器を設けることに関連する必要性ひいては問題を回避する。
【0013】
増幅された信号を(消散させるのとは対照的に)強く反射して出力直交カプラの第2の出力に戻すために、信号反射器は無効負荷(reactive load)を備え得る。無効負荷は、実質的に純粋に反応性であっても(すなわち、実質的に1の反射係数を有する)、混合抵抗性無効負荷であってもよい。無効負荷は、容量性及び/又は誘導性の電気成分を備え得る。
【0014】
代替的に、信号反射器は、略ゼロの電気インピーダンスを有する負荷に出力カプラ手段の第2の出力を接続する(すなわち、第2の出力が短絡される)ことによって、又は出力カプラ手段の第2の出力に負荷を接続しない(開回路で終端される)ことによって実装され得、例えば、固定のキャパシタ又はインダクタ構成要素によって又は代替的に「開回路」又は「短絡」で終端された伝送線路のセクションによって実装される。
【0015】
入力直交カプラ手段は、増幅されるべきRF入力信号を受け取るための第1の入力を有し得る。
【0016】
無線周波数制御信号源は、増幅されたRF制御信号が出力直交カプラ手段の第2の出力において出力されるように、入力直交カプラ手段の第2の入力にRF制御信号を供給するために入力直交カプラ手段の第2の入力に接続され得る。
【0017】
RF制御信号源は、好ましくは、RF入力信号と実質的に一致する周波数を有するRF制御信号を供給するように配置されており、入力信号の周波数の任意の変化に一致するようにRF制御信号を変化させるように更に適合されている。
【0018】
増幅器システムは、好ましくは、入力カプラに入る制御信号の位相が入力信号に対してオフセットされ、そのオフセットが好ましくは固定されたままであるように配置されている。
【0019】
RF制御信号は、例えば、RF入力信号を分割するように配置されているスプリッタを備える制御信号源によって、RF入力信号から導出され得る。代替的に、制御信号源は、入力信号源とは別個の制御信号発生器を備え得る。
【0020】
一配置では、無線周波数電力増幅器システムは、第1の発生器出力及び第2の発生器出力を有する信号発生器を備え、信号発生器は、第1の発生器出力における出力のためのRF入力信号をデジタル的に発生させ、第2の発生器出力における出力のためのRF制御信号をデジタル的に発生させるために少なくとも1つのコンピュータプログラムを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを備える。
【0021】
出力直交カプラ手段は、2つの入力及び2つの出力を有する出力直交カプラによって実装され得る。代替的に、遅延線によって提供されてもよいが、これは狭い帯域幅を提供するため、通常はあまり好ましくない。同様に、入力直交カプラ手段は、2つの入力及び2つの出力を有する入力直交カプラ又は遅延線を備え得るが、出力直交カプラについて説明したのと同じ理由で、前者が好ましい。
【0022】
代替的に、入力直交カプラ手段の機能は、信号発生器によって実装され得、この信号発生器は、2つの増幅器のうちの第1の増幅器への入力のための入力直交カプラ手段の第1の出力における所望の信号に対応する、信号発生器の第1の出力における出力のための第1のRF信号をデジタル的に発生させ、2つの増幅器のうちの第2の増幅器への入力のための入力直交カプラ手段の第2の出力における所望の信号に対応する、信号発生器の第2の出力における出力のための第2のRF信号をデジタル的に発生させるように配置されている。
【0023】
好ましくは、電力増幅器は、2つの増幅器の出力におけるインピーダンスを整合及び/又は変調するために、(反射の前及び/又は後に)RF制御信号の位相及び/又は振幅を修正する手段を備える。これは、まとめて又は組み合わせて使用することができるいくつかの方法で達成され得る。
【0024】
例えば、一配置では、増幅器は、入力カプラに入る前にRF制御信号を位相シフトするための位相シフタ(可変又は固定位相シフタ(又は固定又は可変遅延線)であり得る)を備え得、制御信号源は、出力された制御信号の位相を修正するように配置され得る。可変位相シフタはコントローラに接続され得、コントローラは、制御信号の位相を調整するために可変位相シフタを制御するように配置されている。
【0025】
増幅器が無効負荷を備える場合、無効負荷は、反射された増幅された信号の位相の調整を可能にするために、例えばコントローラの制御下で調整可能であり得る。調整可能な無効負荷は、スイッチ容量性ネットワーク及び/又はスイッチ誘導性ネットワークを備え得る。
