(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】キクニガナ属におけるトマト黄化えそ病ウイルス抵抗性
(51)【国際特許分類】
C12N 15/29 20060101AFI20231113BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20231113BHJP
A01H 6/14 20180101ALI20231113BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20231113BHJP
【FI】
C12N15/29
A01H5/00 A ZNA
A01H6/14
C12Q1/68 100Z
(21)【出願番号】P 2022500542
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2019068153
(87)【国際公開番号】W WO2021004611
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-03
【微生物の受託番号】NCIMB NCIMB 43371
(73)【特許権者】
【識別番号】522004597
【氏名又は名称】ベジョー・ザデン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アドリアーナ・ドリエン・ハールスマ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・アントニウス・ズット
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ザットーニ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルトゥス・ヨハンネス・マリア・スフレイヴェル
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515693(JP,A)
【文献】特表2003-529353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
A01H 1/00- 17/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する
キクニガナ属の植物であって、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、及び配列番号26からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第1の抵抗性付与ゲノム断片を含む植物。
【請求項2】
配列番号14の核酸配列を含む第1の抵抗性付与ゲノム断片を含む、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第2の抵抗性付与ゲノム断片を更に含む、請求項1又は2に記載の植物。
【請求項4】
配列番号36、配列番号38、配列番号40及び/又は配列番号42の核酸配列を含む第2の抵抗性付与ゲノム断片を更に含む、請求項3に記載の植物。
【請求項5】
リーフチコリ、エンダイブ、ラディッキオ、ベルギーエンダイブ、フレンチエンダイブ、及びウィトルーフからなる群から選択される、請求
項1から4のいずれか一項に記載の植物。
【請求項6】
第1及び第2の抵抗性付与ゲノム断片が、代表的な種子がNCIMB 43371で寄託されているキクニガナ属の植物から得ることができる、得られる又はそれに由来する、請求項1か
ら5のいずれか一項に記載の植物。
【請求項7】
雑種植物である、請求項1か
ら6のいずれか一項に記載の植物。
【請求項8】
請求項1か
ら7のいずれか一項に記載のトマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物を同定する方法であって、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、及び配列番号26からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第1の抵抗性付与ゲノム断片が、
キクニガナ属の植物のゲノム中に存在することを立証する工程を含む方法。
【請求項9】
配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第2の抵抗性付与ゲノム断片が、
キクニガナ属の植物のゲノム中に存在することを立証する工程を更に含む、請求
項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物を同定又は提供するための配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列の使用。
【請求項11】
請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物を提供する方法であって、代表的な種子がNCIMB 43371で寄託されているキクニガナ属の植物から得ることができる、得られる又はそれに由来する第1の、又は第1及び第2のゲノム断片を
キクニガナ属の植物に遺伝子移入する工程を含む方法。
