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特許7383862収着分析のための反転ウィック型温度制御システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】収着分析のための反転ウィック型温度制御システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/08 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G01N15/08 H
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021544467
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 IB2020050645
(87)【国際公開番号】W WO2020157646
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】16/263,834
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521336244
【氏名又は名称】アントン パール クアンタテック インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガデア ラモス、エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、マーティン アレキサンダー
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-099344(JP,U)
【文献】米国特許第4693124(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液体を提供されたコンテナの中の収着分析を実行するためのサンプル容器組立体であって、前記サンプル容器組立体は、
前記コンテナ内に吊り下げられるよう構成されるサンプル容器であって、前記サンプル容器のサンプル端において、分析されるサンプルを保持するためのサンプル保持領域を有する、サンプル容器と、
前記サンプル容器上に配置され、前記サンプル保持領域を囲むウィックであって、前記サンプル容器が前記コンテナの中で分析位置に配置されるとき、前記ウィックは前記サンプル保持領域から延在して、前記コンテナの底部に向かって突出し、前記サンプル保持領域にわたって前記冷却液体を吸い上げる、ウィックと
を備えるサンプル容器組立体。
【請求項2】
前記ウィックは、ウィックベースと、前記ウィックベースと係合するウィック蓋とを有し、前記ウィックベースおよび前記ウィック蓋はその間の空洞を画定し、前記空洞はその内に前記サンプル保持領域を受け入れるのに必要な大きさにされる、請求項1に記載のサンプル容器組立体。
【請求項3】
前記サンプル容器は、サンプルを前記サンプル容器内に挿入するためのステムを有し、前記ウィック蓋は、前記ウィック蓋内に形成された開口であって、前記ステムを受け入れ、前記ウィック蓋が前記ステムに沿って前記ウィックベースへスライドされることを可能にする、開口を含む、請求項2に記載のサンプル容器組立体。
【請求項4】
前記サンプル容器は、直線状の壁を有するステムを有し、前記サンプル保持領域は前記ステムと相対的に拡張された直径により画定される球根形の部分を有する、請求項2に記載のサンプル容器組立体。
【請求項5】
前記ウィックベースはその内に形成された前記空洞を含み、前記空洞はその中に前記球根形の部分と前記ウィック蓋とを受け入れるのに必要な高さを有する、請求項4に記載のサンプル容器組立体。
【請求項6】
前記ウィック蓋は、その内に形成された前記空洞を含み、前記ウィックベースは、ショルダを画定する段を伴う外面を含み、前記ウィック蓋が前記ウィックベース上に配置されるとき、前記ウィック蓋は前記ショルダに接する端を含む、請求項4に記載のサンプル容器組立体。
【請求項7】
前記サンプル容器は実質的に直線状の壁で囲まれたサンプル容器であり、前記ウィックは、前記サンプル容器を受け入れるための空洞を有する円筒ウィックである、請求項1から6のいずれか1項に記載のサンプル容器組立体。
