(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-10
(45)【発行日】2023-11-20
(54)【発明の名称】部品保管システム、部品保管庫およびマガジン準備方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20231113BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20231113BHJP
【FI】
H05K13/02 E
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2022570950
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048759
(87)【国際公開番号】W WO2022137508
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】松下 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大高 祥裕
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-151900(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026931(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収納するトレイを保管するトレイ保管部と、前記トレイ保管部から取り出した前記トレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部とを有する部品保管庫と、
前記部品保管庫を制御する制御装置と
を備え、
前記マガジンは、前記スロットに前記パレットを保持することで、前記パレットに載置された前記トレイに収納される前記部品を前記スロットに保持し、
前記制御装置は、前記マガジンの前記スロットに保持させる前記部品を示すマガジン準備指示を前記部品保管庫に通知し、
前記作業実行部は、前記マガジン準備指示が示す前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンを準備する部品保管システム。
【請求項2】
前記制御装置は、部品実装機によって前記部品を基板に実装することで部品実装済み基板を生産する生産計画に基づき前記部品実装機に前記部品を補給する補給タイミングを算出し、前記補給タイミングで補給予定の前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンの準備を前記補給タイミングに応じて実行することを示す前記マガジン準備指示を前記部品保管庫に通知する請求項1に記載の部品保管システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記補給タイミングで補給予定の前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンの準備のための作業を前記補給タイミングより前に開始することを要求する前記マガジン準備指示を前記部品保管庫に通知し、
前記作業実行部は、前記マガジン準備指示が示す前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンの準備のための作業を前記補給タイミングより前に開始する請求項2に記載の部品保管システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記生産計画に従って前記部品を前記基板に実装する前記部品実装機における前記部品の残数の時間変化を予測するシミュレーションを実行した結果に基づき前記補給タイミングを算出する請求項2または3に記載の部品保管システム。
【請求項5】
前記マガジンには、前記マガジンを識別するマガジンIDが付されており、
前記制御装置は、前記マガジン準備指示の対象となる前記マガジンの前記マガジンIDと、前記マガジン準備指示とを対応付けて、前記部品保管庫に通知し、
前記部品保管庫は、搬送されてきた前記マガジンの前記マガジンIDを読み取るマガジンIDリーダを有し、
前記作業実行部は、前記マガジンIDリーダにより読み取られた前記マガジンIDに対応する前記マガジン準備指示に従って、前記マガジンIDが付された前記マガジンの前記スロットに前記部品を保持させる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の部品保管システム。
【請求項6】
前記トレイには、前記トレイに載置される部品を識別する部品IDが付され、
前記マガジン準備指示は、前記マガジンの前記スロットに保持させる前記部品の前記部品IDと前記スロットとを対応付けて示し、
前記作業実行部は、前記マガジン準備指示が示す前記スロットと前記部品IDとの対応関係に応じて、前記部品IDの前記部品を前記スロットに保持させる請求項5に記載の部品保管システム。
【請求項7】
前記マガジンには、前記マガジンを識別するマガジンIDが付されており、
前記トレイには、前記トレイに載置される部品を識別する部品IDが付され、
前記部品保管庫は、前記マガジンを保管しており、前記部品保管庫に保管されていた前記マガジンの前記スロットに前記マガジン準備指示が示す前記部品を前記作業実行部により保持させるとともに、前記マガジンの前記マガジンIDと前記マガジンの前記スロットに保持させた前記部品IDとの対応関係を前記制御装置に通知する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の部品保管システム。
【請求項8】
前記部品保管庫は、前記パレットを収納するパレット保管部をさらに有し、
前記作業実行部は、前記トレイ保管部に保管される前記トレイのうち、前記マガジン準備指示が示す前記部品を収納する前記トレイを、前記パレット保管部に保管される前記パレットのうちの一のパレットに載置してから、前記一のパレットを前記スロットに挿入することで、前記マガジン準備指示が示す前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンを準備する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の部品保管システム。
【請求項9】
前記パレットには、前記パレットを識別するパレットIDが付され、
前記部品保管庫は、前記パレットIDを読み取るパレットIDリーダを有し、
前記マガジン準備指示は、前記マガジンの前記スロットに保持させる前記部品を、前記スロットに挿入された前記パレットの前記パレットIDに対応付けて示し、
前記部品保管庫は、搬送されてきた前記マガジンに挿入された前記パレットの前記パレットIDを前記パレットIDリーダで読み取って、前記パレットIDに対して前記マガジン準備指示により対応付けられた前記部品を収納する前記トレイを、前記パレットに載置することで、前記マガジン準備指示が示す前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンを準備する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の部品保管システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記マガジン準備指示に応じて準備された前記マガジンを搬送先まで無人搬送車に搬送させる請求項1ないし9のいずれか一項に記載の部品保管システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記マガジン準備指示に応じて準備された前記マガジンを搬送先まで搬送するように、作業員に報知する請求項1ないし9のいずれか一項に記載の部品保管システム。
【請求項12】
部品を収納するトレイを保管するトレイ保管部と、
前記トレイ保管部から取り出した前記トレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部と
を備え、
前記マガジンは、前記スロットに前記パレットを保持することで、前記パレットに載置された前記トレイに収納される部品を前記スロットに保持し、
前記作業実行部は、前記マガジンの前記スロットに保持させる前記部品を示すマガジン準備指示が示す前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンを準備する部品保管庫。
【請求項13】
マガジンのスロットに保持させる部品を示すマガジン準備指示を通知する工程と、
前記部品を収納するトレイを保管するトレイ保管部と、前記トレイ保管部から取り出した前記トレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部とを有する部品保管庫において、前記作業実行部が前記マガジン準備指示が示す前記部品を前記スロットに保持する前記マガジンを準備する工程と
