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特許7383836自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素及びエアフィルタ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素及びエアフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20231113BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20231113BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20231113BHJP
【FI】
B60H3/06 611Z
B01D46/52 B
F24F8/108 210
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022563933
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2021060298
(87)【国際公開番号】W WO2021214094
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】102020110940.7
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ,エリック
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102017007497(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02692559(EP,A1)
【文献】特開2017-006818(JP,A)
【文献】実開平07-033713(JP,U)
【文献】実開平06-055822(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F24F 8/108、13/28
B01D 39/00-39/20
B01D 46/00-46/54
F02M 35/00-35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(16)を有する自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素であって、前記フレーム(16)は、前記フィルタ要素(10)のフィルタ材料(18)を少なくとも部分的に取り囲み、前記フレーム(16)に含まれる弾性変形可能な前壁(20)は、挿入方向(28)に対して垂直に延在し、前記フィルタ要素(10)は、前記エアフィルタ装置のハウジング(12)の収容スペース(14)に前記挿入方向(28)で挿入可能であり、前記収容スペース(14)を閉鎖するために形成された前記エアフィルタ装置のカバー(34)が、前記フレーム(16)に配置された少なくとも1つの固定要素(32)に固定可能である、フィルタ要素において、
前記フレーム(16)に、少なくとも1つの挿入ベベル(36)が形成されており、前記フィルタ要素(10)が前記収容スペース(14)に挿入される場合、前記挿入ベベル(36)により前記前壁(20)を弾性変形状態に移行させ、
前記弾性変形状態では、前記前壁の長手延在範囲(50)は、前壁(20)の前記弾性変形していない初期状態よりも小さくなり、
前記固定要素(32)は、前記フィルタ要素(10)に含まれ前記挿入ベベル(36)を有する、それ自体剛性な部材(30)と一体的に形成されている
ことを特徴とする、フィルタ要素。
【請求項2】
前記固定要素(32)は、前記前壁(20)に配置され、前記挿入方向(28)とは反対方向に前壁(20)から突出するように形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ要素。
【請求項3】
前記挿入ベベル(36)は、
前記前壁(20)に近い端部領域において、前記前壁(20)から離れた前記挿入ベベル(36)の端部領域よりも、前記前壁(20)の前記長手延在範囲(50)の方向により大きな幅を有する楔形を有し、
前記フレーム(16)の側壁(24)に対して傾斜する少なくとも1つのガイド傾斜部(52、54)によって形成される
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のフィルタ要素。
【請求項4】
