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特許7383804ポリウレタンとカチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】ポリウレタンとカチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20231113BHJP
   G02F 1/16757 20190101ALI20231113BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231113BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231113BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20231113BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20231113BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231113BHJP
   G02F 1/167 20190101ALN20231113BHJP
【FI】
C09J175/04
G02F1/16757
C09J11/08
C09J11/06
C09J133/08
C09J133/10
C09J7/38
G02F1/167
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022520903
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 US2020047944
(87)【国際公開番号】W WO2021071600
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】62/911,742
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブズオウェイ, ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ジョナサン キム
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, デイビッド ダレル
(72)【発明者】
【氏名】レーガン, マイケル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マカロー, リン エー.
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144051(JP,A)
【文献】特表2007-510956(JP,A)
【文献】CHEN Hong、ほか4名,Polymerized Ionic Liquids: The Effect of Random Copolymer Composition on Ion Conduction,Macromolecules,米国,2009年07月14日,Vol.42 No.13,Page.4809-4816
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンとカチオン性ポリマードーパントとを含む接着剤組成物であって、前記カチオン性ポリマードーパントは、式Iによって表され、
【化8】
式中、
R3、R4、R5は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキルもしくはアルケニル基、または-(CH-Q2-R2基であり、bは2~5であり;
R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH、-NHR1’および-NR1’R1’’からなる群から選択され;
Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有し;
R1’、R1’’は、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基であり;
前記カチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトンであり;
n-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは1~6であり、ここで、
前記カチオン性ポリマードーパントは、以下:
【化1】
ではない、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記多原子対イオンが少なくとも3つのフッ素原子を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記接着剤組成物が、前記接着剤組成物の総固形分の約0.3重量%~約3重量%のカチオン性ポリマードーパントを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニルおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記接着剤組成物が架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、イソシアナート、エポキシ、ヒドロキシル、アジリジン、アミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記カチオン性ポリマードーパントの前記対イオンYn-が、トリフルオロアセタート、トリフルオロメチルスルホナート、テトラフルオロボラート、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロケイ酸、ノナフルオロブタンスルホナート、トリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロメチルスルホニル-N-シアノアミド、2,2,2-トリフルオロ-N-[(トリフルオロメチル)スルホニル]アセトアミド、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、1,1,1-トリフルオロ-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド、ビス(ペルフルオロエチルスルホニル)アミド、ビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロトリフルオロメチルスルホニルイミド、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドおよび(トリフルオロメチルスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記カチオン性ポリマードーパントが式IAによって表され、
【化9】
式中、
R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH、-NHR1’および-NR1’R1’’からなる群から選択され;
R6、R7は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキルまたはアルケニル基であり;
Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有し;
R1’、R1’’は、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基であり;
前記カチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトンであり;
n-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは1~6である;
請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ポリマードーパントが、式IBによって表され、
【化10】
式中、R8は、12~18の炭素原子を有する、アルキルおよびアルケニル官能基からなる群から選択される、
請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
複数の画素電極を含む後部電極と
を備え、
前記第1の接着層は請求項1に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
【請求項11】
前記電気光学組立品が、前記導電性光透過性層と前記電気光学材料層の間に位置する第2の接着層をさらに備え、前記第2の接着層は、請求項1に記載の接着剤組成物を使用して形成される、請求項10に記載の電気光学組立品。
【請求項12】
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層は請求項1に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
【請求項13】
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
第1の剥離シートと;
第1の接着層と;
電気光学材料層と;
第2の接着層と;
第2の剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層および前記第2の接着層の少なくとも1つが請求項1に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
【請求項14】
ポリウレタンと重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物であって、前記重合性カチオン性ドーパントは、式IIによって表され、
【化11】
式中、
R9は、水素またはメチル基であり;
R10は、1~10の炭素原子を有するアルキル基であり;
qは、1~5であり;
n-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは、1~6である、
接着剤組成物。
【請求項15】
前記接着剤組成物が、前記接着剤組成物の総固形分の約0.05重量%~約5重量%の重合性カチオン性ドーパントを含む、請求項14に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
前記カチオン性ポリマードーパントの前記対イオンYn-が、トリフルオロアセタート、トリフルオロメチルスルホナート、テトラフルオロボラート、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロケイ酸、ノナフルオロブタンスルホナート、トリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロメチルスルホニル-N-シアノアミド、2,2,2-トリフルオロ-N-[(トリフルオロメチル)スルホニル]アセトアミド、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、1,1,1-トリフルオロ-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド、ビス(ペルフルオロエチルスルホニル)アミド、ビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロトリフルオロメチルスルホニルイミド、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドおよび(トリフルオロメチルスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、請求項14に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
前記重合性カチオン性ドーパントが、式IIA
【化12】
によって表される、請求項14に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
複数の画素電極を含む後部電極層と
を備え、
前記第1の接着層は請求項14に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
【請求項19】
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層は請求項14に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
【請求項20】
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
第1の剥離シートと;
第1の接着層と;
電気光学材料層と;
第2の接着層と;
第2の剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層および前記第2の接着層の少なくとも1つが請求項14に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年10月7日に出願された米国仮出願第62/911,742号の優先権を主張し、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
本発明は、ポリウレタンと、カチオン性ポリマードーパントまたは重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物に関する。該接着剤組成物は、電気光学組立品中に接着層を形成するために使用され得、低温でも改善された電気光学性能を可能にする。
【背景技術】
【0003】
「電気光学」という用語は、材料または機器またはディスプレイまたは組立品に適用される場合、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために画像化技術分野におけるその通常の意味で本明細書において使用され、前記材料は、前記材料への電界の印加によってその第1の表示状態から第2の表示状態に変化する。光学特性は、典型的には人間の目に知覚可能な色であるが、光の透過、反射率、発光、または機械読み取りを目的としたディスプレイの場合には、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化という意味での擬似カラーなどの別の光学特性であり得る。「電気光学機器」 および「電気光学ディスプレイ」という用語は、本明細書では同義と見なされる。本明細書で使用される「電気光学組立品」という用語は、電気光学機器であり得る。電気光学組立品は、電気光学機器の構築のために使用される多層構成要素でもあり得る。したがって、例えば、後述するフロントプレーン積層体(front plane laminate)も電気光学組立品と見なされる。
