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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20231113BHJP
   F25B 41/325 20210101ALI20231113BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20231113BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F25B41/325
F25B41/35
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022147743
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2019177469の分割
【原出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2022176224
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
(72)【発明者】
【氏名】北見 雄希
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/093149(WO,A1)
【文献】特開2005-351605(JP,A)
【文献】特開2019-132347(JP,A)
【文献】特許第2898906(JP,B2)
【文献】特開2012-177470(JP,A)
【文献】特開平5-288286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F16K 47/00-47/16
F16K 1/00- 1/54
F25B 41/325
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室の流体を弁ポートを介して下流側に流出させるとともに、駆動部のロータの回転により回転するニードル部を弁ポートの軸線方向に進退させて該弁ポートを流れる流体の流量を制御する電動弁であって、前記ニードル部が前記弁ポートの周囲の弁座に着座しないよう構成された電動弁において、
前記ニードル部と前記弁ポートとの隙間からなる第1絞り部と、前記弁室と前記下流側との間に設けられた第2絞り部と、を備え、
前記ニードル部が前記弁ポートに最も近接した位置において、前記第1絞り部は、前記ニードル部の円柱からなる溝部のないストレート部の外径と溝部のない前記弁ポートの内径との差に相当する径方向隙間からなることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
主弁座の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に設けられた前記弁座としての副弁座と、前記弁ポートとしての副弁ポートと、前記副弁ポートの開度を変更する前記ニードル部としての副弁体と、を備え、前記主弁体が前記主弁ポートを閉とした状態で、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを全開状態として、前記主弁ポートから大流量の流体を流す大流量制御域と、の二段の流量制御域を有することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記第2絞り部が、前記副弁座または前記副弁体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記第2絞り部が、前記主弁座または前記主弁体に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項5】
前記第2絞り部が、前記副弁座の前記副弁ポートの副弁室側の開口縁に複数形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項6】
前記第2絞り部が、前記主弁座の前記主弁ポートの主弁室側の開口縁に複数形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電動弁。
【請求項7】
前記第2絞り部が、前記副弁体の前記副弁ポートに対向する部位にて前記軸線周りに複数形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項8】
前記第2絞り部が、前記主弁体の前記主弁ポートに対向する部位にて前記軸線周りに複数形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電動弁。
【請求項9】
前記第2絞り部が、前記副弁座または前記副弁体の副弁側と、前記主弁座または前記主弁体の主弁側の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項10】
前記第2絞り部が、溝または孔により構成されていることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項11】
圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、小流量制御域と大流量制御域とで流量制御する電動弁がある。このような電動弁は、室内機に搭載される用途(例えば除湿弁)があり、例えば特開2019-132347号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-132347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、業務用及び家庭用の空気調和機においては、極めて高い静音性が求められている。小流量制御域は例えば除湿運転を行うものであり、特にこの小流量制御域において、副弁ポートとニードル弁との間の絞り部を通過する冷媒通過音を低減することが要求される。
【0005】
本発明は、ニードル部が弁ポートの周囲の弁座に着座しないよう構成された電動弁において、第1絞り部の冷媒通過音を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁室の流体を弁ポートを介して下流側に流出させるとともに、駆動部のロータの回転により回転するニードル部を弁ポートの軸線方向に進退させて該弁ポートを流れる流体の流量を制御する電動弁であって、前記ニードル部が前記弁ポートの周囲の弁座に着座しないよう構成された電動弁において、前記ニードル部と前記弁ポートとの隙間からなる第1絞り部と、前記弁室と前記下流側との間に設けられた第2絞り部と、を備え、前記ニードル部が前記弁ポートに最も近接した位置において、前記第1絞り部は、前記ニードル部の円柱からなる溝部のないストレート部の外径と溝部のない前記弁ポートの内径との差に相当する径方向隙間からなることを特徴とする。
【0007】
この際、主弁座の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に設けられた前記弁座としての副弁座と、前記弁ポートとしての副弁ポートと、前記副弁ポートの開度を変更する前記ニードル部としての副弁体と、を備え、前記主弁体が前記主弁ポートを閉とした状態で、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを全開状態として、前記主弁ポートから大流量の流体を流す大流量制御域と、の二段の流量制御域を有することを特徴とする電動弁が好ましい。
【0008】
また、前記第2絞り部が、前記副弁座または前記副弁体に形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0009】
また、前記第2絞り部が、前記主弁座または前記主弁体に形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0010】
また、前記第2絞り部が、前記副弁座の前記副弁ポートの副弁室側の開口縁に複数形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0011】
また、前記第2絞り部が、前記主弁座の前記主弁ポートの主弁室側の開口縁に複数形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0012】
また、前記第2絞り部が、前記副弁体の前記副弁ポートに対向する部位にて前記軸線周りに複数形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0013】
また、前記第2絞り部が、前記主弁体の前記主弁ポートに対向する部位にて前記軸線周りに複数形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0014】
また、前記第2絞り部が、前記副弁座または前記副弁体の副弁側と、前記主弁座または前記主弁体の主弁側の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする電動弁が好ましい。
【0015】
また、前記第2絞り部が、溝または孔により構成されていることを特徴とする特徴とする電動弁が好ましい。
【0016】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、室内熱交換器と、室外熱交換器と、前記室内熱交換器と前記室外熱交換器との間に設けられた電子膨張弁と、前記室内熱交換器に設けられる除湿弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記電動弁が、前記除湿弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、ニードル部が弁ポートの周囲の弁座に着座しないよう構成された電動弁において、例えば二段の流量制御域を有する電動弁の特に小流量制御域での第1絞り部の冷媒通過音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図である。
図2】第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で運転停止時、または冷房運転時の縦断面図である。
図3】第1実施形態の電動弁の副弁座及び副弁ポートの拡大縦断面図及び拡大平面断面図である。
図4】第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態でのニードル部と副弁ポートの拡大図である。
図5】第1実施形態の変形例1を示す図である。
図6】第1実施形態の変形例2を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態を示す図である。
