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特許7383863光ファイバ切断装置および光ファイバ切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】光ファイバ切断装置および光ファイバ切断方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/25 20060101AFI20231114BHJP
   B26D 3/16 20060101ALI20231114BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G02B6/25
B26D3/16 A
B28D5/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548195
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033229
(87)【国際公開番号】W WO2020066407
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2018181495
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗野 伸介
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-089035(JP,A)
【文献】特開昭62-087902(JP,A)
【文献】特開2017-142458(JP,A)
【文献】特開昭62-218908(JP,A)
【文献】特開2007-047812(JP,A)
【文献】特開平06-082637(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128779(US,A1)
【文献】特開平05-080219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00- 6/02
G02B 6/24- 6/255
G02B 6/36- 6/40
G02B 6/46- 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバが載置される本体部と、
前記本体部との間で前記光ファイバを固定するカバー部材と、
固定された前記ガラスファイバ部分を加傷する刃部材と、
加傷された部分において前記ガラスファイバ部分を破断させる破断部材と、
前記刃部材と接触しない位置に、前記光ファイバの破断端部を移動させる退避部材と、を備え、
前記本体部に移動可能に取り付けられて前記刃部材を保持する保持部材を、さらに備え、
前記退避部材は、前記保持部材に取り付けられ、
前記退避部材と前記保持部材との間には、前記退避部材を付勢する付勢部材が設けられ、
前記退避部材は、前記カバー部材により押圧されることで、前記本体部と前記カバー部材との間で固定された前記光ファイバと接触しない位置に移動し、
前記退避部材は、前記付勢部材により付勢されることで、前記本体部と前記カバー部材との間で固定されていない前記光ファイバを前記刃部材と接触しない位置に移動させる、光ファイバ切断装置。
【請求項2】
前記退避部材は、前記刃部材の動きに連動して、前記破断端部を移動させる、請求項1に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項3】
前記退避部材は、前記カバー部材の動きに連動して、前記破断端部を移動させる、請求項1に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項4】
前記刃部材は、円弧に沿って移動する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項5】
前記刃部材は、前記光ファイバの前記ガラスファイバ部分が存在する領域の少なくとも一部を通過するように配置されており、
前記退避部材は、前記円弧に沿って移動する前記刃部材が通過する領域よりも前記円弧の中心に対してより離れた位置に前記破断端部を移動させる、請求項4に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項6】
前記刃部材は、直線に沿って移動する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項7】
前記退避部材は、前記光ファイバをその長手方向中心軸と交差する方向に移動させることで、前記破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
【請求項8】