【0004】
「灰色状態」という用語は、本明細書では、画素の2つの極端な表示状態の中間状態を指すために画像化技術分野におけるその通常の意味で使用され、これらの2つの極端な状態の間での黒白遷移を必ずしも含意しない。例えば、以下に言及されるE Ink特許および公開された出願のいくつかは、極端な状態が白色および藍色である電気泳動ディスプレイを記載しているので、中間の「灰色状態」は実際には淡青色である。実際、既に述べたように、表示状態の変化は、全くもって色の変化ではない場合がある。「黒」および「白」という用語は、ディスプレイの2つの極端な表示状態を指すために以下で使用され得、厳密には黒と白ではない極端な表示状態、例えば前述の白および藍色の状態を通常含むものとして理解されるべきである。「モノクローム」という用語は、以下では、介在する灰色状態なしに画素をそれらの2つの極端な表示状態のみに動作させる動作スキームを表すために使用され得る。
【0005】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外面を有するという意味で固体であるが、材料は、液体または気体で満たされた内部空間を有してもよく、有していることが多い。固体の電気光学材料を用いたこのようなディスプレイを、以下では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と呼ぶ場合がある。したがって、「固体電気光学ディスプレイ」という用語には、回転二色性部材ディスプレイ、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイおよびカプセルに封入された液晶ディスプレイが含まれる。
【0006】
「双安定」および「双安定性」という用語は、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示素子を備えるディスプレイであって、有限な持続時間のアドレス指定パルスによって、任意の所与の素子を、その第1または第2の表示状態のいずれかをとるように動作させた後、アドレス指定パルスが終了した後に、前記表示素子の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍、その状態が持続するようなディスプレイを指すために当技術分野におけるそれらの通常の意味で本明細書において使用される。米国特許第7,170,670号では、灰色スケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、それらの極端な黒色状態および白色状態だけでなく、それらの中間の灰色状態においても安定であり、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイについても同じことが該当することが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、双安定ディスプレイと多安定ディスプレイの両方を包含するために、便宜上、本明細書では「双安定」という用語が使用され得る。
【0007】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが公知である。電気光学ディスプレイの1つのタイプは、例えば、米国特許第5,808,783号;同第5,777,782号;同第5,760,761号;同第6,054,071 同第6,055,091号;同第6,097,531号;同第6,128,124号;同第6,137,467号;および同第6,147,791号に記載されているような回転二色性部材タイプである。このタイプのディスプレイは「回転二色性ボール」ディスプレイと呼ばれることが多いが、上記特許のいくつかでは回転部材が球形ではないので、「回転二色性部材」という用語がより正確なものとして好ましい。このようなディスプレイは、異なる光学的特徴を有する2またはそれを超える部分を有する多数の小物体(典型的には、球形または円筒形)と、内部双極子とを使用する。これらの物体は、マトリックス内の液体で満たされた液胞内に懸濁され、液胞は、物体が自由に回転するように液体で満たされている。ディスプレイに電界を印加し、それによって物体を様々な位置に回転させ、物体のどの部分が画面を通じて見られるかを変動させることによって、ディスプレイの外観が変化する。このタイプの電気光学媒体は、典型的には双安定である。
【0008】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、エレクトロクロミック媒体、例えば、半導電性金属酸化物から少なくとも部分的に形成された電極と、電極に取り付けられた可逆的色変化が可能な複数の色素分子とを含むナノクロミックフィルムの形態のエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737;およびWood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)を参照のこと。Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845も参照されたい。このタイプのナノクロミックフィルムは、例えば、米国特許第6,301,038号、同第6,870,657号および同第6,950,220号にも記載されている。このタイプの媒体も、典型的には双安定である。
【0009】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R.A.ら、‘‘Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting’’,Nature,425,383-385(2003)に記載されているエレクトロウェッティングディスプレイである。米国特許第7,420,549号には、このようなエレクトロウェッティングディスプレイを双安定にすることができることが示されている。
【0010】
長年にわたり鋭意研究開発されてきた電気光学ディスプレイの1つのタイプは、複数の荷電粒子が電場の影響下で流体を通じて移動する粒子ベースの電気泳動ディスプレイである。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較すると、良好な輝度およびコントラスト、広い視野角、状態双安定性ならびに低消費電力という属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画質に伴う問題が、これらのディスプレイの広範な使用を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は沈降する傾向があり、その結果、これらのディスプレイの耐用年数は不十分になる。
【0011】
上記のように、電気泳動媒体は流体の存在を必要とする。ほとんどの先行技術の電気泳動媒体では、この流体は液体であるが、電気泳動媒体は気体流体を使用して製造することができる。例えば、Kitamura,T.ら、‘‘Electrical toner movement for electronic paper-like display’’,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1およびYamaguchi,Y.ら、‘‘Toner display using insulative particles charged triboelectrically’’,IDW Japan,2001,Paper AMD 4-4)を参照されたい。米国特許第7,321,459号および同第7,236,291号も参照されたい。このような気体をベースとする電気泳動媒体は、媒体がそのような沈降を許容する配向で、例えば媒体が垂直面に配置される標識において使用される場合に、液体をベースとする電気泳動媒体と同じ種類の粒子沈降に起因する問題を受けやすいようである。実際、液体懸濁流体と比べて気体懸濁流体の粘度がより低いことによって、電気泳動粒子のより迅速な沈降が可能になるので、粒子沈降は、液体ベースの電気泳動媒体より気体ベースの電気泳動媒体においてより深刻な問題であるようである。
【0012】
マサチューセッツ工科大学(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLCおよび関連企業に譲渡されたまたはそれらの名義での多数の特許および出願は、カプセルに封入されたマイクロセル電気泳動媒体およびその他の電気光学媒体において使用される様々な技術を記載している。カプセルに封入された電気泳動媒体は、多数の小さなカプセルを含み、その各々自体は、流体媒体中に電気泳動的に移動可能な粒子を含有する内相と、内相を取り囲むカプセル壁とを含む。典型的には、カプセル自体がポリマー結合剤内に保持されて、2つの電極間に配置されたコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体はマイクロカプセル内に封入されず、代わりにキャリア媒体、典型的にはポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保持される。以下、「マイクロキャビティ電気泳動ディスプレイ」という用語は、カプセルに封入された電気泳動ディスプレイとマイクロセル電気泳動ディスプレイの両方を包含するために使用され得る。これらの特許および出願に記載されている技術には、以下のものが含まれる。
【0013】
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤;例えば、米国特許第7,002,728号および同第7,679,814号を参照されたい。
【0014】
(b)カプセル、結合剤およびカプセル化の方法;例えば、米国特許第6,922,276号、同第7,184,197号および同第7,411,719号を参照されたい。
【0015】
(c)マイクロセル構造体、壁材料およびマイクロセルを形成する方法;例えば、米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照されたい。
【0016】
(d)マイクロセルを充填し、密封するための方法;例えば、米国特許第7,144,942号および同第7,715,088号を参照されたい。
【0017】
(e)電気光学材料を含有するフィルムおよびサブアセンブリ;例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号を参照されたい。
【0018】
(f)ディスプレイにおいて使用されるバックプレーン、接着層およびその他の補助層および方法;例えば、米国特許第7,116,318号 同第7,535,624号、同第7,012,735号および同第7,173,752号を参照されたい。
【0019】
(g)色形成および色調整;例えば、米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照されたい。
【0020】
(h)ディスプレイを動作させるための方法;例えば、米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照されたい。
【0021】
(i)ディスプレイの用途;例えば、米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照されたい。
【0022】
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されているような非電気泳動ディスプレイ;ディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の用途;例えば、米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号を参照されたい。
【0023】
前述の特許および出願の多くは、カプセルに封入された電気泳動媒体中の離散した(discrete)マイクロカプセルを取り囲む壁は連続相によって置き換えることができ、したがっていわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを製造できることを認識している。このようなディスプレイでは、電気泳動媒体は、電気泳動流体の複数の離散した液滴と、ポリマー材料の連続相とを含む。このようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散した液滴は、離散したカプセル膜がそれぞれの各液滴に付随していなくても、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得る。例えば、米国特許第6,866,760号を参照されたい。したがって、本出願において、このようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセルに封入された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0024】
電気泳動媒体は、(例えば、多くの電気泳動媒体において、粒子は、ディスプレイを通る可視光の透過を実質的に遮断するので)しばしば、不透明であり、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つの表示状態が実質的に不透明であり、1つが光透過性である、いわゆる「シャッターモード」で動作するようにすることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、同第6,130,774号、同第6,144,361号、同第6,172,798号、同第6,271,823号、同第6,225,971号および同第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似するが、電界強度の変動に依存し、類似のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッターモードで動作することが可能であり得る。シャッターモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイ用の多層構造において有用であり得、このような構造では、画面からより遠い第2の層を露出するまたは隠すために、ディスプレイの画面に隣接する少なくとも1つの層はシャッターモードで動作する。
【0025】