を備えるマガジン準備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品を基板に実装する技術に関し、特にマガジンのスロットから引き出されたパレットに載置されたトレイに収納された部品を基板への実装のために供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に実装することで部品実装済み基板を生産する部品実装機に対しては、部品を適宜補給する必要がある。そこで、部品補給を実行するための種々の技術が提案されている。例えば特許文献1では、生産システムからの指示に応じて部品供給治具保管棚から部品供給治具をピッキングして部品供給台車にセットし、部品供給台車によって部品供給治具を搬送することで、部品供給治具に配置された部品を部品実装機に補給する。特許文献2では、部品を供給するための容器装填ユニット用のキャリアにはディスプレイが設けられており、このディスプレイは容器装填ユニットに関する情報を表示する。特許文献3では、中間倉庫から受け取った部品トレイを搬送カートに積み込んで、自走式の搬送機が搬送カートを搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-134331号公報
【文献】特表2018-507558号公報
【文献】特開2019-218157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品実装機によっては、トレイに収納された部品(いわゆるトレイ部品)を基板に実装する。かかる部品実装機は、それぞれ部品を保持可能な複数のスロットを有するマガジンのスロットから部品を取り出して基板に実装する。具体的には、スロットにはパレットが挿脱可能であり、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入された状態でパレットに保持される。したがって、かかる部品実装機への部品補給にとっては、部品実装機で実装予定の部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを自動的に準備できることが、作業者の手間の削減につながり好適である。これに対して、特許文献1は、トレイ、パレットおよびマガジンを必要とする部品について特に考慮していない。また、特許文献2、3は、部品の搬送に係る技術を主眼とするものであり、上記のようなマガジンの準備を開示するものではない。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを自動的に準備して、部品補給における省人化を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る部品保管システムは、部品を収納するトレイを保管するトレイ保管部と、トレイ保管部から取り出したトレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部とを有する部品保管庫と、部品保管庫を制御する制御装置とを備え、マガジンは、スロットにパレットを保持することで、パレットに載置されたトレイに収納される部品をスロットに保持し、制御装置は、マガジンのスロットに保持させる部品を示すマガジン準備指示を部品保管庫に通知し、作業実行部は、マガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンを準備する。
【0007】
本発明に係る部品保管庫は、部品を収納するトレイを保管するトレイ保管部と、トレイ保管部から取り出したトレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部とを備え、マガジンは、スロットにパレットを保持することで、パレットに載置されたトレイに収納される部品をスロットに保持し、作業実行部は、マガジンのスロットに保持させる部品を示すマガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンを準備する。
【0008】
本発明に係るマガジン準備方法は、マガジンのスロットに保持させる部品を示すマガジン準備指示を通知する工程と、部品を収納するトレイを保管するトレイ保管部と、トレイ保管部から取り出したトレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部とを有する部品保管庫において、作業実行部がマガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンを準備する工程とを備える。
【0009】
このように構成された本発明(部品保管システム、部品保管庫およびマガジン準備方法)では、マガジンのスロットに保持させる部品を示すマガジン準備指示が、トレイ保管部にトレイを保管する部品保管庫に通知される。これに対して、部品保管庫には、トレイ保管部から取り出したトレイが載置されたパレットをマガジンに設けられたスロットに保持させる作業実行部が具備されており、マガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンが、作業実行部によって準備される。こうして、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを自動的に準備することができ、部品補給における省人化が可能となっている。
【0010】
また、制御装置は、部品実装機によって部品を基板に実装することで部品実装済み基板を生産する生産計画に基づき部品実装機に部品を補給する補給タイミングを算出し、補給タイミングで補給予定の部品をスロットに保持するマガジンの準備を補給タイミングに応じて実行することを示すマガジン準備指示を部品保管庫に通知するように、部品保管システムを構成してもよい。かかる構成では、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを、部品実装機への部品の補給タイミングに応じて準備することができる。
【0011】
また、制御装置は、補給タイミングで補給予定の部品をスロットに保持するマガジンの準備のための作業を補給タイミングより前に開始することを要求するマガジン準備指示を部品保管庫に通知し、作業実行部は、マガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンの準備のための作業を補給タイミングより前に開始するように、部品保管システムを構成してもよい。かかる構成では、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを、部品実装機への部品の補給タイミングに応じて速やかに準備することができる。
【0012】
また、制御装置は、生産計画に従って部品を基板に実装する部品実装機における部品の残数の時間変化を予測するシミュレーションを実行した結果に基づき補給タイミングを算出するように、部品保管システムを構成してもよい。かかる構成では、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを、部品実装機での部品残数の時間変化に即した適切なタイミングで準備することができる。
【0013】
また、マガジンには、マガジンを識別するマガジンIDが付されており、制御装置は、マガジン準備指示の対象となるマガジンのマガジンIDと、マガジン準備指示とを対応付けて、部品保管庫に通知し、部品保管庫は、搬送されてきたマガジンのマガジンIDを読み取るマガジンIDリーダを有し、作業実行部は、マガジンIDリーダにより読み取られたマガジンIDに対応するマガジン準備指示に従って、マガジンIDが付されたマガジンのスロットに部品を保持させるように、部品保管システムを構成してもよい。かかる構成では、マガジンIDリーダにより読み取ったマガジンIDに基づき、当該マガジンIDが付されたマガジンのスロットに適切な部品を保持させることができる。
【0014】
また、トレイには、トレイに載置される部品を識別する部品IDが付され、マガジン準備指示は、マガジンのスロットに保持させる部品の部品IDとスロットとを対応付けて示し、作業実行部は、マガジン準備指示が示すスロットと部品IDとの対応関係に応じて、部品IDの部品をスロットに保持させるように、部品保管システムを構成してもよい。かかる構成では、スロットに対して、当該スロットに対応する部品IDの部品を適切に保持させることができる。
【0015】
また、マガジンには、マガジンを識別するマガジンIDが付されており、トレイには、トレイに載置される部品を識別する部品IDが付され、部品保管庫は、マガジンを保管しており、部品保管庫に保管されていたマガジンのスロットにマガジン準備指示が示す部品を作業実行部により保持させるとともに、マガジンのマガジンIDとマガジンのスロットに保持させた部品IDとの対応関係を制御装置に通知するように、部品保管システムを構成してもよい。これによって、制御装置は、マガジンがスロットに保持する部品を、マガジンIDと部品IDとの対応関係に基づき的確に確認することができる。
【0016】
また、部品保管庫は、パレットを収納するパレット保管部をさらに有し、作業実行部は、トレイ保管部に保管されるトレイのうち、マガジン準備指示が示す部品を収納するトレイを、パレット保管部に保管されるパレットのうちの一のパレットに載置してから、一のパレットをスロットに挿入することで、マガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンを準備するように、部品保管システムを構成してもよい。かかる構成では、部品を収納するトレイが載置されたパレットを空のスロットに挿入することで、上記のようにマガジンを準備することができる。
【0017】
また、パレットには、パレットを識別するパレットIDが付され、部品保管庫は、パレットIDを読み取るパレットIDリーダを有し、マガジン準備指示は、マガジンのスロットに保持させる部品を、スロットに挿入されたパレットのパレットIDに対応付けて示し、部品保管庫は、搬送されてきたマガジンに挿入されたパレットのパレットIDをパレットIDリーダで読み取って、パレットIDに対してマガジン準備指示により対応付けられた部品を収納するトレイを、パレットに載置することで、マガジン準備指示が示す部品をスロットに保持するマガジンを準備するように、部品保管システムを構成してもよい。