【請求項8】
前記ウィックが前記サンプル容器上へ載置されるとき、前記サンプル保持領域の上限に前記ウィックの端の位置を定着させるための止め部
を更に備える請求項7に記載のサンプル容器組立体。
【請求項9】
前記止め部は、前記サンプル容器上に設けられるマークにより画定され、前記マークは前記ウィックのアライメント位置を示す、請求項8に記載のサンプル容器組立体。
【請求項10】
前記止め部は、前記サンプル容器上に載置されるとき、前記サンプル容器の中の窪みと、前記ウィックの中にあり、前記ウィックを前記上限にセットするための前記窪みと係合するピンとにより画定される機械的止め部である、請求項8に記載のサンプル容器組立体。
【請求項11】
前記止め部は、前記サンプル容器上に載置されるとき、前記サンプル容器上の突起部と、前記上限に前記ウィックをセットするために前記突起部と係合する前記ウィックの上部エッジとを有する、請求項8に記載のサンプル容器組立体。
【請求項12】
前記ウィックは、前記ウィックが前記サンプル容器上へ載置されるとき、前記サンプル端との係合により前記止め部を画定する深さのあるブラインドホールを有する、請求項8に記載のサンプル容器組立体。
【請求項13】
前記ウィックは、前記サンプル保持領域と実質的に一致する低温体積を画定するために、前記ウィックの端が前記サンプル保持領域の上部から始まるような位置において、前記サンプル容器上に配置される、請求項1から12のいずれか1項に記載のサンプル容器組立体。
【請求項14】
前記ウィックは断絶材により覆われる、請求項1から13のいずれか1項に記載のサンプル容器組立体。
【請求項15】
収着分析を受けるサンプルを含むサンプル保持領域を有するサンプル容器のためのウィック組立体であって、
ウィックベースと、
前記ウィックベースと係合するウィック蓋であって、前記ウィックベースおよび前記ウィック蓋はその間の空洞を画定する、ウィック蓋と
を備え、
前記空洞は、その中に前記サンプル保持領域を受け入れるのに必要な大きさにされる、
ウィック組立体。
【請求項16】
前記ウィック蓋は、その内に形成された開口であって、前記サンプル容器のステムを受け入れ、前記ウィック蓋が前記ステムに沿って前記ウィックベースへスライドされることを可能にする開口を有する、請求項15に記載のウィック組立体。
【請求項17】
前記ウィックベースは、その中に形成された前記空洞を有し、前記空洞は前記ウィック蓋の外径を受け入れるための内径を有する、請求項15または請求項16に記載のウィック組立体。
【請求項18】
前記ウィック蓋はその中に形成された前記空洞を有し、前記ウィックベースは、ショルダを画定する段を伴う外面を有し、前記ウィック蓋が前記ウィックベース上に配置されるとき、前記ウィック蓋は、前記ショルダに接する端を有する、請求項15または請求項16に記載のウィック組立体。
【請求項19】
収着分析を実行する方法であって、前記方法は、
サンプル保持領域をサンプル容器の端に有する前記サンプル容器を設ける段階と、
ウィックを前記サンプル保持領域にわたって前記サンプル容器上に配置する段階であって、前記ウィックは前記サンプル容器から遠くへ、前記サンプル容器の前記端から突出する、段階と
を備える方法。
【請求項20】
ある高さ位置にまで冷却液体で満たされたコンテナを設ける段階と、
前記ウィックを伴う前記サンプル容器を、前記ウィックが前記コンテナの底部の方へ向けられ、前記ウィックの端が前記冷却液体の前記高さ位置よりも下方にあるような位置で、前記コンテナに載置する段階と
を更に備える請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
吸着分析器と共に使用される温度制御装置。
【背景技術】
【0002】
吸着分析は、固体材料のポロシティおよび表面部分の特徴を表すのに使用される。典型的な分析では、分析対象の固体は極低温にまで冷却される。
【0003】
