(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】留置針組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20231114BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M5/158 500H
(21)【出願番号】P 2019094783
(22)【出願日】2019-05-20
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-153658(JP,A)
【文献】特開2013-070870(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115315(WO,A1)
【文献】特開2017-195937(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、
前記外針ハブは、前記外針が固定される針接合部と、外部流路に接続される流路接続部と、それら針接合部と流路接続部をつなぐ軟質チューブとを、備えており、
前記内針ハブには先端側へ向かって延びる穿刺操作部が設けられて、該穿刺操作部が
前記針接合部に接続されることなく且つ前記外針を覆わないで該流路接続部の外周に延び出している留置針組立体。
【請求項2】
前記穿刺操作部が前記軟質チューブの外周に延び出している請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記穿刺操作部が筒状とされている請求項1又は2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記穿刺操作部の外面には、手指によって支持される一対の支持面が設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の留置針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液透析や採血などを行う際に用いられる留置針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、経皮的に血管に挿し入れられる外針の基端側に外針ハブが設けられており、外針から外針ハブに至る内部流路を、外針ハブにおいて外部流路に接続可能とした留置針が知られている。
【0003】
また、留置針は、特開2005-270638号公報(特許文献1)に示されているように、基端側に内針ハブを備えた穿刺用の内針と組み合わされて留置針組立体として医療現場へ提供されることも多い。
【0004】
かかる留置針組立体は、外針に挿通された内針を患者の腕などの血管に穿刺し、内針を外針から抜去することで、外針を血管に穿刺した状態で留置することができる。そして、例えば透析用の血液回路に導かれるチューブやシリンジなどの外部流路を外針ハブに接続して、血液透析や採血などの治療に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、留置針組立体の内針を患者の血管に穿刺する際に、穿刺を行う医療従事者は、穿刺時の針先のブレを抑えて正確に穿刺するために、針先により近い位置で留置針組立体を持つことを望む傾向にある。それ故、例えば、特許文献1のように、外針ハブが軟質チューブを備える長尺の構造である場合に、医療従事者が内針ハブよりも針先に近い位置にある外針ハブを持って穿刺を行うこともあり得る。
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、外針ハブは、患者の皮膚や血管壁を刺し通す内針に対して、ある程度の動きが許容されることから、外針ハブを持って穿刺を行うと、内針が安定して支持されず、穿刺時に内針が外針ハブ及び外針に対して動く場合がある。それ故、内針の針先の位置がずれて血管にうまく穿刺されなかったり、外針が内針の針先付近に被さって内針の切れ味が落ちることで穿刺時の痛みが増大することも考えられるという、新規な知見を得るに至った。
【0008】