カプセルに封入された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来の電気泳動機器のクラスタリングおよび沈降故障モードに悩まされず、多種多様な柔軟かつ堅固な基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力などのさらなる利点を提供する。「印刷」という用語の使用は、パッチダイ(patch die)コーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティングなどの予め計量されたコーティング;ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティングなどのロールコーティング;グラビアコーティング;ディップコーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;刷毛塗り;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷法;静電印刷法;感熱印刷法;インクジェット印刷法;電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号を参照);ならびに他の類似の技術を含むがこれらに限定されない、印刷およびコーティングの全ての形態を含むことが意図される。したがって、得られるディスプレイは柔軟であり得る。さらに、様々な方法を用いて印刷することができるので、ディスプレイ媒体を安価に製造することができる。
【0026】
本発明では、他のタイプの電気光学材料も使用され得る。特に興味深いことに、双安定強誘電性液晶ディスプレイ(FLC)が当技術分野において公知である。
【0027】
電気泳動ディスプレイは、典型的には、電気光学材料層に加えて、電気光学材料層の反対側に配置された少なくとも2つの他の層を含む。これらの層の1つは電極層である。ほとんどの電気光学機器では、これらの層はいずれも電極層であり、少なくとも1つの電極層は、機器の画素を画定するようにパターン化される。例えば、1つの電極層を細長い行電極にパターン化することができ、他方を行電極に対して直角に走行する細長い列電極にパターン化することができ、画素は行電極と列電極の交差部によって画定される。あるいは、より一般的には、1つの電極層は光透過性の単一の連続する電極の形態を有し、他の電極層は画素電極のマトリックスへとパターン化され、これらの各々がディスプレイの1つの画素を画定する。すなわち、層の一方は、典型的には導電性光透過性層であり、他方の層は、典型的にはバックプレーン基材と呼ばれ、導電性光透過性層と画素電極の間に電位を印加するように構成された複数の画素電極を備える。タッチペン、印字ヘッドまたはディスプレイから分離した同様の可動電極とともに使用することが意図される別のタイプの電気光学機器では、電気光学層に隣接する層の1つのみが電極を備え、電気光学層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気光学材料層を損傷するのを防止することが意図される保護層である。
【0028】
3層電気光学ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層操作を含む。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかには、プラスチックフィルム上にインジウムスズ酸化物(ITO)または同様の導電性コーティング(最終ディスプレイの1つの電極として作用する)を含む柔軟な基材上に、結合剤中にカプセルを含むカプセル封入された電気泳動媒体がコーティングされており、カプセル/結合剤コーティングが乾燥されて、基材にしっかりと接着された電気泳動媒体のコヒーレント層を形成する、カプセル封入された電気泳動ディスプレイを製造するための方法が記載されている。別個に、多数の画素電極と、画素電極をドライブ回路に接続するための導体の適切な配置とを含有するバックプレーンが準備される。最終ディスプレイを形成するために、カプセル/結合剤層をその上に有する基材は、積層接着剤を使用してバックプレーンに積層される。プラスチックフィルムなどの、タッチペンまたはその他の可動電極がその上を滑らかに動くことができる単純な保護層でバックプレーンを置き換えることによって、タッチペンまたは類似の可動電極とともに使用可能な電気泳動ディスプレイを調製するために、非常に類似した方法を使用することができる。このような方法の1つの好ましい形態では、バックプレーン自体が柔軟であり、プラスチックフィルムまたは他の柔軟な基材上に画素電極および導体を印刷することによって調製される。この方法によるディスプレイの大量生産のための明白な積層技術は、積層接着剤を用いたロール積層である。同様の製造技術を、他のタイプの電気光学ディスプレイとともに使用することができる。例えば、マイクロセル電気泳動媒体または回転二色性部材媒体は、カプセルに封入された電気泳動媒体と実質的に同じようにバックプレーンに積層され得る。
【0029】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産によく適合された固体電気光学ディスプレイ(カプセルに封入された電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を記載している。本質的に、この特許は、光透過性導電性層と、固体電気光学媒体の層と、接着層と、剥離シートとを順に備える、いわゆる「フロントプレーン積層体」(「FPL」)を記載している。典型的には、光透過性導電性層は、基材が永久変形することなく(例えば)直径10インチ(254mm)のドラムの周りに手動で巻き付けることができるという意味で、好ましくは柔軟である光透過性基材上に担持される。「光透過性」という用語は、そのように指定された層が、その層を通して見る観察者が、通常は導電性層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られる電気光学媒体の表示状態の変化を観察することを可能にするのに十分な光を透過することを意味するために、本特許および本明細書において使用され、電気光学媒体が非可視波長での反射率の変化を示す場合には、「光透過性」という用語は、当然、関連する非可視波長の透過を指すと解釈されるべきである。基材は、典型的にはポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは約2~約10ミル(51~254μm)の範囲の厚さを有する。導電層は、都合よく、例えばアルミニウムもしくはITOの薄い金属もしくは金属酸化物層であり、または導電性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタラート)(PET)フィルムは、例えば、E.I.du Pont de Nemours&Company、Wilmington DEから「aluminized Mylar」(「Mylar」は登録商標である)として市販されており、このような市販材料を使用すると、フロントプレーン積層体において良好な結果が得られ得る。
【0030】
このようなフロントプレーン積層体を使用した電気光学ディスプレイの組み立ては、フロントプレーン積層体から剥離シートを除去し、接着層をバックプレーンに接着させるのに有効な条件下で接着層をバックプレーンと接触させ、それによって接着層、電気光学媒体の層および導電性層をバックプレーンに固定することによって達成され得る。フロントプレーン積層体は、典型的にはロール・ツー・ロールコーティング技術を使用して大量生産され、次いで特定のバックプレーンとともに使用するために必要とされる任意のサイズの小片に切断され得るので、この方法は大量生産によく適合している。
米国特許第7,561,324号は、本質的に前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーン積層体の簡略版である、いわゆる「二重剥離シート」または「二重剥離フィルム」を記載している。二重剥離シートの1つの形態は、2つの接着層の間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含み、接着層の一方または両方が剥離シートによって覆われている。二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれた固体電気光学媒体の層を含む。二重剥離シートの両形態は、既に記載したフロントプレーン積層体から電気光学ディスプレイを組み立てる方法と概ね同様の方法において使用することが意図されているが、2つの別個の積層を含み、典型的には、第1の積層では、二重剥離シートは前部電極に積層されて前部サブアセンブリを形成し、次いで、第2の積層では、前部サブアセンブリはバックプレーンに積層されて最終ディスプレイを形成するが、これら2つの積層の順序は所望であれば逆にすることができる。
【0031】
代替的な構成として、米国特許第7,839,564号は、米国特許第6,982,178号に記載されているフロントプレーン積層体の変形形態である、いわゆる「反転フロントプレーン積層体」を記載する。この反転フロントプレーン積層体は、順に、光透過性保護層および光透過性導電性層の少なくとも1つと、接着層と、固体電気光学媒体の層と、剥離シートとを備える。この反転フロントプレーン積層体は、電気光学層と前部電極または前部基材との間に積層接着剤の層を有する電気光学ディスプレイを形成するために使用され、第2の典型的には薄い接着剤の層は、電気光学層とバックプレーンの間に存在してもよく、また、存在しなくてもよい。
電気光学組立品の性能基準の1つは、異なる表示状態間での効果的なスイッチングのための温度範囲(temperature window)である。一般に、動作温度が低下すると、スイッチング効率も低下する。本発明の発明者らは、予想外にも、ポリウレタンと、あるクラスのカチオン性ポリマードーパントまたはあるクラスの重合性カチオン性ドーパントとを含む組成物を使用して形成された接着層を有する電気光学機器が、低温で改善された電気光学スイッチング性能を示すことを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】米国特許第7,170,670号明細書
【文献】米国特許第5,808,783号明細書
【文献】米国特許第5,777,782号明細書
【文献】米国特許第5,760,761号明細書
【文献】米国特許第6,054,071号明細書
【文献】米国特許第6,055,091号明細書
【文献】米国特許第6,097,531号明細書
【文献】米国特許第6,128,124号明細書
【文献】米国特許第6,137,467号明細書
【文献】米国特許第6,147,791号明細書
【文献】米国特許第6,301,038号明細書
【文献】米国特許第6,870,657号明細書
【文献】米国特許第6,950,220号明細書
【文献】米国特許第7,321,459号明細書
【文献】米国特許第7,236,291号明細書
【非特許文献】
【0033】
【文献】O’Regan,B.ら、Nature 1991,353,737
【文献】Wood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)
【文献】Bach,U.ら、Adv.Mater.,2002,14(11),845
【文献】Hayes,R.A.ら、‘‘Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting’’,Nature,425,383-385(2003)
【文献】Kitamura,T.ら、‘‘Electrical toner movement for electronic paper-like display’’,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1
【文献】Yamaguchi,Y.ら、‘‘Toner display using insulative particles charged triboelectrically’’,IDW Japan,2001,Paper AMD 4-4)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0034】
発明の概要
本発明の態様は、接着剤組成物ならびにこれらの接着剤組成物を含む電気光学組立品およびフロントプレーン積層体に関する。
【0035】
一態様において、本発明は、ポリウレタンとカチオン性ポリマードーパントとを含む接着剤組成物であって、前記カチオン性ポリマードーパントは、式Iによって表され、
【化1】
式中、
R3、R4、R5は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキルもしくはアルケニル基、または-(CH-Q2-R2基であり、bは2~5であり;R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH、-NHR1’および-NR1’R1’’からなる群から選択され;Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有し;R1’、R1’’は、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基であり;前記カチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトンであり;Yn-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは1~6である;
接着剤組成物を提供する。対イオンは、少なくとも3つのフッ素原子を含み得る。
【0036】
別の態様において、本発明は、ポリウレタンと重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物であって、前記重合性カチオン性ドーパントは式IIによって表され、
【化2】
式中、
R9は、水素またはメチル基であり;R10は、1~10の炭素原子を有するアルキル基であり;qは、1~5であり、Yn-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり、nは、1~6である、
接着剤組成物を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、電気光学組立品であって、該電気光学組立品は、順に、導電性光透過性層と;電気光学材料層と;第1の接着層と;複数の画素電極を含む後部電極とを備え、前記第1の接着剤層は、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントまたは式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品を提供する。電気光学組立品は、導電性光透過性層と電気光学材料層の間に位置する第2の接着層をさらに備え得る。第2の接着層はまた、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントまたは式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物を使用して形成され得る。
