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特許7383910電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-13
(45)【発行日】2023-11-21
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20231114BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20231114BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B65D81/34 U
A47J27/00 107
F24C7/02 551G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019112770
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020007045
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018124501
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 靖也
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 和佳子
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 紘基
(72)【発明者】
【氏名】多久島 和弘
(72)【発明者】
【氏名】武本 一平
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-050013(JP,A)
【文献】特開2004-115053(JP,A)
【文献】特開2017-124860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
A47J 27/00
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部にフランジを有し、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体を密封する蓋体とを備えた電子レンジ加熱用蓋付容器であって、
前記蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなり、
前記開口部は、前記フランジと前記シーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域により密封されてなり、
前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、
前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下である、電子レンジ加熱用蓋付容器。
【請求項2】
前記積層体は、前記基材層と前記シーラント層との間に、導電剤を含む発熱印刷層を有する発熱領域と、発熱印刷層を有さない非発熱領域とを有し、
前記蓋付容器の平面方向において、前記ヒートシール領域内の一部に前記発熱領域が配置されてなる、請求項1に記載の蓋付容器。
【請求項3】
前記ヒートシール領域の一部が、容器本体の中央に向かって突出してなる突出部を有する、請求項1又は2に記載の蓋付容器。
【請求項4】
前記剥離強度が10N/15mm以上20N/15mm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の蓋付容器。
【請求項5】
前記剥離強度が0.1N/15mm以上8N/15mm以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の蓋付容器。
【請求項6】
前記内容物として冷凍食品が収容されてなる、請求項1~5の何れか1項に記載の蓋付容器。
【請求項7】
少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなる蓋体であって、下記条件1を満たす、電子レンジ加熱容器用の蓋体。
<条件1>
ポリプロピレンからなる被着体に前記積層体の前記シーラント層を165℃で1.5秒間でヒートシールしてなる積層体を作製する。該積層体の前記被着体と前記シーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、かつ、該積層体の前記被着体と前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、調理済あるいは半調理済等の食品をプラスチック製の密封容器に収納し、食べる時に電子レンジにより加熱調理する包装食品が市場に出回っている。
【0003】
しかし、このような包装食品を電子レンジで密封容器ごと加熱調理すると、食品から発生する蒸気や内部空気の熱膨張により密封容器の内圧が高まり、密封容器が変形したり、密封容器が破裂し、容器内部に収納された食品が飛散したり吹きこぼれたりして電子レンジ内を汚すといった問題がある。
【0004】
上記問題を解決するために、従来、電子レンジで加熱調理する前に、あらかじめ密封容器に尖ったもので孔を開けたり、密封容器の端部をはさみなどで切り取ったりするなどして、密封容器の内圧を逃がす手法が行われていた。
しかし、これらの手法は手間がかかり、さらには、加熱調理の開始直後から蒸気が密封容器外へ放出されてしまうため、蒸気による加熱蒸らし効果が低減し食味を落としていた。かかる問題を解決するために、例えば、特許文献1~4の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-235080号公報
【文献】特開平11-171261号公報
【文献】特開2000-62858号公報
【文献】特開2007-308175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4の技術は、容器と蓋材とを貼り合わせたヒートシール領域を特殊な形状として、密封容器の内圧に基づく負荷をヒートシール領域の特定の箇所に集中させ、該箇所の密封状態を解消して、内圧を逃がすものである。加熱時に密封容器の密封状態を自動的に解消し、内圧を逃がす技術は「自動蒸通」といわれている。
しかし、特許文献1~4の技術を採用した包装食品であっても、電子レンジ加熱時に自動蒸通されず、密封容器が破裂したり、密封容器が変形したりする場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、容器内に収納する食品が冷凍食品である場合には、電子レンジ加熱時の水分の蒸発量が徐々に上昇するのではなく加速度的に上昇し、自動蒸通が間に合わないことが上記問題の原因であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[2]を提供するものである。