【0026】
制御信号の振幅は、(位相シフトにより)制御信号発生器によって変化させられ得る。システムが、制御信号及び入力信号の両方を供給するために分割される単一の信号源を備える配置では、システムは、コントローラからの(デジタル又はアナログ制御を有する)固定又は可変減衰器を備え得る。制御信号の振幅は、典型的には、最大RF入力信号のレベルの0.1~0.25倍であり得る。
【0027】
単一の入力信号しか有していないため増幅器に提示される負荷インピーダンスが出力カプラに接続された負荷によってのみ修正される米国特許第7064606号明細書の増幅器と比較して、反射して平衡増幅器に戻される入力信号に対して制御信号の位相及び振幅を変化させることができるため、広い周波数帯域にわたってより高い柔軟性及び効率が提供される。
【0028】
本明細書における無線周波数という用語は、少なくとも20kHz~300GHzの周波数を含むものと解釈されるべきである。電子戦争システムにおいて出願人が予想する本発明の主要な適用例では、入力信号は、20MHz~40GHzであり得る。
【0029】
本発明は、方法の形態で表現することもできるため、本発明の第2の態様に従って、無線周波数電力増幅器システム内の平衡増幅器の2つの増幅器の出力におけるインピーダンスを修正及び/又は変調する方法が提供され、この方法は、以下を備える:
増幅されるべき無線周波数入力信号を平衡増幅器の入力直交カプラの第1の入力に入力すること、
増幅されたRF制御信号が出力直交カプラの第2の出力において出力されるように、入力直交カプラの第2の入力にRF制御信号を供給するために、無線周波数制御信号を入力直交カプラの第2の入力に入力すること、及び
平衡増幅器の出力直交カプラの出力から出力された増幅された制御信号を反射して出力直交カプラの第2の出力に戻すこと。
【0030】
本発明の第3の態様に従って、請求項10記載の無線周波数(RF)信号を増幅するように配置されている平衡増幅器の2つの増幅器の出力におけるインピーダンスを修正及び/又は変調する方法が提供される。
【0031】
上述の様々な方法は、入力信号に対してRF制御信号及び/又は増幅されたRF制御信号の位相及び/又は振幅を修正することを備え得る。
【0032】
本発明は、以下の図を参照して例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】無線周波数電力増幅器システムの概略図である。
【
図2】入力直交カプラ及び位相シフタの機能がデジタル信号発生器によって実行される、
図1の電力増幅器システムの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、無線周波数電力増幅器システムは、入力直交カプラ2と、出力直交カプラ3と、それらの間にあり2つの増幅器4,5を備える増幅回路とを有する平衡増幅器1を備える。この実施形態では、2つの増幅器4,5は、3Wの単一トランジスタであるが、より複雑な配置及び/又は異なる電力レベルが使用されてもよい。
【0035】
増幅回路はまた、トランジスタ増幅器にバイアスを掛けるための独立したDC電圧源8,9とともに、各増幅器に関連する入力整合ネットワーク6及び出力整合ネットワーク7を含む。増幅回路自体は従来の設計であるため、これ以上詳細には説明しない。
【0036】
入力直交カプラ1は、増幅されるべきRF入力信号を入力信号源10から受け取るための第1の入力ポート2
【数1】
(以下、本明細書では、丸で囲った数字を「(数字)」と表す)と、制御信号源11からRF制御信号を受け取るための第2の入力ポート2(2)(従来の平衡増幅器では整合負荷で終端される)と、第1の出力2(3)と、第2の出力2(1)とを有する。
【0037】
図1の例では、入力信号源10及び制御信号源11は、別個の第2の信号発生器を備え、これらの信号発生器は、位相ロックされている。これは、独立した振幅及び位相制御を提供するため、典型的には好ましい。しかしながら、代替的に、入力信号源10及び制御信号源11は、単一の信号発生器と、単一の信号発生器から出力された信号を分割して入力信号及び制御信号を供給するスプリッタとによって提供され得る。後者のシステムでは、入力信号及び制御信号の振幅及び/又は位相の独立した制御を提供するために、追加の増幅器回路及び/又は減衰器回路及び/又は位相制御回路が提供され得る。入力信号及び制御信号を発生させるモードにかかわらず、それらが同じ周波数を有することが好ましい。
【0038】