本発明の解決課題は、穿刺時の痛みを抑えることができると共に、より正確に穿刺することができる、新規な構造の留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第1の態様は、外針ハブを基端側に有する外針に対して、内針ハブを基端側に有する内針が抜去可能に挿通されている留置針組立体において、前記外針ハブは、前記外針が固定される針接合部と、外部流路に接続される流路接続部と、それら針接合部と流路接続部をつなぐ軟質チューブとを、備えており、前記内針ハブには先端側へ向かって延びる穿刺操作部が設けられて、該穿刺操作部が前記針接合部に接続されることなく且つ前記外針を覆わないで該流路接続部の外周に延び出しているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、外針ハブの外周まで延び出した内針ハブ側の穿刺操作部を持って穿刺することにより、外針ハブ側を持って穿刺をする場合のような内針の動きが生じ難く、高精度な穿刺が可能となる。特に、外針ハブが針接合部と流路接続部を軟質チューブで繋いだ長尺の構造とされている場合に、より針先に近い位置で内針側を持つことによって、軟質チューブの変形による針先のブレなどが回避されて、穿刺の精度が向上する。
【0012】
外針の内針に対する移動が防止されることによって、外針が内針の先端部分に被さるのを防いで、内針の先端部分の切れ味が低下するのを回避できる。これにより、内針を患者に穿刺する際の痛みを抑えることができる。
【0013】
第2の態様は、第1の態様に記載された留置針組立体において、前記穿刺操作部が前記軟質チューブの外周に延び出しているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、穿刺操作部がより先端側まで延び出すことによって、針先により近い位置で内針側を持つことができて、高精度な穿刺が可能になる。特に、穿刺操作部が軟質チューブの外周まで延び出すことにより、容易に変形する軟質チューブを持った状態での穿刺が回避され易くなる。
【0015】
第3の態様は、第1又は第2の態様に記載された留置針組立体において、前記穿刺操作部が筒状とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、穿刺操作部の形状安定性が高まることによって、穿刺手技の精度がより高まる。また、外針ハブの外周が筒状の穿刺操作部で囲まれることにより、外針ハブが穿刺操作部によって保護される。
【0017】
第4の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された留置針組立体において、前記穿刺操作部の外面には、手指によって支持される一対の支持面が設けられているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた留置針組立体によれば、一対の支持面を手指で挟むように持つことで、穿刺操作部を安定して支持することができて、穿刺を高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、穿刺時の痛みを抑えることができると共に、より正確に穿刺することができる、新規な構造の留置針組立体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての留置針組立体を示す斜視図
【
図5】
図1に示す留置針組立体の穿刺時の使用状態を示す平面図
【
図6】
図4に示す留置針組立体において、内針を外針から抜去した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1~3には、本発明の第1の実施形態としての留置針組立体10が示されている。留置針組立体10は、外針12に内針14が抜去可能な態様で挿通された構造を有している。以下の説明において、軸方向とは、原則として、外針12及び内針14の針軸方向である
図2中の左右方向を言う。また、先端側とは針先側である
図2中の左側を、基端側とは
図2中の右側を、それぞれ言う。
【0023】
外針12は、合成樹脂などで形成された小径チューブ状とされている。外針12は、先端部分が先端側に向かって次第に小径となるテーパ形状とされている。
【0024】
外針12の基端側には、外針ハブ16が設けられている。外針ハブ16は、全体として筒状とされており、
図4に示すように、針接合部18と流路接続部20が軟質チューブ22によって連結された構造を有している。
【0025】