【0038】
別の態様において、本発明は、電気光学組立品であって、該電気光学組立品は、順に、導電性光透過性層と;電気光学材料層と;第1の接着層と;剥離シートとを備え、前記第1の接着剤層は、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントまたは式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品を提供する。
【0039】
別の態様において、本発明は、電気光学組立品であって、該電気光学組立品は、順に、第1の剥離シートと;第1の接着層と;電気光学材料層と;第2の接着層と;第2の剥離シートとを備え、前記第1の接着剤層および前記第2の接着層の少なくとも1つは、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントまたは式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品を提供する。
【0040】
本発明の接着剤組成物によって形成された接着層を含む電気光学組立品は、特に低温において、改善された電気光学性能を示す。
【0041】
本発明の他の態様および様々な非限定的な実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。本明細書および参照により組み込まれる文書が矛盾する開示および/または一貫しない開示を含む場合には、本明細書が優先されるものとする。参照により組み込まれる2またはそれを超える文書が、互いに矛盾する開示および/または一貫しない開示を含む場合、より遅い有効日を有する文書が優先されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本出願の様々な態様および実施形態は、以下の図を参照しながら説明される。図面は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【0043】
図1図1は、導電性光透過性層と、電気光学材料層と、第1の接着層と、複数の画素電極を含む後部電極層とを備える電気光学組立品の概略図である。
【0044】
図2図2は、導電性光透過性層と、第2の接着層と、電気光学材料層と、第1の接着層と、複数の画素電極を含む後部電極層とを備える電気光学組立品の概略図である。
【0045】
図3図3は、導電性光透過性層と、電気泳動媒体を含む電気光学材料層と、第1の接着層と、複数の画素電極を含む後部電極層とを備える電気光学組立品の概略図である。
【0046】
図4図4は、導電性光透過性層と、第2の接着層と、電気泳動媒体を含む電気光学材料層と、第1の接着層と、複数の画素電極を含む後部電極層とを備える電気光学組立品の概略図である。
【0047】
図5図5は、導電性光透過性層と、電気光学材料層と、第1の接着層と、第1の剥離シートとを備える電気光学組立品(フロントプレーン積層体)の概略図である。
【0048】
図6図6は、第1の剥離シートと、第1の接着層と、電気光学材料層と、第2の接着層と、第2の剥離シートとを備える電気光学組立品(二重剥離フィルム)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の他の態様、実施形態および特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0050】
詳細な説明
積層構造用の接着剤組成物は周知である。積層構造用の接着剤組成物は、積層構造の異なる層を互いに接着するために使用される。このような接着剤組成物は、例えば、ポリウレタン系接着剤などのホットメルト型接着剤および/またはウェットコート接着剤を含み得る。典型的には、電気光学組立品は積層構造であり、接着層を含む。電気光学組立品の接着層は、その機械的、熱的および電気的特性に関するある特定の要件を満たさなければならない。
【0051】
電気光学ディスプレイにおいて使用するための積層接着剤の選択は、ある種の問題を呈する。積層接着剤は通常、電気光学媒体の電気的状態を変化させるために必要とされる電界を印加する電極間に配置されるので、接着剤の導電特性は、ディスプレイの電気光学性能に著しく影響を及ぼし得る。
【0052】
積層接着剤の体積抵抗率は、電気光学媒体にわたる全体的な電圧降下に影響を及ぼし、これは媒体の性能における重要な要因である。電気光学媒体にわたる電圧降下は、電極にわたる電圧降下から積層接着剤にわたる電圧降下を差し引いたものに等しい。一方、接着剤層の抵抗率が高すぎると、接着層内で大幅な電圧降下が発生し、電気光学媒体において実用的な電圧降下を生成するために電極間により高い電圧が必要となる。このように電極間の電圧を増加させることは、電力消費を増加させ、増加した電圧を生成して切り替えるためにより複雑で高価な制御回路の使用を必要とし得るので望ましくない。他方、接着層の抵抗率が低すぎると、隣接する電極(すなわち、アクティブマトリクス電極)間で望ましくないクロストークが発生し、または機器が単にショートし得る。また、ほとんどの材料の体積抵抗率は温度の上昇と共に急速に減少するため、接着剤の体積抵抗率が低すぎると、ディスプレイの性能は、室温より実質的に高い(または低い)温度で大きく変化する。
【0053】
これらの理由のため、ほとんどの電気光学媒体との使用に関して積層接着剤の抵抗率値の最適な範囲が存在し、この範囲は電気光学媒体の抵抗率とともに変化する。カプセルに封入された電気泳動媒体の体積抵抗率は、典型的には約1010オーム・cmであり、他の電気光学媒体の抵抗率は、通常、同じ桁の大きさである。したがって、良好な電気光学性能のために、積層接着剤の体積抵抗率は、約20℃のディスプレイの動作温度で、好ましくは約10オーム・cm~約1012オーム・cmまたは約10オーム・cm~約1011オーム・cmの範囲である。好ましくは、積層接着剤は、電気光学媒体自体と同様の、温度に伴う体積抵抗率の変動も有する。値は、25℃および50%相対湿度で1週間条件に馴化させた後の測定値に対応する。
【0054】
電気的特性に加えて、積層接着剤は、接着剤の強度、柔軟性、積層温度で耐える能力および流動する能力などを含むいくつかの機械的およびレオロジー的基準を満たさなければならない。関連する電気的および機械的基準をすべて満たすことができる市販の接着剤の数は少ない。
【0055】
電気光学機器の電気光学性能を改善するための1つの方法は、イオン性液体を含む、無機塩または有機塩などのイオン性ドーパントを接着剤組成物中に添加することである。ドーパントは、低温性能も高めることができる電気光学材料層中にも添加され得る。例えば、市販のポリウレタン接着剤組成物の性能を改善するために、組成物に塩または他の材料をドープすることができる。このようなドーパントの例は、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムである。しかしながら、経験により、このようなドーパントを配合されたいくつかの接着剤組成物は、アクティブマトリクスバックプレーン、特に有機半導体から作製されたトランジスタを含むアクティブマトリクスバックプレーンを損傷し得ることが発見された。さらに、多くの接着剤組成物はこのようなドーパントに反応せず、対応する電気光学組立品は、低温で最適より低いスイッチング性能を示すことが観察された。
【0056】
本発明は、電気光学組立品を含む積層構造に使用することができる接着剤組成物を提供する。接着剤組成物は、熱的、化学的および/または光活性化などの異なる機序によって硬化され得る。硬化機序に応じて、接着剤組成物は、1つまたは複数のポリマーおよびカチオン性ポリマードーパントまたは重合性カチオン性ドーパントに加えて、他の添加剤も含み得る。本明細書に開示されるドーパントは、例えば電気光学材料層の結合剤などの電気光学組立品の他の部分にも使用され得る。本発明の接着剤組成物(および/または結合剤組成物)は、特に低温で、改善された電気光学性能を提供する。
【0057】
本発明の接着剤組成物は、液体を混合するための当技術分野で公知の装置を使用して、ポリウレタン分散液もしくは溶液または無溶媒ポリウレタンをカチオン性ポリマードーパントと、または重合性カチオン性ドーパントおよび他の添加剤と混合することによって調製され得る。
【0058】
本発明の接着剤組成物は、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントとを含む。基R3、R4、R5は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキルもしくはアルケニル基、または-(CH-Q2-R2基であり、bは2~5であり;R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH、-NHR1’および-NR1’R1’’からなる群から選択され;Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有し;R1’、R1’’は、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基である。基R3、R4、R5は、6~22または10~18の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基でもあり得る。基R1、R2はまた、独立して、水素、1~18の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基からなる群から選択され得る。したがって、カチオン性ポリマードーパントの分子構造は、第四級アンモニウム基および少なくとも1つのポリエーテル基を含む。カチオン性ポリマードーパントの対イオンも、接着層の性能にとって重要である。カチオン性ポリマードーパントの対イオンは、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである。多原子アニオンは、少なくとも3つのフッ素原子を含み得る。
【化3】
【0059】
接着剤組成物のカチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトン、より好ましくは約500ダルトン~約8,000ダルトン、さらにより好ましくは約700ダルトン~約5,000ダルトン、さらにより好ましくは約800ダルトン~約2,000ダルトンであり得る。ここで、分子量値は、多原子アニオン性対イオンを含まないカチオン性ポリマードーパントのカチオン種の数平均分子量に相当する。すなわち、分子量は、接着剤組成物中に存在する共有結合によって連結された原子を含有する単一のカチオン性ポリマー種の数平均分子量に相当する。カチオン性ポリマードーパントのカチオン性-アニオン性部分の化学量論は、関与する種の正電荷:負電荷の比に応じて変動することが当業者には明らかである。
【0060】
接着剤組成物は、接着剤組成物の総固形分の約0.3重量%~約2重量%、好ましくは約0.4重量%~約3重量%、より好ましくは約0.5重量%~約1重量%のカチオン性ポリマードーパントを含有し得る。接着剤組成物の総固形分は、1つまたは複数の揮発性溶媒を除く接着剤組成物の全ての成分を含む。ここで、揮発性溶媒とは、250℃未満の沸点を有する材料であり、硬化条件下で重合しない。
【0061】
本発明の接着剤組成物は、ポリウレタンと、式IAによって表されるカチオン性ポリマードーパントとを含み得る。
【化4】
式中、R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH、-NHR1’または-NR1’R1’’であり;R6、R7は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基またはアルケニル基であり;Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有する。基R1、R2は、1~22の炭素原子または6~18の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基でもあり得る。カチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトンであり;Yn-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは1~6である。式IAのカチオン性ポリマードーパントは、第四級アンモニウム基および2つのエーテルまたはポリエーテル基を含む。
【0062】
接着剤組成物のカチオン性ポリマードーパントの一例は、式IBによって表される。
【化5】
式中、R8は、12~18の炭素原子を有する、アルキルおよびアルケニル官能基からなる群から選択される。この例では、カチオン性ポリマードーパントの分子構造は、第四級アンモニウム塩を含み、第四級アンモニウム塩の窒素は、以下の4つの置換基を有する:(a)2つのポリエーテル官能基、(b)エチル基、および(c)脂肪アルキル/アルケニル鎖。R6が獣脂に由来する場合には、この材料はイオン性液体材料であり、IoLiLyte T2EGの商品名で、Io-li-tec Nanomaterialsによって供給される。獣脂に由来する炭化水素基は、16および18個の炭素原子を有するアルキルおよび/またはアルケニル鎖と、より少ない量の14、15および17の炭素原子を有するアルキルおよび/またはアルケニル鎖との混合物を含む。
【0063】
本発明の別の接着剤組成物は、ポリウレタンと、式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む。基R9は、水素またはメチル基であり得る。基R10は、1~10の炭素原子または1~5の炭素原子を有するアルキル基であり;qは、1~5であり、Yn-は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり、nは、1~6である。対イオンは、少なくとも3つのフッ素原子を含む多原子アニオンでもあり得る。式IIに見られるように、重合性カチオン性ドーパントの分子構造は、アクリル酸ビニルまたはメタクリラート官能基と、イミダゾリウム官能基と、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオン性対イオンとを含む。このモノマーは、公知の方法、例えば、適切な光開始剤の存在下でのUV光による照射を介してまたは熱励起を用いて、そのホモポリマーを与えるためのまたは接着剤組成物中に存在する他の反応性モノマーとのフリーラジカル重合を介して、硬化過程中に重合することができる。
