(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】通信制御方法及びユーザ装置
(51)【国際特許分類】
H04W 72/0457 20230101AFI20231113BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20231113BHJP
H04W 72/1268 20230101ALI20231113BHJP
【FI】
H04W72/0457
H04W24/10
H04W72/1268
(21)【出願番号】P 2022508213
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008647
(87)【国際公開番号】W WO2021187158
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2020048413
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/016149(WO,A1)
【文献】特開2012-034407(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141478(WO,A1)
【文献】特開2000-069548(JP,A)
【文献】特開2011-250481(JP,A)
【文献】特開2008-072194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ装置が実行する通信制御方法であって、
前記ユーザ装置が論理チャネルを介して基地局に送信する未送信データの滞留時間を計測することと、
前記滞留時間に基づいて、データ送信用のリソースを前記論理チャネルに割り当てることと、を有
し、
前記割り当てることは、
前記滞留時間が前記論理チャネルに設定された滞留上限時間を超えることを抑制するように、他の論理チャネルよりも優先して前記リソースを前記論理チャネルに割り当てることと、
前記滞留時間が所定時間に達した場合、前記論理チャネルに設定された優先度にかかわらず、所定リソースよりも多い前記リソースを前記論理チャネルに割り当てることと、を含み、
前記所定時間は、前記滞留上限時間よりも短い時間であり、
前記所定リソースは、前記論理チャネルに最低限保証されたリソースである
通信制御方法。
【請求項2】
前記計測すること及び前記割り当てることは、前記ユーザ装置のMACレイヤにより実行される
請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記滞留上限時間は、前記基地局から前記ユーザ装置に対して設定される可変パラメータである
請求項
1に記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記滞留時間が前記滞留上限時間を超えた場合、前記未送信データを破棄するデータ破棄処理、及び異常の発生を検知又は通知する異常検知処理のうち、少なくとも一方を実行することをさらに有する
請求項
1乃至
3のいずれか1項に記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記計測することは、前記論理チャネルと対応付けられた送信バッファに前記未送信データが格納されたタイミング又は前記ユーザ装置のMACレイヤが前記未送信データを認識したタイミングで前記滞留時間の計測を開始することを含む
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の通信制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の通信制御方法を実行する
ユーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムに用いる通信制御方法及びユーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格に基づく移動通信システムにおいて、MAC(Medium Access Control)レイヤは、複数の論理チャネルのそれぞれに設定された優先度に基づいて、送信するデータを優先度順に選択する論理チャネル優先度付け処理を行う(例えば、非特許文献1参照)。MACレイヤは、論理チャネル優先度付け処理により選択されたデータを送信データブロックに多重化する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP技術仕様書「TS38.321 V15.8.0」 2019年12月、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp//Specs/archive/38_series/38.321/38321-f80.zip>
【発明の概要】
【0004】
第1の態様に係る通信制御方法は、ユーザ装置が実行する方法である。前記通信制御方法は、前記ユーザ装置が論理チャネルを介して基地局に送信する未送信データの滞留時間を計測することと、前記滞留時間に基づいて、データ送信用のリソースを前記論理チャネルに割り当てることとを有する。
【0005】
第2の態様に係る通信制御方法は、ユーザ装置が実行する方法である。前記通信制御方法は、前記ユーザ装置が論理チャネルを介して送信する未送信データの滞留時間を計測することと、前記滞留時間に基づく時間情報を基地局に通知することとを有する。前記時間情報は、前記基地局が前記ユーザ装置に上りリンク無線リソースを割り当てるために参照される情報である。
【0006】