前記部材(30)は、前記前壁(20)に接触する接触フランジ(60)と、前記フレーム(16)の側壁(24)に接触する基台部分(56)と、を有する
ことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のフィルタ要素。
【請求項5】
前記挿入ベベル(36)は、前記基台部分(56)と前記挿入ベベル(36)の少なくとも1つのガイド傾斜部(52、54)との間に配置されている補強要素(58)を含む
ことを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ要素。
【請求項6】
前記挿入ベベル(36)は、端面(62)を有し、該端面(62)によって接合部(64)が設けられ、
前記接合部(64)は、前記フィルタ要素(10)が前記収容スペース(14)に導入される場合、前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)の保持要素(66)に係合するように形成されている
ことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のフィルタ要素。
【請求項7】
前記少なくとも1つの固定要素(32)は、少なくとも1つの保持部分(40、42)を有し、
前記少なくとも1つの保持部分(40、42)は、前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)にカバー(34)を固定するために、前記カバー(34)の対応する保持部分(78)によって係合できる
ことを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のフィルタ要素。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のフィルタ要素(10)を有する自動車用のエアフィルタ装置であって、
前記フィルタ要素(10)は、前記エアフィルタ装置の前記ハウジング(12)内に形成された収容スペース(14)に導入されており、
前記収容スペース(14)は、前記エアフィルタ装置のカバー(34)を使用して閉鎖可能であり、
前記カバー(34)は、前記フィルタ要素(10)の前記少なくとも1つの固定要素(32)に固定可能である、
エアフィルタ装置。
【請求項9】
前記ハウジング(12)の少なくとも1つのハウジング壁(82)上に、前記少なくとも1つの固定要素(32)が収容される収容部(68)が形成されており、
前記収容部(68)は、前記挿入ベベル(36)の接合部(64)が接触する保持要素(66)を含む
ことを特徴とする、請求項8に記載のエアフィルタ装置。
【請求項10】
前記カバー(34)は、前記カバー(34)の基体(70)に対して回転可能なロック要素(46)を有し、前記ロック要素(46)の閉鎖位置において、前記ロック要素(46)の少なくとも1つの保持部分(78)が、前記固定要素(32)の対応する保持部分(40、42)に係合する
ことを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載のエアフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのフィルタ材料を少なくとも部分的に取り囲むフレームを有する、自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素に関する。フレームは、挿入方向に対して実質的に垂直に延在する、弾性変形可能な前壁を含む。この挿入方向で、フィルタ要素は、エアフィルタ装置のハウジングの収容スペースに挿入可能である。フレームには、少なくとも1つの固定要素が配置されている。少なくとも1つの固定要素には、収容スペースを閉鎖するために形成されたエアフィルタ装置のカバーが固定可能である。更に、本発明は、そのようなフィルタ要素を有するエアフィルタ装置に関する。
【0002】
下記特許文献1には、フィルタ材料がフレームによって縁取られている、自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素が記載されている。フレームは、挿入方向に対して垂直に延在する前壁を有し、この挿入方向で、フィルタ要素は、エアフィルタ装置のハウジング内に挿入される。挿入方向に対して垂直に且つ互いに対向する、前壁の両側には、接続ウェブを介して前壁に接続されている固定要素がそれぞれ配置されている。固定要素には貫通開口部が形成されており、貫通開口部にロックピンが挿入される。ロックピンは、エアフィルタハウジングのカバーに回転可能に配置されている。