[1]開口部にフランジを有し、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体を密封する蓋体とを備えた電子レンジ加熱用蓋付容器であって、前記蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなり、前記開口部は、前記フランジと前記シーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域により密封されてなり、
前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下である、電子レンジ加熱用蓋付容器。
[2]少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなる蓋体であって、下記条件1を満たす、電子レンジ加熱容器用の蓋体。
<条件1>
ポリプロピレンからなる被着体に前記積層体の前記シーラント層を165℃で1.5秒間でヒートシールしてなる積層体を作製する。該積層体の前記被着体と前記シーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、かつ、該積層体の前記被着体と前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器によれば、簡易な手段によって、電子レンジでの加熱過程で上昇した内圧を逃がすことができ、密封容器の破裂や変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のI-I’線断面図である。
図3】本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器の他の実施形態を示す斜視図である。
図4図3のII-II’線断面図である。
図5】本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器を構成する蓋体の一実施形態を示す断面図である。
図6】本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器を構成する蓋体の他の実施形態を示す断面図である。
図7】本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器のヒートシール領域の配置の一実施形態を説明する平面図である。
図8】本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器のヒートシール領域及び発熱印刷層の配置の一実施形態を説明する平面図である。
図9】電子レンジ加熱時間と水蒸気の発生量との関係のイメージ図である。
図10】剥離強度を測定するためのサンプルの断面概略図である。
図11】剥離強度を測定する際のサンプルのイメージ図である。
図12】剥離強度(最大引張強度)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体について、詳細に説明する。なお、本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
【0012】
[電子レンジ加熱用蓋付容器]
本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器は、開口部にフランジを有し、内容物を収容する容器本体と、前記容器本体を密封する蓋体とを備えてなり、前記蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなり、前記開口部は、前記フランジと前記シーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域により密封されてなり、前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、前記ヒートシール領域における前記フランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下である、ものである。
【0013】
図1及び図3は、本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器の実施形態を示す斜視図であり、図2図1のI-I’線断面図、図4図2のII-II’線断面図である。
図1図4の本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器100は、容器本体10と、容器本体を密封する蓋体20とを備えている。また、容器本体10は、上面に開口部11を備え、開口部11の外周縁にフランジ12を有している。また、図1及び図3に示すように、開口部11は、フランジとシーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域Hにより密封されている(図1及び図3の斜線部がヒートシール領域H)。図2及び図4の「N」は食品等の内容物を示す。
【0014】
<剥離強度>
本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器は、ヒートシール領域におけるフランジとシーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、ヒートシール領域におけるフランジと前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下であることを要する。
【0015】
剥離強度が10N/15mm未満の場合、電子レンジでの加熱が十分に進んでいない時に自動蒸通したり、流通過程で意図せず蓋材が剥離したりすることを抑制できない。
また、剥離強度が8N/15mmを超える場合、内容物が冷凍食品の際に電子レンジ加熱時に自動蒸通されず、密封容器が破裂したり、密封容器が変形したりすることを抑制できない。一方、内容物が液状の場合、剥離強度が8N/15mm以下では、加熱の初期段階で発生する水蒸気に基づく内圧に耐えられずに、短時間で自動蒸通してしまう。このため、内容物が冷凍食品の際に剥離強度を8N/15mm以下とすることが好ましい。
図9は、電子レンジ加熱時間と、水蒸気の発生量との関係のイメージ図である。横軸が電子レンジでの加熱時間(t)、縦軸が水蒸気の累積発生量(w)である。また、実線が冷凍食品、点線が液状食品である。図9に示すように、冷凍食品を電子レンジ加熱した場合、水分の蒸発量が徐々に上昇するのではなく加速度的に上昇するため、通常の設計では自動蒸通が間に合わずに密封容器が破裂したり変形したりしてしまう。本発明では、剥離強度を8N/15mm以下としたことにより、水分が加速度的に上昇する前に自動蒸通することを可能として、密封容器が破裂したり変形したりすることを抑制している。