入力直交カプラ2は、第1の入力2(4)で受け取った入力信号を両方の出力2(3),2(1)に分割し、ここで、2(1)における入力信号は90度の位相シフトを受けている。同様に、入力直交カプラ2は、第2の入力2(2)で受け取った制御信号を両方の出力2(3),2(1)に分割し、ここで、第1の出力2(3)における制御信号は90度の位相シフトを受けている。このように、第1の出力2(3)における信号は、位相角0の入力信号と、-90度の位相角だけシフトされた制御信号との重ね合わせである。第2の出力2(1)から出力される信号は、位相角0の制御信号と、-90度の位相角だけシフトされた入力信号との重ね合わせである。
【0039】
出力2(3),2(1)における信号は、それぞれ増幅回路の増幅器4,5に供給される。次に、増幅器4,5の出力は、それぞれ出力直交カプラ3の第1の入力ポート3(4)及び第2の入力ポート3(2)に供給される。
【0040】
出力カプラ3は、入力カプラと同じ関数を、その入力3(4)、3(2)で受け取った信号に適用する(従来から平衡増幅器で行われていたように)。このように、増幅された入力信号は、電力増幅器の出力を受け取るために第2の出力3(1)に接続された負荷12、例えばアンテナ又は他の回路フラグメント、に入力するために、第2の出力3(1)に出力される。
【0041】
出力カプラ3は、その第1の出力3(3)において、増幅された制御信号を供給する。出力カプラ3の第1の出力3(3)は、増幅された制御信号を優先的に反射して出力カプラ3の第1の出力3(3)に戻すように適合された調整可能な無効負荷13に接続される。これは、第1の出力が整合負荷で終端される平衡増幅器の従来の設計とは大きく異なる。
【0042】
英国特許出願公開第2533824号明細書で詳述されている理由により、出力カプラの第1の出力3(3)に信号を提示すると、2つの増幅器4,5の出力におけるインピーダンスが変調される。反射された増幅された制御信号の振幅及び位相を制御することにより、信号源10からの入力信号の電力及び周波数が変化しても最適効率が維持されるように、増幅器出力4,5におけるインピーダンスを変化させることが可能である。
【0043】
反射して第2の出力ポート3(3)に戻る制御信号の振幅及び/又は位相の修正は、一緒に又は別々に使用され得る2つの方法で実行され得る。
【0044】
制御信号源11から出力された制御信号の位相は、制御信号源11と入力カプラ2との間に配置されており、かつ、位相シフトされた制御信号を入力カプラ2の第2の入力2(2)に出力する(コントローラ15の制御下にある)位相シフタ14を使用して修正可能である。位相シフタ14は、可変又は固定位相シフタ(又は可変又は固定遅延線)であり得る。
【0045】
反射して出力カプラ3の第1の出力3(3)に向かって戻る制御信号の位相も、無効負荷13のリアクタンスを変化させることによって調整可能である。無効負荷13は、コントローラ15に接続されたスイッチ容量性ネットワーク及び/又はスイッチ誘導性ネットワークを備える(図面のレイアウトを簡略化するために
図1の2箇所に例示されている)。コントローラ15は、無効負荷の実効リアクタンスを変化させるために、それぞれのネットワーク内の様々なキャパシタ及び/又はインダクタを切り替える。
【0046】
無効負荷13及び位相シフタ14を制御するために使用されるコントローラ15は、当業者によく知られている技法を使用する1つ又は複数の適切にプログラムされたプロセッサを使用して実装される。
【0047】
入力カプラ2からの反射された電力を終端するために、制御信号源11及び入力信号源10は両方とも、入力カプラ2にインピーダンス整合された負荷を備える。
【0048】
図2は、入力信号及び制御信号の両方を計算及び生成し、追加で入力直交カプラ2及び位相シフタ14の機能を実装するデジタル信号発生器20を備える電力アダプタの変形設計を例示する。
【0049】
デジタル信号発生器20は、1つ又は複数のコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数の適切にプログラムされたプロセッサによってデジタル信号処理システムを少なくとも部分的に使用して実装される。
【0050】
デジタル信号発生器20は、
図1の入力カプラの第1の出力2(3)における所望の出力信号に対応する第1の信号を計算し、第1の増幅器4が受け取るための第1の出力21において出力するように配置されている。デジタル信号発生器20はまた、
図1の入力カプラの第2の出力2(1)における所望の出力信号に対応する第2の信号を計算し、第2の増幅器5が受け取るための第2の出力22において出力するように配置されている。