図8】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態の縦断面図、図2は第1実施形態の電動弁の主弁体の全開状態で運転停止時、または冷房運転時の縦断面図、図3は第1実施形態の電動弁の副弁座及び副弁ポートの拡大縦断面図(図3(A))及び拡大平面断面図(図3(B))、図4は第1実施形態の電動弁の小流量制御域状態でのニードル部と副弁ポートの拡大図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1及び図2の図面における上下に対応する。また、図1及び図2では副弁座及副弁ポートの詳細構造は省略してある。この電動弁100は、弁ハウジング1と、ガイド部材2と、主弁体3と、ニードル弁4と、駆動部5と、を備えている。
【0020】
弁ハウジング1は例えば、黄銅、ステンレス等で略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室1Rを有している。弁ハウジング1の外周片側には主弁室1Rに導通される第1継手管11が接続されるとともに、下端から下方に延びる筒状部に第2継手管12が接続されている。また、弁ハウジング1の第2継手管12の主弁室1R側には円筒状の主弁座13が形成され、この主弁座13の内側は主弁ポート13aとなっており、第2継手管
12は主弁ポート13aを介して主弁室1Rに導通される。主弁ポート13aは軸線Lを中心とする円柱形状の透孔(貫通した孔)である。なお、第1継手管11及び第2継手管12は、弁ハウジング1に対してろう付け等により固着されている。
【0021】
弁ハウジング1の上端の開口部には、ガイド部材2が取り付けられている。ガイド部材2は、弁ハウジング1の内周面内に圧入される圧入部21と、圧入部21より小径で圧入部21の上下に位置する略円柱状のガイド部22,23と、上側のガイド部22の上部に延設されたホルダ部24と、圧入部21の外周に設けられたリング状のフランジ部25とを有している。圧入部21、ガイド部22,23、ホルダ部24は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部25は、例えば、黄銅、ステンレス等の金属板であり、このフランジ部25は、インサート成形により樹脂製の圧入部21と共に一体に設けられている。
【0022】
ガイド部材2は、圧入部21により弁ハウジング1に組み付けられ、フランジ部25を介して弁ハウジング1の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材2において、圧入部21及び上下のガイド部22,23の内側には軸線Lと同軸の円筒形状のガイド孔2Aが形成されるとともに、ホルダ部24の中心には、ガイド孔2Aと同軸の雌ねじ部24aとそのねじ孔が形成されている。そして、下側のガイド部23の内側でガイド孔2A内には主弁体3が配設されている。
【0023】
主弁体3は、主弁座13に対して着座及び離座する主弁部31と、円柱状のニードルガイド孔32aを有する保持部32と、ニードルガイド孔32aの底部を構成する副弁座33と、保持部32の端部に設けられたリテーナ34と、を有している。なお、ニードルガイド孔32aの下側一部は副弁室3Rとなっている。保持部32のニードルガイド孔32a内には、後述のロータ軸51に取り付けられたワッシャ43とロータ軸51と一体に形成されたガイド用ボス部44とが挿通されるとともに、リング状のリテーナ34は保持部32の上端に嵌合固着または溶接等により固着されている。
【0024】
また、リテーナ34とガイド孔2Aの上端部との間には、主弁ばね3aが配設されており、この主弁ばね3aにより主弁体3は主弁座13の方向(閉方向)に付勢されている。副弁座33の中心には軸線Lを中心とする円筒形状の副弁ポート33aが形成されている。また、保持部32の側面の少なくとも一箇所には、副弁室3Rと主弁室1Rとを導通する導通孔32bが形成されており、副弁体としてのニードル弁4が副弁ポート33aを開状態としたとき、主弁室1R、副弁室3R、副弁ポート33a及び主弁ポート13aが導通する。
【0025】
ニードル弁4は、後述のロータ軸51の下端部にこのロータ軸51と一体に形成されてロータ軸51側に連なる先端に向かって徐々に径が小さくなる円錐台状の「副弁体」としてのニードル部42とを一体に形成して備えている。また、ニードル弁4は、ロータ軸51に取り付けられた潤滑性樹脂からなる円環状のワッシャ43と、ロータ軸51と一体に形成されたガイド用ボス部44と、を有している。そして、ワッシャ43とガイド用ボス部44は、ニードルガイド孔32a内に摺動可能に挿通されている。
【0026】
弁ハウジング1の上端にはケース14が溶接等によって気密に固定され、このケース14の内外に駆動部5が構成されている。駆動部5は、ステッピングモータ5Aと、ステッピングモータ5Aの回転によりニードル弁4を進退させるねじ送り機構5Bと、ステッピングモータ5Aの回転を規制するストッパ機構5Cと、を備えている。
【0027】
そしてステッピングモータ5Aは、ロータ軸51と、ケース14の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ52と、ケース14の外周においてマグネットロータ52に対