第3の態様に係るユーザ装置は、第1の態様又は第2の態様に係る通信制御方法を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るUE(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係るgNB(基地局)の構成を示す図である。
【
図4】データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図5】シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図6】実施形態に係る想定シナリオを示す図である。
【
図7】実施形態に係るUEのMACレイヤの構成を示す図である。
【
図8】実施形態に係るLCP処理の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る通信制御方法の概要を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る通信制御方法のフロー例を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係るSR信号及びBSRを示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る通信制御方法のフロー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、3GPP規格に基づく移動通信システムを産業用ネットワークに導入し、産業用ネットワークの少なくとも一部を無線化することが検討されている。しかしながら、産業用ネットワークは厳密なリアルタイム動作が要求されるため、上述したようなMACレイヤの処理に起因する遅延が問題になり得る。
【0009】
そこで、本開示は、低遅延が要求されるデータを適切に伝送可能とすることを目的とする。
【0010】
図面を参照しながら、第1実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0011】
[第1実施形態]
(移動通信システムの構成)
まず、第1実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。この移動通信システムは、3GPP規格の第5世代システム(5GS:5th Generation System)に準拠する。以下において、5GSを例に挙げて説明するが、移動通信システムにはLTE(Long Term Evolution)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0012】
図1に示すように、5GS1は、ユーザ装置(UE:User Equipment)100と、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。
【0013】
UE100は、移動可能な無線通信装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であっても構わない。例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)、タブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、及び/又は飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0014】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、及び/又はモビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0015】
なお、gNBがLTEのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)に接続することもできる。LTEの基地局が5GCに接続することもできる。LTEの基地局とgNBとが基地局間インターフェイスを介して接続されることもできる。
【0016】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMFは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100のモビリティを管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0017】
図2は、UE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【0018】
図2に示すように、UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
【0019】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0020】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0021】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)と、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0022】
図3は、gNB200(基地局)の構成を示す図である。
【0023】