【0051】
前述の説明は、従来の平衡増幅器に基づいているが、位相可変の第2の入力源を含むことにより、システムは、Chireixアウトフェージング増幅器を使用するシステムと同程度のアウトフェージングを達成することができる。提示されたアーキテクチャでは、反射負荷からの電力の反射によってアウトフェージングが達成され、反射された信号の振幅及び位相は、増幅器の入力において提示される主入力信号及び第2の信号源の位相によって設定される。
【0052】
出力整合ネットワーク7は、2つの増幅器4,5に相補的な負荷を提供するために同一でなくてもよい(例えば、一方の出力整合ネットワークが一方の増幅器に正の無効負荷を提示し、他方の出力整合ネットワークが他方の増幅器に負の無効負荷を提示する)。これは、増幅器4,5に提示されるインピーダンスを修正するための制御信号の調整と組み合わせることで、出力カプラ3に提示される固定の又は調整可能な無効負荷13に起因して、最大増幅未満で動作するが、Chireix増幅器の既存の実装形態と比較してインピーダンス変調能力を大幅に改善しつつ、高効率を維持する高効率アウトフェージング増幅器を可能にする。増幅器は依然として平衡構成であるため、電力抽出は、接地を基準とする従来のより実用的な出力負荷を必要とする。
【0053】
前述の実施形態では、各増幅器4,5は、DC電圧源8,9によって供給されるのと同じDC電圧をそれらの入力及び出力において有する。変形例では、各増幅器4,5は、異なる動作モードを可能にするために、それぞれの入力及び出力における異なる電圧によって独立して制御され得るが、そのような配置は、各増幅器4,5に対して別個のDC電圧源を必要とすることとなる。
【0054】
更なる代替的な実施形態では、システムは、インピーダンス整合ネットワーク6,7の一方又は両方を含まず、出力キャパシタンスのようなトランジスタ寄生効果を調整するために、上述の手段を使用して、反射された増幅された信号の振幅及び位相を制御することができる。
【0055】
上で様々に説明した増幅器は、例えばGaAs又はGaN半導体から製造されるRFIC又はMMICのような集積回路として実装され得るが、部分的に又は排他的に個別部品で実装されてもよい。
【0056】
任意の所与の動作周波数に対して出力カプラの第2の出力において所望の出力を提供するために必要とされる制御信号の位相オフセット設定及び振幅は、動作前の設計(又は各ユニット)の較正を通して決定され得る。次いで、コントローラ15は、決定された制御信号の利得/位相の設定で予めプログラムされ得る。システムは、代替的に、増幅器システムの入力及び/又は出力ポートにおいて電力及び周波数モニタ(図示せず)を含んでおり、フィードバックソフトウェアルーチンを通して制御信号の利得/位相の設定を動的に制御して、トランジスタ(複数を含む)のドレインインピーダンスを動的に最適化し、電力及び/又は効率を改善し得る。
以下に本願発明の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
RF信号を増幅するための無線周波数電力増幅器システムであって、
入力直交カプラ手段と、出力直交カプラ手段と、それらの間にある2つの増幅器とを有する平衡増幅器を備え、前記出力直交カプラ手段は、前記増幅されたRF信号が出力される第1の出力を有する、
前記無線周波数電力増幅器システムは、前記2つの増幅器の出力におけるインピーダンスを修正及び/又は変調する手段を更に備え、前記手段が、
増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラの第2の出力において出力されるように、前記2つの増幅器によって増幅されるRF制御信号を供給するように配置されている無線周波数制御信号源と、
前記出力直交カプラの前記第2の出力に接続されており、前記増幅された制御信号を反射して前記出力直交カプラの前記第2の出力に戻すように配置されている信号反射器と
を備えることを特徴とする、無線周波数電力増幅器システム。
[C2]
前記入力直交カプラ手段は、増幅されるべきRF入力信号を受け取るための第1の入力を有し、
前記無線周波数制御信号源は、増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラの第2の出力において出力されるように、前記入力直交カプラ手段の第2の入力に前記RF制御信号を供給するために前記入力直交カプラ手段の前記第2の入力に接続されている、