針接合部18は、硬質の合成樹脂によって形成されている。針接合部18は、
図1~4に示すように、先端に向かって小径となるテーパ筒状とされている。針接合部18の内周には、外針12の基端部分が挿入されて嵌合されている。これにより、外針12は、基端部分に針接合部18が固定されて、針接合部18から先端側へ延び出している。
【0026】
流路接続部20は、後述する外部流路に接続される接続部を基端に有する筒状の構造を有しており、本実施形態においては、
図4に示すように、筒状の弁ハウジング24に止血弁26と押し子28が収容された構造を有している。弁ハウジング24は、筒状とされたカバー部材30の基端部分に、筒状とされた押し子ガイド32の先端部分が挿し入れられて、それらカバー部材30と押し子ガイド32が軸方向で連結されることによって構成されている。押し子ガイド32は、基端部分が略一定の断面形状で軸方向に延びていると共に、基端部には外周へ向けて突出する雄ねじ部34が一体形成されている。
【0027】
止血弁26は、全体として略円板形状とされており、樹脂エラストマやゴムなどの弾性体によって形成されている。止血弁26は、円板形状の中央部分に放射状の切込み35が形成されており、中央部分の弾性変形によって切込み35が開閉されるようになっている。止血弁26の外周部分は、押し子ガイド32の先端と、カバー部材30の内周に保持された弁支持部材36との間で軸方向に挟持されている。これにより、止血弁26が弁ハウジング24によって支持されて、弁ハウジング24の内腔が止血弁26によって遮断されている。
【0028】
押し子28は、筒状とされており、押し子ガイド32の内周に挿入されている。押し子28は、基端部分が略一定の外径寸法とされていると共に、先端部分の外周面が先端側に向かって小径となるテーパ形状とされている。
【0029】
針接合部18と流路接続部20をつなぐ軟質チューブ22は、樹脂エラストマやゴムなどで形成されて湾曲変形可能とされていると共に、断面形状の変化も許容されている。軟質チューブ22が設けられることにより、例えば、外針ハブ16を皮膚に固定した状態で後述する外部流路を外針ハブ16に接続し易くなる。軟質チューブ22の先端部分は、針接合部18と外針12の間に差し入れられて固着されている。軟質チューブ22の基端部分は、流路接続部20のカバー部材30に挿入状態で取り付けられたチューブ連結部材37の内周へ差し入れられて固着されている。これにより、針接合部18と流路接続部20が軟質チューブ22で接続されており、針接合部18の内腔と流路接続部20の内腔が、軟質チューブ22の内腔を介して相互に連通されている。
【0030】
外針12と針接合部18と軟質チューブ22と流路接続部20の各内腔には、内針14が基端側から挿通されている。内針14は、中空の金属針であって、先端面が傾斜面とされることで鋭角の針先が形成されている。
【0031】
内針14の基端側には、内針ハブ38が取り付けられている。内針ハブ38は、内針14の基端部分が挿入状態で固着される台座部40を有しており、台座部40の基端側に連結部42が設けられていると共に、台座部40の先端側にプロテクタ収容部44が設けられている。
【0032】
連結部42は、筒状とされており、内針キャップ46が取外し可能に差し入れられて装着されている。内針キャップ46は、針軸方向の中間部分に段差が設けられた略段付き円筒形状とされている。内針キャップ46には、図示しない通気フィルタが設けられている。この通気フィルタは、気体は通過するが液体は通過しない性質を有しており、通気フィルタが内針キャップ46の内腔に設けられることで、内針14を通じての逆血が外部に漏れ出さないようになっている。なお、内針ハブ38や内針キャップ46を透明とすれば、逆血(フラッシュバック)によって血管への穿刺を容易に確認することができる。
【0033】
プロテクタ収容部44は、筒状とされている。また、プロテクタ収容部44の先端側には、穿刺操作部48が設けられている。穿刺操作部48は、プロテクタ収容部44よりも大径の筒状とされている。穿刺操作部48は、プロテクタ収容部44から先端側へ向かって延びており、内針14が外針12に挿通された状態において、外針ハブ16の一部の外周側を囲むように配されている。即ち、穿刺操作部48は、外針ハブ16の流路接続部20の基端よりも先端側まで延び出して、流路接続部20の外周まで達している。本実施形態の穿刺操作部48は、流路接続部20の先端よりも先端側まで延び出しており、軟質チューブ22の外周まで達している。穿刺操作部48は、10mm以上の長さを有していることが望ましい。