図3に示すように、gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0024】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0025】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0026】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0027】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。なお、gNBは、CU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)とで構成され(すなわち、機能分割され)、両ユニット間はF1インターフェイスで接続されてもよい。
【0028】
図4は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0029】
図4に示すように、ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0030】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0031】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0032】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0033】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0034】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPが無くてもよい。
【0035】
図5は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0036】
図5に示すように、制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、
図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0037】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッドモードである。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドルモードである。
【0038】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300のNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。
【0039】
なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。
【0040】
(産業用ネットワークの概要)
次に、第1実施形態に係る産業用ネットワークについて説明する。第1実施形態において、5GS1を産業用ネットワークに導入し、産業用ネットワークの少なくとも一部を無線化するシナリオを想定する。
【0041】
図6は、第1実施形態に係る想定シナリオを示す図である。
【0042】
図6に示すように、産業用ネットワーク30は、5GS1と複数の産業用機器31とを有する。産業用ネットワーク30の少なくとも一部は、工場内に設けられてもよい。産業用機器31は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、サーボコントローラ、サーボモータ、エンコーダ、又はセンサ等である。産業用機器31は、ゲートウェイ装置(プロトコル変換機能を有する)等を介して、
図1に示したUE100又はUPF等に接続される。UE100又はUPFがプロトコル変換機能を有していてもよい。
【0043】
産業用ネットワーク30には、IEEE 802.1シリーズで構成される産業用イーサネット(登録商標)の規格であるTSN(Time Sensitive Networking)が適用され得る。TSNは、イーサネット(登録商標)のPHYレイヤ及びMACレイヤの上位のレイヤに位置付けられる。例えば、産業用機器31により生成されたデータはTSNを用いて有線通信により送信され、送信されたデータをUE100が受信し、受信されたデータを無線通信によりgNB200に送信する。
【0044】
(MACレイヤの概要)
次に、第1実施形態に係るMACレイヤについて説明する。
図7は、第1実施形態に係るUE100のMACレイヤ150の構成を示す図である。以下において、上りリンク送信について主として説明する。
【0045】
図7に示すように、MACレイヤ150は、論理チャネル優先度付け(LCP:Logical Channel Prioritization)処理を行う優先度付け部150Aと、多重化(Multiplexing)処理を行う多重化部150Bと、HARQ処理を行うHARQ部150Cと、これら各処理の制御(Control)を行うMAC制御部150Dとを有する。
【0046】
優先度付け部150Aは、複数の論理チャネルのそれぞれに設定された優先度に少なくとも基づいて、送信するデータを優先度順に選択する。
【0047】
優先度付け部150Aに入力される論理チャネルは、CCCH(Common Control Channel)と、複数のDCCH(Dedicated Control Channel)と、複数のDTCH(Dedicated Traffic Channel)とを含む。
【0048】