フィルタ要素がエアフィルタハウジングに取り付けられると、ロックピンは、貫通開口部を貫通し、かつ回転することができ、その結果、カバーがハウジングに固定されて、それによりハウジングが閉鎖される。フィルタ要素をハウジングに挿入するために、前壁を弾性変形させるか又は圧縮してもよい。前壁をこのように圧縮する目的のために、固定要素には、互いに向かって動くことができる操作タブが配置されている。このようにして前壁が弾性変形されている間に、フィルタ要素をハウジング内に押し込むことができる。その後、操作タブが再び解放されると、固定要素は、ハウジングのそれぞれの壁に形成されたウェブに後方係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許第10 2017 007 497 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ要素のこのような構成は、前壁を弾性変形させるために、フレームに保持されたフィルタ要素をハウジングに挿入する間、両方の操作タブに外側から同時に圧力を加えなければならないことを意味する。これにより、フィルタ要素の取り扱いがいくらか面倒になる。
【0005】
したがって、本発明の課題は、特に容易にエアフィルタ装置のハウジング内に設置することができる、上述した種類のフィルタ要素と、そのようなフィルタ要素を備えるエアフィルタ装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1の特徴を有するフィルタ要素及び請求項8の特徴を有するエアフィルタ装置によって解決される。本発明の目的に応じた発展形態を伴う有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明に係る自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素は、フィルタ要素のフィルタ材料を少なくとも部分的に取り囲むフレームを有する。フレームは、弾性変形可能な前壁を含む。前壁は、挿入方向に対して垂直に延在し、フィルタ要素は、その挿入方向で、エアフィルタ装置のハウジング(以下、「エアフィルタハウジング」又は「ハウジング」とも称する)の収容スペースに挿入可能である。フレームには、少なくとも1つの固定要素が配置されている。少なくとも1つの固定要素には、収容スペースを閉鎖するために形成されたエアフィルタ装置のカバーが固定可能である。更に、フレームには、少なくとも1つの挿入ベベルが形成されており、その挿入ベベルによって、フィルタ要素が収容スペースに挿入される場合、前壁を弾性変形状態に移行させることができる。弾性変形状態では、前壁の長手延在範囲は、前壁が変形されていない初期状態よりも小さく、この特性に基づいて、前記前壁は、フィルタ要素の前壁に対してより狭いハウジング開口部によって、ハウジングの収容スペース内にアンダーカット形状で保持されることができる。
【0008】
挿入ベベルと一体に形成された固定要素は、前壁の領域でフィルタ要素のフレームに取り付けられた、それ自体剛性な部材によって設けられる。したがって、一方では、ハウジング開口部を通して収容スペースにフィルタ要素を押し込む場合、挿入ベベルに加えられる力は、前壁の弾性変形に直接使用され、他方では、エアフィルタハウジングにおけるカバーの取付又は保持をもたらすロック要素は、固定要素と良好に協働する。
【0009】
したがって、フレームに形成された挿入ベベルは、その収容スペースにフィルタ要素を押し込む場合、前壁の弾性変形を自動的にもたらし、フィルタ要素がその設置位置に到達すると、前壁は、再びその本来の形態へとすぐに戻り、それによって、フィルタ要素は、ハウジング内にアンダーカット形状で保持される。挿入方向に対して垂直に、かつ前壁の高さに対して垂直に延びる長手方向で、前壁を圧縮又は弾性的に変形させるために、特別な操作タブなどは不要である。むしろ、フィルタ要素を挿入方向で収容スペースに押し込むだけで十分であり、その際、挿入ベベルは、前壁の弾性変形をもたらす。なぜなら、エアフィルタハウジングに挿入又は押し込む際に挿入ベベルに作用する力は、必然的に前壁を弾性変形状態にするからである。その結果、フィルタ要素をハウジング内に容易に設置し、かつハウジング内に固定することができる。
【0010】
少なくとも1つの挿入ベベルを有するフィルタ要素では、フィルタ要素が収容スペースに設置又は導入されている場合にのみ、自動車のエアフィルタ装置を動作させることができることが特に利点である。なぜなら、エアフィルタ装置のカバーをエアフィルタハウジングに固定するために、フィルタ要素の構成要素である少なくとも1つの固定要素が必要だからである。換言すれば、フィルタ要素がハウジングの収容スペースに導入されていない場合、カバーをハウジングに取り付けることはできない。これにより、エアフィルタ装置を不適切に動作させることを防ぐことができる。