本発明は、気体収着方法による孔径判定および具体的な表面判定の分野に関する。この方法では、サンプルを包含する容器は、収着工程の間、サンプル容器内部の温度を低く一定に維持させるために、液体窒素のような極低温にある冷却液体で満たされたデュワーの中に浸される。どんな温度変動であっても圧力変動を引き起こし得、これは吸着される気体の量の判定における誤差につながる。
【0004】
サンプル温度を制御するのに様々な技術が利用され得るが、最も一般的なやり方は、ガラスセルの中にサンプルを挿入し、サンプルを保持するセルの部分を極低温液体(例えば液体窒素または液体アルゴン)に浸し、セルに既知量の気体を投与して且つシステムの圧力に従う装置に、セルを接続することである。システムの体積、温度および圧力は知られているので、サンプルとやりとりする気体の量は、実在気体法則を使用して算出できる。
【0005】
サンプルを包含するセルが極低温流体に浸されるとき、この部分の体積は分析温度(低温体積)にまで冷却され、同時にセルの他部分の体積は室温(高温体積)のままである。吸着される量を正確に計算するためには、これらの体積が知られている必要がある。これらの体積は通常、非吸着気体(一般にヘリウム)を使用して算出され、これは吸着分析の開始前または終了後における測定を実行するために使用される。
【0006】
とはいうものの、これらの体積は、正確に吸着を計算するために、吸着分析のすべての間、一定である必要がある(または、吸着分析の間における変動が知られている必要がある)。しかしながら、極低温流体は蒸発するため、極低温流体に浸されるセルの部分は時間と共に変化し、低温体積/高温体積分率は徐々に変化する。
【0007】
この課題を克服するために、様々な解決策が、様々な吸着機器製造業者により開発され、実装されてきた。
【0008】
当技術分野において知られている、定容を保つための1つの選択肢は、極低温液体保持部の位置を変化させることにより、サンプルセルに対する極低温流体高さ位置を一定に維持することである。この機構には、極低温高さ位置プローブと、流体が蒸発するのと同じ速度で極低温液体保持部(デュワー)を上昇させるモータ駆動式システムとが使用される。このシステムの利点は、極低温流体に浸されるサンプルセルの部分が最小に維持され得、それにより、サンプルが極低温流体温度にあることを保証するところである。極低温であるサンプルセル体積の比率が小さいほど、吸着測定の精度が良くなる(下記の吸着吸収量精度に対する低温体積の影響の計算を参照)。このシステムの欠点は、デュワーが時間と共に上昇するので、極低温流体に浸されていないサンプルセルの部分での温度勾配が時間と共に変化し、これにより追加の補正が必要となるところである。この温度制御システムは、例えば米国特許第6,387,704号において開示される。
【0009】
当技術分野において知られている、極低温液体に浸されるサンプルセルにおいて定容を保つ第2の選択肢は、サンプルセルの一部分を、液体の表面の上方に延在させつつ、ウィックで囲むことである。そのような機構は、キリップその他による米国特許第4,693,124号において開示される。この構成であれば、蒸発によりサンプルセルに対する極低温流体の高さ位置は減少するものの、極低温流体温度にまで冷却されるサンプルセル体積の比率は一定である。これは、ウイッキング性材料が、ウィックの上方端部へと、サンプルセルの上方端部へ向かって極低温流体の高さ位置を局所的に上昇させるからである。このシステムの欠点は、極低温に維持されるサンプルセル体積の比率が、先の機構により得られるものよりも必ず大きいところである。
【0010】
当技術分野において知られる第三の方法において、極低温流体の高さ位置は制御されないが、低温体積/高温体積分率の変化は連続的に算出される。そのために、サンプルを保持するセルに類似する空セルがシステムに追加される。空セルは非凝縮気体で満たされ、それに続いて極低温流体蒸発により発生する圧力変化は、サンプルセル内の低温体積/高温体積分率変化を補正するために使用される。この方法の利点は極低温流体高さ位置の厳しい制御を行う必要がないところである。欠点は、システムをより高価にする、追加のハードウェア(セル、圧力トランスデューサ、電子部品・・・)が必要であるところと、発明者たちが正確な吸着分析にとって望ましくないと考えることである、得られる低温体積が非常に大きいという事実である。上記の方法は日機装株式会社の系列会社であるマイクロトラック・ベル株式会社(日本、559-0031、大阪市住之江区南港東8丁目2番52号)により商品化された機器にて利用される。