CCCHは、RRC接続を有しないUE共通の制御情報を伝送するための論理チャネルである。DCCHは、UE専用(UE個別)の制御情報を伝送するための論理チャネルである。DTCHは、UE専用(UE個別)のデータを伝送するための論理チャネルである。以下において、複数のDTCHに対して行う論理チャネル優先度付け処理について主として説明する。
【0049】
優先度付け部150Aは、各論理チャネルをトランスポートチャネル、具体的には、PHYレイヤが送信するデータブロック(TB:Transport Block)にマッピングするために、各論理チャネルの優先度と、無線ベアラのQoSを考慮した送信ビットレート(PBR:Prioritized Bit Rate)とに基づいて、送信データの送信優先度を決定する。
【0050】
優先度付け部150Aは、UE100がgNB200から上りリンクグラント(すなわち、上りリンク無線リソース割当)を受信した時点での送信優先度の高いデータからトランスポートチャネルにマッピングを行う。なお、MAC制御部150Dは、gNB200との接続時に、RRCレイヤから、各無線ベアラに対応する論理チャネル番号、各論理チャネルの優先度、及びPBR等の情報を取得する。
【0051】
多重化部150Bは、優先度付け部150Aの論理チャネル優先度付け処理により選択されたデータを、送信するデータブロック(トランスポートチャネル)に多重化する。具体的には、優先度付け部150Aから出力するデータをデータブロックに順次格納することにより、データブロックを生成する。データブロックは、MAC PDU(Protocol Data Unit)又はトランスポートブロックと呼ばれることがある。
【0052】
HARQ部150Cは、多重化部150Bが出力するデータブロックにHARQを適用しつつデータブロックを送信する。
【0053】
MAC制御部150Dは、RRCレイヤから設定される各種パラメータに基づいて、優先度付け部150A、多重化部150B、及びHARQ部150Cを制御する。
【0054】
(LCP処理の概要)
次に、第1実施形態に係るLCP処理について説明する。
図8は、LCP処理の一例を示す図である。LCP処理は、複数の論理チャネルのデータを1つのデータブロックに多重化する際に、どの論理チャネルのデータをどの程度割り当てるかを決定する処理である。優先度付け部150Aは、UE100が新たな送信を行う度にLCP処理を実行する。
【0055】
図8に示すように、各論理チャネル(Logical channel)には、優先度(Priority)が設定される。例えば、優先度の値は1乃至8の範囲内にある。より高い優先度の値はより低い優先度レベルを示し、例えば優先度の値「1」が最高優先度である。
図8の例において、Logical channel 3が最高優先度の論理チャネルであり、Logical channel 2が2番目の優先度の論理チャネルであり、Logical channel 1が3番目の優先度の論理チャネルである。
【0056】
また、各論理チャネルには、PBR(Prioritized Bit Rate)が設定される。PBRは、論理チャネルに対して保証される最低のビットレートである。
【0057】
各論理チャネルの優先度及びPBRは、論理チャネルが構成されるとき、論理チャネル設定メッセージを介してネットワークのRRCレイヤからUE100のRRCレイヤに伝達される。論理チャネル設定メッセージを受けたUE100のRRCレイヤは、必要な論理チャネルを構成し、各論理チャネルのLCP及びPBRの情報をUE100のMACレイヤ(MAC制御部150D)に伝達する。
【0058】
UE100のMACレイヤ(優先度付け部150A及びMAC制御部150D)は、gNB200への送信を行う度に、gNB200から割り当てられた無線リソース(上りリンク無線リソース)に対して、次のような規則を用いて各論理チャネルの送信データ量を決定する。
【0059】
第1フェーズ(Phase 1)において、UE100のMACレイヤは、論理チャネルの優先度の降順に、各論理チャネルのPBRに相当するリソースを各論理チャネルに割り当てる。ここで「リソース」とは、データブロック(payload MAC PDU)におけるデータ量又はこのデータ量に相当する無線リソースをいう。
【0060】
図8において、UE100のMACレイヤは、最高優先度を有するLogical channel 3のPBR 1に相当するリソースを最初に割り当て、2番目の優先度を有するLogical channel 2のPBR 2に相当するリソースを2番目に割り当て、3番目の優先度を有するLogical channel 1のPBR 3に相当するリソースを3番目に割り当てる一例を示している。
【0061】
第2フェーズ(Phase 2)において、UE100のMACレイヤは、割り当て可能なリソースが残っている場合、論理チャネルのデータ又は残っているリソースが尽きるまで、論理チャネルの優先度の降順に論理チャネルに残るリソースを割り当てる。
【0062】
図8において、UE100のMACレイヤは、最高優先度を有するLogical channel 3にリソースR1を最初に割り当て、2番目の優先度を有するLogical channel 2にリソースR2を割り当てる一例を示している。
【0063】
(第1実施形態に係る通信制御方法)
次に、上述したような説明を前提として、第1実施形態に係る通信制御方法について説明する。
【0064】
一般的なLCPにおいては、PBRにより、長時間平均でのスループットの最低保証は可能となっている。しかしながら、パケット毎といったような短時間でのスループットに関して保証することが難しい。
【0065】
