(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】アクティブ制御アンチヨーダンパ制振システム、および車両
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20231113BHJP
F16F 9/20 20060101ALI20231113BHJP
F16F 9/512 20060101ALI20231113BHJP
B60G 99/00 20100101ALN20231113BHJP
【FI】
B61F5/24 B
F16F9/20
F16F9/512
B60G99/00
(21)【出願番号】P 2021568945
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2020090834
(87)【国際公開番号】W WO2020253441
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】201910536511.8
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518232342
【氏名又は名称】中車青島四方机車車輛股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 旭
(72)【発明者】
【氏名】孔 ▲海▼朋
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲曉▼▲寧▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 振先
(72)【発明者】
【氏名】梁 ▲海▼▲嘯▼
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122624(JP,A)
【文献】特開2007-296936(JP,A)
【文献】特開平05-296281(JP,A)
【文献】特開2014-156882(JP,A)
【文献】特開2001-010324(JP,A)
【文献】特開平08-253146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/24
F16F 9/20
F16F 9/512
B60G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダと、油圧シリンダ内で往復運動を行う時に前記油圧シリンダの内部を2つのシリンダブロックに区画するピストンと、を有するアクティブ制御アンチヨーダンパであって、
貯油タンクと方向切換弁とをさらに有し、2つの前記シリンダブロックは、それぞれ2つの主油路を介して前記貯油タンクに連通して主回路を構成し、
前記方向切換弁は、2つの前記主油路と前記貯油タンクとの間に取り付けられており、前記アクティブ制御アンチヨーダンパがアクティブモードにある時に前記主回路の流れ方向を変更するために用いられ、前記ピストンの前記油圧シリンダ内での変位を調整可能であり、
少なくとも2つの並列岐路を有し、
各前記並列岐路の両端は、それぞれ2つの前記主油路に連通し、各前記並列岐路は、それぞれ直列に連通される一方向絞り弁と調整可能な電磁弁とを有し、前記調整可能な電磁弁は、前記アクティブ制御アンチヨーダンパがセミアクティブモードにある時に当該アクティブ制御アンチヨーダンパの減衰係数を調整するために用いられ、
当該アクティブ制御アンチヨーダンパは、非常用油路をさらに有し、前記非常用油路の両端は、それぞれ2つの前記主油路に連通し、前記非常用油路は、直列に連通される非常用絞り弁と調整不可能な電磁開閉弁とを有し、
前記電磁開閉弁は、当該アクティブ制御アンチヨーダンパがパッシブモードにある時に前記非常用油路の起動の制御に用いられ、
当該アクティブ制御アンチヨーダンパが低減衰モードにある時に、全ての並列岐路は遮断状態にならないように、前記電磁開閉弁は開弁し、全ての前記並列岐路の調整可能な電磁弁は開弁し、各前記並列岐路における調整可能な電磁弁の制御電圧を制御することにより、対応する前記並列岐路における調整可能な電磁弁の減衰係数が最小値になり、この時点で、前記非常用油路及びすべての前記並列岐路を油液が流れて減衰力を発生させることを特徴とするアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項2】
2つの前記シリンダブロックは、それぞれ2つの前記主油路を介して前記方向切換弁に連通し、前記方向切換弁は、それぞれ2つの駆動油路を介して前記貯油タンクに連通し、前記方向切換弁は、少なくとも2つの切換可能な動作位置を有することを特徴とする請求項1に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項3】
前記方向切換弁は、第1動作位置と第2動作位置とを有し、前記第1動作位置と前記第2動作位置とにそれぞれ2つの導流口が設けられ、2つの前記導流口は、2つの前記主油路に接続するために用いられ、
前記第1動作位置の2つの前記導流口の位置と前記第2動作位置の2つの前記導流口の位置とは逆であることを特徴とする請求項2に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項4】
いずれかの前記駆動油路に直列接続される駆動機構をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項5】
前記駆動機構は、駆動モータと駆動ポンプとを有し、
前記駆動ポンプは、前記駆動油路に直列接続され、且つ前記駆動モータに接続されることを特徴とする請求項4に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項6】
エネルギー貯蔵岐路をさらに有し、
前記エネルギー貯蔵岐路は、一端が前記駆動油路に連通し且つ前記方向切換弁と前記駆動機構との間に位置し、他端が前記貯油タンクに連通し、前記エネルギー貯蔵岐路に圧力センサ、アキュムレータ、および圧力逃し弁が直列接続されることを特徴とする請求項4に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項7】