【0016】
剥離強度は10N/15mm以上20N/15mm以下であることが好ましく、12N/15mm以上18N/15mm以下であることがより好ましい。剥離強度を20N/15mm以下とすることにより、剥離強度を8.0N/15mm以下にしやすくできる。また、剥離強度を20N/15mm以下とすることにより、電子レンジ加熱後に容器本体から蓋材を剥がしやすくすることができる。以下、容器本体から蓋材が剥がしやすい性能のことを「イージーピール性」と称する場合がある。
【0017】
剥離強度は0.1N/15mm以上8.0N/15mm以下であることが好ましく、2.0N/15mm以上7.5N/15mm以下であることがより好ましく、5.0N/15mm以上7.0N/15mm以下であることがさらに好ましい。剥離強度を0.1N/15mm以上とすることにより、電子レンジ加熱時に複数の箇所で自動蒸通し、内容物から発生した蒸気が必要以上に外部に放出されることを抑制できる。
【0018】
剥離強度と剥離強度との差(剥離強度-剥離強度)は、4.0N/15mm以上であることが好ましく、6.0N/15mm以上であることがより好ましく、8.0N/15mm以上であることが更に好ましい。
【0019】
剥離強度及び剥離強度は、JIS Z1707:1997の7.5の「ヒートシール強さ試験」に準拠して測定することができる。測定器としては、例えば、オリエンテック社製の恒温槽付き引張試験機「商品名:RTC-1310A」を用いることができる。
まず、フランジとシーラント層とがヒートシールされてなるヒートシール領域Hを有する箇所と、蓋体の非ヒートシール部分及び容器側面とを含むように、容器本体の開口部の接線と直交する方向に、蓋付容器をカットしたサンプルを作製する。なお、加熱前の蓋付容器からサンプルを採取する。
図10は剥離強度を測定するためのサンプルの断面概略図である。該サンプルの長さ方向の少なくとも一端は非ヒートシール領域であり、該非ヒートシール領域には、蓋体12と、フランジ20から下方に延びる容器側面13が含まれる。また、サンプルの長さ方向の他端はヒートシール領域Hである。
サンプルの幅(開口部の接線方向の幅)は、図10の紙面奥行き方向に相当し、15mm幅とする。サンプル幅15mmが確保できない場合は、サンプル幅を10mm以上とする。また、蓋体の非ヒートシール箇所の長さL1及び容器側面の長さL2は、10mm以上確保する。
例えば、開口部が矩形の蓋付容器の場合、「開口部の接線」は容器本体とフランジとの交線に相当し、該交線はフランジの幅方向(開口部からフランジが突出する方向)とが略直交する。該交線方向をサンプルの幅方向として、フランジの幅方向に蓋付容器をカットしてサンプルを作製する。開口部が円形の蓋付容器の場合、開口部の接線と直交する方向(すなわち、径方向)を中心として、蓋付容器を15mm幅にカットしてサンプルを作製する。
【0020】
次いで、サンプルの蓋体12の非ヒートシール箇所を測定器のつかみ具14で保持し、サンプルの容器側面13を測定器の別のつかみ具15で保持する。
次いで、図11に示すように、容器側面13側をつかみ具15で固定し、蓋体12をつかみ具14で鉛直上方向(図11の紙面上方向)に向かって、300mm/分の速度で蓋体12を引っ張り、引張応力の最大値をサンプル幅15mmで除した数値を該サンプルの剥離強度とする(図12参照)。サンプル幅が10mm以上15mm未満である場合は、引張応力の最大値をサンプル幅で除した数値が、サンプル幅を15mmとしたときのサンプルの剥離強度に相当する。
【0021】
剥離強度を測定する際は、23℃、湿度40~65%の環境とすることが好ましい。サンプルを引張試験機に取り付けた後、恒温槽内で上記測定環境に1分程度馴染ませてから測定を実施することが好ましい。また、剥離強度を測定する前に、採取した直後のサンプルを同環境に30分馴染ませておくことが好ましい。
剥離強度測定する際は、60℃、湿度5~20%の環境とすることが好ましい。サンプルを引張試験機に取り付けた後、恒温槽内で上記測定環境に1分程度馴染ませてから測定を実施することが好ましい。また、剥離強度を測定する前に、採取した直後のサンプルを同環境に30分馴染ませておくことが好ましい。
【0022】
剥離強度及び剥離強度は、シーラント層25を構成する熱可塑性樹脂の組成、シーラント層の厚み、ヒートシールの条件(温度、時間)により調整することができる。
【0023】
<容器本体>
容器本体10は、上面に開口部11を備えるものである。また、容器本体10は、開口部11の外周縁にフランジ12を備えるものである。
容器本体10の形状は、上記形状を備えるものであればよく、それ以上の形状は限定されない。例えば、図1図4の容器本体は、底面及び開口部が略円形であるが、底面及び開口部は、楕円形、四角形等の円形以外の形状であってもよい。また、図1図4の容器本体は、底面よりも開口部が大きくなっているが、底面及び開口部の大きさは略同一であってもよいし、底面よりも開口部の方が小さくてもよい。
フランジ12は、蓋材のシーラント層とのヒートシール性を良好にするために略平坦に形成されていることが好ましい。
【0024】
容器本体10の材質は特に限定されないが、蓋体20とのヒートシール性を良好にするため、容器本体10の蓋体20と接する箇所が熱可塑性樹脂から形成されていることが好ましい。このため、容器本体10は、全体を熱可塑性樹脂から形成することが好ましい。また、容器本体10の蓋体20と接する箇所はフランジ12であるため、フランジ12上に熱可塑性樹脂層を形成し、それ以外の箇所を紙から形成した容器とすることも好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。これらの中でも、収納物に含まれる油に対する耐油性及び耐熱性の観点からポリプロピレンが好適である。
【0026】
ポリプロピレンとしては、高結晶性のプロピレン単独重合体が挙げられ、さらには、プロピレンと、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、3-メチルブテン-1、4-メチルペンテン-1等のαーオレフィンとのランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でも高結晶性のプロピレン単独重合体が好ましい。
【0027】
容器本体の全体を熱可塑性樹脂から形成する場合には、例えば、真空成形、圧空成形、射出形成、ブロー成形、押し出し成形、カレンダー成形、キャスト成形等の成形方法で形成することができる。その際、容器本体の隠蔽性を高めるため、成形材料中に、熱可塑性樹脂に加えて顔料を添加してもよい。
【0028】