【0011】
少なくとも1つの固定要素が挿入ベベルと一体に形成されていることにより、フィルタ要素がハウジングに対してアンダーカット形状のその設置位置に達するとすぐに、少なくとも1つの固定要素が、エアフィルタハウジングでのカバーの組立又は取付けのために正しい位置に整列されることが、同時にもたらされる。
【0012】
エアフィルタハウジングにカバーを確実に取り付けるためには、フィルタ要素のフレームに、カバーを締結又は固定するために用いられるただ1つ又は正確に1つの固定要素が配置されていれば十分である。これにより、ハウジングへのカバーの取付けも簡単になるのは、カバーを使用して収容スペースを閉鎖するために、ただ1つのロック要素が固定要素と協働すればよいからである。その場合、フィルタ要素は、最初に、挿入ベベル及び固定要素を担持する部材を有するフレームの側壁とは反対側の側面で、ハウジングの開口部を通して収容スペースに斜めに挿入され、ハウジング突起の後方で固定され、次いで、角部は、挿入ベベルを用いて収容スペースに押し込まれる。
【0013】
特に、固定要素が挿入方向とは反対方向に前壁から突出するように設けることができる。これにより、カバーのロック要素が固定要素に容易に接続できることが保証される。特に、固定要素は、カバーのロック要素によって取り囲まれてもよい。
【0014】
好適には、挿入ベベルは、楔形を有する。その楔形により挿入ベベルは、前壁に近い端部領域において、前壁から離れた端部領域よりも、前壁の長手延在範囲の方向により大きな幅を有し、フレームの側壁に対して傾斜する少なくとも1つのガイド傾斜部によって形成される。このような楔形の挿入ベベルによって、収容スペースにフィルタ要素を挿入する場合に、前壁の弾性変形を効果的にもたらすことができる。なぜなら、楔形の挿入ベベルは、それ自体が剛性に構成されているからであり、これは、例えば、挿入ベベルの少なくとも1つの斜めに配置されたガイド傾斜部に作用する力が、弾性前壁の変形又は降伏に確実につながることをもたらす。
【0015】
好適には、挿入ベベル及び固定要素を含む部材は、前壁に接触する接触フランジと、フレームの側壁に接触する基台部分と、を有する。部材を前壁及び側壁に広い範囲で接続することによって、フィルタ要素又はフィルタ要素のフレームとの安定した接続が保証される。したがって、この構成は、力が一方では挿入ベベルに加えられ、他方では固定要素に加えられることに対して堅牢である。
【0016】
好適には、挿入ベベルは、基台部分と挿入ベベルの少なくとも1つのガイド傾斜部との間に配置されている補強要素を含む。これによって、挿入ベベルは、繊細な構成の場合に必要な剛性が、材料を節約できる形状で与えられる。
【0017】
好適には、挿入ベベルは、端面を有し、その端面によって接合部が設けられている。接合部は、フィルタ要素が収容スペースに導入されると、エアフィルタハウジングの保持要素に後方係合するように形成されている。したがって、ハウジングの保持要素が接合部と接触しているときに、フィルタ要素が意図せずに収容スペースから取り外すことができないことが確保される。
【0018】
これは、フィルタ要素が上下逆さまに設置される場合、すなわち、重力に逆らって収容スペースに挿入される場合に特に有利である。なぜなら、挿入ベベルの端面によって設けられた接合部は、収容スペースに配置されたフィルタ要素が重力によって収容スペースから再び外側へ移動しないことをもたらすからである。すなわち、フィルタ要素は、カバーをハウジングに取り付ける前に手で又は他の手段を使用して固定する必要がない。むしろ、保持要素上の接合部のアンダーカット形状での接触部分は、フィルタ要素を収容スペース内のその所定の位置に固定し、カバーが収容スペースを閉鎖するために固定要素に固着される又は固定される。
【0019】
挿入ベベルの端面が前壁と同一面である場合、フィルタ要素の特にコンパクトな構成が達成可能である。加えて、挿入ベベルは、前壁に非常に直接的に力を誘導し、前壁の弾性変形をもたらす。
【0020】
カバーがエアフィルタハウジングに固定されたとき、カバーの対応する保持部分によって後方係合される少なくとも1つの保持部分を、少なくとも1つの固定要素が有する場合もまた更に有利であることが示されている。したがって、ハウジングへのカバーの非常に確実な固定は、少なくとも1つの固定要素を使用して達成可能である。
【0021】