【請求項12】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される核酸配列
を含む核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト黄化えそ病ウイルス(Tomato spotted wilt virus)、すなわちTSWV抵抗性植物、特にリーフチコリ、エンダイブ、ラディッキオ、ベルギーエンダイブ、フレンチエンダイブ、及びウィトルーフ等のキクニガナ属(Cichorium)の植物に関する。本発明は更に、本明細書で同定されたゲノム核酸配列を用いて本植物を同定し、提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トマト黄化えそ病ウイルス(TSWV)は、直径80~110nmの球形のマイナス鎖RNAウイルスである。このウイルスは、少なくとも10種の異なるアザミウマによって媒介されるが、中でもミカンキイロアザミウマ、すなわちフランクリニエラ・オッキデンタリス(Frankliniella occidentalis)が最も有力な媒介者である。TSWVの感染は、キクニガナ属を含む経済的に重要ないくつかの作物で深刻な被害を引き起こす。
【0003】
このウイルスは、圃場だけでなく、温室でも世界的に伝染している。アザミウマの高い増殖率がウイルスの拡散に寄与している。TSWVの場合、ミカンキイロアザミウマ(F. occidentalis)の幼虫がウイルスを獲得するのにかかる時間(獲得期間)と、ウイルスが昆虫から植物に移動するのにかかる時間(接種)は、わずか5分という短さである。しかし、最適な伝染のための獲得期間と接種期間はそれぞれ、21.3時間と42.7時間である。
【0004】
成虫のアザミウマは、中腸のバリアで感染を防ぐことができるため、TSWVに感染しない。しかし、幼虫の段階でTSWVに感染したアザミウマは、生涯にわたってウイルスを伝染させることができる。
【0005】
アザミウマは卵を守るために、様々な種類の植物組織に卵を挿入する。そのため、植物の茎や葉、花等に卵が見られることがある。アザミウマの成虫は、植物の花芽、茎、葉の部分を食べる。
【0006】
130以上の属の230以上の種がTSWVに感染しやすいことが知られている。この種の多さは、経済的にTSWVが世界で最も壊滅的な植物ウイルスの一つであることを示している。
【0007】
農業や園芸において、TSWVの管理の主な手法は予防である。感染した植物はウイルスから回復することができず、圃場や温室内でさらなる感染の原因となる。予防のための手段としては、アザミウマやウイルスのない材料の使用、オリウス・インシディオスス(Orius insidiosus)やゲオコリス・プンクティペス(Geocoris punctipes)等の捕食者の導入によるアザミウマの生物学的防除の適用、雑草や感染した植物の除去、古い作物の除去と破壊等がある。
【0008】
また、輸送もウイルスを拡散させる手段の一つである。コロラド大学のファクトシートでは、米国の温室産業において、TSWVの輸送によって引き起こされた急速な拡散の結果が参考文献4に記載されている。
【0009】
しかし、上記の手段は、時間がかかり、手間がかかり、高価である。したがって、当技術分野では、遺伝的にコードされた抵抗性を包含する植物を提供することが求められている。
【0010】
キクニガナ属は、ヒマワリ科タンポポ族の植物である。一般的にチコリやエンダイブとして知られている栽培種や、いくつかの野生種が含まれる。チコリ(Cichorium intybus)はふさふさした多年生草本で、一般的には青色やラベンダー色の花を咲かせる。原産のヨーロッパでは道端に自生し、北米では帰化して道端に自生している。一般的にはリーフチコリ、エンダイブ、ラディッキオ、ベルギーエンダイブ、フレンチエンダイブ、又はウィトルーフ等の葉を栽培している。また、タンポポコーヒーに似たコーヒーの代用品を作るために、主根の部分を栽培する品種もある。キクニガナ属の植物を病気から守るためには、予防や衛生的な手段に次いで、遺伝的抵抗性が最も効率的で経済的な方法である。
【0011】
TSWVの症状は、宿主ごとに異なり、1種類の宿主の中でも、植物の年齢、栄養状態、環境(特に温度)によって症状が変化する。最も観察される症状は、成長阻害(stunting)、果実の輪紋、葉の壊死等である。更に、TSWVには多くの異なる株が存在するため、症状の違いは存在する株の数の違いにも起因していると考えられる。
【0012】
キクニガナ属の感染は、通常、感染した葉に明るい斑点が現れることから始まり、進行するとリング状の色素沈着が見られ、その斑点部分の組織が死に、最終的にはウイルス感染により植物全体が枯れる。
【0013】
抵抗性遺伝子の中には、効果的で非常に耐久性のあるものがある一方で、例えばトマトのSw-5のように、TSWVの特定の株によって克服されてしまうものもある。多くの抵抗性遺伝子は、過敏感反応を介して作用する。過敏感反応とは、感染した部分の周囲の植物細胞が細胞死を起こすことで、ウイルスを隔離し、ウイルスを複製やさらなる感染に必要な細胞から除去することを特徴としている。しかし、いくつかの国では、前述のSw-5抵抗性遺伝子を克服できる複数のTSWV株が検出されている。
【0014】