【0011】
文献(ラモスその他による国際公開2017109246号を参照)には、デュワーの内部に設置され、流体をより高い高さ位置に循環するポンプを使用して極低温液体の高さ位置を一定に維持する他の手法、または蒸発するのと同じ速度で極低温流体を補充することに基づく他の手法などがある。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、極低温液体温度にあるサンプルセル体積の比率を最小に維持しつつ、サンプルセルにおいて一定温度を保持するための装置を提供することである。サンプルセル内で一定温度を保持するための装置は、この一般的な種類の今まで知られている装置および方法の上述の欠点を克服し、吸着測定の分解能を向上する。
【0013】
本発明は、サブ周囲温度の液体の中で直接浸漬から分離された容器の中で一定温度を保つための装置を提案する。装置は、ウイッキング性質および絶縁性質の両方を持つ材料からなる中間コンポーネントを有する。反転ウィックはサンプル容器(セル)のサンプル部分を封入し、冷却液体に向かって下に延在する。 反転ウィックの内部は多孔性であり、冷却液体の容器への移動を可能とし、容器から冷却液体への熱伝達を可能とする。反転ウィックの外部はシーリングされるが、ポリマーフィルムであって、蒸発に起因して冷却液体の高さ位置が時間と共に低下するにつれて、反転ウィックが冷却液体をデュワー内に存在する外部温度勾配から絶縁することを可能にし、また、ウィックの上面に冷却液体の蒸発が発生するように強いるポリマーフィルムによるのが理想的である。
【0014】
この方法が、米国特許第4,693,124号に見られるような従来技術を越えて提供できる利点は、極低温に維持される容器の体積を最小化することで、科学的な収着分析器により実行される分析の精度を増すところであり、この分析において、容器内で測定される気体圧力が、気体法則(一般にPV=nRTZとして示される)を用いることを通して、材料の物理的特性の計算に使用される。この種類の分析において利用される「低温体積」を最小化するということは、分析気体とサンプルとの間のいかなるやり取りも、容器内の圧力に対しより大きな影響を与えることを示唆し、故に、分析器の感度が高められる。
【0015】
吸着分析は、吸着質気体をマニホールドから、あらかじめ空にされたサンプルセルへ投与することで実行される。吸着された量は式から算出され得る。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、
【0018】
【数2】
:マニホールドからのi回の投与後に吸着されるmol
【0019】
【数3】
:ステップiで、マニホールドからサンプルセルへ投与されるmol
【0020】
【数4】
:投与i後のサンプルセルの中の圧力
【0021】
【数5】
:サンプルセル体積
【0022】
【数6】
:分析温度におけるサンプルセルの比率
【0023】
【数7】
:分析温度(K)
【0024】
【数8】
:室温(K)
【0025】
【数9】
:分析温度および圧力Piにおける吸着質の圧縮性係数
【0026】
【数10】
:室温および圧力Piにおける吸着質の圧縮性係数
【0027】
単純化のために、気体の理想的な挙動を仮定することができる。これにより、
【0028】
【数11】
【0029】
セル内での圧力トランスデューサの精度に関連した誤差を計算するために、測定された圧力に対する吸着された吸収量の偏微分が実行される:
【0030】
【数12】
【0031】
機器が25℃の部屋にあり、冷却液体が-196℃の液体窒素であると仮定すると:
【0032】
【数13】
【0033】
【数14】
【0034】
そして簡素化すると:
【0035】
【数15】
【0036】
この式より、固定されたセル体積に対して、分析温度(x)でのサンプルセルの比率が小さいほど、圧力トランスデューサ精度に関連した、算出された吸着された吸収量における誤差が小さくなることが容易にわかる。
【0037】