先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバを、前記光ファイバが載置される本体部とカバー部材との間で固定するステップと、
固定された前記ガラスファイバ部分を刃部材により加傷するステップと、
前記加傷した部分において前記ガラスファイバ部分を破断させるステップと、
前記刃部材を保持する保持部材に取り付けられた退避部材を用いて、前記光ファイバの破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させるステップと、を含み、
前記光ファイバを固定するステップにおいて、前記カバー部材により前記退避部材を押圧することで前記退避部材を前記光ファイバと接触しない位置に配置し、
前記破断端部を移動させるステップにおいて、前記退避部材と前記保持部材との間に設けられた付勢部材により前記退避部材を付勢することで、前記退避部材を移動して当該退避部材を前記光ファイバと接触させて、前記破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させる、光ファイバ切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ切断装置および光ファイバ切断方法に関する。
【0002】
本出願は、2018年9月27日出願の日本出願第2018-181495号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、光ファイバの外周面に加傷可能な刃物と、光ファイバを押して加傷部分から破断させる押し具とを備えた光ファイバ切断器を開示している。当該光ファイバ切断機は、光ファイバへ傷入れした刃物が逆向きに移動されて再び光ファイバへ傷入れするのを阻止する逆走防止機構を備えている。
【0004】
また、特許文献2は、光ファイバを一対のクランプにより固定した後、一対のクランプ間に設けられた切断刃に対して光ファイバ押付部材により光ファイバを押し付けて切断する光ファイバ切断装置を開示している。当該光ファイバ切断装置においては、切断刃を刃台に形成した切断刃取付溝に埋め込むように圧入して固定し、切断刃の刃先部分のみを刃台から突出させている。刃台には、切断後の光ファイバの切断端部を受け止める受け部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2000-089035号公報
【文献】日本国特開2011-131360号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の目的を達成するために、本開示の光ファイバ切断装置は、
先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバが載置される本体部と、
前記本体部との間で前記光ファイバを固定するカバー部材と、
固定された前記ガラスファイバ部分を加傷する刃部材と、
加傷された部分において前記ガラスファイバ部分を破断させる破断部材と、
前記刃部材と接触しない位置に、前記光ファイバの破断端部を移動させる退避部材と、
を備えている。
【0007】
本開示の目的を達成するために、本開示の光ファイバ切断方法は、
先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバを固定するステップと、
固定された前記ガラスファイバ部分を刃部材により加傷するステップと、
前記加傷した部分において前記ガラスファイバ部分を破断させるステップと、
前記光ファイバの破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させるステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願の実施形態に係る光ファイバ切断装置の正面斜視図である。
図2図1の光ファイバ切断装置の背面斜視図である。
図3図1の光ファイバ切断装置の正面図である。
図4】光ファイバ切断装置が備える退避部材を刃部材および保持部材等とともに示す模式図である。
図5】クランプカバーを閉じた状態の光ファイバ切断装置の正面斜視図である。
図6図5に示す状態の光ファイバ切断装置の正面図である。
図7】回動レバーの移動に連動した退避部材の動きを説明するための図である。
図8図7に続いて回動レバーの移動に連動した退避部材の動きを説明するための図である。
図9図8に続いて回動レバーの移動に連動した退避部材の動きを説明するための図である。
図10図9に続いて回動レバーの移動に連動した退避部材の動きを説明するための図である。
図11図10に続いて回動レバーの移動に連動した退避部材の動きを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1の逆走防止機構は、構造が複雑であり、次の光ファイバの切断を開始するためには逆走防止機能を解除するための工程が別途必要となる。