フランジ12は、図4に示すように、容器本体10の中央に向かって突出してなる突出部12xを有することが好ましい。フランジ12の一部に突出部12xを有することにより、電子レンジでの加熱時に、密封容器の内圧に基づく負荷をヒートシール領域の該突出部の箇所(図3のHxの箇所)に集中させ、該箇所を自動蒸通して内圧を逃がしやすくすることができる。
【0029】
<蓋体>
蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなる。
【0030】
図5及び6は、蓋体20の実施の形態を示す断面図である。図5及び6の蓋体20は、第1の基材層21、絵柄層23、第2の基材層22及びシーラント層25をこの順に有している。また、図6の蓋体20は、第2の基材層22とシーラント層25との間の一部に発熱印刷層26を有している。
【0031】
<<基材層>>
基材層は、1層のみでもよいが、耐熱性を良好にするために、図5及び6に示すように、2層以上備えることが好ましい。また、基材層を2層以上備える場合、図5及び6のように積層体の厚み方向で分離させてもよいし、厚み方向で連続させてもよい。
【0032】
基材層は、耐熱性の観点から、耐熱性が良好なプラスチックフィルム、紙から構成することが好ましく、その中でも、ガスバリア性の観点から、耐熱性が良好なプラスチックフィルムが好ましい。
【0033】
基材層のプラスチックフィルムとしては、耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルム等の1種以上を用いることが好ましい。なお、ナイロンは突き刺し強度に優れるため、冷凍食品によって蓋体が破れることを抑制しやすい点で好ましい。
また、基材層として、耐熱性に優れるポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムの少なくとも何れかを用いる場合には、単独では耐熱性が不十分なプラスチックフィルムを併用することもできる。例えば、ポリエステルフィルム及びポリアミドフィルムの少なくとも何れかと、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等のガスバリア性に優れるプラスチックフィルムを併用することにより、積層体全体としての耐熱性及びガスバリア性を良好にすることができる。
【0034】
プラスチックフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。また、プラスチックフィルムは、インフレーション法、あるいは、溶融押し出しコーティング法で形成したものであってもよい。
【0035】
プラスチックフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、5~50μm程度であることが好ましく、より好ましくは10~40μm、さらに好ましくは12~25μmである。
【0036】
プラスチックフィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、プラスチックフィルムは、JISK7136:2000のヘイズが1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
全光線透過率及びヘイズを上記範囲とすることにより、絵柄層を形成する場合において、絵柄の視認性を良好にしやすくできる。
【0037】
<<シーラント層>>
シーラント層25は、フランジ12とヒートシール領域Hを形成し、開口部を密封する役割を有する。
シーラント層25は、コア層とシール層との積層体で構成される。コア層は基材層と接触し、シール層はフランジと接触する。
【0038】
(コア層)
コア層は、シール層の支持体としての役割を果たす。更に、コア層は、基材層及びシール層各々との密着が良好であるため、電子レンジ加熱後に容器を開封する際に、フランジとシール層との間で剥離を生じさせることができる。
シール層との密着性の観点から、コア層はポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマ、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体などが挙げられる。特に、耐衝撃性及び剛性のバランスに優れるプロピレン-エチレンブロック共重合体であることが好ましい。プロピレン-エチレンブロック共重合体における、プロピレン成分とエチレン成分との割合は、質量割合で60:40~90:10であることが好ましく、70:30~85:15であることがより好ましい。
プロピレン-エチレンブロック共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体に比べ剛性及び軟化点が高い。このため、プロピレン-エチレンランダム共重合体に比べて、電子レンジ加熱後に蓋体を容器から剥離する際に、適度な剛性を保持することができ、ヒートシール領域におけるシール層及びフランジとの界面に引き剥がしの力が伝わりやすい。すなわち、コア層としてプロピレン-エチレンブロック共重合体を用いることにより、剥離性を良好にでき、更に剥離面の美観が良好であるとの効果も奏することができる。特に、後述するようにシール層にオレフィン系エラストマーが含まれる場合は、電子レンジ加熱によりシール層が軟化しているため、剛性の高いコア層としてプロピレン-エチレンブロック共重合体を用いることにより、引き剥がしの力を伝えやすくすることができる。
【0039】
(シール層)
シール層は、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂から構成することが好ましい。シール層を構成する熱可塑性樹脂は、剥離強度及び剥離強度を本発明の範囲にし得る組成とすることが好ましい。
シール層は、フランジを構成する樹脂との密着性が良好な第1の樹脂と、フランジを構成する樹脂との密着性が良好ではなく、前記第1の樹脂と非相溶である第2の樹脂とを混合することにより形成することが好ましい。第1の樹脂は剥離強度及び剥離強度を高くして、第2の樹脂は剥離強度及び剥離強度を低くする役割を有する。
このような樹脂はフランジを構成する樹脂の種類によって異なるため一概には言えないが、フランジを構成する樹脂がポリプロピレン樹脂の場合、第1の樹脂としてポリプロピレンを用い、第2の樹脂として、ポリエチレン及びオレフィン系エラストマーから選ばれる一種以上を用いることが好ましい。すなわち、フランジを構成する樹脂がポリプロピレンの場合、シール層は、第1の樹脂であるポリプロピレンと、第2の樹脂であるポリエチレン及びオレフィン系エラストマーから選ばれる一種以上との混合樹脂から形成することが好ましい。前述した第2の樹脂は、シール層の耐衝撃性を向上しやすくできる。第2の樹脂は透明性の観点からポリエチレンを含むことが好ましく、電子レンジ加熱後の耐衝撃性及び耐突き刺し性の観点からオレフィン系エラストマーを更に含むことが特に好ましい。
【0040】