先述のおよび他の目的を目的として、冷却液体が提供されたコンテナ内で収着分析を実行するためのサンプル容器組立体を提供する。サンプル容器組立体は、コンテナの中に吊り下げられるよう構成されるサンプル容器を含む。サンプル容器は、分析されるサンプルを保持するためのサンプル保持領域を、容器のサンプル端において有する。ウィックはサンプル容器上に配置され、サンプル保持領域を囲む。サンプル容器がコンテナ内の分析位置に配置されるとき、ウィックは、サンプル保持領域から延在して、コンテナの底部に向かって突出し、サンプル保持領域より上の冷却液体を吸い上げる。
【0038】
本発明の別の特徴によると、ウィックはウィックベースと、ウィックベースと係合するウィック蓋とを含む。ウィックベースおよびウィック蓋はその間の空洞を画定する。空洞はその内にサンプル保持領域を受け入れるのに必要な大きさにされる。
【0039】
本発明の更なる特徴によると、サンプル容器は、サンプル容器に対してサンプルを挿入するためのステムを有し、ウィック蓋は、その内に形成された開口であって、ステムを受け入れ、蓋がステムに沿ってウィックベースへスライドされることを可能にする、開口を有する。
【0040】
本発明の更なる特徴によると、サンプル容器は直線状の壁をもつステムを有し、サンプル保持領域はステムと相対的に拡張された直径により画定される球根形の部分を有する。
【0041】
本発明の追加の特徴によると、ウィックベースは、その内に形成された空洞を有する。空洞は球根形の部分とウィック蓋をその内に受け入れるのに必要な高さを有する。
【0042】
本発明の追加の特徴によると、ウィック蓋は、その内に形成された空洞を有する。ウィックベースは、ショルダを画定する段を伴う外面を持つ。ウィック蓋は、ウィック蓋がウィックベース上に配置されるとき、ショルダに接する端を有する。
【0043】
本発明の別のモードによると、サンプル容器は、実質的に直線状の壁で囲まれたサンプル容器であり、ウィックは、サンプル容器を受け入れるための空洞を有する円筒ウィックである。
【0044】
本発明の更なるモードによると、ウィックがサンプル容器上に載置されるとき、ウィックの端の位置をサンプル保持領域の上限において定着させるための止め部が設けられる。
【0045】
本発明の追加モードによると、止め部はサンプル容器上に与えられるマークにより画定され、マークはウィックのアライメント位置を示す。
【0046】
本発明の更に別の特徴によると、止め部は、サンプル容器上に載置されるとき、サンプル容器内の窪みと、上限にウィックをセットするために窪みと係合するウィックの中のピンとにより画定される機械的止め部である。
【0047】
本発明のまだ更なる特徴によると、止め部は、サンプル容器上に載置されるとき、サンプル容器上の突起部と、上限にウィックをセットするために突起部と係合するウィックの上部エッジとを含む。
【0048】
本発明の更なる追加特徴によると、ウィックは、ウィックがサンプル容器上へ載置されるとき、サンプル端との係合により止め部を画定する、深さのあるブラインドホールを有する。
【0049】
本発明のまだ更なる追加特徴によると、サンプル保持領域と実質的に一致する低温体積を画定するために、ウィックの端がサンプル保持領域の上部から始まるような位置において、ウィックはサンプル容器上に配置される。
【0050】
本発明のまだ一層更なる特徴によると、ウィックは、断絶材により覆われる。
【0051】
本発明の目的を目的として、収着分析を受けるサンプルを持つサンプル保持領域を有するサンプル容器のためのウィック組立体もまた提供される。組立体はウィックベースおよびウィックベースと係合するウィック蓋を含む。ウィックベースとウィック蓋はその間の空洞を画定する。空洞はサンプル保持領域を内に受け入れるのに必要な大きさにされる。
【0052】
本発明の追加の更なるモードによると、ウィック蓋は、その内に形成された開口であって、サンプル容器のステムを受け入れ、蓋がステムに沿ってウィックベースへスライドされることを可能にする、開口を有する。
【0053】
本発明の更なる追加の特徴によると、ウィックベースはその内に形成された空洞を有する。空洞はウィック蓋の外径を受け入れるための内径を有する。