また、特許文献2の光ファイバ切断装置においては、光ファイバが切断された後の工程が開示されていないものの、光ファイバ押付部材を退避させたときに光ファイバの切断端部が切断刃に再び接触して当該切断端部に傷がついてしまう可能性がある。
【0010】
そこで、本開示は、簡便な構成で、光ファイバの切断後に当該光ファイバの破断面やその近傍に傷がついてしまうことを防止可能な光ファイバ切断装置および光ファイバ切断方法を提供することを目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、簡便な構成で、光ファイバの切断後に当該光ファイバの破断面やその近傍に傷がついてしまうことを防止可能な光ファイバ切断装置および光ファイバ切断方法を提供することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の実施形態に係る光ファイバ切断装置は、
(1)先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバが載置される本体部と、
前記本体部との間で前記光ファイバを固定するカバー部材と、
固定された前記ガラスファイバ部分を加傷する刃部材と、
加傷された部分において前記ガラスファイバ部分を破断させる破断部材と、
前記刃部材と接触しない位置に、前記光ファイバの破断端部を移動させる退避部材と、
を備えている。
【0013】
本開示の構成によれば、退避部材を用いて、光ファイバを加傷した後の刃部材に接触しない位置に光ファイバの破断端部を移動させることができる。そのため、簡便な構成で、光ファイバの切断後に当該光ファイバの破断端部(破断面やその近傍)に傷がついてしまうことを防止することができる。
【0014】
(2)前記退避部材は、前記刃部材の動きに連動して、前記破断端部を移動させてもよい。
【0015】
本開示の構成によれば、光ファイバの切断が完了し、次の光ファイバの切断を開始するまでの一連の作業工程において退避部材を移動させることができる。
【0016】
(3)前記退避部材は、前記カバー部材の動きに連動して、前記破断端部を移動させてもよい。
【0017】
本開示の構成によれば、光ファイバの切断が完了し、次の光ファイバの切断を開始するまでの一連の作業工程において退避部材を移動させることができる。
【0018】
(4)前記刃部材は、円弧に沿って移動してもよい。
【0019】
本開示の構成によれば、円弧に沿って移動する刃部材から、光ファイバを退避させることができる。
【0020】
(5)前記刃部材は、前記光ファイバの前記ガラスファイバ部分が存在する領域の少なくとも一部を通過するように配置されており、
前記退避部材は、前記円弧に沿って移動する前記刃部材が通過する領域よりも前記円弧の中心に対してより離れた位置に前記破断端部を移動させてもよい。
【0021】
本開示の構成によれば、円弧に沿って移動する刃部材から、簡便に、光ファイバを退避させることができる。
【0022】
(6)前記刃部材は、直線に沿って移動してもよい。
【0023】
本開示の構成によれば、直線に沿って移動する刃部材から、光ファイバを退避させることができる。
【0024】
(7)光ファイバ切断装置は、前記本体部に移動可能に取り付けられて前記刃部材を保持する保持部材を、さらに備え、
前記退避部材は、前記保持部材に取り付けられ、
前記退避部材と前記保持部材との間には、前記退避部材を付勢する付勢部材が設けられ、
前記退避部材は、前記カバー部材により押圧されることで、前記本体部と前記カバー部材との間で固定された前記光ファイバと接触しない位置に移動し、
前記退避部材は、前記付勢部材により付勢されることで、前記本体部と前記カバー部材との間で固定されていない前記光ファイバを前記刃部材と接触しない位置に移動させてもよい。
【0025】
本開示の構成によれば、刃部材が光ファイバを加傷する際には退避部材が刃部材の動きの邪魔になることが無く、光ファイバの破断後には退避部材が光ファイバを刃部材の移動経路から退避可能な構成を簡便に実現することができる。
【0026】
(8)前記退避部材は、前記光ファイバをその長手方向中心軸と交差する方向に移動させることで、前記破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させてもよい。
【0027】
本開示の構成によれば、簡便な構成により、光ファイバ切断後の刃部材の移動経路から光ファイバを退避させることができる。
【0028】
(9)前記退避部材は、前記光ファイバをその長手方向中心軸に沿って移動させることで、前記破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させてもよい。
【0029】