【化6】
【0064】
接着剤組成物は、接着剤組成物の総固形分の約0.05重量%~約5重量%、好ましくは約0.1重量%~約3重量%、より好ましくは約0.5重量%~約1.5重量%の重合性カチオン性ドーパントを含み得る。接着剤組成物の総固形分は、1つまたは複数の揮発性溶媒を除く接着剤組成物の全ての成分を含む。ここで、揮発性溶媒とは、250℃未満の沸点を有する材料であり、硬化条件下で重合しない。
【0065】
接着剤組成物の重合性カチオン性ドーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約183ダルトン~約415ダルトン、より好ましくは約190ダルトン~約300ダルトンであり得る。ここで、分子量値は、多原子アニオン性対イオンを含まないカチオン性ポリマードーパントのカチオン種の数平均分子量に相当する。すなわち、分子量は、接着剤組成物中に存在する共有結合によって連結された原子を含有する単一のカチオン性ポリマー種の数平均分子量に相当する。カチオン性ポリマードーパントのカチオン性-アニオン性部分の化学量論は、関与する種の正電荷:負電荷の比に応じて変動することが当業者には明らかである。
【0066】
接着剤組成物の重合性カチオン性ドーパントの例は、式IIによって表される。
【化7】
【0067】
カチオン性ポリマードーパントおよび重合性カチオン性ドーパントの多原子アニオン性対イオンの非限定歴な例としては、トリフルオロアセタート、トリフルオロメチルスルホナート、テトラフルオロボラート、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロケイ酸、ノナフルオロブタンスルホナート、トリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロメチルスルホニル-N-シアノアミド、2,2,2-トリフルオロ-N-[(トリフルオロメチル)スルホニル]アセトアミド、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、1,1,1-トリフルオロ-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド、ビス(ペルフルオロエチルスルホニル)アミド、ビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロトリフルオロメチルスルホニルイミド、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドおよび(トリフルオロメチルスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドが挙げられる。
【0068】
本発明の接着剤組成物は、ポリウレタンを含む。本発明の接着剤組成物は、水性または非水性媒体中のポリウレタン溶液またはポリウレタン分散液の形態であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物は、水性ポリウレタン分散液の形態で提供される。例えば、いくつかの事例では、接着剤分散液は、コーティング過程において直接使用され得、そして/または本明細書に記載されている接着層を形成するために接着剤の分散液もしくは溶液中の反応性モノマーの溶液によって使用され得る。いくつかの事例では、水性分散液は、1またはそれを超える表面への接着剤の堆積後に(例えば、熱を加えることによって)除去され得る水を含む。
【0070】
接着剤組成物は、接着剤組成物の総固形分の約3重量%~約60重量%のポリウレタン、好ましくは約15重量%~約50重量%、より好ましくは約30重量%~約40重量%のポリウレタンを含有し得る。接着剤組成物の総固形分は、1つまたは複数の揮発性溶媒を除く接着剤組成物の全ての成分を含む。ここで、揮発性溶媒とは、250℃未満の沸点を有する材料であり、硬化条件下で重合しない。
【0071】
一般に、ポリウレタンは、ジイソシアナートを含む重合過程を介して調製される。ポリウレタンの非限定的な例としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリ尿素、ポリ尿素、ポリエステルポリ尿素、ポリエステルポリ尿素、ポリイソシアナート(例えば、イソシアナート結合を含むポリウレタン)、およびポリカルボジイミド(例えば、カルボジイミド結合を含むポリウレタン)が挙げられる。ポリウレタンは、当技術分野で公知の方法を使用して調製され得る。一般に、ポリウレタンは、イソシアナート基と反応することができる少なくとも2つの基を含む二次試薬との、少なくとも1つのジイソシアナート化合物の反応によって形成される。二次試薬は、ジオールまたはポリオールであり得る。ジオールは、2またはそれを超える反応性アルコール基を有するオリゴマーであり得る。二官能性ポリオールの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPO)およびポリテトラメチレングリコールが挙げられる。二次試薬は、ジアミン、ポリアミンおよび2またはそれを超えるチオール官能基を有する試薬であり得る。1種類より多いジイソシアナート化合物を利用し得る、例えば、1種類より多くの二次試薬を利用し得る。
【0072】
ジイソシアナートは、2つの遊離イソシアナート基を有する芳香族、脂環式および脂肪族炭化水素を含む直鎖、環状または分枝鎖炭化水素であり得る。ジイソシアナート化合物の非限定的な例としては、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(H12MDI)、α,α,α,α-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,5,5-トリメチル-1-イソシアナト-3-イソシアナトメチルシクロヘキサンイソホロンジイソシアナートおよびその誘導体、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)およびその誘導体、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアナート、ベンゼン1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル、1-5ナフタレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、トランス-シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、ビトリレンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアナート、ジ-およびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジベンジルジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナートの異性体、1-メチル-2,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン、塩素化および臭素化されたジイソシアナート、リン含有ジイソシアナート、4,4’-ジイソシアナトフェニルペルフルオロエタン、テトラメトキシブタン-1,4-ジイソシアナート、ブタン-1,4-ジイソシアナート、ヘキサン-1,6-ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、エチレンジイソシアナート、フタル酸-ビス-イソシアナトエチルエステル、反応性ハロゲン原子を含有するポリイソシアナート、例えば、1-クロロメチルフェニル-2,4-ジイソシアナート、1-ブロモメチルフェニル-2,6-ジイソシアナート、3,3-ビス-クロロメチルエーテル-4,4’-ジフェニルジイソシアナートが挙げられる。いくつかの実施形態において、ジイソシアナート化合物は、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)である。
【0073】
いくつかのポリウレタンは、イオン性基(例えば、カルボン酸基)を含むジオールを使用して形成され得る。イオン性基は、ポリウレタン(例えば、水に分散させた場合)を安定化するために使用され得、そして/または架橋のために利用され得る。イオン性基を含むジオールの非限定的な例としては、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジエチロールプロピオン酸、ジエチロールブタン酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ブタンスルホン酸、1,5-ジヒドロキシ-2-ペンタンスルホン酸、1,5-ジヒドロキシ-3-ペンタンスルホン酸、1,3-ジヒドロキシ-2-プロパンスルホン酸、ジメチロールエタンスルホン酸、N-メチルジエタノールアミン、N-エチジエタノールアミン、N-プロピジエタノールアミン、N,N-ジメチル-2-ジメチロールブチルアミン、N,N-ジエチル-2-ジメチロールブチルアミン、N,N-ジメチル-2-ジメチロールプロピルアミンが挙げられる。いくつかの実施形態において、イオン性基はカルボン酸基である。カルボン酸基を含むジオールの非限定的な例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジエチロールプロピオン酸およびジエチロールブタン酸、ポリエステルジオールならびにその他のポリマー性カルボン酸基が挙げられる。いくつかの実施形態において、イオン性基を含むジオールはジメチロールプロピオン酸である。
【0074】
ポリウレタンが例示的な接着性材料として提供されているが、当業者は、他の種類の接着剤を含む接着剤において本明細書に記載の組成物および方法を利用することができるであろう。いくつかの実施形態において、接着剤はアクリル(acrylic)を含む。ある特定の実施形態において、接着剤は、2またはそれを超える種類の接着剤(例えば、ポリウレタンおよびアクリル)を含む。
【0075】
本発明の接着剤組成物は、水性媒体または溶媒ベースの媒体中の溶液または分散された材料の任意の組み合わせであり得る少なくとも2つの成分を混ぜ合わせることによって形成され得る。いくつかの実施形態において、構成要素は合成重合過程によって形成され得、1つの構成要素が第2のポリマー性構成要素の存在下で重合され、または両ポリマーが同時に形成され得る。いくつかの事例では、接着剤組成物は、コーティング過程で直接使用される接着剤分散液中で重合性モノマーを乳化することによって、および/または接着剤の分散液もしくは溶液中の反応性モノマーの溶液によって形成され得る。いくつか事例では、モノマーの重合は、一次または二次段階(すなわち、硬化)で生じ得、インク表面空隙充填および粒子の合体(例えば、分散液を使用する場合)にも役立ち得る。
【0076】
接着性材料は、2またはそれを超える反応性官能基を含み得る。反応性官能基は、骨格に沿って、または骨格から伸長した鎖に沿って、末端基として配置され得る。
【0077】
反応性官能基は、一般に、1またはそれを超える硬化種、例えば架橋試薬、鎖延長試薬などと反応するように構成された接着剤中に存在する官能基を指す。いくつかの実施形態において、反応性官能基は、硬化種と反応して、架橋、熱可塑性結合、2種類の接着性材料間の結合などの硬化された部分を形成する。ある特定の実施形態において、反応性官能基は、架橋試薬などの硬化種と反応して架橋を形成し得る。いくつかの事例では、反応性官能基は、特定の一連の条件下で、例えば特定の温度の範囲で別の反応性官能基と反応するように構成され得る。いくつかの実施形態において、反応性官能基は、接着性材料が熱可塑性乾燥を受けるような特定の条件下で反応し得る。反応性官能基の非限定的な例としては、ヒドロキシル、カルボニル、アルデヒド、カルボキシラート、アミン、イミン、イミド、アジド、エーテル、エステル、スルフヒドリル(チオール)、シラン、ニトリル、カルバマート、イミダゾール、ピロリドン、カーボナート、アクリラート、アルケニルおよびアルキニルが挙げられる。他の反応性官能基も可能であり、当業者は、本明細書の教示に基づいて、二重硬化接着剤とともに使用するのに適した反応性官能基を選択することができるであろう。当業者は、本明細書に記載されている硬化工程が、一般的に、接着材料の形成、例えばポリウレタン骨格などの接着性骨格の重合を指すのではなく、接着剤が機械的特性、粘度および/または接着性の実質的な変化を受けるように、接着材料が架橋を形成し、熱可塑性乾燥などを受けるような接着性材料のさらなる反応を指すことも理解するであろう。
【0078】
いくつかの実施形態において、官能性反応基は、電磁放射線(例えば、可視光、UV光など)、電子ビーム、高温(例えば、溶媒抽出または縮合反応中に利用されるなど)、化学化合物(例えば、チオレン)および/または架橋剤などの刺激の存在下で硬化種と反応する。例えば、アクリル酸ビニルモノマーまたはオリゴマーを含む接着剤組成物は、光開始剤の存在下でUV照射を介して基材上で重合され得る。式IIの重合性カチオン性ドーパントの場合には、ドーパントは、アクリル酸ビニルモノマーまたはオリゴマーとともに重合され得、同じポリマーの一部であり得る。
【0079】
別の態様において、接着剤組成物は架橋剤も含み得る。架橋剤は、イソシアナート、エポキシ、ヒドロキシル、アジリジン、アミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含み得る。架橋剤の非限定的な例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(NGDE)、O,O,O-トリグリシジルグリセロール(TGG)、グリシジルメタクリラートのホモポリマーおよびコポリマーならびにN,N-ジグリシジルアニリンが挙げられる。いくつかの実施形態において、架橋剤を含む接着剤は、架橋剤の活性化温度に曝露されると架橋され得る。架橋剤は、接着剤組成物の重量で約100ppm~約15,000ppmの濃度で接着剤組成物中に存在し得る。
【0080】