【0054】
本発明の更に別の特徴によると、ウィック蓋はその内に形成された空洞を有する。ウィックベースはショルダを画定する段を伴う外面を有する。ウィック蓋は、ウィック蓋がウィックベース上に配置されるとき、ショルダに接する端を有する。
【0055】
本発明の目的を目的として、収着分析を実行する方法もまた提供される。方法は、容器の端にサンプル保持領域を有するサンプル容器を設けることを含む。ウィックはサンプル保持領域より上のサンプル容器上に配置される。ウィックは容器から遠くへ、容器の端から突出する。
【0056】
本発明のまだ更なるモードによると、方法は、ある高さ位置にまで冷却液体で満たされたコンテナを設けることを含む。ウィックを伴うサンプル容器は、ウィックがコンテナの底部の方へ向けられ、ウィックの端が冷却液体の高さ位置よりも下方にあるような位置で、コンテナに載置される。
【0057】
本発明の特性として考えられる他の特徴は、添付の特許請求の範囲にて説明する。
【0058】
本明細書では、本発明はサンプルセル内で一定温度を保持するための装置で実現されるとして示され、説明されているが、とはいえ示された詳細なものに限定されることを意図しておらず、これは、特許請求の範囲と同等なものの範囲内・幅内で、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変更や構造上の変化がその中でされ得るからである。
【0059】
しかし、その追加の目的と利点と共に本発明の構造とオペレーション方法は、以下の具体的な実施形態の説明が、添付の図面と関連して読まれることにより、最も理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】デュワーフラスコの中で液体の高さ位置の上方にサンプル容器に沿って延在するウィックを有する従来技術機器の断面図である。
【0061】
図2】低温ゾーンを保持するためにデュワーフラスコの高さ位置を制御する従来技術機器の断面図である。
【0062】
図3】実質的に固体であるウィックを有する本発明に係る実施形態の断面図である。
【0063】
図4】管状のウィックを有する本発明に係る実施形態の断面図である。
【0064】
図5】実質的に固体であるウィックを有する本発明に係る実施形態の断面図である。
【0065】
図6A】止め部の実施形態を示す図4の拡大部分である。
【0066】
図6B】止め部の別の実施形態を示す図4の拡大部分である。
【0067】
図6C】止め部の別の実施形態を示す図4の拡大部分である。
【0068】
図6D】止め部の別の実施形態を示す図4の拡大部分である。
【0069】
図6E】止め部の別の実施形態を示す図4の拡大部分である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、キリップその他に開示された装置1を示す。本明細書では、デュワーフラスコ2としてのコンテナが設けられ、液体窒素などの蒸発する冷却液体CLで高さ位置Uにまで満たされる。分析の時間と共に冷却液体CLの高さ位置はより低い高さ位置Lにまで落ちることがわかる。サンプル容器3は、サンプル容器3のベースにて、中にサンプルSをサンプル保持領域SHRに保持するために設けられる。サンプル容器3はサンプル容器3上に配置されるウィック4を有する。図1で見られるように、ウィック4はサンプル保持領域SHRの上方の位置から始まり、そこから上向きに冷却液体CLの高さ位置Lの上方にある高さまで延在する。サンプル保持領域SHRは、フラスコ2の底部に配置され、冷却液体CLに直接さらされる。冷却液体CLが蒸発すると同時に、ウィック4は、冷却液体CLを吸い上げ、長低温ゾーンCZを、ウィック4および冷却液体CLに浸されたウィック4から延在したサンプル容器3の部分の長さにわたって保持する。キリップその他に係る構造は、冷却液体CLの高さ位置がウィックの長さにわたって落ちながらも、長低温ゾーンCZを保つことを可能にする。しかしながら、キリップその他では、サンプル容器3のサンプル保持領域SHRは、サンプル分析の間、冷却液体CLに常に浸される。
【0071】