2つの前記主油路の間に、少なくとも1つの圧力逃し岐路が連通し、各前記圧力逃し岐路同士が並列接続され、各前記圧力逃し岐路にそれぞれ圧力逃し弁が直列接続されることを特徴とする請求項1に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項8】
前記並列岐路は、第1岐路と第2岐路とを有し、
前記第1岐路の一端と前記第2岐路の一端とは、第1ノードに並列接続され、前記第1岐路の他端と前記第2岐路の他端とは、第2ノードに並列接続され、前記第1ノードと前記第2ノードとは、それぞれ2つの前記主油路に連通し、前記第1岐路の流れ方向と前記第2岐路の流れ方向とは逆であることを特徴とする請求項1に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項9】
前記第1ノードと前記第2ノードとは、それぞれ貯油路を介して前記貯油タンクに連通し、各前記貯油路にそれぞれ絞り弁が直列接続されることを特徴とする請求項8に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項10】
前記第1ノードと前記貯油タンクとの間に、さらに圧力逃し油路が連通し、前記圧力逃し油路は、各前記貯油路と並列に接続され、前記圧力逃し油路に圧力逃し弁が直列に取り付けられることを特徴とする請求項9に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパ。
【請求項11】
コントローラと、台車に取り付けられた少なくとも1つの、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアクティブ制御アンチヨーダンパと、を有し、
前記コントローラの信号入力端と信号出力端とは、それぞれ各前記アクティブ制御アンチヨーダンパに接続されることを特徴とする制振システム。
【請求項12】
データ収集機構をさらに有し、
前記データ収集機構は、圧力センサと変位センサとを有し、前記油圧シリンダの2つの前記シリンダブロック内に、それぞれ前記圧力センサが設けられ、前記変位センサは、前記ピストンに取り付けられ、前記圧力センサと前記変位センサとは、それぞれ前記コントローラの信号入力端に接続されることを特徴とする請求項11に記載の制振システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の制振システムを備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本願は、2019年06月20日に提出された、出願番号が2019105365118であり、発明の名称が「アクティブ制御アンチヨーダンパ制振システム、および車両」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ダンパの技術分野に関し、特にアクティブ制御アンチヨーダンパ制振システム、および車両に関する。
【背景技術】
【0003】
アンチヨーダンパは、サスペンションシステムの重要な構成要素であり、主な役割として、台車枠と車体との間に旋回減衰力を発生させて、両者の間の振動エネルギーを消費することで、ヨー振動を抑える役割を果たす。
【0004】
アンチヨーダンパは、列車運行の安定性に影響を与える重要な部品であり、列車が異なる状態で運行する場合、ダンパのパラメータに対するニーズも異なる。制振原理から分かるように、従来のアンチヨーダンパは、パッシブアンチヨーダンパである。従来のパッシブダンパは、その特性曲線が固定されており、その性能パラメータが列車ニーズに応じてリアルタイムに調整することはできない。
【0005】
そのため、従来のパッシブダンパは、その性能パラメータが固定されて調整不可能であるため、列車の運行ニーズに応じて列車のサスペンションシステムを常に最適なマッチング状態にすることができない。また、現在、列車が路線、国境、地域を跨いで運行する状況がますます多くなっていくに連れて、ダンパのパラメータに対するニーズもますます多様化しており、従来のパッシブダンパは様々な線路のニーズに適応することが難しい。
【0006】
現在、車両は旋盤加工の全体の周期内に、アンチヨーダンパのパラメータに対するニーズも同じではない。新しい車輪のテーパが比較的小さく、アンチヨーダンパは、主に剛性特性を示す。走行距離の増加に伴い、車輪のテーパは大きくなり、アンチヨーダンパが減衰特性を示す必要性が高まる。従来のパッシブダンパは、その性能パラメータが固定されて調整不可能であるため、同様に旋盤加工周期を延ばして運営コストを低減するという目的を達成することが困難であった。特に、車両の曲線運行の場合、車輪レール間のアタックアングルが大きくなって、車輪レールの横力が増大し、列車運行の安全性に影響を与えるので、運行速度が制限されてしまう。同時に、過大なアタックアングルにより、車輪レールの摩耗が非常に著しくなり、運営およびメンテナンスのコストが増大してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例は、従来技術における従来のアンチヨーダンパの性能パラメータが調整不可能であるため車両が曲線運行を行う時に生じる様々な欠陥を解決するためのアクティブ制御アンチヨーダンパ、制振システム、および車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、油圧シリンダと、油圧シリンダ内で往復運動を行う時に前記油圧シリンダの内部を2つのシリンダブロックに区画するピストンと、を有するアクティブ制御アンチヨーダンパを提供し、当該アクティブ制御アンチヨーダンパは、貯油タンクと方向切換弁とをさらに有し、2つの前記シリンダブロックは、それぞれ2つの主油路を介して前記貯油タンクに連通して主回路を構成し、前記方向切換弁は、2つの前記主油路と前記貯油タンクとの間に取り付けられており、ダンパがアクティブモードにある時に前記主回路の流れ方向を変更するために用いられ、前記ピストンの前記油圧シリンダ内での変位を調整可能である。
【0009】
一部の実施例において、2つの前記シリンダは、それぞれ2つの主油路を介して前記方向切換弁に連通し、前記方向切換弁は、それぞれ2つの駆動油路を介して前記貯油タンクに連通し、前記方向切換弁は、少なくとも2つの切換可能な動作位置を有する。
【0010】