TSWVの症状は、宿主ごとに異なり、1種類の宿主の中でも、植物の年齢、栄養状態、環境(特に温度)によって症状が変化する。最も観察される症状は、成長阻害、果実の輪紋、葉の壊死等である。更に、TSWVには多くの異なる株が存在するため、症状の違いは存在する株の数の違いにも起因していると考えられる。キクニガナ属の感染は、通常、感染した葉に明るい斑点が現れることから始まり、進行するとリング状の色素沈着が見られ、その斑点部分の組織が死に、最終的にはウイルス感染により植物全体が枯れる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】https://www.kyazma.nl (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、とりわけ、当技術分野における上記の明らかにされた必要性に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のこの目的は、他の目的と同様に、添付の請求項に概説された植物、方法、及び核酸配列を提供することによって達成される。
【0018】
具体的には、本発明この目的は、他の目的と同様に、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物であって、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、及び配列番号26からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第1の抵抗性付与ゲノム断片を含む植物を提供することによって達成される。
【0019】
本発明者らは驚くべきことに、連鎖群5の約100~108cM、より具体的には101~102cMの間、例えば102.7cMのゲノム領域が、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWV抵抗性を与えることを発見した。また、本発明者らは、発見されたゲノム領域を第2のゲノム領域と組み合わせることで、この抵抗性が更に向上することを発見した。
【0020】
したがって、本発明は、好ましくは、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む、連鎖群1上の第2の抵抗性付与ゲノム断片を更に含む植物に関する。
【0021】
本発明によれば、好ましくは、本発明の第1のゲノム断片は、配列番号14を含み、第2のゲノム断片は、配列番号36、配列番号38、配列番号40及び/又は配列番号42を含む。
【0022】
本発明の植物は、好ましくはキクニガナ属の植物であり、より好ましくはリーフチコリ、エンダイブ、ラディッキオ、ベルギーエンダイブ(Belgian endive)、フレンチエンダイブ(French endive)、及びウィトルーフ(witloof)である。
【0023】
本発明の第1及び第2の抵抗性付与ゲノム断片の両方は、キクニガナ属の植物に存在し、その代表的な種子が2019年3月13日にNCIMB 43371(Ferguson Building、Craibstone Estate、Bucksburn、Aberdeen AB21 9YA、United Kingdom)として寄託されている。
【0024】
したがって、本発明の第1及び第2の抵抗性付与ゲノム断片は、代表的な種子がNCIMB 43371で寄託されているキクニガナ属の植物から得ることができる、得られる又はそれに由来することが好ましい。
【0025】
特に好ましい実施形態では、本発明の植物は雑種植物である。一般に、雑種植物は、F1雑種(雑種第一代)を作出する2つの親植物の交配から生じる。親系統間の交配により、表現型的に同質のF1雑種が生成される。本発明の文脈では、単交雑雑種が好ましいが、複交雑雑種や三系交雑雑種も想定される。
【0026】
現在同定されている抵抗性の有益な特性を考慮して、本発明は、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物を同定する方法であって、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、及び配列番号26からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第1の抵抗性付与ゲノム断片が、植物のゲノム中に存在することを立証する工程を含む方法に関する。
【0027】
好ましくは、本発明の方法は配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列を含む第2の抵抗性付与ゲノム断片が、植物のゲノム中に存在することを立証する工程を更に含む。
【0028】
本発明はまた、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物を同定又は提供するための配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される1つ又は複数の核酸配列の使用に関する。
【0029】
更に、本発明は、トマト黄化えそ病ウイルス、すなわちTSWVに対して抵抗性を有する植物を提供する方法であって、代表的な種子がNCIMB43371で寄託されているキクニガナ属の植物から得ることができる、得られる又はそれに由来する第1の、又は第1及び第2のゲノム断片を植物に遺伝子移入する工程を含む方法に関する。