特に、上述したような産業用ネットワークを想定した場合、ベアラごとに通信タイムアウト時間が設定されることがあり得る。ベアラと論理チャネルとは1対1の関係にあるため、論理チャネルごとに通信タイムアウト時間が設定されると考えてもよい。通信タイムアウト時間とは、アプリケーションが、期待されるメッセージが無くても通信サービスを継続できる時間をいう。通信タイムアウト時間は、ベアラごとのQoS(Quality of Service)パラメータの一種であってもよい。このような通信タイムアウト時間は、Survival timeと呼ばれることがある。
【0066】
図9は、第1実施形態に係る通信制御方法の概要を示す図である。
【0067】
図9に示すように、UE100のMACレイヤは、論理チャネルを介してgNB200に送信する未送信データの滞留時間(Tr)を計測し、滞留時間(Tr)に基づいてデータ送信用のリソースを当該論理チャネルに割り当てる。このように、LCPに滞留時間という概念を導入し、滞留時間が滞留上限時間(Tul)に達する前に優先的に送信できるようにする。
【0068】
UE100のMACレイヤは、第1実施形態に係る通信制御方法を論理チャネル単位で実行する。UE100のMACレイヤは、UE100に設定された全ての論理チャネルのそれぞれに対して第1実施形態に係る通信制御方法を適用してもよい。或いは、UE100のMACレイヤは、UE100に設定された一部の論理チャネル(例えば、通信タイムアウト時間が設定されたベアラに対応する論理チャネル)に対してのみ第1実施形態に係る通信制御方法を適用してもよい。以下において、第1実施形態に係る通信制御方法が適用される1つの論理チャネルを「対象論理チャネル」と呼ぶ。
【0069】
第1実施形態において、UE100のMACレイヤは、計測する滞留時間(Tr)が対象論理チャネルに設定された滞留上限時間(Tul)を超えることを抑制するように、他の論理チャネルよりも優先してリソースを対象論理チャネルに割り当てる。滞留上限時間(Tul)は、gNB200からUE100に対して、論理チャネルごとに設定される可変パラメータであってもよい。滞留上限時間(Tul)は、RRCレイヤの論理チャネル設定メッセージにより設定されてもよい。滞留上限時間(Tul)として、上述した通信タイムアウト時間を用いてもよい。
【0070】
例えば、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)が所定時間に達した場合、対象論理チャネルに設定された優先度にかかわらず、所定リソースよりも多いリソースを対象論理チャネルに割り当てる優先リソース割当を実行する。ここで、所定時間は、滞留上限時間(Tul)よりも短い時間である。所定リソースは、対象論理チャネルに最低限保証されたリソース(すなわち、PBRに相当するリソース)である。UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)が所定時間に達した場合、他に優先順位が高い論理チャネルがあったとしても、対象論理チャネルへのリソース割当てが先になるように割り込みをしてもよい。
【0071】
このように、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)が滞留上限時間(Tul)を超えることが予期される場合、他の論理チャネルよりも優先して対象論理チャネルにリソースを割り当てる。これにより、対象論理チャネルのデータを優先的に送信可能になり、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)が滞留上限時間(Tul)を超えることが抑制される。
【0072】
図9の例において、UE100のMACレイヤは、滞留時間(Tr)が所定時間に達する前の期間T1において、通常のLCP処理を実行する。しかし、UE100のMACレイヤは、滞留時間(Tr)が所定時間に達した場合、すなわち、滞留時間(Tr)が所定時間から滞留上限時間(Tul)までの期間T2内にある場合、対象論理チャネルに対する優先リソース割当を行う。
【0073】
但し、例えばgNB200からUE100に割り当てられる上りリンク無線リソースの量が不足するような場合、上述したような優先リソース割当を行っても、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)が滞留上限時間(Tul)を超える可能性がある(
図9の期間T3参照)。産業用ネットワークで必要とされるリアルタイム制御では、古いデータが制御不良を引き起こす懸念がある。このため、UE100のMACレイヤは、滞留時間(Tr)が滞留上限時間(Tul)を超えたデータを送信せずに破棄してもよい。もしくは、期間T3にある場合でも、上記のような優先リソース割当を継続してもよい。データを破棄するか又は優先リソース割当を継続するかは、gNB200の設定によって選択されてもよい。データを破棄するか又は優先リソース割当を継続するかをUE100からgNB200へ通知もしくは要望(プリファレンス)を行ってもよい。例えば、UE100は、接続されている産業機器(アプリケーション)の要求・設定によって当該通知を実施してもよい。
【0074】
図10は、第1実施形態に係る通信制御方法のフロー例を示す図である。
【0075】
図10に示すように、ステップS101において、対象論理チャネルと対応付けられた送信バッファにデータが格納される。このような送信バッファは、UE100のRLCレイヤ又はMACレイヤに設けられてもよい。この送信バッファに格納されたデータを未送信データと呼ぶ。
【0076】