一部の実施例において、前記方向切換弁は、第1動作位置と第2動作位置とを有し、前記第1動作位置と前記第2動作位置とにそれぞれ2つの導流口が設けられ、2つの前記導流口は、2つの前記主油路に接続するために用いられ、前記第1動作位置の2つの前記導流口の位置と前記第2動作位置の2つの前記導流口の位置とは逆である。
【0011】
一部の実施例において、当該ダンパは、いずれかの前記駆動油路に直列接続される駆動機構をさらに有する。
【0012】
一部の実施例において、前記駆動機構は、駆動モータと駆動ポンプとを有し、前記駆動ポンプは、前記駆動油路に直列接続され、且つ前記駆動モータに接続される。
【0013】
一部の実施例において、当該ダンパは、エネルギー貯蔵岐路をさらに有し、
前記エネルギー貯蔵岐路は、一端が前記駆動油路に連通し且つ前記方向切換弁と前記駆動機構との間に位置し、他端が前記貯油タンクに連通し、前記エネルギー貯蔵岐路に圧力センサ、アキュムレータ、および圧力逃し弁が直列接続される。
【0014】
一部の実施例において、2つの前記主油路の間に、少なくとも1つの圧力逃し岐路が連通し、各前記圧力逃し岐路同士が並列接続され、各前記圧力逃し岐路にそれぞれ圧力逃し弁が直列接続される。
【0015】
一部の実施例において、当該ダンパは、少なくとも2つの並列岐路を有し、
各前記岐路の両端は、それぞれ2つの前記主油路に連通し、各前記岐路は、それぞれ直列に連通される一方向絞り弁と調整可能な電磁弁とを有し、前記調整可能な電磁弁は、ダンパがセミアクティブモードにある時に当該ダンパの減衰係数を調整するために用いられる。
【0016】
一部の実施例において、前記岐路は、第1岐路と第2岐路とを有し、
前記第1岐路の一端と前記第2岐路の一端とは、第1ノードに並列接続され、前記第1岐路の他端と前記第2岐路の他端とは、第2ノードに並列接続され、前記第1ノードと前記第2ノードとは、それぞれ2つの前記主油路に連通し、前記第1岐路の流れ方向と前記第2岐路の流れ方向とは逆である。
【0017】
一部の実施例において、前記第1支点と前記第2支点とは、それぞれ前記貯油路を介して前記貯油タンクに連通し、各前記貯油路にそれぞれ絞り弁が直列接続される。
【0018】
一部の実施例において、前記第1支点と前記貯油タンクとの間に、さらに圧力逃し油路が連通し、前記圧力逃し油路は、各前記貯油路と並列に接続され、前記圧力逃し油路に圧力逃し弁が直列に取り付けられる。
【0019】
一部の実施例において、当該アンチヨーダンパは、非常用油路をさらに有し、
前記非常用油路の両端は、それぞれ2つの前記主油路に連通し、前記非常用油路は、直列に連通される非常用絞り弁と調整不可能な電磁開閉弁とを有し、
前記電磁開閉弁は、ダンパがパッシブモードにある時に前記非常用油路の起動の制御に用いられる。
【0020】
第2の形態では、本発明は、コントローラと、台車に取り付けられた少なくとも1つの上記のアクティブ制御アンチヨーダンパと、を有する制振システムを提供し、
前記コントローラの信号入力端と信号出力端とは、それぞれ各前記ダンパに接続される。
【0021】
一部の実施例において、当該制振システムは、データ収集機構をさらに有し、
前記データ収集機構は、圧力センサと変位センサとを有し、前記油圧シリンダの2つのシリンダブロック内に、それぞれ前記圧力センサが設けられ、前記変位センサは、前記ピストンに取り付けられ、前記圧力センサと前記変位センサとは、それぞれ前記コントローラの信号入力端に接続される。
【0022】
第3の形態では、本発明は、上記の制振システムを備える車両を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記技術案は以下の有益な効果を奏する。
一方では、本発明に係るアクティブ制御アンチヨーダンパにおいて、ピストンは油圧シリンダ内で往復運動を行う時に、油圧シリンダの内部を2つのシリンダブロックに区画し、2つのシリンダブロックは、それぞれ2つの主油路を介して貯油タンクに連通して油圧シリンダと貯油タンクとの間に主回路を構成する。方向切換弁は、2つの主油路と貯油タンクとの間に取り付けられており、ダンパがアクティブモードにある時に主回路の流れ方向を変更するために用いられ、ピストンの油圧シリンダ内での変位を調整可能である。当該ダンパがアクティブモードに切り替える時、油圧シリンダ内の2つのシリンダブロックの間の油圧差によってピストンの変位量を変更することにより、従来技術における従来のアンチヨーダンパの性能パラメータが調整不可能であることによる様々な欠陥を解決し、特に、車両が曲線運行を行う時に台車を車体に対して径方向位置に位置させる。これにより、列車の曲線通過速度を向上させ、車輪レールの摩耗を低減させ、車両の耐用年数を延ばすことができる。
【0024】
他方では、本発明の上記の制振システムは、コントローラと、台車に取り付けられた少なくとも1つの上記のアクティブ制御アンチヨーダンパと、を有し、コントローラの信号入力端と信号出力端とは、それぞれ各ダンパに接続され、車両運行の実際状態に基づいてコントローラを利用して現在必要なダンパ性能パラメータを算出し、続いてコントローラは現在性能パラメータ付きの制御信号をダンパに伝送することにより、ダンパが車両運行ニーズに応じて各性能パラメータをリアルタイムに調整可能であることを確保して、列車のサスペンションシステムを常に最適なマッチング状態にさせ、且つ様々な地域環境および線路で必要とされる車両運行ニーズに適応し、車両旋盤加工周期を効果的に延ばすことができ、車両の耐用年数を向上させ、運営コストを低減することができる。
【0025】
本発明の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれらの図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例に係る制振システムの制御構造の模式図である。
【
図2】本発明の実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパの油路構造の模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパがアクティブモードにある岐路状態の模式図(1)である。
【
図4】本発明の実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパがアクティブモードにある岐路状態の模式図(2)である。
【