第1の樹脂であるポリプロピレン(A)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体が挙げられる。これらの中でも、剥離強度を上述した範囲としやすいプロピレン-エチレンブロック共重合体が好ましい。また、プロピレン-エチレンランダム共重合体は耐衝撃性に優れる点でも好適である。
プロピレン-エチレンランダム共重合体における、プロピレン成分とエチレン成分との割合は、質量割合で60:40~99:1であることが好ましく、70:30~98:2であることがより好ましい。
【0041】
プロピレン-エチレンブロック共重合体は、原料であるプロピレン及びエチレンを触媒の存在下で重合する方法が挙げられる。触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられる。
【0042】
第2の樹脂(B)は、ポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0043】
ポリエチレン(B1)としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることがより好ましい。
【0044】
低密度ポリエチレンは、密度が0.910~0.925g/cmのポリエチレンである。中密度ポリエチレンは、密度が0.926~0.940g/cmのポリエチレンである。高密度ポリエチレンは、密度が0.941~0.965g/cmのポリエチレンである。
低密度ポリエチレンは、例えば、1000気圧以上且つ2000気圧未満の高圧でエチレンを重合することにより得られる。中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、例えば、1気圧以上且つ1000気圧未満の中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる。
直鎖状低密度ポリエチレンは、中圧又は低圧でエチレンを重合することによって得られる直鎖状ポリマーにα-オレフィンを共重合させて短鎖分岐を導入することによって得られる。α-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン、-オクテン等が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.915~0.945g/cmであることが好ましい。
【0045】
中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を部分的に含んでいてもよい。また、中圧又は低圧でエチレンを重合する場合であっても、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を含む場合は、中密度又は低密度のポリエチレンが生成され得る。このようなポリエチレンが、上述の直鎖状低密度ポリエチレンと称される。
【0046】
オレフィン系エラストマー(B2)としては、水添スチレン系エラストマー、エチレン-α-オレフィンエラストマーが挙げられる。
水添スチレン系エラストマーは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとからなる構造を有する。
エチレン-α-オレフィンエラストマーは、主成分としてのエチレンと、α-オレフィンとのランダム共重合体であることが好ましく、例えば、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等が挙げられる。
シール層がオレフィン系エラストマー(B2)を含むことにより、コア層との密着性が良好となる。また、蓋体の耐突き刺し性及び耐衝撃性を向上させることができる。
シール層にオレフィン系エラストマー(B2)が含まれていると、電子レンジ加熱された際にシール層が軟化しやすくなる。コア層にプロピレン-エチレンブロック共重合体を用いることにより、密封容器の内圧に基づく負荷をシール層に伝えやすくし、ヒートシール領域の一部を自動蒸通させ、内圧を逃がすことができる。なお、電子レンジ加熱によりシール層が軟化して、剥離の際に粘着感が生じたり、糸状に延伸するなどの美観を損ねたりしないようにするために、シール層中のオレフィン系エラストマーの含有量は2~10質量%であることが好ましい。例えば、シール層がポリプロピレン(A)、ポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)を含む場合、各成分の割合は、「ポリプロピレン(A)≧ポリエチレン(B1)≧オレフィン系エラストマー(B2)(質量%)」の関係を満たすことが好ましい。具体的に、シール層は、ポリプロピレン(A):50~80質量%、ポリエチレン(B1):10~40質量%、オレフィン系エラストマー(B2):2~10質量%であることが好ましい。
【0047】
第1の樹脂であるポリプロピレン(A)と、第2の樹脂(B)とは相溶性が低い。このため、ポリプロピレン(A)と第2の樹脂(B)とは、シール層内において、ポリプロピレン(A)の海の中に第2の樹脂(B)が島状に配置された構成となりやすい。このように、ポリプロピレン(A)及び第2の樹脂(B)が海島構造を取ることにより、フランジを構成する樹脂がポリプロピレン樹脂の場合の剥離強度が調整しやすくなり、剥離強度及び剥離強度を本発明の範囲にしやすくできる。
【0048】
シール層の厚みは、1~10μmであることが好ましく、1~8μmであることがより好ましい。コア層の厚みは、20~90μmであることが好ましく、25~90μmであることがより好ましい。また、シーラント層の厚み(シール層及びコア層の合計厚み)は、20~100μmであることが好ましく、30~50μmであることがより好ましい。シーラント層の厚みに対するコア層の厚みは、0.5~20%であることがより好ましい。
シーラント層の厚みを増すと、剥離強度及び剥離強度が大きくなり、シーラント層の厚みを減ずると、剥離強度及び剥離強度が小さくなる傾向にある。シール層の厚みが上記範囲であることにより、剥離強度及び剥離強度を本発明の範囲に調整しやすくできる。また、コア層の厚みを上記範囲とすることにより、コア層全体で適度な剛性を得ることができるため、剥離性を良好にすることができる。
【0049】
シーラント層は、例えば、上述したシール層を構成する樹脂を混合し、コア層を構成する樹脂とともに共押出しにより形成することができる。あるいは、上述した樹脂を混合し、コア層となるフィルム上に溶融押し出しすることにより形成することができる。なお、ヒートシール時の収縮を抑制するため、得られたシーラント層は延伸処理しないことが好ましい。
【0050】
<<絵柄層>>
積層体は、基材層とシーラント層との間に絵柄層23を有していてもよい。基材層を複数有する場合、絵柄層は、外層側(シーラント層とは反対側)の基材層と、もう1つの基材層との間に配置してもよいし、シーラント層側の基材層とシーラント層との間に配置してもよい。また、絵柄層は単層に限らず、2層以上の多層であってもよい。