ステップS102において、UE100のMACレイヤは、ステップS101で送信バッファに格納された未送信データの滞留時間(Tr)の計測を開始する。例えば、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルと対応付けられた送信バッファに未送信データが格納されたタイミングで滞留時間(Tr)の計測を開始してもよい。UE100のMACレイヤは、未送信データを認識したタイミングで滞留時間(Tr)の計測を開始してもよい。UE100のMACレイヤは、MACレイヤよりも上位のレイヤ(例えば、アプリケーションレイヤ)からの通知により未送信データを認識してもよいし、データがMACレイヤに入ってきた際に当該データを未送信データとして認識してもよい。
【0077】
滞留時間(Tr)の計測開始時点は、1)論理チャネルにパケットが発生した時点、2)MACレイヤにパケットが入ってきた時点、3)RLCレイヤにパケットが入ってきた時点、4)PDCPレイヤにパケットが入ってきた時点、5)SDAPレイヤにパケットが入ってきた時点のいずれかであってもよい。ここで、MACレイヤ以外の他レイヤが計測開始ポイントになる場合(例えば、上記3)、4)又は5)の場合)、当該他レイヤが計測開始の時刻情報若しくは当該他レイヤに滞留した時間情報をMACレイヤに通知してもよい。
【0078】
滞留時間(Tr)の計測は、複数のパケットに対してまとめて実施してもよいし、パケット毎に実施されてもよい。なお、本実施形態においては、滞留時間(Tr)の計測が論理チャネルごとに実施され、且つ複数のパケットに対してまとめて実施される場合を主として想定している。
【0079】
ステップS103において、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルの未送信データの滞留時間(Tr)にオフセット時間(Offset)を加えた時間が滞留上限時間(Tul)未満であるか否かを判定する。オフセット時間(Offset)は、gNB200からUE100に対して、論理チャネルごとに設定される可変パラメータであってもよい。オフセット時間(Offset)は、RRCレイヤの論理チャネル設定メッセージにより設定されてもよい。なお、オフセット時間(Offset)は、ゼロであってもよい。
【0080】
ステップS103でYES、すなわち、滞留時間(Tr)が
図9の期間T1内にある場合、ステップS104において、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルに対して通常のLCP処理を実行する。その後、ステップS108に処理が進む。
【0081】
一方、ステップS103でNOである場合、ステップS105において、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルの未送信データの滞留時間(Tr)が滞留上限時間(Tul)以上であるか否かを判定する。
【0082】
ステップS105でYES、すなわち、滞留時間(Tr)が
図9の期間T3内にある場合、ステップS106において、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルの未送信データを破棄する処理を実行する。UE100のMACレイヤは、このようなデータ破棄処理に代えて、又はデータ破棄処理に加えて、異常の発生を検知又は通知する異常検知処理を実行してもよい。
【0083】
ここで、異常検知処理は、RLF(Radio Link Failure)を検知する処理を含んでもよい。この場合、UE100のRRCレイヤは、RLFを検知し、RRC再確立(Reestablishment)処理を実行する。異常検知処理は、gNB200に異常を通知する処理を含んでもよい。この場合、UE100のRRCレイヤ(又はMACレイヤ)は、異常通知メッセージをgNB200に送信する。異常検知処理は、UE100のMACレイヤから上位レイヤ(例えば、RLCレイヤ、RRCレイヤ、又はアプリケーションレイヤ)に異常を通知する処理を含んでもよい。その後、ステップS109に処理が進む。
【0084】
一方、ステップS105でNO、すなわち、滞留時間(Tr)が
図9の期間T2内にある場合、ステップS107において、UE100のMACレイヤは、上述した優先リソース割当を実行する。優先リソース割当は、対象論理チャネルに設定された優先度にかかわらず、対象論理チャネルに設定されたPBRよりも多いリソースを対象論理チャネルに割り当てる処理である。UE100のMACレイヤは、優先リソース割当において、対象論理チャネルに設定されたPBRに滞留時間(Tr)を乗算して得たリソースを対象論理チャネルに割り当ててもよい。UE100のMACレイヤは、優先リソース割当において、対象論理チャネルを最高優先度(例えば、gNB200が設定可能な最高優先度の値「1」よりも高い優先度の値「0」)とみなしてもよい。その後、ステップS108に処理が進む。
【0085】
ステップS108において、UE100のMACレイヤは、各論理チャネルに対するリソース割当が終了すると、各論理チャネルのデータからデータブロック(payload MAC PDU)を生成し、このデータブロックをPHYレイヤに提供する。その結果、UE100からgNB200に対してデータブロックが送信される。
【0086】
ここで、S107で優先リソース割当を行った場合、UE100は、優先リソース割当を行った旨をgNB200に通知してもよい。当該通知はMAC CE(Control Element)による通知であってもよいし、当該データブロックに多重して(すなわち同時に)送信されてもよい。当該通知は、優先リソース割当を行った論理チャネルの番号(LCH番号)を含んでもよい。
【0087】