【0018】
なお、準備されたマガジンの搬送の具体的手段は種々考えられる。つまり、制御装置は、マガジン準備指示に応じて準備されたマガジンを搬送先まで無人搬送車に搬送させるように、部品保管システムを構成してもよい。あるいは、制御装置は、マガジン準備指示に応じて準備されたマガジンを搬送先まで搬送するように、作業員に報知するように、部品保管システムを構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部品を収納するトレイが載置されたパレットがスロットに挿入されたマガジンを自動的に準備して、部品補給における省人化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る部品保管システムを備えた部品実装システムの一例を示すブロック図である。
【
図2A】部品保管庫での作業対象物であるトレイおよびパレットを模式的に示す平面図。
【
図2B】部品保管庫での作業対象物であるパレットおよびマガジンを模式的に示す側面図。
【
図2C】部品保管庫での作業対象物であるマガジンを模式的に示す斜視図。
【
図3A】部品保管庫の一例の内部構成を模式的に示す平面図。
【
図3B】
図3Aの部品保管庫の内部構成を模式的に示す側面図。
【
図4】AGVおよび部品実装機の構成を模式的に示す図。
【
図5】マガジン構成情報の具体的な内容の一例を示す図。
【
図6】シミュレーションの実行のために必要となるシミュレーションパラメータの一例を示す図。
【
図7】部品残数シミュレーションの演算内容の一例を示す図。
【
図8】部品切れエラーが発生するタイミングを示す部品切れチャートの一例を示す図。
【
図10】マガジン準備のために実行される各動作のタイミングを示す図。
【
図11】マガジン構成情報の作成方法の一例を示すフローチャート。
【
図12A】部品保管庫の第1変形例の内部構成を模式的に示す平面図。
【
図13】部品保管庫の第2変形例の内部構成を模式的に示す平面図。
【
図14A】部品保管庫の第3変形例の内部構成を模式的に示す平面図。
【
図15】コンピュータ、部品保管庫およびAGVの動作の同期のためにステータスを共有する手法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る部品保管システムを備えた部品実装システムの一例を示すブロック図である。部品実装システム1は、部品(電子部品)を基板(プリント基板)に実装することで部品が実装された基板(部品実装済み基板)を生産する。この部品実装システム1は、コンピュータ2と部品保管庫3とを備え、コンピュータ2と部品保管庫3とが協働して本発明の「部品保管システム」の一例を構成する。
【0022】
コンピュータ2は、例えばCPU(Central Processing Unit)やメモリ等で構成されたプロセッサである演算部21と、例えばHDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶部22とを備える。記憶部22は、生産すべき基板の品種および枚数を示す生産計画Pと、所定の基板品種の基板を生産するために当該基板に実装される部品の部品名(換言すれば、部品の種類)や個数を示す基板データDとを記憶する。なお、部品の機能、形状および寸法のいずれかが少なくとも異なる場合には、部品名が異なるものとする。複数の基板品種を生産する場合には、基板データDは基板品種毎に作成されて、記憶部22に記憶される。さらに、コンピュータ2は、生産計画Pおよび基板データDに基づきマガジン準備指示Cpを作成して、記憶部22に記憶する。マガジン準備指示Cpの詳細は後述する。
【0023】
また、コンピュータ2は、キーボードおよびマウス等の入力機器と、ディスプレイ等の出力機器とで構成されるUI(User Interface)23を備える。したがって、作業者は、UI23の入力機器を操作することでコンピュータ2にデータを入力できるとともに、UI23の出力機器を確認することでコンピュータ2から報知される内容を確認できる。なお、入力機器と出力機器とを別体で構成する必要は必ずしもなく、タッチパネルディスプレイによってこれらを一体的に構成しても構わない。さらに、コンピュータ2は部品保管庫3等の外部装置と通信を行う通信部24を備える。通信部24による通信は、有線通信および無線通信のいずれでも構わない。
【0024】
図2Aは部品保管庫での作業対象物であるトレイおよびパレットを模式的に示す平面図であり、
図2Bは部品保管庫での作業対象物であるパレットおよびマガジンを模式的に示す側面図であり、
図2Cは部品保管庫での作業対象物であるマガジンを模式的に示す斜視図である。これらの図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向が示されている。
【0025】
図2Aに示すように、複数の部品41がマトリックス状に配列されてトレイ42に収納されている。このトレイ42には、トレイ42に収納される部品41を識別するバーコードである部品ID41dと、トレイ42を識別するバーコードであるトレイID42dとが付されている。さらに、部品41を収納するトレイ42はパレット43の上に載置される。このパレット43には、パレット43を識別するバーコードであるパレットID43dが付されている。そして、トレイ42が載置されたパレット43がマガジン44にセットされる。
【0026】
マガジン44は、直方体形状の筐体441を有し、筐体441は、挿脱方向(
図2B、
図2Cの例ではX方向)の両側に開口442を有する。筐体441の上面には、マガジン44を識別するバーコードであるマガジンID44dが付されている。筐体441は、挿脱方向に対する直交方向(
図2B、
図2Cの例ではY方向)に対向する2枚の側板443を有し、各側板443の内壁では、複数の突起444が等間隔で配列されている。そして、それぞれ異なる側板443において同じ高さに設けられた2個の突起444が対を成して、パレット43を支持することができる。つまり、一対の突起444の上側がパレット43を挿入するためのスロット445として機能する。このようにマガジン44は、Z方向に配列された複数のスロット445を有し、スロット445に挿入されたパレット43は、一対の突起444によって下側から支持される。こうして、パレット43に載置されたトレイ42に収納される部品41がスロット445に保持される。
【0027】
筐体441はZ方向に対向する底板446と天板447とを有し、2枚の側板443は底板446に対して天板447を支持するように、底板446および天板447に取り付けられている。これら底板446および天板447の内壁には、挿脱方向に延設された案内溝448が設けられている。底板446および天板447それぞれの案内溝448はZ方向に互いに対向している。
【0028】
そして、Z方向に延設された平板形状のパレット押出治具45がマガジン44とは別に設けられており、パレット押出治具45の上端および下端をこれら案内溝448に嵌めることで、パレット押出治具45をマガジン44に取り付けることができる。こうして、マガジン44に取り付けられたパレット押出治具45は、案内溝448に沿って挿脱方向に移動することができる。
【0029】
図3Aは部品保管庫の一例の内部構成を模式的に示す平面図であり、
図3Bは
図3Aの部品保管庫の内部構成を模式的に示す側面図である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、部品保管庫3は、入庫部31、トレイ保管ラック32、パレット保管ラック33、出庫部34およびこれらを収容する筐体35を備える。筐体35は、入庫部31を開閉する入庫扉351と、出庫部34を開閉する出庫扉352とを有する。
【0030】
入庫部31は、作業者による入庫作業の作業場として機能する。つまり、作業者は、入庫扉351を開いてトレイ42を入庫部31に載置することで、トレイ42を入庫することができる。これによって、満数の部品41を収納するトレイ42が部品保管庫3に入庫されることとなる。また、作業者は、入庫扉351を開いてパレット43を入庫部31に載置することで、パレット43を入庫することができる。これによって、空のパレット43(すなわち、トレイ42が載置されていないパレット43)が部品保管庫3に入庫されることとなる。
【0031】
トレイ保管ラック32は、Z方向に配列された複数のトレイ棚を有する。そして、トレイ保管ラック32のトレイ棚にトレイ42を挿入したり、トレイ保管ラック32のトレイ棚からトレイ42を引き出したりすることができる。このトレイ保管ラック32は、部品41が収納されたトレイ42を保管する機能を果たす。
【0032】
パレット保管ラック33は、Z方向に配列された複数のパレット棚を有する。そして、パレット保管ラック33のパレット棚にパレット43を挿入したり、パレット保管ラック33のパレット棚からパレット43を引き出したりすることができる。このパレット保管ラック33は、空のパレット43を保管する機能を果たす。
【0033】
出庫部34は、マガジン準備指示Cpに従って準備されたマガジン44を出庫する場所として機能する。つまり、出庫扉352を開いて外部から出庫部34に載置されたマガジン44に対しては、マガジン準備指示Cpに従って所定のスロット445に所定のトレイ42を保持させるマガジン準備作業が実行される。そして、部品保管庫3は、マガジン準備作業が完了したマガジン44を出庫部34から出庫扉352を介して外部に出庫することができる。