図5】本発明の実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパがセミアクティブモードにある岐路状態の模式図(1)である。
【
図6】本発明の実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパがセミアクティブモードにある岐路状態の模式図(2)である。
【
図7】本発明の実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパがパッシブモードにある岐路状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面および実施例を参照しながら、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【0028】
本発明の実施例の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」、「前端」、「後端」、「頭部」、「尾部」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づく方位又は位置関係であり、本発明を便利且つ簡単に説明するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が必ず特定の方位にあり、特定の方位において構成されて操作されると明示又は暗示するものではないので、本発明に対する限定であると理解されるべきではない。なお、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は目的を説明するためものであり、相対的な重要性を明示又は暗示すると理解されるものではない。
【0029】
本実施例は、アクティブ制御アンチヨーダンパ100、制振システム、および車両を提供する。そのうち、アクティブ制御アンチヨーダンパ100の油路制御構造は、
図2~
図6に示されている。制振システムは、当該アクティブ制御アンチヨーダンパ100を有する。制振システムの制御構造は、
図1に示されている。当該車両は当該制振システムを備える。
【0030】
図1に示すように、本実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパ100は、油圧シリンダ1と、油圧シリンダ1内で往復運動を行う時に油圧シリンダ1の内部を2つのシリンダブロックに区画するピストン2と、を有する。
図1に示される油圧シリンダ1は平置き状態である。
図1に示すように、ピストン2は、油圧シリンダ1内で左右往復運動を行う。
図1に示されるピストン2の左側シリンダブロックを第1シリンダブロックPAとし、ピストン2の右側シリンダブロックを第2シリンダブロックPBとする。
【0031】
本実施例の上記ピストン2の左右両側のシリンダブロックは容積が等しく、且つピストン2が油圧シリンダ1内で往復運動を行う時、二組の岐路内の油液が流れる油路は同じであり、これによりダンパの減衰力を調整する時に、システムがより安定することを確保する。好ましくは、油圧シリンダ1にそれぞれ油注入口FP10と油排出口BP10とが連通し、これにより、油注入口FP10により外部から当該ダンパ内部に送油と油補給とを行い、且つ油排出口BP10により余分な油液をダンパから引き出すことにより、ダンパ内部の油液システムのバランスを確保する。
【0032】
図2に示すように、当該アクティブ制御アンチヨーダンパ100は、方向切換弁と貯油タンクとをさらに有する。油圧シリンダ1の2つのシリンダブロックPA、PBは、それぞれ2つの主油路を介して貯油タンクに連通して、油圧シリンダ1と貯油タンクとの間に主回路を構成する。貯油タンク内の油液がいずれかの主油路を通って油圧シリンダ1内に圧送されると、ピストン2を駆動して油圧シリンダ1内で往復運動させることができる。
【0033】
本実施例では、2つの主油路と貯油タンクとの間に方向切換弁が取り付けられ、方向切換弁は、ダンパが正常に動作し且つアクティブモードにある時に上記の主回路の流れ方向を変更するために用いられることにより、主回路の流れ方向の変化を利用してピストン2を駆動して往復運動させる。さらに、方向切換弁は、さらに、必要に応じてピストンの油圧シリンダ内での変位量をリアルタイムに調整することができ、これにより、車両の運行ニーズに応じて各性能パラメータをリアルタイムに調整することを実現し、列車のサスペンションシステムが常に最適なマッチング状態にする。
【0034】
本実施例のアクティブ制御アンチヨーダンパ100は、アクティブモードが設定されており、当該アクティブモードは、車両が曲線運動を行う時に起動することができる。車両が曲線運行を行う時に、アクティブ制御アンチヨーダンパ100は、自動的にアクティブモードに入り、これにより、主回路を利用してピストン2の変位量を正確に調整することができる。これにより、台車を車体に対して径方向位置に位置させ、さらに列車の曲線通過速度を向上させ、車輪レールの摩耗を低減させ、車両の耐用年数を延ばす。
【0035】
本実施例では、主回路の油液の流れ方向の方向切換を正確に調整するために、2つのシリンダブロックPA、PBをそれぞれ2つの主油路を介して方向切換弁PV3に連通させる一方、方向切換弁PV3をそれぞれ2つの駆動油路を介して貯油タンクに連通させる。方向切換弁PV3は、少なくとも2つの切換可能な動作位置S1、S2を有することで、各動作位置間の切換により、各主油路内の油液の同期方向切換を実現する。2つの主油路の同期方向切換とは、方向切換弁PV3が1つの動作位置にある時、2つの主油路内の油液の流れ方向が正方向となり、方向切換弁PV3が次の動作位置に切り換えられる時、2つの主油路内の油液の流れ方向が瞬時に逆方向となることである。
【0036】
本実施例では、方向切換弁PV3は、第1動作位置S1と第2動作位置S2とを有する。第1動作位置S1および第2動作位置S2には、それぞれ2つの主油路に接続するための2つの導流口が設けられている。そのうち、第1動作位置S1の2つの導流口の位置と第2動作位置S2の2つの導流口の位置とは逆であり、このような設置により、方向切換弁PV3が動作位置を切り換える時に、そもそも一方の主油路に接続された導流口を直ちに他方の主油路に接続するように切り換えることができ、他方の導流口は同様に変化し、これによりそもそも給液口となる導流口を直ちに排液口に切り換えることができ、これにより、2つの主油路の流れ方向が同時且つ同期に変更されるように駆動する。好ましくは、方向切換弁PV3は3位置4方向電磁弁であり、当該電磁弁は、2つの動作位置に加え、閉鎖位置をさらに有し、方向切換弁PV3が閉鎖位置に切り替えられると、当該方向切換弁PV3は、2つの主油路と2つの駆動油路との間を遮断し、主回路が動作せず、当該アクティブ制御アンチヨーダンパ100は自動的に他のモードに切り替える。