本開示の構成によれば、簡便な構成により、光ファイバ切断後の刃部材の移動経路から光ファイバを退避させることができる。
【0030】
(10)また、本開示の実施形態に係る光ファイバ切断方法は、
先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバを固定するステップと、
固定された前記ガラスファイバ部分を刃部材により加傷するステップと、
前記加傷した部分において前記ガラスファイバ部分を破断させるステップと、
前記光ファイバの破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させるステップと、を含む。
【0031】
本開示の方法によれば、退避部材を用いて、光ファイバを加傷した後の刃部材に接触しない位置に光ファイバの破断端部を移動させることができる。そのため、簡便な構成で、光ファイバの切断後に当該光ファイバの破断端部(破断面やその近傍)に傷がついてしまうことを防止することができる。
【0032】
(11)前記光ファイバを固定するステップにおいて、退避部材を前記光ファイバと接触しない位置に配置し、
前記破断端部を移動させるステップにおいて、前記退避部材を移動して前記光ファイバと接触させて、前記破断端部を前記刃部材と接触しない位置に移動させてもよい。
【0033】
本開示の方法によれば、刃部材が光ファイバを加傷する際には退避部材が刃部材の動きの邪魔になることが無く、光ファイバの破断後には退避部材が光ファイバを刃部材の移動経路から退避可能な構成を簡便に実現することができる。
【0034】
(本開示の実施形態の詳細)
以下、添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
図1および図2は、本開示の実施形態に係る光ファイバ切断装置とそれに取り付けられるホルダの正面斜視図および背面斜視図である。図3は、光ファイバ切断装置の正面図である。
【0036】
光ファイバ切断装置1は、本体部10と、クランプカバー20と、を備えている。本体部10は、ホルダ固定部11と、下固定部材12と、ファイバ位置決め部13と、刃部材14と、保持部材15と、退避部材50とを有している。クランプカバー20は、アーム部材21と、回動部材22と、上固定部材23と、取付部材24と、レバー押さえ部25と、破断部材26とを有している。本体部10の下固定部材12と、クランプカバー20の上固定部材23とにより光ファイバ100(図4参照)のガラスファイバ部分をクランプするクランプ部が構成されている。
【0037】
本体部10は、さらに、天板部10Aと、底板部10Bと、天板部10Aと底板部10Bとをつなぐ柱部10Cとを備えている。天板部10Aの上面10A1には、ホルダ固定部11が設けられている。ホルダ固定部11は、光ファイバ100をその保護被覆の部分で保持するホルダ30を固定するために凹状に形成された部位である。ホルダ30は、一例として、その上面に外径の異なる複数種の光ファイバを収容可能なファイバ収容溝31が設けられた構造を有するものである。
【0038】
天板部10Aの上面10A1においてクランプカバー20と対向する位置には、下固定部材12が固定されている。下固定部材12は、一定間隔をおいて配置された一対の下クランプ部12A,12Bを備えている。各下クランプ部12A,12Bは、金属製の台の上面にゴム材がはめ込まれることで形成されている。各下クランプ部12A,12Bは、当該ゴム材の上面(以下、クランプ面12Pとする)に光ファイバ100のガラスファイバ部分が載せられるように構成されている。この一対の下クランプ部12A,12Bは、後述する一対の上固定部材23と対向し、クランプカバー20を閉じることによって光ファイバ100のガラスファイバ部分を挟みこんで固定することができる。
【0039】
下固定部材12のうちホルダ固定部11とは反対側に配置された下クランプ部12Bの外側には、ファイバ位置決め部13が設けられている。ファイバ位置決め部13は、天板部10Aの上面10A1から上方に突出する部材である。ファイバ位置決め部13の中央部には、光ファイバ100のガラスファイバ部分が収容されるガイド溝13Aが設けられている。光ファイバ100は、先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出されている。光ファイバ100の保護被覆部分がホルダ30のファイバ収容溝31に収容され、露出されたガラスファイバ部分が下クランプ部12A,12Bに載置され、更にガラスファイバ部分の先端側がファイバ位置決め部13のガイド溝13Aに収容される。これにより、光ファイバ100が天板部10A上の適切な位置に配置される。
【0040】
一対の下クランプ部12A,12B間には、露出孔16が形成されている。露出孔16から刃部材14が上方に突出している。刃部材14は、円板の周囲に刃が形成されたものから形成されている。図3に示すように、刃部材14の中央には、支持軸14Aが設けられている。