C1に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C3]
前記RF制御源は、前記RF入力信号と実質的に同じ周波数を有するRF制御信号を供給するように配置されている、C1又は2に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C4]
前記RF制御信号及び/又は前記増幅されたRF制御信号の前記位相及び/又は振幅を修正する手段を備える、C1、2、又は3に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C5]
前記RF制御信号及び/又は前記増幅されたRF制御信号の前記位相及び/又は振幅を修正する前記手段は、前記入力直交カプラの前記第2の入力に入る前記制御信号の前記位相をシフトする位相シフタを備える、C2に従属する場合のC4に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C6]
前記信号反射器は無効負荷を備える、C1乃至5のいずれか一項に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C7]
前記無効負荷は、調整可能な無効負荷であり、
前記無線周波数電力増幅器システムは、前記調整可能な無効負荷に接続されており、前記反射された増幅されたRF制御信号の前記位相を変化させるために前記無効負荷を調整するように配置されているコントローラを備える、
C4又は6に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C8]
前記調整可能な無効負荷は、スイッチトキャパシタネットワーク及び/又はスイッチトインダクタネットワークを備える、C7に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C9]
第1の発生器出力及び第2の発生器出力を有する信号発生器を備え、前記信号発生器は、前記第1の発生器出力における出力のための前記RF信号をデジタル的に発生させ、前記第2の発生器出力における出力のための前記RF制御信号をデジタル的に発生させるためにコンピュータプログラムを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサを備える、C1乃至8のいずれか一項に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C10]
前記入力直交カプラ手段は、前記信号発生器によって実装され、前記信号発生器は、
前記2つの増幅器のうちの第1の増幅器が受け取るための前記入力直交カプラ手段の第1の出力における前記所望の信号に対応する、前記信号発生器の前記第1の出力における出力のための第1のRF信号をデジタル的に発生させ、
前記2つの増幅器のうちの第2の増幅器が受け取るための前記入力直交カプラ手段の第2の出力における前記所望の信号に対応する、前記信号発生器の前記第2の出力における出力のための第2のRF信号をデジタル的に発生させる
ように配置されている、C1,3-8のいずれか一項に従属する場合のC9に記載の無線周波数電力増幅器システム。
[C11]
無線周波数(RF)信号を増幅するように配置されている平衡増幅器の2つの増幅器の出力における前記インピーダンスを修正及び/又は変調する方法であって、前記平衡増幅器は出力直交カプラ手段を備え、前記増幅されたRF信号は、前記出力直交手段の第1の出力において出力され、前記方法は、
増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラの第2の出力において出力されるように、無線周波数(RF)制御信号を供給し、前記平衡増幅器によって増幅されるべき前記RF制御信号を配置することと、
前記出力直交カプラの前記第2の出力から出力された前記増幅されたRF制御信号を反射して前記出力直交カプラの前記第2の出力に戻すことと
を備える方法。
[C12]
増幅されるべき無線周波数入力信号を前記平衡増幅器の入力直交カプラの第1の入力に入力することと、
増幅されたRF制御信号が前記出力直交カプラの第2の出力において出力されるように、前記入力直交カプラの前記第2の入力にRF制御信号を供給するために、無線周波数制御信号を前記入力直交カプラの第2の入力に入力することと
C11に記載の方法。
[C13]
前記入力信号に対して前記RF制御信号及び/又は前記増幅されたRF制御信号の前記位相及び/又は振幅を修正することを備える、C11又は12に記載の方法。