【0034】
図1,2に示すように、穿刺操作部48の外面には、一対の支持面50,50が設けられている。支持面50は、穿刺操作部48の外周面において相互に対応する両側面に設けられて、軸方向に延びている。一対の支持面50,50は、内針14の針先の傾斜面が上向きとなる状態において、上下方向と直交する両側方に位置するように設けられている。一対の支持面50,50は、穿刺操作部48の先端まで達しておらず、先端部分が先端側に向かって側方外側へ傾斜する傾斜面とされている。一対の支持面50,50が穿刺操作部48の先端まで達していないことにより、穿刺操作部48の先端部分が厚肉とされており、穿刺操作部48の先端部分の形状安定性が高められている。また、各支持面50には、穿刺操作部48の周方向に延びる滑止め52が設けられている。滑止め52は、支持面50に突設された突条であって、穿刺操作部48の軸方向に所定の間隔で複数が設けられている。
【0035】
プロテクタ収容部44の内周側には、プロテクタハウジング54が配されている。プロテクタハウジング54は、筒状の収容筒部56と、収容筒部56の先端側の開口を閉塞する蓋体58とを備えている。また、蓋体58は、先端側の板状部と基端側の板状部が軸方向で離れて設けられており、それら板状部の間に針先プロテクタ60が配されている。針先プロテクタ60は、プロテクタハウジング54に収容された固定部材62と遮蔽部材64によって構成されている。固定部材62と遮蔽部材64は、軸直角方向で内針14を挟んで相互に離れて配置されている。固定部材62と遮蔽部材64は、何れか一方が磁石とされていると共に、何れか他方が磁石又は強磁性体とされており、それら固定部材62と遮蔽部材64の間に相互に引き合う磁気的な引力が作用している。固定部材62は、収容筒部56の先端部に固定されている。遮蔽部材64は、固定部材62に対して接近方向へ変位可能とされており、固定部材62と遮蔽部材64の間に内針14が挿通された状態において、固定部材62側への移動が内針14によって阻止されている。
【0036】
プロテクタハウジング54は、コネクタキャップ66によって外針ハブ16に連結されている。コネクタキャップ66は、軸直角方向に広がる底壁部68を備えている。底壁部68は、円環板状とされており、内周端部には先端側へ突出する管状突起70が一体形成されている。底壁部68の外周端部には、先端側へ延び出す周状壁部72と、基端側へ延び出す一対の弾性片74,74とが一体形成されている。
【0037】
周状壁部72は、筒状とされており、内周面に雌ねじ76が設けられている。そして、周状壁部72の内周へ外針ハブ16を構成する押し子ガイド32の基端部分が差し入れられて、押し子ガイド32の雄ねじ部34と周状壁部72の雌ねじ76が螺合することにより、コネクタキャップ66が外針ハブ16の基端部分に取り付けられる。
【0038】
一対の弾性片74,74は、板状とされて、厚さ方向で弾性的な撓み変形を許容されている。一対の弾性片74,74は、突出先端において内周側へ突出する係止爪78がそれぞれ設けられている。係止爪78は、突出先端である内周側に向けて軸方向の幅寸法が小さくなる先細断面形状を有している。そして、一対の弾性片74,74の対向間にプロテクタハウジング54の先端部分が差し入れられて、一対の弾性片74,74の各係止爪78がプロテクタハウジング54に対して軸方向で係止される。これにより、コネクタキャップ66がプロテクタハウジング54に取り付けられており、外針ハブ16とプロテクタハウジング54がコネクタキャップ66を介して連結されている。
【0039】
コネクタキャップ66には、内針ハブ38の穿刺操作部48が外挿されている。これにより、一対の弾性片74,74の外周側への変形が、穿刺操作部48によって規制されて、一対の係止爪78,78によるコネクタキャップ66とプロテクタハウジング54との連結が安定して維持される。
【0040】
このような構造とされた留置針組立体10は、内針14が図示しない患者の腕などの血管に穿刺される。血管への穿刺を行う医療従事者は、