ステップS109において、UE100のMACレイヤは、ステップS108でのデータ送信の完了に応じて、計測した滞留時間(Tr)をゼロにリセットする。
【0088】
このように、第1実施形態によれば、UE100のMACレイヤが、論理チャネルを介してgNB200に送信する未送信データの滞留時間(Tr)を計測し、滞留時間(Tr)に基づいてデータ送信用のリソースを当該論理チャネルに割り当てる。このように、LCPに滞留時間という概念を導入することにより、滞留時間が滞留上限時間(Tul)に達する前に当該未送信データを優先的に送信可能になる。
【0089】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、上述した第1実施形態との相違点を主として説明する。
【0090】
(SR及びBSRの概要)
第2実施形態に係る割当要求(SR:Scheduling Request)信号及びバッファ状態報告(BSR)について説明する。
図11は、第2実施形態に係るSR信号及びBSRを示す図である。
【0091】
図11に示すように、UE100のMACレイヤ150は、各論理チャネルに対応する送信バッファのデータ量をBSRにより通知する機能を有する。gNB200は、BSRに基づいてUE100に上りリンク無線リソースを割り当てる。BSRでは、MACレイヤ150は、各論理チャネルを論理チャネルグループ(LCG:Logical Channel Group)に割り当て、各LCGに対する送信バッファ量をMACレイヤのメッセージとしてgNB200に通知する。
【0092】
BSRがトリガされる条件として、いくつかの条件がある。例えば、送信可能なデータが発生し、更に、このデータが送信バッファにあるデータより論理チャネルの優先度が高い場合にBSRがトリガされ、BSRを通知する。また、定期的なタイマが満了した場合にBSRがトリガされ、BSRを通知してもよい。
【0093】
また、BSRがトリガされた場合にBSRを通知するための無線リソース(物理上りリンク共用チャネル:PUSCH)が割り当てられていない場合、MACレイヤ150は、PHYレイヤにSRを送信するように指示する。MACレイヤ150は、無線リソースが割り当てられてから、BSRを送信する。
【0094】
PHYレイヤは、MACレイヤ150からSRの送信を指示された場合、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)を介してSRを送信する。なお、PHYレイヤは、SR送信のための物理上りリンク制御チャネルPUCCHを割り当てられていない場合、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)を使用してリソース割当を要求する。
【0095】
(第2実施形態に係る通信制御方法)
次に、第2実施形態に係る通信制御方法について説明する。
【0096】
上述した第1実施形態において、MACレイヤのLCP処理に滞留時間(Tr)の概念を導入する一例について説明した。
【0097】
これに対し、第2実施形態においては、SR又はBSRを用いて、滞留時間(Tr)に基づく時間情報をgNB200に通知することにより、gNB200がUE100へのリソース割当の際に滞留時間(Tr)を考慮できるようにする。これにより、gNB200は、UE100に対して上りリンク無線リソースを割り当てる緊急度及び割当量を適切に判定できる。
【0098】
すなわち、第2実施形態に係る通信制御方法は、UE100が実行する方法であって、UE100が論理チャネルを介して送信する未送信データの滞留時間を計測するステップと、滞留時間に基づく時間情報をgNB200に通知するステップとを有する。時間情報は、gNB200がUE100に上りリンク無線リソースを割り当てるために参照される情報である。
【0099】
ここで、計測するステップ及び通知するステップは、UE100のMACレイヤにより実行されてもよい。通知するステップは、時間情報を含むMACレイヤメッセージをgNB200に送信するステップを含んでもよい。ここで、MACレイヤメッセージは、未送信データの量を示すBSRであってもよい。具体的には、MACレイヤメッセージは、既存のBSRのフォーマットを拡張したものであってもよい。或いは、既存のBSRのフォーマットと異なる新たなMACレイヤメッセージを定義してもよい。
【0100】
或いは、通知するステップは、時間情報と対応付けられた無線リソースによりSR信号をgNB200に送信するステップを含んでもよい。例えば、PUCCHリソース及び時間情報の対応付けがgNB200からUE100に予め通知され、UE100は、自身が生成した時間情報と対応付けられたPUCCHリソースでSR信号をgNB200に送信する。これにより、gNB200は、SR信号の送信に用いられたPUCCHリソースから時間情報を特定できる。このようなSR信号を送信する場合、UE100は、前回のSRの送信から一定時間が経過するまで今回のSRの送信を禁止するための禁止タイマを無効化してもよい。すなわち、UE100は、時間情報をgNB200に通知するためのSR信号を禁止タイマの動作中であっても送信可能としてもよい。
【0101】
UE100は、通信タイムアウト時間が設定された対象論理チャネル(ベアラ)又は当該対象論理チャネルが属するLCGにデータが発生している場合(若しくは、そのような論理チャネルがUE100に設定されている場合)のみ、滞留時間(Tr)に基づく時間情報をgNB200に対して通知するとしてもよい。或いは、UE100は、滞留時間(Tr)に基づく時間情報の通知を許可(設定)している対象論理チャネルについてのみ、当該通知を行うとしてもよい。
【0102】