【0037】
本実施例では、当該アクティブ制御アンチヨーダンパ100は、駆動機構をさらに有し、駆動機構は、いずれかの駆動油路に直列に接続されることにより、主回路内の油液の流れに駆動力を提供する。駆動機構は、駆動モータと駆動ポンプとを有し、駆動ポンプは、駆動油路に直列に接続され、且つ駆動モータに接続される。駆動モータは、駆動ポンプを駆動して駆動油路内にポンピング力を印加することで、駆動機構の位置する駆動油路が常に方向切換弁PV3内に油液を送り、かつ方向切換弁PV3の状態に応じて主回路内の油液の流れ方向を変化させるように駆動して、さらにピストン2が往復運動を行うように駆動する。
【0038】
1つの好ましい実施例では、
図3に示すように、方向切換弁PV3が第1動作位置S1にある場合、右側駆動油路における駆動ポンプは、駆動作用を果たして、貯油タンク内の油液が方向切換弁PV3内に圧送され、方向切換弁PV3の第1動作位置S1の内部の1つの流路を経過した後に右側主油路内に流入し、続いて油圧シリンダ1の第2シリンダブロックPBに入り、さらにピストン2を左へ移動させるように駆動する。ピストン2が左へ移動する時に、第1シリンダブロックPA内の油液は左側主油路内にポンピングされ、そして方向切換弁PV3の第1動作位置S1の内部の他方の流路に入り、続いて油液は方向切換弁PV3から左側駆動油路内に流入し、最終的に貯油タンク内に戻る。方向切換弁PV3の第1動作位置S1内の2つの流路は平行に設けられている。
【0039】
図4に示すように、方向切換弁PV3が第2動作位置S2にある場合、依然として右側駆動油路における駆動ポンプによって駆動作用を果たして、貯油タンク内の油液が方向切換弁PV3内に圧送され、方向切換弁PV3の第2動作位置S2の内部の1つの流路を経過した後に左側主油路内に流入し、続いて油圧シリンダ1の第1シリンダブロックPAに入り、さらにピストン2を右へ移動させるように駆動する。ピストン2が右へ移動する時に、第2シリンダブロックPB内の油液は右側主油路内にポンピングされ、そして方向切換弁PV3の第2動作位置S2の内部の他方の流路に入り、続いて油液が方向切換弁PV3から左側駆動油路内に流入し、最終的に貯油タンク内に戻る。方向切換弁PV3の第2動作位置S2における2つの流路が交差して設けられているが、これらの2つの流路の間は連通していない。
【0040】
上記には、方向切換弁PV3の一種の内部構造の設置および方向切換方式を示したが、ピストン2を油圧シリンダ1内で往復運動させるように駆動するように主油路内で方向切換作用を果たすことができれば、他の構造を選択してもよいと理解されるべきである。
【0041】
本実施例では、当該ダンパは、エネルギー貯蔵岐路をさらに有する。エネルギー貯蔵岐路の一端が駆動油路に連通し、且つ方向切換弁PV3と駆動機構との間に位置し、エネルギー貯蔵岐路の他端が貯油タンクに連通することで、エネルギー貯蔵岐路は駆動機構の両端に並列に接続される。エネルギー貯蔵岐路にアキュムレータPA1が直列に接続されて、アキュムレータPA1が駆動機構の両端に並列に接続されることにより、方向切換弁PV3が閉鎖位置にある(即ち、方向切換弁PV3が動作しない)場合、駆動機構とアキュムレータPA1との間に形成された回路を利用して、アキュムレータPA1内に予めエネルギー貯蔵しておくことができる。これにより、駆動ポンプの動力が車両の曲線運行に必要な動的要求を満たすことができない場合、補充動力として、予め蓄積された油液を駆動油路内に注入して、主回路内の油液流動に運動エネルギーを補充することができる。
【0042】
本実施例では、アキュムレータPA1を合理的に使用して主回路内に動力を補充するために、アキュムレータPA1に対して必要な圧力監視を実行可能な圧力センサP13をエネルギー貯蔵岐路に直列に接続することが好ましい。コントローラ3により、アキュムレータPA1に対して圧力ピークF0を予め設定しておくことができ、アキュムレータPA1のリアルタイム圧力値が設定された圧力ピークF0より低い場合、駆動機構は起動して運行し、アキュムレータPA1内に蓄積された油液の圧力が圧力ピークF0に達するか又はそれを超えるまで、油液が駆動油路からエネルギー貯蔵岐路に流入してアキュムレータPA1へ流れるように駆動すればよい。
【0043】
アキュムレータPA1内の油圧値を合理的に制御し、圧力が高すぎて危険が発生することを防止するために、エネルギー貯蔵岐路にはさらに圧力逃し弁PRV4が直列に接続されることが好ましい。圧力逃し弁PRV4は、エネルギー貯蔵岐路およびアキュムレータPA1の最大圧力値を制限することができる。
【0044】
車両の正常な直線走行時に運行要求に応じて各性能パラメータをリアルタイムに調整するために、
図2に示すように、本実施例の上記ダンパ100は、少なくとも2つの並列岐路をさらに有する。各岐路の両端は、それぞれ油圧シリンダ1の2つのシリンダブロックに連通する。各岐路には、それぞれ調整可能な電磁弁PVが取り付けられており、調整可能な電磁弁PVは、ダンパ100が正常に運行してセミアクティブモードにある時に、当該岐路を通過する油液の減衰力を調整することで、当該ダンパの減衰係数を調整し、さらに正常に動作する時のダンパの各性能パラメータをリアルタイムに調整し、ダンパに対してセミアクティブ制御を採用する目的を達する。
【0045】
当該アクティブ制御アンチヨーダンパ100は正常に動作し且つセミアクティブモードにある時に、ピストン2が油圧シリンダ1内で往復運動を行うため、油圧シリンダ1内の2つのシリンダブロックの間に油圧差が生じる。油液は、この油圧差の変化に応じて各岐路間で流れて切り換わる。油液が流れた対応する岐路上の調整可能な電磁弁PV1、PV2により油液の減衰力を調整することで、ダンパ100がセミアクティブモードにおいて制御可能な減衰力と減衰係数を有することを確保する。
【0046】