絵柄層は、文字、図形、記号、模様、パターン及びベタ印刷等から選ばれる1種以上の組み合わせによって絵柄を形成することができる。
絵柄層23は、図5及び6に示すように、蓋体の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
【0051】
絵柄層は、主として、着色剤とバインダー樹脂を含む。
着色剤としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛及び鉛白等の白色顔料;カーボンブラック、チタンブラック及び鉄黒等の黒色顔料;黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青及びコバルトブルー等の有彩色無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー及びフタロシアニンブルー等の有彩色有機顔料;パール顔料、金属粒子及び金属鱗片等の光輝性材料;染料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
絵柄層は、例えば、基材層上に、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式等の公知の印刷方式で、公知のインキを使用して形成することができる。絵柄層形成インキは、通常、バインダー樹脂や溶剤からなるビヒクルを主成分とする。
【0053】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂や塩素化ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロースやエチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロース等の繊維素系樹脂、塩化ゴムや環化ゴム等のゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼイン等の天然樹脂等が挙げられる。
【0054】
絵柄層形成インキには、さらに、必要に応じて、例えば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤等の任意の添加剤を添加することができる。
【0055】
絵柄層のインキに含まれる溶剤としては、通常の顔料インキに用いられる溶剤を適用することができ、例えば、メタノールやエタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチルや酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル等のエステル系溶剤、ノルマルヘキサンやノルマルヘプタン、ノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサンやメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素系溶剤、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリット等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
絵柄層中の着色剤の含有量は特に制限されるものではないが、絵柄層の全固形分の5~70質量%であることが好ましく、15~65質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
絵柄層の厚みは特に限定されるものではなく、1.0~5.0μm程度であることが好ましく、より好ましくは1.0~3.0μmである。
【0058】
<<ガスバリア層>>
積層体は、基材層とシーラント層との間にガスバリア層を有していてもよい。基材層を複数有する場合、ガスバリア層は、外層側(シーラント層とは反対側)の基材層と、もう1つの基材層との間に配置してもよいし、シーラント層側の基材層とシーラント層との間に配置してもよい。また、絵柄層を有する場合、ガスバリア層と絵柄層との位置関係は特に限定されず、何れがシーラント層側であってもよい。なお、ガスバリア層が絵柄層の外層側に形成される場合には、絵柄層を視認できるように、光透過性を有する材料でガスバリア層を構成することが好ましい。
【0059】
ガスバリア層は、酸素や水蒸気等の透過を遮断する役割を担うものである。また、ガスバリア層は、可視光や紫外線等の透過を遮断する遮光性も付与するものであってもよい。ガスバリア層は、1層のみから構成されるものであっても、2層以上の複数層で構成されてもよい。
【0060】
ガスバリア層は、公知の方法により、蒸着膜や塗布膜として形成することができる。なお、ガスバリア層を形成する表面は、該ガスバリア層の密着性向上の観点から、予め表面処理を施しておいてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスや窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、酸化剤処理、アンカーコート剤の塗布等が挙げられる。
【0061】
<<発熱領域、非発熱領域>>
積層体は、基材層とシーラント層との間に、導電剤を含む発熱印刷層26を有する発熱領域26aと、発熱印刷層を有さない非発熱領域26bとを有し、蓋付容器の平面方向において、ヒートシール領域H内の一部に発熱領域26aが配置されてなることが好ましい(図6図8)。
上記の構成を採用することにより、電子レンジでの加熱時に、非発熱領域26bよりも発熱領域26aが速く温度が上昇するため、ヒートシール領域Hの内、平面方向において発熱領域26aに対応する箇所の密封状態が解消し、自動蒸通させることができる(自動蒸通手段1)。
発熱領域26aは、図8に示すように、所定の中心角θの範囲に形成することが好ましい。中心角θは30~50度であることが好ましい。
【0062】
基材層が2つ存在する場合、図6に示すように、シーラント層側の基材層22とシーラント層25との間に発熱印刷層26を形成することが好ましい。
【0063】
導電剤としては、導電性高分子及び導電性粒子から選ばれる1種以上が挙げられる。
導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン及びポリアセチレンが挙げられる。導電性粒子としては、カーボンブラック及び金属粒子が挙げられる。
導電剤として導電性粒子を用いる場合、発熱印刷層はバインダー樹脂を含むことが好ましい。また、導電剤として導電性高分子を用いる場合も、導電性の調整のために、他の樹脂を含有してもよい。
発熱印刷層の導電性高分子以外の樹脂は、絵柄層のバインダー樹脂として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0064】