図12は、第2実施形態に係る通信制御方法のフロー例を示す図である。
【0103】
図12に示すように、ステップS201において、対象論理チャネルと対応付けられた送信バッファにデータが格納される。ステップS201は、
図10のステップS101と同様である。
【0104】
ステップS202において、UE100のMACレイヤは、ステップS201で送信バッファに格納された未送信データの滞留時間(Tr)の計測を開始する。ステップS202は、
図10のステップS102と同様である。
【0105】
ステップS203において、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)に基づく時間情報をgNB200に通知するトリガ条件が満たされたか否かを判定する。トリガ条件は、通常のBSRのトリガ条件と同様であってもよいし、異なっていてもよい。
【0106】
例えば、トリガ条件は、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)が時間閾値を超えたという条件であってもよい。トリガ条件は、対象論理チャネルと対応付けられた通信タイムアウト時間から対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)を減算して得た時間が時間閾値以下になったという条件であってもよい。トリガ条件は、対象論理チャネルにデータが発生した(入ってきた)という条件であってもよい。トリガ条件は、滞留時間(Tr)が一定値を超えた(例えば、
図9のT2期間になった)という条件であってもよい。トリガ条件は、gNB200がUE100に対して設定できてもよい。上述の各条件でトリガされたBSR送信に係るSRは、通常のPUCCHリソースと異なる特別なリソースを用いて送信されてもよい。当該特別なリソースは、gNB200からUE100に対して設定されてもよい。
【0107】
ここで、時間閾値は、gNB200からUE100に対して、論理チャネルごとに設定される可変パラメータであってもよい。時間閾値は、RRCレイヤの論理チャネル設定メッセージにより設定されてもよい。
【0108】
トリガ条件が満たされた場合(ステップS203:YES)、ステップS204において、UE100のMACレイヤは、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)に基づく時間情報を生成する。時間情報は、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)を示す情報であってもよい。
【0109】
時間情報は、対象論理チャネルにおける滞留時間(Tr)と、対象論理チャネルと対応付けられた通信タイムアウト時間とに基づいて生成される情報であってもよい。例えば、時間情報は、通信タイムアウト時間から滞留時間(Tr)を減算して得た時間を示す情報であってもよい。時間情報は、通信タイムアウト時間から、滞留時間(Tr)及びオフセット時間を減算して得た時間を示す情報であってもよい。
【0110】
ステップS205において、UE100のMACレイヤは、ステップS204で生成した時間情報をgNB200に通知する。
【0111】
このように、第2実施形態によれば、UE100のMACレイヤが、論理チャネルを介してgNB200に送信する未送信データの滞留時間(Tr)を計測し、滞留時間(Tr)に基づく時間情報をgNB200に通知する。これにより、gNB200は、UE100に対して上りリンク無線リソースを割り当てる緊急度及び割当量を適切に判定できる。
【0112】
(その他の実施形態)
上述した実施形態において、UE100におけるMACレイヤ150の動作として、上りリンクの動作を主として説明したが、上りリンクに限定されるものではなく、例えばサイドリンク又は下りリンクに対して、上述した実施形態に係る構成及び動作を適用してもよい。サイドリンクは、UE100間の直接的な通信に用いるリンクである。すなわち、UE100の無線通信相手は、gNB200に限らず、他のUE100であってもよい。
【0113】
また、上述した実施形態において、UE100における動作について主として説明したが、無線中継局の一種であるIABノードに対して、上述した実施形態に係る構成及び動作を適用してもよい。換言すれば、IABノードが、上述した実施形態で説明されたUE100の動作を行ってもよい。具体的には、IABノードは、親ノードと通信するための端末機能(MT機能)を有しており、この端末機能(MT機能)に対して、上述した実施形態に係る構成及び動作を適用してもよい。
【0114】
また、上述した実施形態において、5GS1を産業用ネットワーク30に適用する一例について説明したが、5GS1が産業用ネットワーク30に適用されない場合であっても、上述した実施形態に係る構成及び動作を実施可能である。
【0115】
UE100又はgNB200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0116】
また、UE100又はgNB200が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100又はgNB200の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0117】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0118】
本願は、日本国特許出願第2020-048413号(2020年3月18日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。