油路の制御を容易にするために、ダンパ100に2つの並列岐路が設けられている。そのうちの1つの岐路は、入口が第1シリンダブロックPAに連通し、出口が第2シリンダブロックPBに連通する。他の1つの岐路は、入口が第2シリンダブロックPBに連通し、出口が第1シリンダブロックPAに連通する。言い換えると、2つの並列岐路内の油液の流れは逆となる。
【0047】
各岐路の流れを合理的に制御するために、本実施例の上記の各岐路は、それぞれ直列に連通する一方向絞り弁CV1、CV2、および調整可能な電磁弁PV1、PV2を有する。各岐路の予め設定された流れ方向に基づき、一方向絞り弁CV1、CV2と調整可能な電磁弁PV1、PV2とを対応して同一の岐路に直列接続することで、逆方向に流れる油液を即時に遮断し、岐路内の油液の流れ方向を合理的に制限することができる。好ましくは、調整可能な電磁弁PV1、PV2は電磁比例弁であり、これにより、当該岐路を流れる油液の減衰力をより正確に調整することができる。
【0048】
当該ダンパに3つ以上の並列岐路を設けてもよいことが理解できる。全ての岐路を並列し、且つ全ての岐路を二組に分け、二組の岐路内の油液の流れ方向が逆となるようにすれば、ダンパに対するセミアクティブ制御を実現することができる。
【0049】
本実施例では、
図2に示すように、全ての岐路は、第1岐路B1と第2岐路B2とを有し、第1岐路B1の一端と第2岐路B2の一端とは、第1ノードN1に並列接続され、第1岐路B1の他端と第2岐路B2の他端とは、第2ノードN2に並列接続され、第1ノードN1と第2ノードN2とは、それぞれ油圧シリンダ1の2つのシリンダブロックに連通する。
【0050】
本実施例では、第1岐路B1の流れと第2岐路B2の流れとが逆になっている。具体的には、第1岐路B1は、直列接続された第1一方向絞り弁CV1および第1調整可能な電磁弁PV1を有する。第1一方向絞り弁CV1は、第1岐路B1の油液の流れを、油液が第1シリンダブロックPAから流出した後、第1岐路B1を通って第2シリンダブロックPB内に流れ戻るように制限する。第2岐路B2は、第2一方向絞り弁CV2および第2調整可能な電磁弁PV2を有する。第2一方向絞り弁CV2は、第2岐路B2の油液の流れを、油液が第2シリンダブロックPBから流出した後、第2岐路B2を通って第1シリンダブロックPA内に流れ戻るように制限する。
【0051】
ダンパがセミアクティブモードにある場合、
図5に示すように、油圧シリンダ1の第1シリンダブロックPA内の油圧が第2シリンダブロックPB内の油圧より大きい時、油液は、第1シリンダブロックPA内から流出した後、左側主油路を介して第1ノードN1を流れた後に第1岐路B1内に入り、第1岐路B1内から流出した油液は、第2ノードN2を流れた後に右側主油路内に流れ戻り、最終的に第2シリンダブロックPB内に戻ることで、第1岐路B1と油圧シリンダ1との間に油液制御回路が形成される。第2岐路B2内の第2絞り弁は、油液を第1ノードN1と第2絞り弁との間に閉じ込めることで、油液が第2岐路B2を流れて制御回路を形成することができなくなる。この時、第1調整可能な電磁弁PV1は、第1岐路B1内の油液の減衰力を正確に調整し、即ち、ダンパのシステム減衰係数を調整することができ、これによりダンパの性能パラメータをリアルタイム、且つ確実に調整する。
【0052】
同様に、
図6に示すように、ダンパがセミアクティブモードにある場合、油圧シリンダ1の第2シリンダブロックPB内の油圧が第1シリンダブロックPA内の油圧より大きい時、油液は、第2シリンダブロックPB内から流出した後、第2ノードN2を流れた後に第2岐路B2内に入り、第2岐路B2内から流出した油液は、第1ノードN1を流れた後に第1シリンダブロックPA内に流れ戻ることで、第2岐路B2と油圧シリンダ1との間に別の油液制御回路が形成される。第1岐路B1内の第1絞り弁は、油液を第2ノードN2と第1絞り弁との間に閉じ込めることで、油液が第1岐路B1を流れて制御回路を形成することができなくなる。この時、第2調整可能な電磁弁PV2は、第2岐路B2内の油液の減衰力を正確に調整し、即ち、ダンパのシステム減衰係数を調整することができ、これによりダンパの性能パラメータをリアルタイム、且つ確実に調整する。
【0053】
ダンパが故障または電源オフ時に正常に運行できることを確保するために、本実施例のダンパは、非常用油路B3をさらに有する。非常用油路B3の両端はそれぞれ2つのシリンダブロックに連通する。
図5に示すように、好ましくは、非常用油路B3と残りの全ての岐路との間の並列接続を確保するように、非常用油路B3は、一端が第1ノードN1に接続され、他端が第2ノードN2に接続される。非常用油路B3が電源オフ状態で油圧シリンダ1に対して油液の閉ループ回路を正常に提供できることを確保するために、当該非常用油路B3には調整不可能な電磁開閉弁SVが取り付けられ、電磁開閉弁SVは、ダンパがパッシブモードにある時に非常用油路B3の起動の制御に用いられる。これにより、故障又は電源オフ時にダンパは非常用油路B3を起動してパッシブモードに切り替えられる。
【0054】
本実施例では、
図7に示すように、非常用油路B3は、直列に連通している非常用絞り弁TV1と電磁開閉弁SVとを有する。パッシブモードでは、非常用油路B3を除く残りの全ての岐路は各岐路における一方向絞り弁および調整可能な電磁弁PVの電源オフにより中断されて、対応する岐路内の回路に沿った油液の流通状態が遮断されるが、非常用油路B3における電磁開閉弁SVを手動で開いたり、電源オフ後に自動的に起動状態にジャンプしたりすることにより、油圧シリンダ1内から流出した油液が非常用油路B3内を通って流れ、油圧シリンダ1内に流れ戻り、非常用油路B3と油圧シリンダ1との間に油液非常用制御回路が形成されることを確保する。
【0055】
本実施例では、非常用油路B3の非常用絞り弁TV1は調整不可能な流れ制限オリフィスであり、電磁開閉弁SVは、当該非常用油路B3内の油液の流量および減衰力のいずれかが調整不可能である。そのため、油液が当該非常用油路B3を流れ、且つ残りの全ての岐路が遮断されると、当該ダンパはパッシブモードになる。
【0056】
本実施例のダンパは、上記のセミアクティブモードとパッシブモードとに加えて、低減衰モードも有することが理解できる。
【0057】
列車車両が直線運行する場合、
図5および