発熱印刷層の厚みは0.1μm以上が好ましく、0.5~10μmがより好ましい。また、発熱領域の面積は1mm以上であることが好ましく、5~50mmであることがより好ましい。
【0065】
また、発熱印刷層は、テスターの端子間を5mm離して測定した抵抗値が0.1kΩ~50kΩであることが好ましい。
【0066】
<<接着剤層>>
積層体は、各層間の接合強度の向上の観点から、接着剤層を介して積層されていてもよい。接着剤層は、公知のドライラミネート用接着剤を用いた方法により形成することができる。
ドライラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂やメラミン樹脂等によるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤(例えば、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物)、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴムやニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等によるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケートや低融点ガラス等による無機系接着剤等が挙げられる。
【0067】
<蓋体の積層構成の具体例>
蓋体は、より具体的には、下記(a1)~(a5)の何れかの積層構成とすることが好ましい。なお、「/」は各層の境界を意味する。また、PETはポリエチレンテレフタレートフィルム、Nyはナイロンフィルム、EVOHはエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂フィルムを意味する。また、(a1)~(a5)において、PET及びNyは延伸フィルムであることが好ましい。
【0068】
(a1)PET/絵柄層/Ny/シーラント層
(a2)PET/絵柄層/PET/シーラント層
(a3)Ny/絵柄層/Ny/シーラント層
(a4)Ny/絵柄層/EVOH/シーラント層
(a5)Ny/EVOH/絵柄層/シーラント層
【0069】
なお、蓋体が上述した発熱印刷層を有する場合、(a1)~(a5)の基材層とシーラント層との間の一部に、発熱印刷層を形成すればよい。基材層が2つ存在する場合、シーラント層側の基材層とシーラント層との間に発熱印刷層を形成することが好ましい。
【0070】
<内容物>
容器本体に収納する内容物は特に限定されないが、冷凍食品であることが好ましい。
上述したように、本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器は、内容物が冷凍食品の場合に、剥離強度を8N/15mm以下とすることによる効果を際立って優れたものとすることができる。
【0071】
<ヒートシール領域>
ヒートシール領域Hは、蓋体のシーラント層25と、容器本体のフランジ12とをヒートシールすることにより形成される領域である。ヒートシール領域Hは、フランジ12を1周するように帯状又は線状に連続的に形成されていることが好ましい(図1、3、7及び8)。
ヒートシール領域Hの面積はフランジ12の面積と一致していてもよい。言い換えると、シーラント層25は、フランジ12の全てにヒートシールされていてもよい。一方、図7及び8に示すように、シーラント層25をフランジ12の一部にヒートシールし、ヒートシール領域Hの面積とフランジ12の面積とを一致させなくてもよい。図7及び8では、フランジの内周縁12aとフランジの外周縁12bとの間の一部がヒートシール領域Hとなっている。
ヒートシール層の幅は、フランジの幅(容器本体から突出する方向の幅)の10%~90%であることが好ましい。
【0072】
ヒートシール領域Hは、その一部が、容器本体の中央に向かって突出してなる突出部Hxを有することが好ましい(図3)。ヒートシール領域が突出部Hxを有することにより、電子レンジでの加熱時に、密封容器の内圧に基づく負荷を該突出部Hxの箇所に集中させ、該箇所を自動蒸通して内圧を逃がしやすくすることができる(自動蒸通手段2)。なお、ヒートシール領域が突出部Hxを有する箇所は、ヒートシール領域の内周縁H1及びヒートシール領域の外周縁H2の両方が、容器本体の中央に向かって突出していることが好ましい。
ヒートシール領域に突出部Hxを形成するためには、図4に示すように、フランジ12が、容器本体10の中央に向かって突出してなる突出部12xを有することが好ましい。
【0073】
突出部Hxの形状及び大きさは、自動蒸通させるまでの最適な時間に応じて、適宜調整することができる。
なお、蓋付き容器の平面方向において、突出部Hxと上述した発熱領域26aとの少なくとも一部を重ねて配置することにより、より速く自動蒸通させることができる。
【0074】
また、ヒートシール領域Hの一部の幅を狭くすれば、幅の狭いヒートシール領域の箇所から自動蒸通させることも可能である(自動蒸通手段3)。また、ヒートシール領域のシーラント層のうち、一部のシーラント層を他のシーラント層の物性と異なるものとする(例えば、一部のシーラント層の組成を変更して、他のシーラント層よりも軟化点を低くする)ことにより、該箇所から自動蒸通させることも可能である(自動蒸通手段4)。
なお、本明細書では、4つの自動蒸通手段(自動蒸通手段1~4)を例示したが、これらは適宜組み合わせることができる。例えば、ヒートシール領域の幅を狭くした箇所と、上述した発熱領域26aとの少なくとも一部を重ねて配置することにより、より速く自動蒸通させることができる(自動蒸通手段1と3との組み合わせ)。
また、上述した突出部Hxの箇所に関して、ヒートシール領域の幅を狭くすることにより、より速く自動蒸通させることができる(自動蒸通手段2と3との組み合わせ)。
【0075】
上述したように、剥離強度及び剥離強度は、ヒートシールの条件(温度、時間)によっても変動する。
ヒートシールの条件は、フランジを構成する樹脂、シーラント層を構成する樹脂によって異なるため一概には言えないが、フランジを構成する樹脂がプロピレン単独重合体であり、シーラント層を構成する樹脂が、上述した第1の樹脂であるポリプロピレン(A)と、第2の樹脂(B)との混合樹脂である場合には、160~170℃、圧力1.8~2.2MPaで1.3~1.7秒間とすることが好ましい。ヒートシール時の温度及び圧力を上げたり、ヒートシールの時間を増やしたりすると、剥離強度が上昇する傾向にある。
また、ヒートシールする際の室内環境は、23±5℃、湿度40~65%であることが好ましい。
【0076】
[電子レンジ加熱容器用の蓋体]
本発明の電子レンジ加熱容器用の蓋体は、少なくとも基材層及びシーラント層が積層された積層体で構成されてなり、下記条件1を満たすものである。
<条件1>