【0034】
さらに、部品保管庫3は、作業ロボット36、IDリーダ371およびカメラ372を、筐体35の内部に備える。作業ロボット36は、先端にエンドエフェクタ361を有するマニピュレータである。この作業ロボット36は、鉛直方向、水平方向および鉛直方向に平行な回転軸を中心とする回転方向を含む複数の方向に自由度を有しており、エンドエフェクタ361をこれらの方向に変位させることで、後述する作業を実行する。エンドエフェクタ361は、ロボットハンドであり、作業の対象物を掴みあるいは放す。IDリーダ371は、バーコードで構成された上記のID(部品ID41d、トレイID42d、マガジンID44d)を読み取るバーコードスキャナであり、作業ロボット36のエンドエフェクタ361に取り付けられている。かかるIDリーダ371によるIDの読み取りは、作業ロボット36のエンドエフェクタ361をバーコードへ移動させて、IDリーダ371にIDを対向させることで実行される。カメラ372は、作業ロボット36より上側に配置され、作業ロボット36のエンドエフェクタ361に掴まれた対象物を上方から撮像する。ただし、IDリーダ371およびカメラ372の配置はこの例に限られない。
【0035】
図1に示すように、部品保管庫3は、例えばプロセッサあるいはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成された制御部391、例えばHDD等で構成された記憶部392および通信部393を備える。記憶部392は、トレイ保管ラック32によるトレイ42の保管状態や、パレット保管ラック33によるパレット43の保管状態を示す保管情報Isを記憶する。つまり、トレイ保管ラック32の複数のトレイ棚には互いに異なる番号(トレイ棚番号)が付されており、保管情報Isは、トレイ棚の番号と、当該トレイ棚に保管されるトレイ42に付された部品ID41dおよびトレイID42dとを対応付けて示す。また、パレット保管ラック33の複数のパレット棚には互いに異なる番号(パレット棚番号)が付されており、保管情報Isは、パレット棚の番号と、当該パレット棚に保管されるパレット43に付されたパレットID43dとを対応付けて示す。
【0036】
通信部393は、コンピュータ2の通信部24と通信を行って、当該通信部24からマガジン準備指示Cpを受信して記憶部392に保存する。このマガジン準備指示Cpは、準備の対象となるマガジン44のマガジンID44dと、準備するマガジンの構成を示すマガジン構成情報とを対応付けて示す。マガジン構成情報は、複数のスロット445のそれぞれを互いに異なる番号(スロット番号)によって識別し、スロット445に保持させる部品41と、当該スロット445の番号とを対応付けて示す。特に、この対応付けには、次に説明するパレット構成情報が用いられる。
【0037】
つまり、マガジン構成情報は、スロット445に部品41を保持するために使用するパレット43に関するパレット構成情報を含む。このパレット構成情報は、パレット43のパレットID43dと、当該パレット43に載置されるトレイ42のトレイID42dと、当該トレイ42に収納される部品41の部品ID41dとを対応付けて示す。そして、マガジン構成情報は、スロット445に保持されるパレット43のパレット構成情報と、当該スロット445の番号とを対応付けることで、部品41と当該部品41を保持するスロット445とを対応付ける。なお、コンピュータ2は、部品保管庫3から保管情報Isを予め受信している。そして、コンピュータ2は、トレイ保管ラック32に保管されているトレイ42に付された部品ID41dおよびトレイID42dや、パレット保管ラック33に保管されているパレット43に付されたパレットID43dを保管情報Isにより確認した結果に基づき、パレット構成情報を作成する。
【0038】
制御部391は、作業ロボット36、IDリーダ371およびカメラ372を制御することで、次に示す各動作をこれらに実行させる。例えば、トレイ42が入庫部31に載置されると、制御部391は、このトレイ42に付された部品ID41dおよびトレイID42dをIDリーダ371によって読み取ってから、エンドエフェクタ361によってこのトレイ42をトレイ保管ラック32のトレイ棚に挿入する。また、制御部391は、これら部品ID41d、トレイID42dおよびトレイ棚の番号を対応付けて保管情報Isに登録する。
【0039】
パレット43が入庫部31に載置されると、制御部391は、このパレット43に付されたパレットID43dをIDリーダ371によって読み取ってから、エンドエフェクタ361によってこのパレット43をパレット保管ラック33のパレット棚に挿入する。また、制御部391は、これらパレットID43dおよびパレット棚の番号を対応付けて保管情報Isに登録する。
【0040】
マガジン44が出庫部34に載置されると、制御部391は、このマガジン44に付されたマガジンID44dをIDリーダ371によって読み取ってから、マガジン準備指示Cpによって当該マガジンID44dに対応付けられたマガジン構成情報を確認する。そして、制御部391は、このマガジン構成情報に従ってスロット445に部品41を保持させることで、マガジン構成情報が示す構成を具備するマガジン44を準備する。
【0041】
具体的には、制御部391は、マガジン44のスロット445の番号と、パレット構成情報との対応関係に基づき、当該番号スロット445に挿入すべきパレット43と、パレット43に載置すべきトレイ42とを確認した結果に基づき、作業ロボット36を制御する。つまり、制御部391は、パレット構成情報が示す部品ID41dおよびトレイID42dが付されたトレイ42が収納されたトレイ棚を特定して、このトレイ棚からトレイ42を取り出すトレイ取出作業を作業ロボット36に実行させる。
【0042】
さらに、制御部391は、パレット構成情報が示すパレットID43dが付されたパレット43が収納されたパレット棚を特定して、このパレット棚のパレット43に、トレイ取出作業で取り出したトレイ42を載置させるトレイ載置作業を作業ロボット36に実行させる。なお、パレット構成情報は、パレット43に載置されるトレイ42の向きや場所を示すトレイレイアウトを含み、制御部391は、作業ロボット36が取り出したトレイ42をカメラ372によって撮像した画像に基づき作業ロボット36を制御することで、トレイレイアウトが示す向きおよび場所にトレイ42を載置する。
【0043】
そして、制御部391は、パレット構成情報に対応するスロット番号のスロット445を特定して、このスロット445に、トレイ載置作業でトレイ42が載置されたパレット43をトレイ棚から取り出して挿入するパレット挿入作業を作業ロボット36に実行させる。これらのトレイ取出作業、トレイ載置作業およびパレット挿入作業を、マガジン構成情報が示す各スロット445に実行することで、マガジン準備指示Cpが示す部品41をスロット445に保持するマガジン44が準備される。こうして準備されたマガジン44は、AGV(Automatic Guided Vehicle) 5によって、部品保管庫3の出庫部34から部品実装機6へ搬送される。
【0044】
つまり、
図1に示すように、部品実装システム1は、複数の部品実装機6を備える。より具体的には、直列に配列された複数(3台)の部品実装機6によって1つの実装ライン60が構成され、複数(2本)の実装ライン60が設けられている。各部品実装機6は、コンデンサ、抵抗あるいは集積回路等の電子部品を基板(プリント基板)に実装する。この部品実装機6によって実装される電子部品には、上述のトレイ42によって供給される部品41(トレイ部品)が含まれる。
【0045】
図4はAGVおよび部品実装機の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、AGV5は、搬送車本体51と、搬送車本体51に回転可能に取り付けられた複数の車輪52とを有し、車輪52の回転に伴って搬送車本体51が移動する。また、AGV5は、搬送車本体51の上面に取り付けられたキャリッジ53を有し、部品保管庫3から出庫されたマガジン44は、キャリッジ53に保持される。このキャリッジ53は、スライドレール機構等によってAGV5の進行方向(
図4の例ではX方向)に伸展して、マガジン44を移動させることができる。さらに、搬送車本体51には、作業ロボット54が取り付けられている。作業ロボット54は、先端にエンドエフェクタ541を有するマニピュレータであり、エンドエフェクタ541を各方向に変位させる。エンドエフェクタ541は、ロボットハンドであり、作業の対象物を掴みあるいは放す。特に作業ロボット54は、エンドエフェクタ541によってパレット押出治具45を操作する。
【0046】
また、AGV5は、搬送車本体51に内蔵された制御部551、記憶部552、通信部553およびUI(User Interface)554を備える。制御部551は、例えばプロセッサあるいはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成され、車輪52や作業ロボット54の動作を制御する。記憶部552は、例えばHDD等で構成され、マガジン44の搬送を指示するマガジン搬送指示Ccを記憶する。そして、マガジン搬送指示Ccが示す搬送ルートに基づき制御部551が車輪52を制御することで、AGV5は当該搬送ルートに沿って移動する。通信部553は、コンピュータ2の通信部24と通信を行って、当該通信部24からマガジン搬送指示Ccを受信して、記憶部552に保存する。また、通信部553は、部品保管庫3の通信部393とも通信することができる。UI554は、例えば表示機能と入力機能とを併せ持ったタッチパネルディスプレイであり、作業者は、UI554の表示を確認することで実行すべき作業等を確認できるとともに、UI554を操作することで作業の進捗等を入力できる。