ポリウレタンおよびカチオン性ポリマードーパントまたは重合性カチオン性ドーパント(それぞれ式Iおよび式IIによって表される)を含む本発明の接着剤組成物は、電気光学組立品において接着層を形成するために使用することができる。電気光学組立品は、順に、導電性光透過性層と、導電性光透過性層と電気的に接触している電気光学材料層と、第1の接着層と、バックプレーン基材とを備え得る。バックプレーン基材は、複数の画素電極を含む後部電極を備える。組立品は、導電性光透過性層と画素電極の間に電位を印加するように構成される。電気光学組立品は、導電性光透過性層と電気光学材料層の間に第2の接着層をさらに備え得る。電気光学組立品は、導電性光透過性層と、電気光学材料層と、第1の接着層と、剥離シートとを順に含むフロントプレーン積層体(FPL)を使用することによって製造され得る。電気光学組立品は、第1の剥離シートと、第1の接着層と、導電性光透過性層と、第2の接着層と、第2の剥離シートとを順に含む二重剥離フィルムを使用することによっても製造され得る。
【0081】
図1に示されているように、いくつかの実施形態において、電気光学組立品100は、導電性光透過性層(またはフロントプレーン電極)110と、電気光学材料層120と、複数の画素電極を含む後部電極140とを備える。上記のように、組立品の異なる層は接着層と一緒に接合することができる。図1において、後部電極140は、接着層130によって電気光学材料層に接着されている。
【0082】
いくつかの実施形態において、図2に示されているように、1つより多くの接着層が電気光学組立品200内に存在し得る。具体的には、この例では、後部電極240は接着層230によって電気光学材料層220に接着されており、導電性光透過性層210は、接着層230と同じまたは異なる接着剤を含み得る接着層235によって電気光学材料層220に接着されている。
【0083】
電気光学組立品は、電気泳動機器であり得る。図3の電気光学組立品300に例示されているように、電気光学材料層325は、カプセル350および結合剤360を含み得る。カプセル350は、電気光学材料層325を横切る電界の印加によって移動させることができる1またはそれを超える粒子を封入し得る。いくつかのこのような実施形態において、導電性光透過性層310は電気光学材料層325に直接隣接し得、後部電極340は第1の接着層330によって電気光学材料層に接着されている。例示的な実施形態では、図4の電気光学組立品400に例示されているように、後部電極440は、第1の接着層430によって電気光学材料層425に接着され得、導電性光透過性層410は、第2の接着層435によって電気光学材料層425に接着され得る。第1の接着層430は、第2の接着層435と同一のまたは異なる接着剤組成物を用いて形成され得る。
【0084】
本発明の電気光学組立品は、フロントプレーン積層体(FPL(front plane laminate))であり得る。このようなフロントプレーン積層体では、フロントプレーンは、最終ディスプレイの前部電極を形成するように意図された光透過性導電性層を含み得る。フロントプレーンは、(例えば、比較的薄い導電性層を支持し、導電性層を機械的損傷から保護する)ポリマーフィルムまたは類似の支持層を含み得る。いくつかのこのような実施形態において、電気光学組立品は、フロントプレーン積層体がバックプレーン電極に積層されて最終ディスプレイを形成する前に除去される剥離シートを含み得る。
【0085】
例示的なFPL実施形態では、図5の電気光学組立品500に例示されているように、導電性光透過性層510は、電気光学材料層520に隣接し得る。後部電極530は、第1の接着層530によって電気光学材料層520に接着され得る。第1の接着層は、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントまたは式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物を用いて形成される。
【0086】
本発明の電気光学組立品は、二重剥離フィルムであり得る。別の例示的な二重剥離フィルムの実施形態では、図6の電気光学組立品600に例示されているように、第1の剥離シート601は、第1の接着層602によって電気光学材料層620上に接着される。第2の剥離シート604も、第2の接着層603によって電気光学材料層620の他方の面に接着されている。第1の接着層602および第2の接着層603は、同一のまたは異なる接着剤組成物を用いて形成され得る。少なくとも1つの接着剤組成物は、ポリウレタンと、式Iによって表されるカチオン性ポリマードーパントまたは式IIによって表される重合性カチオン性ドーパントとを含む。
【0087】
本発明の接着剤組成物は、任意の種類および数の層を組立品内の1またはそれを超える他の層に接着するための接着層を形成するために使用され得、組立品は、図面に示されていない1またはそれを超える追加の層を含み得ることを理解すべきである。さらに、図1図5は、カプセルに封入された電気泳動組立品および機器を含む特定の類型の電気光学組立品を示しているが、本発明の接着剤組成物は、液晶、減衰内部反射および発光ダイオード組立品などの様々な電気光学組立品において有用である。
【0088】
上述のように、いくつかの実施形態において、接着層は、導電性光透過性層(またはフロントプレーン電極)と、電気光学材料層の電気光学媒体の電気的状態を変化させるために必要とされる電界を印加し得る後部電極との間に配置される。すなわち、接着剤の電気的特性(例えば、抵抗率、導電率)は、電気光学媒体に印加される電界を変化させ得る。接着剤の抵抗率が高すぎると、接着層内で大幅な電圧降下が発生する可能性があり、電極間の電圧の増加を必要とする。このように電極間の電圧を増加させることは、ディスプレイの電力消費を増加させ得、必要とされる増加した電圧を取り扱うためにより複雑で高価な制御回路の使用を必要とし得るので望ましくない。対照的に、アクティブマトリクスディスプレイのように、電気光学組立品を横切って連続的に伸長し得る接着層が電極のマトリックスと接触している場合には、接着剤の体積抵抗率は低すぎるべきではなく、さもなければ連続的な接着層を通る電流の側方伝導が、隣接する電極間に望ましくないクロストークを引き起こし得る。さらに、ほとんどの材料の体積抵抗率は、温度の上昇とともに急速に減少し得るので、接着剤の体積抵抗率が低すぎると、実質的に室温を超える温度での組立品の性能が悪影響を受ける。したがって、いくつかの実施形態において、接着剤の体積抵抗率は、(例えば、約200℃の組立品の動作温度で)約108オームcm~約1012オーム・cm、または約109オーム・cm~約1011オーム・cmの範囲であり得る。体積抵抗率の他の範囲も可能である。値は、25℃および50%相対湿度で1週間条件に馴化させた後の測定値に対応する。硬化後(例えば、第1の硬化および第2の硬化後)の接着層は、特定の平均コート重量を有し得る。例えば、接着層は、約2g/m2~約25g/m2の範囲の平均コート重量を有することができる。いくつかの実施形態において、接着層は、少なくとも約2g/m2、少なくとも約4g/m2、少なくとも約5g/m2、少なくとも約8g/m2、少なくとも約10g/m2、少なくとも約15g/m2、または少なくとも約20g/m2の平均コート重量を有する。ある特定の実施形態において、接着層は、約25g/m2未満もしくはそれに等しい、約20g/m2未満もしくはそれに等しい、約15g/m2未満もしくはそれに等しい、約10g/m2未満もしくはそれに等しい、約8g/m2未満もしくはそれに等しい、約5g/m2未満もしくはそれに等しい、または約4g/m2未満もしくはそれに等しい平均コート重量を有する。上に表記された範囲の組み合わせ(例えば、約2g/m2~約25g/m2、約4g/m2~約10g/m2、約5g/m2~約20g/m2、約8g/m2~約25g/m2)も可能である。他の範囲も可能である。硬化前の接着層は、特定の平均ウェットコート厚さ(例えば、接着剤が電気光学組立品の電気的および/または光学的特性を著しく変化させないような)を有し得る。例えば、接着層は、約1ミクロン~約100ミクロン、約1ミクロン~約50ミクロン、または約5ミクロン~25ミクロンの範囲の平均ウェットコート厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、接着層は、約25ミクロン未満、約20ミクロン未満、約15ミクロン未満、または約12ミクロン未満、約10ミクロン未満、または約5ミクロン未満の平均ウェットコート厚さを有し得る。いくつかの実施形態において(例えば、接着剤が電気光学材料層に向けてウェットコーティングされている実施形態において)、接着層は、約1ミクロン~約50ミクロン、または約5ミクロン~25ミクロン、または約5ミクロン~約15ミクロンの平均ウェットコート厚さを有し得る。いくつかの実施形態において(例えば、接着剤が層上にコーティングされ、次いで電気光学材料層に積層される実施形態において)、接着層は、約15ミクロン~30ミクロン、または20ミクロン~25ミクロンの平均ウェットコート厚さを有し得る。他のウェットコート厚さも可能である。
【0089】
接着層は下部層全体を覆い得る、または接着層は下部層の一部のみを覆い得ることを理解されたい。
【0090】
さらに、接着層は、通常はより厚い接着層を作る積層体として適用され得、または通常は積層体より薄い層を作るオーバーコートとして適用され得る。オーバーコート層は、接着剤が電気光学材料層表面(または別の表面)上にコーティングされ得、第2の硬化がオーバーコーティング後に材料を硬化させるように、オーバーコートの前に第1の硬化が起こる二重硬化システムを利用し得る。オーバーコート層は、その下に存在する表面が粗く、薄い層のみが塗布される場合には粗くてもよく、またはオーバーコート層は、その下に存在する粗い表面を平坦化するために使用してもよい。平坦化は、粗い表面を平坦化するためにオーバーコート層が塗布される、例えば、任意の空隙を充填し、表面を滑らかにし、全体の厚さを最小限に増加させるのに十分な接着剤を添加する、単一の工程で行われ得る。あるいは、平坦化は2段階で行われ得る。オーバーコート層は粗い表面を最小限にコーティングするために塗布され、第2のコーティングは平坦化するために塗布される。別の選択肢では、オーバーコート層は滑らかな表面に塗布され得る。
【0091】
再び図3(および図4)を参照すると、いくつかの実施形態において、電気光学組立品は、電気光学材料層325、カプセル350および結合剤360を含む。ある特定の実施形態において、結合剤は、上述のように接着剤でもあり得る。例えば、結合剤はポリウレタンであり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、後部電極は、ディスプレイの画素を画定するようにパターン化された1またはそれを超える電極層を含む。例えば、1つの電極層を細長い行電極にパターン化することができ、第2の電極層を行電極に対して直角に走行する細長い列電極にパターン化することができ、画素は行電極と列電極の交差部によって画定される。あるいは、いくつかの実施形態において、1つの電極層は単一の連続する電極の形態を有し、第2の電極層は画素電極のマトリックスへとパターン化され、これらの各々がディスプレイの1つの画素を画定する。タッチペン、印字ヘッドまたはディスプレイから分離した同様の可動電極とともに使用することが意図される別のタイプの電気光学ディスプレイでは、電気光学材料層に隣接する層の1つのみが電極を備え、電気光学材料層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気光学材料層を損傷するのを防止することが意図される保護層である。
【0093】
再び図1図2図3図4および図5を参照すると、導電性光透過性層は、ポリマーフィルムまたは(例えば、比較的薄い光透過性電極を支持し得、比較的脆弱な電極を機械的損傷から保護する)同様の支持層を含み得、後部電極(適用可能な場合)は、支持部分および(例えば、ディスプレイの個々の画素を画定する)複数の画素電極を含む。いくつかの事例では、バックプレーンは、ディスプレイを動作するために必要とされる電位を画素電極上に生じさせるために(例えば、ディスプレイ上に所望の画像を与えるのに必要な表示状態に様々な画素を切り替えるために)使用される、非線形機器(例えば、薄膜トランジスタ)および/またはその他の回路をさらに備え得る。
【0094】
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語がここに列記されている。具体的な官能基および化学用語の定義が、以下でさらに詳述されている。本発明において、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.,表紙裏にしたがって特定され、具体的な官能基は、一般に、その中で記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般原理、ならびに具体的な官能性部分および反応性は、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,2nd Edition,Sausalito,2006に記載されている。
【0095】
本明細書で使用される「脂肪族」という用語は、必要に応じて1またはそれを超える官能基で置換された飽和および不飽和の、非芳香族、直鎖(すなわち、非分枝)、分枝鎖、非環状および環状(すなわち、炭素環式)炭化水素の両方を含む。当業者によって理解されるように、「脂肪族」は、本明細書では、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を含むがこれらに限定されないことが意図される。したがって、本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖、分枝鎖および環状アルキル基を含む。類似の慣例が、「アルケニル」、「アルキニル」などの他の一般用語に適用される。さらに、本明細書で使用される場合、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は、置換された基と置換されていない基の両方を包含する。ある特定の実施形態において、本明細書で使用される場合、「脂肪族」 は、特に明記しない限り、1~30の炭素原子を有する脂肪族基(環状、非環状、置換された、置換されていない、分枝または非分枝)を示すために使用される。脂肪族基の置換基には、安定な部分の形成をもたらす本明細書に記載されている置換基(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシなど、これらのそれぞれは、さらに置換されてもよく、また、さらに置換されなくてもよい)のいずれもが含まれるが、これらに限定されない。
【0096】
「芳香族」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味が与えられ、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である縮合多環(multiple fused rings)(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリル)を有する芳香族炭素環式基を指す。すなわち、少なくとも1つの環は共役π電子系を有し得、他の隣接する環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。