【0041】
保持部材15は、支持軸14Aを介して刃部材14を保持する部材である。保持部材15は、刃保持部41と、回動軸42と、回動レバー43と、金属製の丸棒44とを有している。保持部材15の刃保持部41には、刃部材14の支持軸14Aが取り付けられている。保持部材15は、回動軸42により本体部10の柱部10Cに取り付けられている。回動レバー43は、刃保持部41から側方へ突出するように設けられている。回動レバー43が上下に移動することにより、保持部材15は、回動軸42を中心に本体部10の柱部10Cに対して回動可能に構成されている。そのため、回動レバー43の移動により、刃保持部41に取り付けられた刃部材14が回動軸42を中心に円弧に沿って移動される(円弧運動する)。丸棒44は、回動レバー43の刃保持部41側の領域において、ホルダ30に保持される光ファイバ100の長手方向に沿って、回動レバー43から延出するように設けられている。
【0042】
図4は、退避部材50を刃部材14および保持部材15や上下の固定部材12,23とともに示す模式図である。
図4に示すように、退避部材50は、刃部材14の後面側において、保持部材15の刃保持部41に取り付けられている。退避部材50は、回転軸52を有する軸受部51と、腕部53とを備えている。回転軸52は、例えば、刃保持部41の右端部近傍に設けられている。腕部53は、軸受部51の上端から左方向に延在し、上方に突出する円弧状に形成されている。これにより、腕部53は、刃保持部41に対して、回転軸52を中心に回動自在となっている。
【0043】
退避部材50と刃保持部41との間には、トーションばね55(付勢部材の一例)が設けられている。ねじりコイルばねとも呼ばれるトーションばね55は、コイル部56と、コイル部56の一端から突出する第一腕部57と、コイル部56の他端から突出する第二腕部58とを備えている。コイル部56は、退避部材50の回転軸52に外挿されている。第一腕部57は、退避部材50の軸受部51に固定され、第二腕部58は、刃保持部41に固定されている。これにより、トーションばね55は、腕部53において軸受部51に接続された側の端部(図4における腕部53の右端部)とは反対側の端部(図4における腕部53の左端部)を持ち上げる向きに、回転軸52を付勢する。すなわち、トーションばね55は、回転軸52を時計回りに回転する方向に付勢する。このようなトーションばね55の付勢力により、図4に示す状態(初期状態)においては、腕部53の上面が刃部材14の上縁よりもやや上方に突出している。このように付勢された腕部53をクランプカバー20に設けられた後述の突起部27により押圧することで、トーションばね55の付勢力に抗して、腕部53が下方へ移動可能である。このように、退避部材50の腕部53は、クランプカバー20の動きに伴って、刃保持部41との相対位置が変更可能に構成されている。
【0044】
クランプカバー20は、長尺状のアーム部材21を備えている。アーム部材21は、本体部10の天板部10Aにおいて下固定部材12、ファイバ位置決め部13および刃部材14が配置された領域を覆うように設けられている。アーム部材21は、本体部10に回動部材22を介して回動自在に連結されている。
【0045】
アーム部材21の裏面側には、下固定部材12に対向する位置に上固定部材23が配置されている。上固定部材23は、一定間隔をおいて配置された一対の上クランプ部23A,23Bを備えている。一対の上クランプ部23A,23Bは、取付部材24に取り付けられている。取付部材24は、回動部材22を介して回動自在に天板部10Aおよびアーム部材21に連結されている。また、取付部材24はアーム部材21に設けられた長穴21Aに挿入される突起部24Aを備えている。また、アーム部材21の裏面と上固定部材23との間には、圧縮ばね(不図示)が設けられている。この構成により、上固定部材23は、アーム部材21に対して長穴21Aの長手方向にスライド可能である。
【0046】
レバー押さえ部25は、アーム部材21の回動部材22が設けられた部位とは反対側において、アーム部材21を閉じた状態で本体部10側に向けてアーム部材21から略直角に突出するように設けられている。このレバー押さえ部25は、アーム部材21を閉じるべく回動させた際に、保持部材15の回動レバー43を下方に押圧することができるように上底が幅広な台形(逆三角)形状に形成されている。本体部10に対してクランプカバー20を閉じた際に、レバー押さえ部25により回動レバー43が下方に押圧されて、刃部材14が円弧に沿って移動する。すなわち、刃部材14が円弧運動する。この刃部材14の円弧運動により、上下の固定部材12,23で固定された光ファイバ100のガラスファイバ部分に傷をつけることができる。