して対向配置されたステータコイル53と、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸51はブッシュを介してマグネットロータ52の中心に取り付けられ、このロータ軸51のガイド部材2側の外周には雄ねじ部51aが形成されている。この雄ねじ部51aはガイド部材2の雌ねじ部24aに螺合されており、これにより、ガイド部材2はロータ軸51を軸線L上に支持している。そして、ガイド部材2の雌ねじ部24aとロータ軸51の雄ねじ部51aはねじ送り機構5Bを構成している。
【0028】
以上の構成により、ステッピングモータ5Aが駆動されるとマグネットロータ52及びロータ軸51が回転し、ロータ軸51の雄ねじ部51aとガイド部材2の雌ねじ部24aとのねじ送り機構5Bにより、マグネットロータ52と共にロータ軸51が軸線L方向に移動する。そして、ニードル弁4が軸線L方向に進退移動してニードル弁4が副弁ポート33aに対して近接又は離間する。また、ニードル弁4が上昇するとき、ワッシャ43が主弁体3のリテーナ34に係合し、主弁体3はニードル弁4と共に移動して、主弁座13から離座する。なお、マグネットロータ52には突起部52aが形成されており、マグネットロータ52の回転に伴って突起部52aが回転ストッパ機構5Cを作動させ、ロータ軸51(及びマグネットロータ52)の最下端位置及び最上端位置が規制される。
【0029】
図1の小流量制御域状態では、主弁体3は主弁座13に着座した状態で主弁ポート13aが弁閉となり、ニードル弁4により副弁ポート33aの開度が制御され、小流量の制御が行われる。また、例えば冷凍サイクルシステムの圧縮機が停止して流体(冷媒)が停止した状態で、ニードル弁4と主弁体3が上昇されると、図2のように主弁ポート13aが全開状態となる。これにより、冷房運転時、第1継手管11から第2継手管12へ大流量の流体(冷媒)が流されたり、暖房運転時、第2継手管12から第1継手管11へ大流量の流体(冷媒)が流される。
【0030】
図3に示すように、副弁ポート33aの副弁室3R側の開口縁には、複数(この例では6個)の「第2絞り部」としての溝6が形成されている。この溝6は、軸線L周りで等間隔(60°毎)となる軸線Lに対して回転対称な位置に形成されている。また、溝6の軸線L方向の長さは、副弁ポート33aの軸線L方向の長さより短く形成されており、また、溝6の流れ方向上流側の副弁室3Rから軸線L方向の第2継手管側に向かう程、溝6の水平断面積が徐々に減少する様に形成されている。また、図4に示すように、ニードル部42は、軸線Lを中心線とする円柱からなるストレート部42aと、先端側にかけて縮径されたテーパ部42bとから構成されている。また、ストレート部42aの外径は、副弁ポート33aの内径より小さくなっており、ストレート部42aと副弁ポート33aとの間には第1絞り部(隙間)が形成される。そして、この第1絞り部を一定流量の冷媒が流れることにより小流量制御が行われる。また、この小流量制御のとき、ストレート部42aと副弁ポート33aの絞り部に流れ込む冷媒の圧力は、副弁ポート33aの副弁室3R側に形成された溝6(第2絞り部)により軸線L周りに分散され、副弁座33とニードル部42とで構成される第1絞り部の前後の差圧が減少し、この第1絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0031】
このように、第1実施形態の電動弁100は、小流量制御域で作用する副弁座33とニードル弁4(副弁体のニードル部42)との冷媒が流れる第1絞り部に連続する溝6(第2絞り部)が、副弁座33に形成されている。したがって、副弁ポート33aとニードル部42との間の第1絞り部を通過する冷媒通過音を低減できる。
【0032】
図5乃至図7は第1実施形態の電動弁の変形例及び第2実施形態を示す図であり、各変形例及び第2実施形態において電動弁の全体構成は図5乃至図7部位以外は図1及び図2と同様である。
【0033】
図5の変形例1は、ニードル部42に「第2絞り部」としての溝7を形成したものである。溝7は、ニードル部42の前記ガイド用ボス部44側の付け根部42cからストレート部42aの中ほどまで形成したものである。また、この溝7は複数(この例では6個)形成され、この溝7は、軸線L周りで等間隔(60°毎)となる軸線Lに対して回転対称な位置に形成されている。さらに、溝7の水平断面の面積は軸線L方向で副弁ポート33aに近づくにしたがって小さくなっている。この変形例1では、溝7はストレート部42aの中ほどまでしか形成されていないので、ストレート部42aと副弁ポート33aとの絞り部の開口面積は実施形態と同様に一定であり、小流量制御のときの流量を一定に保つことができる。
【0034】
そして、この変形例1でも、小流量制御のとき、ストレート部42aと副弁ポート33aの絞り部に流れ込む冷媒の圧力は、ニードル部42に形成された溝7より軸線L周りに分散され、副弁座33とニードル部42とで構成される絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0035】
図6の変形例2は、ニードル部42に「第2絞り部」としての溝7′を形成したものである。溝7′は、ニードル部42のストレート部42aの中ほどから、テーパ部42bまで形成したものである。また、この溝7′は複数(この例では6個)形成され、この溝7′は、軸線L周りで等間隔(60°毎)となる軸線Lに対して回転対称な位置に形成されている。この変形例2でも、小流量制御のとき、ストレート部42aと副弁ポート33aの絞り部に流れ込む冷媒の圧力は、ニードル部42に形成された溝7′より軸線L周りに分散され、副弁座33とニードル部42とで構成される絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0036】