【0047】
部品実装機6は、ハウジング61を備え、ハウジング61内では2個のマガジン44(44u、44l)がZ方向に配列されている。2個のマガジン44のうち、上側のマガジン44uは、ハウジング61に設けられた補給口611に対向する。そして、マガジン44uのスロット445には、外部から補給されるパレット43が挿入される。つまり、AGV5は、部品実装機6に到着すると、キャリッジ53に保持するマガジン44(44c)を、補給口611を介してマガジン44uに対向させる。これによって、マガジン44cの複数のスロット445とマガジン44uの複数のスロット445とがそれぞれX方向において対向する。この際、マガジン44cのスロット445に保持されるパレット43は、マガジン44uの空のスロット445に対向する。そして、作業ロボット54がパレット押出治具45を補給口611へ向けて押すと、マガジン44cに保持されるパレット43がパレット押出治具45によって押し出されて、マガジン44uのスロット445に挿入される。こうして、部品41を収納するトレイ42が載置されたパレット43がマガジン44cからマガジン44uへ補給される。
【0048】
図4の例から判るように、部品実装機6内のマガジン44uへの部品補給は、マガジン44uの複数のスロット445のうちの空きスロット445に、マガジン44cのスロット445から部品41を補給することで実行される。したがって、マガジン44uとマガジン44cとを対向させた状態においてマガジン44uの空きスロット445に対向するスロット445に部品41を保持するマガジン44cを予め準備する必要がある。そして、上述のマガジン構成情報が、このように準備すべきマガジン44cの構成を示すものとなる。かかるマガジン44cの準備は、部品保管庫3によって後述する要領で実行される。
【0049】
また、部品実装機6は、マガジン44u、44lのスロット445に対してパレット43の挿脱を実行するパレット引出部62と、パレット引出部62により引き出されたパレット43を保持する部品供給部63とを、ハウジング61の内部に備える。さらに、部品実装機6は、部品供給部63に保持されるパレット43上のトレイ42から部品41を取り出して基板に実装する実装ヘッド64を備える。したがって、実装ヘッド64により部品41が取り出される度に、パレット43上のトレイ42に収納される部品41の個数が減少する。
【0050】
パレット引出部62は、Z方向からの平面視においてマガジン44u、44lと部品供給部63との間に位置して、Z方向に昇降する。そして、パレット引出部62は、マガジン44uのスロット445から部品供給部63へパレット43を引き出したり、部品供給部63からマガジン44uのスロット445にパレット43を戻したりする。また、2個のマガジン44u、44lのうち下側のマガジン44lは、空のパレット43を収納する役割を果たす。したがって、空のパレット43(すなわち、当該パレット43上のトレイ42に収納される部品41の個数がゼロのパレット43)は、マガジン44uのスロット445あるいは部品供給部63からマガジン44lのスロット445へ、パレット引出部62によって回収される。
【0051】
図5はマガジン構成情報の具体的な内容の一例を示す図である。
図5の例では、番号1~8の8個のスロット445のみが例示されているが、マガジン44のスロット445の個数はこの例には限られない。上述の通りマガジン構成情報は、スロット445の番号とパレット構成情報とを対応付けて示す。パレット構成情報は、対応するパレット43のパレットID43d、当該パレット43が収納されるパレット棚の番号、当該パレット43に載置予定のトレイ42のトレイID42d、当該トレイ42が収納されるトレイ棚の番号、当該トレイ42に収納される部品41の部品ID41dおよびトレイ42に収納される部品41の名称を示す。
【0052】
さらに、マガジン構成情報は、パレット構成情報が示すパレットID43dが付されたパレット43と、部品ID41dおよびトレイID42dが付されたトレイ42とを保管する部品保管庫3を経由地として示す。つまり、部品実装システム1では、複数の部品保管庫3が具備されている。したがって、マガジン構成情報が示すように各スロット445に部品41を保持するマガジン44を作成するのに、複数の部品保管庫3を経由する場合がある。
【0053】
例えば、
図5の例では、複数の部品保管庫3のうち、部品保管庫3a、3b、3cが示されている。番号1、2、6のスロット445には、部品保管庫3aが対応付けられ、番号3、4、7のスロット445には、部品保管庫3bが対応付けられ、番号5、8のスロット445には、部品保管庫3cが対応付けられている。かかる例では、コンピュータ2の演算部21は、部品保管庫3a、3b、3cを順番に経由しつつマガジン44を搬送することを示すマガジン搬送指示Ccを、マガジン構成情報に基づき作成してAGV5に送信する。そして、AGV5は、受信したマガジン搬送指示Ccに従って移動する。
【0054】
AGV5が部品保管庫3aに到着すると、AGV5は、部品保管庫3aに到着したことを示す到着通知を送信する。なお、AGV5と部品保管庫3との通信は、通信部553および通信部393を介して行われる。到着通知を受け取った部品保管庫3aの制御部391は出庫扉352を開くと、その旨を示す開通知をAGV5に送信する。開通知を受信したAGV5は、その搬送車本体51を部品保管庫3aの筐体35に接触させる。これによって、搬送車本体51と筐体35とが図示しない嵌合部位において嵌合して、相互に位置決めされる。続いて、AGV5は、部品保管庫3aの出庫部34にキャリッジ53を伸展させることで、キャリッジ53により支持するマガジン44を出庫部34に載置する。例えば、キャリッジ53はマガジン44を昇降させる機構を有し、出庫部34の上方へ移動させたマガジン44を下降させることで、マガジン44の底面を出庫部34に接触させて、マガジン44を載置できる。なお、出庫部34にマガジン44を載置するための機構はここの例に限られない。
【0055】
部品保管庫3aの制御部391は、出庫部34にマガジン44が載置されると、マガジン構成情報が示すスロット445に、当該スロット445に対応付けられたパレット構成情報に応じたトレイ42およびパレット43を上述の要領で挿入する。したがって、番号1、2、6のスロット445それぞれには、対応するパレット構成情報に応じたトレイ42およびパレット43が挿入される。こうして、マガジン構成情報が示す部品41を番号1、2、6のスロット445に保持するマガジン44が部品保管庫3aによって準備される。マガジン44の準備が完了すると、AGV5は、キャリッジ53を縮めることでマガジン44を出庫部34から取り出す。そして、AGV5は、次の経由地である部品保管庫3bへ移動する。
【0056】
AGV5がマガジン44を部品保管庫3bに搬送すると、マガジン44がAGV5から部品保管庫3bの出庫部34に受け渡されて、番号3、4、7のスロット445それぞれには、対応するパレット構成情報に応じたトレイ42およびパレット43が挿入される。これによって、マガジン構成情報が示す部品41を番号3、4、6のスロット445に保持するマガジン44が部品保管庫3bによって準備される。
【0057】
さらに、AGV5がマガジン44を部品保管庫3bに搬送すると、マガジン44がAGV5から部品保管庫3bの出庫部34に受け渡されて、番号5、8のスロット445それぞれには、対応するパレット構成情報に応じたトレイ42およびパレット43が挿入される。これによって、マガジン構成情報が示す部品41を番号5、8のスロット445に保持するマガジン44が部品保管庫3cによって準備される。
【0058】
目的地は、複数の部品実装機6のうち、マガジン44に挿入されたパレット43を補給する対象となる部品実装機6となる。したがって、AGV5は、部品保管庫3a、3b、3cの全てを経由すると、目的地の部品実装機6にマガジン44を搬送する。そして、部品保管庫3a、3b、3cのそれぞれでマガジン44cに挿入されたパレット43が、目的地の部品実装機6に内蔵されるマガジン44uに移載される。こうして、部品実装機6のマガジン44に部品41が補給される。
【0059】
状態は、マガジン44のスロット445にパレット43が挿入されているか否かを示す。つまり、部品保管庫3は、搬送されてきたマガジン44の対応するスロット445にパレット43を挿入すると、当該スロット445にパレット43を挿入した旨を通信部393によりコンピュータ2に通知する。一方、コンピュータ2は、通知された内容に従ってマガジン構成情報を更新する。こうして更新されたマガジン構成情報は、部品保管庫3に通知されて、コンピュータ2と部品保管庫3とで共有される。
【0060】
ところで、上記の部品実装機6のマガジン44への部品補給は、生産計画Pに応じて計画的に実行することができる。続いては、生産計画Pに応じた部品補給計画の作成と、部品補給計画に基づく部品保管庫3の動作について説明する。この部品補給計画の作成においては、コンピュータ2の演算部21が、生産計画Pに従って部品実装機6が部品実装済み基板を生産する動作をシミュレーションする。