【0047】
上クランプ部23A,23B間には、刃部材14によりガラスファイバ部分に付けられた傷を進展させてガラスファイバ部分を破断させるための破断部材26が設けられている。破断部材26は、取付部材24に固定された部材であって、上クランプ部23A,23Bの下面よりわずかに下方に突出するように配置されている。この構成により、回動レバー43の下方移動に基づき円弧に沿って移動された刃部材14によって創傷(加傷)されたガラスファイバ部分を押圧し、傷を進展させて破断させることができる。破断部材26は、一例として、金属製の台の上面にゴム材がはめ込まれたものである。破断部材26で傷を進展させて破断することにより、ガラスファイバ部分を、刃部材14で加傷された部位から確実に破断し、良好な破断面を形成することができる。
【0048】
破断部材26の一端部には、取付部材24とは反対側に突出する突起部27が設けられている。突起部27は、クランプカバー20が本体部10に対して閉じられたときに、刃保持部41に回動可能に取り付けられた退避部材50の腕部53に接触するように配置されている。これにより、クランプカバー20を本体部10に対して閉じる動作に伴って、トーションばね55の付勢力に抗して腕部53が突起部27により下方に移動される。
【0049】
本体部10とクランプカバー20とは、アーム部材21と取付部材24との間に設けられたばね部材(不図示)により互いに開く方向に付勢されている。本体部10の天板部10Aとクランプカバー20とが開いた状態でなす角度(開度)は、一例として約90度に設定される。これにより、切断作業終了後、クランプカバー20から手を離すと、ばね部材の付勢力を利用してクランプカバー20が自動で開放される。そして、ばね部材の付勢力で本体部10とクランプカバー20とを開いた状態で保持できるので、ホルダ固定部11にホルダ30を取り付けることが容易となる。また、ガラスファイバ部分を切断した後、ホルダ30から光ファイバ100を容易に取り外すことができる。
【0050】
次に、上記の光ファイバ切断装置1により光ファイバ100のガラスファイバ部分を切断する際の光ファイバ切断装置1の動作の一例を、図1図11に基づいて説明する。図5は、光ファイバ切断装置1のクランプカバー20を閉じた状態の正面斜視図であり、図6は、図5に示す状態の正面図である。また、図7~11は、回動レバー43の移動に連動した退避部材50の動きを説明するための図である。
【0051】
まず、図1~3に示すように、作業者は、本体部10とクランプカバー20とが開いた状態で、ホルダ固定部11に取り付けられたホルダ30のファイバ収容溝31に、先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバ100の保護被覆部分を収容する。そして、作業者は、光ファイバ100のガラスファイバ部分を下クランプ部12A,12Bに載置するとともに、当該ガラスファイバ部分の先端をファイバ位置決め部13のガイド溝13Aに収容する。
【0052】
この状態で、作業者が開放状態にあるクランプカバー20(アーム部材21)を本体部10へ向けて回動させると、図5および図6に示すように、互いに対向する下クランプ部12A,12Bと上クランプ部23A,23Bとによって、光ファイバ100のガラスファイバ部分が挟み込まれて固定される。
【0053】
このとき、図7に示すように、退避部材50の腕部53は、取付部材24の突起部27により押圧されることで、回転軸52を中心に回動し、トーションばね55の付勢力に抗して下方に移動される。すなわち、腕部53は、光ファイバ100が上下の固定部材12,23により固定された状態で当該光ファイバ100と接触しない位置に移動される。具体的には、腕部53は、その上面が図4の方向(前方向)から見て刃部材14の内側に沈み込むように移動される。
【0054】
そして、レバー押さえ部25が回動レバー43を押圧することにより回動レバー43が下方に移動される。この回動レバー43の下方移動に基づき回動軸42を中心とする円弧に沿って移動された刃部材14によって上下の固定部材12,23間で固定された光ファイバ100のガラスファイバ部分に傷がつけられる。
【0055】
このとき、図8に示すように、回動レバー43の下方移動に応じて、退避部材50の腕部53は、刃部材14と同様に回動軸42を中心とする円弧に沿って移動される。図8の状態においても、腕部53は突起部27により押圧されており、腕部53の上面は、刃部材14の内側に沈み込む位置で維持される。
【0056】
図9に示すように、さらに回動レバー43が下方に移動されると、突起部27が腕部53の上面から外れて、腕部53の右端部に沿って落下する。この突起部27の落下に伴って、破断部材26がさらに下方へ移動し、加傷されたガラスファイバ部分を押圧する。これにより、ガラスファイバ部分の傷を進展させてガラスファイバ部分が破断する。