図6に示すように、ダンパはセミアクティブモードにあり、この時、非常用油路B3の電磁開閉弁SVは帯電常時閉状態にあり、且つ各岐路の調整可能な電磁弁PV1、PV2はいずれも帯電状態にあり、この時、ダンパのシステム減衰力は、作動油が各岐路の調整可能な電磁弁PVを流れることによって発生し、減衰係数の大きさは、対応する調整可能な電磁弁PVの制御電圧によって決定される。油路制御の安定化を容易にするために、上記の第1岐路B1における第1調整可能な電磁弁PV1の制御電圧が第2岐路B2における第2調整可能な電磁弁PV2の制御電圧と等しい。
【0058】
列車車両が曲線運行する場合、
図3および
図4に示すように、ダンパはアクティブモードにあり、この時、非常用油路B3の電磁開閉弁SVおよび全ての岐路の調整可能な電磁弁PV1、PV2は、いずれも電源オフ状態にあり、駆動モータおよび駆動ポンプは起動し、主回路を起動させてピストン2の往復運動の駆動源とする。方向切換弁PV3によって動作位置を継続的に切り換えることにより、主回路の油液の流れ方向を予め設定された周波数で繰り返し切換しこれにより、ピストン2を油圧シリンダ1内で往復運動を行うように駆動する。この時、ダンパは変位制御状態にあり、ピストン2の変位量は、必要に応じて方向切換弁PV3によってリアルタイムに調整することができる。
【0059】
ダンパがパッシブモードにある時、
図7に示すように、ダンパは故障または電源オフ状態にあり、各岐路の調整可能な電磁弁PVと一方向絞り弁とが動作停止して、各岐路の流通状態が完全に遮断され、油液が岐路内で非流通状態になる。この時、非常用油路B3の調整不可能な電磁開閉弁SVが起動して、当該非常用油路B3を油液が流れて制御回路が形成される。ダンパの減衰力は、作動油が調整不可能な非常用絞り弁TV1を流れることによって発生する。
【0060】
ダンパが低減衰モードにある時、非常用油路B3の電磁開閉弁SVは開弁し、全ての岐路の調整可能な電磁弁PVは帯電して開弁すると、全ての岐路は遮断状態ではない。残りの岐路における調整可能な電磁弁PVの制御電圧を制御することにより、対応する岐路における調整可能な電磁弁PVの減衰係数が最小値になり、この時点で、非常用油路B3を含むすべての岐路を油液が流れて減衰力を発生させることができる。この時、ダンパによって発生された減衰力が非常に小さいので、ダンパは低減衰モードにあると考えられる。当該低減衰モードは、緩和曲線の出入りなどの低減衰挙動に適した。緩和曲線とは、平面線形において、直線と円曲線との間または円曲線と円曲線との間に設けられた曲率が連続的に変化する曲線をいう。緩和曲線は、道路平面線形の要素の一つであり、直線と円曲線との間、または半径が大きく異なる2つの、ステアリングが同じ円曲線の間に設けられた、曲率が連続的に変化する曲線である。車両走行が緩和曲線に従う場合、緩和曲線への進入時および緩和曲線からの退出時の挙動は低減衰挙動である。
【0061】
本実施例において、ダンパの油液の圧力が高すぎることを防止し、且つダンパがアンロード力、アンロード速度、および減衰係数等のパラメータを調整する時の安全性を向上させるために、第1ノードN1および第2ノードN2は、それぞれ主油路を介して油圧シリンダ1の2つのシリンダブロックに連通し、2つの主油路の間に少なくとも1つの圧力逃し岐路が連通し、各圧力逃し岐路同士は並列接続されることが好ましい。圧力逃し岐路には圧力逃し弁が直列に接続される。
【0062】
本実施例では、2つの主油路の間に2つの圧力逃し岐路が並列接続され、2つの圧力逃し岐路は、それぞれ圧力逃し弁PRV1と圧力逃し弁PRV2とが直列接続され得る。圧力逃し弁PRV1と圧力逃し弁PRV2とは、個別かつ協調的にダンパの最大減衰力を限定し、各岐路内の調整可能な電磁弁PVと協働して作用することができ、ダンパのアンロード力、アンロード速度、および減衰係数などのパラメータに対する安全で正確な調整を実現する。
【0063】
本実施例のダンパでは、2つの主油路は、それぞれ貯油路を介して貯油タンクに連通する。具体的には、第1支点N1と第2支点N2とは、それぞれ貯油路を介して貯油タンクに連通する。2つの貯油路には、絞り弁である第3絞り弁CV3と第4絞り弁CV4とが直列に接続される。第3絞り弁CV3および第4絞り弁CV4は、いずれもスプリング式ロードチェックバルブであることが好ましい。油圧シリンダ1のいずれか一方のシリンダブロック内の圧力が大気圧よりも低い場合には、それぞれ第3絞り弁CV3および/または第4絞り弁CV4により、ピストン2の運動で貯油タンク内から油液をシリンダブロック内に直接吸入することができる。これにより、発生し得る漏れの問題を補うことができ、油圧ポンプ内のキャビテーション現象を防止することができる。
【0064】
本実施例では、第1支点N1と貯油タンクとの間に圧力逃し油路が更に連通し、圧力逃し油路は、各貯油路と並列に接続され、圧力逃し油路に圧力逃し弁PRV3が直列に取り付けられる。圧力逃し弁PRV3は、貯油タンク内部の最大圧力を制限することができる。圧力逃し弁PRV3には、最大安全圧力値P0が予め設定されており、貯油タンク内部の圧力が安全圧力値P0よりも大きくなると、圧力逃し弁PRV3が直ちに開き、ダンパの主油路内の油液が貯油タンクに直接流れ戻る。貯油タンクには、貯油タンクポートRP10が設けられており、必要に応じて貯油タンク内の油液量を増減して、油液の高さや油液の圧力を制御する。
【0065】
図1に示すように、本実施例に係る制振システムは、コントローラ3と、台車に取り付けられた少なくとも1つの上記のようなアクティブ制御アンチヨーダンパ100と、を有する。そのうち、コントローラ3の信号入力端と信号出力端とは、それぞれ各ダンパ100に接続され、車両運行の実際状態に基づいて、コントローラ3により現在必要なダンパ性能パラメータを算出する。当該性能パラメータは、減衰力、減衰係数、およびピストンの変位量を含むが、これらに限定されない。コントローラ3は、現在性能パラメータ付きの制御信号をダンパに伝送することにより、ダンパが車両の運行ニーズに応じて各性能パラメータをリアルタイムに調整可能であることを確保する。
【0066】
コントローラ3が計算時に信頼性の高いデータソースを有すると共に、コントローラ3とダンパとの間に良好で安定した信号制御回路を形成することを確保するために、当該システムはデータ収集機構をさらに有することが好ましい。データ収集機構は、ダンパに取り付けられ、コントローラ3の信号入力端に接続されており、ダンパのリアルタイム動作パラメータをコントローラ3に伝送するために用いられる。これにより、コントローラ3は、リアルタイム動作パラメータに基づいてダンパに必要な性能パラメータを算出し、予め設定された性能パラメータ値を含む制御信号をダンパ100にフィードバックする。