図2の(A)および(B)は、冷却液体CLの蒸発に適応しながら、(サンプル保持領域の長さにわたって)短低温ゾーンCZを保つ、別の装置1を示す。具体的には、図2の(A)はサンプル分析の開始時での位置にあるデュワーフラスコ2を示す。装置1は冷却液体CLの表面と接触するプローブ7を含む。デュワーフラスコ2の高さ位置は、デュワーフラスコ2が上に載置される移動可能エレベータ(不図示)によってセットされる。エレベータはプローブ7の測定値および対応する電子回路により制御されるように構成される。これに関係して、エレベータは、冷却液体CLがプローブ7と接触することを保つために持ち上げられる。この結果として、冷却液体CLの高さ位置をサンプル容器3に対して一定位置に保持する試みができ、低温ゾーンCZを一定の低温体積で一定温度に保つように試みることができる。図2の(B)は、冷却液体CLの高さ位置が、高さ位置Lよりも低い高さである高さ位置Lに落ちた後の分析における時点を示す。本明細書では、デュワーフラスコ2は高度において上げられ、サンプル容器3はデュワーフラスコ2の底部に近づくことがわかる。図2の(A)および(B)の装置1は、冷却液体CLの高さ位置の低下に反応するプローブ7およびエレベータの能力により制限を受ける。しかしながらこれは、高温体積のより大きな部分がデュワーフラスコの内部にあるという問題を生み出し、これにより高温体積の平均温度に小さな変化が生じ、したがって追加補正が必要となる。したがって、変化を補償するために、追加の算出された補正が必要となる。そのような補正は追加要素の支出を要する。
【0072】
本発明では、サンプル容器3がコンテナ2の分析位置内に配置されるとき、ウィック4はサンプル容器上に配置され、上述のサンプル保持領域SHRを囲み、ウィック4は、サンプル保持領域SHRから延在して、コンテナ2の底部に向かって突出し、サンプル保持領域SHRにわたって冷却液体CLを吸い上げる。ウィック4には、サンプル容器3のサンプル保持領域SHRを受け入れるための空洞4cが設けられる。
【0073】
ウィック4は、10マイクロメートルの平均直径があるポロシティを有する超高分子量ポリエチレンといった、極低温でのパフォーマンスがよいプラスチックでよいが、他の材料でも可能である。重要な特性は、材料のポロシティであり、1から50マイクロメートルまでの平均直径を有するものが好ましい。
【0074】
図3は、実質的に固体であるウィックベース4bが設けられた装置1の第一実施形態を示す。ウィック4には外部絶縁層4iが設けられてよい。図3に見られるように、デュワーフラスコ2には中に吊り下げられたサンプル容器3が設けられる。サンプル容器3は、サンプル容器3のベースにおいて球根状サンプル保持領域SHRへと広がる直線状の壁で囲まれたステム3sを有する。冷却液体CLは、分析開始時おいては高さ位置Lにあり、冷却液体CLのある量が蒸発した後の分析の後続の時点においては高さ位置Lにあることが示されている。本発明の構造に基づくと、分析開始時での高さ位置Lであってもサンプル容器3の下方にあることが可能である。図3では、ウィックベース4bは、その内にサンプル容器3のサンプル保持領域SHRを収容する空洞4cを除いて、固体である。蓋またはプラグ4pはサンプル容器3のステム3s上に配置され、空洞4cの内径と一致させることで空洞4cを塞ぎ、サンプル保持領域SHRを上方から閉じ込める。プラグ4pには、サンプル容器3のステム3sを収容するための開口4paが設けられる。空洞4cは球根状サンプル保持領域およびプラグ4pを中に受け入れるのに必要な高さを有する。したがって、サンプル保持領域SHRに包含されたサンプルSは、ウィック4に囲まれ、低温ゾーンCZは、少なくともサンプル保持領域SHRと対応する。
【0075】
図5は、空洞4cが、サンプル容器3のステム3s上に配置される蓋4pの中に設けられる、別の実施形態を示す。本明細書では、蓋4pはウィックベース4bの外径と係合するIDを有する。蓋4pは、上方からサンプル保持領域を閉じ込め、且つ、ステム3sの受け入れるための開口4paを画定するショルダを有する。ウィックベース4bはショルダを画定する段を伴う外面を有し、ウィック蓋4pは、ウィック蓋4pがウィックベース4b上に配置されるときに、ショルダに接する端を有する。両実施形態において、蓋/プラグ4pは、利用者が手で取り付け/取り外しを行うことを可能とするために、ウィックベース4bとの係合にとってぴったりと合う嵌め合いを有する。