【0061】
図6はシミュレーションの実行のために必要となるシミュレーションパラメータの一例を示す図である。
図6では、基板品種Bk(n)の部品実装済み基板をBn(n)枚生産するためにマガジン44に保持させる部品41に求められる情報(部品情報)が、各基板品種Bk(n)について示されている。この部品情報は、スロット445の番号(スロット番号)、部品名(Pa、Pb、…等)、部品ID41d、トレイID42d、パレットID43d、部品必要数Pn(m)および実装周期Pcy(m)を互いに対応付けて示す(m=1、2、…)。
図6のシミュレーションパラメータのうち、基板品種Bk(n)、生産数Bn(n)および生産順序nは生産計画Pに規定され、部品情報は基板データDに規定される。そこで、演算部21は、生産計画Pと基板データDを統合することで、シミュレーションパラメータを作成する。
【0062】
マガジン44では、同一の部品名(換言すれば部品種)の部品41に2個以上のスロット445が割り当てられており、例えば部品名Paの部品41には、番号1、2の2個のスロット445が割り当てられ、部品名Pbの部品41には、番号3、4の2個のスロット445が割り当てられている。つまり、同一の部品名の部品41を収納したトレイ42が載置されたパレット43が2個以上のスロット445に挿入されており、これらのパレット43が部品供給に順番に使用される。つまり、一のパレット43の部品41が使い切られると、他のパレット43の部品41の使用が開始される。こうして部品41が使い切られたパレット43は、上述のようにマガジン44uからマガジン44lに移動されて、パレット43が挿入されていたマガジン44uのスロット445が空くこととなる。
【0063】
部品必要数Pn(m)は、基板品種Bk(n)の部品実装済み基板をBn(n)枚生産するために必要となる、対応する部品名の部品41の個数を示す。実装周期Pcy(m)は、基板品種Bk(n)の部品実装済み基板を生産するために、対応する部品名の部品41が基板に実装される周期を示す。基板品種Bk(n)の部品実装済み基板を1枚生産するのに要するサイクルタイムを、部品必要数Pn(m)で割った値が、実装周期Pcy(m)に相当する。
【0064】
演算部91は、生産計画P(および基板データD)に従って動作する部品実装機6のマガジン44uの各スロット445に残存する部品41の個数を、所定時間(例えば1秒)を経過する度に算出するシミュレーションを実行する。換言すれば、このシミュレーションは、各スロット445に保持された部品41の残数の時間変化を求める部品残数シミュレーションである。部品残数シミュレーションは、所定時間に実装周期Pcy(m)を乗じることで求められる部品41の消費数を部品41の個数から引く演算を、所定時間が経過する度に実行することで、部品41の残数の時間変化を求める(残数算出)。なお、同一の部品名の部品41に対して2個以上のスロット445が割り当てられることから、部品41の残数としては、同一の部品名に対応する2個以上のスロット445に残存する部品41の合計(合計残数Prt(m))が算出される。すなわち、部品41の合計残数が部品名毎に算出される。
【0065】
図7は部品残数シミュレーションの演算内容の一例を示す図である。
図7では、同一の部品名の部品41の合計残数Prt(m)および警告残数Pre(m)が、部品名毎に対応付けて示されている。合計残数Prt(m)は上述の通りである。警告残数Pre(m)は、部品補給を実行するタイミングを与え、例えば1枚のパレット43に載置される部品41の最大数が警告残数Pre(m)に設定される。合計残数Prt(m)が警告残数Pre(m)以下となった部品名に割り当てられた2個以上のスロット445のうち、少なくとも1個のスロット445は空いており、新たなパレット43を挿入して部品補給を行うことができる。このように、警告残数Pre(m)は、マガジン44への部品補給の実行を開始できるタイミングを与える。
【0066】
演算部91は、
図7の合計残数Prt(m)を所定時間毎に算出することで、各部品名の部品Pの個数(合計残数Prt(m))の時間変化を求める。その結果、
図8に示す部品切れチャートを得ることができる。
【0067】
図8は部品切れエラーが発生するタイミングを示す部品切れチャートの一例を示す図である。同図では、横方向に時間軸が取られ、各基板品種Bk(1)、Bk(2)、…を生産している期間が併せて模式的に示されている。同図では、各部品名の部品41がゼロになる部品切れタイミングTrを部品残数シミュレーションに基づき求めた結果が示されており、丸印のタイミングが部品切れタイミングTrとなる。部品残数シミュレーションでは、各部品切れタイミングTrで、該当のスロット445に満数の部品41が載置されたパレット43が補給されるという前提で演算が行われている。つまり、部品切れチャートが示す部品切れタイミングTrは、部品切れエラーを回避するために、スロット445への部品41の補給が必要となる時間を示す。さらに、演算部91は、
図8で求めた部品切れチャートの結果に基づき、部品補給を実行可能な時間帯(補給可能時間帯)を算出する(
図9)。
【0068】
図9は補給可能時間帯の一例を示す図である。
図9では、上述のように、部品41の合計残数Prt(m)が警告残数Pre(m)以下となった部品名については、当該部品名に割り当てられた少なくとも1個のスロット445が空いており、部品補給を開始できる。つまり、部品41の合計残数Prt(m)が警告残数Pre(m)以下となった補給開始タイミングTeから部品切れタイミングTrの間に、該当のスロット445に部品41を補給すればよい。そこで、補給開始タイミングTeから部品切れタイミングTrまでの時間帯が補給可能時間帯Twとして算出される。この補給可能時間帯Twは、各部品名について部品切れタイミングTr毎に算出される。
【0069】
そして、コンピュータ2の演算部21は、補給可能時間帯Tw内(例えば、補給可能時間帯Twの中央)に補給タイミングTsを設定し、当該補給タイミングTsで部品41を補給するように部品補給計画を作成する。なお、補給可能時間帯Twは幅を有するため、2以上の部品名について補給可能時間帯Twが少なくとも部分的に重複する場合がある。このような場合には、演算部21は、これらの部品名の補給可能時間帯Twの重複範囲内(例えば、重複範囲の中央)に補給タイミングTsを設定して、この補給タイミングTsにおいて、これらの部品名の部品41の補給を1回でまとめて実行するように、部品補給計画を作成する。そして、演算部21は、補給タイミングTsで部品補給を実行できるようにマガジン準備指示Cpを部品保管庫3に送信する。
【0070】
図10はマガジン準備のために実行される各動作のタイミングを示す図である。コンピュータ2は、準備開始タイミングTpにおいてマガジン準備指示Cpを部品保管庫3に通知し、部品保管庫3は受信したマガジン準備指示Cpに従って作業を開始する。具体的には、部品保管庫3は、マガジン準備指示Cpに含まれるマガジン構成情報を確認して、AGV5によって搬送されてくるマガジン44のスロット445に対して挿入すべきパレット43のパレット構成情報を確認する。そして、部品保管庫3は、パレット構成情報に従って、トレイ取出作業およびトレイ載置作業を実行しつつ、AGV5の到着を待つ。つまり、上述の通り、マガジン構成情報が示すマガジン44の準備は、上述の通り、トレイ取出作業、トレイ載置作業およびパレット挿入作業を部品保管庫3が実行することで完了する。これらのうち、トレイ取出作業とトレイ載置作業とがAGV5の到着までに行われることとなる。
【0071】
また、コンピュータ2は、搬送開始タイミングTcにおいてマガジン搬送指示CcをAGV5に通知し、AGV5は受信したマガジン搬送指示Ccに従って部品保管庫3への移動を開始する。そして、AGV5が部品保管庫3に到着すると、受渡タイミングTdにおいて、部品保管庫3がAGV5により搬送されてきたマガジン44に対してパレット挿入作業を実行する。こうして、マガジン構成情報が示すマガジン44が部品保管庫3によって準備される。
【0072】
こうして準備されたマガジン44は、AGV5によって部品実装機6に搬送されて、補給タイミングTsにおいて、AGV5が保持するマガジン44cから部品実装機6内のマガジン44uにパレット43が挿入される(部品補給)。そして、AGV5は部品補給完了通知をコンピュータ2に送信する。
【0073】
なお、コンピュータ2は、補給タイミングTsで部品補給が行われるように、準備開始タイミングTpおよび搬送開始タイミングTcを補給タイミングTsに基づき算出する。具体的には、コンピュータ2は、AGV5が移動の作業に要する時間、部品保管庫3がトレイ取出作業、トレイ載置作業およびパレット挿入作業の各作業に要する時間を予め作業標準時間として記憶部392に記憶している。そして、補給タイミングTsから各作業に対して設定された作業標準時間を減算することで、搬送開始タイミングTcおよび補給タイミングTsが算出される。この際、作業標準時間に併せて所定のマージン時間を補給タイミングTsから減算して、搬送開始タイミングTcあるいは補給タイミングTsを算出してもよい。
【0074】
ところで、上述の通りマガジン準備指示Cpは、準備すべきマガジン44の構成を示すマガジン構成情報を含む。かかるマガジン構成情報は、コンピュータ2によって次のようにして作成することができる。
【0075】