【0057】
ガラスファイバ部分の切断作業が終了して、作業者がアーム部材21から手を離すと、アーム部材21と取付部材24との間に設けられたばね部材の付勢力によってクランプカバー20(アーム部材21および取付部材24)が開放される(図1等参照)。
【0058】
このとき、図10に示すように、クランプカバー20の自動開放に伴い、退避部材50の回転軸52もトーションばね55の付勢力により、時計回りに回動する。これにより、突起部27により下方に押圧されていた退避部材50の腕部53が上方に移動される。このように上方に移動した腕部53は、光ファイバ100に接触する。
【0059】
その後、作業者が保持部材15の回動レバー43あるいは丸棒44を上方に移動させることで、刃部材14を保持した保持部材15は、回動レバー43が天板部10Aに当接する待機位置に移動される。すなわち、保持部材15は、初期状態へ戻される。
【0060】
図11に示すように、保持部材15の移動に伴って、刃部材14および退避部材50も待機位置(初期状態)へと戻る。このとき、腕部53の上面は、トーションばね55の付勢力により、前方向から見て刃部材14よりも外側(上側)に突出するような位置に付勢されている。すなわち、腕部53の上面は、刃部材14の移動経路の頂点よりも上方に突出している。そのため、光ファイバ100は、刃部材14とともに移動する退避部材50の腕部53の上面を滑りながらさらに上方へ移動される。これにより、光ファイバ100は、光ファイバ切断後の刃部材14の円弧に沿った移動経路に干渉しない位置(具体的には、当該移動経路の頂点よりも上の位置)に移動される。すなわち、光ファイバ100の破断端部が、退避部材50により刃部材14に接触しない位置に移動される。
【0061】
以上説明したように、光ファイバ切断装置1は、先端において所定長さのガラスファイバ部分が露出された光ファイバ100が載置される本体部10と、本体部10との間で光ファイバ100を固定するカバー部材20と、固定された光ファイバ100のガラスファイバ部分を加傷する刃部材14と、加傷された部分において光ファイバ100のガラスファイバ部分を破断させる破断部材26と、を備えている。光ファイバ切断装置1は、さらに、本体部10に移動可能に取り付けられて刃部材14を保持する保持部材15と、保持部材15に取り付けられた退避部材50とを備えている。退避部材50は、刃部材14と接触しない位置に、光ファイバ100の破断端部を移動させる。具体的には、退避部材50と保持部材15との間には、退避部材50を付勢するトーションばね55が設けられている。そして、退避部材50は、クランプカバー20により押圧されることで、本体部10とクランプカバー20との間で固定された光ファイバ100と接触しない位置に移動する。すなわち、本体部10とクランプカバー20との間で光ファイバ100が固定されたときには、退避部材50は、トーションばね55の付勢力に抗して、光ファイバ100と接触しない位置に移動する。また、退避部材50は、トーションばね55により付勢されることで、本体部10とクランプカバー20との間で固定されていない光ファイバ100が刃部材14と接触しない位置に移動する。すなわち、本体部10とクランプカバー20とによる光ファイバ100の固定が解除されたときには、退避部材50は、刃部材14と光ファイバ100とが接触しない位置に移動する。この構成によれば、退避部材50を用いて、光ファイバ100を加傷した後の刃部材14に接触しない位置に光ファイバ100の破断端部を移動させることができる。そのため、光ファイバ100の切断後に当該光ファイバ100の破断端部(破断面やその近傍)に傷がついてしまうことを簡便な構成で防止することができる。また、刃部材14が光ファイバ100を加傷する際には、退避部材50が光ファイバ100に接触しない位置に移動されるため、光ファイバ切断時の刃部材14の動きを邪魔することがない。したがって、光ファイバ100の円滑な切断処理を行うことができ、且つ、切断後の光ファイバ100への予期しない加傷を防止することができる。
【0062】
また、退避部材50は、刃部材14の動きに連動して、切断後の光ファイバ100を移動させる。これにより、光ファイバ100の切断が完了し、次の光ファイバの切断を開始するまでの一連の作業工程において退避部材50を移動させることができる。そのため、作業効率を損なうことなく、切断後の光ファイバ100を刃部材14から退避させることができる。
【0063】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0064】