少なくとも1つの保持部分は、特に、前壁に対して平行に固定要素の基体から突出するウェブ又は翼部の形状で形成することができ、これらは、カバーの対応する保持部分によって後方係合することができる。なぜなら、このような翼部には、対応する保持部分が非常に良好に接続できるからである。
【0022】
特に、このような翼部が端部領域にランプ状の形状を有する場合、カバーを固定する際に対応する保持部分がそれに沿って移動され、ハウジングへカバーが非常に密接に着座する接触部を達成することができる。
【0023】
自動車用の本発明に係るエアフィルタ装置は、本発明に係るフィルタ要素を有し、フィルタ要素は、エアフィルタ装置のハウジング内に形成された収容スペースに導入される。
【0024】
エアフィルタ装置は、特に、自動車の空調システム又は換気装置のエアフィルタ装置として形成することができる。更に、エアフィルタ装置は、自動車の内燃機関の吸気管用に、すなわち、内燃機関によって吸引される空気用のフィルタとして設けることができる。
【0025】
好適には、収容スペースは、エアフィルタ装置のカバーによって閉鎖することができ、カバーは、フィルタ要素の少なくとも1つの固定要素に固定可能である。このようにして、フィルタ要素が正確にエアフィルタハウジングに取り付けられた場合のみ、カバーを使用して収容スペースを閉鎖できることが確保される。
【0026】
好適には、ハウジングの少なくとも1つのハウジング壁には、少なくとも1つの固定要素が収容される収容部が形成される。この場合、収容部は、フィルタ要素の挿入ベベルの端面に接触する保持要素を含む。すなわち、ハウジングの収容スペースにフィルタ要素が導入又は押し込まれた場合、端面、正確に言えば、挿入ベベルの接合部を形成する端面の部分が、収容スペースの保持要素によって後方係合されることにより、ハウジングの収容スペースにおけるフィルタ要素の事前固定が達成されている。すなわち、フィルタ要素が、意図せずに収容スペースから外側に出るおそれはない。
【0027】
これは、フィルタ要素がハウジングへの設置時に重力に逆らってエアフィルタハウジング内に形成された収容スペースに導入されるときに特に重要である。したがって、フィルタ要素の上下逆さまでの設置は、特に容易な方法で可能になっている。
【0028】
好適には、カバーは、カバーの基体に対して回転可能なロック要素を有する。この場合、ロック要素の閉鎖位置では、ロック要素の少なくとも1つの保持部分は、固定要素の対応する保持部分に後方係合する。このようにして、ロック要素と固定要素とが協働することにより、ハウジングへのカバーの特に確実な固定が達成可能である。特に、ロック要素は、回転ロック部の形状で形成することができる。
【0029】
本発明に係るフィルタ要素について説明した利点及び好ましい実施形態は、本発明に係るエアフィルタ装置にも適用され、その逆もまた同様である。
【0030】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、好ましい実施形態の以下の説明から、図面を参照して明らかとなる。上記の説明において挙げた特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下で図面の説明で挙げる、かつ/又は図に単独で示す特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ記載されている組み合わせでのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】自動車のエアフィルタ装置用のフィルタ要素の概略斜視図である。
図2】部材がフレーム上に配置され、その部材によって挿入ベベル及び固定要素が設けられている、フィルタ要素のフレームの領域の一部の拡大詳細図である。
図3図2に示される部材の拡大斜視図である。
図4】部材に側方から力が加えられることによるフィルタ要素のフレームの前壁の弾性変形を示す図である。
図5図1に示されるフィルタ要素を導入することができる、エアフィルタハウジングの詳細斜視図である。
図6図5に示されるハウジングの一部の部分断面図である。
図7図5に示されるハウジングに形成された図1に示されるフィルタ要素用の収容スペースを閉鎖することができる、エアフィルタ装置のカバーの一部の図である。
図8図7に示されるカバーの下側の拡大図である。
図9図5に示されるハウジングに図1に示されるフィルタ要素を挿入するときの第1の工程を示す部分断面斜視図である。
図10図5に示されるハウジングに図1に示されるフィルタ要素を挿入するときの第2の工程を示す部分断面斜視図である。
図11図3に示される部材の挿入ベベルに力を加えたことによる図1に示されるフィルタ要素の前壁の弾性変形を示す図である。