【0067】
本実施例では、コントローラ3には、少なくとも2つのデータインタフェースが設けられている。本実施例のコントローラ3は、主に第1インタフェースC1、第2インタフェースC2、および第3インタフェースC3を含む。そのうち、第1インタフェースC1は、信号出力端であり、第2インタフェースC2は、信号入力端であり、第3インタフェースC3は、給電および外部機器のアクセス端である。第1インタフェースC1は、ダンパ上の各岐路の調整可能な電磁弁PV1、PV2に接続され、コントローラ3の計算結果に基づいて調整可能な電磁弁PV1、PV2の制御電圧などのパラメータをリアルタイムに調整して、ダンパ100の性能パラメータの調整を実現するために用いられる。
【0068】
本実施例のデータ収集機構は、圧力センサP11、P12、P13、および変位センサPP1を有する。油圧シリンダ1の2つのシリンダブロック内には、それぞれ圧力センサP11が設けられている。圧力センサP11、P12、P13および変位センサPP1は、コントローラ3における信号入力端である第2インタフェースC2にそれぞれ接続される。圧力センサP11、P12は、第1シリンダブロックPAと第2シリンダブロックPBとにそれぞれ対応して取り付けられており、油圧シリンダ1内のピストン2の両側の2つのシリンダブロック内部の油液の圧力値をリアルタイムに感知するために用いられる。圧力センサP13は、エネルギー貯蔵岐路に対応して直列に接続されており、アキュムレータPA1の圧力値を感知するために用いられる。変位センサPP1は、油圧シリンダ1全体に対するダンパ100内のピストン2またはピストンロッドの変位量をリアルタイムで感知するために、ピストン2またはピストンロッドに取り付けられている。
【0069】
本実施例のデータ収集機構は、加速度センサをさらに有する。加速度センサは、コントローラ3における信号入力端である第2インタフェースC2に接続される。加速度センサは、車両に搭載されており、コントローラ3に対して、コントローラ3によるダンパに必要なパラメータの計算時の基準データとなる車両運行加速度データを提供するために用いられる。
【0070】
本実施例のコントローラ3には、外部接続インタフェースがさらに設けられており、外部接続インタフェースは、外部の車両統括制御システムに接続される。コントローラ3と車両統括制御システムとの間に遮断リレー4とが取り付けられており、遮断リレー4は、車載不安定監視システムと連動し、一旦台車不安定監視システムが警報すると、遮断リレー4は動作してセミアクティブアンチヨーダンパの電源を切断して、制振システム全体の電源を遮断し、ダンパを強制的にパッシブモードに切り替え、この時のダンパは、従来のパッシブダンパと同じ性能を有し、車両が正常に運行し続けることを十分に確保できる。
【0071】
以上説明したように、本実施例に係るアクティブ制御アンチヨーダンパ100において、ピストン2は油圧シリンダ1内で往復運動を行う時に、油圧シリンダ1の内部を2つのシリンダブロックPA、PBに区画し、2つのシリンダブロックPA、PBは、それぞれ2つの主油路を介して貯油タンクに連通して油圧シリンダ1と貯油タンクとの間に主回路を構成する。方向切換弁PA3は、2つの主油路と貯油タンクとの間に取り付けられており、ダンパ100がアクティブモードにある時に主回路の流れ方向を変更するために用いられ、且つピストン2の油圧シリンダ1内での変位を調整することができる。当該ダンパ100がアクティブモードに切り替える時、油圧シリンダ1内の2つのシリンダブロックPA、PBの間の油圧差によってピストンの変位量を変更することにより、従来技術における従来のアンチヨーダンパ100の性能パラメータが調整不可能であることによる様々な欠陥を解決し、特に、車両が曲線運行を行う時に台車を車体に対して径方向位置に位置させる。これにより、列車の曲線通過速度を向上させ、車輪レールの摩耗を低減させ、車両の耐用年数を延ばすことができる。
【0072】
本実施例に係る制振システムは、コントローラ3と、台車に取り付けられた少なくとも1つの上記のアクティブ制御アンチヨーダンパ100と、を有し、コントローラ3の信号入力端および信号出力端は、それぞれ各ダンパ100に接続される。車両の運行の実際状態に応じてコントローラ3を用いて現在必要な制振性能パラメータを算出し、続いてコントローラ3は現在性能パラメータ付きの制御信号をダンパ100に伝送することにより、ダンパ100が車両の運行のニーズに応じて各性能パラメータをリアルタイムに調整可能であることを確保して、列車のサスペンションシステムを常に最適なマッチング状態にさせ、且つ様々な地域環境および線路で必要とされる車両運行ニーズに適応し、車両旋盤加工周期を効果的に延ばすことができ、車両の耐用年数を向上させ、運営コストを低減することができる。
【0073】
本発明の実施例は、例示および説明のために提供されたものであり、本発明を網羅するものまたは開示された形態に限定するものではない。当業者にとって、多くの修正と変化は明らかである。実施例は、本発明の原理および実際の応用をよりよく説明し、且つ、当業者が本発明を理解して、特定の用途に適する様々な修正を伴う様々な実施例を設計するために選択して説明される。
【符号の説明】
【0074】
100:アクティブ制御アンチヨーダンパ
1:油圧シリンダ
2:ピストン
3:コントローラ
4:遮断リレー
PA:第1シリンダブロック
PB:第2シリンダブロック
C1:第1インタフェース
C2:第2インタフェース
C3:第3インタフェース
N1:第1ノード
N2:第2ノード
B1:第1岐路
PV1:第1調整可能な電磁弁
CV1:第1一方向絞り弁
B2:第2岐路
PV2:第2調整可能な電磁弁
CV2:第2一方向絞り弁
B3:非常用油路
SV:電磁開閉弁
TV1:非常用絞り弁
PA1:アキュムレータ
PV3:方向切換弁
S1:第1動作位置
S2:第2動作位置
CV3:第3絞り弁
CV4:第4絞り弁
CV5:第5絞り弁
PRV1、PRV2、PRV3、PRV4:圧力逃し弁
PP1:変位センサ
P11、P12、P13:圧力センサ
FP10:油注入口
BP10:油排出口
RP10:貯油タンクポート