図11はマガジン構成情報の作成方法の一例を示すフローチャートである。同図のフローチャートはコンピュータ2の演算部21によって実行される。ステップS101では、生産計画Pおよび基板データDに基づき、部品実装済み基板の生産に使用する部品41と当該部品41の個数とが決定される。ステップS102では、上述した部品残数シミュレーションが実行されて、ステップS103では、部品補給計画が作成される。
【0076】
ステップS104では、部品補給計画が示す各補給タイミングTsで補給する部品がリストアップされる。そして、ステップS105では、使用順序が早い部品ほどマガジン44の高い位置のスロット445に保持されるように、各部品41を挿入するスロット445の番号が設定される。なお、このスロット445の番号の設定によって、ステップS101で参照した基板データDが示す部品41の挿入先となるスロット445と、異なるスロット445に当該部品41を挿入することになる場合がある。そこで、ステップS105でのスロット445の番号の設定に応じて、基板データDが更新される(ステップS106)。
【0077】
以上に説明する実施形態では、マガジン44のスロット445に保持させる部品41を示すマガジン準備指示Cpが、トレイ保管ラック32(トレイ保管部)にトレイ42を保管する部品保管庫3に通知される。これに対して、部品保管庫3には、トレイ取出作業、トレイ載置作業およびパレット挿入作業を含む所定作業を実行する作業ロボット36(作業実行部)が具備されており、マガジン準備指示Cpが示す部品41をスロット445に保持するマガジン44が、作業ロボット36によって準備される。こうして、部品41を収納するトレイ42が載置されたパレット43がスロット445に挿入されたマガジン44を自動的に準備することができ、部品補給における省人化が可能となっている。
【0078】
また、コンピュータ2(制御装置)は、部品実装機6によって部品41を基板に実装することで部品実装済み基板を生産する生産計画Pに基づき部品実装機6に部品41を補給する補給タイミングTsを算出する。さらに、コンピュータ2は、補給タイミングTsで補給予定の部品41をスロット445に保持するマガジン44の準備を補給タイミングTsに応じて実行することを示すマガジン準備指示Cpを部品保管庫3に通知する。かかる構成では、部品41を収納するトレイ42が載置されたパレット43がスロット445に挿入されたマガジン44を、部品実装機6への部品41の補給タイミングTsに応じて準備することができる。
【0079】
また、コンピュータ2は、補給タイミングTsで補給予定の部品41をスロット445に保持するマガジン44の準備のための作業(トレイ取出作業、トレイ載置作業)を補給タイミングTsより前に開始することを要求するマガジン準備指示Cpを部品保管庫3に通知する(すなわち、準備開始タイミングTpでマガジン準備指示Cpを通知する)。そして、作業ロボット36は、マガジン準備指示Cpが示す部品41をスロット445に保持するマガジン44の準備のための作業(トレイ取出作業、トレイ載置作業)を補給タイミングTsより前に開始する。かかる構成では、部品41を収納するトレイ42が載置されたパレット43がスロット445に挿入されたマガジン44を、部品実装機6への部品41の補給タイミングTsに応じて速やかに準備することができる。
【0080】
また、コンピュータ2は、生産計画Pに従って部品41を基板に実装する部品実装機6における部品41の残数の時間変化を予測するシミュレーションを実行した結果に基づき補給タイミングTsを算出する。かかる構成では、部品41を収納するトレイ42が載置されたパレット43がスロット445に挿入されたマガジン44を、部品実装機6での部品残数の時間変化に即した適切なタイミングで準備することができる。
【0081】
また、マガジン44には、マガジン44を識別するマガジンID44dが付されており、コンピュータ2は、マガジン準備指示Cpの対象となるマガジン44のマガジンID44dと、マガジン準備指示Cpとを対応付けて、部品保管庫3に通知する。一方、部品保管庫3は、搬送されてきたマガジン44のマガジンID44dを読み取るIDリーダ371(マガジンIDリーダ)を有し、作業ロボット36は、IDリーダ371により読み取られたマガジンID44dに対応するマガジン準備指示Cpに従って、マガジンID44dが付されたマガジン44のスロット445に部品41を保持させる。かかる構成では、IDリーダ371により読み取ったマガジンID44dに基づき、当該マガジンID44dが付されたマガジン44のスロット445に適切な部品41を保持させることができる。
【0082】
また、トレイ42には、トレイ42に載置される部品41を識別する部品ID41dが付されている。これに対して、マガジン準備指示Cpは、マガジン44のスロット445に保持させる部品41の部品ID41dとスロット445とを対応付けて示す(パレット構成情報)。そして、作業ロボット36は、マガジン準備指示Cpが示すスロット445と部品ID41dとの対応関係に応じて、部品ID41dの部品41をスロット445に保持させる。かかる構成では、スロット445に対して、当該スロット445に対応する部品ID41dの部品41を適切に保持させることができる。
【0083】
また、部品保管庫3は、パレット43を収納するパレット保管ラック33(パレット保管部)を有する。そして、作業ロボット36は、トレイ保管ラック32に保管されるトレイ42のうち、マガジン準備指示Cpが示す部品41を収納するトレイ42を、パレット保管ラック33に保管されるパレット43のうちの一のパレット43に載置してから、一のパレット43をスロット445に挿入することで、マガジン準備指示Cpが示す部品41をスロット445に保持するマガジン44を準備する。かかる構成では、部品41を収納するトレイ42が載置されたパレット43を空のスロット445に挿入することで、上記のようにマガジン44を準備することができる。
【0084】
このように上記の実施形態では、コンピュータ2が本発明の「制御装置」の一例に相当し、部品保管庫3が本発明の「部品保管庫」の一例に相当し、コンピュータ2と部品保管庫3とが協働して本発明の「部品保管システム」の一例として機能し、トレイ保管ラック32が本発明の「トレイ保管部」の一例に相当し、パレット保管ラック33が本発明の「パレット保管部」の一例に相当し、作業ロボット36が本発明の「作業実行部」の一例に相当し、IDリーダ371が本発明の「マガジンIDリーダ」の一例に相当し、部品41が本発明の「部品」の一例に相当し、トレイ42が本発明の「トレイ」の一例に相当し、パレット43が本発明の「パレット」の一例に相当し、マガジン44が本発明の「マガジン」の一例に相当し、スロット445が本発明の「スロット」の一例に相当し、AGV5が本発明の「無人搬送車」の一例に相当し、マガジン準備指示Cpが本発明の「マガジン準備指示」の一例に相当し、生産計画Pが本発明の「生産計画」の一例に相当し、補給タイミングTsが本発明の「補給タイミング」の一例に相当し、部品ID41dが本発明の「部品ID」の一例に相当し、マガジンID44dが本発明の「マガジンID」の一例に相当する。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、AGV5が搬送してきたマガジン44は、筐体35内の出庫部34に移載され、作業ロボット36は、出庫部34上のマガジン44に対してパレット挿入作業を実行する。しかしながら、次に示すように、部品保管庫3に出庫部34を設ける必要は必ずしもない。
【0086】
図12Aは部品保管庫の第1変形例の内部構成を模式的に示す平面図であり、
図12Bは
図12Aの部品保管庫の内部構成を模式的に示す側面図である。ここでは、上記との差異部分を中心に説明することとし、共通部分については相当符号を付して適宜説明を省略する。この取り扱いは、以下に示す変形例についても同様である。
【0087】
この変形例に係る部品保管庫3の筐体35は、マガジン44の形状に即した矩形状の出庫窓353を有し、この出庫窓353は図示を省略する扉によって開閉される。AGV5によって部品保管庫3まで搬送されてきたマガジン44は、部品保管庫3の筐体35に外側から接触しつつ、出庫窓353を介して筐体35の内部に対向する。この際、マガジン44の筐体441が有する開口442の周縁は、部品保管庫3の筐体35が有する出庫窓353の周縁と接触する。この際、筐体35において出庫窓353の周縁に設けられたゴムなどのシール部材によって、部品保管庫3の筐体35とマガジン44の筐体441とを密着させてもよい。そして、作業ロボット36は、筐体35の外側でAGV5によって支持されるマガジン44に対してパレット挿入作業を実行する。
【0088】
かかる変形例では、出庫部34を設ける必要がないため、部品保管庫3を小型化できる。また、AGV5と出庫部34との間でマガジン44を受け渡す必要がないため、作業時間の短縮を図ることができる。
【0089】
図13は部品保管庫の第2変形例の内部構成を模式的に示す平面図である。この変形例に係る部品保管庫3の筐体35は、保管部354および中間作業部355に区分けされている。保管部354には、トレイ保管ラック32が配置されている。このトレイ保管ラック32には、部品41を収納するトレイ42がパレット43に載置された状態で保管されており、保管部354は、トレイ42を載置したパレット43を中間作業部355に向けて出庫する。中間作業部355には、作業ロボット36が配置されており、作業ロボット36は、保管部354から出庫されたパレット43を、AGV5によって支持されるマガジン44のスロット445に挿入する。
【0090】
図14Aは部品保管庫の第3変形例の内部構成を模式的に示す平面図であり、
図14Bは