上記実施形態においては、退避部材50が保持部材15に取り付けられて、刃部材14の動きと連動して退避部材50が移動する構成となっているが、この例に限られない。例えば、退避部材が、本体部10の天板部10Aと保持部材15との間に設けられ、この退避部材が保持部材15や刃部材14の動きとは独立して移動する構成としてもよい。このとき、退避部材は、例えば、クランプカバー20が開いている状態(初期状態)では、露出孔16から上方に露出しないように配置されうる。そして、本体部10に対して閉じられたクランプカバー20が再び開放される際のクランプカバー20の動きに応じて退避部材が露出孔16から上方に突出することが好ましい。具体的には、例えば、クランプカバー20の回動部材22の回転を、偏心カム等を介して退避部材に伝達し、退避部材を上下に移動させるようにしてもよい。これにより、上記実施形態と同様に、刃部材14が光ファイバ100を加傷する際には退避部材が刃部材14の動きの邪魔になることが無く、且つ、光ファイバ100の切断後には光ファイバ100が刃部材14と接触しないように光ファイバ100を退避可能な構成を簡便に実現することができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、刃部材14が円弧に沿って移動することで光ファイバ100の少なくとも一部を加傷する構成となっているが、この例に限られない。例えば、刃部材が直線に沿って移動することによって(直線運動することによって)、光ファイバ100を加傷する構成としてもよい。この場合は、退避部材は、光ファイバ100が加傷された後で直線に沿って移動する刃部材と接触しない位置に光ファイバ100の破断端部を移動させるように構成されうる。このように、切断後の光ファイバ100を退避部材により直線運動する刃部材に接触しない位置に退避させることで、上記実施形態と同様に、光ファイバ100の切断後に当該光ファイバ100の破断面やその近傍に傷がついてしまうことを防止することができる。
【0066】
また、上記実施形態においては、光ファイバ100が本体部10とクランプカバー20との間で固定されていない状態で退避部材50が刃部材14よりも外側に飛び出ることで、退避部材50が光ファイバ100を刃部材14に接触しない位置に退避させる構成となっているが、この例に限られない。例えば、光ファイバ切断後の刃部材14の動きに連動して光ファイバ100をその長手方向中心軸と交差する方向(例えば上方)に移動させることで、光ファイバ100の破断端部を移動可能な機構を備えた退避部材を設けてもよい。具体的には、光ファイバ100を保持するホルダ30を、光ファイバ切断後の刃部材14の動きに連動して傾けるような機構を退避部材として備えることが好ましい。このような退避部材を備えることにより刃部材14と接触しない位置に光ファイバ100の破断端部を移動させることができる。
【0067】
また、例えば、光ファイバ切断後の刃部材14の動きに連動して光ファイバ100をその長手方向中心軸に沿って移動可能な機構を備えた退避部材を設けてもよい。具体的には、光ファイバ100を保持するホルダ30を、光ファイバ切断後の刃部材14の動きに連動して図1に示す後方向にやや移動可能な機構を退避部材として備えることが好ましい。このような退避部材を備えることによっても、刃部材14と接触しない位置に光ファイバ100の破断端部を移動させることができる。このように、光ファイバ100が加傷された後で刃部材14と接触しない位置に、光ファイバ100の破断端部を移動させることができる限りにおいて、退避部材は様々な構成で実現され得る。
【0068】
また、上記実施形態では、退避部材50と刃保持部41との間に設けられたトーションばね55により、退避部材50の回転軸52を時計回りに回転する方向に付勢する構成となっているが、この例に限られない。退避部材50と刃保持部41との間に、例えば、圧縮バネまたは板バネのような付勢部材を設けて、これらの付勢部材の付勢力により、退避部材50の回転軸52を時計回りに回転する方向に付勢する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:光ファイバ切断装置、10:本体部、10A:天板部、10B:底板部、10C:柱部、11:ホルダ固定部、12:下固定部材(固定部材の一例)、13:ファイバ位置決め部(位置決め部の一例)、14:刃部材14:保持部材、16:露出孔、17:磁石、18:ロック機構、20:クランプカバー(カバー部材の一例)、21:アーム部材、21A:長穴、21B:切欠き部、22:回動部材、23:上固定部材、24:取付部材、25:レバー押さえ部、26:破断部材、30:ホルダ、31:ファイバ収容溝、41:刃保持部、42:回動軸、42A:偏心カム領域、42B:カム面、43:回動レバー、44:丸棒、50:退避部材、51:軸受部、52:回転軸、53:腕部、55:トーションばね、56:コイル部、100:光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11