図12】ハウジングの側面上に形成された保持要素が部材によって後方係合される状態である、前壁の弾性変形していない初期状態への戻りを示す図である。
図13図5に示されるハウジングの収容スペースに図1に示されるフィルタ要素が配置され、該ハウジングに図7に示されるカバーを取り付けるときの第1の工程を示す図である。
図14】カバーのハウジング上への載置と、回転ロック部として形成されたカバーのロック要素の回転とを示す図である。
図15】設置したフィルタ要素及びハウジングに固定されたカバーを有するハウジングの一部の部分断面図である。
図16図14に示されるエアフィルタ装置の状態を示す部分断面平面図である。
図17図15に示されるエアフィルタ装置の状態、すなわち、回転ロック部が閉鎖位置にある状態を示す部分断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図において、同一又は機能的に同一の要素には、同じ参照符号が付与されている。
【0033】
図1には、自動車のエアフィルタ装置のハウジング12(図5を参照のこと)内に設置するためのフィルタ要素10の概略斜視図が示されている。エアフィルタ装置のハウジング12内には収容スペース14(図5を参照のこと)が形成されており、収容スペース14には、図1に示されるフィルタ要素10を導入又は設置することができる。
【0034】
フィルタ要素10は、フィルタ要素10のフィルタ材料18を取り囲む又は縁取りするフレーム16を含む。フィルタ要素10がプリーツフィルタとして形成されている場合、フィルタ材料18は、本実施形態において例示的に示されるように、多数のプリーツを有してもよい。しかしながら、フィルタ要素10の動作時に空気が貫流可能なフィルタ材料18の他の構成もまた可能である。
【0035】
本実施形態においてはフィルタ材料18を円周側において完全に取り囲む又は包囲するフレーム16は、前壁20と、本実施形態において前壁20とは反対側の後壁22と、を含む。前壁20及び後壁22は、フレーム16の2つの側壁24、26を介して互いに接続されている。
【0036】
フィルタ要素10は、図1に矢印によって具体的に示されている挿入方向28で収容スペース14(図5を参照のこと)に導入することができる。それに応じて、側壁24、26は、前壁20から開始して挿入方向28に沿って後壁22まで延在する。すなわち、本実施形態では、フレーム16は、実質的に長方形に形成されているが、収容スペース14の形状に応じて、フレーム16の他の形状もまた可能である。
【0037】
前壁20の領域では、フレーム16に部材30が配置されており、部材30は、図2ではフレーム16の拡大詳細図で示されており、図3では更に斜視図で、フレーム16とは別に示されている。
【0038】
一方、部材30には、カバー34(図7を参照のこと)をハウジング12に固定するために使用される固定要素32が設けられている。更に、部材30には挿入ベベル36が設けられ、挿入ベベル36の機能は、図4を参照して詳細に説明される。
【0039】
本実施形態において第1の翼部40及び第2の翼部42の形態の保持部分を有するジャーナル38の形状で形成された固定要素32は、前壁20の前側44から突出する。、カバー34は、回転ロック部46(図7を参照のこと)として形成されたロック要素を使用して、前壁20から離間された、固定要素32の翼部40、42に固定することができる。したがって、カバー34をフィルタ要素10の固定要素32に固定することによって、固定要素32は、フィルタ要素10がハウジング12に設置されるときにのみカバー34をハウジング12に取り付け可能となることを確実にする。
【0040】
更に、カバー34がまだハウジング12に固定される前に、挿入ベベル36を有する部材30を使用して、ハウジング12の収容スペース14内でフィルタ要素10を予め固定することが達成される(図12及び図13を参照のこと)。
【0041】
部材30の挿入ベベル36は、フィルタ要素10がハウジング12内に形成された収容スペース14(図5を参照のこと)内に挿入方向28で挿入される又は押し込まれるとき、最初に前壁20の弾性変形をもたらす。なぜなら、挿入ベベル36が、剛性の収容スペース14に設けられた所定の入口幅に対してフィルタ要素10を拡張するため、その結果、押し込み時に、挿入ベベル36に生じる力又は圧力がフィルタ要素の前壁20に作用するからである。前壁20の対応する圧縮は、図4に概略的に示されている。この場合、図4に矢印48により具体的に示されている挿入ベベル36に加えられる力によって、前壁20は、圧縮又は弾性変形を受ける。
【0042】