図5に示すように、留置針組立体10の穿刺操作部48を手指で持って適切に保持した状態で、内針14を患者の腕などに穿刺する。医療従事者は、一対の支持面50,50に指先を当てて穿刺操作部48を挟むように持つ。これにより、医療従事者は、安定して内針14を針先から患者に穿刺することができる。
【0041】
穿刺操作部48において医療従事者が指先で持つ部分が、一対の支持面50,50とされていることにより、穿刺操作部48が周方向において位置決めされた状態で保持され易い。また、一対の支持面50,50に滑止め52がそれぞれ設けられていることにより、医療従事者は穿刺方向の力を留置針組立体10に対して効率的に加えることができる。しかも、一対の支持面50,50の先端部分がそれぞれ傾斜面とされていることにより、指先が支持面50,50よりも先端側へ滑り難く、穿刺方向の力をより安心して加えることができる。
【0042】
医療従事者によって支持される穿刺操作部48は、内針14の基端部に固着された内針ハブ38に一体形成されていることから、穿刺操作部48に対する内針14のがたつきなどは生じ難い。従って、穿刺操作部48を持って穿刺を行うことにより、内針14を精度よくコントロールすることができて、正確な穿刺を実現し易くなる。
【0043】
しかも、穿刺操作部48は、従来の内針ハブに比して、より先端側まで延び出していることから、内針14の針先により近い位置で内針14側を持って穿刺を行うことができる。それ故、内針14の穿刺位置をより高精度に調節し易くなって、正確な穿刺を容易に実行することができる。特に、穿刺操作部48が外針ハブ16の外周まで延び出していることから、外針ハブ16を持つことなく、留置針組立体10を針先に近い位置で持つことができる。
【0044】
内針14側に設けられた穿刺操作部48を持つことにより、外針12側に不要な外力が加わり難く、外針ハブ16を持って穿刺を行う場合に比して、外針12と内針14の意図しない相対変位が生じ難い。それ故、例えば、外針12が内針14に対して先端側へ移動して内針14の切先部分が外針12で覆われるのを防ぐことより、内針14の切れ味の低下を防いで、患者の痛みを低減することができる。更に、医療従事者が、内針14の針先の位置を精度よくコントロールし易くなって、正確な穿刺を容易に実行可能となる。
【0045】
特に、軟質チューブ22を備える外針ハブ16に外力が作用すると、軟質チューブ22の変形によって外針12と内針14の相対的な移動などを生じ易いが、内針14側の穿刺操作部48を持つことにより、外針ハブ16には外力が作用し難い。それ故、軟質チューブ22の変形による外針12と内針14の相対的な移動が防止されて、穿刺痛の低減やより正確な穿刺が実現される。
【0046】
なお、内針14及び外針12が患者の血管に穿刺された後、外針12から内針14が抜去されることにより、外針12及び外針ハブ16が患者の血管に挿入された状態で留置される。
【0047】
外針12から引き抜かれた内針14は、
図6に示すように、針先が針先プロテクタ60によって保護される。即ち、内針14が基端側に引き抜かれると、内針14は、コネクタキャップ66に係止されたプロテクタハウジング54に対して、基端側へ相対変位する。そして、内針14の先端が遮蔽部材64よりも基端側まで移動することにより、遮蔽部材64の固定部材62への接近変位が許容されて、遮蔽部材64が内針14の先端側を塞ぐように配置される。これにより、内針14は、針先プロテクタ60に対して先端側への移動が制限されて、プロテクタハウジング54に収容された内針14の針先が外部に露出しなくなる。
【0048】
さらに、内針14に設けられた図示しない突部がプロテクタハウジング54の収容筒部56の基端部に対して軸方向で係止されることにより、内針14からプロテクタハウジング54に引抜力が伝達される。そして、プロテクタハウジング54がコネクタキャップ66に対して基端側へ引かれることにより、プロテクタハウジング54とコネクタキャップ66の係止爪78との係止が解除されて、プロテクタハウジング54がコネクタキャップ66から分離する。これにより、内針14が外針12から分離して取り除かれる。
【0049】
内針14から分離して留置された外針12は、外針ハブ16(
図6参照)からコネクタキャップ66が取り外されて、外針ハブ16の流路接続部20に設けられた雄ねじ部34に対して、図示しない外部流路を構成するチューブやシリンジのコネクタが取り付けられる。これにより、外針12及び外針ハブ16の内腔が、外部流路に接続される。このように、外針ハブ16の雄ねじ部34は、コネクタキャップ66の外針ハブ16への連結と、外部流路の外針ハブ16への連結との両方に用いられる。