【0076】
従来技術とは反対に、本発明のウィック4は、サンプル保持領域SHRを覆い、サンプル容器のサンプル端3eから延在し、デュワーフラスコ2の底部に向かって下向きに突出する(すなわち、反転ウィック)。ウィック4の下端は、好ましくはデュワーフラスコ2の底面から間隔を空けられる。デュワーフラスコ2における冷却液体CLの高さ位置が冷却液体CLの蒸発に起因して低下するにつれて、ウィック4は重力に逆らった毛管作用を通じて冷却液体CLを吸い上げる。このことで、サンプル容器3を囲むウィック4の長さにわたって、サンプル容器3の周りに冷却液体CLがあるように保たれ、結果的に、冷却液体CLの最初の高さ位置Lよりかなり下方の高さ位置Lに冷却液体があったとしても、ウィック4に囲まれたサンプル容器3の長さにわたって一定温度になる。言い換えると、本発明は、サンプル保持領域SHRに、一定かつ小さな低温体積を設ける。反転ウィックに基づいた構造は、冷却液体CLが蒸発に起因して減少したとしても、サンプル容器3のサンプル保持領域SHRで一定温度が保たれることを可能にする。サンプル保持領域SHRにおける温度は、低温体積を最小に維持しつつ、冷却液体CLが蒸発するなかでデュワーフラスコ2を持ち上げるための追加のプローブおよび/またはメカニズム/回路を必要とすることなく、一定に保持される。本発明の構造はまた、図2の(A)および(B)で示された装置に係るサンプル容器3の浸漬の高さ位置を一定に保つ試みの中で生まれる変化に起因した、追加で算出される補正の必要性を排除する。
【0077】
図4は、ウィック4の空洞4cがウィック4の全長を通して延在する実施形態を示す。もう一つの違いは、図3のサンプル容器3は球根状サンプル保持領域を有する一方で、本実施形態のサンプル容器3はストレートサイド型壁を有することである。図4ではウィックが管状である。図4では、止め部13は、ウィック4がサンプル容器3上へ載置されたとき、前述のサンプル保持領域SHRの上限に、ウィックの端の位置を定着させるために設けられてよい。図6Aに示すように、止め部13は、サンプル容器3上に設けられたマーク13であって、ウィック4のアライメント位置を示すマーク13により画定されることができる。代わりに、図6Bに示すように、止め部13は、ウィック4上部の位置をセットするためにウィック4の端が当接する、サンプル容器3上にある1または複数の突起部13pにより、画定されることも可能である。
【0078】
図6Cに示すように、ピン14pは、サンプル容器3に対する摩擦保持力を加えるために、前述のサンプル容器3と係合するウィック4の内に設けられる。具体的には、ウィック4をサンプル容器3によりしっかりと固定するため、ピン14pがウィック4をその接点でサンプル容器3に対して締め付けるように、ピン14pをウィック4の内に組み込む。図6Dに示すように、止め部13は、サンプル容器3上の1または複数の窪み13iを含み得る。本明細書では、サンプル容器上に載置されるとき、ウィック4を上限にセットするため、ピン14pは窪み13iと係合するように配置される。図6Eで示すように、ウィック4がサンプル容器3上へ載置されるとき、ウィック4は、サンプル容器3のサンプル端3eと係合することで、止め部13を画定するための、深さを持つブラインドホールとしての空洞4cを有することも可能である。
【0079】
本発明は、収着分析を実行する方法を提供する。方法は、サンプル保持領域SHRを端に有するサンプル容器3を設ける段階を含む。ウィック4は、サンプル保持領域SHRにわたってサンプル容器3上に配置される。ウィック4は容器3から遠くへ、容器3の端から突出する。方法は、ある高さ位置にまで冷却液体CLで満たされたコンテナ2を設ける段階と、ウィック4を伴うサンプル容器3を、ウィック4がコンテナ2の底部の方へ向けられ、ウィック4の端が冷却液体CLの高さ位置よりも下方にあるような位置で、コンテナ2に載置する段階を含む。
図1
図2
図3-4】
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E