前壁20の弾性変形状態又は圧縮状態では、挿入方向28に対して垂直な前壁20によって占められる長手延在範囲50(図1を参照のこと)は、前壁20が変形されていない前壁20の初期状態よりも小さい。前壁20の領域において挿入方向28に対して垂直な、フレーム16の短縮された長手延在範囲50は、図4に示されるように、特に、前壁20がフィルタ材料18に向かって、及び/又はフィルタ材料18から離れるように曲げられる、又は折り曲げられることによってもたらされる。このような前壁20のそれぞれの弾性変形は、本実施形態では、部材30によって設けられる挿入ベベル36によってもたらされる。挿入ベベル36は、フィルタ要素10と共にハウジング12のより狭い開口部を通して収容スペース14内に押し込まれ、収容スペース14内には再び十分な空間があるため、フィルタ要素10は拡張して再びその元の形状に戻ることができる。
【0043】
例えば、挿入ベベル36は、部材30が前壁20に取り付けられている端部領域において、側壁24(図4を参照のこと)に対して斜めに整列されている2つのガイド傾斜部52、54(図3を参照のこと)を含んでもよい。この場合、前壁20を圧縮させる又は弾性変形させる力(矢印48を参照のこと)は、これらのガイド傾斜部52、54に加えられる。
【0044】
本実施形態では、挿入ベベル36はまた、フレーム16の側壁24に接触するプレート状の基台部分56を含む(図2及び図4を参照のこと)。基台部分56とガイド傾斜部52、54との間には、挿入ベベル36の補強要素58が配置されている(図3を参照のこと)。それによって、挿入ベベル36には全体として高い剛性又は硬直性が与えられる。換言すれば、ガイド傾斜部52、54は、部材30の領域において、前壁20が挿入方向28に対して垂直に、又は長手延在範囲50の方向に、図4において矢印48によって具体的に示されている力を受けるとき、プレート形状の基台部分56に向かって移動することができない。
【0045】
挿入ベベル36又は部材30は更に、前壁20に沿って延在し、前壁20の前側44に接触するか又は前壁20の前側44の上に載る接触フランジ60を有する。
【0046】
接触フランジ60及び補強要素58の上側62は、前壁20と同一面である挿入ベベル36の端面の一部をなしている。ガイド傾斜部52、54の領域には、挿入ベベル36のこの端面によって、接合部64が設けられている。フィルタ要素10が収容スペース14内に導入されると、接合部64は、エアフィルタハウジング12の側部に設けられているか、又は形成されている、それぞれの保持要素66(図5及び図6を参照のこと)に後方係合する。
【0047】
これに関して、特に図6から、それぞれの保持要素66が保持トラフ68として形成された収容部の一部をなしていることが明らかであり、収容部には、固定要素32のシャフト又はジャーナル38を翼部40、42と共に導入することができる。この場合、保持要素66は、固定要素32を配置することができる保持トラフ68の収容スペースを円周方向に部分的に画定するアームの形態で形成されている。
【0048】
固定要素32用の収容部として用いる保持トラフ68は、本実施形態では、ハウジング12の側方ハウジング壁82に形成されている。特に、保持トラフ68は、ハウジング壁82と一体に形成することができ(図5及び図6を参照のこと)、ハウジング壁82は、一方の側に向かって収容スペース14を画定する。
【0049】
図7には、外側から見たエアフィルタ装置のカバー34が示されている。それに応じて、カバー34は、基体70と、基体70に対して回転可能な回転ロック部46と、を含む。
【0050】
図8には、収容スペース14に面しているその下面から見た回転ロック部46が示されている。同様に、図8では、カバー34がハウジング12に取り付けられたときに収容スペース14に面する、カバー34の基体70側が確認できる。それに応じて、カバー34は、この下側にシール要素72を有することができる。
【0051】
更に、図8では、回転ロック部46に凹部74が形成されており、凹部74の輪郭が、固定要素32に形成された翼部40、42のそれぞれの輪郭に対応することが分かる(図3を参照のこと)。
【0052】
固定要素32が保持トラフ68内にあり、この場合、接合部64が保持トラフ68のそれぞれの保持要素66に後方係合するような、エアフィルタ装置へのフィルタ要素10の取付、又はエアフィルタハウジング12の収容スペース14へのフィルタ要素10の導入は、以下に図9図12を参照して説明する。
【0053】
図9によれば、フィルタ要素10は、挿入方向28でハウジング12に押し込まれる。その結果、ガイド傾斜部52、54のそれぞれ一方が、保持トラフ68のそれぞれの保持要素66に接触することになる(図10を参照のこと)。挿入方向28での更なる挿入時に挿入ベベル36に加えられる力は、前壁20の弾性変形をもたらす。これは、図11に誇張して示されており、図11及び図4では、矢印48によって挿入ベベル36に作用する力が具体的に示されている。