図7の第2実施形態は、図1及び図2の第1実施形態における主弁座13や主弁ポート13aに特徴を持たせたものである。図7(A)の第2実施形態の変形例1は、主弁座13において主弁ポート13aの開口縁に複数(この例では6個)の「第2絞り部」としての溝8を形成したものである。第1実施形態と同様に、溝8も軸線L周りで等間隔(60°毎)となる軸線Lに対して回転対称な位置に形成されている。溝8は、副弁ポート33aとニードル部42のストレート部42aとの絞り部により小流量制御が行われるときにも、この溝8により主弁室1Rから主弁ポート13aに冷媒を流す作用をする。したがって、副弁ポート33aとニードル部42との絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。図7(B)の第2実施形態の変形例2は主弁3の主弁部31において複数(この例では6個)の「第2絞り部」としての溝8′を形成したものである。第1実施形態と同様に、溝8′も軸線L周りで等間隔(60°毎)となる軸線Lに対して回転対称な位置に形成されている。溝8′は、副弁ポート33aとニードル部42のストレート部42aとの絞り部により小流量制御が行われるときにも、この溝8′により主弁室1Rから主弁ポート13aに冷媒を流す作用をする。したがって、副弁ポート33aとニードル部42との絞り部の前後の差圧が減少し、この絞り部での冷媒通過音を低減することができる。
【0037】
次に、図8に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステムは、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁100は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93とともに、ヒ-トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁100は室内に設置され、圧縮機95、四方弁96、室外側熱交換器94および電子膨張弁93は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0038】
除湿弁としての実施形態の電動弁100は、除湿時以外の冷房時または暖房時には主弁体が全開状態とされて、第1室内熱交換器91と第2室内熱交換器92は一つの室内熱交換器とされる。そして、この一体の室内熱交換器と室外熱交換器94は、「蒸発器」及び「凝縮器」として択一的に機能する。すなわち、電子膨張弁としての電動弁93は、蒸発器と凝縮器の間に設けられている。
【0039】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁100を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0040】
また、実施形態における「第2絞り部」としての溝6,7,7′,8,8′は断面が三角形であるが、断面が四角形の溝や断面が円形の溝であってもよい。また、前記の各実施形態において、「第2絞り部」としての溝は等間隔と記述したが、等間隔に限られるものではなく、第1継手管11から第2継手管12への横から下への流体の流れによる影響等に対応する為、非等間隔の複数溝を形成してもよい。また、前記の各実施形態において、溝は6個の例で示したが、6箇所に限定するものではなく、1箇所でも、6箇所以外の複数(2箇所以上)でもよい。
【0041】
なお、第1実施形態では副弁体に対する副弁座に溝を形成したものとし、第2実施形態では主弁座に溝を形成したものとし、主弁座と副弁座について別々に溝を形成する例を挙げたが、第1実施形態と第2実施形態を複合して、副弁座に溝を形成してさらに主弁座に溝を形成した構成の実施形態としてもよい。また、変形例として、副弁座に溝を形成し、さらに主弁体に溝を形成した構成の実施形態としてもよい。さらに、副弁体に溝を形成し、主弁体に溝を形成した構成の実施形態としてもよい。さらに、副弁体に溝を形成し、主弁座に溝を形成した構成の実施形態としてもよい。 また、第2実施形態では、主弁体又は、主弁座に溝を形成する構成として記載したが、溝に限定するものではなく、孔などによる「第2絞り部」でもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 弁ハウジング
1R 主弁室
11 第1継手管
12 第2継手管
13 主弁座
13a 主弁ポート
14 ケース
L 軸線
2 ガイド部材
3 主弁体
3a 主弁ばね
3R 副弁室
31 主弁部
32 保持部
32a ニードルガイド孔
32b 導通孔
33 副弁座
33a 副弁ポート
4 ニードル弁
42 ニードル部(副弁体)
42a ストレート部
43 ワッシャ
44 ガイド用ボス部
5 駆動部
6 溝(切欠き部)
7 溝(切欠き部)
7′ 溝(切欠き部)
91 第1室内側熱交換器
92 第2室内側熱交換器
93 電子膨張弁
94 室外側熱交換器
95 圧縮機
96 四方弁
100 電動弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8