【0030】
更に、本発明は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択される核酸配列に関する。
【0031】
本発明を以下の例で更に詳細に説明する。例では、以下の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】キクニガナ属のTSWV抵抗性に関する連鎖群5(最大LOD=20)の表示、すなわち本発明の第1の抵抗性付与ゲノム断片を示す図である。
【
図2】キクニガナ属のTSWV抵抗性に関する連鎖群1(最大LOD=3.84)の表示、すなわち本発明の第2の抵抗性付与ゲノム断片を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0033】
概要
チコリの評価における提示された病害スコアは、すでにウイルスが圃場に存在する地域におけるTSWV試験に由来する。病害試験を行うために、抵抗性植物と感受性植物の雑種(F1S1)の自家受粉集団を選択した。個々の植物をサンプリングし、表現型(感受性と抵抗性)をスコアリングした。QTL解析の結果、LG5に1つのメジャーQTL(
図1)、LG1に1つのマイナーQTL(
図2)の2つのQTLが存在することがわかった。LG5にQTLが存在するだけで、0(感受性)から9(抵抗性)のスケールで7のスコアが得られた。両方のQTLが存在すると、このスケールでレベル9になる。両QTLの遺伝は共優性である。
【0034】
(実施例1)
TSWVに対する抵抗性の圃場試験
育種素材を試験するために、TSWVの圃場試験を行うのに適した気候条件を持つ理想的な場所を特定した。これらの地域ではTSWVに感染したアザミウマが常在しており、作物に高い病害圧を与えている。この地域で試験を行うことにより、植物へのTSWVの感染が確実になる。
【0035】
チコリ変種フォリオスム(Cichorium intybus var. foliosum)(ラディッキオ・ロッソ)の試験対象植物を圃場に植えた。圃場での病害圧を高めるため、TSWVに感受性のあるラディッキオ品種を使用し、これを陰性対照とした。圃場に苗を移植してから75日後に、植物のウイルス症状を評価した。ウイルス感染の症状のスコアリングは、1(感受性)から9(抵抗性)までの範囲のスケールで表される。
【0036】
(実施例2)
キクニガナ属材料のTSWV抵抗性レベルに関する圃場試験の結果
抵抗性ソース、感受性植物、及び寄託物(雑種)由来の材料を、TSWVの自然感染が発生する、実施例1に記載の2つの場所で試験した。結果を以下の表1に要約した。
【0037】
【0038】
(実施例3)
ゲノムDNAの分子特性と抵抗性遺伝子のマッピング
NCIMBに(NCIMB 43371として)寄託されている利用可能な抵抗性の遺伝資源を申請して、抵抗性のソース材料と感受性のチコリ系統を交配してF1S1集団を作り、その後、得られたF1植物を自家受粉させた。この集団を選択し、自然感染した圃場で病害試験を行った。個々の植物をサンプリングし、表現型をスコアリングした。
【0039】
先行研究に基づいて、キクニガナ属の部分的な遺伝子地図を作成した。ゲノム全体をカバーするSNPマーカーを用いて、抵抗性遺伝子座が連鎖群1と5に位置することを決定した。この連鎖群上のQTLは、いずれも優性遺伝を示した。
【0040】
遺伝子連鎖マッピングのために、チコリ(Cichorium intybus)とエンダイブ(Cichorium endive)の複数の親系統について、Illumina Infiniumプラットフォームを用いてシーケンシングした。この配列情報を用いて多数のSNPを同定し、マッピング集団のジェノタイピングを行った結果、キクニガナ属の一般的な遺伝地図を作成することができた。キクニガナ属のゲノム全体に十分に分布している情報量の多いSNPを、抵抗性と感受性のあるチコリの系統間の情報量に基づいて選択し、その後、表現型のF1S1マッピング集団のジェノタイピングに使用した。
【0041】
JoinMap 4.1を用いて遺伝地図を作成し、MapQTL 6を用いてQTL解析を行った(https://www.kyazma.nl(2017))。MQM Mapping解析により、2つのQTL領域が同定され、1つのメジャーQTL領域はLODスコア20で連鎖群5に見出され、第2のQTLはLODスコア3.84で連鎖群1に見出された。
【0042】
寄託情報
NCIMB 43371は、2019年3月13日に、NCIMB Limited、Ferguson Building; Craibstone Estate、Bucksburn ABERDEEN、Scotland、AB21 9YA United Kingdomに寄託された。
【0043】
略語
nm ナノメートル(10-9m)
LG:連鎖群
cM:センチモルガン
SNP 一塩基多型
TSWV:トマト黄化えそ病ウイルス
LODスコア:オッズ比のLog。2つのマーカーが連鎖している可能性を、連鎖していない可能性で除した単位で、ここではLODスコアが3.4以上の場合、目的の形質に近い遺伝子座であることを示す。
【0044】
【0045】
【0046】
【受託番号】
【0047】
NCIMB 43371
【配列表】