【0050】
外針ハブ16に図示しない外部流路が接続されると、押し子28が外部流路によって先端側へ押し込まれる。押し込まれた押し子28が止血弁26に押し当てられて止血弁26を変形させることにより、止血弁26の切込み35が開放される。これにより、外針12及び外針ハブ16の内腔を通じて、患者の血管と外部流路が接続されて、血液透析や採血、薬液の投与などの治療を行うことができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、穿刺操作部の先端位置は、流路接続部の基端よりも先端側であって、外針ハブの外周に位置していれば、特に限定されない。具体的には、例えば、穿刺操作部の先端は、軟質チューブまで達することなく流路接続部の外周に位置していても良いし、軟質チューブよりも先端側に設けられた針接合部の外周に位置していても良い。
【0052】
穿刺操作部は、内針ハブと一体形成されていなくても良く、例えば、内針ハブとは別部材とされて、内針ハブに固定的に取り付けられていても良い。なお、穿刺操作部は、内針ハブに対して離脱可能に取り付けられ得る。
【0053】
穿刺操作部は、筒状に限定されず、例えば、軸直角方向で対向する一対の板状であっても良い。また、穿刺操作部は、例えば、先端側に向かって拡開又は収縮するテーパ状であっても良い。穿刺操作部が先端側に向かって徐々に大径となる形状とされていれば、穿刺時に穿刺方向の力を効率的に加えることができる。穿刺操作部が先端側に向かって徐々に或いは段階的に小径となる形状とされていれば、外針ハブの外周に位置する穿刺操作部がより先端側まで延び出していても、穿刺操作部が患者に触れ難くなって穿刺作業の妨げになり難い。
【0054】
前記実施形態では、平面形状を有する一対の支持面50,50を例示したが、例えば、外周に向かって凹とされた一対の凹面を一対の支持面として採用することもできる。これによれば、穿刺操作部を持つ手指が滑るのをより効果的に防ぐことができる。また、支持面の滑止めは、突起状に限定されず、手指の滑りを防止できれば良い。具体的には、例えば、凹溝状であっても良いし、細かい凹凸が多数形成されたシボ状などであっても良い。支持面は、指先で持つ部位であることを表示して使用者に示す面であり、例えば上述したように形状によって支持面を構成することもできるが、これに限らず、例えば、穿刺操作部にマークなどを付すことで支持面を構成することもできる。
【0055】
医療従事者が指先で持つ支持面は、必ずしも一対だけに限定されない。具体的には、例えば、穿刺操作部48の側面に設けられる一対の支持面50,50に加えて、穿刺操作部48の上面に支持面が設けられていても良い。なお、例えば、穿刺操作部48が略矩形断面とされることにより、患者の体表面側に位置する面を除いた3面をそれぞれ支持面とすることができる。このことからも分かるように、医療従事者が穿刺操作部48を指先で持つ場合に、持ち方は特に限定されるものではない。例えば、親指と中指を穿刺操作部48の側面に設けられる一対の支持面50,50に当てて穿刺操作部48を挟むと共に、穿刺操作部48の上面に人差指を当てるような持ち方もできる。
【0056】
前記実施形態に示した止血弁26や押し子28、プロテクタ収容部44、プロテクタハウジング54、針先プロテクタ60、コネクタキャップ66などは、必要に応じて設けられるものであって、何れも必須ではない。
【符号の説明】
【0057】
10 留置針組立体
12 外針
14 内針
16 外針ハブ
18 針接合部
20 流路接続部
22 軟質チューブ
24 弁ハウジング
26 止血弁
28 押し子
30 カバー部材
32 押し子ガイド
34 雄ねじ部
35 切込み
36 弁支持部材
37 チューブ連結部材
38 内針ハブ
40 台座部
42 連結部
44 プロテクタ収容部
46 内針キャップ
48 穿刺操作部
50 支持面
52 滑止め
54 プロテクタハウジング
56 収容筒部
58 蓋体
60 針先プロテクタ
62 固定部材
64 遮蔽部材
66 コネクタキャップ
68 底壁部
70 管状突起
72 周状壁部
74 弾性片
76 雌ねじ
78 係止爪