ポリプロピレン系樹脂からなる被着体に前記積層体の前記シーラント層を165℃で1.5秒間ヒートシールしてなる積層体を作製する。該積層体の前記被着体と前記シーラント層との23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、かつ、該積層体の前記被着体と前記シーラント層との60℃における剥離強度が8N/15mm以下である。
【0077】
条件1において、ポリプロピレンとしては、高結晶性のプロピレン単独重合体が挙げられ、さらには、プロピレンと、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、3-メチルブテン-1、4-メチルペンテン-1等のαーオレフィンとのランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でも高結晶性のプロピレン単独重合体が好ましい。
【0078】
本発明の電子レンジ加熱容器用の蓋体において、該蓋体を構成する各層の実施形態は、上述した本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器の蓋体の実施形態と同様である。
また、本発明の電子レンジ加熱容器用の蓋体において、剥離強度及び剥離強度の好適な範囲は、上述した本発明の電子レンジ加熱用蓋付容器の剥離強度及び剥離強度の好適な範囲と同様である。
【実施例
【0079】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
1.蓋体の作製
第1の基材層(厚み12μmの延伸PETフィルム)の一方の表面に、コロナ放電処理を施した後、絵柄層形成インキをグラビア印刷して乾燥し、乾燥膜厚1.5μmの絵柄層を形成し、絵柄層表面の一部に、導電性高分子を含むインキ(東京インキ株式会社製、品番MWヒート剤)を用い、厚み0.5μmの発熱印刷層を形成した。
次いで、発熱インキ層の表面に、ポリウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法により、第2の基材層(延伸Ny、厚み15μm)を貼り合わせた。
次いで、第2の基材層の、発熱インキ層とは反対側に、ポリウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法により、シーラント層を貼り合わせた積層体を得た。シーラント層は、コア層(厚み27μm)及びシール層(厚み3μm)の2層共押出しフィルムとした。シール層を第2の基材層側に配置した。コア層には、プロピレン-エチレンブロック共重合体を用いた。シール層は、第1の樹脂(A)と第2の樹脂(B)の混合物とした。第1の樹脂(A)にはプロピレン-エチレンランダム共重合体を用いた。第2の樹脂(B)には、ポリエチレン(B1)及びオレフィン系エラストマー(B2)を用いた。シール層中のオレフィン系エラストマー(B2)の含有量は2~10質量%の範囲内とした。ポリエチレン(B1)には、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを用いた。
次いで、該積層体を断裁し、実施例1の蓋体を得た。
実施例1の蓋体は、外層側から、第1の基材層(延伸PET)、絵柄層、発熱インキ層(注:発熱インキ層は面内の一部)、接着剤層、第2の基材層(延伸Ny)、接着剤層及びシーラント層を有している。
【0081】
2.電子レンジ加熱用蓋付容器の作製
高結晶性のプロピレン単独重合体から形成されてなる容器本体を準備した。容器本体のフランジは円形であり、フランジの内径は85mm、外径は95mm、本体の深さは95mmであった。
次いで、容器本体に、内容物として冷凍チャーハン170gを収納した後、実施例1の蓋体を下記の条件でヒートシールして、実施例1の電子レンジ加熱用蓋付容器を得た。ヒートシーラーとして、シンワ機械社製トレーシーラーを用いた。ヒートシール領域の幅(円形フランジの径方向におけるヒートシール領域の幅)を2mm(フランジの幅に対するヒートシール層の幅:40%)とした。なお、該蓋付き容器において、発熱印刷層は中心角40度の範囲に、3mm幅(円形フランジの径方向における発熱印刷層の幅)で配置されていた。
<実施例1のヒートシール条件>
・温度:165℃
・時間:1.5秒
・圧力:2.0MPa(エアーシリンダー式)
【0082】
[比較例1]
シール層を、プロピレン-エチレンランダム共重合体とポリエチレンの混合物(東レフィルム加工社製、商品名「9501A」、オレフィン系エラストマーは含まない)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の蓋体及び電子レンジ加熱用蓋付容器を得た。
【0083】
3.測定及び評価
下記の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
3-1.剥離強度及び剥離強度の測定
明細書本文の記載の手法に従って、実施例及び比較例の剥離強度及び剥離強度を測定した。
【0084】
3-2.自動蒸通の確認
実施例及び比較例の電子レンジ加熱用蓋付容器(冷凍チャーハン170g収納)を出力600Wの電子レンジで180秒間加熱し、下記基準で評価した。
A:100~120秒の間に無音で自動蒸通し、加熱後に容器本体及び蓋体の変形が確認できないもの。
C:加熱終了までの間で大きな音とともに自動蒸通するか、容器本体及び/又は蓋体に変形が確認できたもの。
【0085】
3-3.イージーピール性
3-2の自動蒸通試験とは別に、常温環境下で蓋体を剥離する作業を行った。その結果、容易に剥離できるものを「A」、剥離が重く感じられるものを「C」とした。
【0086】
【表1】
【0087】
表1の結果から、実施例1の電子レンジ加熱用蓋付容器は、剥離強度が10N/15mm以上であり、流通過程で意図せず蓋材が剥離したりすることを抑制できる程度の剥離力を有していることが確認できる。また、表1の結果から、剥離強度が8N/15mm以下である実施例1の電子レンジ加熱用蓋付容器は、内容物として冷凍食品を収納しているものの、自動蒸通の評価が「A」であり、適切な時間で自動蒸通していることが確認できる。
一方、剥離強度が8N/15mmを超える比較例1の電子レンジ加熱用蓋付容器は、加熱終了まで自動蒸通せず、容器内の温度が過度に上昇し、容器本体及び/又は蓋体が変形することが確認できる。
【符号の説明】
【0088】
10 容器本体
11 開口部
12 フランジ
12a フランジの内周縁
12b フランジの外周縁
12x フランジの突出部
13 容器側面
14,15 つかみ具
20 蓋体
21,22 基材層
23 絵柄層
25 シーラント層
26 発熱印刷層
26a 発熱領域
26b 非発熱領域
27 摘持部
100 電子レンジ加熱用蓋付容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12