【0054】
図11に記載の圧縮又は弾性変形された前壁20は、次いで、図12に従った初期状態に戻り、その初期状態では、前壁20は、変形されておらず、再び真っすぐに位置合わせされている。前壁20が初期状態に急に戻ることによって、接合部64は、保持トラフ68の領域に形成された保持要素66の後方に移動する。挿入ベベル36は、保持トラフ68をアンダーカット形状とし、したがって、保持トラフ68と形状接続する。フィルタ要素10は、次いで、ハウジング12の収容スペース14内の所定の最終位置に到達している。
【0055】
すなわち、フィルタ要素10が最終位置に達すると、接合部64は、保持トラフ68に形成された保持要素66にアンダーカット形状で後方係止される(hinterrasten)。それによって、翼部40、42もまた正しい位置に位置合わせされ、翼部40、42によって、固定要素32のクランプ形状及び保持形状がもたらされており、カバー34を取り付けることができる。
【0056】
図13図15に基づいて、ハウジング12へのカバー34の固定が具体的に示されている。図13の断面図によれば、カバー34が最初にハウジング12上に載置され、その際、回転ロック部46の凹部74が翼部40、42に対応して互いに係合する。次に、回転ロック部46は、ウェブ又は同様のグリップ部分76(図7を参照のこと)をつかんで回転させることができる(図14を参照のこと)。
【0057】
その場合、次いで、回転ロック部46の2つの保持部分78(図8を参照のこと)は、それによって共に回転され、その結果、保持部分78は、フィルタ要素10の部材30のジャーナル38における翼部40、42に後方係合する。回転ロック部46のこの回転は、図14に示されており、回転ロック部46の回転方向は、曲線矢印80によって具体的に示されている。図15では、回転ロック部46は、その閉鎖位置で示されている。
【0058】
回転ロック部46の保持部分78が固定要素32の翼部40、42に後方係合することによって、本実施形態では、カバー34は、ハウジング12に密接に着座するように引っ張られる。なぜなら、挿入ベベル36の端面に設けられている接合部64(図3を参照のこと)は、保持トラフ68の保持要素66に接触するからである。
【0059】
回転ロック部46の保持部分78は、固定要素32のクランプ形状及び保持形状を形成する翼部40、42に対応する。これに関して、翼部40、42が、図14で矢印80により具体的に示されている回転ロック部46の回転方向とは反対方向に、傾斜形状で先細に形成することができることが特に図3から明らかである。それに応じて、回転ロック部46の保持部分78は、保持部分78が翼部40、42に後方係合し、回転ロック部46が、矢印80によって具体的に示される回転方向に更に回転されるとき、翼部40、42のそれぞれの傾斜面に乗り上げる。それにより、ハウジング12の保持要素66にアンダーカット形状で保持された固定要素32が、傾斜形状の翼部40、42と共に保持部分78をねじ込むときに、カバー34をハウジング12に向けて引っ張る作用をするため、カバー34とハウジング12との間の特に高い封止性が達成される。
【0060】
図16では、カバー34は、回転ロック部46の領域において断面で示されている。この場合、図16では、図14において回転ロック部46が有している回転ロック部46の位置合わせが具体的に示されている。その結果、保持部分78は、翼部40、42にまだ後方係合していない。
【0061】
それに対して図17では、回転ロック部46は、その閉鎖位置で示されており、閉鎖位置では、保持部分78は翼部40、42に後方係合する。この場合に達成されるアンダーカット形状は、回転ロック部46と固定要素32との協働によってカバー34がハウジング12に形状接続で固定されることをもたらす。
【0062】
取り外すときには、回転ロック部46を、再び図14に示されるその開放位置に戻させる。次いで、カバー34はハウジング12から取り外すことができる。続いて、フィルタ要素10は、図4に概略的に示されるように、前壁20を再び弾性変形させることによって、収容スペース14から取り外すことができ、これは、例えば、フィルタ材料18に手で介入することによって行うことができ、その介入により、フィルタ材料18は、その上に取り付けられている前壁20と共に圧縮される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17