【0097】
「アリール」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味が与えられ、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、または少なくとも1つが芳香族である縮合多環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリルまたはフェナントリル)を有する、必要に応じて置換された芳香族炭素環式基を指す。すなわち、少なくとも1つの環は共役π電子系を有し得、他の隣接する環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る。アリール基は、本明細書に記載されるように、必要に応じて置換され得る。置換基には、前述の置換基のいずれも、すなわち安定な化合物の形成をもたらす、脂肪族部分に対してまたは本明細書に開示されている他の部分に対して列挙されている置換基が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、アリール基は、好ましくは3~14の炭素原子を有する安定な単環式または多環式不飽和部分であり、これらの各々は置換されていてもよく、また、置換されていなくてもよい。
【0098】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、当技術分野におけるそれらの通常の意味が与えられ、上記のアルキルと長さおよび可能な置換が類似しているが、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含有する不飽和脂肪族基を指す。
【0099】
式Iおよび式IIによって表されるカチオン性ドーパントの対イオンYn-のn-指数は、対イオン種の負電荷の値を示す。換言すれば、nが1である場合、対イオンは-1の電荷を有し、nが2である場合、対イオンは-2電荷を有するなどである。
【0100】
本発明のこれらおよび他の態様は、本発明のある特定の実施形態を例示することを意図しているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定することを意図していない以下の実施例を考慮するとさらに理解されるであろう。
【実施例
【0101】
ポリウレタン分散液とイオン性ドーパントの混合物。以下に示されている部は、重量を基準とする。
【0102】
比較例1A:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)および0.0500部の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(BMIM PF6)からなる混合物を作製した。
【0103】
比較例1B:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)および0.0340部の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(BMIM DCN)からなる混合物を作製した。
【0104】
比較例1C:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)および0.0373部の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム四フッ化ホウ素(BMIM BF4)からなる混合物を作製した。
【0105】
実施例1D1:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)およびIo-li-tec Nanomaterialsによって供給されIoLiLyte T2EGの商品名を有する、0.0500部の式IAによって表される化合物からなる混合物を作製した。
【0106】
実施例1D2:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)およびIo-li-tec Nanomaterialsによって供給されIoLiLyte T2EGの商品名を有する、0.2000部の式IAによって表される化合物からなる混合物を作製した。
【0107】
実施例1D3:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)およびIo-li-tec Nanomaterialsによって供給されIoLiLyte T2EGの商品名を有する、0.3500部の式IAによって表される化合物からなる混合物を作製した。
【0108】
実施例1D4:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)およびIo-li-tec Nanomaterialsによって供給されIoLiLyte T2EGの商品名を有する、0.5000部の式IAによって表される化合物からなる混合物を作製した。
【0109】
実施例1D5:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)およびIo-li-tec Nanomaterialsによって供給されIoLiLyte T2EGの商品名を有する、0.6230部の式IAによって表される化合物からなる混合物を作製した。本実施例のポリマードーパントのイオン含有量は、NMR実験により確認された比較例1A1のドーパントのイオン含有量と等しい。NMR法は、以下で記載されている。
【0110】
比較例1E:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)および0.0500部の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(BMIM PF6)からなる混合物を作製した。化学量論量のカルボジイミド架橋剤(Picassianによって供給されるXL702)を添加した(ポリウレタンのカルボン酸官能基に対するカルボジイミドのモル比1:1)。
【0111】
比較例1F:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)および0.6405部の式IAによって表される化合物からなるが、対イオンがエチルスルファートである混合物を作製した。本実施例のポリマードーパントのイオン含有量は、NMR分光法を用いる方法を介して確認された比較例1Aのドーパントのイオン含有量と等しい。化学量論量のカルボジイミド架橋剤(Picassianによって供給されるXL702)を添加した(ポリウレタンのカルボン酸官能基に対するカルボジイミドのモル比1:1)。
【0112】
実施例1G:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含量)および0.6405部の式IAによって表される化合物からなる混合物を作製した。本実施例のポリマードーパントのイオン含有量は、NMR実験により確認された比較例1Aのドーパントのイオン含有量と等しい。化学量論量のカルボジイミド架橋剤(Picassianによって供給されるXL702)を添加した(ポリウレタンのカルボン酸官能基に対するカルボジイミドのモル比1:1)。
【0113】
実施例1H1:286gのポリウレタン分散液A(35%の固形分含有量)および0.0500gのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート(BuN PF)からなる混合物を作製した。
【0114】
実施例1H2:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含有量)および0.1000部のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート(BuN PF)からなる混合物を作製した。
【0115】
実施例1H3:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含有量)からなり、0.1500部のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート(BuN PF)と混合された混合物を作製した。
【0116】
実施例1H4:286部のポリウレタン分散液A(35%の固形分含有量)および0.2000部のテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート(BuN PF)からなる混合物を作製した。
【0117】
以下の実施例2に記載されているように、比較例1A、1B、1C、1E、1F、1H1、1H2、1H3、1H4、および実施例1D1、1D2、1D3、1D4、1D5、および1Gからの接着剤組成物を使用して電気光学組立品を構築した。
【0118】
比較例2A-組立品の構築:(a)低エネルギー剥離シート上に電気光学材料層をコーティングすることによって、3層電気光学組立品を構築し、電気光学材料層は、炭化水素懸濁流体中に懸濁された負に帯電した白色粒子、正に帯電した黒色粒子を有するカプセル封入された電気泳動媒体を含む。カプセルをポリマー結合剤内に保持し;(b)次いで、比較例1Aの接着組成物を電気光学材料層の表面上にウェットコーティングし;(c)クロスドラフトオーブン内でコーティングを乾燥させ、(d)乾燥したコーティングをバックプレーン電極上に接着させた。接着層の厚さは約40μmであった。低エネルギー剥離シートを除去した後、電気光学材料層の露出した面をフロントプレーン電極に貼り付けて電気光学ディスプレイを得、25℃の温度および50%の相対湿度で5日間平衡化した。
【0119】
比較例2B:比較例1Bからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0120】
比較例2C:比較例1Cからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0121】
実施例2D1:実施例1D1からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0122】
実施例2D2:実施例1D2からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0123】
実施例2D3:実施例1D3からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0124】
実施例2D4:実施例1D4からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0125】
実施例2D5:実施例1D5からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0126】
比較例2E:比較例1Eからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0127】
比較例2F:比較例1Fからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0128】
実施例2G:実施例1Gからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0129】
比較例2H1:比較例1H1からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0130】
比較例2H2:比較例1H2からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0131】
比較例2H3:比較例1H3からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0132】
比較例2H4:比較例1H4からの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0133】
NMR分光法によるイオン含有量の決定:接着剤組成物中のドーパントのイオン含有量をH-NMR分光法によって決定した。具体的には、既知量のフェナントレンを既知量の接着剤組成物中に混合した。混合物をCDCl3中に溶解し、得られた溶液のH-NMRスペクトルを取得した。ドーパントのイオン含有量は、フェナントレンピークの積分との関連での対応するドーパントピークの積分によって測定した。
【0134】
光学的測定方法:各電気光学組立品の電気光学特性は、PR-650 SpectraScan比色計を使用して測定した。電場を使用して、その白色および黒色の極限状態へと、電気光学組立品を繰り返し誘導した。次いで、電気光学組立品を白または黒表示状態のいずれかへと誘導し、比色計を介してその反射率を測定した。異なる温度で測定を繰り返した。
【0135】
比色計測定から報告された値は、反射率値Lである。Lは、電気光学機器有効性の光学スイッチング性能を有する(ここで、Lは通常のCIE定義を有する)):
=116(R/R1/3-16、
ここで、Rは反射率であり、Rは標準反射率値である)。
【0136】
電気光学機器のコントラスト比CRは、暗状態の反射率に対する白色状態の反射率の比である。換言すれば、コントラスト比は、式
CR=RWS/RDS
によって表され、式中、RWSは、白色状態の反射率であり、RDSは、機器の暗状態の反射率である。
【0137】
コントラスト比は、RWSおよびRDSの反射率測定から上記の式を使用して決定した。より具体的には、装置の電極間に15Vの電圧を0.4秒間印加した後、Macbeth分光光度濃度計(spectrophotodensiometer)(GretagMacbethによって供給されたSpectroEye)を用いてRWS(白色状態の反射率)を測定した。次いで、極を切り替え、装置の電極間に15Vの電圧を0.4秒間印加した後、暗状態の反射率を測定した。より高いコントラスト比が望ましい。
【0138】
表1は、0℃での電気光学組立品の電気光学特性に対するこの評価の結果を示す。接着剤組成物は、架橋されていないポリウレタンを含む。
【0139】
表2は、0℃での電気光学組立品の電気光学特性に対するこの評価の結果を示す。接着剤組成物は、架橋されたポリウレタンを含む。
【0140】
表3は、25℃での電気光学組立品の電気光学特性に対するこの評価の結果を示す。接着剤組成物は、架橋されたポリウレタンを含む。
【0141】
値は、白色状態(WS)および黒色状態(DS)におけるL(明度値)を表す。同じ温度での対応するディスプレイについてのWSとDSの間でのLの差DR。