図14Aの部品保管庫の内部構成を模式的に示す側面図である。この変形例に係る部品保管庫3は、筐体35内にマガジン44を保管し、クレーン等で構成された搬送装置37によって筐体35内でマガジン44を動かすことができる。かかる部品保管庫3では、次のようにしてマガジン準備指示Cpに応じたマガジン44を準備する。
【0091】
部品保管庫3は、マガジン準備指示Cpを受信すると、筐体35内のマガジン44を搬送装置37によって出庫部34の上に乗せるとともに、当該マガジン44のマガジンID44dをIDリーダ371によって読み取る。そして、マガジン準備指示Cpに従って上述と同じ要領でトレイ取出作業、トレイ載置作業およびパレット挿入作業を実行することで、マガジン44のスロット445に部品41を保持させる。また、部品保管庫3の制御部391は、マガジン44のマガジンID44dと、マガジンID44dのスロット445に保持させた部品ID41dとの対応関係を、通信部393によってコンピュータ2に通知する。なお、部品ID41dは、保管情報Isを参照することで確認できる。
【0092】
そして、AGV5が部品保管庫3に到着すると、部品保管庫3の運搬装置37は、AGV5が支持するマガジン44を筐体35内に回収する。次に、運搬装置37は、出庫部34に準備されているマガジン44をAGV5に載置する。そして、AGV5は、マガジン44を部品実装機6等の搬送先に搬送する。
【0093】
このように、部品保管庫3が保管していたマガジン44のスロット445に部品41を保持させることで、マガジン準備指示Cpが示すマガジン44を準備する。したがって、AGV5は、部品保管庫3までマガジン44を搬送する必要がない。また、マガジン44のマガジンID44dとマガジン44のスロット445に保持させた部品ID41dとの対応関係がコンピュータ2に通知される。これによって、コンピュータ2は、マガジン44がスロット445に保持する部品41を、マガジンID44dと部品ID41dとの対応関係に基づき的確に確認することができる。したがって、コンピュータ2は、準備されたマガジン44に保持される部品41を補給すべき部品実装機6とマガジン44との対応関係に基づき、マガジン44を対応する部品実装機6にまでAGV5に搬送させて、マガジン44が保持する部品41をこの部品実装機6に補給するといった制御を実行できる。
【0094】
また、上記の実施形態では、作業ロボット36は、パレット保管ラック33に保管されたパレット43にトレイ42を載置して、このパレット43をマガジン44のスロット445に挿入することで、マガジン準備指示Cpが示すマガジン44を準備する。しかしながら、作業ロボット36は、搬送されてきたマガジン44のスロット445に挿入されているパレット43に、トレイ保管ラック32から取り出したトレイ42を載置することで、マガジン準備指示Cpが示すマガジン44を準備してもよい。
【0095】
この場合、マガジン準備指示Cpは、マガジン44のスロット445に保持させる部品41の部品ID41dを、スロット445に挿入されたパレット43のパレットID43dに対応付けて示す。かかるマガジン準備指示Cpを受信した部品保管庫3の制御部391は、搬送されてきたマガジン44のスロット445からパレット43を作業ロボット36によって引き出して、このパレット43のパレットID43dをIDリーダ371によって読み取る。
【0096】
そして、制御部391は、IDリーダ371で読み取ったパレットID43dに対応する部品ID41dをマガジン準備指示Cpに基づき確認して、この部品ID41dの部品41を収納するトレイ42を作業ロボット36によってトレイ保管ラック32から取り出す。こうして取り出されたトレイ42は、マガジン44のスロット445から引き出されているパレット43に作業ロボット36により載置される。そして、このパレット43は、作業ロボット36によってスロット445の奥へ押し戻される。
【0097】
また、上記の実施形態では、AGV5がマガジン44を搬送する。このAGV5のマガジン44の搬送は、部品保管庫3によって準備されたマガジン44に保持される部品41を部品実装機6に補給するために、コンピュータ2の制御に基づき実行される。そこで、コンピュータ2、部品保管庫3およびAGV5の動作を同期させるのが好適となる。そこで、次のようにステータスを共有して、お互いの動作を確認するように構成してもよい。
【0098】
図15はコンピュータ、部品保管庫およびAGVの動作の同期のためにステータスを共有する手法の一例を示す図である。この例では、ステータスが「-1」~「8」の整数で識別されており、各ステータスが示す動作が「意味」において示されている。そして、「書く」の欄に示す送信側装置(コンピュータ2、部品保管庫3およびAGV5)がファイルにステータス番号を書き込むと、「読む」の欄に示す受信側装置(コンピュータ2、部品保管庫3およびAGV5)にこのファイルが転送されて、受信側装置がファイルに書き込まれたステータスを読む。そして、受信側装置がステータスに応じたアクションを実行する。これによって、コンピュータ2、部品保管庫3およびAGV5の動作を同期させることができる。
【0099】
なお、マガジン44の搬送は、AGV5によらずに、作業者によって実行されてもよい。この場合、コンピュータ2は、部品保管庫3および部品実装機6に搬送すべきマガジン44のマガジンID44dを、UI23によって作業者に報知する。作業者は、IDリーダによってマガジンID44dを確認するとともに、UI23によって搬送先を確認しつつ、該当のマガジン44を部品保管庫3および部品実装機6に搬送する。
【0100】
あるいは、作業者は、部品実装機6における部品41の残数をUI23によって確認して、部品実装機6のマガジン44に補給すべき部品41を自ら判断することもできる。この場合には、マガジン準備指示Cpは、作業者によるUI23への入力操作に基づき作成される。これによって、作業者は、補給が必要と判断した部品41をスロット445に保持するマガジン44を部品保管庫3に準備させることができる。
【0101】
また、上記実施形態では、パレット押出治具45を用いて、AGV5が保持するマガジン44cから部品実装機6内のマガジン44uにパレット43を挿入することで、部品41を補給する。しかしながら、AGV5が保持するマガジン44cと、部品実装機6内のマガジン44uとを交換することで、AGV5に部品41を補給してもよい。このマガジン44の交換作業は、AGV5の作業ロボット54により実行するように構成してもよいし、部品実装機6内に設けられたクレーンなどの運搬装置によって実行するように構成してもよい。
【0102】
また、上記の実施形態では、トレイ保管ラック32に保管されるトレイ42の出庫順序については特に説明していない。しかしながら、同一種類の部品41を収納するトレイ42が複数保管されている場合には、これらの出庫順序にはバリエーションがある。例えば、トレイ保管ラック32に保管された時期が早い順にトレイ保管ラック32から取り出して、マガジン44に挿入してもよい。この場合には、古い部品41から優先的に出庫される。また、中古のトレイ42を保管する運用としている場合には、トレイ42に収容される部品41の残数が少ない順にトレイ保管ラック32から取り出して、マガジン44に挿入してもよい。この場合、生産計画Pの実行に伴って補給先の部品実装機6で使用される個数以上であるトレイ42のうち、最も少ない部品41を収納するトレイ42をトレイ保管ラック32から取り出して、マガジン44に挿入してもよい。あるいは、入庫の際に付与した部品ID41dの順に、トレイ保管ラック32から取り出して、マガジン44に挿入してもよい。
【0103】
また、部品実装機6では、トレイ42によって供給される部品41の他に、テープフィーダによって供給される部品を基板に実装することができる。この場合、部品を収納するテープが巻き回されたリールがテープフィーダに装着されることで、テープフィーダに部品が補給される。この際、コンピュータ2は、テープフィーダに装着されたテープ内の部品残数が所定の閾値以下となると、残数警告を出して、新たなリールを当該テープフィーダに装着する部品補給を行うようにAGV5あるいは作業者に報知する。
【0104】
また、補給タイミングTsの設定方法は、上記の例に限られない。例えば、
図9の例では、補給タイミングTsは、補給可能時間帯Twの中央に設定されているが、補給開始タイミングTeを補給タイミングTsに設定してもよい。これによって、速やかに部品41の補給を行うことができる。あるいは、コンピュータ2は、テープフィーダ用のリールの運搬をAGV5あるいは作業者が実行する期間(換言すれば、テープフィーダへの部品補給を報知した期間)を避けて補給タイミングTsを設定してもよい。
【0105】
また、
図10に示す例では、部品保管庫3は、マガジン準備指示Cpを受信すると、直ちに作業を開始する。しかしながら、作業開始時刻を含むマガジン準備指示Cpをコンピュータ2から部品保管庫3に送信して、部品保管庫3は、受信したマガジン準備指示Cpが示す作業開始時刻になってから作業を開始してもよい。
【符号の説明】
【0106】
2…コンピュータ(制御装置)
3…部品保管庫
32…トレイ保管ラック(トレイ保管部)
33…パレット保管ラック(パレット保管部)
36…作業ロボット(作業実行部)
371…IDリーダ(マガジンIDリーダ)
41…部品
41d…部品ID
42…トレイ
43…パレット
44…マガジン
44d…マガジンID
445…スロット
5…AGV(無人搬送車)
Cp…マガジン準備指示
P…生産計画
Ts…補給タイミング