【0142】
表1:0℃での電気光学組立品の光学性能。接着層の接着剤組成物は、架橋されていないポリウレタンを含む。
【表1】
【0143】
表2:0℃での電気光学組立品の光学性能。接着層の接着剤組成物は、架橋されたポリウレタンを含む。
【表2】
【0144】
表3:25℃での電気光学組立品の光学性能。接着層の接着剤組成物は、架橋されたポリウレタンを含む。
【表3】
【0145】
の値が高いほど、表示状態の外観がより明るくなる。したがって、白色状態(WS)については高い値が好ましく、黒色状態(DS)については低い値が好ましい。より大きいDRは、より良好な光学性能に対応する。データは、本発明の実施例2D5および2Gが、比較例2A1、2B、2C、2Eおよび2Fと比較して、低温でより良好な電気光学性能を示すことを示している。上記のように、比較例2A1、2B、2Cおよび2Eはカチオン性ドーパントを含む。比較例2Fは、カチオン性ポリマードーパントを含むが、フッ素化されていない対イオンを有する。本発明の実施例2D5および2Gは、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子対イオンを有するカチオン性ポリマードーパントを含む。また、イオン含有量は全ての実施例において同様である。
【0146】
比較例3A:330gの水性フィルム形成ポリウレタン分散液(30%の固形分)、1部のN-メチルピロリドン中に溶解された1.0部の1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(BMIM PF6)および0.05部の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)光開始剤からなる混合物を作製し、混合した。
【0147】
実施例3B:330部の実施例3Aで使用された水性フィルム形成ポリウレタン分散液(30%の固形分)、1部のN-メチルピロリドン中に溶解された、0.1部の式IIAで表される化合物および光開始剤からなる混合物を作製した。式IIAの化合物は、Hong Chenら、‘‘Polymerized Ionic Liquids:The Effect of Random Copolymer Composition on Ion Conduction’’,Macromolecules,2009,42,4809-4816に記載されているように、2-ブロモエチルアクリラートと1-エチル-1H-イミダゾールの反応によって合成した。
【0148】
比較例4A-電気光学組立品の構築:(a)低エネルギー剥離シート上に電気光学材料層をコーティングすることによって、3層電気光学組立品を構築し、電気光学材料層は、炭化水素懸濁流体中に懸濁された負に帯電した白色粒子、正に帯電した黒色粒子を有するカプセル封入された電気泳動媒体を含む。カプセルをポリマー結合剤内に保持し;(b)次いで、比較例3Aの接着組成物を電気光学材料層の表面上にウェットコーティングし;(c)コーティングをUV光に露光させてポリマーを硬化し、(d)乾燥したコーティングをバックプレーン電極上に接着させた。接着層の厚さは約40μmであった。低エネルギー剥離シートを除去した後、電気光学材料層の露出した面をフロントプレーン電極に貼り付けて電気光学ディスプレイを得、25℃の温度および50%の相対湿度で5日間平衡化した。
【0149】
比較例4A:比較例3Aからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0150】
実施例4B:実施例3Bからの接着剤組成物を使用した電気光学組立品。
【0151】
0℃で上記のように(光学的測定方法)、実施例4Aおよび4Bの電気光学組立品の電気光学特性を測定した。
【0152】
表4は、0℃での電気光学組立品の電気光学特性に対するこの評価の結果を示す。
【表4】
【0153】
データは、本発明の実施例4B(重合性カチオン性ドーパントを含む)が、比較例4A(非重合性ドーパントを含む)と比較して、低温でより良好な電気光学性能を示すことを示している。
【0154】
理論に束縛されることを望むものではないが、小分子として接着層中に存在するドーパントは、層内で拡散および移動し、それら自体の相またはドメインに分離し得る。これは、低導電性ドメインと高導電率ドメインを有し、接着層の全体的な体積抵抗率を増加させ、その結果、電気光学組立品の電気光学スイッチング性能を低下させる接着層を作出し得る。移動性が著しくより低いことがあり、接着層を通って拡散する可能性がより低いことがあるポリマードーパントでは、このようなドーパント分離が起こる可能性はより低い。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
ポリウレタンとカチオン性ポリマードーパントとを含む接着剤組成物であって、前記カチオン性ポリマードーパントは、式Iによって表され、
【化8】
式中、
R3、R4、R5は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキルもしくはアルケニル基、または-(CH -Q2-R2基であり、bは2~5であり;
R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH 、-NHR1’および-NR1’R1’’からなる群から選択され;
Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有し;
R1’、R1’’は、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基であり;
前記カチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトンであり;
n- は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは1~6である;
接着剤組成物。
(項2)
前記多原子対イオンが少なくとも3つのフッ素原子を含む、上記項1に記載の接着剤組成物。
(項3)
前記接着剤組成物が、前記接着剤組成物の総固形分の約0.3重量%~約3重量%のカチオン性ポリマードーパントを含む、上記項1に記載の接着剤組成物。
(項4)
前記接着剤組成物が、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニルおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料をさらに含む、上記項1に記載の接着剤組成物。
(項5)
前記接着剤組成物が架橋剤をさらに含む、上記項1に記載の接着剤組成物。
(項6)
前記架橋剤が、イソシアナート、エポキシ、ヒドロキシル、アジリジン、アミンおよびこ
れらの組み合わせからなる群から選択される官能基を含む、上記項5に記載の接着剤組成物。
(項7)
前記カチオン性ポリマードーパントの前記対イオンY n- が、トリフルオロアセタート、トリフルオロメチルスルホナート、テトラフルオロボラート、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロケイ酸、ノナフルオロブタンスルホナート、トリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロメチルスルホニル-N-シアノアミド、2,2,2-トリフルオロ-N-[(トリフルオロメチル)スルホニル]アセトアミド、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、1,1,1-トリフルオロ-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド、ビス(ペルフルオロエチルスルホニル)アミド、ビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロトリフルオロメチルスルホニルイミド、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドおよび(トリフルオロメチルスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、上記項1に記載の接着剤組成物。
(項8)
前記カチオン性ポリマードーパントが式IAによって表され、
【化9】
式中、
R1、R2は、独立して、水素、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基、アリール基、-OH、-SH、-NH 、-NHR1’および-NR1’R1’’からなる群から選択され;
R6、R7は、独立して、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキルまたはアルケニル基であり;
Q1、Q2は、独立して、エチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、前記ポリエチレンオキシドは、2~100の総エチレンオキシド単位を有し、前記ポリプロピレンオキシドは、2~100のプロピレンオキシド単位を有し;
R1’、R1’’は、1~30の炭素原子を有する鎖を有するアルキル基であり;
前記カチオン性ポリマードーパントのカチオン性部分の数平均分子量は、約400ダルトン~約25,000ダルトンであり;
n- は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは1~6である;
上記項1に記載の接着剤組成物。
(項9)
前記カチオン性ポリマードーパントが、式IBによって表され、
【化10】
式中、R8は、12~18の炭素原子を有する、アルキルおよびアルケニル官能基からなる群から選択される、
上記項8に記載の接着剤組成物。
(項10)
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
複数の画素電極を含む後部電極と
を備え、
前記第1の接着層は上記項1に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
(項11)
前記電気光学組立品が、前記導電性光透過性層と前記電気光学材料層の間に位置する第2の接着層をさらに備え、前記第2の接着層は、上記項1に記載の接着剤組成物を使用して形成される、上記項10に記載の電気光学組立品。
(項12)
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層は上記項1に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
(項13)
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
第1の剥離シートと;
第1の接着層と;
電気光学材料層と;
第2の接着層と;
第2の剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層および前記第2の接着層の少なくとも1つが上記項1に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
(項14)
ポリウレタンと重合性カチオン性ドーパントとを含む接着剤組成物であって、前記重合性カチオン性ドーパントは、式IIによって表され、
【化11】
式中、
R9は、水素またはメチル基であり;
R10は、1~10の炭素原子を有するアルキル基であり;
qは、1~5であり;
n- は、少なくとも2つのフッ素原子を含む多原子アニオンである対イオンであり;nは、1~6である、
接着剤組成物。
(項15)
前記接着剤組成物が、前記接着剤組成物の総固形分の約0.05重量%~約5重量%の重合性カチオン性ドーパントを含む、上記項14に記載の接着剤組成物。
(項16)
前記カチオン性ポリマードーパントの前記対イオンY n- が、トリフルオロアセタート、トリフルオロメチルスルホナート、テトラフルオロボラート、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロホスファート、ヘキサフルオロケイ酸、ノナフルオロブタンスルホナート、トリス(ペルフルオロアルキル)トリフルオロホスファート、2,2,2-トリフルオロメチルスルホニル-N-シアノアミド、2,2,2-トリフルオロ-N-[(トリフルオロメチル)スルホニル]アセトアミド、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、1,1,1-トリフルオロ-N-((トリフルオロメチル)スルホニル)メタンスルホンアミド、ビス(ペルフルオロエチルスルホニル)アミド、ビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロトリフルオロメチルスルホニルイミド、(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、(トリフルオロメチルスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドおよび(トリフルオロメチルスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドからなる群から選択される、上記項14に記載の接着剤組成物。
(項17)
前記重合性カチオン性ドーパントが、式IIA
【化12】
によって表される、上記項14に記載の接着剤組成物。
(項18)
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
複数の画素電極を含む後部電極層と
を備え、
前記第1の接着層は上記項14に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
(項19)
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
導電性光透過性層と;
電気光学材料層と;
第1の接着層と;
剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層は上記項14に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
(項20)
電気光学組立品であって、前記電気光学組立品は、順に、
第1の剥離シートと;
第1の接着層と;
電気光学材料層と;
第2の接着層と;
第2の剥離シートと
を備え、
前記第1の接着層および前記第2の接着層の少なくとも1つが上記項14に記載の接着剤組成物を用いて形成される、電気光学組立品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6